(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1に示すエアハンドリングユニットの本体1は、被空調空間と屋外空間とを連通する通風路(第1通風路)2および通風路(第2通風路)3を互いに隣接状態で内側に有し、例えば建物の壁面を貫通して配置される。
【0012】
通風路2は、屋内の被空調空間に臨む還気口2aおよび屋外空間に臨む排気口2bを有し、還気口2aに流入する被空調空間の空気を排気口2bに導いて屋外に排出する。通風路3は、屋外空間に臨む外気導入口3aおよび屋内の被空調空間に臨む給気口3bを有し、外気導入口3aに流入する外気を給気口3bに導いて被空調空間に供給する。
【0013】
通風路2の還気口2aから排気口2bにかけて、塵埃除去用のエアフィルタ11、換気用の送風機12、全熱交換器13が順に配置される。送風機12の運転により、被空調空間の空気が還気口2aに流入し、流入した空気がエアフィルタ11、送風機12、全熱交換器13を通って排気口2bから屋外に排出される。
【0014】
通風路3の外気導入口3aから給気口3bにかけて、全熱交換器14、空気熱交換器21,31、給気用の送風機15、塵埃除去用のエアフィルタ16が順に配置される。送風機15の運転により、外気が外気導入口3aに取込まれ、取込まれた空気が全熱交換器14、空気熱交換器21,31、送風機15、エアフィルタ16を通って給気口3bから被空調空間に供給される。
【0015】
通風路2において、還気口2aの近傍に還気温度センサ41が配置され、排気口2bの近傍に排気温度センサ42が配置される。通風路3において、全熱交換器14と空気熱交換器21,31との間に全熱空気温度センサ43が配置され、給気口3bの近傍に給気温度センサ44が配置される。
【0016】
全熱交換器13,14は、水配管を介して相互接続され、全熱交換器13に流入する空気と全熱交換器14に流入する外気とを水配管内の水を介して互いに熱交換する。つまり、通風路2を通る空気の熱が、通風路3に流入する外気に与えられる(移行する)。
【0017】
空気熱交換器21,31は、通風路3の通風方向と直交する方向に並んで配置され、本体1外の熱源機20,30にそれぞれ冷媒配管接続される。
【0018】
熱源機20は、空気熱交換器21と共にヒートポンプ式冷凍サイクルを構成する圧縮機、四方弁、室外熱交換器、膨張弁を含み、冷房時は圧縮機の吐出冷媒を四方弁から室外熱交換器に送りその室外熱交換器から流出する冷媒を膨張弁、空気熱交換器21、四方弁を通して圧縮機に戻し、暖房時は圧縮機の吐出冷媒を四方弁から空気熱交換器21に送りその空気熱交換器21から流出する冷媒を膨張弁、室外熱交換器、四方弁を通して圧縮機に戻す。熱源機30は、熱源機20と同じ冷凍サイクル部品を備え、空気熱交換器31に接続される。
【0019】
上記還気温度センサ41、排気温度センサ42、全熱空気温度センサ43、給気温度センサ44が、エアハンドリングユニットの制御器であるダイレクト・ディジタル・コントローラ(Direct Digital controller)いわゆるDDC40に信号線接続される。DDC40は、還気温度センサ41、排気温度センサ42、全熱空気温度センサ43、給気温度センサ44の検知温度(給排気温度状況)に応じた能力制御信号A1,A2を熱源機20,30に対し発する。
【0020】
具体的には、DDC40は、主要な機能として次の(1)(2)の手段を有する。
(1)被空調空間に供給される空調用空気の温度が予め定められた設定温度となるように、還気温度センサ41、排気温度センサ42、全熱空気温度センサ43、給気温度センサ44の検知温度に応じて、送風機12,15の風量および熱源機20,30の能力を制御する第1制御手段。なお、第1制御手段は、熱源機20,30の能力制御に関し、熱源機20,30内の各圧縮機の運転周波数F1,F2を目標運転周波数F1t,F2tに設定するための能力制御信号A1,A2を後述するコントローラ(エアハンドリングユニット用熱源機の制御装置)50,60を介して熱源機20,30に対し発する。目標運転周波数F1t,F2tは、各圧縮機の運転を停止する場合の零Hzを含む。
【0021】
なお、目標運転周波数F1t,F2tの設定は、給気温度センサ44の検知温度が設定値となるように目標運転周波数F1t,F2tが設定される。
【0022】
(2)コントローラ50,60から送られる報知信号に応じてエアハンドリングユニットの制御内容を修正する第2制御手段。
【0023】
DDC40は、据付け後、熱源機20,30に対する制御条件(制御プログラム)を、据付け場所の環境などに応じて現場の作業員が適宜に設定または変更する操作が可能である。ここで、報知信号に基づく制御内容の修正内容には、制御プログラムを設定変更することで様々な形態が考えられるが、以下、報知信号に応じて熱源機20,30に対する能力制御(能力制御信号A1,A2)を修正する制御を例にとって説明する。
【0024】
一般にDDC40の出力信号は、汎用性を持たせるためアナログ信号が採用されており、能力制御信号A1は、電圧レベルが0〜10Vの範囲で可変のアナログ信号であり、その電圧レベルの変化により目標運転周波数F1tを指定する。能力制御信号A2は、電圧レベルが0〜10Vの範囲で可変のアナログ信号であり、その電圧レベルの変化により目標運転周波数F2tを指定する。
【0025】
このため、熱源機20,30がDDC40の信号を直接受けるためには、アナログ信号を受け取り、そのアナログ信号の指示内容を確認処理する必要がある。
【0026】
しかしながら、一般的な空気調和機用の熱源機(室外機)20,30は、専用の室内機と接続されるため、その間の通信はディジタル信号をバス通信又はシリアル通信でやり取りするようになっており、アナログ信号を受け取って処理する機能を備えていない。このため、エアハンドリングユニット専用の熱源機20,30を開発しなければならなくなる。このような手間を無くし、熱源機20,30を標準化するため、空気調和機用の熱源機20,30がDDC40の指示を受け取ることができるように信号を変換するコントローラ50,60がDDC40と熱源機20,30との通信線間に挿入される。
【0027】
従来のコントローラ50,60は、DDC40からのアナログ信号からなる熱源機20,30に対する指示を、熱源機20,30が受信可能なディジタル信号通信の形態に変更して一方的に熱源機20,30に送信するだけであった。
【0028】
これに対し、本実施形態のエアハンドリングユニット用熱源機の制御装置であるコントローラ50は、能力制御信号A1を受けるためのアナログ信号ラインおよび後述の報知信号B1をDDC40に送るためのディジタル信号ラインを介してDDC40に接続されるとともに、制御用データバスC1を介して熱源機20の熱源制御器20aに接続される。コントローラ60も同様に、能力制御信号A2を受けるためのアナログ信号ラインおよび後述の報知信号B2を上位のDDC40に送るためのディジタル信号ラインを介してDDC40に接続されるとともに、制御用データバスC2を介して熱源機30の熱源制御器30aに接続される。またコントローラ50,60には、それぞれ動作状態を表示するためのモニタ51,61が接続されている。
【0029】
そして、コントローラ50は、主要な機能として次の(11)〜(15)の手段を有する。なお、コントローラ60もコントローラ50と同じであるため、以後、説明を省略する。
(11)能力制御信号A1に応じた能力(目標運転周波数F1s)を、例えば16段階の分解能で表わすディジタルデータ信号により、制御用データバスC1を介して熱源制御器20aに知らせる第1制御手段。
【0030】
(12)熱源機20の能力(圧縮機の運転周波数F1)を熱源制御器20aに問合せして逐次に検出する検出手段。
【0031】
(13)上記検出手段で検出した能力(運転周波数F1)が上記ディジタルデータ信号により知らされた能力(目標運転周波数F1t)に達しているかを判定する判定手段。
【0032】
(14)上記判定手段の判定結果を、
図2に示すように論理“1”と論理“0”のパターンを有する報知信号B1により、能力制御信号A1の修正用としてDDC40に知らせる第2制御手段。
【0033】
(15)上記判定手段の判定結果を、モニタ51の例えば文字表示や画像表示を用いて報知する第3制御手段。
【0034】
なお、報知信号B1の論理“1”は、熱源機20内の圧縮機の運転周波数F1が能力制御信号A1に応じた目標運転周波数F1tに達していることを表わす(F1≧F1t)。報知信号B1の論理“0”は、運転周波数F1が目標運転周波数F1tに達していないことを表わす(F1<F1t)。
【0035】
なお、運転周波数の過渡的な変更時、すなわち、DDC40からの運転周波数の指示値に変更があり、熱源機20がその変更に対応している期間、数秒〜数十秒は、必ず能力制御信号A1の指示値と目標運転周波数F1tが不一致となるが、このような過渡的な不一致については、上述の判断はなされない。
【0036】
つぎに、動作について説明する。
DDC40は、通風路3から被空調空間に供給される空調用空気の温度が設定温度となるように、送風機12,15の風量を制御するとともに、熱源機20,30に対し能力制御信号A1,A2を発する。例えば、空調用空気の温度と設定温度との差が大きい場合、DDC40は、目標運転周波数F1,F2を高めるための能力制御信号A1,A2、または熱源機20,30を1台運転から2台運転に移行させるための能力制御信号A1,A2を発する。空調用空気の温度が設定温度を超えてオーバーシュートした場合、DDC40は、目標運転周波数F1,F2を低減するための能力制御信号A1,A2、または熱源機20,30を2台運転から1台運転に移行させるための能力制御信号A1,A2を発する。
【0037】
コントローラ50,60は、DDC40から発せられた能力制御信号A1,A2を受け、その能力制御信号A1,A2に応じた目標運転周波数F1s,F2sを熱源機20,30の熱源制御器20a,30aに指令する。熱源制御器20a,30aは、熱源機20,30内の各圧縮機の運転周波数F1,F2をコントローラ50,60からの指令による目標運転周波数F1s,F2sに設定する。
【0038】
コントローラ50,60は、熱源機20,30における各圧縮機の実際の運転周波数F1,F2を熱源制御器20a,30aに問合せして逐次に検出し、検出した運転周波数F1,F2が目標運転周波数F1t,F2tに達しているかを判定する。この比較判定を行うため、コントローラ50,60は、それぞれメモリを備え、直近のDDC40から発せられた能力制御信号A1,A2に対応した目標運転周波数F1s,F2sを記憶している。
【0039】
そして、コントローラ50,60は、判定の結果を能力制御信号A1,A2の修正用として報知信号B1,B2によりDDC40に知らせるとともに、判定の結果をモニタ51,61の例えば文字表示や画像表示を用いて報知する。
【0040】
報知信号B1,B2を受けたDDC40は、その報知信号B1,B2に基づき、運転周波数F1,F2が目標運転周波数F1t,F2tに達しているか否かを認識する。
【0041】
例えば、運転周波数F1,F2が目標運転周波数F1t,F2tに達しているにもかかわらず、空調用空気の温度がなかなか設定温度に達しない場合がある。DDC40は、このことを報知信号B1,B2が論理“1”信号である状態が所定時間継続していることから判別する。この判別の結果、DDC40は、現状の目標運転周波数F1t,F2tでは、空調能力不足であるとの判断の下に、目標運転周波数F1t,F2tを上昇方向に修正し、修正後の目標運転周波数F1t,F2tを指定するための能力制御信号A1,A2を発する。
【0042】
以上のように、熱源機20,30における各圧縮機の運転周波数F1,F2がDDC40からの能力制御信号A1,A2に応じた目標運転周波数F1t,F2tに達しているかをコントローラ50,60で判定し、その判定結果を熱源機20,30に対する能力制御の修正用としてコントローラ50,60からDDC40に知らせる構成としたので、DDC40からの能力制御信号A1,A2に応じた能力制御が熱源機20,30で実際に行われない場合には、その能力制御を補って被空調空間の快適性を確保できる。
【0043】
コントローラ50,60の判定結果をモニタ51,52の文字表示や画像表示によって報知するので、熱源機20,30がどのような状態にあるかを保守作業員が容易に知ることができる。
【0044】
[変形例]
上記実施形態では、運転周波数F1,F2が目標運転周波数F1t,F2tに達しているかの判定結果を論理“1”と論理“0”のパターンを有する報知信号B1,B2によりDDC40に知らせる構成としたが、
図3に示すように、論理“1”と論理“0”のパターンに加えて論理“1”と論理“0”を短時間で繰り返すパターンの報知信号B1,B2を用いてもよい。論理“1”は、熱源機20内の圧縮機の運転周波数F1,F2が能力制御信号A1,A2に応じた目標運転周波数F1t,F2tと同じであることを表わす(F1=F1t、F2=F2t)。論理“0”は、運転周波数F1,F2が目標運転周波数F1t,F2t未満であることを表わす(F1<F1t、F2<F2t)。論理“1”と論理“0”の短時間の繰り返しは、運転周波数F1,F2が目標運転周波数F1t,F2tを超えていることを表わす(F1>F1t、F2>F2t)。
【0045】
上記実施形態では、熱源機20,30における各圧縮機の運転周波数F1,F2が目標運転周波数F1t,F2tに達しているか否かの判定結果のみを報知信号B1,B2によりDDC40に知らせる構成としたが、それに加えて、熱源機20,30における高圧レリース制御、低圧レリース制御及び除霜運転などの実行を報知信号B1,B2によりDDC40に知らせる構成としてもよい。
【0046】
具体的には、熱源制御器20a、30aが高圧レリース制御、低圧レリース制御や除霜運転に入った場合、コントローラ50,60にその旨を報知する。コントローラ50,60は、熱源制御器20a、30aから受信したこれらの制御状態を報知信号B1,B2によりDDC40に知らせる。
【0047】
なお、高圧レリースは、熱源機20,30の冷凍サイクルの高圧部が許容圧力設定値を超えることがないように圧縮機の運転周波数F1,F2(回転数)を強制的に低下させる制御を意味し、低圧レリース制御は、熱源機20,30の冷凍サイクルの低圧部が許容圧力設定値よりも下がることがないように圧縮機の運転周波数F1,F2(回転数)を強制的に上昇させる制御等を意味する。また、熱源機20,30の除霜運転中は、予め定められた固定の圧縮機の除霜運転周波数で除霜運転が実行される。これらの高圧レリース制御、低圧レリース制御及び除霜運転のいずれの場合も、運転周波数F1,F2が能力制御信号A1,A2に応じた目標運転周波数F1t,F2tと一致しない状態となる。
【0048】
この場合、
図4に示すように、1周期中に論理“1”と論理“0”があってその1周期における論理“1”期間の比率であるいわゆるオン,オフデューティが互いに異なるパターンを報知信号B1,B2に加えてもよい。オン,オフデューティD1(例えば10%)は、高圧レリース制御の実行中であることを表わす。オン,オフデューティD2(例えば40%)は、低圧レリース制御の実行中であることを表わす。オン,オフデューティD3(例えば70%)は、除霜運転の実行中であることを表わす。
【0049】
このような報知信号を受信したDDC40には、DDC40が指示する能力制御信号A1,A2に応じた目標運転周波数F1t,F2tと異なる運転周波数で熱源機20,30が運転されることから、その影響を緩和するための制御動作を組み込むことができる。
【0050】
DDC40は、コントローラ50,60からの、これらの制御状態を報知信号B1,B2によりに受取り、例えば、熱源機20.30が高圧レリース制御の実行中であれば、エアハンドリングユニットの本体1に供給される熱量が低下することから、これを補うようにファン15の風量を増加させることができる。また、供給熱量よりも吹出し温度を一定に保つことを優先するのであれば、逆にファン15の風量を低下させる。また、除霜運転中は、暖房運転中に冷風が吹出すことになるため、DDC40がファン15を停止させても良い。
【0051】
本実施形態では、独立した2台の熱源機20、30を用いている。2台の熱源機20.30が同時に除霜運転に入る確率はかなり低いことから、一方の熱源機が除霜運転中には他方の熱源機の目標運転周波数F1t,F2tを通常よりも高くした能力制御信号A1,A2を送信させても良い。これにより2台の熱源機20,30の能力を合算した場合には、暖房能力の低下を抑制できる。
【0052】
さらに、熱源機20,30が除霜運転の開始5分前であることを表わす報知信号をコントローラ50,60からDDC40に供給しても良い。この信号としては、オン,オフデューティD4(例えば100%)を用いることができる。DDC40は、この除霜運転の開始5分前を示す報知信号を受けた場合、事前に暖房能力を高めて、その後に発生する除霜運転における室内の温度低下を緩和するように、目標運転周波数F1t,F2tを通常よりも高くした能力制御信号A1,A2をコントローラ50,60に送信するようにしてもよい。
【0053】
以上の通り、本実施形態によれば、エアハンドリングユニットの制御器であるDDCから指示された熱源機の運転内容に対して、その指示内容と異なる運転を熱源機が実施する場合に、コントローラがその異なる運転内容をDDCに報知することができる。この結果、エアハンドリングユニットを設置する作業員により、指示と異なる運転が熱源機側で実行された場合にエアハンドリングユニットに生じる不具合を緩和するような制御動作をDDCに組み込むことが可能となる。
【0054】
その他、上記実施形態および変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態および変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、書き換え、変更を行うことができる。これら実施形態や変形は、発明の範囲は要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。