特許第6503269号(P6503269)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6503269
(24)【登録日】2019年3月29日
(45)【発行日】2019年4月17日
(54)【発明の名称】ゲート駆動回路
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/12 20160101AFI20190408BHJP
   H02M 7/12 20060101ALI20190408BHJP
   H02M 1/08 20060101ALI20190408BHJP
【FI】
   H02J50/12
   H02M7/12 A
   H02M1/08 A
   H02M7/12 G
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-176101(P2015-176101)
(22)【出願日】2015年9月7日
(65)【公開番号】特開2017-55497(P2017-55497A)
(43)【公開日】2017年3月16日
【審査請求日】2018年6月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003115
【氏名又は名称】東洋電機製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 誠
(72)【発明者】
【氏名】穐吉 啓史
(72)【発明者】
【氏名】中村 将之
【審査官】 下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−079107(JP,A)
【文献】 特開2012−125138(JP,A)
【文献】 特開2004−194400(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/00 − 50/90
H02M 1/00 − 1/44
H02M 7/00 − 7/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列共振型のワイヤレス電力伝送システムにおける2次側コンバータの下アームスイッチを駆動するゲート駆動回路において、
前記下アームスイッチをオン・オフ制御するノーマリーオン形フォトカプラと、
前記2次側コンバータの出力側に接続された直流キャパシタの電圧を分圧する分圧回路と、を備え、
前記ノーマリーオン形フォトカプラは、前記直流キャパシタの電圧を入力電圧とする制御電源の起動状態では、当該制御電源の出力電圧に基づく電圧を前記下アームスイッチのゲート電圧の電源電圧として当該下アームスイッチをオン・オフ制御し、前記制御電源の非起動状態では、前記分圧回路による前記直流キャパシタの分圧電圧を前記下アームスイッチのゲート電圧の電源電圧として当該下アームスイッチをオンにする、
ことを特徴とするゲート駆動回路。
【請求項2】
請求項1に記載のゲート駆動回路において、
前記分圧回路は、前記直流キャパシタに並列に結合されて、前記直流キャパシタの電圧を分圧する直列接続された2つのキャパシタを有する、
ことを特徴とするゲート駆動回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲート駆動回路、より詳しくは直列共振型のワイヤレス電力伝送システムにおける2次側コンバータの下アームスイッチのゲート駆動回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、直列共振型のワイヤレス電力伝送システムを適用したワイヤレスインホイールモータ駆動システムが開示されている。このワイヤレスインホイールモータ駆動システムは、1次側(車体側)から磁界共振結合によりワイヤレスで伝送される交流電力を、2次側(インホイールモータ側)において2次側コンバータで整流して三相インバータを経て三相モータを駆動するものである。
【0003】
図2は、非特許文献1に記載されているワイヤレスインホイールモータ駆動システムの2次側の要部の回路構成図である。2次側回路は、2次側コンバータ20と、直流キャパシタ50と、三相インバータ70と、三相モータ80とを有する。2次側コンバータ20から1次側を見ると、2次側コンバータ20の入力端子には交流電流源10が接続されていると見なすことができる。交流電流源10は、1次側からの給電又は地上側からの給電を想定している。2次側回路では、2次側コンバータ20により交流電流を直流に変換した後、直流キャパシタ50を介して三相インバータ70により再び交流に変換して、三相モータ80を駆動する。
【0004】
非特許文献1では、2次側コンバータ20の上アームスイッチ20HA及び20HBを常にオフとし、三相モータ80が要求する電力よりも1次側からの伝送電力が大きい場合に、2次側コンバータ20の下アームスイッチ20LA及び20LBをオンにして入力端子間を短絡する。これにより、2次側コンバータ20の出力電圧Vdcの上昇を抑制するようにしている。
【0005】
ここで、2次側コンバータ20の下アームスイッチ20LA、20LBは、図2に示すように、2次側コンバータ20の出力電圧Vdcから制御電源60により電圧V1を生成し、その電圧V1に基づいて対応するゲート駆動回路30A、30Bにより駆動される。ゲート駆動回路30A、30Bは、同じ回路構成からなる。以下、ゲート駆動回路30A、30Bをゲート回路30と総称し、下アームスイッチ20LA、20LB、ゲートGA、GB、エミッタEA、EB、ゲート電圧VGEA、VGEBを、それぞれ下アームスイッチ20L、ゲートG、エミッタE、ゲート電圧VGEと総称して説明する。
【0006】
図3は、ゲート駆動回路30の従来の回路構成図である。ゲート駆動回路30は、絶縁回路34及びノーマリーオフ形フォトカプラ32を有する。絶縁回路34は、例えば絶縁型DC/DCコンバータで構成され、制御電源60からの電圧V1を入力して電圧V2と、電圧V2の中間電位である電圧V2Gとを出力する。
【0007】
ノーマリーオフ形フォトカプラ32のVP+端子及びVP−端子は、絶縁回路34のV2+端子及びV2−端子にそれぞれ接続される。ノーマリーオフ形フォトカプラ32の出力端子は、ゲート抵抗31を介して2次側コンバータ20の下アームスイッチ20LのゲートGに接続される。ノーマリーオフ形フォトカプラ32の1次側ダイオードは、アノードにCPU等の制御部からのオン・オフ信号が入力され、カソードはプルダウン抵抗33を介して接地される。絶縁回路34のV2G端子は、2次側コンバータ20の下アームスイッチ20LのエミッタEに接続される。
【0008】
ノーマリーオフ形フォトカプラ32は、絶縁回路34からの電圧V2を下アームスイッチ20Lのゲート電圧VGEの電源電圧として、当該下アームスイッチ20Lを制御部からのオン・オフ信号に基づいてオン・オフ制御する。すなわち、制御部からのオン・オフ信号がオン(高レベル)のときは、ゲート電圧VGEを(V2+)−(V2G)として、下アームスイッチ20Lをオンとする。これに対し、制御部からのオン・オフ信号がオフ(低レベル)のときは、ゲート電圧VGEを(V2G)−(V2−)として、下アームスイッチ20Lをオフとする。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】山本岳、居村岳広、藤本博志、“ワイヤレスインホイールモータの送電電圧および負荷電圧制御による電力伝送効率最大化”、SPC−15-014、MD−15−04
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、図3に示したゲート駆動回路30は、例えば図2において制御電源60が起動していない非起動状態で1次側からの電力伝送が行われた場合、ゲート駆動回路30A及び30Bが起動しないため、2次側コンバータ20の下アームスイッチ20Lをオンとすることができない。その結果、交流電流源10からの電流が、2次側コンバータ20の各アームスイッチと並列に接続されているダイオードを介して直流キャパシタ30に流れて出力電圧Vdcが大きく上昇して、2次側コンバータ20及び三相インバータ70の各アームスイッチが過電圧で破損してシステムの信頼性が低下することが懸念される。
【0011】
したがって、かかる観点に鑑みてなされた本発明の目的は、直列共振型のワイヤレス電力伝送システムにおける2次側コンバータの出力電圧の不所望な上昇を確実に防止でき、システムの信頼性を向上できるゲート駆動回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成する本発明に係るゲート駆動回路は、
直列共振型のワイヤレス電力伝送システムにおける2次側コンバータの下アームスイッチを駆動するゲート駆動回路において、
前記下アームスイッチをオン・オフ制御するノーマリーオン形フォトカプラと、
前記2次側コンバータの出力側に接続された直流キャパシタの電圧を分圧する分圧回路と、を備え、
前記ノーマリーオン形フォトカプラは、前記直流キャパシタの電圧を入力電圧とする制御電源の起動状態では、当該制御電源の出力電圧に基づく電圧を前記下アームスイッチのゲート電圧の電源電圧として当該下アームスイッチをオン・オフ制御し、前記制御電源の非起動状態では、前記分圧回路による前記直流キャパシタの分圧電圧を前記下アームスイッチのゲート電圧の電源電圧として当該下アームスイッチをオンにする、
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、直列共振型のワイヤレス電力伝送システムにおける2次側コンバータの出力電圧の不所望な上昇を確実に防止でき、システムの信頼性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施の形態に係るゲート駆動回路の構成図である。
図2】本発明に係るゲート駆動回路が適用可能な直列共振型のワイヤレス電力伝送システムを適用したワイヤレスインホイールモータ駆動システムの2次側回路の要部の構成図である。
図3図2に示したゲート駆動回路の従来の回路構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して説明する。
【0016】
図1は、一実施の形態に係るゲート駆動回路の構成図である。図1に示すゲート駆動回路30は、例えば図2に示した直列共振型のワイヤレス電力伝送システムを適用したワイヤレスインホイールモータ駆動システムの2次側コンバータ20の下アームスイッチ20LA又は20LBを駆動するゲート駆動回路30A又は30Bとして用いられる。以下、図3の場合と同様に、ゲート駆動回路30A、30Bをゲート回路30と総称し、下アームスイッチ20LA、20LB、ゲートGA、GB、エミッタEA、EB、ゲート電圧VGEA、VGEBを、それぞれ下アームスイッチ20L、ゲートG、エミッタE、ゲート電圧VGEと総称して説明する。
【0017】
図1に示すゲート駆動回路30は、図3に示した構成においてノーマリーオフ形フォトカプラ32がノーマリーオン形フォトカプラ35に変更され、さらに分圧回路40とダイオード36とが追加されている。ノーマリーオン形フォトカプラ35は、VP+端子及びVP−端子が絶縁回路34のV2+端子及びV2−端子にそれぞれ接続される。
【0018】
分圧回路40は、第1キャパシタ44と、抵抗43と、ダイオード42と、第2キャパシタ41とを有する。第1キャパシタ44は、2次側コンバータ20のVdc+端子とダイオード42のアノードとの間に接続される。第2キャパシタ41は、ダイオード42のカソードと2次側コンバータ20のVdc−端子との間に接続される。抵抗43は、ダイオード42のアノードと2次側コンバータ20のVdc−端子との間に接続される。ダイオード42のカソードは、絶縁回路34のV2+端子に接続される。
【0019】
ダイオード36は、アノードが絶縁回路34のV2−端子に接続され、カソードが2次側コンバータ20のVdc−端子及び絶縁回路34のV2G端子に接続される。ダイオード36は、図2に示した制御電源60の起動状態において、絶縁回路34のV2G端子とV2−端子との間の短絡を防止する。
【0020】
本実施の形態において、分圧回路40は、直列接続された第1キャパシタ44と第2キャパシタ41とを有し、その直列回路が図2に示した2次側コンバータ20の直流キャパシタ50に並列に接続されて、第1キャパシタ44及び第2キャパシタ41により直流キャパシタ50の電圧Vdcを分圧した電圧V3を生成する。そして、この電圧V3がノーマリーオン形フォトカプラ35のVP+端子に給電される。第1キャパシタ44及び第2キャパシタ41は、例えば、電圧V3が図2に示した制御電源60が起動している場合の電圧(V2+)−(V2G)以下で、かつ、2次側コンバータ20の下アームスイッチ20LA、20LBが確実にオンとなるように、それぞれの静電容量が設定される。
【0021】
これにより、図2において、制御電源60の非起動状態で1次側からの電力伝送が行われると、ノーマリーオン形フォトカプラ35は、分圧回路40による直流キャパシタ50の分圧電圧V3を下アームスイッチ20Lのゲート電圧VGEの電源電圧として当該下アームスイッチ20Lをオンにする。
【0022】
その後、制御電源60が起動されて絶縁回路34から電圧V2が出力されると、ノーマリーオン形フォトカプラ35のVP+端子及びVP−端子には絶縁回路34から電圧V2が印加される。そして、ノーマリーオン形フォトカプラ35は、絶縁回路34からの電圧V2を下アームスイッチ20Lのゲート電圧VGEの電源電圧として当該下アームスイッチ20Lをオン・オフ制御する。
【0023】
すなわち、ゲート駆動回路30は、制御部からのオン・オフ信号がオフ(低レベル)であるときは、ゲート電圧VGEを(V2+)−(V2G)として、当該下アームスイッチ20Lをオンとする。これに対し、制御部からのオン・オフ信号がオン(高レベル)であるときは、ゲート電圧VGEを(V2G)−(V2−)として、当該下アームスイッチ20Lをオフとする。
【0024】
分圧回路40は、入力電圧Vdcが低下すると抵抗43を経て第1キャパシタ44を放電し、その後、電圧Vdcの上昇時に第1キャパシタ44及び第2キャパシタ41を再度充電する。
【0025】
このように本実施の形態によると、図2において、2次側コンバータ20の制御電源60が起動していない状態においても、制御電源60が起動するまでの間、2次側コンバータ20の下アームスイッチ20Lをオンとすることができる。これにより、2次側コンバータ20の出力電圧Vdcの上昇を確実に防止することができるので、2次側コンバータ20及び三相インバータ70の破損を防止することができ、直列共振型のワイヤレス電力伝送システムの信頼性を向上することができる。
【0026】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、幾多の変形または変更が可能である。例えば、分圧回路40は、キャパシタ分圧回路に限らず、抵抗分圧回路で構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、直列共振型のワイヤレス電力伝送システムを適用したワイヤレスインホイールモータ駆動システムに応用することができる。
【符号の説明】
【0028】
10 交流電流源
20 2次側コンバータ
30A、30B、30 ゲート駆動回路
34 絶縁回路
35 ノーマリーオン形フォトカプラ
40 分圧回路
41 第2キャパシタ
44 第1キャパシタ
50 直流キャパシタ
60 制御電源
70 三相インバータ
80 三相モータ
図1
図2
図3