(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6503212
(24)【登録日】2019年3月29日
(45)【発行日】2019年4月17日
(54)【発明の名称】印刷機
(51)【国際特許分類】
B41F 27/12 20060101AFI20190408BHJP
B41F 3/60 20060101ALI20190408BHJP
B41F 17/14 20060101ALI20190408BHJP
B41F 31/18 20060101ALI20190408BHJP
H05K 3/12 20060101ALI20190408BHJP
【FI】
B41F27/12 A
B41F3/60
B41F17/14 E
B41F31/18
H05K3/12 630Z
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-68135(P2015-68135)
(22)【出願日】2015年3月30日
(65)【公開番号】特開2016-187888(P2016-187888A)
(43)【公開日】2016年11月4日
【審査請求日】2018年1月12日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「次世代プリンテッドエレクトロニクス材料・プロセス基盤技術開発/次世代プリンテッドエレクトロニクス材料・プロセス基盤技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000184735
【氏名又は名称】株式会社小森コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】杉本 郁男
【審査官】
中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−297684(JP,A)
【文献】
特開平06−064156(JP,A)
【文献】
特開2014−188741(JP,A)
【文献】
特開昭63−091250(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0117973(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 27/12
B41F 3/60
B41F 17/14
B41F 31/18
H05K 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹版からなる版を着脱可能に保持する保持機能を有する版胴と、
前記版胴に取付けられる版が載置される版載置面を有し、前記版胴の外周面の近傍に配置された版保持装置と、
前記版保持装置を移動可能に支持する版供給装置と、
前記版載置面と対向する位置に配置され、前記版載置面に載置された版を撮像するカメラと、
前記版胴に装着された前記版を撮像するカメラと、
前記版胴の外周面と対向するインクジェットヘッドとを備え、
前記版供給装置は、
前記版載置面に載置された版を撮像する前記カメラによって撮像された前記版の画像に基づいて、前記版保持装置を前記版載置面に沿う方向に移動させて前記版胴に対する版の位置を調整する機能と、
前記版胴に対する前記版の位置が調整された状態で前記版保持装置を前記版胴に向けて移動させ、前記版を前記版胴によって保持可能な供給位置に供給する機能とを有し、
前記インクジェットヘッドによって前記版胴の版の凹部に機能性溶液を塗布し、電子デバイスの基材に機能層を設けることを特徴とする印刷機。
【請求項2】
請求項1記載の印刷機において、
さらに、前記版供給装置は、前記版載置面と直交する方向に延びる軸線を中心として前記版保持装置を回動させる機能を有していることを特徴とする印刷機。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の印刷機において、
前記版載置面に載置された版を撮像する前記カメラは、前記版胴の軸線方向に離間した少なくとも2箇所を撮像可能に構成されていることを特徴とする印刷機。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちいずれか一つに記載の印刷機において、
前記版保持装置は、前記版胴に近接する方向に移動可能であり、
前記版保持装置が前記版胴に向けて移動することにより前記版が前記版胴に供給されることを特徴とする印刷機。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のうちいずれか一つに記載の印刷機において、
前記版保持装置は、前記版を吸着して保持する機能を有していることを特徴とする印刷機。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のうちいずれか一つに記載の印刷機において、
前記版胴は、前記版を保持する部分で前記版の先端部を吸着して保持する機能を有していることを特徴とする印刷機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスやフィルムなどの基材に高精細なパターンの配線等の機能層を印刷により形成する印刷機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガラスやフィルムなどのフレキシブルな基材に高精細なパターンの配線等の機能層を印刷によって形成し、フレキシブル電子デバイスを製造する技術が開発されている。この種のフレキシブル電子デバイスとしては、例えば、薄膜トランジスタがある。このような印刷を行うことが可能な従来の印刷機としては、例えば特許文献1に記載されているものがある。
【0003】
この特許文献1に開示された印刷機は、フレキソ版を使用して基材に機能層となる機能性溶液を印刷するものである。この印刷機においては、基材を搬送するステージで基材の位置を調整する機能を有している。このため、この印刷機においては、印刷版が版胴にずれたり曲がったりした状態で取付けられた場合や、版胴の駆動軸が傾いて組付けられた場合であっても、ステージで基材の位置を調整できるから、設計通りの転写を行うことができる。
ところで、フレキシブルな基材に機能層を印刷することが可能な印刷機としては、版胴に取付けられた凹版の凹部にインクジェットヘッドでインキを充填し、このインキを基材に転写するものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−19059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インクジェットヘッドで凹版の凹部にインキを充填させる印刷機においては、版がずれたり曲がったりした状態で版胴に取付けられると、特許文献1に記載された技術で基材の位置を調整したとしても、正しく印刷を行うことはできない。この理由は、インクジェットヘッドの移動方向、移動距離には制約があり、ずれたり曲がったりした凹版の凹部にインキを充填させることが困難だからである。インクジェットヘッドを版のずれや曲がりに対応させてインキを充填することは、機械構成を複雑にするばかりでなく、複雑な動作制御も必要になり望ましくない。
【0006】
本発明はこのような問題を解消するためになされたもので、版胴に版を正しい状態で取付けることが可能な印刷機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、本発明に係る印刷機は、
凹版からなる版を着脱可能に保持する保持機能を有する版胴と、前記版胴に取付けられる版が載置される版載置面を有し、前記版胴の外周面の近傍に配置された版保持装置と、前記版保持装置を移動可能に支持する版供給装置と、前記版載置面と対向する位置に配置され、前記版載置面に載置された版を撮像するカメラと
、前記版胴に装着された前記版を撮像するカメラと、前記版胴の外周面と対向するインクジェットヘッドとを備え、前記版供給装置は、
前記版載置面に載置された版を撮像する前記カメラによって撮像された前記版の画像に基づいて、前記版保持装置を前記版載置面に沿う方向に移動させて前記版胴に対する版の位置を調整する機能と、前記版胴に対する前記版の位置が調整された状態で前記版保持装置を前記版胴に向けて移動させ、前記版を前記版胴によって保持可能な供給位置に供給する機能とを有し、
前記インクジェットヘッドによって前記版胴の版の凹部に機能性溶液を塗布し、電子デバイスの基材に機能層を設けるものである。
【0008】
本発明は、前記印刷機において、さらに、前記版供給装置は、前記版載置面と直交する方向に延びる軸線を中心として前記版保持装置を回動させる機能を有していてもよい。
【0009】
本発明は、前記印刷機において、
前記版載置面に載置された版を撮像する前記カメラは、前記版胴の軸線方向に離間した少なくとも2箇所を撮像可能に構成されていてもよい。
【0010】
本発明は、前記印刷機において、前記版保持装置が、前記版胴に近接する方向に移動可能であり、前記版保持装置が前記版胴に向けて移動することにより前記版が前記版胴に供給されてもよい。
【0011】
本発明は、前記印刷機において、前記版保持装置が、前記版を吸着して保持する機能を有していてもよい。
【0012】
本発明は、前記印刷機において、前記版胴は、前記版を保持する部分で前記版の先端部を吸着して保持する機能を有していてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、版が版胴に取付けられる直前の位置で、版の位置調整が行われ、調整済みの状態で版が版胴に供給される。
したがって、版胴に版を正しい状態で取付けることが可能な印刷機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る印刷機の構成を示す側面図である。
【
図3】版クランプ機構の一部を拡大して示す側面図である。
【
図4】版保持装置と版供給装置およびカメラを示す斜視図である。
【
図5】版クランプ機構の一部を拡大して示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る印刷機の一実施の形態を
図1〜
図5によって詳細に説明する。
図1に示す印刷機1は、いわゆるデジタルインキング方式の印刷機で、版胴2の上方に後述するインクジェットヘッド3を備えている。
版胴2は、基台4の上に図示していない支持装置によって軸線が水平方向を指向する状態で回転自在に支持されている。なお、以下においては、版胴2の軸線と平行な方向を、便宜上、X方向といい、このX方向とは直交する水平方向をY方向という。また、上下方向に延びる軸線を中心として回転する方向をθ方向という。
【0017】
版胴2を支持する支持装置は、版胴2を
図1に示す版取付位置と、この版取付位置より低い印刷位置との間で昇降させる機能を有している。また、この版胴2は、駆動装置(図示せず)によって駆動されることにより回転する。
版胴2は、
図2に示すように、版クランプ機構5を備えている。この版クランプ機構5は、本発明でいう「版を着脱可能に保持する保持機能」を実現するためのものである。版クランプ機構5は、版胴2の外周面に開口する凹溝6の中に収容されている。この版クランプ機構5は、複数の前側爪部材7および後側爪部材8と、これらの前側および後側爪部材7,8を個別に駆動可能な駆動装置9などによって構成されている。
【0018】
前側爪部材7と後側爪部材8は、
図3中に実線で示すクランプ位置と、
図3中に二点鎖線で示す非クランプ位置との間で揺動可能である。駆動装置9は、前側爪部材7と後側爪部材8をクランプ位置と非クランプ位置との間でそれぞれ揺動させる。クランプ位置に位置する前側爪部材7と後側爪部材8は、版胴2の爪台10に向けて付勢されている。この実施の形態においては、爪台10が請求項6記載の発明でいう「版を保持する部分」に相当する。この版胴2による印刷は、クランプ位置にある前側爪部材7および後側爪部材8と爪台10との間に後述する版11(
図1および
図2参照)が挟まれて保持された状態で行われる。
この実施の形態による爪台10は、版11を吸着して保持する吸着装置12(
図3参照)を備えている。この吸着装置12は、爪台10の上面に開口する空気吸引口13から空気を吸引する構成のものである。
【0019】
基台4の上には、
図1に示すように、版胴2の他に複数の機能装置が設けられている。これらの機能装置とは、版胴2と基台4との間に一部が臨む定盤駆動装置14と、第1〜第3のカメラ15〜17と、インクジェット装置18などである。
定盤駆動装置14には印刷定盤21が設けられている。この印刷定盤21は、電子デバイス(図示せず)となる基材22を保持するものである。この基材22とは、例えばガラス板や、フィルム基板などである。
【0020】
定盤駆動装置14は、印刷定盤21を
図1中に実線で示す基材受け渡し位置と、版胴2の下方に二点鎖線で示す印刷位置との間でY方向に移動させる機能と、後述する第1のカメラ15の下方で印刷定盤21を停止させ、基材22の位置合わせを行う機能とを有している。この定盤駆動装置14は、印刷時には、印刷定盤21を版胴2の下方で版胴2の回転と同期させてY方向に移動させる。
【0021】
基材22の位置合わせは、詳細は後述するが、定盤駆動装置14が印刷定盤21をX方向と、Y方向と、θ方向とに移動させて行われる。
この実施の形態による印刷定盤21は、基材22を吸着する吸着機構(図示せず)を備えている。この吸着機構は、印刷定盤21の上面に開口する多数の空気吸引口から空気を吸引する構成のものである。
【0022】
印刷定盤21が基材受け渡し位置と印刷位置との間で移動するときの移動経路の上方には、第1のカメラ15が配置されている。
第1のカメラ15は、図示していない支持部材によって基台4に対して固定されており、印刷定盤21の上に載せられた基材22の複数の位置決め用マーク(図示せず)を上方から撮像する。第1のカメラ15によって位置決め用マークを撮像し、画像処理することにより、印刷定盤21の基準位置に対する基材22のずれ量を検出することができる。定盤駆動装置14は、印刷定盤21をX方向と、Y方向と、θ方向とに移動させ、位置決めマークに基づく基材22の実際の基準位置を、定盤駆動装置14の予め定めた真の基準位置に一致させ、ずれ量を0にする。このように実際の基準位置が真の基準位置と一致することにより、基材22の版胴2に対する位置が調整される。
【0023】
図1において第1のカメラ15の上方には、版保持装置23が配置されている。版保持装置23は、版胴2に取付けられる版11を一時的に保持するためのもので、版胴2の外周面の近傍に位置付けられる状態で版供給装置24(
図4参照)によって移動可能に支持されている。版保持装置23は、
図1に示すように、版11を水平状態として版胴2の上端部と並べて保持する。
版保持装置23は、
図4に示すように、版胴2に取付けられる以前の版11が載置される平坦な版載置面25を有している。
【0024】
この実施の形態による印刷機1に使用する版11は、デジタルインキングに用いられるシリコンゴム製の凹版である。版載置面25には、吸着装置26の多数の空気吸引口27が開口している。この吸着装置26は、空気吸引口27から空気を吸引する構成のものである。版載置面25に載置された版11は、この吸着装置26によって版保持装置23に吸着されて保持される。すなわち、版保持装置23は、版11を吸着して保持する機能を有している。版11は、
図4に示すように、版胴2に近接する一端部11aが版保持装置23から版胴2側に突出する状態で版保持装置23に保持される。
【0025】
版保持装置23の上方には、
図1に示すように、第2のカメラ16が配置されている。この第2のカメラ16は、図示していない支持部材によって基台4に対して固定されており、版保持装置23に保持された版11を上方から撮像する。この実施の形態においては、この第2のカメラ16によって、本発明でいう「カメラ」が構成されている。この第2のカメラ16は、版11の位置決め用マーク28(
図4参照)が撮像範囲内に入る状態で撮像する。位置決めマーク28は、版11におけるX方向に離間した2箇所に設けられている。この実施の形態による第2のカメラ16は、一度に2つの位置決めマーク28,28を撮像可能なものが用いられている。なお、少なくとも2個の第2のカメラ16を使用し、各カメラでカメラ毎の位置決め用マーク28を撮像する構成を採ることもできる。
第2のカメラ16によって版11の位置決め用マーク28を撮像し、画像処理することにより、版保持装置23に対する版11の位置を検出することができる。
【0026】
版保持装置23を支持する版供給装置24は、後述する第1および第2の機能を有している。
第1の機能は、第2のカメラ16によって撮像された版11の画像に基づいて版保持装置23を版載置面25に沿う方向に移動させ、版胴2に対する版11の位置を調整する機能である。ここでいう版載置面25に沿う方向とは、X方向と、Y方向と、θ方向である。版供給装置24は、版11の位置を調整するにあたって、版保持装置23をX方向と、Y方向と、θ方向とに移動させ、位置決めマーク28に基づく版11の実際の基準位置を、版供給装置24の予め定めた真の基準位置に一致させる。この実際の基準位置が真の基準位置と一致することにより、版11が版胴2に対して所定の位置に位置決めされる。この位置決め状態における版11のX方向およびY方向の位置と、θ方向の角度は、位置決め状態の版11を版胴2に向けて移動させることにより版11が版胴2に正しく装着される位置および角度である。
【0027】
第2の機能は、版胴2に対する版11の位置が調整された状態で版保持装置23を版胴2に向けてY方向に移動させ、版11を版胴2によって保持可能な供給位置に供給する機能である。版保持装置23が移動するY方向とは、版胴2の外周面の最上部に近接する方向であって、版胴2の外周面の最上端に接する接線に沿う方向である。また、上述した供給位置とは、版11の一端部が版胴2の前側爪部材7と爪台10との間に挿入される位置である。前側爪部材は、版保持装置23が版胴2に向けて移動するときには、
図5に示すように、予め非クランプ位置に揺動され、版保持装置23が停止した後にクランプ位置に揺動する。版保持装置23が供給位置に停止することによって、版11がX方向およびY方向と、θ方向とにおいて、前側爪部材7と爪台10との間で位置決めされる。
【0028】
版胴2の上方近傍には、インクジェット装置18のインクジェットヘッド3が配置されている。インクジェット装置18は、インクジェットヘッド3から本発明でいう「機能性溶液」としての導電溶液(図示せず)を版11の凹部に供給するものである。導電溶液が版11の凹部から基材22に転写されて固化することによって、基材22上の機能層となる。
【0029】
インクジェットヘッド3は、版胴2との間の距離と、X方向の位置とを変更可能な状態で版胴2の上方に設けられている。このインクジェットヘッド3は、図示してはいないが、X方向に所定の間隔をおいて並ぶ状態で複数設けられている。
インクジェットヘッド3の近傍には、版胴2の版11を撮像するための第3のカメラ17が配置されている。この第3のカメラ17は、図示していない支持部材によって基台4に対して固定されており、版胴2に装着された版11を上方から撮像する。この第3のカメラ17によって撮像された画像は、版11の位置を確認するために使用することができる。
【0030】
このように構成されたデジタルインキング方式の印刷機1においては、版保持装置23に版11が載せられて保持され、版供給装置24の上述した第1の機能によって版11のX方向およびY方向の位置と、θ方向の角度とが版胴2に正しく装着できる位置、角度に調整される。そして、版供給装置24の上述した第2の機能によって版保持装置23が版胴2に向けて移動することにより、版11が版胴2の版クランプ機構5に挿入される。
【0031】
版11は、一端部11aが版クランプ機構5の前側爪部材7と爪台10とに挟まれた状態で版胴2が回転することにより版胴2に巻き付けられる。そして、版11は、他端部が後側爪部材8と爪台10とに挟まれることによって、版胴2に外れることができない状態で装着される。
このように版11が版胴2に装着された後、インクジェットヘッド3から導電溶液が版11の凹部に供給される。このとき、版11がずれたり曲がったりすることなく版胴2に装着されているから、導電溶液が版11の凹部から出ることなく凹部内に正しく充填される。
【0032】
一方、基材22は、印刷定盤21に予め保持され、版胴2に対する位置調整が行われた状態で印刷定盤21とともに版胴2の下方に送られる。
この印刷機1による印刷は、版11に導電溶液が供給された後に版胴2を下降させて版11を基材22に接触させ、この状態で版胴2が回転するとともに基材22がY方向に移動することにより行われる。すなわち、版11の凹部内に充填されていた導電溶液が基材22の上面に転写される。この導電溶液は、図示していない乾燥装置で固化させられることによって、基材22に印刷によって形成された機能層になる。
【0033】
この印刷機においては、版11が版胴2に取付けられる直前の位置で、版11の位置調整が行われ、調整済みの状態で版11が版胴2に供給される。
したがって、この実施の形態によれば、版胴2に版11を正しい状態で取付けることが可能な印刷機を提供することができる。
【0034】
この実施の形態による版供給装置24は、版載置面25と直交する方向(上下方向)に延びる軸線を中心として版保持装置23を回動させる機能を有している。
このため、版胴2に対する版11の傾斜を修正することが可能になるから、版11がずれたり曲がったりすることなく版胴2に取付られる印刷機を提供することができる。
【0035】
この実施の形態による第2のカメラ16は、版胴2の軸線方向に離間した少なくとも2箇所を撮像可能に構成されている。このため、版11の位置を画像処理によって正確に求めることができるから、位置調整を精度よく行うことが可能になる。
【0036】
この実施の形態による版保持装置23は、版胴2の最上端に接する接線に沿って版胴2に近接する方向に移動可能であり、版保持装置23が版胴2に向けて移動することにより版11が前記版胴2に供給される構成が採られている。
このため、版供給装置24によって版11が版保持装置23とともに移動する方向と、版胴2の版クランプ機構5に版11を挿入する方向とが一致するから、版11を正確に版クランプ機構5に挿入でき、版胴2で版11を正しく保持することが可能になる。
【0037】
この実施の形態による版保持装置23は、版11を吸着して保持する機能を有している。このため、版11の位置を調整するときに版11が版保持装置23に対して不必要に移動することがないから、位置調整の精度が高い印刷機を提供することができる。
【0038】
この実施の形態による版胴2は、版11を保持する部分(爪台10)で版11の先端部を吸着して保持する機能を有している。このため、この実施の形態によれば、版胴2において版11を保持するときに版11の先端部を吸着してから爪部材で挟んで保持するため、版11が不必要に移動することがないから、位置調整が行われた状態を保ちながら、版11が版胴2に高い精度で保持される。したがって、より一層版11の位置精度が高い印刷機を提供することができる。
【0039】
この実施の形態による印刷機は、版胴2の外周面と対向するインクジェットヘッド3を備え、このインクジェットヘッド3によって版胴2の版11に機能性溶液を塗布するデジタルインキング方式のものである。このため、この実施の形態によるデジタルインキング方式の印刷機は、機能性溶液を高い精度で版11に塗布できるから、精度が高い電子デバイスを製造できるものとなる。
【0040】
上述した実施の形態においては本発明をデジタルインキング方式の印刷機に適用する例を示した。しかし、本発明は、このような限定にとらわれることはなく、版11が着脱可能に取付けられる版胴2を用いて電子デバイスに機能層を印刷する印刷機であれば、どのような印刷機にも適用可能である。例えば、本発明は、ダイレクトグラビア印刷機にも適用可能である。
【0041】
また、上述した実施の形態においては版胴から基材へ印刷する構成で示したが、それに限るわけではなく、版胴と基材の間にゴム胴などの中間転写材が構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1…印刷機、2…版胴、3…インクジェットヘッド、11…版、15…第1のカメラ、16…第2のカメラ、17…第3のカメラ、22…基材、23…版保持装置、24…版供給装置、25…版載置面。