特許第6503263号(P6503263)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6503263
(24)【登録日】2019年3月29日
(45)【発行日】2019年4月17日
(54)【発明の名称】浴室の排水構造
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/20 20060101AFI20190408BHJP
   E03C 1/28 20060101ALI20190408BHJP
【FI】
   E03C1/20 E
   E03C1/28 B
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-166190(P2015-166190)
(22)【出願日】2015年8月25日
(65)【公開番号】特開2017-43929(P2017-43929A)
(43)【公開日】2017年3月2日
【審査請求日】2018年5月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000157212
【氏名又は名称】丸一株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】501362906
【氏名又は名称】積水ホームテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123021
【弁理士】
【氏名又は名称】渥美 元幸
(72)【発明者】
【氏名】奥澤 慶太
(72)【発明者】
【氏名】守谷 淳
【審査官】 七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】 実開平04−001272(JP,U)
【文献】 特開2010−007297(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/12−1/33
A61H 33/00
A47K 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面方向にトラップ排出口を有する排水トラップと、洗い場パンと、浴槽が載置される浴槽パンとを備える浴室の排水構造であって、
前記浴槽は、2つ以上の排水口を備え、
前記浴槽パンは、前記浴槽パン上に前記浴槽の一方の排水口からの排水を一時的に貯留させる貯水部を備え、
前記排水トラップは、前記浴槽の他方の排水口からの排水を浴槽配管を介して排水トラップ内に流入させるガイド部と、前記貯水部からの排水を排水トラップ内に流入させるトラップ排水口と、防臭パイプとを備え、
前記ガイド部は、ガイド部からの排水を排出するガイド部排出口が前記トラップ排出口へ向かうよう方向決めがなされて前記防臭パイプ内に配置される
ことを特徴とする浴室の排水構造。
【請求項2】
前記ガイド部のガイド部排出口は、前記防臭パイプの下端以下の高さ位置から前記トラップ排出口へ向けて排水を排出する
ことを特徴とする請求項1記載の浴室の排水構造。
【請求項3】
前記ガイド部のガイド部排出口は、平面視で前記トラップ排出口側に向けて扇状に広がる形状を有している
ことを特徴とする請求項1または2記載の浴室の排水構造。
【請求項4】
前記ガイド部は、前記防臭パイプ側へ突出する方向決めリブを備え、
当該方向決めリブと前記防臭パイプの内側に設けられたガイド受けとを合致させて方向決めがなされる
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の浴室の排水構造。
【請求項5】
前記ガイド部は、上方へ引き上げることで前記防臭パイプから着脱可能になっている
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の浴室の排水構造。
【請求項6】
洗い場パンと、2つ以上の排水口を有する浴槽が載置される浴槽パンとを備える浴室の排水構造に用いられる排水トラップであって、
前記浴槽の一方の排水口からの排水を浴槽配管を介して排水トラップ内に流入させるガイド部と、
前記浴槽の他方の排水口からの排水を前記浴槽パン上に一時的に貯留させる貯水部からの排水を排水トラップ内に流入させるトラップ排水口と、
防臭パイプと、側面方向にトラップ排出口とを備え、
前記ガイド部は、前記防臭パイプ内に配置され、
排水トラップに防臭パイプを取り付けたまま前記ガイド部をトラップ排水口から着脱可能とした
ことを特徴とする排水トラップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水トラップを用いた浴室の排水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
重度の要介護者のための入浴機器として機械浴槽がある。機械浴槽は、ストレッチャーや車椅子等の専用の介護用機器を使用することにより仰臥位や座位のまま入浴可能とするもので、浴槽の側面を開閉して介護用機器を出入りさせる構造となっている(例えば、特許文献1参照。)。このような機械浴槽では、入浴者が出入りするごとに浴槽側面を開閉させる必要があるところ、浴槽内の水が満水状態で扉を開けると洗い場パン上に風呂水が流れ出してしまうため、浴槽内の水を排出してから扉の開閉をしなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−334375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の浴室の排水構造では浴槽内の水を排出するのに時間がかかるという問題がある。機械浴槽において浴槽内の水が満水状態というのは入浴者がいる状況である。入浴者は排水の完了を待たなければならず、場合によっては湯冷めしてしまうため、機械浴槽では少しでも排水を迅速に行って扉が開閉可能になるまでの時間を短縮する必要がある。
【0005】
そこで、本発明は、このような問題に鑑みなされたものであり、機械浴槽における排水時間を大幅に短縮可能な浴室の排水構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明に係る浴室の排水構造は、側面方向にトラップ排出口を有する排水トラップと、洗い場パンと、浴槽が載置される浴槽パンとを備える浴室の排水構造であって、前記浴槽は、2つ以上の排水口を備え、前記浴槽パンは、前記浴槽パン上に前記浴槽の一方の排水口からの排水を一時的に貯留させる貯水部を備え、前記排水トラップは、前記浴槽の他方の排水口からの排水を浴槽配管を介して排水トラップ内に流入させるガイド部と、前記貯水部からの排水を排水トラップ内に流入させるトラップ排水口と、防臭パイプとを備え、前記ガイド部は、ガイド部からの排水を排出するガイド部排出口が前記トラップ排出口へ向かうよう方向決めがなされて前記防臭パイプ内に配置されることを特徴とする。
【0007】
これにより、浴槽の一方の排水口からの排水は浴槽配管からガイド部を経由して直接トラップ排出口へ向けて優先的に迅速に排出されるので、排水口を2つ設けたことによる排水性能の向上が図られ、排水時間を大幅に短縮することができる浴室の排水構造が実現される。
【0008】
ここで、前記ガイド部のガイド部排出口は、前記防臭パイプの下端以下の高さ位置から前記トラップ排出口へ向けて排水を排出するのが好ましく、前記ガイド部のガイド部排出口は、平面視で前記トラップ排出口側に向けて扇状に広がる形状を有しているのが好ましい。
【0009】
これにより、ガイド部を経由する排水はトラップ排出口へ向けて排水を直接排出される一方、防臭パイプの下側が塞がれて浴槽パンを経由する排水の流れが制限されるので、ガイド部を経由する排水をより迅速に排出することができ、排出時間の大幅な短縮が可能となる。
【0010】
また、前記ガイド部は、前記防臭パイプ側へ突出する方向決めリブを備え、当該方向決めリブと前記防臭パイプの内側に設けられたガイド受けとを合致させて方向決めがなされるとするのが好ましい。
【0011】
さらに、前記ガイド部は、上方へ引き上げることで前記防臭パイプから着脱可能とすれば、ガイド部の清掃性や施工時の操作性が良好となる。
【0012】
また、本発明は、洗い場パンと、2つ以上の排水口を有する浴槽が載置される浴槽パンとを備える浴室の排水構造に用いられる排水トラップであって、前記浴槽の一方の排水口からの排水を浴槽配管を介して排水トラップ内に流入させるガイド部と、前記浴槽の他方の排水口からの排水を前記浴槽パン上に一時的に貯留させる貯水部からの排水を排水トラップ内に流入させるトラップ排水口と、防臭パイプと、側面方向にトラップ排出口とを備え、前記ガイド部は、前記防臭パイプ内に配置され、排水トラップに防臭パイプを取り付けたまま前記ガイド部をトラップ排水口から着脱可能とした排水トラップとして構成することもできる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明に係る浴室の排水構造によれば、浴槽に複数の排水口を設けて、一方の排水口からは浴槽配管からガイド部を経由して排水トラップ内へ導き直接トラップ排出口へ向けて優先的に排出させ、他方の排水口からは浴槽パン上に一時的に貯留させつつ、ガイド部により排水の流れを制限しているので、ガイド部経由の排水を迅速に行うことができ、排水性能の向上、ひいては、排水時間の大幅な短縮が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】浴室の排水構造の構成を示す図である。
図2】排水トラップ部を拡大して示す図である。
図3】トラップ本体の構成を示す図である。
図4】ガイド部の平面図である。
図5】ガイド部のA−A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る浴室の排水構造について図を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、浴室の排水構造の構成を示す図である。
【0017】
本実施の形態に係る浴室の排水構造は、排水トラップ10と、洗い場パン40と、機械浴槽30と、浴槽パン20とを備えている。
【0018】
機械浴槽30は、浴槽パン20の上に載置されており、洗い場パン40側に開閉する扉31を備えている。機械浴槽30は、浴槽配管11を介して排水トラップ10へ排水するための第1排水口32、および、浴槽パン20上の貯水部21へ排水するための第2排水口33の複数の排水口を備えている。
【0019】
浴槽パン20は、機械浴槽30の第2排水口33からの排水を一時的に貯留させるための空間である貯水部21を備えている。ここでは、洗い場パン40と段差を設けて浴槽パン20を洗い場パン40よりも低い位置とし、浴槽パン20上に排水を溜められるようにすることで貯水部21を形成している。貯水部21で一時的に貯留された排水は、トラップ排水口17から順次排出される。なお、図1では機械浴槽30の第2排水口33からの排水は貯水部21へ直接垂れ流す構成としているが、浴槽パン20上への排水の落下音を防ぐために浴槽パン20の上に導く配管を設けるとしてもよい。
【0020】
排水トラップ10は、浴槽パン20と洗い場パン40との境界部分に設置され、ガイド部12と防臭パイプ13とを備えている。ガイド部12は、機械浴槽30の第1排水口32から浴槽配管11を介して排水トラップ10へ導かれた排水を防臭パイプ13の下端以下の高さ位置から排出するための部材である。浴槽配管11は硬質管で構成されているが、部分的にビニール管などの可撓管が用いられていてもよい。機械浴槽30の第1排水口32からの排水は、ガイド部12を経て洗い場パン40の下にある床下配管41へと導かれ、機械浴槽30の第2排水口33からの排水は、トラップ排水口17を経て床下配管41へと導かれるようになっている。つまり、トラップ排水口17は、洗い場パン40からの排水と浴槽パン20上の貯水部21からの排水が流入する、兼用の排水口となっている。
【0021】
図2は、排水トラップ部を拡大して示す図であり、トラップ本体の構成を示す図である。
【0022】
排水トラップ10は、防臭パイプ13を備えており、側面方向にトラップ排出口16を備えたランニングトラップ構造となっている。
【0023】
防臭パイプ13は、その上端がトラップ排水口17に据え付けられ、トラップ排水口17から流入した排水を排水トラップ10内へ案内する。防臭パイプ13の下端は、排水トラップ10内の、封水と呼ばれる排水の溜り水部分内に配置されることで、トラップ排水口17からトラップ排出口16までの流路上に、封水による満水部分を形成し、トラップ排出口16からトラップ排水口17へ臭気などが逆流することを防ぐ。
【0024】
また、排水トラップ10は、正面視で下端がトラップ排出口16に向かって屈曲したガイド部12を備えており、ガイド部12が防臭パイプ13の上方からトラップ内に流入する排水(機械浴槽30の第1排水口32からの排水)を、防臭パイプ13の下端と同じ高さ又はそれよりも下方からトラップ排出口16へ向けて直接排出する。このガイド部12は、方向決めリブ14を備えており、防臭パイプ13の内側に設けられたガイド受け13aに、この方向決めリブ14を合わせることによりガイド部排出口15の排水方向が決定され、排水トラップ10の本体にガイド部12が取り付けられるようになっている。なお、防臭パイプ13が排水トラップ10に取り付けられた状態でガイド部12をトラップ排水口17から垂直に引き上げれば、ガイド部12を排水トラップ10から取り外すことができ、トラップ排水口17からガイド部12を防臭パイプ13に取り付けられるようにして着脱可能とするのが清掃性や操作性の点で好ましい。
【0025】
図4はガイド部12の平面図であり、図5はガイド部12のA−A線断面図である。
【0026】
図4に示すように、トラップ排出口16側にあるガイド部12のガイド部排出口15は、平面視でハの字状(扇状)に広がる形状を有しており、ガイド部12の排水性能を向上させるとともに、防臭パイプ13の下側を塞ぐようにして浴槽パン20からの排水(機械浴槽30の第2排水口33からの排水)を制限している。浴槽配管11を介した第1排水口32からの排水も、浴槽パン20上の貯水部21およびトラップ排水口17を介した第2排水口33からの排水も、単純に一つの排水トラップ10で処理するとすれば、機械浴槽30の排水口を複数にする意義が薄れてしまう。排水トラップ10が浴槽配管11からの排水も浴槽パン20からの排水も同時に処理するため、浴槽配管11からの排水は、浴槽パン20上の貯水部21に排水が増すにつれて遅くなる。この点、本実施形態では、ガイド部12を、ガイド部排出口15がトラップ排出口16へ向くよう防臭パイプ13内に方向決め可能に配置し、さらにガイド部排出口15が平面視でトラップ排出口16側に向けて広がる形状とすることで、排水性能を向上させている。すなわち、ガイド部12によって浴槽パン20上の貯水部21からの排水よりも浴槽配管11からの排水がトラップ排出口16に向かって流れるように促し、浴槽配管11からの排水を優先的に処理するようになっている。このように、浴槽パン20上の貯水部21からの排水の速度を制限し、浴槽配管11からの排水を迅速にすることで、第1排水口32および第2排水口33という2つの浴槽排水口から浴槽内の水は迅速に排出され、排水口が増えた分、排水性能が向上するという効果を得ることが可能になっている。
【0027】
ガイド部12の方向決めリブ14は、ガイド部排出口15の排水方向を決めるためにガイド部12から防臭パイプ13側へ突出して形成されたリブである。防臭パイプ13の内側に突出して設けられたガイド受け13aに方向決めリブ14を嵌合等して合致させることにより、ガイド部12は防臭パイプ13内に取り付けられる。ここでは、方向決めリブ14をガイド部排出口15の排水方向と反対方向へ突出するように形成しているが、ガイド部排出口15の排水方向を規定することができれば、リブを形成する向きはこれに限る必要はなく、またリブの数も1つに限定されるものではない。
【0028】
このように、本実施の形態に係る浴室の排水構造によれば、浴槽内に複数の排水口を設けて、一方の排水口からの排水を浴槽配管11からガイド部12を経由させて排水トラップ10へと導き、他方の排水口からの排水を浴槽パン20上の貯水部21に一時的に貯留しながらガイド部12を経ることなくトラップ排水口17から排水トラップ10へと導いている。ガイド部12は、ガイド部排出口15からの排水が排水トラップ10の側面にあるトラップ排出口16へと向くように方向決めリブ14と防臭パイプ13に設けられたガイド受け13aとにより方向決めがなされて防臭パイプ13内に取り付けられる。このとき、ガイド部排出口15は、平面視でトラップ排出口16側に向けて扇状に広がって防臭パイプ13の下端以下の高さ位置からトラップ排出口16へ向けて排水を直接排出するとともに、防臭パイプ13の下側を塞いで浴槽パン20上からの排水の流れを制限するので、浴槽配管11からの排水が迅速に行われて、排水口を2つ設けたことによる排水性能の向上を享受することができる。
【0029】
以上、本発明に係る浴室の排水構造について、実施形態に基づいて説明したが本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の目的を達成でき、かつ発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々設計変更が可能であり、それらも全て本発明の範囲内に包含されるものである。
【0030】
例えば、上記実施の形態では、機械浴槽を用いた場合を記載しているが、本発明はどのような浴槽に利用される浴室の排水構造に用いてもよい。
【0031】
また、上記実施の形態では、洗い場パン40と浴槽パン20との間に段差を設けることで浴槽パン20上に貯水部21を形成することとしたが、別途貯水用の槽を浴槽パン20上に用意して貯水部としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、介護用浴槽や機械浴槽など、短時間で排水を完了させる必要がある浴槽を利用する浴室の排水構造として有用である。
【符号の説明】
【0033】
10 排水トラップ
11 浴槽配管
12 ガイド部
13 防臭パイプ
13a ガイド受け
14 方向決めリブ
15 ガイド部排出口
16 トラップ排出口
17 トラップ排水口
20 浴槽パン
21 貯水部
30 機械浴槽
31 扉
32 第1排水口
33 第2排水口
40 洗い場パン
41 床下配管
図1
図2
図3
図4
図5