(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6503373
(24)【登録日】2019年3月29日
(45)【発行日】2019年4月17日
(54)【発明の名称】気管マーキング
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20190408BHJP
A61B 8/14 20060101ALI20190408BHJP
A61B 5/055 20060101ALI20190408BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20190408BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20190408BHJP
【FI】
A61B6/03 360H
A61B8/14
A61B6/03 360D
A61B6/03 360G
A61B5/055 380
A61B5/00 D
G06T1/00 290B
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-563463(P2016-563463)
(86)(22)【出願日】2015年6月30日
(65)【公表番号】特表2017-524386(P2017-524386A)
(43)【公表日】2017年8月31日
(86)【国際出願番号】US2015038533
(87)【国際公開番号】WO2016004025
(87)【国際公開日】20160107
【審査請求日】2018年5月15日
(31)【優先権主張番号】62/020,253
(32)【優先日】2014年7月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512269650
【氏名又は名称】コヴィディエン リミテッド パートナーシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【弁理士】
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】ラフマノビッチ, エラッド ディー.
(72)【発明者】
【氏名】コペル, エブゲニー
(72)【発明者】
【氏名】クレイン, エヤル
【審査官】
伊知地 和之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−096024(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0081362(US,A1)
【文献】
米国特許第07206462(US,B1)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0249546(US,A1)
【文献】
特表2009−539540(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0288181(US,A1)
【文献】
Todd S. Weiser et al.,"Electromagnetic Navigational Bronchoscopy: A Surgeon's Perspective",The Annuals of Thoracic Surgery,2008年 2月,Vol.85, No. 2,Pages S797-S801
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 − 1/32
A61B 5/00 − 5/01
A61B 5/055
A61B 6/00 − 6/14
A61B 8/00 − 8/15
G06T 1/00
G06T 7/00 − 7/90
G06T 19/00 − 19/20
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の主要気管分岐部および気管をマーキングするためのシステムであって、前記システムは、
画像処理コンピュータに、撮像デバイスから前記患者の胸部のスライス画像をインポートするための手段と、
前記画像処理コンピュータ内に含まれたグラフィックプロセッサであって、前記グラフィックプロセッサは、前記インポートされたスライス画像に基づいて、3次元(3D)モデルを生成するように構成されている、グラフィックプロセッサと、
前記画像処理コンピュータによって、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)内に前記3Dモデルを表示するための手段と
を備え、
前記主要気管分岐部は、前記GUIを使用するユーザによって、軸方向配向における前記3Dモデルの2D画像を視認することによって位置付けられるように構成され、
前記主要気管分岐部は、前記3Dモデルの2D画像のうちの1つにおいてマーキングされるように構成され、
前記3Dモデルのビュー平面は、前記主要気管分岐部を前記ビュー平面内に保ちながら、軸方向配向から冠状面配向に前記ビュー平面を調節し、それによって、前記GUI上に前記気管全体を表示するために、前記主要気管分岐部のマーキングされた場所によって画定される回転軸の周囲に調節されるように構成され、
前記気管の上側端部は、前記3Dモデルの2D画像のうちの1つにおいてマーキングされるように構成されている、システム。
【請求項2】
患者の主要気管分岐部および気管をマーキングするためのシステムであって、前記システムは、
画像処理コンピュータに、撮像デバイスから前記患者の胸部のスライス画像をインポートするための手段と、
前記画像処理コンピュータ内に含まれるグラフィックプロセッサであって、前記グラフィックプロセッサは、前記インポートされたスライス画像に基づいて、3次元(3D)モデルを生成するように構成されている、グラフィックプロセッサと、
前記画像処理コンピュータによって、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)内に前記3Dモデルを表示するための手段と
を備え、
前記主要気管分岐部は、前記GUIを使用するユーザによって、前記3Dモデルの複数の2D画像のうちの1つにおいてマーキングされるように構成され、
前記3Dモデルのビュー平面は、前記GUIを使用するユーザによって、前記GUI上に前記気管全体を表示するために調節されるように構成され、
前記気管の上側端部は、前記GUIを使用するユーザによって、前記3Dモデルの複数の2D画像のうちの1つにおいてマーキングされるように構成されている、システム。
【請求項3】
前記主要気管分岐部がマーキングされることに先立って、前記主要気管分岐部は、前記3Dモデルの2D画像のうちの1つにおいて位置付けられるように構成されている、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記主要気管分岐部は、軸方向配向における前記3Dモデルの2D画像を視認することによって、前記ユーザによって位置付けられるように構成されている、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記3Dモデルは、トモグラフィ技法、X線撮影法、コンピュータ軸トモグラフィ走査によってもたらされるトモグラム、磁気共鳴撮像、超音波検査法、造影撮像、蛍光透視法、核走査法、または陽電子放射トモグラフィによって得られる、2次元画像に基づいて生成される、請求項2に記載のシステム。
【請求項6】
前記3Dモデルのビュー平面は、回転軸の周囲に調節されるように構成されている、請求項2に記載のシステム。
【請求項7】
前記ビュー平面は、軸方向配向から冠状面配向に調節されるように構成されている、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記主要気管分岐部は、前記ビュー平面が調節されている中、前記ビュー平面内に保たれるように構成されている、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記気管のマーキングは、前記GUI上に表示される3Dモデルのレンダリングを精査することによって、前記GUIを使用するユーザによって検証されるように構成されている、請求項2に記載のシステム。
【請求項10】
前記レンダリングされた3Dモデルは、前記主要気管分岐部のマーキングと、前記気管の上側端部のマーキングとを含む、請求項9に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2014年7月2日に出願された米国仮特許出願番号第62/020,253号に基づく利益および優先権を主張しており、その全体の内容は、参考として本明細書中に援用される。
【0002】
(背景)
(技術分野)
本開示は、肺疾患を伴う患者の治療に関し、より具体的には、患者の肺のCT走査画像データに基づいて生成される、3次元(3D)モデル内の気管をマーキングするためのデバイス、システム、および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
患者の肺の視覚化に関連する視覚化技法は、臨床医が、患者の肺に診断および/または外科手術を実施することに役立つように開発されている。視覚化は、特に、疾患領域の場所を識別するために重要である。さらに、疾患領域を治療するとき、外科手術が正しい場所において実施されるように、疾患領域の特定の場所の識別に付加的な重点が置かれている。
【0004】
これまで、走査された肺の2次元画像が、視覚化を補助するために使用されていた。走査された2次元画像から肺を視覚化するために、2次元画像のある面積が肺の一部であるかどうかを判定することが重要である。したがって、ナビゲーション手技が始まり得る開始場所、例えば、肺に接続されるか、またはその一部である器官もしくは他の部分の場所を検出することもまた、肺を識別するために重要である。一実施例では、気管がその長さに沿って実質的に一定の直径を有し、肺に接続されていることが既知であるため、気管は、開始場所として使用されることができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(要旨)
本開示に従って、患者の主要気管分岐部および気管をマーキングする方法が、提供される。
【0006】
本開示のある側面によると、本方法は、画像処理コンピュータに、撮像デバイスから患者の胸部のスライス画像をインポートするステップと、画像処理コンピュータ内に含まれるグラフィックプロセッサによって、インポートされたスライス画像に基づいて、3次元(3D)モデルを生成するステップと、画像処理コンピュータによって、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)内に3Dモデルを表示するステップと、GUIを使用するユーザによって、軸方向配向における3Dモデルの2D画像を視認することによって、主要気管分岐部を位置付けるステップと、3Dモデルの2D画像のうちの1つにおいて、主要気管分岐部をマーキングするステップと、主要気管分岐部のマーキングされた場所によって画定される、回転軸の周囲の3Dモデルのビュー平面を調節し、主要気管分岐部をビュー平面内に保ちながら、軸方向配向から冠状面配向にビュー平面を調節し、それによって、GUI上に気管全体を表示するステップと、3Dモデルの2D画像のうちの1つにおいて、気管の上側端部をマーキングするステップとを含む。
【0007】
本開示の別の側面によると、本方法は、画像処理コンピュータに、撮像デバイスから患者の胸部のスライス画像をインポートするステップと、画像処理コンピュータ内に含まれるグラフィックプロセッサによって、インポートされたスライス画像に基づいて、3次元(3D)モデルを生成するステップと、画像処理コンピュータによって、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)内に3Dモデルを表示するステップと、GUIを使用するユーザによって、3Dモデルの複数の2D画像のうちの1つにおいて、主要気管分岐部をマーキングするステップと、GUIを使用するユーザによって、GUI上に気管全体を表示するために、3Dモデルのビュー平面を調節するステップと、GUIを使用するユーザによって、3Dモデルの複数の2D画像のうちの1つにおいて、気管の上側端部をマーキングするステップとを含む。
【0008】
本開示のさらなる側面では、本方法はさらに、主要気管分岐部をマーキングするステップに先立って、3Dモデルの2D画像のうちの1つにおいて、主要気管分岐部を位置付けるステップを含む。
【0009】
本開示の別の側面では、ユーザは、軸方向配向における3Dモデルの2D画像を視認することによって、主要気管分岐部を位置付ける。
【0010】
本開示のさらに別の側面では、3Dモデルは、トモグラフィ技法、X線撮影法、コンピュータ軸トモグラフィ走査によってもたらされるトモグラム、磁気共鳴撮像、超音波検査法、造影撮像、蛍光透視法、核走査法、または陽電子放射トモグラフィによって得られる、2次元画像に基づいて生成される。
【0011】
本開示のさらなる側面では、3Dモデルのビュー平面を調節するステップは、回転軸の周囲のビュー平面を調節することを含む。
【0012】
本開示の別の側面では、回転軸の周囲のビュー平面を調節するステップは、軸方向配向から冠状面配向にビュー平面を調節することを含む。
【0013】
本開示のさらなる側面では、調節するステップ中、主要気管分岐部は、ビュー平面内に保たれる。
【0014】
本開示の別の側面では、本方法はさらに、GUIを使用するユーザによって、GUI上に表示される3Dモデルのレンダリングを精査することによって、気管のマーキングを検証するステップを含む。
【0015】
本開示のさらなる側面では、レンダリングされた3Dモデルは、主要気管分岐部のマーキングと、気管の上側端部のマーキングとを含む。
【0016】
本開示の上記の側面および実施形態のいずれかは、本開示の範囲から逸脱することなく組み合わせられ得る。
本願明細書は、例えば、以下の項目も提供する。
(項目1)
患者の主要気管分岐部および気管をマーキングするための方法であって、
画像処理コンピュータに、撮像デバイスから前記患者の胸部のスライス画像をインポートするステップと、
前記画像処理コンピュータ内に含まれるグラフィックプロセッサによって、前記インポートされたスライス画像に基づいて、3次元(3D)モデルを生成するステップと、
前記画像処理コンピュータによって、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)内に前記3Dモデルを表示するステップと、
前記GUIを使用するユーザによって、軸方向配向における前記3Dモデルの2D画像を視認することによって、前記主要気管分岐部を位置付けるステップと、
前記3Dモデルの2D画像のうちの1つにおいて、前記主要気管分岐部をマーキングするステップと、
前記主要気管分岐部のマーキングされた場所によって画定される、回転軸の周囲の前記3Dモデルのビュー平面を調節し、前記主要気管分岐部を前記ビュー平面内に保ちながら、軸方向配向から冠状面配向に前記ビュー平面を調節し、それによって、前記GUI上に前記気管全体を表示するステップと、
前記3Dモデルの2D画像のうちの1つにおいて、気管の上側端部をマーキングするステップと、
を含む、方法。
(項目2)
患者の主要気管分岐部および気管をマーキングするための方法であって、
画像処理コンピュータに、撮像デバイスから前記患者の胸部のスライス画像をインポートするステップと、
前記画像処理コンピュータ内に含まれるグラフィックプロセッサによって、前記インポートされたスライス画像に基づいて、3次元(3D)モデルを生成するステップと、
前記画像処理コンピュータによって、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)内に前記3Dモデルを表示するステップと、
前記GUIを使用するユーザによって、前記3Dモデルの複数の2D画像のうちの1つにおいて、前記主要気管分岐部をマーキングするステップと、
前記GUIを使用するユーザによって、前記GUI上に前記気管全体を表示するために、前記3Dモデルのビュー平面を調節するステップと、
前記GUIを使用するユーザによって、前記3Dモデルの複数の2D画像のうちの1つにおいて、前記気管の上側端部をマーキングするステップと、
を含む、方法。
(項目3)
前記主要気管分岐部をマーキングするステップに先立って、前記3Dモデルの2D画像のうちの1つにおいて、前記主要気管分岐部を位置付けるステップをさらに含む、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記ユーザは、軸方向配向における前記3Dモデルの2D画像を視認することによって、前記主要気管分岐部を位置付ける、項目3に記載の方法。
(項目5)
前記3Dモデルは、トモグラフィ技法、X線撮影法、コンピュータ軸トモグラフィ走査によってもたらされるトモグラム、磁気共鳴撮像、超音波検査法、造影撮像、蛍光透視法、核走査法、または陽電子放射トモグラフィによって得られる、2次元画像に基づいて生成される、項目2に記載の方法。
(項目6)
前記3Dモデルのビュー平面を調節するステップは、回転軸の周囲の前記ビュー平面を調節することを含む、項目2に記載の方法。
(項目7)
前記回転軸の周囲のビュー平面を調節するステップは、軸方向配向から冠状面配向に前記ビュー平面を調節することを含む、項目6に記載の方法。
(項目8)
前記調節するステップ中、前記主要気管分岐部は、前記ビュー平面内に保たれる、項目7に記載の方法。
(項目9)
前記GUIを使用するユーザによって、前記GUI上に表示される3Dモデルのレンダリングを精査することによって、前記気管のマーキングを検証するステップをさらに含む、項目2に記載の方法。
(項目10)
前記レンダリングされた3Dモデルは、前記主要気管分岐部のマーキングと、前記気管の上側端部のマーキングとを含む、項目9に記載の方法。
【0017】
本開示の種々の側面および特徴が、本明細書で以下に図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態による、患者の肺の3Dモデルにおいて気管をマーキングするために使用され得る、例示的デバイスの概略図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施形態による、軸方向および冠状面配向における気管を示す3Dモデルから生成される、2Dスライス画像を描写する。
【
図3】
図3は、本開示の実施形態による、ENB手技を実施するための例示的方法を例証する、フローチャートである。
【
図4】
図4は、本開示の実施形態による、患者の肺の3Dモデル内の気管を手動でマーキングするための例示的方法を例証する、フローチャートである
【
図5】
図5は、本開示の実施形態による、臨床医が患者の肺の3Dモデル内の気管を手動でマーキングすることを可能にするために、電磁的ナビゲーション経路計画ソフトウェアによって提示され得る、例示的ビュー(日本語に変換してある)である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(詳細な説明)
本開示は、気管の自動検出が失敗したとき、患者の肺のスライス画像上の気管および主要気管分岐部を識別し、かつ手動でマーキングするためのデバイス、システム、および方法に関する。気管を識別することは、電磁的ナビゲーション(EMN)システムを使用してELECTROMAGNETIC NAVIGATION BRONCHOSCOPY(登録商標)(ENB)手技を実施するための経路計画の必要な構成要素であり得る。
【0020】
ENB手技は、概して、少なくとも2つの段階、すなわち、(1)患者の肺内に、またはそれに隣接して位置する標的への経路を計画するステップと、(2)計画された経路に沿って、プローブを標的にナビゲートするステップとを伴う。これらの段階は、概して、(1)「計画」および(2)「ナビゲーション」と称される。計画段階に先立って、患者の肺は、例えば、コンピュータトモグラフィ(CT)走査によって撮像されるが、さらなる適用可能な撮像方法が当業者に公知である。CT走査の間にアセンブルされた画像データは、次いで、例えば、Digital Imaging and Communications in Medicine(DICOM)フォーマットで記憶されるが、さらなる適用可能なフォーマットが当業者に公知である。このCT走査画像データは、次いで、ENB手技の計画段階の間に使用され得る3Dモデルを生成するために処理されるべき計画ソフトウェアアプリケーション(「アプリケーション」)中にロードされ得る。
【0021】
本アプリケーションは、患者の肺の3Dモデルを生成するために、CT走査画像データを使用し得る。3Dモデルは、とりわけ、患者の肺の実際の気道に対応するモデル気道樹を含み、患者の実際の気道樹の種々の通路、枝、および分岐部を示し得る。CT走査画像データは、画像データ内に含まれる間隙、脱落、および/または他の不完全さを有し得るが、3Dモデルは、患者の気道の平滑な表現であり、CT走査画像データ内の任意のそのような間隙、脱落、および/または不完全さは、補填もしくは補正される。以下により詳細に説明されるように、3Dモデルは、種々の配向において視認され得る。例えば、臨床医が患者の気道の特定の区分を視認することを所望する場合、臨床医は、3Dレンダリングにおいて表される3Dモデルを視認し、患者の気道の特定の区分を回転させ、そして/またはズームインし得る。加えて、臨床医は、軸方向面、矢状面、および冠状面に沿って生成される、2次元(2D)スライス画像内に表される3Dモデルを視認し得、そのような2Dスライス画像を「奥行き」まで「スクロール」し、患者の気道の特定の区分を示し得る。計画段階は、概して、3Dモデル内の少なくとも1つの標的小結節を識別するステップと、標的への経路を生成するステップとを伴う。経路は、概して、患者の口から、気管および接続される気道を通して、標的に延び得る。しかしながら、標的への経路を生成するために、3Dモデル内の気管の場所が、知られていなければならない。概して、上記アプリケーションは、3Dモデル内の気管を自動的に検出し得る。このプロセスは、共同所有であり、「Automatic Detection of Human Lung Trachea」と題され、Markov et al.によって2014年7月2日に出願された、米国仮特許出願第62/020,257号(その全内容は、参照することによって本明細書に組み込まれる)により完全に説明されている。しかしながら、気管の自動検出が失敗する事例が、存在し得る。本開示は、そのような事例において気管を手動でマーキングするためのデバイス、システム、および方法を対象とする。
【0022】
気管は、呼吸のための通路を提供する。気管は、上側端部において喉頭および咽頭に接続される。特に、気管の上側部分は、喉頭および咽頭から胸板の後方に実質的に直線状に延在する。気管の下側端部は、より小さい管の対、すなわち、一次気管支に枝分かれし、各管は、肺に接続する。主要気管分岐部は、一次気管支への気管の枝分かれによって形成される、軟骨性突起部である。気管の直径は、その長さ(すなわち、軸方向)に沿って、実質的に一定である一方、肺のサイズは、気管の長さと同一の方向に沿って、実質的に変化する。したがって、3Dモデルの2Dスライス画像を分析することによって、気管は、検出され得る。この理由から、軸平面に沿って生成される画像が、本開示では、気管を検出するために分析されてもよい。他の実施形態では、他の平面に沿って生成される画像もまた、気管を検出するために使用されてもよい。
【0023】
図1は、3Dモデルにおける気管の場所をマーキングするために、ENB手技の計画段階中に使用され得る、画像処理デバイス100を示す。デバイス100は、以下に説明される機能を実施するように構成される、特殊化画像処理コンピュータであり得る。デバイス100は、ラップトップ、デスクトップ、タブレット、または他の類似するコンピュータ等、当業者に公知の任意の形状因子において具現化されてもよい。デバイス100は、とりわけ、1つまたはそれを上回るプロセッサ110、とりわけ、上記に参照されるアプリケーション122を記憶するメモリ120、ディスプレイ130、1つまたはそれを上回る特殊化グラフィックプロセッサ140、ネットワークインターフェース150、および1つまたはそれを上回る入力インターフェース160を含んでもよい。
【0024】
上記に留意されるように、3Dモデルの2Dスライス画像は、種々の配向において表示され得る。例として、
図2は、軸方向配向および冠状面配向における患者の肺の3Dモデルの2Dスライス画像を示し、2Dスライス画像210は、軸方向面に沿って生成され、2Dスライス画像220は、冠状面に沿って生成される。2Dスライス画像210および220の両方は、気管支212および主要気管分岐部214を示す。
【0025】
3Dモデルの2Dスライス画像は、高い強度を伴う高密度面積および低い強度を伴う低密度面積を示し得る。例えば、骨、筋肉、血管、または癌性部分が、肺の気道の内側面積よりも高い強度を伴って表示される。3Dモデルの2Dスライス画像はさらに、黒色ピクセルおよび白色ピクセルのみを含む、バイナリ化された2Dスライス画像を得るために処理され得る。バイナリ化された2Dスライス画像は、非肺面積(例えば、骨、胃、心臓、血管、気道壁等)として白色領域を、肺面積(例えば、肺、気管、および接続される構成要素)として黒色領域を示してもよい。
【0026】
図3は、本開示による、ENB手技の計画段階を実施するための例示的方法を例証する、フローチャートである。ステップS302から開始することで、患者の肺の画像データが、取得される。画像データは、任意の効果的な撮像モダリティ、例えば、CT走査、X線走査等のX線撮影法、コンピュータ軸トモグラフィ(CAT)走査によってもたらされるトモグラム、磁気共鳴撮像(MRI)、超音波検査法、造影撮像、蛍光透視法、核走査法、および/または陽電子放射トモグラフィ(PET)を使用して取得されてもよい。その後、ステップS304において、取得された画像データは、ENB計画ソフトウェアにロードされる。ENB計画ソフトウェアは、次いで、ステップS306において、画像データから気管を自動的に検出することを試みる。ステップS308において、気管検出が成功したかどうかが判定される。気管の検出が成功しなかった場合、手動検出が、必要となる。本開示による、気管を手動で検出する一方法が、
図4を参照して以下に詳述される。
【0027】
気管の検出が成功すると、ENB計画ソフトウェアは、臨床医が、ステップS310において、画像データ内の1つまたはそれを上回る標的場所をマーキングすることを可能にする。その後、ステップS312において、ENBソフトウェアは、気管から患者の気道を通した標的への経路を生成する。ステップS314において、臨床医によってマーキングされた標的毎に経路が生成されたかどうかが判定される。「いいえ」である場合、処理は、ステップS312に戻る。「はい」である場合、ENB手技の計画段階は、完了し、ステップS316において、生成された経路は、ENB手技のナビゲーション段階を開始するためにENBナビゲーションソフトウェアにロードされるか、または後の使用のために記憶され得る。
【0028】
図4は、
図5に示されるアプリケーション122の例示的ビューを使用することによって、3Dモデル内の気管を手動でマーキングするための例示的方法のフローチャートである。この例示的方法は、
図3のステップS308において、気管検出が成功しなかったと判定される場合、処理される。アプリケーション122は、気管をマーキングする際に臨床医を補助するために、3Dモデルの種々のビューを提供し得る。ある実施形態では、3Dモデルの2Dスライス画像が、使用されてもよい。他の実施形態では、3Dモデルの他のビューが、使用されてもよい。ステップS402において開始して、臨床医は、
図5のサブビュー510に示されるように、軸方向配向における3Dモデルの2Dスライス画像を視認することによって、主要気管分岐部を位置付け得る。臨床医は、一次気管支への気管の分岐部と、したがって、また、主要気管分岐部の先端とを示す、正しい2Dスライス画像511を見出す前に、複数の2Dスライス画像を視認し、そして「スクロール」する必要があり得る。
【0029】
主要気管分岐部の先端を示す2Dスライス画像を見出すと、臨床医は、ステップS404において、主要気管分岐部の先端を選択し、回転点512をマーキングする。次いで、ステップS406において、マーキングされた回転点512を使用して、この回転点を通過し、矢状平面に平行である回転軸が、画定される。その後、ステップS408において、臨床医は、主要気管分岐部をビュー平面内に保ちながら、軸方向配向から冠状面配向に回転軸の周囲のビュー平面を調節し、それによって、
図5のサブビュー520内に示されるように、気管523の長さを暴露する。したがって、臨床医は、
図2に示される2Dスライス画像210等の軸方向面に沿って生成される2Dスライス画像から、
図2に示される2Dスライス画像220等の冠状面に沿って生成される2Dスライス画像にビュー平面を調節する。臨床医は、再び、気管523の長さを示す2Dスライス画像521を見出す前に、複数の2Dスライス画像を視認し、そして「スクロール」する必要があり得る。
【0030】
気管523の長さを示す2Dスライス画像を見出すと、臨床医は、ステップS410において、気管523の上側端部を選択し、第2の点522をマーキングする。サブビュー520は、次いで、それぞれ、気管523の下側端部および上側端部をマーキングする、回転点512および第2の点を示し得る。その後、臨床医は、
図5のサブビュー530によって示されるように、第2の点522から主要気管分岐部に向かって気管523を見下ろす、患者の気道の3Dモデルのレンダリング531を視認することによって、気管523が正しく識別されたことを検証し得る。検証して、臨床医が、ステップS414において、気管523が正しく識別されなかったと判定する場合、処理は、ステップS402に戻る。臨床医が、気管523が正しく識別されたと判定する場合、処理は、
図3のステップS308に戻り、ENB手技の計画段階を完了する。
【0031】
ここで、
図1に目を向けると、メモリ120は、プロセッサ110によって実行され得る、EMN計画および手技ソフトウェア等のアプリケーション122および他のデータを含む。例えば、データは、DICOMフォーマットで記憶されるCT走査画像データおよび/またはCT走査画像データに基づいて生成される3Dモデルであり得る。メモリ120はまた、患者の医療記録、処方箋、および/または患者の病歴等の他の関連データも記憶し得る。メモリ120は、記憶装置コントローラおよび通信バスを通してプロセッサに接続される、1つまたはそれを上回るソリッドステート記憶デバイス、フラッシュメモリチップ、大容量記憶装置、テープドライブ、または任意のコンピュータ可読記憶媒体であってもよい。コンピュータ可読記憶媒体は、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュール、または他のデータ等の情報の記憶のための任意の方法もしくは技術において実装される、非一過性、揮発性および不揮発性、取り外し可能媒体および取り外し不能媒体を含む。例えば、コンピュータ可読記憶媒体は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読取専用メモリ(ROM)、消去可能プログラマブル読取専用メモリ(EPROM)、電気的消去可能プログラマブル読取専用メモリ(EEPROM)、フラッシュメモリもしくは他のソリッドステートメモリ技術、CD−ROM、DVD、もしくは他の光学記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置、もしくは他の磁気記憶デバイス、または所望される情報を記憶するために使用され得、デバイス100によってアクセスされ得る、任意の他の媒体を含む。
【0032】
ディスプレイ130は、ディスプレイ130が入力デバイスと出力デバイスの両方としての役割を果たすことを可能にする、タッチ感応式および/または音声起動式であってもよい。グラフィックプロセッサ140は、CT走査画像データを処理して、3Dモデルを生成し、3Dモデルを処理して、上記に説明されるような種々の配向における3Dモデルの2Dスライス画像ならびに3Dモデルの3Dレンダリングを生成する等の画像処理機能を実施する、特殊化グラフィックプロセッサであり得る。グラフィックプロセッサ140はさらに、ディスプレイ130上に表示されるべきグラフィカルユーザインターフェース(GUI)を生成するように構成されてもよい。GUIは、とりわけ、2D画像スライスおよび3Dレンダリングを示すビューを含んでもよい。実施形態では、グラフィックプロセッサ140は、1つまたはそれを上回る汎用プロセッサ110が他の機能のために利用可能であり得るように、画像処理機能のみを実施する、専用グラフィック処理ユニット(GPU)等の特殊化グラフィックプロセッサであってもよい。特殊化GPUは、スタンドアローンの専用グラフィックカードまたは統合グラフィックカードであってもよい。
【0033】
ネットワークインターフェース150は、デバイス100が、有線および/または無線ネットワーク接続を通して、他のデバイスと通信することを可能にする。ある実施形態では、デバイス100は、撮像デバイスからネットワーク接続を介して、CT走査画像データを受信してもよい。他の実施形態では、デバイス100は、ディスクまたは当業者に公知の他の外部記憶媒体等の記憶デバイスを介して、CT走査画像データを受信してもよい。
【0034】
入力インターフェース160は、設定値、テキスト情報、および/または制御デバイス100等のデータまたは制御情報を入力するために使用される。入力インターフェース160は、キーボード、マウス、タッチセンサ、カメラ、マイクロホン、または当業者に公知のユーザ相互作用のために使用される他のデータ入力デバイスもしくはセンサを含んでもよい。
【0035】
本開示は、具体的かつ例証的実施形態の観点から説明されたが、種々の修正、再配列、および代用が、本開示の思想から逸脱することなく成され得ることが、当業者に容易に明白とである。本開示の範囲は、本明細書に添付される請求項によって規定される。
【0036】
ENB手技の計画またはナビゲーションのいずれの段階においても使用可能な画像およびデータ生成、管理、ならびに操作のさらなる側面が、共同所有である、すべてが「Pathway Planning System and Method」と題され、Bakerによって、2013年3月15日に出願された、米国特許出願第13/838,805号;第13/838,997号;および第13/839,224号により完全に開示されている。ENB手技の計画段階およびナビゲーション段階のさらなる側面は、共同所有である、「Real−Time Automatic Registration Feedback」と題され、Brown et al.によって2014年7月2日に出願された、米国仮特許出願第62,020,220号、「Methods for Marking Biopsy Location」と題され、Brownによって2014年7月2日に出願された、米国仮特許出願第62,020,177号、「System and Method for Navigating Within the Lung」と題され、Brown et al.によって2014年7月2日に出願された、米国仮特許出願第62,020,240号、「Intelligent Display」と題され、Kehat et al.によって2014年7月2日に出願された、米国仮特許出願第62,020,238号、「Unified Coordinate System for Multiple CT Scans of Patient Lungs」と題され、Greenburgによって2014年7月2日に出願された、米国仮特許出願第62,020,242号、「Alignment CT」と題され、Klein et al.によって2014年7月2日に出願された、米国仮特許出願第62,020,245号、「Algorithm for Fluoroscopic Pose Estimation」と題され、Merletによって2014年7月2日に出願された、米国仮特許出願第62,020,250号、「System and Method for Segmentation of Lung」と題され、Markov et al.によって2014年7月2日に出願された、米国仮特許出願第62,020,261号、「Cone View−A Method of Providing Distance and Orientation Feedback While Navigating in 3D」と題され、Lachmanovich et al.によって2014年7月2日に出願された、米国仮特許出願第62,020,258号、および「Dynamic 3D Lung Map View for Tool Navigation Inside the Lung」と題され、Weingarten et al.によって2014年7月2日に出願された、米国仮特許出願第62,020,262号(これらの全ての全内容は、参照することによって本明細書に組み込まれる)により完全に説明されている。
【0037】
実施形態が、例証および説明を目的として、付随の図面を参照して詳細に説明されたが、発明的プロセスおよび装置は、本明細書によって限定されるものとして解釈されるべきではないことを理解されたい。前述の実施形態への種々の修正が、本開示の範囲から逸脱することなく成され得ることが、当業者に明白である。