(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記把持部は、第1突出部分と、前記第1突出部分に向かい合って形成された第2突出部分とを有し、前記第1突出部分と前記第2突出部分の間には、前記溝部分が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の体温計。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の耳式の体温計は、プローブの先端に赤外線センサが配置されている。この赤外線センサは、正しい体温の値を取得するために、鼓膜に向くようにして鼓膜とその周辺組織からの赤外線量が得られるように、耳穴に装着しなければならない。
【0006】
耳式の体温計のプローブの形状は、大人の左右の耳の耳穴の形状に合わせるために、左右別々になっている。これは、大人の左右の耳穴の外耳道が、別々の左右対称の曲り形状を有しているからである。プローブの形状は、大人の左右の耳穴の異なる2つの左右対称の曲り形状に対応するように、左右の体温計のプローブは、ミラー形状(左右対称形状)にする必要がある。
【0007】
しかも、大人用の体温計のプローブを耳穴の外耳道に挿入して装着する時には、プローブの方向を限定できるように軸が設けられており、この軸が「耳珠」と「耳介」の間に通ると、プローブは正しい位置に装着されたことになる。また、このようにプローブは、軸を有する構造とすることで、プローブが正しい位置に装着されたことを視覚的に確認できる。
【0008】
一方、子供の耳穴のサイズは、大人の耳穴のサイズに比べて小さく、しかも子供の耳穴の外耳道の曲り形状は、大人の耳穴の外耳道の曲り形状に比べて小さい。このため、現状用いられている大人用の耳式の体温計のプローブは、子供(例えば4才から12才)の耳穴の外耳道には、挿入して装着することはできない。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、子供の耳の耳穴に、容易にしかも確実に装着して、外れないように安定した状態で連続して体温の測定が可能な体温計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を達成するため、請求項1に記載の体温計は、患者の耳の鼓膜の温度を非接触で測定する赤外線センサを有し、前記
耳の耳穴に装着されるプローブと、前記赤外線センサに接続され、前記プローブから導き出されている信号ケーブルとを備え、前記プローブには、前記プローブを前記耳の耳珠の内側に入れる際に把持する把持部が設けられ、前記把持部は、前記信号ケーブルを湾曲させた状態に保持して前記信号ケーブルの湾曲部を前記耳の耳甲介腔部内に這わすための溝部分を有することを特徴とする。
【0011】
請求項1に記載の体温計では、手技者は、把持部を用いてプローブを耳穴に装着することができる。しかも、信号ケーブルは、把持部の溝部分により保持することで、信号ケーブルの湾曲部は、耳の耳甲介腔部内には這わせて、プローブは、信号ケーブルとともに耳に保持することができる。従って、体温計は、子供の耳の耳穴に、容易にしかも確実に装着して、外れないように安定した状態で連続して体温の測定が可能である。
【0012】
請求項2に記載の体温計では、前記溝部分は、前記信号ケーブルの一部分を挟み込んで保持することを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の体温計では、信号ケーブルは、溝部分に挟み込んで保持するだけで、信号ケーブルを湾曲させた状態で簡単に耳の耳甲介腔部内に這わすことができる。
【0014】
請求項3に記載の体温計では、前記把持部は、第1突出部分と、前記第1突出部分に向かい合って形成された第2突出部分とを有し、前記第1突出部分と前記第2突出部分の間には、前記溝部分が形成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の体温計では、把持部の溝部分は、第1突出部分と第2突出部分により形成されているだけであり、簡単な構造でありながら、第1突出部分と第2突出部分は、信号ケーブルを保持し、しかも手技者が第1突出部分と第2突出部分を指で把持できる。
【0016】
請求項4に記載の体温計では、前記溝部分は、前記信号ケーブルの
一部分を円弧形状またはV字形状に曲げて保持することを特徴とする。
【0017】
請求項4に記載の体温計では、溝部分は、円弧形状またはV字形状に形成するだけで、簡単な構造でありながら、第1突出部分と第2突出部分は、信号ケーブルを保持し、しかも手技者が第1突出部分と第2突出部分を指で把持できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、子供の耳の耳穴に、容易にしかも確実に装着して、外れないように安定した状態で連続して体温の測定が可能な体温計を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を用いて、本発明を実施するための形態(以下、実施形態と称する)を説明する。
【0021】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態の体温計を、患者の耳に装着した状態を示す図である。
図2は、
図1に示す体温計1を患者の耳に装着した状態を示す側面図である。
【0022】
図1と
図2に示している耳100は、患者の右耳である。
図1では、矢印を用いて、人体の上方向UP、下方向DN、右方向RD、そして左方向LDを示している。左耳の構造と右耳の構造とは、対称な構造を有する。
【0023】
図1と
図2に示す体温計1は、患者の体温を連続して非接触で測定可能な連続測定型の耳式の体温計である。この体温計1は、赤外線センサ10を有しており、体温計1を耳100の耳穴である外耳道104に装着する。赤外線センサ10は、患者の耳100の内部の鼓膜105およびその周辺組織からの赤外線量を非接触で測定する。
【0024】
この体温計1は、手術室における手術時や、集中治療室における体調管理時等で、患者の体温管理の指標として、非接触で連続して患者の体温を測定する。体温計1は、好ましくは子供(例えば4才から12才)の患者の体温管理に用いられる。この体温計1は、患者の右側の耳100と、右側の耳100とは対称な構造を有する左側の耳の両方に共通して、用いることができる構造を有している。
【0025】
まず、体温計1の構造を説明する前に、
図1を参照して耳100の構造を、簡単に説明する。
【0026】
図1に示すように、耳100は、外耳101と、中耳102と、内耳103に区分できる。外耳101には耳穴である外耳道104があり、外耳101と中耳102の境界には鼓膜105がある。また、外耳101には、
図1と
図2に示す耳介106と、耳垂107と、耳珠108があり、耳介106の中央には、耳甲介腔部109がある。
【0027】
次に、
図3ないし
図6を参照して、体温計1の好ましい構造例を説明する。
【0028】
図3は、
図1と
図2に示す体温計1を示す斜視図である。
図4は、
図3に示す体温計1をM方向から見た側面図である。
【0029】
図5は、
図3に示す体温計1をN方向から見た斜視図である。
図6は、
図3に示す体温計1において、信号ケーブル20をループ状に湾曲させた状態で保持している様子を示す斜視図である。
【0030】
図3と
図5に示すように、体温計1は、プローブ2と、イヤーパッド3と、信号ケーブル20を有する。プローブ2は、本体部4と、この本体部4に突出して設けられた挿入部5と、この挿入部5に取付けられた赤外線センサ10を有している。イヤーパッド3は、挿入部5と赤外線センサ10を覆っている。イヤーパッド3の先端部には、赤外線を通すために円形の開口部3Pが設けられている。この円形の開口部3Pは、赤外線センサ10に対応して位置である。
【0031】
図3に示す赤外線センサ10は、信号ケーブル20の一端部に電気的に接続されている。
図1に示すように、信号ケーブル20の他端部は、コントローラ(制御部)200に電気的に接続されている。このコントローラ200は、モニタ250に電気的に接続されており、このモニタ250はバイタルモニタであり、モニタ250としては、例えば液晶表示装置を採用できる。
【0032】
これにより、
図1に示す鼓膜105およびその周辺組織から放射される赤外線が、プローブ2のイヤーパッド3の開口部3Pを通過して、赤外線センサ10に到達する。すると、赤外線センサ10は、鼓膜105およびその周辺組織から放射される赤外線量に応じた検知信号SSを、信号ケーブル20を通じて、コントローラ200に送る。
【0033】
このコントローラ200は、赤外線センサ10に入射した赤外線量に対応する検知信号SSに基づいて、温度に換算して、患者の体温値とする。モニタ250は、コントローラ200からの指令により、好ましくは患者の各種のバイタル値とともに患者の体温値を表示する。
【0034】
図1と
図2に示す体温計1とコントローラ200とモニタ250は、耳体温検知装置300を構成している。この耳体温検知装置300は、手術室における手術時や、集中治療室における体調管理時等で、非接触で連続して体温を測定するために、手術室や集中治療室等に置くことができる。
【0035】
各部の材質例について説明する。
図5に示すプローブ2は、好ましくはプラスチック製であり、例えばABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン)により作られている。
【0036】
イヤーパッド3は、プローブ2の挿入部5を覆っている筒状のプローブカバーである。このイヤーパッド3は、耳100に優しい柔らかい材質、例えばシリコーンにより作られている。
【0037】
信号ケーブル20の被覆材の材質は、耳に優しく柔軟性のある材質、例えばPVC(ポリ塩化ビニル)であり、
図1と
図2に示すように、信号ケーブル20は、耳甲介腔部109内において、湾曲部20Rをループ状に無理なく形成させることができる。
【0038】
次に、
図3から
図6を参照して、体温計1の構造を詳しく説明する。
【0039】
図3と
図5に示すように、体温計1のプローブ2の本体部4は、第1部材6と第2部材7を組み合わせて作られている。第1部材6は、膨らんだ形状であり、例えば卵の殻を縦に半割したような部材である。
【0040】
第1部材6の外形形状は、
図4に示すように、第1円弧部分6Aと、2つの第2円弧部分6B、6Cと、第3円弧部分6Dを有する。第2部材7は、この第1部材6に合わせた外形形状を有しており、比較的平坦な部材である。第2部材7からは、円柱状の挿入部5が突出して形成されている。
【0041】
図4に示すように、プローブ2の本体部4は、外面部にケーブル保持部30を有している。このケーブル保持部30をも含めた本体部4は、子供の左右の耳のいずれにも共通して装着できるようにするために、長手方向の中心線CLに関して左右対称形状になっている。
【0042】
これにより、プローブ2は、子供の左側の耳であっても、子供の右側の耳100であっても、はめ込んで装着可能であり、プローブ2は、子供の左右の耳に対して、共通して装着できる形状を有している。
【0043】
本体部4を含むプローブ2は、
図1に示すように、外耳道104の入口付近に挿入して装着でき、しかも本体部4を含むプローブ2は、
図2に示すように、耳珠108の内側に収めることができる。しかし、
図1に示すようにプローブ2を装着した状態では、ケーブル保持部30は、外耳道104の外側において突出している。
【0044】
図5に示すように、第1部材6の第4円弧部分6Dは、信号ケーブル20を本体部4の外部へ導き出すための開口部6Eを有する。信号ケーブル20の一端部は、赤外線センサ10に電気的に接続されて、本体部4の中を通り、開口部6Eから本体部4の外側に導き出されている。
【0045】
図3と
図4に示すように、本体部4は、ケーブル保持部30を有する。このケーブル保持部30は、本体部4の第1部材6から突出して設けられている。
図3に示すように、プローブ2の本体部4と挿入部5を通る軸を中心軸Lとすると、このケーブル保持部30は、この中心軸Lに沿って、しかも挿入部5とは反対の方向に突出して設けられている。この中心軸Lは、長手方向の中心線CLと交差している。
【0046】
図3と
図4に示すケーブル保持部30は、
図2に示すように、信号ケーブル20の一部分20Aを挟み込んで保持するための溝部分40を有する。
図3と
図4に示すように、ケーブル保持部30は、第1突出部分31と、第1突出部分31に向かい合って形成された第2突出部分32とを有する。第1突出部分31と第2突出部分32の間には、溝部分40が形成されている。
【0047】
しかも、
図4に例示するように、第1突出部分31と第2突出部分32は、好ましくは円弧形状に形成されている。
図4に示すように、この溝部分40は、CLA方向に向けて膨らむようにして湾曲して形成されている。
【0048】
図4に示す溝部分40の溝幅Wは、この第1突出部分31と第2突出部分32の長さ方向に沿って一定である。このように、第1突出部分31と第2突出部分32は、円弧形状に形成されており、溝部分40の溝幅Wはどこの部分でも一定である。
【0049】
図2と
図6に示すように、信号ケーブル20の一部分20Aは、この溝部分40に挟み込んで保持する。これにより、
図2と
図1に示すように、信号ケーブル20の部分をループ状の湾曲部20Pに形成できる。この湾曲部20Pは、耳100の耳甲介腔部109内において、耳甲介腔部109の形状に沿って這わすようにして収容させることができる。
【0050】
しかも、この第1突出部分31と第2突出部分32から成るケーブル保持部30は、
図3と
図4に示すように、手技者が例えば親指F1と人差し指F2で挟んで保持するための「ツマミ」としての把持部45としても機能する。すなわち、ケーブル保持部30の機能は、把持部45の機能と兼用している。
【0051】
これにより、
図3と
図4に示すように、手技者は、第1突出部分31と第2突出部分32のそれぞれの外側面を、親指F1と人差し指F2で挟んで保持できる。
【0052】
第1突出部分31と第2突出部分32のそれぞれの外側面を、親指F1と人差し指F2で挟んで保持することで、
図1に示すように、手技者は、プローブ2を外耳道104内に、容易にしかも確実に挿入して装着することができる。このように装着した場合には、赤外線センサ10は、鼓膜105から離れた位置で、対面して位置決めされる。
【0053】
次に、上述した体温計1の使用例を説明する。
【0054】
図1に示す体温計1とコントローラ200とモニタ250から成る耳体温検知装置300は、手術室における手術時や、集中治療室における体調管理時等で、子供の患者の体温を非接触で連続して非侵襲で測定するために、手術室や集中治療室等に置かれる。
【0055】
例えば、手技者は、予め、
図6に示すように、信号ケーブル20の湾曲部20Rで示すように、信号ケーブル20をループ状に曲げながら、信号ケーブル20の一部分20Aを、第1突出部分31と第2突出部分32の間の溝部分40に沿うようにして挟み込んでおく。
【0056】
手技者は、
図3に示すように、
図2に示すように、プローブ2のケーブル保持部30を把持部45として用いて、例えば親指F1と人差し指F2で把持部45の第1突出部分31と第2突出部分32を挟んで持つ。そして、手技者は、
図1に示すように、イヤーパッド3を外耳道104内に挿入するようにして、プローブ2の本体部4を、
図2に示すように、耳珠108の内側に収める。
【0057】
このように、手技者は、把持部45を持ってプローブ2の本体部4を耳珠108の内側に収めて装着することができ、この装着操作を容易にしかも確実に行うことができる。本体部4を耳珠108の内側に収めて装着すると、赤外線センサ10は、鼓膜105に対して間隔をおいて対面するようにして配置される。
【0058】
この際に、手技者は、
図2に示すように、信号ケーブル20を、溝部分40に沿ってG方向にわずかにスライドさせることにより、信号ケーブル20の湾曲部20Rの大きさは、耳甲介腔部109のサイズに合わせて調整することができる。これにより、信号ケーブル20の湾曲部20Rは、耳甲介腔部109内に収まって耳甲介腔部109内に保持できる。
【0059】
図4に示すように、この溝部分40は、CLA方向に向けて膨らむようにして湾曲して形成されている。従って、溝部分40は、信号ケーブル20の一部分20Aを曲げて保持して、信号ケーブル20の一部分20Aは、溝部分40により少し円弧形状に、強制的に曲げられている。このため、信号ケーブル20の一部分20Aは、溝部分40からは容易には外れない。
【0060】
しかも、
図6に示すように、円弧形状に曲げられている溝部分40の効果により、信号ケーブル20の別の一部分20Sと、一部分20Aに力を加えることで、湾曲部20Rは、ほぼ円形状に形成することができる。このため、信号ケーブル20の湾曲部20Rは、耳甲介腔部109の形状に合わせることができる。
【0061】
このようにして、信号ケーブル20の湾曲部20Rは、耳100の耳甲介腔部109内において、個々の子供の患者の耳甲介腔部109の形状や大きさに這わすようにして収容することができる。
【0062】
これにより、体温計1が外耳道104から外れたり、ずれたりすることが無くなる。体温計1の赤外線センサ10は、手術室における手術時や、集中治療室における体調管理時等で、長時間安定して鼓膜105およびその周辺組織からの赤外線量の検知を実施することができる。
【0063】
なお、
図1と
図2に示すように、プローブ2の本体部4が耳珠108の下側(内側)に入って、信号ケーブル20の湾曲部20Rが正しく耳甲介腔部109に装着できるようにするために、手技者は、把持部45を持ってプローブ2の位置を調整することができる。
【0064】
通常の大人用の耳式体温計のプローブの形状には、左右の別がある。このようにプローブの形状に左右の別があるのは、プローブ先端にある赤外線センサが鼓膜に向くようにプローブを装着して正しい温度を取得できなければならないためである。そのために、大人用の耳式体温計のプローブとしては、左右の耳の外耳道の2つの異なる曲り形状に対応することができる2つの異なる形状のものを用意する必要がある。つまり、左右の耳では、プローブ形状がミラー形状になるために、プローブ形状には左右の別が必要である。
【0065】
大人用の体温計は、耳穴に装着時にプローブの方向を限定できるように軸を設けて、「耳珠」と「耳介」の間に、この軸が通ると、体温計のプローブは正しい位置に装着されたことになり、この正しい位置に装着されたことが視覚的に確認できる構造である。
【0066】
これに対して、患者が子供(例えば4才から12才)であると、患者が大人である場合とは異なり、大人に比べて耳穴が小さいことから耳穴の曲り形状の程度は小さい。子供用のプローブ2の本体部4には、
図2の耳珠108の下側(内側)に入れて装着する時のガイドとなる軸はない。
【0067】
このため、子供用の体温計1のプローブ2では、プローブ2が正しい位置に装着できているかどうかを視覚的に分かるように示すことと、プローブ2から出る信号ケーブル20を耳100においてうまく引回しの処理ができることと、そして体温計1を耳100に安定して保持することが、必要である。
【0068】
子供の耳穴の曲り形状の程度は、大人の耳穴の曲り形状の程度に比べて小さく、本発明の第1実施形態の体温計1のプローブ2は、大人用のプローブに比べて小型である。子供の左右の耳の外耳道は1つの同じ曲り形状であるとして、体温計1のプローブ2は、1つの曲り形状に対応できれば、プローブ2の赤外線センサ10は、
図1に示す鼓膜105の方向に十分に向けることができる。このため、プローブ2の形状は、左右の耳に対する区別を必要とせずに、体温計1のプローブ2は、1つの形状のものを共通化して用意すればよい。
【0069】
ただし、
図1に示す子供用の体温計1のプローブ2の形状を左右共通化することで、子供用の体温計1のプローブ2を外耳道104に装着する方向を明確化できる軸を設けることが容易ではなくなる。体温計1は、好ましくは使い捨ての単回使用品である。
【0070】
そこで、本発明者らは、体温計1はより簡単な形状であっても、体温計1のプローブ2を外耳道104に、視覚で確認しながら容易にしかも確実に装着できないかを考察した。この結果として、上述したように、
図3に例示するように、手技者が例えば親指F1と人差し指F2で第1突出部分31と第2突出部分32から成るケーブル保持部30を、挟んで保持して、プローブ2を外耳道104内に装着するための「ツマミ」としての把持部45としても機能させている。
【0071】
なお、本発明者らは、子供用の体温計のプローブの形状については、左右の耳の構造に対応して左右に倒れる軸を作ることも考えられる。しかし、子供用の体温計のプローブの容積が小さいので、構造的に無理が生じることと、製造方法が複雑になり、コスト上昇の要因となってしまうおそれがある。このため、プローブの形状については、左右に倒れる軸を作ることは、採用していない。
【0072】
そこで、プローブ2の本体部4が耳珠108の下に入り、体温計1が正しく動かないように安定して耳甲介腔部109に装着できるようにするために、手技者は、指で挟んで把持部45を持つことにより、体温計1は、装着時にガイドとなる軸がなくても、体温計1のプローブ2を正しい装着位置に、視覚的に確認しながら簡単にしかも確実に装着することができる。
【0073】
具体的には、手技者が、プローブ2を正しい位置の装着できているかどうかを、視覚的に確認できるようにするために、
図2に示すように、信号ケーブル20の湾曲部20Rが、「耳珠108」と「耳介106」の間の「耳甲介腔部109」内を通ることが、正しいプローブ2の装着位置となる。しかも、
図2に示すように、把持部45は、プローブ2の装着時に、円形の破線領域RRで示すように、信号ケーブル20が「耳珠108」と「耳介106」の間に向かうように、若干顔前側に角度θをつけることを行う。
【0074】
このようにして、左右の耳100に対応して体温計1を、正しい位置に装着するために、すでに説明したように、ケーブル保持部30を兼ねる把持部45の溝部分40は、円弧形状に形成されている。信号ケーブル20の一部分20Aが、このケーブル保持部30の溝部分40内にはめ込んで保持されると、信号ケーブル20はケーブル保持部30から抜けない。従って、プローブ2は、子供の耳に長時間にわたって安定して装着できる。
【0075】
このようにして、手技者には、体温計1のプローブ2が正しい位置に装着できているかどうかを視覚的に示すことができる。
【0076】
また、プローブ20の位置が装着時にずれが生じると、得られる体温の値が変わったり、体温の値に変動を起こす要因となる。このため、信号ケーブル20はケーブル保持部30から抜けず、プローブ2は長時間にわたって安定して装着できる必要がある。
【0077】
信号ケーブル20が、強い力で引かれることに対する抜け止め対策としては、
図2に示すように、信号ケーブル20の途中部分は、貼り付けのための医科用のテープTPにより、患者の顔に貼り付けて保持しておく。これにより、信号ケーブル20は、強い力が加わっても、ケーブル保持部30からは抜けず、しかもプローブ2が耳100から抜けてしまうのを防止することができる。
【0078】
一方、患者の小さな動きや体位を変える等で、プローブ2が耳100においてズレたり外れたりすることを無くすために、信号ケーブル20のループ状の湾曲部20Rを、耳甲介腔部109のサイズと形状に合わせて耳甲介腔部109内に這わすようにして収める。しかも、信号ケーブル20の一部分20Aを、第1突出部分31と第2突出部分32の間の溝部分40に挟み込む。これにより、患者の小さな動きや体位を変えることがあっても、プローブ2がズレたり外れたりすることを防げ、体温計1は耳100において安定して保持できる。
【0079】
このようにして、プローブ2から出る信号ケーブル20を耳100においてうまく引回しの処理ができ、しかも体温計1を耳100に安定して保持することができる。
【0080】
図2に示す第1突出部分31と第2突出部分32の間の溝部分40内に、信号ケーブル20の一部分20Aを挟み込んで保持するが、この信号ケーブル20を挟み込んで止める位置は、信号ケーブル20の長手方向Gに沿って任意にスライド調整できる。このため、手技者は、信号ケーブル20のループ状の湾曲部20Rの大きさは、患者の耳甲介腔部109の大きさに合わせて、調整することができる。
【0081】
上述した本発明の第1実施形態の体温計1は、患者の耳100の鼓膜105の温度を非接触で測定する赤外線センサ10を有し、耳穴に装着されるプローブ2と、赤外線センサ10に接続され、プローブ2から導き出されている信号ケーブル20を備える。
【0082】
プローブ2には、プローブ2を耳100の耳珠108の内側に入れる際に把持する把持部45が設けられている。把持部45は、信号ケーブル20を湾曲させた状態に保持して信号ケーブル20の湾曲部20Rを耳100の耳甲介腔部109内に這わすための溝部分40を有する。
【0083】
これにより、手技者は、把持部45を用いてプローブ2を耳穴に装着することができる。しかも、信号ケーブル20は、把持部45の溝部分40により保持することで、信号ケーブル20の湾曲部20Rは、耳100の耳甲介腔部109内には這わせて、プローブ2は、信号ケーブル20とともに耳100に保持することができる。
【0084】
従って、体温計1は、子供の耳100の耳穴に、容易にしかも確実に装着して、外れないように安定した状態で連続して体温の測定が可能である。
【0085】
次に、本発明の他の実施形態を説明するが、他の実施形態の箇所が、本発明の第1実施形態の対応する箇所と同様である場合には、同じ符号を記して、その説明を省略する。
【0086】
<第2実施形態>
図7は、本発明の第2実施形態を示している。
【0087】
図4に示す本発明の第1実施形態では、把持部45を兼ねるケーブル保持部30の溝部分40は、円弧形状に形成されている。
【0088】
これに対して、
図7に示す体温計1Aでは、把持部45を兼ねるケーブル保持部30は、V字形状に形成された第1突出部分31Aと、第2突出部分32Aを有している。このため、第1突出部分31Aと第2突出部分32Aの間の溝部分40Aは、V字形状になっている。
【0089】
これにより、
図2に示す場合と同様にして、信号ケーブル20の一部分20Aは、この溝部分40Aに挟み込んで保持することで、信号ケーブル20を耳100の耳甲介腔部109内には這わすようにして収容させることができる。
【0090】
<第3実施形態>
図8は、本発明の第3実施形態を示している。
【0091】
図8に示す体温計1Aでは、把持部45を兼ねるケーブル保持部30は、直線状に形成された第1突出部分31Bと、第2突出部分32Bを有している。このため、第1突出部分31Bと第2突出部分32Bの間の溝部分40Bは、直線状になっている。しかし、この第2突出部分32Bの内側には、突起39が設けられている。
【0092】
これにより、
図2に示す場合と同様にして、信号ケーブル20の一部分20Aは、この溝部分40Bに挟み込んで突起39を超えて押し込むことで、信号ケーブル20を耳100の耳甲介腔部109内には這わすようにして収容させることができる。
【0093】
本発明の実施形態の体温計1は、患者の耳100の鼓膜105の温度を非接触で測定する赤外線センサ10を有し、耳穴に装着されるプローブ2と、赤外線センサ10に接続され、プローブ2から導き出されている信号ケーブル20と備え、プローブ2には、プローブ2を耳100の耳珠108の内側に入れる際に把持する把持部45が設けられ、把持部45は、信号ケーブル20を湾曲させた状態に保持して信号ケーブル20の湾曲部20Rを耳100の耳甲介腔部109内に這わすための溝部分40を有する。
【0094】
これにより、手技者は、把持部45を用いてプローブ2を耳穴に装着することができる。しかも、信号ケーブル20は、把持部45の溝部分40により保持することで、信号ケーブル20の湾曲部20Rは、耳100の耳甲介腔部109内には這わせて、プローブ2は、信号ケーブル20とともに耳100に保持することができる。
【0095】
従って、体温計1は、子供の耳100の耳穴に、容易にしかも確実に装着して、外れないように安定した状態で連続して体温の測定が可能である。
【0096】
把持部45は、信号ケーブル20の一部分20Aを挟み込んで保持するための溝部分40を有する。これにより、信号ケーブル20は、溝部分40に挟み込んで保持するだけで、信号ケーブル20を湾曲させた状態で簡単にしかも確実に、耳の耳甲介腔部109内に這わすことができる。
【0097】
把持部45は、第1突出部分31と、第1突出部分31に向かい合って形成された第2突出部分32とを有し、第1突出部分31と第2突出部分32の間には、溝部分40が形成されている。これにより、溝部分40は、第1突出部分31と第2突出部分32により形成されているだけであり、簡単な構造でありながら、第1突出部分31と第2突出部分32は、信号ケーブル20を保持し、しかも手技者は、第1突出部分31と第2突出部分32を指で把持できる。
【0098】
溝部分40は、信号ケーブル20の一部分20Aを円弧形状またはV字形状に曲げて保持する。これにより、溝部分40は、円弧形状またはV字形状に形成するだけで、簡単な構造でありながら、第1突出部分31と第2突出部分32は、信号ケーブル20を保持し、しかも手技者は、第1突出部分31と第2突出部分32を指で把持できる。
【0099】
以上、実施形態を挙げて本発明を説明したが、各実施形態は一例であり、特許請求の範囲に記載される発明の範囲は、発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更できるものである。本発明の各実施形態は、任意に組み合わせることができる。
【0100】
例えば、プローブ2の形状は、図示例に限定されず、他の形状であっても良い。
【0101】
把持部45(ケーブル保持部30)の第1突出部分31と第2突出部分32のそれぞれの外面には、指で持った際に滑り難くするために、滑り止めの凹凸部分を形成しても良い。