(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る建具の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0026】
(実施の形態1)
図1及び
図2は、本発明の実施の形態1である建具を示したものである。ここで例示する建具は、開き窓、倒し窓、突き出し窓、すべり出し窓等のように、開口枠10に対して障子20が面外方向に開閉可能に支持されたものである。開口枠10は、上枠11、下枠12及び左右の縦枠13を四周枠組みすることによって構成したものである。障子20は、矩形状の外形に構成した複層ガラス21の四周に上框22、下框(フレーム)23及び左右の縦框24を装着することによって構成したものである。
【0027】
複層ガラス21は、スペーサ21aを介して2枚のガラスパネル21b,21cを接合し、かつスペーサ21a及び2枚のガラスパネル21b,21cの間に1次シール21S1及び2次シール21S2を設けることによって構成したものである。本実施の形態1では、フロートガラスによって成形したフロートガラスパネル21bと、内部に金網を封入した網入りガラスパネル21cとを接合することによって互いの間に空気層21dを構成した複層ガラス21を適用している。スペーサ21aは、アルミニウムや樹脂によって成形した角筒材の内部に吸湿剤を充填したものである。1次シール21S1は、主にスペーサ21aとそれぞれのガラスパネル21b,21cとの間の水密性を確保するもので、ブチルゴム製のものを適用している。2次シール21S2は、主に、2枚のガラスパネル21b,21cを接着するためのもので、スペーサ21a、1次シール21S1及びガラスパネル21b,21cによって囲まれる空間に充填してある。2次シール21S2としては、ポリサルファイドもしくはシリコン製のものを適用している。
【0028】
複層ガラス21に装着するそれぞれの框22,23,24は、アルミニウム合金や樹脂によって成形した押し出し形材であり、全長にわたってほぼ一様な断面形状を有するように構成してある。特に、本実施の形態1では、上框22、下框23及び縦框24がそれぞれ同様の構成を有するように構成してある。従って、以下においては下框23について説明を行うこととする。
【0029】
下框23は、框基部23a、カバー板部23b、支持板部(支持壁部)23c、押縁係合部23d及び押縁係止突起23eを有している。框基部23aは、ほぼ矩形の筒状を成す部分であり、複層ガラス21よりも大きな見込み寸法を有するように構成してある。カバー板部23bは、框基部23aの外周側となる見込み面において室外側に位置する縁部から外周側に向けてほぼ直交する方向に沿って延在した薄板状部分である。支持板部23cは、框基部23aの内周側となる見込み面において室外側に位置する縁部からほぼ直交する方向に沿って延在した部分である。押縁係合部23dは、框基部23aの内周側となる見込み面において室内側に位置する縁部から内周側に向けて突出した後、室外側に向けて屈曲した部分である。押縁係合部23dの突出高さは、支持板部23cの突出高さよりも小さく構成してある。押縁係止突起23eは、框基部23aの内周側となる見込み面において支持板部23cと押縁係合部23dとの間のほぼ中間となる位置に設けた突出部である。この押縁係止突起23eは、見込み面から内周側に向けて突出した後、室内側に向けてほぼ直角に屈曲している。押縁係止突起23eの突出高さは、押縁係合部23dの突出高さよりもわずかに小さく構成してある。下框23の押縁係合部23d及び押縁係止突起23eには、押縁25を装着することが可能である。
【0030】
押縁25は、下框23の支持板部23cに対向して配置される挟持板部25aと、挟持板部25aの外周側縁部から室外側に向けて延在した框当接部25bとを有したものである。挟持板部25aと框当接部25bとの間には、押縁係合部23dの屈曲した部分が係合される係合溝25cが設けてある。この押縁25は、框当接部25bの延在縁部を下框23の見込み面と押縁係止突起23eとの間に挿入した状態で係合溝25cに押縁係合部23dの屈曲した部分を係合させることにより、挟持板部25aが下框23の支持板部23cに対してほぼ平行となる状態で下框23に装着される。
【0031】
上記のように構成した下框23には、押縁25との間に複層ガラス21が挟持してある。すなわち、下框23の支持板部23cに複層ガラス21の網入りガラスパネル21cを当接させ、この状態から下框23に押縁25を装着することにより、支持板部23cと押縁25の挟持板部25aとの間に構成される開口溝23fに複層ガラス21の縁部が挟持されることになる。複層ガラス21の網入りガラスパネル21cと支持板部23cとの間及びフロートガラスパネル21bと挟持板部25aとの間には、それぞれ止水材26を介在させるようにしている。
【0032】
図1からも明らかなように、この建具には、框基部23aの内周側壁部23a1及び外周側壁部23a2にそれぞれ水抜き孔(孔部)23gが設けてある。水抜き孔23gは、開口溝23fに浸入した水を框22,23,24の外部に排出するためのもので、下框23にのみ設けてある。本実施の形態1では、内周側壁部23a1の両端部にそれぞれ水抜き孔23gが2つずつ設けてあるとともに、外周側壁部23a2の両端部にそれぞれ水抜き孔23gが2つずつ設けてある。それぞれの水抜き孔23gは、下框23の長手方向に沿って長孔状となるように形成してある。内周側壁部23a1の水抜き孔23gは、押縁係止突起23eよりも室外側となる部位に下框23の長手方向に沿って並設してある。外周側壁部23a2の水抜き孔23gは、内周側壁部23a1に形成した水抜き孔23gに対向する位置に開口している。すなわち、開口溝23fに浸入した水は、内周側壁部23a1の水抜き孔23g及び外周側壁部23a2の水抜き孔23gを通じて順次下方に案内され、下框23から外部に排出された後、下框23と下枠12との隙間から室外側に流れ落ちることになる。
【0033】
さらに、この建具には、下框23において内周側壁部23a1に設けた2つの水抜き孔23gと支持板部23cとの間となる位置にそれぞれ蓋部材30が配設してあるとともに、蓋部材30を挟んで水抜き孔23gに対応する部位に位置した支持板部23cに加熱膨張材40が配設してある。
【0034】
蓋部材30は、鉄等の金属によって成形した薄板状部材であり、
図2に示すように、孔閉塞部30a及び2つの突起30bを有している。孔閉塞部30aは、下框23の長手方向に沿って長尺となる矩形状を成すものである。この孔閉塞部30aは、下框23の端部に設けた2つの水抜き孔23gを同時に閉塞することができ、かつ一方の長辺を支持板部23cに配設した加熱膨張材40の表面に当接させた場合に(開放位置)、2つの水抜き孔23gを同時に開放することのできる寸法に形成してある。突起30bは、孔閉塞部30aの他方の長辺両端からそれぞれ下框23の押縁係止突起23eに向けて突出した部分である。これらの突起30bは、
図3及び
図4に示すように、それぞれの突出端面を押縁係止突起23eに当接させた場合に孔閉塞部30aが2つの水抜き孔23gを同時に閉塞する位置(閉塞位置)に配置されるように機能するものである。この蓋部材30は、高温状態となった場合に溶融する性質を有した熱溶融性の粘着材によって内周側壁部23a1の見込み面に接着した状態で取り付けてある。粘着材が溶融する温度は、2次シール21S2が熱分解する以前の温度であって、さらに後述の加熱膨張材40が発泡する温度よりも低い値に設定してある。蓋部材30を取り付ける位置は、
図2に示すように、2つの水抜き孔23gと支持板部23cとの間であって2つの水抜き孔23gを完全に開放した位置である。
【0035】
加熱膨張材40は、膨張黒鉛等のように、高温状態となった場合に発泡して膨張するものである。本実施の形態1では、細幅の帯状に成形した加熱膨張材40を適用し、支持板部23cの室内側に位置する見付け面においてそのほぼ全長にわたる部位に取り付けてある。上述したように加熱膨張材40の表面には、蓋部材30の一方の長辺が当接した状態にある。加熱膨張材40の発泡温度は、2次シール21S2が熱分解する以前の値に設定してある。
【0036】
図1中の符号45は、開口枠10と障子20との隙間に配設した加熱膨張材である。これらの加熱膨張材45は、上述の加熱膨張材40と同様、高温状態となった場合に発泡して膨張するもので、開口枠10と障子20との隙間を埋めるように機能する。
【0037】
上記のように構成した建具では、蓋部材30が粘着材によって開放位置に拘束された状態となる。従って、通常の使用時において開口溝23fに浸入した水は、内周側壁部23a1の水抜き孔23g及び外周側壁部23a2の水抜き孔23gを通じて順次下方に案内され、下框23から外部に排出された後、下框23と下枠12との隙間から室外側に流れ落ちることになる。これにより、開口溝23fに水が貯留することが原因となる複層ガラス21の内部結露等の問題が招来されるおそれがなくなる。
【0038】
一方、火災発生時において建具が高温状態に晒された場合には、まず、蓋部材30を取り付ける際に用いた粘着材が溶融するため、下框23に対して蓋部材30の移動が許容された状態となる。その後、さらに温度が高くなると、下框23の支持板部23cに取り付けた加熱膨張材40が発泡するため、
図3及び
図4に示すように、膨張した加熱膨張材40によって蓋部材30が閉塞位置に向けて付勢され、2つの突起30bがそれぞれ下框23の押縁係止突起23eに当接した状態となる。この状態においては、蓋部材30の孔閉塞部30aによって2つの水抜き孔23gが覆われた状態となる。上述したように、この建具に適用する蓋部材30は、鉄等の金属によって成形した定形部材である。従って、その後に建具がさらに高温状態となって複層ガラス21の2次シール21S2から可燃性ガスが発生したとしても、外部に漏出するおそれはなく、可燃性ガスが室内と室外との間を流通するおそれもない。また、水抜き孔23gが火炎の貫通口となるおそれもない。これにより、火元と反対側で発炎することに起因した延焼も確実に防止することができるようになる。
【0039】
(実施の形態2)
図5〜
図8は、本発明の実施の形態2である建具の要部を示したものである。ここで例示する建具は、実施の形態1と同様、開口枠10に対して障子20が面外方向に開閉可能に支持されたものである。開口枠10の構成及び障子20の構成についても実施の形態1と同様であり、下框(フレーム)23に配設した蓋部材の構成及び下框23にストッパ部を設けた点が実施の形態1と異なっている。以下、実施の形態1と異なる構成について詳述し、実施の形態1と同様の構成については同一の符号を付してそれぞれの詳細説明を省略する。
【0040】
実施の形態2の蓋部材130は、矩形の平板状を成すもので、実施の形態1と同様、鉄等の金属製薄板状部材によって成形してある。蓋部材130は、下框23の端部に設けた2つの水抜き孔(孔部)23gを同時に閉塞することができ、かつ一方の長辺を支持板部(支持壁部)23cに配設した加熱膨張材40の表面に当接させた場合に2つの水抜き孔23gを同時に開放することのできる寸法に形成してある。この蓋部材130は、高温状態となった場合に溶融する性質を有した熱溶融性の粘着材によって内周側壁部23a1の見込み面に接着した状態で取り付けてある。粘着材が溶融する温度は、2次シール21S2が熱分解する以前の温度であって、さらに加熱膨張材40が発泡する温度よりも低い値に設定してある。蓋部材130を取り付ける位置は、
図6に示すように、2つの水抜き孔23gと支持板部23cとの間であって2つの水抜き孔23gを完全に開放した位置(開放位置)である。蓋部材130の長辺側端面と、下框23の支持板部23cとの間に加熱膨張材40が位置しているのは実施の形態1と同様である。
【0041】
一方、実施の形態2の下框23には、押縁係止突起23eよりも室外側に位置する部位に2つのストッパ部131が設けてある。ストッパ部131は、矩形状を成す突出部であり、蓋部材130の両端部に対向する部位に取り付けてある。ストッパ部131を取り付ける場合には、例えば、高温状態となった場合にも溶融性を呈することのない粘着材によって下框23に接着すれば良い。
図8に示すように、これらのストッパ部131は、蓋部材130の長辺側縁部が当接した場合に蓋部材130を2つの水抜き孔23gが同時に閉塞できる位置(閉塞位置)に位置決めするものである。
【0042】
上記のように構成した建具においても、蓋部材130が粘着材によって開放位置に拘束された状態となるため、通常の使用時において開口溝23fに浸入した水が内周側壁部23a1の水抜き孔23g及び外周側壁部23a2の水抜き孔23gを通じて順次下方に案内され、下框23から外部に排出されることになる。従って、開口溝23fに水が貯留することが原因となる複層ガラス21の内部結露等の問題が招来されるおそれはない。
【0043】
一方、火災発生時において建具が高温状態に晒された場合には、粘着材が溶融した後に加熱膨張材40が発泡するため、
図7及び
図8に示すように、膨張した加熱膨張材40によって蓋部材130が閉塞位置に向けて付勢され、2つのストッパ部131に当接した位置に配置される。従って、鉄等の金属によって成形した定形部材である蓋部材130が2つの水抜き孔23gを覆った状態となり、複層ガラス21の2次シール21S2から可燃性ガスが発生したとしても、外部に漏出するおそれがなくなる。これにより、可燃性ガスが室内と室外との間を流通する事態が発生することはなく、また、水抜き孔23gが火炎の貫通口となるおそれもない。これにより、火元と反対側で発炎することに起因した延焼も確実に防止することができるようになる。
【0044】
尚、上述の実施の形態2では、下框23と別体に構成したストッパ部131を下框23に取り付けるようにしているが、ストッパ部131は下框23と一体に設けても良い。また、ストッパ部131は必ずしも2つである必要はなく、1つであっても3つ以上であっても構わない。
【0045】
また、上述した実施の形態2では、ストッパ部131によって蓋部材130の閉塞位置が規定されるため、下框3に押縁係止突起23eが設けられている必要はない。
【0046】
(実施の形態3)
図9及び
図10は、本発明の実施の形態3である建具の要部を示したものである。ここで例示する建具は、実施の形態1と同様、開口枠10に対して障子20が面外方向に開閉可能に支持されたものである。開口枠10の構成及び障子20の構成についても実施の形態1と同様であり、下框(フレーム)23に配設した蓋部材の形状が実施の形態1と異なっている。以下、実施の形態1と異なる構成について詳述し、実施の形態1と同様の構成については同一の符号を付してそれぞれの詳細説明を省略する。
【0047】
実施の形態3の下框23に配設した蓋部材230は、矩形の平板状を成す孔閉塞部230aと、孔閉塞部230aの一方の長辺両端からそれぞれ突出した2つの突起230bと、矩形の平板状を成し、孔閉塞部230aの他方の長辺側縁部からほぼ直角に屈曲して延在する受圧部230cとを有したもので、実施の形態1と同様、鉄等の金属製薄板状部材によって一体に成形してある。孔閉塞部230aは、下框23の端部に設けた2つの水抜き孔(孔部)23gを同時に閉塞することができる寸法に形成してある。この蓋部材230は、受圧部230cを加熱膨張材40の表面に当接させ、かつ高温状態となった場合に溶融する性質を有した熱溶融性の粘着材により、孔閉塞部230aを介して内周側壁部23a1の見込み面に接着した状態で取り付けてある。粘着材が溶融する温度は、実施の形態1と同様である。蓋部材230を取り付ける位置は、
図9に示すように、2つの水抜き孔23gと支持板部(支持壁部)23cとの間であって2つの水抜き孔23gを開放した位置(開放位置)である。
【0048】
上記のように構成した建具においても、蓋部材230が粘着材によって開放位置に拘束された状態となるため、通常の使用時において開口溝23fに浸入した水が内周側壁部23a1の水抜き孔23g及び外周側壁部23a2の水抜き孔23gを通じて順次下方に案内され、下框23から外部に排出されることになる。従って、開口溝23fに水が貯留することが原因となる複層ガラス21の内部結露等の問題が招来されるおそれはない。
【0049】
一方、火災発生時において建具が高温状態に晒された場合には、粘着材が溶融した後に加熱膨張材40が発泡するため、
図10に示すように、膨張した加熱膨張材40によって蓋部材230が室内側に向けて付勢され、2つの突起230bが下框23の押縁係止突起23eに当接した位置に配置される。従って、鉄等の金属によって成形した定形部材である蓋部材230が2つの水抜き孔23gを覆った状態(閉塞位置)となり、複層ガラス21の2次シール21S2から可燃性ガスが発生したとしても、外部に漏出するおそれがなくなる。これにより、可燃性ガスが室内と室外との間を流通する事態が発生することはなく、また、水抜き孔23gが火炎の貫通口となるおそれもない。これにより、火元と反対側で発炎することに起因した延焼も確実に防止することができるようになる。
【0050】
しかも、実施の形態3で適用した蓋部材230では、加熱膨張材40に対向するように受圧部230cが設けてある。従って、加熱膨張材40が発泡した場合には、加熱膨張材40からの付勢力をより確実に受けることができ、開放位置から閉塞位置への移動がより確実となる。
【0051】
(実施の形態4)
図11及び
図12は、本発明の実施の形態4である建具の要部を示したものである。ここで例示する建具は、実施の形態1と同様、開口枠10に対して障子20が面外方向に開閉可能に支持されたものである。開口枠10の構成及び障子20の構成についても実施の形態1と同様であり、下框(フレーム)23に配設した蓋部材の形状が実施の形態1と異なっている。以下、実施の形態1と異なる構成について詳述し、実施の形態1と同様の構成については同一の符号を付してそれぞれの詳細説明を省略する。
【0052】
実施の形態4の下框23に配設した蓋部材330は、矩形の平板状を成す孔閉塞部330aと、矩形の平板状を成し、孔閉塞部330aの両方の長辺側縁部からほぼ直角に屈曲して延在する受圧部330bとを有したもので、実施の形態1と同様、鉄等の金属製薄板状部材によって一体に成形してある。孔閉塞部330aは、下框23の端部に設けた2つの水抜き孔(孔部)23gを同時に閉塞することができる寸法に形成してある。この蓋部材330は、一方の受圧部330bを加熱膨張材40の表面に当接させ、かつ高温状態となった場合に溶融する性質を有した熱溶融性の粘着材により、孔閉塞部330aを介して内周側壁部23a1の見込み面に接着した状態で取り付けてある。粘着材が溶融する温度は、実施の形態1と同様である。蓋部材330を取り付ける位置は、
図11に示すように、2つの水抜き孔23gと支持板部(支持壁部)23cとの間であって2つの水抜き孔23gを開放した位置(開放位置)である。
【0053】
上記のように構成した建具においても、蓋部材330が粘着材によって開放位置に拘束された状態となるため、通常の使用時において開口溝23fに浸入した水が内周側壁部23a1の水抜き孔23g及び外周側壁部23a2の水抜き孔23gを通じて順次下方に案内され、下框23から外部に排出されることになる。従って、開口溝23fに水が貯留することが原因となる複層ガラス21の内部結露等の問題が招来されるおそれはない。
【0054】
一方、火災発生時において建具が高温状態に晒された場合には、粘着材が溶融した後に加熱膨張材40が発泡するため、
図12に示すように、膨張した加熱膨張材40によって蓋部材330が室内側に向けて付勢され、下框23の押縁係止突起23eに当接した位置に配置される。従って、鉄等の金属によって成形した定形部材である蓋部材330が2つの水抜き孔23gを覆った状態(閉塞位置)となり、複層ガラス21の2次シール21S2から可燃性ガスが発生したとしても、外部に漏出するおそれがなくなる。これにより、可燃性ガスが室内と室外との間を流通する事態が発生することはなく、また、水抜き孔23gが火炎の貫通口となるおそれもない。これにより、火元と反対側で発炎することに起因した延焼も確実に防止することができるようになる。
【0055】
しかも、実施の形態4で適用した蓋部材330では、加熱膨張材40に対向するように受圧部330bを設けている。従って、加熱膨張材40が発泡した場合には、加熱膨張材40からの付勢力をより確実に受けることができ、開放位置から閉塞位置への移動がより確実となる。さらに、受圧部330bを孔閉塞部330aの両方の長辺側縁部に設けるようにしているため、建具を組み立てる際に作業者が蓋部材330を取り付ける向きを間違えるという問題が生じることはない。
【0056】
(実施の形態5)
図13〜
図16は、本発明の実施の形態5である建具の要部を示したものである。ここで例示する建具は、実施の形態1と同様、開口枠10に対して障子20が面外方向に開閉可能に支持されたものである。開口枠10の構成及び障子20の構成についても実施の形態1と同様であり、下框(フレーム)23に配設した蓋部材の構成及び下框23と蓋部材との間にガイド機構を設けた点で実施の形態1と異なっている。以下、実施の形態1と異なる構成について詳述し、実施の形態1と同様の構成については同一の符号を付してそれぞれの詳細説明を省略する。
【0057】
実施の形態5の蓋部材430は、矩形の平板状を成す孔閉塞部430aと、孔閉塞部430aの両側に設けたガイド溝構成部430bとを有したもので、実施の形態1と同様、鉄等の金属製薄板状部材によって一体に成形してある。孔閉塞部430aは、下框23の端部に設けた2つの水抜き孔(孔部)23gを同時に閉塞することができ、かつ一方の長辺を支持板部(支持壁部)23cに配設した加熱膨張材40の表面に当接させた場合に2つの水抜き孔23gを同時に開放することのできる寸法に形成してある。ガイド溝構成部430bは、孔閉塞部430aよりも幅が広く、室外側に向けて突出した部分であり、ガイド溝430cを有している。ガイド溝430cは、下框23の長手に対して直交する方向に延在したもので、室内側に位置する端部が開口している。このガイド溝430cは、後述するガイドピン440の軸部441を挿通可能、かつガイドピン440の頭部442を挿通不可とする幅に形成したものである。
【0058】
この蓋部材430は、高温状態となった場合に溶融する性質を有した熱溶融性の粘着材によって内周側壁部23a1の見込み面に接着した状態で取り付けてある。粘着材が溶融する温度は、2次シール21S2が熱分解する以前の温度であって、さらに後述の加熱膨張材40が発泡する温度よりも低い値に設定してある。蓋部材430を取り付ける位置は、
図14に示すように、2つの水抜き孔23gと支持板部23cとの間であって2つの水抜き孔23gを完全に開放した位置(開放位置)である。蓋部材430の長辺側端面と、下框23の支持板部23cとの間に加熱膨張材40が位置しているのは実施の形態1と同様である。
【0059】
一方、実施の形態5の下框23には、2つのガイドピン440が螺合してある。ガイドピン440は、円柱状を成す軸部441と、軸部441よりも大径の頭部442とを有したもので、軸部441の外周面が蓋部材430に形成したガイド溝430cのガイド面(第一規制面)430c1に当接する部位に立設してある。ガイドピン440としては、いわゆる段付きネジを適用すれば良い。ガイドピン440を設ける位置は、
図16に示すように、蓋部材430に設けたガイド溝430cの閉端面(第二規制面)430c2をガイドピン440の軸部441に当接させた場合に孔閉塞部430aが2つの水抜き孔23gを同時に閉塞する位置(閉塞位置)である。
【0060】
尚、本実施の形態5においては、上述したものと同様の構成が、外周側壁部23a2の水抜き孔23gに対しても設けてある。加熱膨張材40を設ける位置は、下框23のカバー板部(支持壁部)23bとなる。外周側壁部23a2に設けた蓋部材430及びガイドピン440については、内周側壁部23a1に設けたものと同一の符号を付してそれぞれの詳細説明を省略する。
【0061】
上記のように構成した建具においても、蓋部材430が粘着材によって開放位置に拘束された状態となるため、通常の使用時において開口溝23fに浸入した水が内周側壁部23a1の水抜き孔23g及び外周側壁部23a2の水抜き孔23gを通じて順次下方に案内され、下框23から外部に排出されることになる。従って、開口溝23fに水が貯留することが原因となる複層ガラス21の内部結露等の問題が招来されるおそれはない。
【0062】
一方、火災発生時において建具が高温状態に晒された場合には、粘着材が溶融した後に加熱膨張材40が発泡するため、
図15及び
図16に示すように、膨張した加熱膨張材40によって蓋部材430が閉塞位置に向けて付勢され、ガイド溝430cの閉端面430c2がガイドピン440の軸部441に当接された状態となる。従って、鉄等の金属によって成形した定形部材である蓋部材430が2つの水抜き孔23gを覆った状態となり、複層ガラス21の2次シール21S2から可燃性ガスが発生したとしても、外部に漏出するおそれがなくなる。これにより、可燃性ガスが室内と室外との間を流通する事態が発生することはなく、また、水抜き孔23gが火炎の貫通口となるおそれもない。これにより、火元と反対側で発炎することに起因した延焼も確実に防止することができるようになる。
【0063】
しかも、実施の形態5によれば、下框23と蓋部材430との間にガイド溝430c及びガイドピン440からなるガイド機構を設けるようにしているため、開放位置に配置された蓋部材430がガイド面430c1に当接するガイドピン440によって確実に閉塞位置に案内されることになり、また、ガイドピン440の頭部442によって下框23の見込み面から蓋部材430が離隔する方向の移動が制限されるため、より確実に水抜き孔23gを閉塞することができるようになる。
【0064】
尚、上述した実施の形態5のように2本のガイドピン440を適用してガイド機構を構成する場合には、必ずしも蓋部材430には、ガイド溝430cを設ける必要はない。すなわち、
図17及び
図18に示す変形例のように、蓋部材431には、2つの長手方向規制面(第一規制面)432と2つの閉塞位置規制面(第二規制面)433とを設ければ十分である。長手方向規制面432は、2本のガイドピン440の軸部441に当接することによって蓋部材431の長手方向に沿った移動を制限するものである。2つの閉塞位置規制面433は、2本のガイドピン440の軸部441に当接することによって蓋部材431の閉塞位置への移動を制限するものである。
図17及び
図18の変形例において実施の形態5と同様の構成については、同一の符号が付してある。
【0065】
また、上述した実施の形態5及びその変形例では、ガイドピン440によって蓋部材430,431の閉塞位置が規定されるため、下框3に押縁係止突起23eが設けられている必要はない。
【0066】
(実施の形態6)
図19〜
図21は、本発明の実施の形態6である建具の要部を示したものである。ここで例示する建具は、実施の形態1と同様、開口枠10に対して障子20が面外方向に開閉可能に支持されたものである。開口枠10の構成及び障子20の構成についても実施の形態1と同様であり、下框(フレーム)23に配設した蓋部材の構成及び下框23と蓋部材との間にガイド機構を設けた点で実施の形態1と異なっている。以下、実施の形態1と異なる構成について詳述し、実施の形態1と同様の構成については同一の符号を付してそれぞれの詳細説明を省略する。
【0067】
実施の形態6の蓋部材530は、
図20に示すように、孔閉塞部530a、連結板部530b及びガイド板部530cを有したもので、実施の形態1と同様、鉄等の金属製薄板状部材によって一体に成形してある。孔閉塞部530aは、下框23の外周側壁部23a2に設けた2つの水抜き孔(孔部)23gを同時に閉塞することができる寸法の矩形平板状を成すものである。連結板部530bは、孔閉塞部530aの一側縁から室内側に向けて延在したものである。この連結板部530bは、室内に向けて漸次外周側壁部23a2から離隔するように傾斜している。ガイド板部530cは、孔閉塞部530aよりも見込み方向の寸法が大きな矩形の平板状を成すもので、連結板部530bの一側縁から室内に向けて延在している。このガイド板部530cは、孔閉塞部530aとほぼ平行となるように形成してある。上述の構成を有する蓋部材530は、内周側壁部23a1と外周側壁部23a2との間に配設してある。
【0068】
一方、実施の形態6の下框23には、外周側壁部23a2に2つのガイドピン540が配設してある。ガイドピン540は、外周面にネジ溝(図示せず)を有した円柱状を成す軸部541と、軸部541よりも大径の頭部542とを有したものである。このガイドピン540は、外周側壁部23a2に形成したガイド孔23hに軸部541をスライド可能に挿通した状態で、軸部541の先端部が蓋部材530のガイド板部530cに螺合してある。外周側壁部23a2のガイド孔23hは、蓋部材530を外周側壁部23a2に当接させた際に孔閉塞部530aが2つの水抜き孔23gを同時に閉塞することのできる位置に形成してある。図中の符号543は、ガイドピン540の軸部541に螺合した止めナット部材である。この止めナット部材543は、ガイド板部530cに螺合したガイドピン540が蓋部材530から脱落するのを防止するものである。
【0069】
さらに、この実施の形態6では、蓋部材530の孔閉塞部530a及びガイド板部530cにそれぞれ加熱膨張材40が配設してあるとともに、外周側壁部23a2とガイド板部530cとの間にスペーサ部材550が配設してある。加熱膨張材40は、孔閉塞部530a及びガイド板部530cにおいて内周側壁部23a1に対向する表面に貼り付けてある。スペーサ部材550は、蓋部材530の孔閉塞部530aを下框23の外周側壁部23a2から離隔した位置(開放位置)に配置するためのもので、高温状態となった場合に焼失もしくは溶融する樹脂によって成形してある。スペーサ部材550が焼失もしくは溶融する温度は、加熱膨張材40が発泡する温度よりも低い値に設定してある。
【0070】
上記のように構成した建具においては、
図19に示すように、蓋部材530がスペーサ部材550によって開放位置に配置された状態となるため、通常の使用時において開口溝23fに浸入した水が内周側壁部23a1の水抜き孔23g及び外周側壁部23a2の水抜き孔23gを通じて順次下方に案内され、下框23から外部に排出されることになる。従って、開口溝23fに水が貯留することが原因となる複層ガラス21の内部結露等の問題が招来されるおそれはない。
【0071】
一方、火災発生時において建具が高温状態に晒された場合には、まずスペーサ部材550が焼失もしくは溶融し、その後に加熱膨張材40が発泡するため、
図21に示すように、蓋部材530と内周側壁部(支持壁部)23a1との間で膨張した加熱膨張材40によって蓋部材530が閉塞位置に向けて付勢される。従って、鉄等の金属によって成形した定形部材である蓋部材530が2つの水抜き孔23gを覆った状態(閉塞位置)となり、複層ガラス21の2次シール21S2から可燃性ガスが発生したとしても、外部に漏出するおそれがなくなる。これにより、可燃性ガスが室内と室外との間を流通する事態が発生することはなく、また、水抜き孔23gが火炎の貫通口となるおそれもない。これにより、火元と反対側で発炎することに起因した延焼も確実に防止することができるようになる。
【0072】
しかも、実施の形態6によれば、蓋部材530の移動がガイドピン540及びガイド孔23hからなるガイド機構によって案内されるため、確実に閉塞位置に案内されることになり、より確実に水抜き孔23gを閉塞することができるようになる。
【0073】
尚、上述した実施の形態6では、孔閉塞部530aの表面にも加熱膨張材40を配設しているため、高温状態となった場合に、この加熱膨張材40の膨張によって内周側壁部23a1の水抜き孔23gを覆うことが可能となり、さらには孔閉塞部530aが外周側壁部23a2に押しつけられるため、火炎の貫通口を防ぐ上でより有利となる。しかしながら、加熱膨張材40はガイド板部530cの表面にのみ配設するようにしても良い。
【0074】
また、上述した実施の形態6では、蓋部材530と下框23との間にガイド機構を設けるようにしているが、ガイド機構は必ずしも設ける必要はない。
【0075】
(実施の形態7)
図22及び
図23は、本発明の実施の形態7である建具の要部を示したものである。ここで例示する建具は、実施の形態1と同様、開口枠10に対して障子20が面外方向に開閉可能に支持された外倒し窓である。開口枠10の構成及び障子20の構成については実施の形態1と同様であり、下枠(フレーム)12に設けられた水抜き孔に対して蓋部材を配設するようにした点で実施の形態1と異なっている。以下、実施の形態1と異なる構成について詳述し、実施の形態1と同様の構成については同一の符号を付してそれぞれの詳細説明を省略する。
【0076】
実施の形態7の建具では、
図22に示すように、下枠12の見込み面において室内側に位置する部位に当接部12aが設けてある。当接部12aは、下枠12の見込み面から上方に突出するとともに、室外に臨む見付け面の上端部にタイト材Tを備えたもので、障子20を閉じた場合にタイト材Tを介して下框23の室内に臨む見付け面に当接することが可能である。図からも明らかなように、当接部12aの見込み面を構成する上壁部分12a1及び当接部12aの室外に臨む見付け面を構成する外縦壁部分12a2には、それぞれ水抜き孔(孔部)12bが設けてある。水抜き孔12bは、枠11,12,13の見込み面や障子20の室内に臨む面に生じた結露水等の水を室外に排出するためのものである。すなわち、室内で発生した結露水等の水は、上壁部分12a1の水抜き孔12bを介して当接部12aの角筒内部に排出され、さらに外縦壁部分12a2の水抜き孔12bを介して室外に排出されることになる。このため、この建具においては、火災発生時に高温状態となり、複層ガラス21の2次シール21S2から可燃性ガスが発生すると、下框23の水抜き孔12bを通じて外部に排出された可燃性ガスが、下枠12の水抜き孔12bを通じて室内側に進入するおそれがある。
【0077】
そこで、この建具では、下枠12の外縦壁部分12a2に設けた水抜き孔12bに対して蓋部材630を配設するようにしている。蓋部材630は、矩形の平板状を成すもので、鉄等の金属製薄板状部材によって成形してある。蓋部材630は、外縦壁部分12a2に設けた水抜き孔12bを閉塞することができる寸法に形成してある。この蓋部材630には、一方の表面に加熱膨張材40が貼り付けてあり、加熱膨張材40を介して下枠12の内縦壁部分(支持壁部)12a3に取り付けてある。蓋部材630を取り付ける位置は、内縦壁部分12a3の室外側に位置する見付け面において外縦壁部分12a2に設けた水抜き孔12bに対向する位置である。
【0078】
上記のように構成した建具においては、蓋部材630が下枠12の水抜き孔12bから離隔した位置(開放位置)に維持され、水抜き孔12bが開口された状態となるため、通常の使用時において枠11,12,13や障子20の室内に臨む面に生じた結露水等の水が水抜き孔12bを介して外部に排出されることになる。
【0079】
一方、火災発生時において建具が高温状態に晒された場合には、加熱膨張材40が発泡するため、
図23に示すように、膨張した加熱膨張材40によって蓋部材630が外縦壁部分12a2に向けて付勢され、外縦壁部分12a2に設けた水抜き孔12bを覆った状態となる(閉塞位置)。蓋部材630は、鉄等の金属によって成形した定形部材である。従って、複層ガラス21の2次シール21S2から発生した可燃性ガスが下框23の水抜き孔12bから外部に排出されたとしても、下枠12の水抜き孔12bを通じて室内側に至ることはなく、また、水抜き孔12bが火炎の貫通口となるおそれもない。これにより、火元と反対側で発炎することに起因した延焼も確実に防止することができるようになる。
【0080】
尚、実施の形態7においては、下框23の水抜き孔12bに対して蓋部材を配設していないが、下枠12に対して蓋部材630を配設し、さらに実施の形態1〜実施の形態5で記載したように、下框23の水抜き孔23gに対して蓋部材30,130,230,330,430,431のいずれかを配設しても良い。
【0081】
(実施の形態8)
図24及び
図25は、本発明の実施の形態8である建具の要部を示したものである。ここで例示する建具は、開口枠110と左右2枚の障子120,220とを備え、開口枠110に対して2枚の障子120,220を左右方向にスライドさせて開閉するようにした引き違い窓と称されるものである。
【0082】
図には明示していないが、実施の形態8の障子120,220は、実施の形態1と同様の構成を有した複層ガラス21の四周に上框、下框(フレーム)123,223及び左右の縦框を装着することによって構成したものである。複層ガラス21の構成については、実施の形態1と同一の符号を付してそれぞれの詳細説明を省略する。
【0083】
開口枠110の室外側に配置する障子(以下、区別する場合には外障子120という)の下框123は、アルミニウム合金や樹脂によって成形した押し出し形材であり、角筒状を成す框基部123aと、框基部123aの上面に設けた2つの当接ヒレ部123b,123cとが一体に成形してある。框基部123aは、見付け方向に沿った寸法が見込み方向に沿った寸法に対して4倍以上の長さを有したもので、筒内部に補強壁部123a3を有している。框基部123aの適宜箇所には、下枠112のレール部112aを走行する戸車125が配設してある。室内側の当接ヒレ部123bは、框基部123aの室内側縁部から上方に向けて突出したもので、框基部123aの室内に臨む見付け面と同一平面上に位置するように設けてある。室外側の当接ヒレ部(支持壁部)123cは、框基部123aの室外側縁部から室外に向けて水平に延在した後、上方に向けて屈曲したものである。これらの当接ヒレ部123b,123cは、上方への突出高さが互いに同じになるように構成してあり、相互間に複層ガラス21を挟持している。すなわち、外障子120の下框123には、当接ヒレ部123b,123cの相互間に構成される開口溝123dに複層ガラス21を挿入し、それぞれのガラスパネル21b,21cと、当接ヒレ部123b,123cとの間に止水材26を設けることによって当接ヒレ部123b,123cの相互間に複層ガラス21が挟持してある。
【0084】
開口枠110の室内側に配置する障子(以下、区別する場合には内障子220という)の下框223は、アルミニウム合金や樹脂によって成形した押し出し形材であり、角筒状を成す框基部223aと、框基部223aの上面に設けた2つの当接ヒレ部223b,223cとが一体に成形してある。框基部223aは、見付け方向に沿った寸法が見込み方向に沿った寸法に対して3倍程度の長さを有したものである。框基部223aの適宜箇所には、下枠112のレール部112aを走行する戸車225が配設してある。室外側の当接ヒレ部223bは、框基部223aの室外側に位置する縁部から上方に向けて突出したもので、框基部223aの室外側に臨む見付け面と同一平面上に位置するように設けてある。室内側の当接ヒレ部(支持壁部)223cは、框基部223aの室内側に位置する縁部から室内側に向けて水平に延在した後、上方に向けて屈曲したものである。これらの当接ヒレ部223b,223cは、上方への突出高さが互いに同じになるように構成してあり、外障子120と同様、相互間の開口溝223dに複層ガラス21を挟持している。
【0085】
図からも明らかなように、外障子120の下框123には、框基部123aの上壁部123a1、下壁部123a2及び補強壁部123a3にそれぞれ水抜き孔(孔部)123eが設けてあり、内障子220の下框223には、框基部223aの上壁部223a1及び下壁部223a2にそれぞれ水抜き孔(孔部)223eが設けてある。これらの水抜き孔123e,223eは、開口溝123d,223dに浸入した水を下框123,223の外部に排出するためのもので、下框123,223の両端となる部位に形成してある。すなわち、外障子120の開口溝123dに浸入した水は、上壁部123a1の水抜き孔123e、補強壁部123a3の水抜き孔123e及び下壁部123a2の水抜き孔123eを通じて順次下方に案内され、下框123から外部に排出された後、下框123と下枠112との隙間から室外側に流れ落ちることになる。同様に、内障子220の開口溝223dに浸入した水は、上壁部223a1の水抜き孔223e及び下壁部223a2の水抜き孔223eを通じて順次下方に案内され、下框223から外部に排出された後、下框223と下枠112との隙間から室外側に流れ落ちることになる。
【0086】
さらに、この建具には、下框123,223の開口溝123d,223dにおいて框基部123a,223aから屈曲して上方に延在する当接ヒレ部(以下、屈曲当接ヒレ部123c,223cという)と水抜き孔123eとの間となる位置にそれぞれ蓋部材730が配設してあるとともに、蓋部材730を挟んで水抜き孔123e,223eに対応する部位に位置した屈曲当接ヒレ部123c,223cに加熱膨張材40が配設してある。
【0087】
蓋部材730は、鉄等の金属によって成形した矩形の薄板状部材である。この蓋部材730は、一方の縁部を框基部123a,223aからそのまま上方に延在する当接ヒレ部(以下、鉛直当接ヒレ部123b,223bという)に当接させた場合に(閉塞位置)、上壁部123a1,223a1の水抜き孔123e,223eを閉塞することができ、かつ他方の縁部を屈曲当接ヒレ部123c,223cに配設した加熱膨張材40の表面に当接させた場合に水抜き孔123e,223eを開放することのできる寸法に形成してある。これらの蓋部材730は、高温状態となった場合に溶融する性質を有した熱溶融性の粘着材によって下框123,223の見込み面に接着した状態で取り付けてある。粘着材が溶融する温度は、2次シール21S2が熱分解する以前の温度であって、さらに後述の加熱膨張材40が発泡する温度よりも低い値に設定してある。蓋部材730を取り付ける位置は、
図24に示すように、水抜き孔123e,223eと屈曲当接ヒレ部123c,223cとの間であって水抜き孔123e,223eを完全に開放した位置(開放位置)である。
【0088】
加熱膨張材40は、膨張黒鉛等のように、高温状態となった場合に発泡して膨張するもので、細幅の帯状に成形したものが屈曲当接ヒレ部123c,223cの見付け面に取り付けてある。上述したように加熱膨張材40の表面には、蓋部材730の一方の縁部が当接した状態にある。加熱膨張材40の発泡温度は、2次シール21S2が熱分解する以前の値に設定してある。
【0089】
上記のように構成した建具では、蓋部材730が粘着材によって開放位置に拘束された状態となる。従って、通常の使用時において開口溝123d,223dに浸入した水は、水抜き孔123e,223eを通じて順次下方に案内され、下框123,223から外部に排出された後、下框123,223と下枠112との隙間から室外側に流れ落ちることになる。これにより、開口溝123d,223dに水が貯留することが原因となる複層ガラス21の内部結露等の問題が招来されるおそれがなくなる。
【0090】
一方、火災発生時において建具が高温状態に晒された場合には、粘着材が溶融した後に加熱膨張材40が発泡するため、
図25に示すように、膨張した加熱膨張材40によって蓋部材730が閉塞位置に向けて付勢され、鉛直当接ヒレ部123b,223bに当接した位置に配置される。従って、鉄等の金属によって成形した定形部材である蓋部材730が水抜き孔123e,223eを覆った状態となり、複層ガラス21の2次シール21S2から可燃性ガスが発生したとしても、外部に漏出するおそれがなくなる。これにより、可燃性ガスが室内と室外との間を流通する事態が発生することはなく、また、水抜き孔123e,223eが火炎の貫通口となるおそれもない。これにより、火元と反対側で発炎することに起因した延焼も確実に防止することができるようになる。
【0091】
(実施の形態9)
図26及び
図27は、本発明の実施の形態9である建具の要部を示したものである。ここで例示する建具は、複層ガラスの四周を直接開口枠に支持させるようにしたFIX窓と称されるものである。複層ガラス21の構成については、実施の形態1と同一であるため、同一の符号を付してそれぞれの詳細説明を省略する。
【0092】
開口枠210は、図には明示していないが、上枠、下枠(フレーム)212及び左右の縦枠を四周枠組みすることによって構成したものである。上枠、下枠212及び縦枠は、それぞれが同様の構成を有するように構成してあるため、以下においては下枠212についてのみ説明を行うこととする。
【0093】
開口枠210の下枠212は、アルミニウム合金や樹脂によって成形した押し出し形材であり、基準板部212aと、2つの当接板部212b,212cと、外周板部212dとが一体に成形してある。基準板部212aは、開口枠210の見込み方向に沿って延在する部分であり、室外側に位置する部分がほぼ平坦な板状を成している。基準板部212aの室内側に位置する縁部は、室内に向けて漸次開口枠210の内周側に傾斜した後に屈曲し、見込み方向に沿って延在している。
【0094】
当接板部212b,212cは、基準板部212aの縁部からそれぞれ見付け方向に沿って延在するものである。室外側の当接板部(以下、区別する場合に外方当接板部212bという)は、基準板部212aの縁部から開口枠210の内周側に向けて延在し、開口枠210の室外に臨む見付け面を構成している。これに対して室内側の当接板部(以下、区別する場合に内方当接板部212cという)は、基準板部212aの縁部から開口枠210の内周側及び外周側に向けて延在し、開口枠210の室内に臨む見付け面を構成している。内方当接板部212cにおいて開口枠210の内周側に向けて延在した部分は、さらに室外側に向けて屈曲した後、開口枠210の外周側に向けて屈曲しており、外方当接板部212bとの間に開口溝212eを構成している。すなわち、開口枠210の下枠212には、外方当接板部212bと内方当接板部212cの室外側に位置する部分との間に構成される開口溝212eに複層ガラス21を挿入し、それぞれのガラスパネル21b,21cと、当接板部212b,212cとの間に止水材26を設けることによって当接板部212b,212cの相互間に複層ガラス21が挟持してある。
【0095】
外周板部212dは、基準板部212aの外周に臨む見込み面から見付け方向に沿って延在した部分である。外周板部212dの延在端部は、室外側に向けて屈曲した後、外方当接板部212bを超えた位置において開口枠210の外周側に向けて屈曲し、見付け方向に沿って延在している。図からも明らかなように、外周板部212dは、基準板部212aにおいて開口溝212eのほぼ中央となる位置から突出している。外周板部212dにおいて基準板部212aと対向する部分は、室外側に向けて漸次外方となるようにわずかに傾斜している。
【0096】
図からも明らかなように、開口枠210の下枠212には、基準板部212aに水抜き孔(孔部)212fが設けてある。水抜き孔212fは、開口溝212eに浸入した水を下枠212の外部に排出するためのもので、外周板部212dよりも室外側となる部位に形成してある。すなわち、下枠212の開口溝212eに浸入した水は、基準板部212aの水抜き孔212fを通じて外部に排出された後、外周板部212dにおいて基準板部212aに対向する部分を介して室外側に案内されて流れ落ちることになる。
【0097】
さらに、この建具には、下枠212の開口溝212eにおいて水抜き孔212fよりも室内側となる部位に蓋部材830が配設してあるとともに、蓋部材830を挟んで水抜き孔212fに対応する部位に加熱膨張材40が配設してある。
【0098】
蓋部材830は、鉄等の金属によって成形した矩形の薄板状部材である。この蓋部材830は、
図27に示すように、一方の縁部を外方当接板部212bに当接させた場合に(閉塞位置)、水抜き孔212fを閉塞することができる寸法に形成してある。この蓋部材830は、高温状態となった場合に溶融する性質を有した熱溶融性の粘着材によって下枠212の見込み面に接着した状態で取り付けてある。粘着材が溶融する温度は、2次シール21S2が熱分解する以前の温度であって、さらに後述の加熱膨張材40が発泡する温度よりも低い値に設定してある。
【0099】
加熱膨張材40は、膨張黒鉛等のように、高温状態となった場合に発泡して膨張するもので、細幅の帯状に成形したものが下枠212に設けた支持金具50に取り付けてある。支持金具50は、下枠212の基準板部212aに沿って延在する基部51と、基部51の一方の縁部から上方に向けて屈曲した取付部(支持壁部)52とを一体に成形したもので、取付部52が室外側となる姿勢で取付ネジ53により基部51を介して下枠212の基準板部212aに取り付けてある。上述した加熱膨張材40は、支持金具50の取付部52において室外に向いた表面に取り付けてある。支持金具50を取り付ける位置は、蓋部材830の他方の縁部を加熱膨張材40の表面に当接させた場合に(開放位置)、水抜き孔212fを開放することができる位置である。加熱膨張材40の発泡温度は、2次シール21S2が熱分解する以前の値に設定してある。
【0100】
上記のように構成した建具では、
図26に示すように、蓋部材830が粘着材によって開放位置に拘束された状態となる。従って、通常の使用時において開口溝212eに浸入した水は、水抜き孔212fを通じて外部に排出された後、室外側に流れ落ちることになる。これにより、開口溝212eに水が貯留することが原因となる複層ガラス21の内部結露等の問題が招来されるおそれがなくなる。
【0101】
一方、火災発生時において建具が高温状態に晒された場合には、粘着材が溶融した後に加熱膨張材40が発泡するため、
図27に示すように、膨張した加熱膨張材40によって蓋部材830が閉塞位置に向けて付勢され、外方当接板部212bに当接した位置に配置される。従って、鉄等の金属によって成形した定形部材である蓋部材830が水抜き孔212fを覆った状態となり、複層ガラス21の2次シール21S2から可燃性ガスが発生したとしても、外部に漏出するおそれがなくなる。これにより、可燃性ガスが室内と室外との間を流通する事態が発生することはなく、また、水抜き孔212fが火炎の貫通口となるおそれもない。これにより、火元と反対側で発炎することに起因した延焼も確実に防止することができるようになる。
【0102】
尚、上述した実施の形態1〜実施の形態9では、いずれも蓋部材を加熱膨張材に接触させるように配置しているが、必ずしも蓋部材を加熱膨張材に接触させておく必要はなく、互いの間に隙間を確保するように配設しても構わない。また、複層ガラスとしてフロートガラスパネルと網入りガラスパネルとを接合することによって構成したものを適用しているが、ガラスパネルの組み合わせはこれに限定されない。さらに、複層ガラスの2次シールについてもポリサルファイドもしくはシリコン製のものに限らない。
【0103】
また、上述した実施の形態1〜実施の形態5及び実施の形態7〜実施の形態9では、蓋部材を粘着材によってフレームに取り付けるようにしているが、必ずしも粘着材を用いる必要はない。例えば、実施の形態1〜実施の形態5及び実施の形態7〜実施の形態9においても実施の形態6と同様に、焼失もしくは溶融する樹脂によってスペーサ部材を成形し、このスペーサ部材によって蓋部材を開放位置に配置するようにしても構わない。