特許第6503338号(P6503338)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6503338
(24)【登録日】2019年3月29日
(45)【発行日】2019年4月17日
(54)【発明の名称】HDAC阻害剤
(51)【国際特許分類】
   C07D 231/56 20060101AFI20190408BHJP
   A61K 31/416 20060101ALI20190408BHJP
   C07D 401/06 20060101ALI20190408BHJP
   A61K 31/4439 20060101ALI20190408BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20190408BHJP
   A61P 21/02 20060101ALI20190408BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20190408BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20190408BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20190408BHJP
   A61P 25/36 20060101ALI20190408BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20190408BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20190408BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20190408BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20190408BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20190408BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20190408BHJP
【FI】
   C07D231/56 ZCSP
   A61K31/416
   C07D401/06
   A61K31/4439
   A61P43/00 111
   A61P21/02
   A61P21/04
   A61P21/00
   A61P25/14
   A61P25/36
   A61P25/00 101
   A61P25/28
   A61P31/00
   A61P31/12
   A61P35/00
   A61P29/00
【請求項の数】23
【全頁数】60
(21)【出願番号】特願2016-502499(P2016-502499)
(86)(22)【出願日】2014年3月14日
(65)【公表番号】特表2016-516716(P2016-516716A)
(43)【公表日】2016年6月9日
(86)【国際出願番号】US2014027633
(87)【国際公開番号】WO2014143666
(87)【国際公開日】20140918
【審査請求日】2017年2月27日
(31)【優先権主張番号】61/863,235
(32)【優先日】2013年8月7日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/800,170
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506136483
【氏名又は名称】バイオマリン ファーマシューティカル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】ジャック,ビンセント
(72)【発明者】
【氏名】ルシェ,ジェイムズ,アール.
【審査官】 伊佐地 公美
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−530459(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/121062(WO,A1)
【文献】 特表2009−536615(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/118782(WO,A1)
【文献】 YANYANG LI,BIOORGANIC & MEDICINAL CHEMISTRY LETTERS,2013年 1月 1日,V23 N1,P179-182
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)を有する化合物または医薬的に許容可能なその塩:
(式中:
−Xは環窒素原子の1つのみに結合しており;
Xは:
(i)−Y−[C(R−A−[C(R−B−;
(ii)直接結合;または
(iii)C=O、C(R−C(=O)、C(=O)−C(R、SO−NR、NR−SO、C(=O)NRまたはNR−C(=O)であり;
ここでは:
Yは結合、CR=CR、O、NRまたはS(O)であり;
A及びBのそれぞれは独立に、結合、O、NRまたはS(O)であり;
aは1、2または3であり;
bは0、1、2または3であり;
mは0、1または2であり;
及びRの各存在は、H、F、OH、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、NH、OCO−(C1〜C6アルキル)、OCO−(C3〜C6シクロアルキル)、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6フルオロアルコキシ及びシアノから独立に選択され;または
以下の1つもしくは複数をR及びRに対して適用することができ:
任意の2つのRは、それぞれが結合している炭素と共に、3〜6個の環原子を含む、C3〜C6シクロアルキルもしくはヘテロシクリルを一緒に形成し、ここでは、前記ヘテロシクリル環原子のうちの1つは、O、S(O)及びNRから選択され;または
1つのR及び1つのRは、それぞれが結合している炭素と共に、3〜6個の環原子を含むC3〜C6シクロアルキルもしくはヘテロシクリルを形成し、ここでは、前記ヘテロシクリル環原子のうちの1つはO;S(O)及びNRから選択され;または
任意の2つのRは、それぞれが結合している炭素と共に、3〜6個の環原子を含むC3〜C6シクロアルキルもしくはヘテロシクリルを形成し、ここでは、前記環原子のうちの1つはO;S(O)及びNRから選択され;
及びRのそれぞれは、H、F、OH、C1〜C6アルキル、C3〜C5シクロアルキル、NH、OCO−(C1〜C6アルキル)、OCO−(C3〜C5シクロアルキル)、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6フルオロアルコキシ及びシアノから独立に選択され;
またはR及びRは、それぞれが結合している炭素と共に、3〜6個の環原子を含むC5〜C7シクロアルキルもしくはヘテロシクリルを形成し、ここでは、1〜2個の前記ヘテロシクリル環原子はO、S(O)及びNRg’から独立に選択され;
、R、R及びRg’の各存在は、H、C1〜C6アルキル、−C(=O)H、−C(=O)R、C(=O)O(C1〜C6アルキル)、C(=O)N(R及びSO−Rから独立に選択され;ここでは、Rは、C1〜C6アルキル、CH−(5〜10個の環原子を含むヘテロアリール)、CH−(C6〜C10アリール)及びC6〜C10アリールから選択され;Rの各存在は、H、C1〜C6アルキル、CH−(5〜10個の環原子を含むヘテロアリール)、CH−(C6〜C10アリール)及びC6〜C10アリールから独立に選択され;
の各存在は、H、F、OH、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、NH、OCO−(C1〜C6アルキル)、OCO−(C3〜C6シクロアルキル)、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6フルオロアルコキシ及びシアノから独立に選択され;
またはR−C−Rは、3〜6個の環原子を含むC3〜C6シクロアルキルもしくはヘテロシクリルを一緒に形成し、ここでは、ヘテロシクリル環原子のうちの1つは、O;S(O)m及びNRj’から選択され;
j’及びRの各存在は、H、C1〜C6アルキル、−C(=O)H、−C(=O)R、C(=O)O(C1〜C6アルキル)、C(=O)N(R及びSO−Rから独立に選択され、ここでは、Rは、C1〜C6アルキル、CH−(5〜10個の環原子を含むヘテロアリール)、CH−(C6〜C10アリール)及びC6〜C10アリールから選択され;Rの各存在は、H、C1〜C6アルキル、CH−(5〜10個の環原子を含むヘテロアリール)、CH−(C6〜C10アリール)及びC6〜C10アリールから独立に選択され、R及びR中の前記アリール及びヘテロアリール部分は、1〜3個の独立に選択される置換基である、F、C1〜C6アルキル、フルオロC1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6フルオロアルコキシ及びシアノから選択される置換基で任意に置換され得;
さらにここで:
(a)A及びBのそれぞれが結合であり、bが0である場合、Xは次の式を有し:−Y−[C(R−;
(b)bが0または1である場合、A及びBは両方ともヘテロ原子とすることはできず;
(c)AまたはBが窒素環原子に対するXの結合点として働く場合、AまたはBはヘテロ原子とすることはできず;
R1は:
(i)1〜3個のRで任意に置換された、5〜10個の環原子を含む単環式もしくは二環式ヘテロアリール(ここでは、1〜4個の前記環原子は、O、N、N−H、N−R及びSから独立に選択されるヘテロ原子である);
(ii)1〜3個のRで任意に置換された、C6〜C10アリール;または
(iii)それぞれが1〜6個のRで任意に置換された、C3〜C10シクロアルキルまたはC3〜C10シクロアルケニル;または
(iv)水素であり;
R4はHまたはRであり、Rの各存在は、ハロゲン;C1〜C6アルキル;フルオロ(C1〜C6)アルキル;ヒドロキシル;ヒドロキシ(C〜C)アルキル;C1〜C6アルコキシ;フルオロ(C1〜C6)アルコキシ;(C1〜C6アルキル)C(O)−;(C1〜C6アルキル)NH−;(C1〜C6アルキル)N−;−N(Ro’(ここでは、Ro’−N−Ro’は、5または6個の環原子を有する飽和環を一緒に形成し、1または2個の環原子は任意に、NH、N(C1〜C6アルキル)、O及びSから独立に選択されるヘテロ原子である);ホルミル;ホルミル(C〜C)アルキル;シアノ;シアノ(C〜C)アルキル;ベンジル;ベンジルオキシ;(ヘテロシクリル)−(C0〜C6)アルキルから独立して選択されるヘテロ原子(ここでは、前記ヘテロシクリル部分は、5または6個の環原子を含み、1または2個の前記環原子は、NH、N(アルキル)、O及びSから独立に選択されるヘテロ原子であ);フェニル;5〜6の環原子を含むヘテロアリール(ここでは、1〜4個の前記環原子は、O、N、N−H、N−Ro’’及びSから独立に選択されるヘテロ原子であり、これらのそれぞれは、1〜3個のRo’’で任意に置換されている);SO−(C1〜C6)アルキル;SO−(C1〜C6)アルキル;並びにニトロからなる群から独立に選択され、
o’’の各存在は、ハロゲン;C1〜C6アルキル;フルオロ(C1〜C6)アルキル;ヒドロキシル;ヒドロキシ(C〜C)アルキル;C1〜C6アルコキシ;フルオロ(C1〜C6)アルコキシ;(C1〜C6アルキル)C(O)−;(C1〜C6アルキル)NH−;(C1〜C6アルキル)N−;ホルミル;ホルミル(C〜C)アルキル;シアノ;シアノ(C〜C)アルキル;ベンジル;ベンジルオキシ;(ヘテロシクリル)−(C0〜C6)アルキル(ここでは、前記ヘテロシクリル部分は、5または6個の環原子を含み、1または2個の前記環原子は、NH、N(C1〜C6アルキル)、O及びSから独立に選択されるヘテロ原子であ);フェニル;5〜6の環原子を含むヘテロアリール(ここでは、1〜4個の前記環原子は、O、N、N−H、N−(C1〜C6アルキル)及びSから独立に選択されるヘテロ原子である);SO−(C1〜C6)アルキル;SO−(C1〜C6)アルキル;並びにニトロからなる群から独立に選択され、
R5は、水素、ハロゲン;C1〜C6アルキル;フルオロ(C1〜C6)アルキル;ヒドロキシル;ヒドロキシ(C〜C)アルキル;(C1〜C6アルキル)C(O)−;ホルミル;ホルミル(C〜C)アルキル;シアノ;シアノ(C〜C)アルキル;ベンジル;(ヘテロシクリル)−(C0〜C6)アルキル(ここでは、前記ヘテロシクリル部分は、5または6個の環原子を含み、1または2個の前記環原子は、NH、N(C1〜C6アルキル)、O及びSから独立に選択されるヘテロ原子であ);フェニル;5〜6の環原子を含むヘテロアリール(ここでは、1〜4個の前記環原子は、O、N、N−H及びSから独立に選択されるヘテロ原子であり);SO−(C1〜C6)アルキル;SO−(C1〜C6)アルキル;並びにニトロからなる群から選択され、
R2は、H、F、Cl、CF、CFCF、CHCF、OCF、OCHF、フェニル及び1〜3個のRで置換されたフェニルから選択され;
R3は、H、FまたはClである)。
【請求項2】
Xが−Y−[C(R−A−[C(R−B−である、請求項に記載の化合物または塩。
【請求項3】
Xが−CH=CH−C(R−または−CH=CHC(RC(R−である、請求項に記載の化合物または塩。
【請求項4】
Xが−O−(CH2〜3または−N(CH)−(CH2〜3である、請求項1又は2に記載の化合物または塩。
【請求項5】
R2が水素であり、R3がFまたはClである、請求項1〜のいずれか1項に記載の化合物または塩。
【請求項6】
請求項に記載の化合物または塩(ここでは:
Xは:
(i)−Y−[C(R−A−[C(R−B−;
(ii)直接結合;または
(iii)C=O、C(R−C(=O)、C(=O)−C(R、SO−NR、NR−SO、C(=O)NRもしくはNR−C(=O)であり;
R1は:
(i)1〜3個のRで任意に置換された、5〜10個の環原子を含む単環式もしくは二環式ヘテロアリール(ここでは、1〜4個の前記環原子は、O、N、N−H、N−R及びSから独立に選択されるヘテロ原子である);
(ii)1〜3個のRで任意に置換された、C6〜C10アリール;
(iii)それぞれが1〜3個のRで任意に置換された、C3〜C10シクロアルキルもしくはC3〜C10シクロアルケニル;または
(iv)水素であり;
は、ハロゲン;C1〜C6アルキル;フルオロ(C1〜C6)アルキル;ヒドロキシル;ヒドロキシ(C〜C)アルキル;C1〜C6アルコキシ;フルオロ(C1〜C6)アルコキシ;(C1〜C6アルキル)C(O)−;(C1〜C6アルキル)NH−;(C1〜C6アルキル)N−;−N(Ro’(ここでは、Ro’−N−Ro’は、5または6個の環原子を有する飽和環を一緒に形成し、1または2個の環原子は任意に、NH、N(C1〜C6アルキル)、O及びSから独立に選択されるヘテロ原子である);シアノ;フェニル;5〜6の環原子を含むヘテロアリール(ここでは、1〜4個の前記環原子は、O、N、N−H、N−Ro’’及びSから独立に選択されるヘテロ原子であり、これらのそれぞれは、1〜3個のRo’’で任意に置換されている);並びにSO−(C1〜C6)アルキルからなる群から独立に選択され;
R4は水素またはハロであり;
R5は水素であり;
(i)R2及びR3のそれぞれは水素であり;または(ii)R2は水素であり、R3はフルオロであり;または(iii)R2は水素以外の置換基であり、R3は水素である)。
【請求項7】
請求項に記載の化合物または塩(ここでは:
Xは、−Y−[C(R−A−[C(R−B−であり;
R1は:
(i)1〜3個のRで任意に置換された、5〜10個の環原子を含む単環式もしくは二環式ヘテロアリール(ここでは、1〜4個の前記環原子は、O、N、N−H、N−R及びSから独立に選択されるヘテロ原子である);
(ii)1〜3個のRで任意に置換された、C6〜C10アリール;または
(iii)それぞれが1〜3個のRで任意に置換された、C3〜C10シクロアルキルもしくはC3〜C10シクロアルケニル;または
(iv)水素であり;
は、ハロゲン;C1〜C6アルキル;フルオロ(C1〜C6)アルキル;ヒドロキシル;ヒドロキシ(C〜C)アルキル;C1〜C6アルコキシ;フルオロ(C1〜C6)アルコキシ;(C1〜C6アルキル)C(O)−;(C1〜C6アルキル)NH−;(C1〜C6アルキル)N−;−N(Ro’(ここでは、Ro’−N−Ro’は、5または6個の環原子を有する飽和環を一緒に形成し、1または2個の環原子は任意に、NH、N(C1〜C6アルキル)、O及びSから独立に選択されるヘテロ原子である);シアノ;フェニル;5〜6の環原子を含むヘテロアリール(ここでは、1〜4個の前記環原子は、O、N、N−H、N−Ro’’及びSから独立に選択されるヘテロ原子であり、これらのそれぞれは、1〜3個のRo’’で任意に置換されている);並びにSO−(C1〜C6)アルキルからなる群から独立に選択され;
R4は水素またはハロであり;
R5は水素であり;
(i)R2及びR3のそれぞれは水素であり;または(ii)R2は水素であり、R3はフルオロであり;または(iii)R2は水素以外の置換基であり、R3は水素である)。
【請求項8】
請求項に記載の化合物または塩(ここでは:
Xは、−Y−[C(R−A−[C(R−B−であり;
R1は、1〜3個のRで任意に置換された、C3〜C10シクロアルキルまたはC3〜C10シクロアルケニルであり;
は、ハロゲン;C1〜C6アルキル;フルオロ(C1〜C6)アルキル;ヒドロキシル;ヒドロキシ(C〜C)アルキル;C1〜C6アルコキシ;フルオロ(C1〜C6)アルコキシ;(C1〜C6アルキル)NH−;(C1〜C6アルキル)N−;シアノ;及びSO−(C1〜C6)アルキルからなる群から独立に選択され;
R4は水素またはハロであり;
R5は水素であり;
(i)R2及びR3のそれぞれは水素であり;または(ii)R2は水素であり、R3はフルオロであり;または(iii)R2は水素以外の置換基であり、R3は水素である)。
【請求項9】
請求項に記載の化合物または塩(ここでは:
Xは、−Y−[C(R−A−[C(R−B−であり;
R1は、1〜3個のRで任意に置換された、5〜10個の環原子を含む単環式または二環式ヘテロアリールであり(ここでは、1〜4個の前記環原子は、O、N、N−H、N−R及びSから独立に選択されるヘテロ原子である);
は、ハロゲン;C1〜C6アルキル;フルオロ(C1〜C6)アルキル;ヒドロキシル;ヒドロキシ(C〜C)アルキル;C1〜C6アルコキシ;フルオロ(C1〜C6)アルコキシ;(C1〜C6アルキル)NH−;(C1〜C6アルキル)N−;シアノ;及びSO−(C1〜C6)アルキルからなる群から独立に選択され;
R4は水素またはハロであり;
R5は水素であり;
(i)R2及びR3のそれぞれは水素であり;または(ii)R2は水素であり、R3はフルオロであり;または(iii)R2は水素以外の置換基であり、R3は水素である)。
【請求項10】
請求項に記載の化合物または塩(ここでは:
Xは、−Y−[C(R−A−[C(R−B−であり;
R1は、1〜3個のRで任意に置換されたC6〜C10アリールであり;
は、ハロゲン;C1〜C6アルキル;フルオロ(C1〜C6)アルキル;ヒドロキシル;ヒドロキシ(C〜C)アルキル;C1〜C6アルコキシ;フルオロ(C1〜C6)アルコキシ;(C1〜C6アルキル)NH−;(C1〜C6アルキル)N−;シアノ;及びSO−(C1〜C6)アルキルからなる群から独立に選択され;
R4は水素またはハロであり;
R5は水素であり;
(i)R2及びR3のそれぞれは水素であり;または(ii)R2は水素であり、R3はフルオロであり;または(iii)R2は水素以外の置換基であり、R3は水素である)。
【請求項11】
化合物または塩が式(Ia):
を有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の化合物または塩。
【請求項12】
化合物または塩が式(Ib):
を有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の化合物または塩。
【請求項13】
XがCHである、請求項1及び6〜12のいずれか1項に記載の化合物または塩。
【請求項14】
R1が、1〜3個のRで任意に置換されたC3〜C6シクロアルキルである、請求項1、6〜8及び11〜13のいずれか1項に記載の化合物または塩。
【請求項15】
化合物が、
から選択される、請求項1〜14のいずれか1項に記載の化合物または塩。
【請求項16】
−X−Rが、CHフェニル、CHピリジル、CHシクロプロピル又はCHピラゾリルであり、CHフェニル、CHピリジル及びCHピラゾリルは、それぞれ独立してハロ及びメチルから選択される1つまたは複数の置換基で任意に置換され、CHシクロプロピルは、C1〜C3アルキル、C1〜C3アルコキシ及びハロから選択される1つまたは複数の置換基で任意に置換された、請求項1、2、6、7、11及び12のいずれか1項に記載の化合物または塩。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか1項に記載の化合物または医薬的に許容可能なその塩及び医薬的に許容可能な担体を含む医薬組成物。
【請求項18】
それを必要とする患者に投与して、HDAC1、HDAC2又はHDAC3が媒介する疾患または障害;フリードライヒ失調症、筋緊張性ジストロフィー、脊髄性筋萎縮症、脆弱X症候群、ハンチントン病、脊髄小脳失調症、ケネディ病、筋萎縮性側索硬化症、ニーマン・ピック病、ピット・ホプキンス病、球脊髄性筋萎縮症及びアルツハイマー病から選択される神経障害;がん;炎症性疾患;記憶障害状態;又は薬物依存を治療するための、請求項1〜16のいずれか1項に記載の化合物もしくは医薬的に許容可能なその塩または請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
障害がフリードライヒ失調症である、請求項18に記載の化合物もしくは医薬的に許容可能なその塩または組成物。
【請求項20】
障害がハンチントン病である、請求項18に記載の化合物もしくは医薬的に許容可能なその塩または組成物。
【請求項21】
医薬の調製で使用するための、請求項1〜16に記載の化合物または医薬的に許容可能なその塩。
【請求項22】
HDAC1もしくはHDAC2が媒介する疾患もしくは障害HDAC3が媒介する疾患もしくは障害フリードライヒ失調症、筋緊張性ジストロフィー、脊髄性筋萎縮症、脆弱X症候群、ハンチントン病、脊髄小脳失調症、ケネディ病、筋萎縮性側索硬化症、球脊髄性筋萎縮症及びアルツハイマー病から選択される神経障害;微生物感染症もしくはウイルス感染症を含めた感染症;がん;炎症性疾患;記憶障害状態;又は薬物依存を治療するための、請求項1〜16のいずれか1項に記載の化合物または医薬的に許容可能なその塩。
【請求項23】
HDAC1もしくはHDAC2が媒介する疾患もしくは障害HDAC3が媒介する疾患もしくは障害フリードライヒ失調症、筋緊張性ジストロフィー、脊髄性筋萎縮症、脆弱X症候群、ハンチントン病、脊髄小脳失調症、ケネディ病、筋萎縮性側索硬化症、ニーマン・ピック病、ピット・ホプキンス病、球脊髄性筋萎縮症及びアルツハイマー病から選択される神経障害;がん;炎症性疾患;記憶障害状態;又は薬物依存を治療または予防するための医薬の調製における、請求項1〜16のいずれか1項に記載の化合物または医薬的に許容可能なその塩の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
その開示がそれぞれ参照により完全に組み込まれる、2013年3月15日に出願されたU.S.特許仮出願第61/800,170号及び2013年8月7日に出願されたU.S.特許仮出願第61/863,235号の利益を主張する。
【0002】
本開示は、一般に、ヒストン脱アセチル化酵素(「HDAC」)酵素(例えばHDAC1、HDAC2及びHDAC3)を阻害することができる化合物に関する。
【背景技術】
【0003】
現在までに、18種のHDACがヒトにおいて同定されており、ヒトの18種のヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)の機能が重複していないという証拠が増加している。HDACは、酵母タンパク質に対するそれらの相同性に基づいて、3つの主な群に分類される。クラスIにはHDAC1、HDAC2、HDAC3及びHDAC8が含まれ、これらは、酵母RPD3に対して相同性を有する。HDAC4、HDAC5、HDAC7及びHDAC9は、クラスIIaに属し、酵母HDAC1に対して相同性を有する。HDAC6及びHDAC10は、2つの触媒部位を含み、クラスIIbに分類され、一方HDAC11は、クラスI及びクラスIIの両方の脱アセチル化酵素が共に有する、その触媒中心に保存された残基を有し、クラスIVに入れられる。これらのHDACは、触媒部位に亜鉛を含み、トリコスタチンA(TSA)及びボリノスタット[スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)]のような化合物によって阻害される。クラスIIIのHDACは、サーチュインとして知られている。これらは、酵母Sir2に対して相同性を有し、補助因子としてNADを必要とし、触媒部位に亜鉛を含まない。一般に、亜鉛依存的HDACのHDAC阻害剤は、Zn結合基及び表面認識ドメインを含む。
【0004】
HDACは、いくつかの細胞プロセスの調節に関与する。ヒストンアセチル化酵素(HAT)及びHDACは、ヒストンタンパク質のN末端のリジン残基をアセチル化及び脱アセチル化し、それによって、転写活性に影響を及ぼす。これらは、α−チューブリンのような少なくとも50種の非ヒストンタンパク質の翻訳後のアセチル化を調節することも示された(例えば、Kahn,Nら、Biochem J 409(2008)581、Dokmanovic,Mら、Mol Cancer Res 5(2007)981を参照されたい)。
【0005】
クロマチン修飾を通じて遺伝子発現を変化させることは、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)酵素を阻害することによって達成することができる。ヒストンのアセチル化及び脱アセチル化は、細胞の転写調節−細胞の分化、増殖及びアポトーシスにおける主要な事象−が達成される機構であるという証拠がある。これらの効果は、ヌクレオソーム中のコイルDNAに対するヒストンタンパク質の親和性を変化させることによるクロマチン構造の変化を通じて生じるという仮説が立てられた。ヒストンタンパク質の低アセチル化は、DNAのリン酸骨格とのヒストンの相互作用を増大させると考えられている。ヒストンタンパク質とDNAの間の密接な結合は、DNAを転写調節エレメント及び転写装置に接近し難くすることができる。HDACは、コアヒストンのN末端伸長部内に存在するリジン残基のε−アミノ基からのアセチル基の除去を触媒し、それによって、ヒストンを低アセチル化すること並びに転写装置及び調節エレメントをブロックすることが示されている。
【0006】
したがって、HDACの阻害は、腫瘍抑制遺伝子のヒストン脱アセチル化酵素媒介性転写抑制解除につながり得る。例えば、培養中にHDAC阻害剤で処理した細胞は、細胞周期停止において重要な役割を果たすキナーゼ阻害因子p21の一貫した誘導を示した。HDAC阻害剤は、p21遺伝子領域のヒストンの高アセチル化状態を増やすことによってp21の転写速度を増大させ、それによって、遺伝子を転写装置に接近しやすくすると考えられている。さらに、細胞死及び細胞周期の調節に関与する非ヒストンタンパク質も、HDAC及びヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)によるリジンのアセチル化及び脱アセチル化を受ける。
【0007】
この証拠は、様々なタイプのがんの治療におけるHDAC阻害剤の使用を支持する。例えば、ボリノスタット(スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA))は、T細胞リンパ腫を治療するためにFDAによって認可され、固形腫瘍及び血液腫瘍の治療について検討されている。さらに、急性骨髄性白血病、ホジキン病、骨髄異形成症候群及び固形腫瘍がんの治療に関して、他のHDAC阻害剤が開発中である。選択的なHDAC1/2阻害剤は、B細胞急性リンパ性白血病(B−ALL)の治療において有用である可能性がある(Stubbsら、Selective Inhibition of HDAC1 and HDAC2 is a Potential Therapeutic Option for B−ALL,Molecular Pharmacology,Drug Resistance:Poster II、Poster Board II−780(December 5、2010)及びWitterら、Bioorg.Med.Chem.Lett.、18:726〜731(2008)及びFournelら、Mol.Cancer Ther.7(4):759〜68(2008))。
【0008】
HDAC阻害剤は、炎症性サイトカイン、例えば自己免疫性障害及び炎症性障害(例えば、TNF−α)に関与するものを阻害することも示された。例えばHDAC阻害剤のMS275は、ラット及びマウスモデルにおいて、コラーゲン誘導性関節炎の疾患進行及び関節破壊を遅延させることが示された。他のHDAC阻害剤は、クローン病、大腸炎並びに気道炎症及び気道過敏症などの障害に関する生体内モデルまたは試験で、炎症性障害または炎症性状態を治療するまたは寛解させることにおいて有効性があると示された。HDAC阻害剤は、実験的自己免疫性脳脊髄炎において、脊髄炎症、脱髄及びニューロン及び軸索の喪失を寛解させることも示された(例えば、WanfLら、Nat Rev Drug Disc、8:969(2009)を参照されたい)。
【0009】
ゲノムDNAにおけるトリプレットリピートの拡大は、筋緊張性ジストロフィー、脊髄性筋萎縮症、脆弱X症候群、ハンチントン病、脊髄小脳失調症、筋萎縮性側索硬化症、ケネディ病、球脊髄性筋萎縮症、フリードライヒ運動失調症及びアルツハイマー病を含めた多くの神経学的状態(例えば、神経変性疾患及び神経筋疾患)と関係がある。トリプレットリピートの拡大は、遺伝子発現を変化させることによって、疾患を引き起こし得る。例えば、ハンチントン病、脊髄小脳失調症、脆弱X症候群及び筋緊張性ジストロフィーでは、拡大したリピートが遺伝子サイレンシングをもたらす。フリードライヒ失調症では、FRDA患者の98%で見つかるDNAの異常は、フラタキシン遺伝子の第1イントロンにおけるGAAトリプレットリピートの不安定な過剰な拡大であり(Campuzanoら、Science 271:1423(1996)を参照されたい)、これにより、フラタキシン不足がもたらされ、結果として、進行性の脊髄小脳の神経変性が生じる。これらは転写に影響を及ぼし得、転写脱制御を正す可能性があるので、HDAC阻害剤が試験され、神経変性疾患に対して正の影響を及ぼすことが示された(フリードライヒ失調症に関してHerman Dら、Nat Chem Bio 2 551(2006)、ハンチントン病に関してThomas EAら、Proc Natl Acad Sci USA 105 15564(2008)を参照されたい)。
【0010】
HDAC阻害剤はまた、認知関連の状態及び疾患で役割を果たす可能性がある。実際に、長期記憶過程にとって転写が重要な要素であるらしいことがますます明らかになっており(Alberini CM、Physiol Rev 89 121(2009))、したがってこれは、CNS浸透性HDAC阻害剤に関する別の役割を強調する。研究によって、酪酸ナトリウムなどの非特異的なHDAC阻害剤による治療長期記憶形成をもたらすことができることが示されたが(Stefanko DPら、Proc Natl Acad Sci USA 106 9447(2009))、特定のアイソフォームの役割についてはほとんど分かっていない。限られた数の研究が、クラスIのHDACの中では、認知研究で使用されるプロトタイプの阻害剤である酪酸ナトリウムの主な標的、すなわちHDAC2(Guan J−Sら、Nature 459 55(2009))及びHDAC3(McQuown SCら、J Neurosci 31 764(2011))が記憶過程を調節することが示され、そのため、これらに限定されないが、アルツハイマー病、外傷後ストレス障害または薬物依存症などの記憶に影響を及ぼす状態における記憶の増強または消去に対する興味深い標的であることが示された。
【0011】
HDAC阻害剤、例えばHDAC1及び/またはHDAC2選択的阻害剤は、鎌状赤血球症(SCD)及びβ−サラセミア(bT)を治療するのにも有用であり得る。これらは、クロマチン媒介性神経可塑性の変化を伴う気分障害または脳障害を治療するのにも有用であり得る(Schorederら、PLoS ONE 8(8):e71323(2013))。
【0012】
HDAC阻害剤はまた、ウイルス感染症などの感染症を治療するのに有用である。例えばHDAC阻害剤及び抗レトロウイルス薬によるHIV感染細胞の処理は、処理した細胞からウイルスを根絶することができる(Blazkova jら、J Infect Dis.2012 Sep 1;206(5):765〜9;Archin NMら、Nature 2012 Jul 25、487(7408):482〜5)。
概要
【0013】
本開示は、式(I)を有する化合物または医薬的に許容可能なその塩、それらを含む組成物(例えば、医薬組成物)及びそれらの使用方法を特徴とする:
【化1】
明確にするために、式(I)は以下の(Ia)及び(Ib)の両方の式を包含する:
【化2】
【0014】
本明細書に記載の式(I)の化合物は、ヒストン脱アセチル化酵素(「HDAC」)酵素(例えばHDAC1、HDAC2及びHDAC3)を阻害する。理論に拘束されることを望むものではないが、式(I)の化合物のオルト−アミノ(NH)ベンズアミド部分は、亜鉛依存的HDAC中の亜鉛と相互作用する(例えば、結合する)と考えられている。
【0015】
しかし、当業者なら理解するように、(例えば、肝細胞の存在下での式(I)の化合物の試験管内代謝を使用して研究されることが多い、式(I)の化合物の代謝中の)式(I)の化合物のアミド結合の切断は、o−フェニレンジアミン(OPD)を遊離させる可能性があり得る。OPDは、以下に示す化学式を有する有機化合物である。
【化3】
【0016】
OPDは、動物の既知の発癌物質であり、ヒトの疑わしい発癌物質である。これは、色素、顔料及び殺菌剤の合成の化学中間体として主に使用される。OPDは、その固体状態でさえ比較的不安定な分子である。OPDは、振戦、痙攣、流涎及び呼吸抑制につながる急性中毒を動物において引き起こし得る[1]。OPDは動物の発癌物質として認識されているが、ヒトへのその関連性を確証するための研究、及びヒトにおける単回及び反復のOPD曝露の影響は不確定である[2]。遺伝毒性、アレルギー反応及び発癌性などのOPDの有害作用がいくつかの動物研究で報告されている[1]。Sontagら(1981)は、78週間にわたる経口OPD投与が、雄のラットにおいて肝臓腫瘍の有意な増大をもたらすことを報告し、16000mg/kgの高用量のOPDで投与された群において、16匹ラットのうちの5匹が冒されていることが分かり、一方で、8000mg/kgの低用量群において、17匹のうちの5匹が腫瘍を伴って検出された[3、4]。NCIの論文によって、OPDの投薬後の雄及び雌のラットの両方の膀胱及び前胃における腫瘍形成並びに両方の性別のマウスの肝細胞癌が記載された[5]。これはまた、Fischer344ラット及びB6C3FIマウスにおける決定的な発癌物質として、OPDを報告した[5]。
【0017】
これに対して、Sarutaら(1962)による研究は、ラットへのOPDの皮下投与によって腫瘍が形成されないことを示した。45mg/kgという低用量で一日おきに11か月間、及び90mg/kgという高用量で一日おきに5か月間、5匹のラット群を投与した。どちらの群においても腫瘍は検出されなかった[1、6]。それにもかかわらず、ACGIH in 1989[2]によって、OPDはヒトの疑わしい発癌物質として分類されている。
【0018】
しかし、本発明者らは、生体内の代謝経路を模倣することを目的とする条件に式(I)の化合物を置いたときに、式(I)の化合物の代謝産物が実質的にOPDを含んでいないことを発見した。本明細書で使用する場合、用語「実質的にOPDを含んでいない」は、(i)式(I)の化合物をヒト、サル、イヌ及びラットの肝細胞とインキュベートした後、及び(ii)フェニルグリオキサールの有機溶媒酸性溶液で代謝産物環境を処理(この添加は、2−フェニルキノキサリンの定量的な形成をもたらし、これは低い定量下限(LLOQ)で容易に定量化することができる)した後、LC−MS/MSでOPDが検出されなかったことを意味する。実施例のセクションを参照されたい。
【0019】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の式(I)の化合物は、比較的低減した血漿−タンパク質結合(例えば、99%未満の結合、例えば、65%から95%の結合、例えば、75%から95%の結合、例えば、75%の結合)を示すことによって、例えば、医薬的に有用な化合物としての開発にとって価値がある、さらなる特質を示す。
したがって、一態様では、式(I)を有する化合物または医薬的に許容可能なその塩を特徴とする:
【化4】
式中:
−Xは環窒素原子の1つのみに結合しており;
Xは:
(i)−Y−[C(R−A−[C(R−B−;
(ii)直接結合;または
(iii)C=O、C(R−C(=O)、C(=O)−C(R、SO−NR、NR−SO、C(=O)NRもしくはNR−C(=O)であり;
ここでは:
Yは結合、CR=CR、O、NRまたはS(O)であり;
A及びBのそれぞれは独立に、結合、O、NRまたはS(O)であり;
aは1、2または3であり;
bは0、1、2または3であり;
mは0、1または2であり;
及びRの各存在は、H、F、OH、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、NH、OCO−(C1〜C6アルキル)、OCO−(C3〜C6シクロアルキル)、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6フルオロアルコキシ及びシアノから独立に選択され;または
以下の1つもしくは複数をR及びRに対して適用することができ:
任意の2つのRは、それぞれが結合している炭素と共に、3〜6個の環原子を含む、C3〜C6シクロアルキルもしくはヘテロシクリルを一緒に形成し、ここでは、ヘテロシクリル環原子のうちの1つはO、S(O)及びNRから選択され;または
1つのR及び1つのRは、それぞれが結合している炭素と共に、3〜6個の環原子を含むC3〜C6シクロアルキルもしくはヘテロシクリルを形成し、ここでは、ヘテロシクリル環原子のうちの1つはO;S(O)m及びNRから選択され;または
任意の2つのRは、それぞれが結合している炭素と共に、3〜6個の環原子を含むC3〜C6シクロアルキルもしくはヘテロシクリルを形成し、ここでは、環原子のうちの1つはO;S(O)m及びNRから選択され;
及びRのそれぞれは、H、F、OH、C1〜C6アルキル、C3〜C5シクロアルキル、NH、OCO−(C1〜C6アルキル)、OCO−(C3〜C5シクロアルキル)、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6フルオロアルコキシ及びシアノから独立に選択され;
またはR及びRは、それぞれが結合している炭素と共に、3〜6個の環原子を含むC5〜C7シクロアルキルもしくはヘテロシクリルを形成し、ここでは、1〜2個のヘテロシクリル環原子はO、S(O)及びNRg’から独立に選択され;
、R、R及びRg’の各存在は、H、C1〜C6アルキル、−C(=O)H、−C(=O)R、C(=O)O(C1〜C6アルキル)、C(=O)N(R及びSO−Rから独立に選択され;ここでは、Rは、C1〜C6アルキル、CH−(5〜10個の環原子を含むヘテロアリール)、CH−(C6〜C10アリール)及びC6〜C10アリールから選択され;Rの各存在は、H、C1〜C6アルキル、CH−(5〜10個の環原子を含むヘテロアリール)、CH−(C6〜C10アリール)及びC6〜C10アリールから独立に選択され;
の各存在は、H、F、OH、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、NH、OCO−(C1〜C6アルキル)、OCO−(C3〜C6シクロアルキル)、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6フルオロアルコキシ及びシアノから独立に選択され;
またはR−C−Rは、3〜6個の環原子を含むC3〜C6シクロアルキルもしくはヘテロシクリルを一緒に形成し、ここでは、ヘテロシクリル環原子のうちの1つは、O;S(O)m及びNRj’から選択され;
Rj’及びRの各存在は、H、C1〜C6アルキル、−C(=O)H、−C(=O)R、C(=O)O(C1〜C6アルキル)、C(=O)N(R及びSO−Rから独立に選択され、ここでは、Rは、C1〜C6アルキル、CH−(5〜10個の環原子を含むヘテロアリール)、CH−(C6〜C10アリール)及びC6〜C10アリールから選択され;Rの各存在は、H、C1〜C6アルキル、CH−(5〜10個の環原子を含むヘテロアリール)、CH−(C6〜C10アリール)及びC6〜C10アリールから独立に選択され、R及びR中のアリール及びヘテロアリール部分は、1〜3個の独立に選択される置換基、F、C1〜C6アルキル、フルオロC1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6フルオロアルコキシまたはシアノで任意に置換され得;
さらにここで:
(a)A及びBのそれぞれが結合であり、bが0である場合、Xは次の式を有し:−Y−[C(R−;
(b)bが0または1である場合、A及びBは両方ともヘテロ原子とすることはできず;
(c)AまたはBが窒素環原子に対するXの結合点として働く場合、AまたはBはヘテロ原子とすることはできず;
R1は:
(i)1〜3個のRで任意に置換された、5〜10個の環原子を含む単環式もしくは二環式ヘテロアリール(ここでは、1〜4個の環原子は、O、N、N−H、N−R及びSから独立に選択されるヘテロ原子である);
(ii)1〜3個のRで任意に置換された、C6〜C10アリール;または
(iii)それぞれが1〜6個のRで任意に置換された、C3〜C10シクロアルキルまたはC3〜C10シクロアルケニル;
(iv)1〜6個のRで任意に置換された、3〜10個の環原子を含むヘテロシクリル(ここでは、1〜4個の環原子は、O、N、N−H、N−R及びSから独立に選択されるヘテロ原子である);
(v)水素であり;
R4はHまたはRであり、Rの各存在は、ハロゲン;C1〜C6アルキル;フルオロ(C1〜C6)アルキル;ヒドロキシル;ヒドロキシ(C〜C)アルキル;C1〜C6アルコキシ;フルオロ(C1〜C6)アルコキシ;(C1〜C6アルキル)C(O)−;(C1〜C6アルキル)NH−;(C1〜C6アルキル)N−;−N(Ro’(ここでは、Ro’−N−Ro’は、5または6個の環原子を有する飽和環を一緒に形成し、1または2個の環原子は任意に、NH、N(C1〜C6アルキル)、OまたはSから独立に選択されるヘテロ原子である);ホルミル;ホルミル(C〜C)アルキル;シアノ;シアノ(C〜C)アルキル;ベンジル;ベンジルオキシ;(ヘテロシクリル)−(C0〜C6)アルキル(ここでは、ヘテロシクリル部分は、5または6個の環原子を含み、1または2個の環原子はNH、N(アルキル)、OまたはSから独立に選択されるヘテロ原子であり、前記アルキル部分が存在する場合は、前記アルキル部分は、Rへの結合点として働き、アルキル部分が存在しない場合は、ヘテロシクリル炭素環原子は、R1に対するヘテロシクリルの結合点として働く);フェニル;5〜6の環原子を含むヘテロアリール(ここでは、1〜4個の環原子は、O、N、N−H、N−Ro’’及びSから独立に選択されるヘテロ原子であり、これらのそれぞれは、1〜3個のRo’’で任意に置換されている);SO−(C1〜C6)アルキル;SO−(C1〜C6)アルキル;並びにニトロからなる群から独立に選択され;
o’’の各存在は、ハロゲン;C1〜C6アルキル;フルオロ(C1〜C6)アルキル;ヒドロキシル;ヒドロキシ(C〜C)アルキル;C1〜C6アルコキシ;フルオロ(C1〜C6)アルコキシ;(C1〜C6アルキル)C(O)−;(C1〜C6アルキル)NH−;(C1〜C6アルキル)N−;ホルミル;ホルミル(C〜C)アルキル;シアノ;シアノ(C〜C)アルキル;ベンジル;ベンジルオキシ;(ヘテロシクリル)−(C0〜C6)アルキル(ここでは、ヘテロシクリル部分は、5または6個の環原子を含み、1または2個の環原子は、NH、N(C1〜C6アルキル)、OまたはSから独立に選択されるヘテロ原子であり、前記アルキル部分が存在する場合は、前記アルキル部分は、R1に対する結合点として働き;アルキル部分が存在しない場合は、ヘテロシクリル炭素環原子は、R1に対するヘテロシクリルの結合点として働く);フェニル;5〜6の環原子を含むヘテロアリール(ここでは、1〜4個の環原子は、O、N、N−H、N−(C1〜C6アルキル)及びSから独立に選択されるヘテロ原子である);SO−(C1〜C6)アルキル;SO−(C1〜C6)アルキル;並びにニトロからなる群から独立に選択され;
R5は、水素、ハロゲン;C1〜C6アルキル;フルオロ(C1〜C6)アルキル;ヒドロキシル;ヒドロキシ(C〜C)アルキル;(C1〜C6アルキル)C(O)−;ホルミル;ホルミル(C〜C)アルキル;シアノ;シアノ(C〜C)アルキル;ベンジル;(ヘテロシクリル)−(C0〜C6)アルキル(ここでは、ヘテロシクリル部分は、5または6個の環原子を含み、1または2個の環原子は、NH、N(C1〜C6アルキル)、OまたはSから独立に選択されるヘテロ原子であり、前記アルキル部分が存在する場合は、前記アルキル部分は、R1に対する結合点として働き;アルキル部分が存在しない場合は、ヘテロシクリル炭素環原子は、R1に対するヘテロシクリルの結合点として働く);フェニル;5〜6の環原子を含むヘテロアリール(ここでは、1〜4個の環原子は、O、N、N−H、N−Rq’’及びSから独立に選択されるヘテロ原子であり、これらのそれぞれは、1〜3個のRq’’で任意に置換されている);SO−(C1〜C6)アルキル;SO−(C1〜C6)アルキル;並びにニトロからなる群から選択され;
R2は、H、F、Cl、CF、CFCF、CHCF、OCF、OCHF、フェニルまたは1〜3個のRで置換されたフェニルから選択され;
R3は、H、FまたはClである。
【0020】
別の態様では、式(Ia)の化合物を特徴とする。
【0021】
別の態様では、式(Ib)の化合物を特徴とする。
【0022】
さらなる態様では、本明細書に具体的に記載された式(I)の化合物(またはそれらの塩、例えば、医薬的に許容可能な塩)を特徴とする(例えば、化合物A1〜A24、またはA1〜A15、例えばA1、A2、A3、A4、A5、A6、A7、A11、A12、A13、A14、A15、A16、A17、A18、A19、A20、A21、A22、A23またはA24)。
【0023】
一態様では、本明細書の任意の場所で定義された通りの式(I)の化合物またはその塩(例えば、医薬的に許容可能な塩)及び医薬的に許容可能な担体を含む組成物(例えば医薬組成物)を特徴とする。いくつかの実施形態では、組成物は、有効量の化合物またはその医薬的に許容可能な塩を含むことができる。いくつかの実施形態では、組成物は、付加的な治療剤をさらに含むことができる。
【0024】
別の態様では、約0.05ミリグラムから約2,000ミリグラム(例えば、約0.1ミリグラムから約1,000ミリグラム、約0.1ミリグラムから約500ミリグラム、約0.1ミリグラムから約250ミリグラム、約0.1ミリグラムから約100ミリグラム、約0.1ミリグラムから約50ミリグラムまたは約0.1ミリグラムから約25ミリグラム)の、本明細書の任意の場所で定義された通りの式(I)の化合物またはその塩(例えば、医薬的に許容可能な塩)を含む剤形を特徴とする。剤形は、医薬的に許容可能な担体及び/または付加的な治療剤をさらに含むことができる。
【0025】
1種(または複数)のHDAC(例えばHDAC1もしくはHDAC2;例えばHDAC3)または1種を超えるHDAC(例えばHDAC1及びHDAC2;例えばHDAC1及びHDAC3;例えばHDAC2またはHDAC3;例えばHDAC1、HDAC2及びHDAC3)を、本明細書の任意の場所で定義された通りの式(I)の化合物またはその塩(例えば、医薬的に許容可能な塩)で阻害する方法を本明細書に提供する。いくつかの実施形態では、この方法は、例えば、試料(例えば、細胞または組織)中の1種(または複数)のHDAC(例えばHDAC1またはHDAC2;例えばHDAC3)を、本明細書の任意の場所で定義された通りの式(I)の化合物またはその塩(例えば、医薬的に許容可能な塩)と接触させることを含むことができる。他の実施形態では、この方法は、本明細書の任意の場所で定義された通りの式(I)の化合物またはその塩(例えば、医薬的に許容可能な塩)を対象(例えば、ヒトなどの哺乳動物)に投与することを含むことができる。したがって、さらに別の態様では、1種または複数のHDAC(例えばHDAC1またはHDAC2;例えばHDAC3、例えばHDAC1及びHDAC2;例えばHDAC1及びHDAC3;例えばHDAC2またはHDAC3;例えばHDAC1、HDAC2及びHDAC3)を阻害する(例えば、選択的に阻害する)化合物についてスクリーニングする方法を提供する。
【0026】
一態様では、HDAC3を選択的に阻害する方法であって、試料(例えば、細胞もしくは組織)中のHDAC3を本明細書の任意の場所で定義された通りの式(I)の化合物もしくはその塩(例えば、医薬的に許容可能な塩)と接触させること;または本明細書の任意の場所で定義された通りの式(I)の化合物またはその塩(例えば、医薬的に許容可能な塩)を対象(例えば、ヒトなどの哺乳動物)に投与することを含む方法を特徴とする。
【0027】
一態様では、HDAC1またはHDAC2(例えばHDAC1)を選択的に阻害する方法であって、試料(例えば、細胞もしくは組織)中のHDAC1もしくはHDAC2(例えばHDAC1)を、本明細書の任意の場所で定義された通りの式(I)の化合物もしくはその塩(例えば、医薬的に許容可能な塩)と接触させること;または本明細書の任意の場所で定義された通りの式(I)の化合物もしくはその塩(例えば、医薬的に許容可能な塩)を対象(例えば、ヒトなどの哺乳動物)に投与することを含む方法を特徴とする。
【0028】
一態様では、HDAC1、HDAC2及びHDAC3を選択的に阻害する方法であって、1つもしくは複数の試料(例えば、細胞もしくは組織)中のHDAC1、HDAC2及びHDAC3を、本明細書の任意の場所で定義された通りの式(I)の化合物(例えば式(I))もしくはその塩(例えば、医薬的に許容可能な塩)と接触させること;または本明細書の任意の場所で定義された通りの式(I)の化合物(例えば式(II))もしくはその塩(例えば、医薬的に許容可能な塩)を対象(例えば、ヒトなどの哺乳動物)に投与することを含む方法を特徴とする。
【0029】
一態様では、それらを必要とする対象(例えば、ヒトなどの哺乳動物)において、HDAC1もしくはHDAC2が媒介する疾患もしくは障害を治療する(例えば、制御する、軽減する、寛解させる、緩和する、もしくは進行を緩徐化する)方法、またはこのような疾患もしくは障害を予防する(例えば、発症を遅延させるもしくは発生する危険性を低減させる)方法であって、本明細書の任意の場所で定義された通りの式(I)の化合物またはその塩(例えば、医薬的に許容可能な塩)を対象に投与することを含む方法を特徴とする。
【0030】
一態様では、それらを必要とする対象(例えば、ヒトなどの哺乳動物)において、HDAC3が媒介する疾患もしくは障害を治療する(例えば、制御する、軽減する、寛解させる、緩和する、もしくは進行を緩徐化する)方法、またはこのような疾患もしくは障害を予防する(例えば、発症を遅延させるもしくは発生する危険性を低減させる)方法であって、本明細書の任意の場所で定義された通りの式(I)の化合物またはその塩(例えば、医薬的に許容可能な塩)を対象に投与することを含む方法を特徴とする。
【0031】
一態様では、それらを必要とする対象(例えば、ヒトなどの哺乳動物)において、2つ以上のHDAC(例えばHDAC1及びHDAC2;例えばHDAC1及びHDAC3;例えばHDAC2もしくはHDAC3;例えばHDAC1、HDAC2及びHDAC3)が媒介する疾患もしくは障害を治療する(例えば、制御する、軽減する、寛解させる、緩和するもしくは進行を緩徐化する)方法、またはこのような疾患もしくは障害を予防する(例えば、発症を遅延させるもしくは発生する危険性を低減させる)方法であって、本明細書の任意の場所で定義された通りの式(I)の化合物またはその塩(例えば、医薬的に許容可能な塩)対象に投与することを含む方法を特徴とする。
【0032】
一態様では、それらを必要とする対象(例えば、ヒトなどの哺乳動物)において、神経障害、例えばフリードライヒ失調症、筋緊張性ジストロフィー、脊髄性筋萎縮症、脆弱X症候群、ハンチントン病、脊髄小脳失調症、ケネディ病、筋萎縮性側索硬化症、球脊髄性筋萎縮症及びアルツハイマー病;がん(例えば、皮膚T細胞リンパ腫、B細胞リンパ腫及び結腸直腸がん及びB細胞急性リンパ性白血病);炎症性疾患(例えば、乾癬、関節リウマチ及び骨関節症);記憶障害状態;気分障害、クロマチン媒介性神経可塑性と関係がある脳障害、外傷後ストレス障害;薬物依存症;鎌状赤血球貧血、β−サラセミア(bT)、熱帯熱マラリア原虫感染症(例えばマラリア)及び他の寄生虫感染症を治療する(例えば、制御する、軽減する、寛解させる、緩和する、もしくは進行を緩徐化する)方法、またはこのような疾患もしくは障害を予防する(例えば、発症を遅延させるもしくは発生する危険性を低減させる)方法であって、本明細書の任意の場所で定義された通りの式(I)の化合物またはその塩(例えば、医薬的に許容可能な塩)を対象に投与することを含む方法を特徴とする。
【0033】
一態様では、医薬で使用するための、本明細書の任意の場所で定義された通りの式(I)の化合物またはその塩(例えば、医薬的に許容可能な塩)を特徴とする。
【0034】
一態様では、以下を治療するための、本明細書の任意の場所で定義された通りの式(I)の化合物またはその塩(例えば、医薬的に許容可能な塩)を特徴とする:HDAC1またはHDAC2が媒介する疾患または障害;HDAC3が媒介する疾患または障害;HDAC3及びHDAC1またはHDAC2が媒介する疾患または障害;HDAC1及びHDAC2及びHDAC3が媒介する疾患または障害;神経障害、例えばフリードライヒ失調症、筋緊張性ジストロフィー、脊髄性筋萎縮症、脆弱X症候群、ハンチントン病、脊髄小脳失調症、ケネディ病、筋萎縮性側索硬化症、ニーマン・ピック病、ピット・ホプキンス病、球脊髄性筋萎縮症及びアルツハイマー病;がん(例えば、皮膚T細胞リンパ腫、B細胞リンパ腫及び結腸直腸がん);炎症性疾患(例えば、乾癬、関節リウマチ及び骨関節症);記憶障害状態;外傷後ストレス障害;薬物依存症;HIVなどの感染症;熱帯熱マラリア原虫感染症(例えばマラリア)及び他の寄生虫感染症、B−ALL、bT、鎌状赤血球貧血、気分障害、またはクロマチン媒介性神経可塑性と関係がある脳障害。
【0035】
一態様では、以下を治療するための医薬の調製における、本明細書の任意の場所で定義された通りの式(I)の化合物またはその塩(例えば、医薬的に許容可能な塩)の使用を特徴とする:HDAC1またはHDAC2が媒介する疾患または障害;HDAC3が媒介する疾患または障害;HDAC3及びHDAC1またはHDAC2が媒介する疾患または障害;HDAC1及びHDAC2及びHDAC3が媒介する疾患または障害;神経障害、例えばフリードライヒ失調症、筋緊張性ジストロフィー、脊髄性筋萎縮症、脆弱X症候群、ハンチントン病、脊髄小脳失調症、ケネディ病、筋萎縮性側索硬化症、ニーマン・ピック病、ピット・ホプキンス病、球脊髄性筋萎縮症及びアルツハイマー病;がん(例えば、皮膚T細胞リンパ腫、B細胞リンパ腫、B−ALL及び結腸直腸がん);炎症性疾患(例えば、乾癬、関節リウマチ及び骨関節症);記憶障害状態;気分障害、クロマチン媒介性神経可塑性の変化を伴う脳障害、鎌状赤血球貧血、β−サラセミア、外傷後ストレス障害;薬物依存症;HIVなどの感染症;熱帯熱マラリア原虫感染症(例えばマラリア)及び他の寄生虫感染症。
【0036】
いくつかの実施形態では、対象は、それらを必要とする対象(例えば、そうした治療を必要としているとして特定された対象、例えば本明細書に記載の疾患または状態の1つまたは複数を有するまたは有する危険性がある対象)でもよい。そうした治療を必要としている対象の特定は、対象または健康管理専門家の判断でもよく、主観的(例えば、意見)でも客観的(例えば、試験または診断法によって測定可能)でもよい。いくつかの実施形態では、対象は哺乳動物でもよい。ある実施形態では、対象はヒトでもよい。
【0037】
一態様では、本明細書に記載の化合物の作製方法を特徴とする。実施形態では、この方法は、本明細書に記載の中間化合物のうちのいずれか1つを得ることと、1つまたは複数のステップにおいてそれを1種または複数の化学試薬と反応させて、本明細書の任意の場所で定義された通りの式(I)の化合物またはその塩(例えば、医薬的に許容可能な塩)を生成することとを含む。
【0038】
本明細書に記載の式(I)の化合物のいくつかは、増強された(例えば増大された、例えば他のo−アミノアニリドHDAC阻害剤と比較して、例えば約2倍以上増大された)酸安定性を有する。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、酸性pH、例えば胃内の条件を模倣することを目的とする酸性条件、例えば50℃で約2.0のpHでの約4時間のインキュベーション(例えば10μM溶液として)にさらした場合に、増強された分解抵抗性、例えば約25%の未満の分解(例えば約20%未満の分解、約15%未満の分解または約10%未満の分解)を有する。酸性pHでの分解または代謝に対する化合物の抵抗性は、医薬品(例えば薬物)にとって有用な特徴であり得る。例えば、低pHでの安定性が増大すると、所望の塩を著しく分解することなしに、塩形成などの処理調製ステップが可能になり得る。さらに、経口的に投与される医薬品は、胃の酸性pHに対して安定であることが好ましい。いくつかの実施形態では、化合物は、酸性pHにさらした場合に、pH2及び50℃で、例えば12時間または例えば18時間または例えば24時間を越える安定性半減期を伴う、増強された安定性を示す。
【0039】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の式(I)の化合物は、HDAC3を選択的に阻害し、例えば、HDAC1及びHDAC2よりもHDAC3を選択的に阻害する(例えば5倍以上の選択性を示し、例えば25倍以上の選択性を示す)。理論に拘束されることを望むものではないが、HDAC3選択的阻害剤は、フラタキシンの発現を増大させることができると考えられ、したがって、神経学的状態(例えば、フリードライヒ失調症などの、フラタキシン発現の低減と関係がある神経学的状態)の治療に有用であり得る。HDAC3の阻害は、記憶固定において重要な役割を果たすことも考えられている(McQuown SCら、J Neurosci 31 764(2011))。HDAC3の選択的阻害剤は、他のHDACの阻害に付随する毒性を低減させることによって、神経学的状態の治療に関して、広域性HDAC阻害剤の使用よりも多くの利点を提供することができる。そのような特異的HDAC3阻害剤は、より高い治療指数を提供し、その結果、慢性または長期の治療中の患者による優れた寛容性がもたらされると思われる。
【0040】
いくつかのさらなる実施形態では、化合物は、HDAC1及び/またはHDAC2を選択的に阻害する(例えば5倍以上の選択性を示し、例えば25倍以上の選択性を示す)。
【0041】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の式(I)の化合物は、HDAC1、HDAC2及びHDAC3を阻害する。理論に拘束されることを望むものではないが、HDAC3選択的阻害剤は、フラタキシンの発現を増大させることができると考えられ、したがって、神経学的状態(例えば、フリードライヒ失調症などの、フラタキシン発現の低減と関係がある神経学的状態)の治療に有用であり得る。
【0042】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の式(I)の化合物は、クラスIヒストン脱アセチル化酵素を阻害することが示されており、この阻害は、フリードライヒ運動失調症患者の末梢血単核球(PBMC)、及びフリードライヒ運動失調症患者の細胞系統から作出された人工多能性幹細胞に由来するニューロンにおいて、試験管内でのフラタキシンmRNAの発現増大をもたらした。
【0043】
いくつかの態様では、本明細書に開示される化合物は、結腸直腸がん細胞の試験管内増殖を用量依存的に阻害する。さらなる実施形態では、HDAC3の阻害に対して特異的であり、CNSへの分布を示す、本明細書に開示される化合物は、新規な物体認識パラダイムを使用して、生体内で長期記憶を増大させることが期待される。
【0044】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の式(I)の化合物は、増強された脳透過性を示す。例えば、本明細書に記載の式(I)の化合物のいくつかをマウスに投与した場合、約0.25を越える(例えば、約0.50を越える、約1.0を越える、約1.5を越えるまたは約2.0を越える)脳/血漿比が観察される。したがって、そのような化合物は、脳(例えば、神経学的状態、例えばフリードライヒ失調症、筋緊張性ジストロフィー、脊髄性筋萎縮症、脆弱X症候群、ハンチントン病、ニーマン・ピック病、ピット・ホプキンス病、脊髄小脳失調症、ケネディ病、筋萎縮性側索硬化症、球脊髄性筋萎縮症及びアルツハイマー病;記憶障害状態;外傷後ストレス障害;薬物依存症)を標的化する療法に特に適することが期待される。
【0045】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の式(I)の化合物は、HDAC3を選択的に阻害し、例えば、HDAC1及びHDAC2よりもHDAC3を選択的に阻害し(例えば5倍以上の選択性を示し、例えば25倍以上の選択性を示す)、増強された脳透過性を示す(例えば、上記の通り)。
【0046】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の式(I)の化合物は、HDAC1及び/またはHDAC2を選択的に阻害し、例えば、HDAC3よりもHDAC1及び/またはHDAC2を選択的に阻害し(例えば5倍以上の選択性を示し、例えば25倍以上の選択性を示す)、増強された脳透過性を示す(例えば、上記の通り)。
【0047】
実施形態は、詳細な説明及び特許請求の範囲に記載されている特徴のいずれか1つまたは複数を含むこともできる。
定義
【0048】
用語「肝細胞」は、調製物、例えば、マウス、ラット、イヌ、サルまたはヒトの肝組織から得ることができる肝組織由来細胞の市販の調製物を指す。
【0049】
用語「哺乳動物」には、マウス、ラット、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウサギ、ヤギ、ウマ、サル、イヌ、ネコ及びヒトを含めた生物が含まれる。
【0050】
「有効量」は、治療対象に対して、治療効果(例えば、疾患、障害もしくは状態もしくはそれらの症状を治療する、例えば制御する、軽減する、寛解させる、緩和する、もしくはこれらの進行を緩徐化する;またはこれらを予防する、例えば、これらの発症を遅延させる、もしくはこれらが発生する危険性を低減する)を与える化合物量を指す。治療効果は、客観的(すなわち、ある試験またはマーカーによって測定可能)でもよく、主観的(すなわち、対象が効果の兆候を示すか、効果を感じる)でもよい。上記の化合物の有効量は、約0.01mg/kgから約1000mg/kg(例えば、約0.1mg/kgから約100mg/kg、約1mg/kgから約100mg/kg)の範囲にわたり得る。有効用量はまた、投与経路及び他の薬剤との併用の可能性によって変わる。
【0051】
用語「ハロ」または「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素の任意の基を指す。
【0052】
一般に、及び別段の指示がない限り、置換基(基)の接頭辞名は、(i)親水素化物の「アン(ane)」を接尾語「イル(yl)」で置き換えること;または(ii)親水素化物の「e」を接尾語「イル(yl)」で置き換えることのいずれかによって、親水素化物から導かれる;(ここでは、自由原子価を有する原子(複数可)は、特定される場合に、親水素化物の確立したいかなる番号付けとも一致するようにできるだけ小さい番号が与えられる)。認容される略称、例えば、フリル、ピリジル及びピペリジル、並びに慣用名、例えば、フェニル及びチエニルも本明細書全体を通して使用される。置換基の番号付けに関しても、従来の番号付け/標記システムに従う。
【0053】
別段の記載のない限り、以下の定義が使用される。基、置換基及び範囲に関して以下に列挙される特定の及び一般的な値は、例示のためのみであり;これらは、基及び置換基に関する他の定義された値または定義された範囲内の他の値を除外しない。アルキル、アルコキシなどは、直鎖状基及び分枝状基の両方を示す。
【0054】
本明細書で使用する場合、単独または他の用語と組み合わせて用いられる用語「アルキル」は、直鎖状でも分枝状でもよい飽和炭化水素基を指す。いくつかの実施形態では、アルキル基は、1から12、1から8、または1から6個の炭素原子を含む。アルキル部分の例としては、これらに限定されないが、化学基、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、イソブチル、sec−ブチル;高級ホモログ、例えば、2−メチル−1−ブチル、n−ペンチル、3−ペンチル、n−ヘキシル、1,2,2−トリメチルプロピル、n−ヘプチル、n−オクチルなどが挙げられる。いくつかの実施形態では、アルキル部分は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、または2,4,4−トリメチルペンチルである。
【0055】
定義全体を通して、用語「Cy〜Cz」(例えば、C1〜C6など)が使用され、ここでは、y及びzは整数であり、炭素数を示し、y〜zは終点を含む範囲を示す。
【0056】
本明細書で言及する場合、用語「アルコキシ基」は、式O(アルキル)の基を指す。アルコキシは、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソ−ブトキシ、sec−ブトキシ、ペントキシ、2−ペントキシ、3−ペントキシまたはヘキシルオキシでもよい。
【0057】
本明細書で使用する場合、単独または他の用語と組み合わせて用いられる用語「アリール」は、少なくとも1つの芳香族環を含む、単環式芳香族炭化水素部分または(例えば、2、3または4個の縮合した連結環を有する)多環式炭化水素部分を指す。例としては、これらに限定されないが、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、インダニル及びテトラリニルが挙げられる。いくつかの実施形態では、アリール基は6から10個の炭素原子を有する。
【0058】
本明細書で言及する場合、「ヘテロアリール」は、少なくとも1つの芳香族環を含む、5〜10個の環原子を含む芳香族の単環式または縮合二環式または多環式環であって、それぞれが少なくとも1つの(典型的には1から約3個の)独立に選択された窒素、酸素または硫黄環原子(1つより多くの環が存在する場合は独立に選択される)を含む環を指す。ヘテロアリール基の例としては、これらに限定されないが、ピリジル、ピラゾリル、ピロリル、2−オキソ−インドリル、キノリニル、イソキノリニル、テトラヒドロ−イソキノリニル、ベンゾフラニル、インドリル、ベンゾジオキサニル、ベンゾジオキソリル(別名、メチレンジオキシフェニル)及び対応するジフルオ(CF)類似体、チアゾリル、2−オキソピリジニル、ピリジニルN‐オキシド、ピリミジニル、チエニル、フラニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、ピリダジニル、イミダゾリル、ピラジニル、イソチアゾリル、1,2−チアジニル−1,1−ジオキシド、ベンズイミダゾリル、チアジアゾリル、ベンゾピラニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチエニル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ジオキソインドリル(イサチン)、フタルイミド;橋頭窒素環原子及び任意に他のヘテロ原子環原子を含むヘテロアリール、例えばインドリジニル、ピロロピリミジニル、ピラゾロピリジニル、イミダゾピリジニル、イミダゾピリアジニル、トリアゾロピリジニル、イミダゾチアゾリル、イミダゾオキサゾリル);並びに完全に不飽和の環系のジヒドロ及びテトラヒドロ同族体が挙げられる。
【0059】
本明細書で使用する場合、フレーズ「任意に置換された」は、無置換(例えば、Hで置換されている)または置換されたことを意味する。本明細書で使用する場合、用語「置換された」は、水素原子が除去され、置換基で置き換えられていることを意味する。所与の原子での置換は結合価によって制限が生じることが理解されよう。修飾語句「任意に置換された」または「置換された」を伴わないアルキルなどの置換基(基)の接頭辞名の使用は、特定の置換基が無置換であることを意味すると理解される。しかし、修飾語句「任意に置換された」または「置換された」を伴わない「フルオロCy〜Czアルキル」の使用もやはり、少なくとも1つの水素原子がフルオロで置き換えられているアルキル基を意味すると理解される。
【0060】
別段の指示がない限り、本明細書で明確に定義されていない置換基の命名は、官能基の終末部の名前をつけ、続いて結合点に対して隣接する官能基の名前をつけることによって達せられる。一般に、置換基に対する結合点は、その基の最後の用語によって示される。例えば、(ヘテロシクリル)−(C1〜C6)アルキルは、アルキレンリンカーが1から6個の炭素を有し、置換基がアルキレンリンカーを介して結合している、ヘテロシクリル−アルキレン−部分を指す。
【0061】
本明細書で使用する場合、単独または他の用語と組み合わせて用いられる用語「シクロアルキル」は、3〜10個の炭素原子を含む飽和した環状炭化水素部分を指す。例示的なシクロアルキル基としては、限定はされないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチルが挙げられる。2つの置換基が結合してシクロアルキル基を形成する場合は、それはシクロアルキレンでもよいことが理解されよう。
【0062】
本明細書で使用する場合、単独または他の用語と組み合わせて用いられる用語「シクロアルケニルは、3〜10個の炭素原子を含む部分的に飽和した環状炭化水素部分を指す。例示的なシクロアルケニル基は、シクロヘキセニルである。2つの置換基が結合してシクロアルケニル基を形成する場合は、それはシクロアルケニレンでもよいことが理解されよう。
【0063】
本明細書で使用する場合、単独または他の用語と組み合わせて用いられる用語「シアノ」は、炭素と窒素原子が三重結合により結合している、式−CNの基を指す。
【0064】
本明細書で使用する場合、単独または他の用語と組み合わせて用いられる用語「ハロCy〜Czアルキル」などは、1個のハロゲン原子から、同じでも異なっていてもよい2n+1個のハロゲン原子を有するアルキル基(「n」は、アルキル基の炭素原子数である)を指す。いくつかの実施形態では、ハロゲン原子はフルオロ原子である。
【0065】
本明細書で使用する場合、単独または他の用語と組み合わせて用いられる「ハロアルコキシ」は、式−O−ハロアルキルの基を指す。ハロアルコキシ基の一例は、OCFである。いくつかの実施形態では、ハロゲン原子はフルオロ原子である。
【0066】
本明細書で使用する場合、単独または他の用語と組み合わせて用いられる用語「ヘテロシクリル」は、炭素環原子並びに窒素、硫黄及び酸素から選択される少なくとも1つのヘテロ原子環原子(1つより多く存在する場合は独立に選択される)を有する、3〜10個の環原子を含む飽和環系を指す。ヘテロシクリル基が1つより多いヘテロ原子を含む場合は、ヘテロ原子は、同じでも異なっていてもよい。ヘテロシクリル基は、単環式または二環式または多環式(例えば、2つの縮合環を有する)環系を含むことができる。ヘテロシクリル基は、橋頭ヘテロシクロアルキル基を含むこともできる。本明細書で使用する場合、「橋頭ヘテロシクリル基」は、少なくとも1つの橋頭ヘテロ原子(例えば窒素)を含むヘテロシクリル部分を指す。いくつかの実施形態では、ヘテロシクロアルキル基の環(複数可)中の炭素原子またはヘテロ原子が酸化されて、カルボニルまたはスルホニル基(または他の酸化結合)が形成され得、または窒素原子が4級化され得る。2つの置換基が結合してヘテロシクロアルキル基を形成する場合は、それはヘテロシクロアルキレンでもよいことが理解されよう。
【0067】
1つまたは複数の置換基を含む上記の基のいずれかに関して、当然ながら、そうした基は、立体的に実際的でない及び/または合成的に不可能な、いかなる置換または置換パターンも含まないことが理解されよう。さらに、本明細書に記載の化合物には、これらの化合物の置換から生じるすべての立体化学的異性体が含まれる。
【0068】
別段定義しない限り、本明細書で使用するすべての技術用語及び科学用語は、当業者が通常理解するものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと同様または均等の方法及び材料を、本明細書に記載の実施形態の実施または試験において使用することができるが、適切な方法及び材料を以下に記載する。本明細書で言及されるすべての刊行物、特許出願、特許及び他の参考文献は、参照によりその全体が組み込まれる。矛盾がある場合には、定義を含めて本明細書を優先する。さらに、材料、方法及び実施例は例示に過ぎず、制限を意図したものではない。
【0069】
本開示の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲から明らかである。
【0070】
明確にするために、別々の実施形態の文脈に記載されている本開示の特定の特徴はまた、単一の実施形態中に組み合わせて提供することができると理解される。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈に記載されている本開示の様々な特徴はまた、別々にまたは任意の適切な副次的組み合わせで提供することができる。
【0071】
したがって、説明を容易にするために、本明細書で、基が、「本明細書の任意の場所で定義された通り」(など)によって定義される場合は、その特定の基に関する定義は、最初に生じる定義及び最も広範な包括的定義並びに本明細書の任意の場所で詳述されるいかなる準包括的定義及び特定の定義も含むことも理解される。さらに、説明を容易にするために、定義「水素以外の置換基」は、その特定の可変部分について、非水素の可能性を一括して言及する。
【発明を実施するための形態】
【0072】
本開示は、式(I)を有する化合物または医薬的に許容可能なその塩、それらを含む組成物(例えば、医薬組成物)及びそれらの使用方法を特徴とする:
【化5】
I.化合物
A.可変部分X
1.
【0073】
いくつかの実施形態では、Xは、−Y−[C(R−A−[C(R−B−である。実施形態は、以下の[a]〜[d]に記載されている特徴の1つまたは複数を含むこともできる。
a.
【0074】
Aは結合であり、及び/またはBは結合である(いくつかの実施形態では、A及びBのそれぞれが結合である;またはA及びBのうちの1つ(例えばB)が結合であり、A及びBの一方(例えばA)が結合以外、例えば、OもしくはNR、例えば、Oであり;実施形態では、A及びBのそれぞれはS(O))以外である)。
【0075】
(存在する場合)R及びRの各存在は、H、F、OH、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、NH、OCO−(C1〜C6アルキル)、OCO−(C3〜C6シクロアルキル)、C1〜C6アルコキシ C1〜C6フルオロアルコキシ及びシアノから独立に選択される。
【0076】
(存在する場合)R及びRの各存在は、H、F、C1〜C6アルキル及びC3〜C6シクロアルキルから独立に選択される。
【0077】
(存在する場合)R及びRの各存在はHである。
【0078】
以下の1つまたは複数(例えば1つ)が適用される:
任意の2つのRは、それぞれが結合している炭素と共に、3〜6個の環原子を含む、C3〜C6シクロアルキルもしくはヘテロシクリルを一緒に形成し、ここでは、ヘテロシクリル環原子のうちの1つはO;S(O)及びNRから選択され;これらの実施形態では、Rの任意の残りの存在及びRの任意の存在は、R及びRに関係する上記もしくは下記の定義のいずれか1つもしくは複数に従って、それぞれ独立に定義される;または
1つのR及び1つのRは、それぞれが結合している炭素と共に、3〜6個の環原子を含むC3〜C6シクロアルキルもしくはヘテロシクリルを形成し、ここでは、ヘテロシクリル環原子のうちの1つはO;S(O)及びNRから選択され;これらの実施形態では、他のR、他のR並びにR及びRの任意の他の残りの存在は、R及びRに関係する上記もしくは下記の定義の任意の1つもしくは複数に従って、それぞれ独立に定義される;または
任意の2つのRは、それぞれが結合している炭素と共に、3〜6個の環原子を含むC3〜C6シクロアルキルもしくはヘテロシクリルを形成し、ここでは、環原子のうちの1つはO;S(O)及びNRから選択され;これらの実施形態では、Rの各存在及びRの任意の他の残りの存在は、R及びRに関係する上記の定義のいずれか1つまたは複数に従って、それぞれ独立に定義される。
b.
【0079】
いくつかの実施形態では、Yは、CR=CRである(いくつかの実施形態では、CRとCRの間の二重結合はトランス配置を有する;他の実施形態では、CRとCRの間の二重結合はシス配置を有する)。実施形態は、以下の特徴の1つまたは複数を含むことができる。
【0080】
CRとCRの間の二重結合はトランス配置を有する。R及びRのそれぞれは、独立に、H、F、OH、C1〜C6アルキル、C3〜C5シクロアルキル、NH、OCO−(C1〜C6アルキル)、OCO−(C3〜C5シクロアルキル)、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6フルオロアルコキシ及びシアノから選択される。ある実施形態では、R及びRのそれぞれはHである。
【0081】
Aは結合であり、及び/またはBは結合である(いくつかの実施形態では、A及びBのそれぞれが結合である)。
【0082】
及びRのそれぞれは、本明細書の任意の場所で定義される通りでもよい(例えば、セクション[I][A][1][a]において上に記載したR及びRの特徴を参照されたい)。
【0083】
aは1または2(例えば1)である。bは0または1(例えば0)である。
【0084】
aは1または2、例えば1であり;bは0または1、例えば0である(さらなる実施形態では、A及びBのそれぞれはまた、結合である。
【0085】
bは0である(実施形態では、aは1または2、例えば1であり;さらなる実施形態では、A及びBのそれぞれはまた、結合である)。
【0086】
Xは−CH=CH−C(R−である。ある実施形態では、各Rは水素である。他の実施形態では、各Rは、水素以外の置換基(例えば、C1〜C6アルキル)であり、各Rは同じでもよいし、異なっていてもよく、例えば同じである。例えば、各Rは同じC1〜C6アルキル、例えばCHでもよい。
【0087】
Xは−CH=CH−CH(R)−である。ある実施形態では、Rは水素であり;他の実施形態では、Rは水素以外の置換基(例えば、上記の通り)である。
【0088】
Xは−CH=CH−C(R−C(Rである。ある実施形態では、各Rは水素である。他の実施形態では、各Rは、水素以外の置換基(例えば、C1〜C6アルキル)であり、各Rは同じでもよいし、異なっていてもよく、例えば同じである。例えば、各Rは同じC1〜C6アルキル、例えばCHでもよい。さらに他の実施形態では、Rの一方のジャーミナル(germinal)ペアでは、各Rは水素であり;Rの他方のジャーミナルペアでは、各Rは水素以外の置換基(例えば、上記の通り)である。
【0089】
Xは−CH=CHCH(R)CH(R)である。ある種の実施形態では、各Rは水素であり;他の実施形態では、各Rは水素以外の置換基であり;さらに他の実施形態では、一方のRは水素であり、他方は水素以外の置換基である。
【0090】
例えば、Xは−CH=CH−CH−または−CH=CH−CH−CH−(例えば、前述の実施形態では、二重結合はトランス配置を有してもよく;さらに、A及びBのそれぞれは結合でもよい)。ある実施形態では、Xは−CH=CH−CH−(例えばトランス)である。
c.
【0091】
いくつかの実施形態では、YはO、NRまたはS(O)であり;例えば、YはOまたはNRである。実施形態は、以下の特徴の1つまたは複数を含むことができる。
【0092】
YはOである。
【0093】
YはNR(例えば、RはC1〜C6アルキルである)。
【0094】
Aは結合であり、及び/またはBは結合である(いくつかの実施形態では、A及びBのそれぞれが結合である)。
【0095】
及びRのそれぞれは、本明細書の任意の場所で定義される通りでもよい(例えば、セクション[I][A][1][a]において上に記載したR及びRの特徴を参照されたい)。
【0096】
aは2または3(例えば2)であり、bは任意に0以外(例えば1または2)であり;実施形態では、Aは結合であり;またはAは結合以外、例えばOもしくはNR、例えばOであり;Bは結合である。いくつかの例を以下に提供する:aは2または3(例えば2)であり、bは0であり;A及びBのそれぞれは結合である。aは2または3(例えば2)であり、bは0以外(例えば1または2)であり、A及びBのそれぞれは結合である。aは2または3(例えば2)であり、bは0以外(例えば2または3)であり、Aは結合以外、例えばOまたはNR、例えばOであり、Bは結合である。
【0097】
例えば、Xは−O−(CH2〜3(例えば2)または−N(CH)−(CH2〜3(例えば2)である。
d.
【0098】
いくつかの実施形態では、Yは結合である。実施形態は、以下の特徴の1つまたは複数を含むことができる。
【0099】
Aは結合、OもしくはNRであり(例えばAは結合もしくはOであり、例えばAは結合である)、及び/またはBは結合である。ある実施形態では、Aは結合であり、Bは結合である。
【0100】
及びRのそれぞれは、本明細書の任意の場所で定義される通りでもよい(例えば、セクション[I][A][1][a]において上に記載したR及びRの特徴を参照されたい)。
【0101】
bは0である(実施形態では、aは1、2または3であり(例えば1)でもよく、以下の1つまたは複数が適用され得る:Aは結合であり、Aは結合以外、例えばOである;Bは結合であり、RのそれぞれはHである;例えばAは結合であり、aは1であり、Bは結合である;例えば、XはCHである)。
【0102】
bは1、2または3である(実施形態では、aは1、2または3でもよく、以下の1つまたは複数が適用され得る:Aは結合であり、Aは結合以外、例えばOである;Bは結合であり、RのそれぞれはHであり、RのそれぞれはHである)。これらの実施形態のある種のものでは、Xは、4原子以下のスパンを有する。
2.
【0103】
いくつかの実施形態では、Xは結合である。
B.可変部分R4及びR5
【0104】
いくつかの実施形態では、R4は水素またはハロ(例えばクロロ)である。
【0105】
いくつかの実施形態では、R4は水素である。
【0106】
いくつかの実施形態では、R5は水素である。
【0107】
いくつかの実施形態では、R4及びR5のそれぞれはHである。
【0108】
いくつかの実施形態では、R4及びR5のそれぞれは、H以外の置換基である。
C.可変部分R1
1.
【0109】
いくつかの実施形態では、R1は、1〜3個のRで任意に置換された、C6〜C10アリールである。ある実施形態では、R1は、1〜3個のRで任意に置換された、フェニルまたはナフチル(例えば、フェニル)である(実施形態では、各Rは、F、OH、C1〜C6アルキル、フルオロ(C1〜C6)アルキル C3〜C6シクロアルキル、NH、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6フルオロアルコキシ及びシアノから独立に選択される)。
【0110】
他の実施形態では、R1は、非芳香族環と縮合したフェニル環を含み、1〜3個のRで任意に置換されたC8〜C10アリール(例えば、任意に置換されたインダニルまたはテトラリニル)である。
2.
【0111】
いくつかの実施形態では、R1は、5〜10個の環原子を含む単環式または二環式ヘテロアリールであり、これは、1〜3個のRで任意に置換されおり;ここでは、1〜4個の環原子は、O、N、N−H、N−R及びSから独立に選択されるヘテロ原子である。
【0112】
ある実施形態では、R1は、単環式ヘテロアリール、例えばピリジルである。
【0113】
他の実施形態では、R1は、二環式ヘテロアリール、例えば、インドリルなどのような完全に芳香族であるものである。
【0114】
さらに他の実施形態では、R1は、橋頭窒素環原子及び任意に他のヘテロ原子環原子を含む二環式ヘテロアリールであり、例えばインドリジニル、ピロロピリミジニル、ピラゾロピリジニル、イミダゾピリジニル、イミダゾピリアジニル、トリアゾロピリジニル、イミダゾチアゾリル、イミダゾオキサゾリルである。
【0115】
R1ヘテロアリール基の他の例としては、限定はされないが、ピラゾリル、ピロリル、2−オキソ−インドリル、キノリニル、イソキノリニル、テトラヒドロ−イソキノリニル、ベンゾフラニル、ベンゾジオキサニル、ベンゾジオキソリル(別名、メチレンジオキシフェニル)及び対応するジフルオ(CF)類似体、チアゾリル、2−オキソピリジニル、ピリジニルN‐オキシド、ピリミジニル、チエニル、フラニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、ピリダジニル、イミダゾリル、ピラジニル、イソチアゾリル、1,2−チアジニル−1,1−ジオキシド、ベンズイミダゾリル、チアジアゾリル、ベンゾピラニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチエニル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ジオキソインドリル(イサチン)、フタルイミド、並びに完全に不飽和の環系のジヒドロ及びテトラヒドロ同族体が挙げられる。
3.
【0116】
いくつかの実施形態では、R1は、1〜3個のRで任意に置換された、4〜10個の環原子を含むヘテロシクリルであり;ここでは、1〜4個の環原子は、O、N、N−H、N−R及びSから独立に選択されるヘテロ原子である(例えば、橋頭窒素環原子及び任意に他のヘテロ原子環原子を含む二環式ヘテロシクリル)。
【0117】
R1ヘテロシクリル基の例としては、限定はされないが、ピペリジニル、モルホリニル、ピロリジニル、アゼチジニル、アゼパニル、イソオキサゾリジニル、オキサゾリジニル、チアゾリシ゛ニル、イミダゾリニル、キヌクリジニル、イソチアゾリシ゛ニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、チアモルホリニル、チアモルホリニルスルホキシド、チアモルホリニルスルホン、ジオキサニル、トロパニル及び他の架橋二環式のアミン、キニクリジニルが挙げられる。
4.
【0118】
いくつかの実施形態では、R1はHである。
5.
【0119】
いくつかの実施形態では、R1は、C3〜C10(例えば、C3〜C8、C3〜C6、C3〜C5)シクロアルキルまたはC3〜C10(例えば、C3〜C8、C3〜C6、C3〜C5)シクロアルケニルであり、これらのそれぞれは1〜3個のRで任意に置換されている。
【0120】
いくつかの実施形態では、R1は、1〜3個のRで任意に置換されたC3〜C10シクロアルキルである。
【0121】
いくつかの実施形態では、R1は、1〜3個のRで任意に置換されたC3〜C8シクロアルキルである。
【0122】
いくつかの実施形態では、R1は、1〜3個のRで任意に置換されたC3〜C6シクロアルキルである。
【0123】
いくつかの実施形態では、R1は、1〜3個のRで任意に置換されたC3〜C5シクロアルキルである。
【0124】
いくつかの実施形態では、R1は、無置換のC3〜C10シクロアルキルである。いくつかの実施形態では、R1は、無置換のC3〜C8シクロアルキルである。いくつかの実施形態では、R1は、無置換のC3〜C6シクロアルキルである。いくつかの実施形態では、R1は、無置換のC3〜C5シクロアルキルである。
【0125】
R1シクロアルキルの例としては、限定はされないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、2,6−ジメチルシクロヘキシル、2,2,6,6−テトラメチルシクロヘキシルが挙げられる。
【0126】
いくつかの実施形態では、R1は、1〜3個のRで任意に置換されたシクロプロピルである。いくつかの実施形態では、R1は、無置換のシクロプロピルである。
D.可変部分R2及びR3
1.
【0127】
いくつかの実施形態では、R2は水素以外の置換基(例えば、フェニル、置換フェニル、チエニル、チアゾリル及びピラゾール−l−イル)であり、R3は水素である。ある実施形態では、化合物は、HDAC1及び/または2に対する選択性を示し得る。
2.
【0128】
いくつかの実施形態では、R2は水素であり、R3は水素以外の置換基(例えばフルオロ)である。ある実施形態では、化合物は、HDAC3に対する選択性を示し得る。
3.
【0129】
いくつかの実施形態では、R2及びR3のそれぞれは水素である。
E.非限定的な組み合わせ
いくつかの実施形態では、可変部分のX、R1、R2、R3、R4、R5及びR(及びそれらの付随する下位定義)を以下に提供するように組み合わせることができる:
(a)
Xは:
(i)−Y−[C(R−A−[C(R−B−;
(ii)直接結合;もしくは
(iii)C=O、C(R−C(=O)、C(=O)−C(R、SO−NR、NR−SO、C(=O)NRもしくはNR−C(=O)であり;
R1は:
(i)1〜3個のRで任意に置換された、5〜10個の環原子を含む単環式もしくは二環式ヘテロアリール(ここでは、1〜4個の環原子は、O、N、N−H、N−R及びSから独立に選択されるヘテロ原子である);
(ii)1〜3個のRで任意に置換された、C6〜C10アリール;
(iii)それぞれが1〜3個のRで任意に置換された、C3〜C10シクロアルキルもしくはC3〜C10シクロアルケニル;
(iv)1〜3個のRで任意に置換された3〜10個の環原子を含むヘテロシクリル(ここでは、1〜4個の環原子は、O、N、N−H、N−R及びSから独立に選択されるヘテロ原子である);もしくは
(v)水素であり;
は、ハロゲン;C1〜C6アルキル;フルオロ(C1〜C6)アルキル;ヒドロキシル;ヒドロキシ(C〜C)アルキル;C1〜C6アルコキシ;フルオロ(C1〜C6)アルコキシ;(C1〜C6アルキル)C(O)−;(C1〜C6アルキル)NH−;(C1〜C6アルキル)N−;−N(Ro’(ここでは、Ro’−N−Ro’は、5もしくは6個の環原子を有する飽和環を一緒に形成し、1もしくは2個の環原子は、任意に、NH、N(C1〜C6アルキル)、OもしくはSから独立に選択されるヘテロ原子である);シアノ;フェニル;5〜6の環原子を含むヘテロアリール(ここでは、1〜4個の環原子は、O、N、N−H、N−Ro’’及びSから独立に選択されるヘテロ原子であり、これらのそれぞれは、1〜3個のRo’’で任意に置換されている);並びにSO−(C1〜C6)アルキルからなる群から独立に選択され、
R4は水素もしくはハロであり;
R5は水素であり;
(i)R2及びR3のそれぞれは水素であり;もしくは(ii)R2は水素であり、R3はフルオロであり;もしくは(iii)R2は水素以外の置換基であり、R3は水素である;
(b)
Xは、−Y−[C(R−A−[C(R−B−であり;
R1は:
(i)1〜3個のRで任意に置換された、5〜10個の環原子を含む単環式もしくは二環式ヘテロアリール(ここでは、1〜4個の環原子は、O、N、N−H、N−R及びSから独立に選択されるヘテロ原子である);
(ii)1〜3個のRで任意に置換された、C6〜C10アリール;もしくは
(iii)それぞれが1〜3個のRで任意に置換された、C3〜C10シクロアルキルもしくはC3〜C10シクロアルケニル;
(iv)1〜3個のRで任意に置換された、3〜10個の環原子を含むヘテロシクリル(ここでは、1〜4個の環原子は、O、N、N−H、N−R及びSから独立に選択されるヘテロ原子である);もしくは
(v)水素であり;
は、ハロゲン;C1〜C6アルキル;フルオロ(C1〜C6)アルキル;ヒドロキシル;ヒドロキシ(C〜C)アルキル;C1〜C6アルコキシ;フルオロ(C1〜C6)アルコキシ;(C1〜C6アルキル)C(O)−;(C1〜C6アルキル)NH−;(C1〜C6アルキル)N−;−N(Ro’(ここでは、Ro’−N−Ro’は、5もしくは6個の環原子を有する飽和環を一緒に形成し、1もしくは2個の環原子は任意に、NH、N(C1〜C6アルキル)、OもしくはSから独立に選択されるヘテロ原子である);シアノ;フェニル;5〜6の環原子を含むヘテロアリール(ここでは、1〜4個の環原子は、O、N、N−H、N−Ro’’及びSから独立に選択されるヘテロ原子であり、これらのそれぞれは、1〜3個のRo’’で任意に置換されている);並びにSO−(C1〜C6)アルキルからなる群から独立に選択され;
R4は水素もしくはハロであり;
R5は水素であり;
(i)R2及びR3のそれぞれは水素であり;もしくは(ii)R2は水素であり、R3はフルオロであり;もしくは(iii)R2は水素以外の置換基であり、R3は水素である;
(c)
Xは、−Y−[C(R−A−[C(R−B−であり、Yは結合であり;
R1は:
(i)1〜3個のRで任意に置換された、5〜10個の環原子を含む単環式もしくは二環式ヘテロアリール(ここでは、1〜4個の環原子は、O、N、N−H、N−R及びSから独立に選択されるヘテロ原子である);
(ii)1〜3個のRで任意に置換された、C6〜C10アリール;もしくは
(iii)それぞれが1〜3個のRで任意に置換された、C3〜C10シクロアルキルもしくはC3〜C10シクロアルケニル;
(iv)1〜3個のRで任意に置換された、3〜10個の環原子を含むヘテロシクリル(ここでは、1〜4個の環原子は、O、N、N−H、N−R及びSから独立に選択されるヘテロ原子である);もしくは
(v)水素であり;
は、ハロゲン、C1〜C6アルキル及びフルオロ(C1〜C6)アルキルからなる群から独立に選択され;
R4は水素もしくはハロであり;
R5は水素であり;
(i)R2及びR3のそれぞれは水素であり;もしくは(ii)R2は水素であり、R3はフルオロであり;もしくは(iii)R2は水素以外の置換基であり、R3は水素である;
(d)
Xは、−Y−[C(R−A−[C(R−B−であり、Yは結合であり、R及びRの各存在は、H、F、OH、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、NH、OCO−(C1〜C6アルキル)、OCO−(C3〜C6シクロアルキル)、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6フルオロアルコキシ及びシアノから独立に選択され;
R1は:
(i)1〜3個のRで任意に置換された、5〜10個の環原子を含む単環式もしくは二環式ヘテロアリール(ここでは、1〜4個の環原子は、O、N、N−H、N−R及びSから独立に選択されるヘテロ原子である);
(ii)1〜3個のRで任意に置換された、C6〜C10アリール;もしくは
(iii)それぞれが1〜3個のRで任意に置換された、C3〜C10シクロアルキルもしくはC3〜C10シクロアルケニル;
(iv)1〜3個のRで任意に置換された、3〜10個の環原子を含むヘテロシクリル(ここでは、1〜4個の環原子は、O、N、N−H、N−R及びSから独立に選択されるヘテロ原子である);もしくは
(v)水素であり;
は、ハロゲン、C1〜C6アルキル及びフルオロ(C1〜C6)アルキルからなる群から独立に選択され;
R4は水素もしくはハロであり;
R5は水素であり;
(i)R2及びR3のそれぞれは水素であり;もしくは(ii)R2は水素であり、R3はフルオロであり;もしくは(iii)R2は水素以外の置換基であり、R3は水素である;
(e)
Xは:
(i)−Y−[C(R−A−[C(R−B−;
(ii)直接結合;もしくは
(iii)C=O、C(R−C(=O)もしくはC(=O)−C(R、SO−NR、NR−SO、C(=O)NR及びNR−C(=O)であり;
R1は、1〜3個のRで任意に置換された、C3〜C10シクロアルキルもしくはC3〜C10シクロアルケニルであり;
は、ハロゲン、C1〜C6アルキル及びフルオロ(C1〜C6)アルキルからなる群から独立に選択され;
R4は水素もしくはハロであり;
R5は水素であり;
(i)R2及びR3のそれぞれは水素であり;もしくは(ii)R2は水素であり、R3はフルオロであり;もしくは(iii)R2は水素以外の置換基であり、R3は水素である;
(f)
Xは、−Y−[C(R−A−[C(R−B−であり;
R1は、1〜3個のRで任意に置換された、C3〜C10シクロアルキルもしくはC3〜C10シクロアルケニルであり;
は、ハロゲン;C1〜C6アルキル;フルオロ(C1〜C6)アルキル;ヒドロキシル;ヒドロキシ(C〜C)アルキル;C1〜C6アルコキシ;フルオロ(C1〜C6)アルコキシ;(C1〜C6アルキル)C(O)−;(C1〜C6アルキル)NH−;(C1〜C6アルキル)N−;−N(Ro’(ここでは、Ro’−N−Ro’は、5もしくは6個の環原子を有する飽和環を一緒に形成し、1もしくは2個の環原子は任意に、NH、N(C1〜C6アルキル)、OもしくはSから独立に選択されるヘテロ原子である);シアノ;フェニル;5〜6の環原子を含むヘテロアリール(ここでは、1〜4個の環原子は、O、N、N−H、N−Ro’’及びSから独立に選択されるヘテロ原子であり、これらのそれぞれは、1〜3個のRo’’で任意に置換されている);並びにSO−(C1〜C6)アルキルからなる群から独立に選択され;
R4は水素もしくはハロであり;
R5は水素であり;
(i)R2及びR3のそれぞれは水素であり;もしくは(ii)R2は水素であり、R3はフルオロであり;もしくは(iii)R2は水素以外の置換基であり、R3は水素である;
(g)
Xは、−Y−[C(R−A−[C(R−B−であり;
R1は、1〜3個のRで任意に置換された、C3〜C10シクロアルキルもしくはC3〜C10シクロアルケニルであり;
は、ハロゲン;C1〜C6アルキル;フルオロ(C1〜C6)アルキル;ヒドロキシル;ヒドロキシ(C〜C)アルキル;C1〜C6アルコキシ;フルオロ(C1〜C6)アルコキシ;(C1〜C6アルキル)NH−;(C1〜C6アルキル)N−;シアノ;及びSO−(C1〜C6)アルキルからなる群から独立に選択され;
R4は水素もしくはハロであり;
R5は水素であり;
(i)R2及びR3のそれぞれは水素であり;もしくは(ii)R2は水素であり、R3はフルオロであり;もしくは(iii)R2は水素以外の置換基であり、R3は水素である;
(h)
Xは、−Y−[C(R−A−[C(R−B−であり、Yは結合であり;
R1は、1〜3個のRで任意に置換された、C3〜C10シクロアルキルもしくはC3〜C10シクロアルケニルであり;
は、ハロゲン、C1〜C6アルキル及びフルオロ(C1〜C6)アルキルからなる群から独立に選択され;
R4は水素もしくはハロであり;
R5は水素であり;
(i)R2及びR3のそれぞれは水素であり;もしくは(ii)R2は水素であり、R3はフルオロであり;もしくは(iii)R2は水素以外の置換基であり、R3は水素である;
(i)
Xは、−Y−[C(R−A−[C(R−B−であり、Yは結合であり、R及びRの各存在は、H、F、OH、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、NH、OCO−(C1〜C6アルキル)、OCO−(C3〜C6シクロアルキル)、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6フルオロアルコキシ及びシアノから独立に選択され;
R1は、1〜3個のRで任意に置換された、C3〜C10シクロアルキルもしくはC3〜C10シクロアルケニルであり;
は、ハロゲン;C1〜C6アルキル;フルオロ(C1〜C6)アルキル;ヒドロキシル;ヒドロキシ(C〜C)アルキル;C1〜C6アルコキシ;フルオロ(C1〜C6)アルコキシ;(C1〜C6アルキル)NH−;(C1〜C6アルキル)N−;シアノ;及びSO−(C1〜C6)アルキルからなる群から独立に選択され;
R4は水素もしくはハロであり;
R5は水素であり;
(i)R2及びR3のそれぞれは水素であり;もしくは(ii)R2は水素であり、R3はフルオロであり;もしくは(iii)R2は水素以外の置換基であり、R3は水素である;
(j)
Xは:
(i)−Y−[C(R−A−[C(R−B−;
(ii)直接結合;もしくは
(iii)C=O、C(R−C(=O)もしくはC(=O)−C(R、SO−NR、NR−SO、C(=O)NR及びNR−C(=O)であり;
R1は、1〜3個のRで任意に置換された、5〜10個の環原子を含む単環式もしくは二環式ヘテロアリールであり(ここでは、1〜4個の環原子は、O、N、N−H、N−R及びSから独立に選択されるヘテロ原子である);
は、ハロゲン;C1〜C6アルキル;フルオロ(C1〜C6)アルキル;ヒドロキシル;ヒドロキシ(C〜C)アルキル;C1〜C6アルコキシ;フルオロ(C1〜C6)アルコキシ;(C1〜C6アルキル)NH−;(C1〜C6アルキル)N−;シアノ;及びSO−(C1〜C6)アルキルからなる群から独立に選択され;
R4は水素もしくはハロであり;
R5は水素であり;
(i)R2及びR3のそれぞれは水素であり;もしくは(ii)R2は水素であり、R3はフルオロであり;もしくは(iii)R2は水素以外の置換基であり、R3は水素である;
(k)
Xは、−Y−[C(R−A−[C(R−B−であり;
R1は、1〜3個のRで任意に置換された、5〜10個の環原子を含む単環式もしくは二環式ヘテロアリールであり(ここでは、1〜4個の環原子は、O、N、N−H、N−R及びSから独立に選択されるヘテロ原子である);
は、ハロゲン;C1〜C6アルキル;フルオロ(C1〜C6)アルキル;ヒドロキシル;ヒドロキシ(C〜C)アルキル;C1〜C6アルコキシ;フルオロ(C1〜C6)アルコキシ;(C1〜C6アルキル)NH−;(C1〜C6アルキル)N−;シアノ;及びSO−(C1〜C6)アルキルからなる群から独立に選択され;
R4は水素もしくはハロであり;
R5は水素であり;
(i)R2及びR3のそれぞれは水素であり;もしくは(ii)R2は水素であり、R3はフルオロであり;もしくは(iii)R2は水素以外の置換基であり、R3は水素である;
(l)
Xは、−Y−[C(R−A−[C(R−B−であり、Yは結合であり;
R1は、1〜3個のRで任意に置換された、5〜10個の環原子を含む単環式もしくは二環式ヘテロアリールであり(ここでは、1〜4個の環原子は、O、N、N−H、N−R及びSから独立に選択されるヘテロ原子である);
は、ハロゲン;C1〜C6アルキル;フルオロ(C1〜C6)アルキル;ヒドロキシル;ヒドロキシ(C〜C)アルキル;C1〜C6アルコキシ;フルオロ(C1〜C6)アルコキシ;(C1〜C6アルキル)NH−;(C1〜C6アルキル)N−;シアノ;及びSO−(C1〜C6)アルキルからなる群から独立に選択され;
R4は水素もしくはハロであり;
R5は水素であり;
(i)R2及びR3のそれぞれは水素であり;もしくは(ii)R2は水素であり、R3はフルオロであり;もしくは(iii)R2は水素以外の置換基であり、R3は水素である;
(m)
Xは、−Y−[C(R−A−[C(R−B−であり、Yは結合であり、R及びRの各存在は、H、F、OH、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、NH、OCO−(C1〜C6アルキル)、OCO−(C3〜C6シクロアルキル)、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6フルオロアルコキシ及びシアノから独立に選択され;
R1は、1〜3個のRで任意に置換された、5〜10個の環原子を含む単環式もしくは二環式ヘテロアリールであり(ここでは、1〜4個の環原子は、O、N、N−H、N−R及びSから独立に選択されるヘテロ原子である);
は、ハロゲン;C1〜C6アルキル;フルオロ(C1〜C6)アルキル;ヒドロキシル;ヒドロキシ(C〜C)アルキル;C1〜C6アルコキシ;フルオロ(C1〜C6)アルコキシ;(C1〜C6アルキル)NH−;(C1〜C6アルキル)N−;シアノ;及びSO−(C1〜C6)アルキルからなる群から独立に選択され;
R4は水素もしくはハロであり;
R5は水素であり;
(i)R2及びR3のそれぞれは水素であり;もしくは(ii)R2は水素であり、R3はフルオロであり;もしくは(iii)R2は水素以外の置換基であり、R3は水素である;
(n)
Xは:
(i)−Y−[C(R−A−[C(R−B−;
(ii)直接結合;もしくは
(iii)C=O、C(R−C(=O)、C(=O)−C(R、SO−NR、NR−SO、C(=O)NR及びNR−C(=O)であり;
R1は、1〜3個のRで任意に置換されたC6〜C10アリールであり;
は、ハロゲン;C1〜C6アルキル;フルオロ(C1〜C6)アルキル;ヒドロキシル;ヒドロキシ(C〜C)アルキル;C1〜C6アルコキシ;フルオロ(C1〜C6)アルコキシ;(C1〜C6アルキル)NH−;(C1〜C6アルキル)N−;シアノ;及びSO−(C1〜C6)アルキルからなる群から独立に選択され;
R4は水素もしくはハロであり;
R5は水素であり;
(i)R2及びR3のそれぞれは水素であり;もしくは(ii)R2は水素であり、R3はフルオロであり;もしくは(iii)R2は水素以外の置換基であり、R3は水素である;
(o)
Xは、−Y−[C(R−A−[C(R−B−であり;
R1は、1〜3個のRで任意に置換されたC6〜C10アリールであり;
は、ハロゲン;C1〜C6アルキル;フルオロ(C1〜C6)アルキル;ヒドロキシル;ヒドロキシ(C〜C)アルキル;C1〜C6アルコキシ;フルオロ(C1〜C6)アルコキシ;(C1〜C6アルキル)NH−;(C1〜C6アルキル)N−;シアノ;及びSO−(C1〜C6)アルキルからなる群から独立に選択され;
R4は水素もしくはハロであり;
R5は水素であり;
(i)R2及びR3のそれぞれは水素であり;もしくは(ii)R2は水素であり、R3はフルオロであり;もしくは(iii)R2は水素以外の置換基であり、R3は水素である;
(p)
Xは、−Y−[C(R−A−[C(R−B−であり;
R1は、1〜3個のRで任意に置換されたC6〜C10アリールであり;
は、ハロゲン;C1〜C6アルキル;フルオロ(C1〜C6)アルキル;ヒドロキシル;ヒドロキシ(C〜C)アルキル;C1〜C6アルコキシ;フルオロ(C1〜C6)アルコキシ;(C1〜C6アルキル)NH−;(C1〜C6アルキル)N−;シアノ;及びSO−(C1〜C6)アルキルからなる群から独立に選択され;
R4は水素もしくはハロであり;
R5は水素であり;
(i)R2及びR3のそれぞれは水素であり;もしくは(ii)R2は水素であり、R3はフルオロであり;もしくは(iii)R2は水素以外の置換基であり、R3は水素である;
(q)
Xは、−Y−[C(R−A−[C(R−B−であり、Yは結合であり;
R1は、1〜3個のRで任意に置換されたC6〜C10アリールであり;
は、ハロゲン;C1〜C6アルキル;フルオロ(C1〜C6)アルキル;ヒドロキシル;ヒドロキシ(C〜C)アルキル;C1〜C6アルコキシ;フルオロ(C1〜C6)アルコキシ;(C1〜C6アルキル)NH−;(C1〜C6アルキル)N−;シアノ;及びSO−(C1〜C6)アルキルからなる群から独立に選択され;
R4は水素もしくはハロであり;
R5は水素であり;
(i)R2及びR3のそれぞれは水素であり;もしくは(ii)R2は水素であり、R3はフルオロであり;もしくは(iii)R2は水素以外の置換基であり、R3は水素である;または
(r)
Xは、−Y−[C(R−A−[C(R−B−であり、Yは結合であり、R及びRの各存在は、H、F、OH、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、NH、OCO−(C1〜C6アルキル)、OCO−(C3〜C6シクロアルキル)、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6フルオロアルコキシ及びシアノから独立に選択され;
R1は、1〜3個のRで任意に置換されたC6〜C10アリールであり;
は、ハロゲン;C1〜C6アルキル;フルオロ(C1〜C6)アルキル;ヒドロキシル;ヒドロキシ(C〜C)アルキル;C1〜C6アルコキシ;フルオロ(C1〜C6)アルコキシ;(C1〜C6アルキル)NH−;(C1〜C6アルキル)N−;シアノ;及びSO−(C1〜C6)アルキルからなる群から独立に選択され;
R4は水素もしくはハロであり;
R5は水素であり;
(i)R2及びR3のそれぞれは水素であり;もしくは(ii)R2は水素であり、R3はフルオロであり;もしくは(iii)R2は水素以外の置換基であり、R3は水素である。
【0130】
実施形態以下の特徴のいずれか1つまたは複数を含むことができる。
【0131】
係る化合物または塩は式(Ia)を有することができる:
【化6】
【0132】
化合物または塩は式(Ib)を有することができる:
【化7】
【0133】
Aは結合でもよい。
【0134】
(存在する場合)R及びRの各存在は、H、F、C1〜C6アルキル及びC3〜C6シクロアルキルから独立に選択されてもよい。
【0135】
(存在する場合)R及びRの各存在は、Hでもよい。
【0136】
aは1でもよい。
【0137】
bは0でもよい。
【0138】
aは1でもよく、bは0でもよい。実施形態では、XはCHでもよい。
【0139】
bは1、2または3である。実施形態では、aも1でもよく;例えば、Xは(CH2〜4でもよい。
【0140】
R1は、1〜3個のRで任意に置換されたC3〜C10シクロアルキルでもよく;例えば、R1は、1〜3個のRで任意に置換されたC3〜C6シクロアルキルでもよく;例えば、R1は、1〜3個のRで任意に置換されたシクロプロピルでもよく;例えば、R1は、無置換のC3〜C6シクロアルキルでもよく;例えば、R1は無置換のシクロプロピルでもよい。
【0141】
様々な実施形態では、化合物は式(Ia)の構造を有し、−X−Rは、CHフェニルであり、フェニルは、ハロ(例えばフルオロ)及びメチルから選択される1つまたは複数の置換基で任意に置換されている。いくつかの実施形態では、−XRはCHピリジルであり、ピリジルは、ハロ(例えばフルオロ)及びメチルから選択される1つまたは複数の置換基で任意に置換されている。いくつかの実施形態では、−XRは、CHシクロアルキル(例えば、シクロプロピル、シクロペンチルまたはシクロヘキシル)である。ある場合には、−XRは、CHシクロプロピルである。シクロアルキルは、C1〜C3アルキル、C1〜C3アルコキシ及びハロの1つまたは複数で任意に置換され得る。いくつかの実施形態では、−XRはCHピラゾリルであり、ピラゾリルは、メチル及びハロ(例えばフルオロ)から選択される1つまたは複数の置換基で任意に置換されている。様々な実施形態では、R及びRはそれぞれ水素である。いくつかの実施形態では、Rは水素であり、Rはハロ(例えばフルオロ)である。様々な実施形態では、Rは水素である。
【0142】
様々な実施形態では、化合物は式(Ib)の構造を有し、−X−Rは、CHフェニルであり、フェニルは、ハロ(例えばフルオロ)及びメチルから選択される1つまたは複数の置換基で任意に置換されている。いくつかの実施形態では、−XRはCHピリジルであり、ピリジルは、ハロ(例えばフルオロ)及びメチルから選択される1つまたは複数の置換基で任意に置換されている。いくつかの実施形態では、−XRは、CHシクロアルキル(例えば、シクロプロピル、シクロペンチルまたはシクロヘキシル)である。ある場合には、−XRは、CHシクロプロピルである。シクロアルキルは、C1〜C3アルキル、C1〜C3アルコキシ及びハロの1つまたは複数で任意に置換され得る。いくつかの実施形態では、−XRはCHピラゾリルであり、ピラゾリルは、メチル及びハロ(例えばフルオロ)から選択される1つまたは複数の置換基で任意に置換されている。様々な実施形態では、R及びRはそれぞれ水素である。いくつかの実施形態では、Rは水素であり、Rはハロ(例えばフルオロ)である。様々な実施形態では、Rは水素である。
【0143】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される化合物または塩は、式(2a)の構造を有することができる:
【化8】
式中:
R1は、5〜6個の環原子を有する、C3〜C6シクロアルキル、フェニルまたはヘテロアリールであり、ここでは、R1は、Cl、F及びC1〜C4アルキルから独立に選択される1〜3の基で任意に置換され;R3はHまたはFである。
【0144】
式(2a)の化合物に関する他の実施形態では、R1は、5〜6個の環原子及び1〜2個のN原子を有する、シクロプロピル、フェニルまたはヘテロアリールであり、ここでは、フェニル及びヘテロアリールは、F及びC1〜C4アルキルから独立に選択される1〜2個の基で任意に置換されている。さらなる実施形態では、R1は、シクロプロピル、フェニル、ピリジルまたはピラゾリルであり、ここでは、フェニル、ピリジル及びピラゾリル基は、F及びC1〜C4アルキルから独立に選択される1〜2個の基で任意に置換されている。
【0145】
様々な実施形態では、本明細書に開示される化合物または塩は式(2b)の構造を有する:
【化9】
式中:
R1は、5〜6個の環原子を有する、C3〜C6シクロアルキル、フェニルまたはヘテロアリールであり、ここでは、R1は、Cl、F及びC1〜C4アルキルから独立に選択される1〜3の基で任意に置換され;R3はHまたはFである。
【0146】
式(2b)の化合物に関する他の実施形態では、R1は、5〜6個の環原子及び1〜2個のN原子を有する、シクロプロピル、フェニルまたはヘテロアリールであり、ここでは、フェニル及びヘテロアリールは、F及びC1〜C4アルキルから独立に選択される1〜2個の基で任意に置換されている。さらなる実施形態では、R1は、シクロプロピル、フェニル、ピリジルまたはピラゾリルであり、ここでは、フェニル、ピリジル及びピラゾリル基は、F及びC1〜C4アルキルから独立に選択される1〜2個の基で任意に置換されている。
【0147】
いくつかの実施形態では、化合物は、以下の表1に詳述されるものの1つまたは複数である。いくつかの実施形態では、化合物は、A1〜A16及びA24から選択されるものである。いくつかの実施形態では、化合物は、A1〜A16から選択されるものである。いくつかの実施形態では、化合物は、A6〜A8、A10、A12及びA24から選択される。いくつかの実施形態では、化合物は、A6〜A8、A10及びA12から選択される。いくつかの実施形態では、化合物は、A1、A4〜A8及びA13〜A15から選択される。いくつかの実施形態では、化合物は、A2、A3、A9及びA10から選択される。
【0148】
【表1】
II.化合物の形態
【0149】
本明細書に記載の式(I)の化合物は、1つまたは複数の不斉中心を含むことができ、そのため、ラセミ化合物、ラセミ体及びラセミ混合物、単一の鏡像異性体、個々のジアステレオマー及びジアステレオマー混合物として生じ得る。式(I)では、立体化学に関わりなく示されるが、本明細書に開示される化合物は、光学異性体、鏡像異性体及びジアステレオマー;並びにラセミの及び分解された、鏡像異性的に純粋な立体異性体;並びに立体異性体の他の混合物並びに医薬的に許容可能なそれらの塩を含む。これらの化合物の使用は、ラセミ混合物またはキラル立体異性体のどちらもカバーすることが意図される。
【0150】
本明細書に記載の式(I)の化合物は、結合(例えば、炭素−炭素結合、炭素−窒素結合、例えばアミド結合)を含むこともでき、ここでは、結合回転は、その特定の結合について制限され、例えば、環または二重結合の存在によって制限が生じる。したがって、すべてのシス/トランス及びE/Z異性体及び回転異性体は、本明細書に明確に含まれる。
【0151】
本明細書に記載の化合物に対する互変異性体が存在し得ることも、当業者なら認識するであろう。本明細書の式において示されないとしても、すべてのそうした互変異性体が意図される。そのような化合物のすべてのそうした異性体型は、本明細書に明確に含まれる。
【0152】
当業者に既知の標準的な手法によって、光学異性体を純粋な形で得ることができ、手法としては、これらに限定されないが、ジアステレオマー塩形成、速度論的分割及び不斉合成が挙げられる。例えば、それぞれが、参照によってそれらの全体が本明細書に組み込まれる、Jacquesら、Enantiomers,Racemates and Resolutions(Wiley Interscience、New York、1981);Wilen,S.H.ら、Tetrahedron 33:2725(1977);Eliel,E.L.Stereochemistry of Carbon Compounds(McGraw−Hill、NY、1962);Wilen,S.H.Tables of Resolving Agents and Optical Resolutions 268頁(E.L.Eliel編、Univ.of Notre Dame Press、Notre Dame、IN1972)を参照されたい。本開示は、本明細書に開示されるすべての化合物(例えば、式(1)、(1a)、(1b)、(2a)及び(2b)の化合物)に関して、当業者に既知であって、これらに限定されないが、カラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー及び高速液体クロマトグラフィーが含まれる標準的な分離法によって純粋な形で得ることができる、すべての可能な位置異性体及びそれらの混合物を意図したことも理解される。
【0153】
本明細書に記載の化合物は、様々な水和物及び溶媒和化合物形態の化合物も含む。
【0154】
本明細書に記載の化合物は、中間体または最終化合物に存在する原子の同位体を含むこともできる。同位体には、同じ原子番号を有するが質量数が異なる原子が含まれる。例えば、水素の同位体には、トリチウム及びジュウテリウムが含まれる。
【0155】
本明細書に記載の化合物は、本明細書に開示される化合物の医薬的に許容可能な塩も含む。本明細書で使用する場合、用語「医薬的に許容可能な塩」は、本明細書に開示される化合物に、医薬的に許容可能な酸または塩基を加えることによって形成される塩を指す。本明細書で使用する場合、フレーズ「医薬的に許容可能な」は、毒物学的見解から医薬的用途で使用するのに許容可能であり、活性成分と不利に相互作用しない物質を指す。単塩及び複塩を含めた医薬的に許容可能な塩としては、これらに限定されないが、有機酸及び無機酸、例えばこれらに限定されないが、酢酸、乳酸、クエン酸、ケイ皮酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸、マンデル酸、リンゴ酸、シュウ酸、プロピオン酸、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硝酸、硫酸、グリコール酸、ピルビン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、サリチル酸、安息香酸及び同様に既知の許容可能な酸に由来するものが挙げられる。適切な塩のリストは、それぞれが、参照によってそれらの全体が本明細書に組み込まれる、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第17版、Mack Publishing Company、Easton、Pa.、1985、1418頁;Journal of Pharmaceutical Science、66、2(1977);並びに「Pharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use A Handbook;Wermuth,C.G.及びStahl,P.H.(編)Verlag Helvetica Chimica Acta、Zurich、2002[ISBN3−906390−26−8]に見出される。
【0156】
いくつかの実施形態では、化合物はプロドラッグである。本明細書で使用する場合、「プロドラッグ」は、患者に投与したときに、本明細書に記載の化合物を放出する部分を指す。プロドラッグは、慣例的な操作において、または生体内において修飾が切断されて親化合物に成るように、化合物に存在する官能基を修飾することによって調製することができる。プロドラッグの例としては、化合物のヒドロキシル、アミノ、スルフヒドリルまたはカルボキシル基に付加された1つまたは複数の分子部分を含み、且つ患者に投与したときに、生体内で切断されて、遊離のヒドロキシル、アミノ、スルフヒドリルまたはカルボキシル基をそれぞれ形成する、本明細書に記載のような化合物が挙げられる。プロドラッグの例としては、これらに限定されないが、本明細書に記載の化合物のアルコール及びアミン官能基の酢酸、ギ酸及び安息香酸誘導体が挙げられる。プロドラッグの調製及び使用は、T.Higuchi及びV.Stella、「Pro−drugs as Novel Delivery Systems」、第14巻、A.C.S.Symposium Series、並びにBioreversible Carriers in Drug Design、Edward B.Roche編、American Pharmaceutical Association and Pergamon Press、1987で論じられており、これらの両方は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
III.式(I)の化合物の合成
【0157】
本明細書に記載の化合物は、有機合成分野の当業者に既知の様々な方法で調製することができる。本明細書に記載の化合物は、有機合成化学の分野で既知の合成方法または当業者なら分かるその変法と共に、本明細書の以下に記載の方法を使用して合成することができる。
【0158】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、以下の表2に示す出発材料及び適切に置換されたインダゾールを使用して調製することができる。
【0159】
【表2】
【0160】
本明細書に記載の化合物は、好都合には、実施例のセクションで概要を述べる手法に従って、市販の出発材料、文献で既知の化合物、または容易に調製される中間体から、当業者に既知の従来の合成方法及び手法を用いて、調製することができる。有機分子の調製及び官能基変換及び操作のための従来の合成方法及び手法は、関連する科学文献またはこの分野の標準的な教科書から容易に得ることができる。典型的なまたは好ましい工程条件(すなわち、反応温度、時間、反応物のモル比、溶媒、圧力など)が与えられる場合、別段の記載がない限り、他の工程条件も使用することができることが理解されよう。最適反応条件は、使用する特定の反応物または溶媒によって変化し得るが、そうした条件は、慣例的な最適化法によって当業者が決定することができる。本明細書に記載の化合物の形成を最適化する目的で、提示される合成ステップの性質及び順序を変更することができることを有機合成の当業者なら認識するであろう。
【0161】
本明細書に記載の化合物を合成する際に有用な合成化学変換は当技術分野で既知であり、例えば、R.C.Larock、Comprehensive Organic Transformations、第2版、Wiley−VCH Publishers(1999);P.G.M.Wuts及びT.W.Greene、Protective Groups in Organic Synthesis、第4版、John Wiley and Sons(2007);L.Fieser及びM.Fieser、Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis、John Wiley and Sons(1994);並びにL.Paquette編、Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis、John Wiley and Sons(1995)、並びにそれらのその後の版に記載されているようなものが挙げられる。化合物の調製は、様々な化学基の保護及び脱保護を含むことができる。保護及び脱保護の必要性並びに適切な保護基の選択は、当業者が容易に判断することができる。保護基の化学は、例えば、Wuts PGM及びGreene TW、2006、Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis、第4版、John Wiley&Sons,Inc.、Hoboken、NJ、USAに見出すことができ、これは、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。本明細書に記載の、保護基への調節並びに形成及び切断方法は、様々な置換基を考慮して必要に応じて調整することができる。
【0162】
本明細書に記載の工程の反応は、有機合成の当業者が容易に選択することができる、適切な溶媒中で行うことができる。適切な溶媒は、反応が行われる温度、すなわち、溶媒の凍結温度から溶媒の沸騰温度の範囲にわたる温度において、出発材料(反応物)、中間体または生成物と実質的に非反応性でもよい。1種の溶媒または1種より多い溶媒の混合物中で、所与の反応を行うことができる。特定の反応ステップに応じて、特定の反応ステップ用の適切な溶媒を選択することができる。
【0163】
当技術分野で既知の任意の適切な方法に従って、本明細書に記載の工程をモニターすることができる。例えば、分光学的な手段、例えば、核磁気共鳴分光法(例えばH及び/もしくは13C NMR)、赤外分光法、分光光度法(例えば、UV可視)もしくは質量分析法によって、またはクロマトグラフィー、例えば高速液体クロマトグラフィー(HPLC)もしくは薄層クロマトグラフィーによって、生成物の形成をモニターすることができる。
【0164】
カラムクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)または再結晶化などの方法によって、本明細書に記載の化合物を反応混合物から分離することができ、さらに、精製することができる。
【0165】
実施例のセクションに記載されているものに加えて、式(I)の化合物を生成するさらなる方法があることを、当業者なら認識するであろう。
IV.使用
【0166】
本明細書に記載のヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)は、アセチル化される標的タンパク質からのアセチル基の除去(脱アセチル化)を触媒するポリペプチドに特有の特徴を有する任意のポリペプチドでもよい。HDACに特有の特徴は当技術分野で既知である(例えば、Finninら、1999、Nature、401:188を参照されたい)。したがって、HDACは、ヌクレオソームを形成するヒストン、例えば、H3、H4、H2A及びH2BのN末端に位置する保存されたリジン残基のε−アミノ基を脱アセチル化することによって遺伝子の転写を抑制するポリペプチドでもよい。HDACは、他のタンパク質、例えばp53、E2F、α−チューブリン及びMyoDも脱アセチル化する(例えばAnnemiekeら、2003、Biochem.J.、370:737を参照されたい)。HDACは核に局在することもでき、あるHDACは、核と細胞質の両方に見出すことができる。
【0167】
本明細書に記載の式(I)の化合物は、いかなるHDACとも相互作用することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の式(I)の化合物は、1種または複数の他のHDAC(例えば、クラスIIa、IIbまたはIVの1種または複数のHDAC)と比較して、少なくとも約2倍(例えば、少なくとも約5倍、10倍、15倍または20倍)大きい、1種または複数のクラスIのHDAC(例えばHDAC1、HDAC2またはHDAC3)を阻害する活性を有する。
【0168】
様々な実施形態では、式(I)の化合物は、HDAC2及びHDAC3と比較して、HDAC1に対して選択的である。様々な実施形態では、式(I)の化合物は、HDAC1及びHDAC3と比較して、HDAC2に対して選択的である。様々な実施形態では、式(I)の化合物は、HDAC1及びHDAC2と比較して、HDAC3に対して選択的である。様々な実施形態では、式(I)の化合物は、HDAC3と比較して、HDAC1及びHDAC2に対して選択的である。様々な実施形態では、式(I)の化合物は、HDAC2と比較して、HDAC1及びHDAC3に対して選択的である。様々な実施形態では、式(I)の化合物は、HDAC1と比較して、HDAC2及びHDAC3に対して選択的である。
【0169】
一態様は、それを必要とする患者においてがんを治療する方法であって、治療有効量の、本明細書に記載のHDAC阻害剤または医薬的に許容可能なその塩を投与することを含む方法を特徴とする。いくつかの実施形態では、がんは、固形腫瘍、新生物、癌腫、肉腫、白血病またはリンパ腫である。いくつかの実施形態では、白血病には、急性白血病及び慢性白血病、例えば、急性リンパ性白血病(ALL)、B細胞急性リンパ性白血病(B−ALL)、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)及びヘアリーセル白血病;リンパ腫、例えば、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、非皮膚末梢T細胞リンパ腫、ヒトT細胞リンホトリピックウイルス(fITLV)と関係があるリンパ腫、例えば、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)、ホジキン病及び非ホジキンリンパ腫、大細胞リンパ腫、びまん性大細胞B細胞リンパ腫(DLBCL);バーキットリンパ腫;原発性中枢神経系(CNS)リンパ腫;多発性骨髄腫;小児期の固形腫瘍、例えば、脳腫瘍、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、ウィルムス腫瘍、骨腫瘍及び軟部組織肉腫、成人の一般的な固形腫瘍、頭頸部がん(例えば、口腔、喉頭及び食道)、生殖器−泌尿器のがん(例えば、前立腺、膀胱、腎臓、子宮、卵巣、精巣、直腸及び結腸)、肺がん、乳がんが含まれる。
【0170】
いくつかの実施形態では、がんは、(a)心臓:肉腫(血管肉腫、線維肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫)、粘液腫、横紋筋腫、線維腫、脂肪腫及び奇形腫;(b)肺:気管支原性癌(扁平上皮細胞、未分化小細胞、未分化大細胞、腺癌)、肺胞(細気管支)癌、気管支腺腫、肉腫、リンパ腫、軟骨性過誤腫、中皮腫;(c)胃腸:食道(扁平上皮癌、腺癌、平滑筋肉腫、リンパ腫)、胃(癌腫、リンパ腫、平滑筋肉腫)、膵臓(管腺癌、インスリノーマ、グルカゴノーマ、ガストリノーマ、カルチノイド腫瘍、ビポーマ)、小腸(腺癌、リンパ腫、カルチノイド腫瘍、カポジ肉腫、平滑筋腫、血管腫、脂肪腫、神経線維腫、線維腫)、大腸(腺癌、管状腺腫、絨毛腺腫、過誤腫、平滑筋腫);(d)尿生殖路:腎臓(腺癌、ウィルムス腫瘍(腎芽細胞腫)、リンパ腫、白血病)、膀胱及び尿道(扁平上皮癌、移行上皮癌、腺癌)、前立腺(腺癌、肉腫)、精巣(精上皮腫、奇形腫、胎生期癌、奇形癌、絨毛癌、肉腫、間質細胞癌、線維腫、線維腺腫、類腺腫瘍、脂肪腫);(e)肝臓:ヘパトーム(肝細胞癌)、胆管細胞癌、胆管癌、肝芽腫、血管肉腫、肝細胞腺腫、血管腫;(f)骨:骨原性肉腫、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性リンパ腫(細網肉腫)、多発性骨髄腫、悪性巨細胞腫瘍脊索腫、骨軟骨腫(骨軟骨性外骨症)、良性軟骨腫、軟骨芽細胞、軟骨粘液線維腫、類骨骨腫及び巨細胞腫;(g)神経系:頭蓋(骨腫、血管腫、肉芽腫、黄色腫、変形性骨炎)、髄膜(髄膜腫、髄膜肉腫、神経膠腫症)、脳(星状細胞腫、神経膠腫、上衣腫、胚細胞腫(松果体腫)、多形神経膠芽腫、乏突起神経膠腫、神経鞘腫、網膜芽細胞腫、先天性腫瘍)、脊髄(神経線維腫、髄膜腫、神経膠腫、肉腫);(h)婦人科:子宮(子宮内膜癌)、頸(子宮頚管癌、前腫瘍性子宮頸部形成異常)、卵巣(卵巣癌、漿液性嚢胞腺癌、粘液性嚢胞腺癌)、未分類の癌腫(顆粒膜胞膜細胞腫、セルトリ−ライディッヒ細胞腫、未分化胚細胞腫、悪性奇形腫)、外陰部(扁平上皮癌、上皮内癌、腺癌、線維肉腫、黒色腫)、腟(明細胞癌、扁平上皮癌、ブドウ状肉腫、胎児性横紋筋肉腫、卵管(癌腫);(i)血液性:血液(骨髄性白血病[急性及び慢性]、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、骨髄増殖性疾患、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群)、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(悪性リンパ腫);(j)皮膚:悪性黒色腫、基底細胞癌、扁平上皮癌、カポジ肉腫、異形成母斑、脂肪腫、アンジオーマ、皮膚線維腫、ケロイド、乾癬;並びに(k)副腎:神経芽腫状態、である。
【0171】
別の態様では、それを必要とする患者において炎症性障害を治療する方法であって、治療有効量の、本明細書に記載の式(I)の化合物または医薬的に許容可能なその塩を投与することを含む方法が提供される。いくつかの実施形態では、炎症性障害は、急性及び慢性の炎症性疾患、自己免疫疾患、アレルギー性疾患、酸化ストレスと関係がある疾患及び細胞の過剰増殖を特徴とする疾患である。非限定例は、関節リウマチ(RA)及び乾癬性関節炎を含めた関節の炎症状態;炎症性腸疾患、例えばクローン病及び潰瘍性大腸炎;脊椎関節症;強皮症;T細胞媒介性乾癬及び炎症性皮膚疾患、例えば皮膚炎、湿疹、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、蕁麻疹を含めた乾癬;脈管炎(例えば、壊死性、皮膚性及び過敏性の脈管炎);好酸球性筋炎、好酸球性筋膜炎;皮膚もしくは器官の白血球浸潤を伴うがん、脳虚血を含めた虚血傷害(例えば、それぞれが神経変性につながる可能性がある、外傷、てんかん、出血もしくは脳卒中の結果としての脳傷害);HIV、心不全、慢性、急性もしくは悪性の肝疾患、自己免疫性甲状腺炎;全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群(Sjorgren’s syndrome)、肺疾患(例えばARDS);急性膵炎;筋萎縮性側索硬化症(ALS);アルツハイマー病;悪液質/食欲不振;喘息;アテローム性動脈硬化症;慢性疲労症候群、発熱;糖尿病(例えば、インスリン性糖尿病もしくは若年型糖尿病);糸球体腎炎;(例えば、移植における)移植片対宿主拒絶;出血性ショック;痛覚過敏:炎症性腸疾患;多発性硬化症;ミオパシー(例えば、特に敗血症における筋タンパク質代謝);骨関節症;骨粗鬆症;パーキンソン病;疼痛;早期分娩;乾癬;再灌流障害;サイトカイン誘発性毒性(例えば、敗血症性ショック、内毒素性ショック);放射線療法の副作用、一時性の顎関節疾患、腫瘍転移;または挫傷、捻挫、軟骨損傷、熱傷などの外傷、整形外科手術、感染症もしくは他の疾患過程の炎症状態によって生じる炎症状態である。
【0172】
アレルギー性の疾患及び状態としては、これらに限定されないが、呼吸器アレルギー性疾患、例えば、喘息、アレルギー性鼻炎、過敏性肺疾患、過敏性肺臓炎、好酸球性肺炎(例えば、レフラー症候群、慢性好酸球性肺炎、遅延型過敏症、間質性肺疾患(ILD)(例えば、特発性肺線維症、または関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、強直性脊椎炎、全身性硬化症、シェーグレン症候群、多発性筋炎もしくは皮膚筋炎と関係があるILD);全身性アナフィラキシーまたは過敏性応答、(例えば、ペニシリン、セファロスポリンに対する)薬物アレルギー、虫刺傷アレルギーなどが挙げられる。
【0173】
別の態様では、それを必要とする患者において記憶関連障害を予防または治療する方法であって、治療有効量の、本明細書に記載の式(I)の化合物または医薬的に許容可能なその塩を投与することを含む方法が提供される。式(I)の化合物は、記憶喪失、認知症及びせん妄などの直接的認知障害;不安障害、例えば、恐怖症、パニック障害、(例えば、災害、大惨事または暴力の被害者で見られるような)心理社会的ストレス、強迫性障害、全般性不安障害及び外傷後ストレス障害;気分障害、例えば、うつ病及び双極性障害;並びに精神病性障害、例えば、統合失調症及び妄想性障害と関係がある記憶障害の患者を治療するのに使用することができる。例えば、これらに限定されないが、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄小脳失調症及び加齢などの神経変性疾患の顕著な特徴である記憶障害も、式(I)の化合物を使用することにより治療することができる。さらに、本明細書で開示される化合物は、薬物探索行動の抑止を通じて薬物依存症を治療するのに使用することができる。
【0174】
別の態様では、本開示は、それを必要とする患者においてヘモグロビン異常を予防または治療する方法であって、本明細書に記載の式(I)の化合物または医薬的に許容可能なその塩を投与することを含む方法を提供する。式(I)の化合物は、鎌状赤血球貧血またはβ−サラセミアの患者を治療するのに使用することができる。様々な場合で、化合物は、選択的なHDAC1及び/またはHDAC2阻害剤であり、ヘモグロビン異常(例えば、鎌状赤血球貧血またはβ−サラセミア)を予防または治療するのに使用される。
【0175】
さらなる態様では、本出願は、本明細書に記載の式(I)の化合物を神経学的状態の患者に投与することを含む、神経学的状態(例えば、フリードライヒ運動失調症(FRDA)、筋緊張性ジストロフィー、脊髄性筋萎縮症、脆弱X症候群、ハンチントン病、脊髄小脳失調症、ケネディ病、筋萎縮性側索硬化症、ニーマン・ピック病、ピット・ホプキンス病、球脊髄性筋萎縮症、アルツハイマー病または統合失調症、双極性障害及び関連疾患)を治療する方法を特徴とする。
【0176】
別の態様では、本出願は、神経学的状態(例えば、フリードライヒ失調症、筋緊張性ジストロフィー、脊髄性筋萎縮症、脆弱X症候群、ハンチントン病、脊髄小脳失調症、ケネディ病、筋萎縮性側索硬化症、ニーマン・ピック病、ピット・ホプキンス病、球脊髄性筋萎縮症もしくはアルツハイマー病);記憶に影響を及ぼす状態もしくは疾患、がん;または炎症性障害もしくは熱帯熱マラリア原虫感染症(例えばマラリア)を治療または予防するための医薬の調製における、本明細書に記載の式(I)の化合物の使用を特徴とする。
【0177】
さらなる態様では、本出願は、それを必要とする患者において、神経障害(例えば、フリードライヒ失調症、筋緊張性ジストロフィー、脊髄性筋萎縮症、脆弱X症候群、ハンチントン病、脊髄小脳失調症、ケネディ病、筋萎縮性側索硬化症、球脊髄性筋萎縮症もしくはアルツハイマー病)、記憶に影響を及ぼす状態もしくは疾患、がん、炎症性障害または熱帯熱マラリア原虫感染症(例えばマラリア)から選択される障害を治療または予防するためのキットであって、(i)本明細書に記載の式(I)の化合物または医薬的に許容可能なその塩;及び(ii)前記化合物を前記患者に投与する手引きを含む指示書を備えるキットを提供する。
【0178】
上記の方法のいくつかの実施形態では、方法は、神経学的状態において発現が低下している1種または複数の遺伝子(例えば、フラタキシン、ハンチンチン、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体γ、コアクチベーター1、α(PGC1A)、アタキシン、脆弱X精神遅滞(FMR1)、筋強直性ジストロフィープロテインキナーゼ(DMPK)またはアンドロゲン受容体)の発現を増大させる候補化合物の活性をアッセイすることをさらに含む。いくつかの実施形態では、神経学的状態において発現が低下している1種または複数の遺伝子の発現を増大させる候補化合物の活性は、動物、例えば神経学的状態の動物モデルで測定される。
【0179】
上記の方法のいくつかの実施形態では、複数の試験化合物(例えば、少なくとも10、20、50、100、200、500またはl000試験化合物)について、方法を繰り返す。
【0180】
別の態様では、本出願は、上記の方法のいずれかを実施すること、候補化合物を医薬組成物に製剤化すること、及び医薬組成物を神経学的状態の患者に投与することを含む、神経学的状態(例えば、フリードライヒ失調症、筋緊張性ジストロフィー、脊髄性筋萎縮症、脆弱X症候群、ハンチントン病、脊髄小脳失調症、ケネディ病、筋萎縮性側索硬化症、球脊髄性筋萎縮症またはアルツハイマー病)を治療する方法を特徴とする。
【0181】
HDAC阻害剤は、抗マラリア活性を有することが示されている(Andrewsら、2000、Int.J.Parasitol.、30:761〜768;Andrewsら、Antimicrob.Agents Chemother.、52:1454〜61)。ある実施形態は、それを必要とする患者において、熱帯熱マラリア原虫感染症(例えばマラリア)を治療する方法を含む。
【0182】
HDAC阻害剤は、ウイルス感染症などの感染症を治療するのにも有用である。例えばHDAC阻害剤及び抗レトロウイルス薬によるHIV感染細胞の処理は、処理した細胞からウイルスを根絶することができる(Blazkova jら、J Infect Dis.2012 Sep 1;206(5):765〜9;Archin NMら、Nature 2012 Jul 25、487(7408):482〜5)。ある実施形態は、それらを必要とする対象において、HIV感染症を治療する方法を含む。
V.医薬組成物
【0183】
HDAC阻害剤は、そのまま投与してもよいし、医薬組成物として製剤化してもよい。医薬組成物は、適切な量のHDAC阻害剤を、適切な担体及び任意に他の有用な成分と組み合わせて含む。
【0184】
本明細書に記載の式(I)の化合物の許容可能な塩は、これらに限定されないが、以下の酸から調製されたものが挙げられる:1から4個のヒドロキシルによって任意に置換された、1から20個の炭素原子のアルキル、アルケニル、アリール、アルキルアリール及びアルケニルアリールモノ、ジ及びトリカルボン酸;1から4個のヒドロキシルによって任意に置換された、1から20個の炭素原子のアルキル、アルケニル、アリール、アルキルアリール及びアルケニルアリールモノ、ジ及びトリスルホン酸;二塩基酸及び鉱酸。例としては、塩酸;臭化水素酸;硫酸;硝酸;リン酸;乳酸((+)−L−乳酸、(+/−)−DL−乳酸を含める);フマル酸;グルタル酸;マレイン酸;酢酸;サリチル酸;p−トルエンスルホン酸;酒石酸((+)−L−酒石酸を含める);クエン酸;メタンスルホン酸;ギ酸;マロン酸;コハク酸;ナフタレン−2−スルホン酸;及びベンゼンスルホン酸が挙げられる。さらに、医薬的に許容可能な塩は、アミン塩、アンモニウム塩またはアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類塩、例えば、カルボン酸基のナトリウム塩、カリウム塩またはカルシウム塩として調製することができる。これらは、アルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩から、またはアミン化合物から形成される。
【0185】
経口投与に適する、本明細書に記載の式(I)の化合物の医薬組成物は、(1)それぞれが所定のHDAC阻害剤を含む、カプセル剤、サシェ剤、錠剤またはロゼンジ剤などの個別の単位;(2)粉末剤または顆粒剤;(3)巨丸剤、舐剤またはペースト剤;(4)水性液体または非水性液体の液剤または懸濁剤;または(5)水中油型液体乳剤または油中水型液体乳剤の形でもよい。例えば頬側または舌下などの口内の局所投与に適した組成物としては、ロゼンジ剤が挙げられる。非経口投与に適した組成物としては、水性及び非水性の無菌の懸濁剤または注射液剤が挙げられる。直腸内投与に適した組成物は、坐剤として提供することができる。
【0186】
本明細書に記載の式(I)の化合物の医薬組成物は、固体または液状の担体を使用して製剤化することができる。固体または液状の担体は、製剤の他の成分と適合性があり、かつ受容者に無害でなければならい。医薬組成物が錠剤形態である場合は、HDAC阻害剤は、必要な圧縮特性を有する担体と適切な比率で混合され、所望の形及び大きさに圧縮される。組成物が粉末状である場合は、担体は、微粉砕活性成分と混合された微粉砕固体である。粉末剤及び錠剤は、99%までの活性成分を含むことができる。適切な固体担体としては、例えば、リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、デキストリン、デンプン、ゼラチン、セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリジン、低融解ワックス及びイオン交換樹脂が挙げられる。固体担体は、着香剤、潤滑剤、可溶化剤、懸濁化剤、賦形剤、滑剤、圧縮補助剤、結合剤または錠剤崩解剤として働くことができる1種または複数の物質を含むことができる。適切な担体は、カプセル化材でもよい。
【0187】
組成物が、液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤または加圧組成物である場合は、液状担体を使用することができる。この場合、HDAC阻害剤は、医薬的に許容可能な液状担体中に溶解または懸濁される。経口的及び非経口的投与のための液状担体の適切な例としては、(1)水;(2)アルコール、例えば、一価アルコール及び多価アルコール、例えばグリコール及びその誘導体;並びに(3)油、例えば、ヤシ油及びラッカセイ油が挙げられる。非経口投与については、担体は、オレイン酸エチル及びイソプロピルミリステートなどの油性エステルでもよい。加圧組成物用の液状担体としては、ハロゲン化炭化水素または他の医薬的に許容可能な噴射剤がげられる。液状担体は、他の適切な医薬品添加剤、例えば可溶化剤;乳化剤;バッファー;防腐剤;甘味料;着香剤;懸濁化剤;増ちょう剤;着色剤;粘性調節剤;安定化剤;浸透圧調節剤;カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース誘導体;抗酸化剤;及び静菌剤を含むことができる。他の担体としては、ロゼンジ剤を製剤化するのに使用されるもの、例えばショ糖、アラビアゴム、トラガント、ゼラチン及びグリセリン、並びに坐剤を製剤化する際に使用するもの、例えばココアバターまたはポリエチレングリコールが挙げられる。
【0188】
組成物が、注入または注射によって静脈内または腹腔内に投与される場合は、HDAC阻害剤の液剤を、水中に、任意に無毒性の界面活性剤と混合して調製することができる。分散剤も、グリセロール、液状ポリエチレングリコール、トリアセチン及びそれらの混合液中、並びに油中に調製することができる。通常の保管及び使用条件下では、これらの調製物は、微生物の増殖を予防するために防腐剤を含む。注射または注入に適した組成物は、無菌の注射可能もしくは注入可能な液剤または分散剤の即時調製に適合され、任意にリポソームにカプセル化された、活性成分を含む無菌の水溶液もしくは分散液または無菌の粉末を含むことができる。すべての場合において、最終的な剤形は、無菌であり、流動性であり、製造及び保管の条件下で安定的である必要がある。液状担体またはビヒクルは、上記の溶媒または液状分散媒でもよい。例えば、リポソームを形成することによって、分散剤の場合には必要とされる粒径を維持することによって、または界面活性剤を使用することによって、適切な流動性を維持することができる。微生物の活動の防止は、様々な抗菌性及び抗真菌性の薬剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによってもたらされ得る。多くの場合、等張剤、例えば、糖、バッファーまたは塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射可能な組成物の持続的吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを組成物中に使用することによって、もたらされ得る。無菌の注射可能な液剤は、必要に応じて上に列挙した他の成分のいくつかと共に、必要量のHDAC阻害剤を適切な溶媒中に組み入れ、続いて濾過滅菌することによって、調製される。無菌の注射可能な液剤を調製するための無菌の粉末剤の場合には、好ましい調製方法は、真空乾燥法及び凍結乾燥法であり、これらの方法により、予め無菌濾過された液剤中に存在するHDAC阻害剤と任意の付加的な所望の成分との粉末剤が得られる。
【0189】
医薬組成物は、単位用量または複数用量の形態でもよいし、HDAC阻害剤の徐放または制御放出を可能にする形態でもよい。各単位用量は、錠剤、カプセル剤、またはパッケージ化された組成物、例えば、分包された粉末剤、バイアル、アンプル、充填済みシリンジもしくは液体を含むサシェなどの形でもよい。単位用量形態は、適切な数の、パッケージ形態の任意のそうした組成物でもよい。複数用量の形態での医薬組成物は、容器中に、例えば密閉されたアンプル及びバイアル中にパッケージ化することができる。この場合、使用直前に無菌の液状担体の添加のみを必要とする、フリーズドライ(凍結乾燥)状態でHDAC阻害剤を保管することができる。さらに、即時用の注射液剤及び懸濁剤は、上記の種類の、無菌の粉末剤、顆粒剤及び錠剤から調製することができる。
VI.実施例
【0190】
式(I)の化合物の合成/一般的な合成スキーム
【化10】
【0191】
R1、X、R2、R3、R4、R5が本明細書の任意の場所に記載される通りに定義される、式(Ia)及び(Ib)の本明細書に記載の化合物は、当業者に周知の方法、例えば、これらに限定されないが、ヘックカップリング、スズキカップリング、アルキル化、アシル化(例えば、Joule JA及びMills K、Heterocyclic Chemistry、第5版、John Wiley&Sons、Inc.、Hoboken、NJ、USAを参照されたい)を使用して、任意に置換されたインダゾールカルボキシレートエステル(R、例えば、C〜Cアルキル、フェニル、ベンジル、アリル)とR−X−含有部分とを反応させることにより、得ることができる。置換または無置換のインダゾールカルボキシレートは、当業者に周知である方法、例えば、Wiley R.H.、Behr L.C.、Fusco R.、Jarboe C.H.、Chemistry of Heterocyclic Compounds:Pyrazoles,Pyrazolines,Pyrazolidines,Indazoles and Condensed Rings、第22巻、John Wiley&Sons,Inc.、Hoboken、NJ、USAに概説されている方法によって調製することができる。あるいは、インダゾール環が構築される場合、R−X置換を導入することができる。(Rに適している方法、例えば、これらに限定されないが、鹸化、水素添加、酸加水分解を使用して)エステルCOORを脱保護してから、置換または無置換のN−(o−アミノフェニル)アミドを、アクリル酸と、保護されたまたは保護されていない、置換または無置換のo−フェニレンジアミンとのアミド形成反応により調製し、ここでは、Pは、Wuts PGM及びGreene TW、2006、Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis、第4版、John Wiley&Sons,Inc.、Hoboken、NJ、USA.で定義されるような保護基である。あるいは、インダゾールエステルを脱保護して、保護されたまたは保護されていない、置換されたまたは無置換のo−フェニレンジアミンと反応させることができるカルボン酸を作出することができる。次いで、上記のような当業者に周知の方法を使用して、この中間体アミドをR−X部分を渡す試薬と反応させることができる。本明細書に開示される化合物は、当業者に周知な方法であり、例えば、Wuts PGM及びGreene TW、2006、Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis、第4版、John Wiley&Sons,Inc.、Hoboken、NJ、USAに記載されている方法を使用して、必要に応じて脱保護してから、得ることができる。
実施例1:N−(2−アミノフェニル)−1−((5−フルオロピリジン−3−イル)メチル)−1H−インダゾール−5−カルボキサミド(カルボアミド)、A4の合成
【化11】
【0192】
メチルインダゾール−5−カルボキシレート:亜硝酸イソアミル(26.8g、22.8mmol)を、メチル4−アミノ−3−メチル安息香酸(3.4g、20.8mmol)の酢酸(AcOH、(20mL)混合物に加えた。この反応混合物を室温で1時間攪拌し、次いで80℃で5時間攪拌した。これを濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc10:1から2:1)によって精製して、純粋なメチル1H−インダゾール−5−カルボキシレートを得た。
【0193】
メチル1−((5−フルオロピリジン−3−イル)メチル)−1H−インダゾール−5−カルボキシレート:メチル1H−インダゾール−5−カルボキシレート(694mg、3.94mmol)のDMF(20mL)溶液に、3−(クロロメチル)−5−フルオロピリジン(3.94mmol、1.2eq、SOClを用いてアルコールから調製した)及びCsCO(3.85g)を室温で加えた。65℃で3時間攪拌した後、この反応混合物を塩化アンモニウム水溶液でクエンチした。この混合物(小規模反応と組み合わせられる)をHOで希釈し、ジクロロメタンで抽出し、飽和NaHCO及びブラインで洗浄した。次いで、これをNaSOで乾燥させ、濾過し、濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc7:1から0:1)によって精製して、位置異性体生成物のメチル1−((5−フルオロピリジン−3−イル)メチル)−1H−インダゾール−5−カルボキシレート(422mg)及びメチル2−((5−フルオロピリジン−3−イル)メチル)−2H−インダゾール−5−カルボキシレート(230mg)を得て、前者は本合成プロトコールの先に進ませ、後者を使用して、位置異性体のN−(2−アミノフェニル)−2−((5−フルオロピリジン−3−イル)メチル)−2H−インダゾール−5−カルボキサミド(カルボアミド)A14を形成した。
【0194】
1−((5−フルオロピリジン−3−イル)メチル)−1H−インダゾール−5−カルボン酸:NaOH(3N、2mL)水溶液を、メチル1−((5−フルオロピリジン−3−イル)メチル)−1H−インダゾール−5−カルボキシレート(422mg、0.94mmol)のMeOH/THF(1:1、10mL)溶液に室温で加え、この混合物を一晩攪拌した。減圧下で有機溶媒を除去した後、得られた水性相をpH=2〜3に酸性化した。固体を濾過によって採集し、乾燥させて、メチル1−((5−フルオロピリジン−3−イル)メチル)−1H−インダゾール−5−カルボキシレート(328mg)を得た。
【0195】
tert−ブチル(2−(1−((5−フルオロピリジン−3−イル)メチル)−1H−インダゾール−5−カルボキシアミド)フェニル)カルバミン酸:HATU(185mg、1.5eq)、DIPEA(0.226mL)及びtert−ブチル(2−アミノフェニル)カルバミン酸(81mg、1.2eq)を、上記のように調製した酸(100mg、0.325mmol)のDMF(3mL)溶液に0℃で加えた。この混合物を温め、16時間攪拌した。これを塩化アンモニウム水溶液でクエンチし、水で希釈し、ジクロロメタンで抽出し、飽和NaHCO及びブラインで洗浄した。次いで、これをNaSOで乾燥させ、濾過し、濃縮した。残留物を分取HPLCによって精製して、生成物のtert−ブチル(2−(1−((5−フルオロピリジン−3−イル)メチル)−1H−インダゾール−5−カルボキシアミド)フェニル)カルバミン酸(130mg)を得た。
【0196】
N−(2−アミノフェニル)−1−((5−フルオロピリジン−3−イル)メチル)−1H−インダゾール−5−カルボキサミド(カルボアミド)、A4:HCl(ジオキサン中に4M、1mL)を入れたジオキサン(3mL)及びMeOH(1mL)で、0℃で2時間、続いて室温で一晩インキュベートすることによって、Boc保護物質(130mg)を脱保護した。次いで、この混合物を濃縮し、HCl塩が沈殿した。これを濾過し、MeOH/EtOAcで洗浄して、A4をHCl塩として得た(106mg)。HPLC/UV:純度>97%。LC/MS:m/z 362 (M+H) H NMR (CDOD) δ:8.72 (br. s, 1H), 8.63(m, 1H), 8.58 (s, 1H), 8.34 (s, 1H), 8.17 (dd, J = 9, 1.5 Hz, 1H), 7.90 (m, 1H), 7.85 (d. J = 9 Hz, 1H), 7.6−7.4 (m, 4H), 5.92 (s, 2H)。
HDAC酵素の阻害
【0197】
試験化合物がHDACの酵素活性を阻害する能力を判定するために、HDAC活性阻害アッセイを以下のように実施した。HDAC阻害剤の段階希釈を、96ウェルアッセイプレート(Fisher scientific、#07−200−309)において、HDACアッセイバッファー(25mM Tris/HCl、pH8.0、137mM NaCl、2.7mM KCl、1mM MgCl、pH8)で調製し、125μg/mlのBSA及びそれぞれ1.25、1.32、及び0.167μg/mLの濃度の精製されたHDAC1(BPS Bioscience、San Diego、CA、#50051)、HDAC2(BPS Bioscience、#50053)またはHDAC3/NcoR2(BPS Bioscience、#50003)の存在下で、室温で2時間プレインキュベートした。プレインキュベーションに続いて、Fluor−de−Lys(商標)基質(Enzo Life Sciences、Plymouth Meeting、PA、BML−KI104−0050)を、10μMの終濃度に成るように加え、プレートをさらに30分間室温でインキュベートした。トリコスタチンA(Sigma−Aldrich、St Louis、MO、#T8552、終濃度:100nM)を加えることにより酵素反応を止め、トリプシン(MP Biomedicals、Solon、OH、#02101179)を、100μg/mLの終濃度に達するように加えた。15分間室温でインキュベートした後、365nmでの励起及び460nmでの放出でSpectramax M2蛍光光度計(Molecular Devices、Sunnyvale、CA)を使用して、蛍光を記録した。Windows用のGraphPad Prism(登録商標)5(GraphPad Software、La Jolla、CA)のシグモイド用量応答(可変スロープ)式を使用することによって、IC50値を計算した。HDAC活性阻害アッセイにおける選択した化合物の結果を表5に示す(IC50範囲:IA>20μM、A<1μM、1<B<5μM、5<C<10μM、10<D<20μM、ND:未決定)。
酸安定性の判定
【0198】
10mM DMSOのストック溶液を0.01MのHClの脱イオン水溶液中に希釈することにより、試験化合物の100μM溶液を調製した。混合後直ぐに、一定分量(100μL)を試料採取し、HPLC/UVによって分析した。化合物ピーク下面積を決定し、ゼロ時基準点として使用した。残りの酸試料を50℃でインキュベートし、2、4及び24時間のインキュベーション後に、試料を採取した。数回、24時間ではなく30時間で試料を採取した。同じHPLC/UV法によってこれらを分析し、試験化合物に対応するピークの面積を測定した。次いで、所与の時点での残存パーセントを、インキュベーション後のピーク下面積対ゼロ時のピーク下面積の比の100倍として計算した。30時間時点を記録した場合は、24時間での残存パーセントは、単分子過程、すなわち単一指数減衰を仮定する時間曲線に対して残存パーセントを補間することによって得た。24時間のインキュベーション後の残存パーセントを以下の表5に示し、ここでは、Aは60%超に相当し、Bは40から60%の間であり、Cは20から40%をカバーし、Dは20%未満を意味する。
脳透過性研究
【0199】
試験化合物を30%ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、100mM酢酸ナトリウムpH5.5、5%DMSO中に、0.5mg/mlまたは5mg/mlのいずれかで調製した。s.c.で5mg/kgもしくは50mg/kgまたはi.v.で5mg/kgをC57/BL6/Jマウスに投与した。投与前、投与後5、15、30分、1、2及び4時間で動物を安楽死させ、血漿及び脳を得た。時点あたりの用量につき3匹の動物を使用した。血漿及び脳中の化合物のレベルを標準的なLC/MS/MS法によって決定した。脳/血漿比(BPR)をCmax(脳)/Cmax(血漿)の比として計算した。結果を表5に示し、ここでは、IAは0.1未満のBPRに相当し、Dは0.1から0.2の間であり、Cは0.2から0.5であり、Bは0.5から1を含み、Aは1より大きい。
細胞内での脱アセチル化酵素阻害アッセイ(DACアッセイ)
【0200】
GM15850(リンパ芽球様細胞系統)細胞を、96ウェルプレートにおいて、10%v/vのウシ胎仔血清(FBS)、1%v/vのペニシリン/ストレプトマイシン及び1%v/vのL−グルタミンを含む90μLのRPMI1640培地中に、適切な密度(100,000細胞/ウェル)で播種した。化合物の希釈物を100%DMSO中に作製し、続いて、2%DMSOを含む培地中に並行希釈した。10μlの化合物希釈物を、所望の濃度を得るように細胞に加えた。各ウェルのDMSOの終濃度は0.2%であった。細胞を、37℃、5%COで4時間インキュベートした。インキュベーション後、細胞を遠心分離して沈ませ、上清を除去した。細胞ペレットを100μLのリン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄し、次いで、45μLの溶解バッファー(PH8.0のHDACアッセイバッファー(25mM Tris/HCl、137mM NaCl、2.7mM KCl、1mM MgCl)+1%v/vのIgepal CA−630)で溶解した。反応を開始するために、HDACの基質のKI−104(Enzo Life Sciences、Farmingdale、NY)を、50μMの終濃度に成るように加えた。30分インキュベーションした後に、50μLのディベロッパー(6mg/mLトリプシンのHDACアッセイバッファー溶液)を加えることにより反応を止めた。反応を30分間室温で進行させ、励起及び放出がそれぞれ360nm及び470nmである蛍光光度計(Spectramax M2、Molecular Devices、Sunnyvale、CA)を使用して、蛍光シグナルを検出した。データをGraphPad Prism5.0(GraphPad Software、La Jolla、CA)の可変スロープを伴うシグモイド用量応答式に適合させて、IC50を決定した。曲線の最下部及び最上部を、それぞれ、細胞を有さない及び細胞を有するが化合物を有さない対照のウェルの平均蛍光応答に合わせた。IC50を表5に報告し、ここでは、Aは1μM未満のIC50を表し、Bは1から5μMの間を表し、Cは5から10μMを表し、Dは10から20μMを表し、IAは20μMを超えるIC50を表す。
フラタキシン(FXN)mRNAの発現に対するHDAC阻害剤の効果
【0201】
フリードライヒ運動失調症患者ドナーから、抗凝血性のEDTAを含むチューブに血液を採集する。Repligenによって行われた少数の改変を含めて、製造者の指示書に従い、リンパ球分離培地(MP Biomedicals、Solon、OH)を使用して、初代リンパ球を単離する。リン酸緩衝食塩水(PBS)での最終的な洗浄の後、細胞を6ウェル細胞培養プレート中の細胞増殖培地に分配する。試験HDAC阻害剤化合物を用量漸増的様式(通常、1から10μMの濃度範囲)で細胞に加え、無処理の対照として0.1%DMSOを1ウェルの細胞に加える。COインキュベーター中で細胞を37℃で48時間インキュベートし;Countess自動細胞カウンター(Invitrogen、Carlsbad、CA)を使用して細胞を数える。すべての処理条件に対して同数の細胞を遠心分離によってペレット化し、細胞溶解バッファーに再懸濁する。任意のカラム上でのDNAse消化ステップを含めて、製造者の指示書に従って、RNeasyミニキット(Qiagen、Valencia、CA)を使用して、約1x10の初代リンパ球から全RNAを単離する。この単離は、手動で、または単離法の大部分を自動化する器具であるQIAcube(Qiagen、Valencia、CA)を使用して実施する。RNAの収率及び濃度をNanodrop分光光度計(Thermo Fisher scientific、Waltham、MA)を使用して決定し、そのRNA濃度に応じて2つのプロトコールのうちの1つを使用して、フラタキシン(FXN)の転写産物レベルを測定する。少なくとも15ng/μLのRNAを含む試料については、TaqMan(登録商標)プローブ(Applied Biosystems、Carlsbad、CA)を基にしたqRT−PCR法を使用し、一方15ng/μL未満のRNAを含む試料については、SYBR GreenのqRT−PCR法を使用する。TaqMan(登録商標)プローブを基にした方法では、FXN及びGAPDHに対する特異的なプライマー/プローブペアを、各反応で多重化する。SYBR Green法では、FXN及びGAPDHを、別々の反応で増幅する。両方の方法で、単一の、連続的な反応でのcDNA合成及びPCR増幅に必要であるすべての構成成分を含むワンステップqRT−PCRマスターミックスを使用して、各RNA試料を3連(好ましい)または2連(最低限)で解析する。サイクルが完了してから、MxProソフトウェア(Agilent Technologies、Santa Clara、CA)を使用して、採集したデータを解析し、対照試料と比較してFXN mRNAの相対量を決定する。アルゴリズムが各ウェル及び各色素について適切なベースラインサイクルを自動的に選択する適合ベースライン法を使用して、ベースラインを補正する。増幅に基づく閾値を設定し、対応する閾値サイクル、すなわちCtを得て、標的濃度を計算する。各反復系列についての各標的遺伝子(FXN及びGAPDH)のCt値を平均化する。試料中のFXN(またはGAPDH)の量を校正物質に対する相対量として決定し、ここでは、校正物質試料は1という任意の量が割り当てられる。以下の式を使用する:校正物質に対する相対量=2−ΔCt(式中、ΔCt=(Ct_遺伝子)未知−(Ct_遺伝子)校正物質である)であり、遺伝子はFXNまたはGAPDHのいずれかであり、校正物質はDMSO対照試料であり、未知はHDACi処理試料である。FXNの相対量を、細胞数及びRNA投入量に対して標準化する。データを以下の表5に報告し、ここでは、FXN mRNAの2倍増に必要とされる濃度を、5μM未満の場合はAとして、5から10μMの間の場合はBとして、10μMを越える場合はCとして報告する。
肝細胞のプロトコール
【0202】
肝細胞でのRGFP化合物の安定性及び代謝を評価すること及び代謝産物を定量化すること。本アッセイは、ヒト、サル、イヌ及びラットの肝細胞と共にインキュベーションした後に、親薬物の消失または代謝産物の出現のいずれかをLC−MS/MSを使用してモニターすることによって、RGFP化合物の代謝を調べるように設計した。結果を表5に示す((肝細胞中の残存%:IA<10%、50%<A、50%>B>30%、30%>C>10%、ND:未決定)。
機器
【0203】
機器:Applied Biosystem Triple Quadrupole LC/MS/MS;アイスバッカー、タイマー;96ウェルプレート;Falcon、カタログ#353072;96ウェルプレート振盪機;様々なピペット:10μL、20μL、200μL及び1000μL;試験チューブ:カタログ#VWR47729−572、13×100mm
【0204】
【表3】
【0205】
手法:ウォーターバスヒーターを37℃に作動させる。KHBバッファーを取り出し、使用前にそれが室温であることを確認する。DMSOストック中に2.5mM濃度のRGFP化合物を調製する。10μLの上記のDMSOストックを2490μLのKHBバッファーに加える;RGFP化合物の終濃度は10μMである。無菌の50mlのコニカルチューブ中で、45mlのInVitro HT培地を37℃に予熱する。45mLのInVitro HT培地あたり、1.0mLのTorpedo抗生物質混合物を加える。抗生物質混合物を含む温かい13mLのHT培地を15mLのコニカルチューブに移す。液体窒素(液相)から肝細胞のバイアルを慎重に取り出す。直ちに、そのバイアルを37℃のウォーターバスに浸す。氷が完全に融けるまで穏やかに振盪する。必要以上に長く細胞を37℃のウォーターバスに維持しない。直ちに、バイアルの内容物を予熱した抗生物質を含む13mlのInVitro HT培地に移す。確実に完全に移すために、肝細胞を移したばかりのHT培地でバイアルをすすぐ。この細胞懸濁液を600RPMで5分間室温で遠心分離する。上清を、1回の動作で流す(部分的に流さない、及び遠心チューブを再度反転しない)か、または真空ポンプを使用して吸引するかのいずれかによって捨てる。1.0mLのKHB(室温)バッファーを肝細胞ペレットのチューブに加える。遠心チューブを穏やかに旋回させて細胞ペレットをほぐす。100μLの上記の溶液を異なるチューブに移し、細胞を数えるために900μLのKHBバッファーを加える。トリパンブルー排除法を使用して、全細胞数及び生細胞数を決定する。細胞数が得られれば、その数に10を掛ける(希釈係数に起因する)。最終的な数が200万細胞/mLに成るように、必要とされるKHBバッファー量を肝細胞を含むチューブに加える。50μLの200万細胞/mlを96ウェルプレートに分注し、次いで、DMSOストック50μLを各ウェルに加える(その結果、各ウェルにおいて、RGFP化合物の濃度は5μMであり、細胞数は100000である)。5%COでの37℃インキュベーター中の振盪機にこのプレートを設置する。各時点について別々のプレートが得策である(時点:0時間、1時間、2時間及び6時間)。各時点後に、100μLのクエンチング溶液を加える。クエンチング溶液は、RGFP531(10μM)内部標準、0.1%ギ酸及びフェニルグリオキサール(phenylglyoxol)(400μM)を含むアセトニトリル溶液である。ギ酸及びフェニルグリオキサールは、前述のOPDの特定及び定量化に使用する。上下に数回ピペッティングして、確実に反応を完全に止める。すべての溶液を1.5mlチューブに移し、十分にボルテックスし、14000RPMで5分間4℃で遠心分離して、細胞のデブリを沈殿させる。150μLの上清をバイアルに移して、LC−MS/MSによって解析する。
【0206】
OPDを含めたRGFP化合物及び代謝産物に関するLC−MS/MSのパラメーター:API2000QTrap用のLC−MS/MSのパラメーター:システム:HPLC1100;カラム:Gemini C18、5μM 4.6x50mM;カラム温度:周囲温度;MS:API2000QTrap(MIモード);移動相A:0.05%ギ酸を含むHPLC水;移動相B:0.05%ギ酸を含むアセトニトリル。表4は、化合物A11に関する例示的なHPLC法を示し、これは、本明細書で開示される他の化合物用に改変することができる。
【0207】
【表4】
【0208】
【表5】
参考文献
1)2012.o−Phenylenediamine[MAK Value Documentation,1999].The MAK Collection for Occupational Health and Safety.216−235.
2)A Comprehensive Guide to the Hazardous Properties of Chemical Substances by Pradyot Patnaik,3rd edition,Pg 257−258.
3)Weisburger EK,Russfield AB,Homburger F,Weisburger JH,Boger E,Van Dongen CG,Chu KC(1978) Testing of twenty−one environmental aromatic amines or derivatives for long−term toxicity or carcinogenicity.J Environ Pathol Toxicol 2:325−356.
4)Sontag JM(1981) Carcinogenicity of substituted−benzenediamines (phenylenediamines) in rats and mice.J Nat Cancer Inst 66:591−601.
5)Bioassay of 4−Chloro−o−phenylenediamine for possible caricogeneicty.National Cancer Institute CARCINOGENESIS Technical Report Series No.63,1978.
6)Saruta N,Yamaguchi S,Matsuoka T(1962)Sarcoma produced by subdermal administration of metaphenylenediamine and metaphenylenediamine hydrochloride.Kyushu J Med Sci,13:175−179.
【0209】
本明細書においていくつかの実施形態を記載してきた。それにもかかわらず、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなしに様々な改変を行うことができることを理解されたい。したがって、他の実施形態は、以下の特許請求の範囲の範囲内である。