(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6503243
(24)【登録日】2019年3月29日
(45)【発行日】2019年4月17日
(54)【発明の名称】切替開閉器
(51)【国際特許分類】
H01H 9/02 20060101AFI20190408BHJP
H01H 21/00 20060101ALI20190408BHJP
H01H 31/02 20060101ALI20190408BHJP
H01H 31/28 20060101ALI20190408BHJP
【FI】
H01H9/02 D
H01H21/00 Z
H01H31/02 E
H01H31/28 A
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-130208(P2015-130208)
(22)【出願日】2015年6月29日
(65)【公開番号】特開2017-16790(P2017-16790A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2018年4月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 裕明
【審査官】
太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−090833(JP,A)
【文献】
特開2015−210982(JP,A)
【文献】
特開平10−149758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 9/00− 9/28
H01H 19/00−21/88
H01H 31/00−31/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向から対向配置された一対の固定接点と、両固定接点の間に配置されて任意の一方の固定接点に接触動作する可動接点を備えた可動接触子とを内部に配置すると共に、前記可動接点の接触先を切り替える操作手段と、前記可動接点に接続された入力端子と、前記一対の固定接点のそれぞれに接続された2つの出力端子とを外部に配置したケース部材を、左右方向に少なくとも2個連結して成る切替開閉器において、
複数設けられた前記可動接触子の間には、前記固定接点に対して接触/解離動作を連動させるための連動部材が配置されて成ることを特徴とする切替開閉器。
【請求項2】
前記連動部材は、隣接する前記ケース部材の一方に配置される第1連動部材と、他方に配置される第2連動部材とを有し、
前記第1連動部材は、一端に前記ケース部材内に配置された前記可動接触子を前後方向から挟持する挟持部を有すると共に、他端に前記ケース部材の側壁に設けられた孔を介して前記第2連動部材に係合する係合部を有する一方、
前記第2連動部材は、一端に前記ケース部材内に配置された前記可動接触子を前後方向から挟持する挟持部を有すると共に、他端に前記孔に軸支し、更に前記第1連動部材の前記係合部と係合する軸部を有することを特徴とする請求項1記載の切替開閉器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2系統ある接続先を切り替える切替開閉器に関する。
【背景技術】
【0002】
2系統ある接続先を切り替える従来の切替開閉器の構造に、特許文献1に開示されているものがある。これは、1接点を切り替える切替機構を備えたケースを接点数に応じて連結し、1つの開閉器を構成している。このように分割形成することで、2接点を同時に切り替える開閉器と3接点或いは4接点を同時に切り替える開閉器との部材を共通化でき、少ない部品点数で他種類の切替開閉器を実現できた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−90833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の切替開閉器は、切り替える接点数に合わせてケースを連結して筐体を構成するため、接点を切替操作する切替機構部も連結数分存在することになるが、操作ハンドルをケースをまたいで一体化することで1つのハンドル操作で複数の接点の切り替えを実施できた。
しかしながら、切替機構は独立しているため、操作部材に発生する僅かな傾きの違いや、可動接触子等の僅かな形状の違いにより、切り替え動作に僅かなズレが発生し、厳密には同時に動作しない問題があった。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、個々の接点の切替機構が独立していても、接点の切り替えが同時に実施される切替開閉器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、前後方向から対向配置された一対の固定接点と、両固定接点の間に配置されて任意の一方の固定接点に接触動作する可動接点を備えた可動接触子とを内部に配置すると共に、可動接点の接触先を切り替える操作手段と、可動接点に接続された入力端子と、一対の固定接点のそれぞれに接続された2つの出力端子とを外部に配置したケース部材を、左右方向に少なくとも2個連結して成る切替開閉器において、複数設けられた可動接触子の間には、固定接点に対して接触/解離動作を連動させるための連動部材が配置されて成ることを特徴とする。
この構成によれば、個々の可動接点の切替機構が独立していても、連動部材により互いを連動させることができ、可動接点の切り替えを同時に行うことができる。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の構成において、連動部材は、隣接するケース部材の一方に配置される第1連動部材と、他方に配置される第2連動部材とを有し、第1連動部材は、一端にケース部材内に配置された可動接触子を前後方向から挟持する挟持部を有すると共に、他端にケース部材の側壁に設けられた孔を介して第2連動部材に係合する係合部を有する一方、第2連動部材は、一端にケース部材内に配置された可動接触子を前後方向から挟持する挟持部を有すると共に、他端に孔に軸支し、更に第1連動部材の係合部と係合する軸部を有することを特徴とする。
この構成によれば、ケース部材の側壁に連動部材を軸支する孔を設ければよく、可動接触子が回動するエリア全体に亘り側壁を開口する必要がなく、従来の筐体形状を大きく変更することなく、連動部材を配置できる。また、側壁に設けた孔が連動部材の回動中心となるため、軸支する部材を別途設ける必要がない。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、個々の接点の切替機構が独立していても、連動部材により互いを連動させることができ、接点の切り替えを同時に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る切替開閉器の一例を示し、(a)は斜視図、(b)は平面図である。
【
図2】
図1の切替開閉器の構造説明図であり、(a)は手前のケース部材を外して内部を露出させた斜視図、(b)は更に手前の切替機構や端子部材を取り外して連動部材を露出させた斜視図である。
【
図3】
図1の切替開閉器の構造説明図であり、(a)は
図2(b)で露出した連動部材を取り除いた斜視図、(b)は更に手前のケース部材を取り外した斜視図である。
【
図5】連動部材を構成する第1連動部材の説明図で、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は背面図、(d)は平面図である。
【
図6】連動部材を構成する第2連動部材の説明図で、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は背面図、(d)は平面図である。
【
図7】連動部材と可動接触子の係合関係を示す説明図である。
【
図8】入力端子を一方の出力端子に接続した状態の切替開閉器の説明図であり、(a)は手前のケース部材を外して内部を露出させた斜視図、(b)は更にケース部材を外して中央の切替機構を露出させた斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係る切替開閉器の一例を示し、(a)は斜視図、(b)は平面図であり、3線から成る2系統の回路を切り替える3極対応の切替開閉器を示している。
図1において、1〜3は電線を接続する接続端子であり、1(1a〜1c)は内部の可動接点に接続されている入力端子、2(2a〜2c)は切替先2系統のうちの一方が接続される第1出力端子、3(3a〜3c)は2系統の他方が接続される第2出力端子である。また4は切替操作する操作ハンドルである。
入力端子1及び第1出力端子2は、切替開閉器のケース9の図示左側に配置され、第2出力端子3は図示右側に配置されている。以下、第1出力端子2側を前方、第2出力端子3側を後方として説明する。
【0011】
図1は入力端子1を出力端子2,3に接続しないオフ状態を示し、操作ハンドル4は中間位置に起立した状態にある。そして、後述するように操作ハンドル4を前方へ傾倒すると入力端子1と第1出力端子2とが電気的に接続され、後方へ傾倒すると入力端子1と第2出力端子3とが接続される。
【0012】
このように操作される切替開閉器のケース9は、ケース部材10を連結して形成され、ここでは4つのケース部材10a〜10dを連結して構成されている。このうち左側3部材(第1ケース部材10a、第2ケース部材10b、第3ケース部材10c)は、それぞれ1つの電路を切り替える切替機構が組み付けられており、3極が独立した筐体に組み付けられている。また、右端の第4ケース部材10dはケース9の右側部となる第3ケース部材10cの開放面を閉塞する閉塞板である。
尚、第1〜第3ケース部材10a〜10cは、側面を形成する側壁を左側の一方の面しか持たず、右側は開放されている。また、第2ケース部材10bと第3ケース部材10cとは同一形状のケース部材が使用される。
【0013】
図2は切替開閉器の構造説明図であり、
図2(a)は第4ケース部材10dを外した斜視図、
図2(b)は更に第3ケース部材10c内に組み付けられた開閉機構や端子部材を取り除いた斜視図である。
図2において、6は固定接点、7は可動接点、8は可動接触子、15は開閉機構を収容するフレームであり、固定接点6は前後から対向するように一対配置され、前側の固定接点6は第1出力端子2に接続され、後側の固定接点6は第2出力端子3に接続されている。そして、可動接点7は一対の固定接点6の間の中間位置に垂下するように配置された可動接触子8の下端両側に形成されている。
【0014】
そして、11bは複数収容されている可動接触子8を連動される連動部材11の一部を成す第2連動部材であり、複数(ここでは3つ)設けられている可動接触子8が同時に切替動作するよう設置されている。連動部材11は後述する第1連動部材11aとこの第2連動部材11bの2種類からなり、この2種類が組み合わせられてケース9内に収納されている。
【0015】
図3は同様に切替開閉器の構造説明図であり、
図3(a)は
図2(b)に示す第2連動部材11bを取り除いた斜視図、
図3(b)は更に第3ケース部材10cを取り除いた斜視図を示している。この
図3に示すように、第3ケース部材10c内に配置された第2連動部材11b(
図2に示す)は、第2ケース部材10b内に配置された第1連動部材11aに連結されており、互いに連動するよう配置されている。
図4はこの第1連動部材11aと第2連動部材11bの関係を示す斜視図であり、矢印Pで示す上部が一体化され連結される。
【0016】
図5は第1連動部材11a、
図6は第2連動部材11bの具体的形状を示し、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は背面図、(d)は平面図である。
第1連動部材11a、及び第2連動部材11bは、下部に可動接触子8を挟持する挟持溝111が形成された挟持部112を有している。そして、第1連動部材11aは、上部に第2連動部材11bに係合する係合凸部113が形成され、第2連動部材11bの上部には、第1連動部材11aの係合凸部113を収容して係合する係合凹部114が形成されている。
尚、この係合凹部114は円盤状突起115の内部に形成され、円盤状突起115はケース9の内部に配置されるケース部材10の側壁に形成された後述する透孔12に回動可能に嵌合し、回動軸を構成している。
【0017】
そして、ケース部材10a〜10dのうち、中間に配置されるケース部材10b,10cの側壁には、第1連動部材11aと第2連動部材11bとを連結させる透孔12が
図3(a)に示すように形成されている。この透孔12は、第2連動部材11bの円盤状突起115を収容する円形を成して、連動部材11の回動中心となる支持孔となっている。
【0018】
図7は、可動接触子8と連動部材11の係合関係を示す図であり、第2出力端子3側から見た説明図である。
図7において、17bは第2ケース部材10bの側壁、17cは第3ケース部材10cの側壁を示し、この側壁17b,17cに形成された透孔12に第2連動部材11bの円盤状突起115が嵌合し、透孔12を介して第1連動部材11aと第2連動部材11bとが連結されている。
【0019】
そして、図示右側の第1ケース部材10aに収容されている可動接触子8は、第1連動部材11aに挟持され、第2ケース部材10bに収容されている中央の可動接触子8は第1連動部材11aと第2連動部材11bとで左右から挟持され、第3ケース部材10cに収容されている図示左側の可動接触子8は第2連動部材11bに挟持されている。
このように各可動接触子8が連動部材11により挟持されることで、何れかの可動接触子8が回動を開始したら、他の可動接触子8も回動を開始する。
【0020】
図8は、可動接触子8を前方に回動して第1出力端子2の固定接点6に可動接点7を接触させた状態、即ち入力端子1と第1出力端子2とを電気的に接続した状態を示し、(a)は第4ケース部材10dを外して内部を露出させた状態、(b)は第3ケース部材10cを外して中央の可動接触子8を露出させた状態を示している。
この
図8に示すように、操作ハンドル4の操作を受けて可動接触子8が回動して傾倒すると、連動部材11も回動軸(円盤状突起115)を中心に回動する。尚、連動部材11の回動軸は、可動接触子8の回動中心に一致するよう設けられている。
【0021】
このように、個々の可動接点8の切替機構が独立していても、連動部材11により互いを連動させることができ、可動接点8の切り替えを同時に行うことができる。
そして、ケース9の一部を構成するケース部材10の側壁17に連動部材11を軸支する透孔12を設ければよく、可動接触子8が回動するエリア全体に亘り側壁17を開口する必要がなく、従来の筐体形状を大きく変更することなく、連動部材11を配置できる。また、側壁17に設けた透孔12が連動部材11の回動中心となるため、軸支部材を別途設ける必要がない。
【0022】
尚、上記実施形態は、3極を切り替える切替開閉器について説明したが、2極を切り替える構成の場合は、可動接触子8は2つとなるため、連動部材11は1組で良い。一方、4極を切り替える構成の場合は、可動接触子8は4つとなるため、3組の連動部材11が組み込まれる。
【符号の説明】
【0023】
1・・入力端子、2・・第1出力端子(出力端子)、3・・第2出力端子(出力端子)、4・・操作ハンドル(操作手段)、6・・固定接点、7・・可動接点、8・・可動接触子、9・・ケース、10(10a,10b,10c,10d)・・ケース部材、11・・連動部材、11a・・第1連動部材、11b・・第2連動部材、12・・透孔(孔)、17・・側壁、112・・挟持部、113・・係合凸部(係合部)、114・・係合凹部、115・・円盤状突起(軸部)。