特許第6503375号(P6503375)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6503375選択的焼結による3D印刷のための方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6503375
(24)【登録日】2019年3月29日
(45)【発行日】2019年4月17日
(54)【発明の名称】選択的焼結による3D印刷のための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   B22F 3/16 20060101AFI20190408BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20190408BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20190408BHJP
   B29C 67/00 20170101ALI20190408BHJP
   B22F 1/00 20060101ALI20190408BHJP
   B22F 3/10 20060101ALI20190408BHJP
   B22F 3/02 20060101ALI20190408BHJP
   B22F 3/035 20060101ALI20190408BHJP
   B22F 3/105 20060101ALI20190408BHJP
   B28B 1/30 20060101ALI20190408BHJP
【FI】
   B22F3/16
   B33Y30/00
   B33Y10/00
   B29C67/00
   B22F1/00 N
   B22F3/10 A
   B22F3/02 G
   B22F3/035 D
   B22F3/10 K
   B22F3/10 101
   B22F3/035 F
   B22F3/105
   B28B1/30
【請求項の数】25
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-567042(P2016-567042)
(86)(22)【出願日】2015年5月7日
(65)【公表番号】特表2017-522448(P2017-522448A)
(43)【公表日】2017年8月10日
(86)【国際出願番号】IL2015050478
(87)【国際公開番号】WO2015170330
(87)【国際公開日】20151112
【審査請求日】2018年4月27日
(31)【優先権主張番号】61/990,165
(32)【優先日】2014年5月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513131464
【氏名又は名称】ストラタシス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】シェインマン、ヨシュア
【審査官】 河口 展明
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−511365(JP,A)
【文献】 特表2014−533210(JP,A)
【文献】 特開2004−1500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00−8/00
B29C 67/00−64/40
B33Y 10/00
B33Y 30/00
B28B 1/00−1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元物体を構築するためのシステムにおいて、
粉末材料の層を構築トレイ上に加えるための粉末送達ステーションと、
マスク・パターンを前記層上に印刷するためのデジタル印刷ステーションであって、前記マスク・パターンは、焼結されることになる前記層の一部分のネガを画定する、デジタル印刷ステーションと、
焼結されることになる前記マスクによって画定される前記層の前記部分を選択的に焼結するための焼結ステーションであって、前記焼結ステーションは前記層を焼結するための高サーマル・マス・ローラを備える、焼結ステーションと、
共に前記3次元物体を形成する複数の層を構築するために、前記構築トレイを前記粉末送達ステーション、デジタル印刷ステーション、及び焼結ステーションのそれぞれに繰り返し進めるステージと
からなるシステム。
【請求項2】
前記粉末材料の層に圧縮成形するためのダイ圧縮成形ステーションをさらに備え、前記圧縮成形ステーションは、前記層を受け取るためのダイを有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記ダイ圧縮成形ステーションは、前記層と界接する前記ダイの表面を暖めるための加熱要素を備える、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記ダイ圧縮成形ステーションは、最大100MPaの圧力を前記層に対して加えるように動作可能であり、前記ダイ圧縮成形ステーションは、前記構築トレイを前記ダイに向かって持ち上げるためのリフティング・システムを備える、請求項に記載のシステム。
【請求項5】
前記ダイ圧縮成形ステーションは、剥がれ防止機構を備え、前記剥がれ防止機構は、前記構築トレイと前記ダイとの間に配置された箔を有し、前記箔は、2つの反対側の縁部によって支持され、前記構築トレイと前記ダイの間の分離中、前記箔の弓反りを可能にする、請求項2〜のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
後続の層における前記構築トレイの高さを、圧縮成形後、前記層の厚さに応答して調整するためのコントローラをさらに備える、請求項2〜のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
焼結後、前記層を冷却するための冷却ステーションをさらに備え、前記冷却ステーションは、ガスのジェット噴流を提供するためのエア・ナイフを有する、請求項1〜のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記デジタル印刷システムは、液体担体内に懸濁するフリットを含んでなるインクを分配すべく動作可能であり、前記フリットは、500nmから1μmの直径を有する粒子から形成される、請求項1〜のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
前記高サーマル・マス・ローラは、前記粉末の前記溶融温度より0℃〜80℃高く加熱される、請求項1〜のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
前記高サーマル・マス・ローラは、ローラ長の1cm当たり20〜180ニュートン(N/cm)程度の大きさの圧力を加える、請求項1〜のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
前記焼結ステーションは、剥がれ防止機構を備え、前記剥がれ防止機構は、前記高サーマル・マス・ローラと前記層との間に配置された箔を有する、請求項1〜のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
前記焼結ステーションは、予熱又は焼結のうちの少なくとも一方を行うために前記層の上で掃引した垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)のアレイを含んでなる、請求項1〜のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項13】
前記構築トレイは、前記層が配置される前記トレイの表面に対して実質的に平行に走る少なくとも1つのチャネルを有し、前記チャネルを通じて前記構築トレイを冷却するための流体が導入される、請求項1〜のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項14】
前記粉末は、アルミニウム又はアルミニウム合金のうちの少なくとも一方からなる粉末である、請求項に記載のシステム。
【請求項15】
3次元物体を構築するための方法において、
粉末の層を構築トレイ上に延展する工程と、
マスク・パターンを前記層上に印刷する工程であって、前記マスク・パターンは、焼結されることになる前記層の一部分のネガを画定し、前記層のための前記マスク・パターンは、前記3次元物体の形状を画定するマスク・パターン・データによって定義される、マスク・パターンを前記層上に印刷する工程と、
焼結されることになる前記マスクによって画定される前記層の前記部分を焼結する工程であって、前記焼結する工程は、前記層の上で転動する高サーマル・マス・ローラによって実施される、前記焼結する工程と、
前記延展する工程、前記印刷する工程、及び前記焼結する工程を前記3次元物体が完成するまで繰り返す工程と
からなる方法。
【請求項16】
前記マスク・パターンは、インクを分配するデジタル・プリンタで印刷され、前記インクは、前記層のマスクされた部分上に断熱被覆を与える、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記インクは、前記粉末の溶融温度より低い蒸発温度を有するように選択された液体担体を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記焼結する工程の前、かつ前記層の印刷する工程の後で前記の上にダイ圧縮成形を実施する工程をさらに備え、前記ダイ圧縮成形中に前記層に加えられる圧力は、最大100MPaである、請求項15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
温間ダイ圧縮成形を実施する工程をさらに備え、前記ダイ圧縮成形中に前記層に加えられる圧力は、最大100MPaであり、前記温間ダイ圧縮成型は前記印刷する工程後、層ごとに実施される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ダイ圧縮成形中に前記構築トレイを冷却する工程を備える、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記高サーマル・マス・ローラは、前記焼結する工程中、前記粉末の溶融温度より0℃〜30℃高く加熱される、請求項15〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記高サーマル・マス・ローラは、ローラ長の1cm当たり10ニュートン(N/cm)程度の大きさの圧力で前記層に押し付けられる、請求項15〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
焼結する工程中、前記構築トレイを冷却する工程を備える、請求項15〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記焼結する工程の直後に前記層を冷却する工程をさらに備え、前記冷却する工程は、ガスのジェット噴流で実施される、請求項15〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
構築される前記物体の1つ又は複数の前の層の厚さに応答して前記構築トレイの高さを調整する工程をさらに備える、請求項15〜19のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いくつかの実施形態において、3次元(3D)印刷に関し、より詳細には、選択的焼結による3D印刷に関するが、これに限定されない。
【背景技術】
【0002】
粉末状材料の連続する層を用いた3D印刷によって個体物体を作製するためのいくつかの異なる工程が知られている。いくつかの公知の3D印刷技法は、物体の3Dモデルに基づいて液体バインダ材料を選択的に加え、材料を層ごとに結合し、固体構造を生み出す。工程によっては、構築工程の最後に材料の結合をさらに強化するために、物体が加熱及び/又は焼結される。
【0003】
選択的レーザ焼結(SLS)は、レーザをパワー・ソースとして使用し、粉末状材料の層を焼結する。レーザは、3Dモデルによって画定された空間内の点を狙うように制御され、材料を層ごとに結合し、固体構造を生み出す。選択的レーザ溶融(SLM)は、焼結ではなく材料の完全溶融を適用する比較可能な技法である。SLMは、一般に、粉末の溶融温度が均一であるとき、たとえば純金属粉末が構築材料として使用されるとき適用される。
【0004】
その内容を本願明細書に援用する「成形方法」という名称の特許文献1は、層で3D物品を形成するための成形方法について記載している。一実施形態では、材料の平面的な層が順次堆積される。各層では、次の層の堆積前に、そのエリアの一部分が凝固され、その層内で物品のその部分を画定する。各層の選択的凝固は、熱と選択されたマスクを使用することによって、又は制御された熱走査工程を使用することによって達成され得る。レーザを使用し各層を選択的に融解するのではなく、各層ごとに別々のマスク、及び熱源が使用され得る。マスクがその関連の層の上に置かれ、熱源がマスクの上方に配置される。マスクの開口を通過する熱が、マスクの開口を通じて露出された粒子を融合することになる。直接的な熱に対して露出されない粒子は、融解しないことになる。
【0005】
その内容を本願明細書に援用する「選択的ビーム焼結のための多材料システム」という名称の特許文献2は、粉末の層を選択的に焼結し、複数の焼結された層を含む部品を作り出すための方法及びシステムについて記載している。装置は、焼結マスを作り出すためにレーザ・エネルギーを粉末上に導くようにレーザを制御するコンピュータを含む。各断面について、レーザ・ビームの狙いが粉末の層の上で走査され、断面の境界内の粉末だけを焼結するためにビームがオンにされる。完成された部品が形成されるまで、粉末が加えられ、連続的な層が焼結される。粉末は好適には、異なる解離温度又は接合温度を有する複数の材料を含む。粉末は好適には、ブレンド又は被覆された材料を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4,247,508号
【特許文献2】米国特許第5,076,869号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、選択的焼結による3D印刷のためのシステム及び方法が提供される。本発明のいくつかの実施形態によれば、マスクを粉末層上に印刷すること、マスクを含む層を圧縮成形すること、次いで、圧縮成形された層を焼結
することを含む付加製造工程によって物体が形成される。この工程は、一般に、物体が形成されるまで各層について繰り返される。本発明者は、圧縮成形ステップを層ごとに追加することにより、製造工程の効率を改善することができ、最終製品の品質をも改善することができることを見出した。
【0008】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、3次元物体を構築するためのシステムであって、粉末材料の層を構築トレイ上に加えるための粉末送達ステーションと、マスク・パターンを層上に印刷するためのデジタル印刷ステーションであって、マスク・パターンは、焼結されることになる層の一部分のネガを画定し、前記部分は露出される、デジタル印刷ステーションと、露出されている層の部分を選択的に焼結するための焼結ステーションと、共に3次元物体を形成する複数の層を構築するために、構築トレイを粉末送達ステーション、デジタル印刷ステーション、及び焼結ステーションのそれぞれに繰り返し進めるステージとを含むシステムが提供される。
【0009】
任意選択で、システムは、粉末材料の層ごとに圧縮成形するためのダイ圧縮成形ステーションを含み、圧縮成形ステーションは、層を受け取るためのダイを含む。
任意選択で、ダイ圧縮成形ステーションは、層と界接するダイの表面を暖めるための加熱要素を含む。
【0010】
任意選択で、ダイ圧縮成形ステーションは、最大100MPaの圧力を層に対して加えるように動作可能である。
任意選択で、ダイ圧縮成形ステーションは、構築トレイをダイに向かって持ち上げるためのリフティング・システムを含む。
【0011】
任意選択で、圧縮成形ステーションは、剥がれ防止機構を含み、剥がれ防止機構は、ダイとの間に配置された箔を含み、箔は、2つの反対側の縁部によって支持され、構築トレイとダイの間の分離中、箔の弓反りを可能にする。
【0012】
任意選択で、システムは、後続の層における構築トレイの高さを、圧縮成形後、層の厚さに応答して調整するためのコントローラを含む。
任意選択で、システムは、焼結後、層を冷却するための冷却ステーションを含む。
【0013】
任意選択で、冷却ステーションは、層を冷却するためにガスのジェット噴流を提供するためのエア・ナイフを含む。
任意選択で、デジタル印刷システムは、液体担体内に懸濁するフリットを含むインクを分配するように動作可能である。
【0014】
任意選択で、フリットは、500nmから1μmの直径を有する粒子から形成される。
任意選択で、焼結ステーションは、層を焼結するための高サーマル・マス・ローラを含む。
【0015】
任意選択で、高サーマル・マス・ローラは、粉末の溶融温度より0℃〜80℃高く加熱される。
任意選択で、高サーマル・マス・ローラは、ローラ長の1cm当たり20〜180ニュートン(N/cm)程度の大きさの圧力を加える。
【0016】
任意選択で、焼結ステーションは、剥がれ防止機構を含み、剥がれ防止機構は、高サーマル・マス・ローラと層との間に配置された箔を含む。
任意選択で、焼結ステーションは、予熱及び/又は焼結するために層の上で掃引した垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)のアレイを含む。
【0017】
任意選択で、構築トレイは、層が配置されるトレイの表面に対して実質的に平行に走る少なくとも1つのチャネルを含み、それを通じて構築トレイを冷却するために流体が導入される。
【0018】
任意選択で、粉末は、金属粉末である。
任意選択で、粉末は、アルミニウム粉末及び/又はアルミニウム合金である。
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、3次元物体を構築するための方法であって、粉末の層を構築トレイ上に延展する工程と、マスク・パターンを層上に印刷する工程であって、マスク・パターンは、焼結されることになる層の一部分のネガを画定し、前記部分は露出され、層のためのマスク・パターンは、3次元物体の形状を画定するマスク・パターン・データによって定義される、工程と、露出されている層の部分を焼結する工程と、延展する工程、印刷する工程、及び焼結する工程を3次元物体が完成するまで繰り返す工程とを含む方法が提供される。
【0019】
任意選択で、マスク・パターンは、インクを分配するデジタル・プリンタで印刷される。
任意選択で、インクは、層のマスクされた部分上に断熱被覆を提供する。
【0020】
任意選択で、インクは、粉末の溶融温度より低い蒸発温度を有するように選択された液体担体を含む。
任意選択で、この方法は、焼結する工程の前に、層ごとにダイ圧縮成形を実施する工程を含む。
【0021】
任意選択で、この方法は、温間ダイ圧縮成形を実施する工程を含む。
任意選択で、圧縮成形中に層に加えられる圧力は、最大100MPaである。
任意選択で、ダイ圧縮成形は、層の印刷する工程後、層ごとに実施される。
【0022】
任意選択で、この方法は、ダイ圧縮成形中に構築トレイを冷却する工程を含む。
任意選択で、焼結する工程は、構築トレイの長さにわたって熱源を通過させることによって実施され、熱源は、構築トレイの幅にわたって延びる細いストリップに沿って熱を提供する。
【0023】
任意選択で、焼結する工程は、層の上で転動する高サーマル・マス・ローラで実施される。
任意選択で、高サーマル・マス・ローラは、焼結する工程中、粉末の溶融温度より0℃〜30℃高く加熱される。
【0024】
任意選択で、高サーマル・マス・ローラは、ローラ長の1cm当たり10ニュートン(N/cm)程度の大きさの圧力で層に押し付けられる。
任意選択で、この方法は、焼結する工程中、構築トレイを冷却する工程を含む。
【0025】
任意選択で、この方法は、焼結する工程の直後に層を冷却する工程を含み、冷却する工程は、ガスのジェット噴流で実施される。
任意選択で、この方法は、構築される物体の1つ又は複数の前の層の厚さに応答して構築トレイの高さを調整する工程を含む。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、3次元物体を構築するための方法であって、粉末の層を構築トレイ上に提供する工程と、層上でダイ圧縮成形を実施する工程と、選択的レーザ焼結又は選択的レーザ溶融によってダイ圧縮成形されている層を焼結する
工程と、提供する工程、ダイ圧縮成形、及び焼結する工程を3次元物体が完成するまで層ごとに繰り返す工程とを含む方法が提供される。
【0027】
任意選択で、この方法は、温間ダイ圧縮成形を実施する工程を含む。
任意選択で、圧縮成形中に層に加えられる圧力は、最大100MPaである。
別段定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び/又は科学用語は、本発明が関連する技術における当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと同様又は等価の方法及び材料を、本発明の実施形態を実施又はテストする際に使用することができるが、例示的な方法及び/又は材料が下記に記載されている。矛盾がある場合、定義を含めて本明細書が支配することになる。さらに、材料、方法、及び例は例示的なものにすぎず、必ずしも限定することは意図されていない。
【0028】
本明細書には、本発明のいくつかの実施形態について、単に例として、添付の図面を参照して記載されている。次に、詳細に図面を特に参照するが、図の詳細は、例としてのものであり、本発明の実施形態を例示的に論じるためのものであることが強調される。これに関して、図面と併せ読まれる説明により、当業者には、本発明の実施形態がどのように実施され得るか明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明のいくつかの実施形態による例示的な3D印刷システムの概略図。
図2】本発明のいくつかの実施形態による例示的な3D印刷システムの例示的なユニットを示す概略ブロック図。
図3】本発明のいくつかの実施形態による粉末分配ステーションの概略ブロック図。
図4】本発明のいくつかの実施形態による粉末延展ステーションの概略ブロック図。
図5】本発明のいくつかの実施形態による例示的な印刷システムの概略ブロック図。
図6】本発明のいくつかの実施形態による印刷されたマスクを含む物体層の概略図。
図7A】本発明のいくつかの実施形態による解放状態にある例示的な圧縮成形システムの概略図。
図7B】本発明のいくつかの実施形態による圧縮状態にある例示的な圧縮成形システムの概略図。
図8A】本発明のいくつかの実施形態による圧縮成形状態にある圧縮成形システムのための例示的な剥がれ防止機構の概略図。
図8B】本発明のいくつかの実施形態による圧縮成形後状態にある圧縮成形システムのための例示的な剥がれ防止機構の概略図。
図9】本発明のいくつかの実施形態による圧縮成形システムのためのクリーニング機構の概略図。
図10】本発明のいくつかの実施形態による例示的な焼結ステーション及び冷却ステーションの概略図。
図11】本発明のいくつかの実施形態による別の例示的な焼結ステーションの概略図。
図12】本発明のいくつかの実施形態による3D印刷によって物体を構築するための例示的な方法の概略流れ図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、3次元(3D)印刷に関し、より詳細には、それだけには限らないが、選択的焼結による3次元印刷に関する。
本発明のいくつかの実施形態によれば、焼結された粉末の複数の層から物体を構築するための3D印刷システム及び方法が提供される。本発明のいくつかの実施形態によれば、このシステムは構築トレイを含み、その上に、粉末ディスペンサが層ごとに粉末状材料を加え、ローラが、粉末の各層を加えられた後で延展する。任意選択で、粉末分配及び粉末延展は、システムの粉末送達ステーション内で実施される。本発明のいくつかの実施形態によれば、粉末状材料が構築材料として使用される。いくつかの例示的な実施形態では、アルミニウム粉末が使用される。任意選択で、金属合金が使用され、たとえば、アルミニウム合金又は粉末金属の組合せが使用される。任意選択で、セラミック粉末が構築材料として使用され、及び/又は金属とセラミック粉末の組合せが使用される。
【0031】
アルミニウムを用いた構築は、その軽さ、比較的低い溶融温度、及び腐食に対するその耐性により有利であることが知られている。アルミニウム粉末を用いた構築の1つの課題は、粉末のアルミニウム粒子が酸化アルミニウム被覆、たとえばアルミナを形成する傾向があることである。酸化アルミニウム被覆は、焼結中に粒子の結合と干渉するアルミニウム粒子間の障壁を導入する。最終的な結果は、一般に、粉末状要素間の不十分な結合による強度の低下した物体である。
【0032】
さらなる課題は、アルミニウムを用いて構築するためにSLS及び/又はSLM工程を適用するとき関与する。溶融アルミニウムは、追加の層を受け取るには不十分な濡れ表面を提供することが知られている。スズ、及び他の添加剤を追加し、改善された濡れ表面を提供することが知られている。しかし、スズ、及び他の添加剤の追加は、構築される最終製品の強度を低下させる。さらに、溶融層は、不十分な前の層の濡れにより、走査レーザ・ビームによる隣接する溶融液滴間の合体に悩まされる。最終的な結果は、この場合も強度の低下した、寸法の不正確な物体である。物体が構築されるとき物体に外骨格を追加し、追加の安定性を提供し、たとえば寸法変動による内部応力を低減することが知られている。外骨格は、後で除去される。外骨格を除去することは、一般に厄介な工程である。
【0033】
本発明の一態様によれば、アルミニウムなど純金属を用いて物体を構築することにも適用することができる改善された3次元(3D)印刷システム及び方法が提供される。このシステム及び方法は、純アルミニウムとの使用に限定されず、合金、セラミック、及び/又は異なる材料の組合せを用いて構築するためにも使用することができることに留意されたい。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態によれば、このシステムは、記憶されたデジタル・マスク・パターンに基づいて層ごとに粉末ベッド上にマスクを印刷するデジタル・プリンタを含む。典型的には、マスク・パターンは、印刷される特定の断面での物体のネガである。本発明のいくつかの実施形態によれば、プリンタによって加えられるインクは、液体担体、たとえば油又は有機溶媒内に懸濁する断熱材料、たとえばガラス又はケイ素フリットを含む。典型的には、インクは、焼結工程中、インクが加えられる場所で粉末材料の焼結を遅らせることを可能にする。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態によれば、このシステムは、焼結前にダイ内の粉末の層を圧縮成形するためのダイ圧縮成形ステーションを含む。典型的には、圧縮成形は、粉末層の密度を高める、及び/又は空気を除去するために適用される。いくつかの例示的な実施形態では、加えられる圧縮成形強度は、粉末層の恒久的な変形をもたらす、たとえば粉末粒子を、その弾性状態を越えてその塑性状態に押圧するように定義される。任意選択で、恒久的な変形の状態をより低い圧縮成形圧力で達成することができるように、圧縮成形中に加熱が適用される。典型的には、密度、したがって物体の機械的強度が、圧縮成形によって改善される。本発明のいくつかの実施形態によれば、圧縮成形は、アルミナ層を解体し、アルミニウムを露出させ、粉末状材料のアルミニウム粒子間の直接係合を可能にする
ことによって、焼結中の結合を促進する。任意選択で、圧縮成形は、粉末層の熱伝導率を高め、より均一な焼結を可能にする。任意選択で、圧縮成形は、層間の結合を改善し、焼結後に起こり得る層分離を防止する。本発明のいくつかの実施形態によれば、層ごとのダイ圧縮成形は、3D物体を構築するための知られているSLM及びSLS工程に適用される。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態によれば、このシステムは、圧縮成形された層を焼結するための焼結ステーションを含む。本発明のいくつかの実施形態によれば、焼結は、焼結ローラ、たとえば高サーマル・マス・ローラで実施される。いくつかの例示的な実施形態では、ローラは、粉末材料の溶融温度よりわずかに高い、たとえば溶融温度より0℃〜80℃高い温度に加熱され、ローラ長の1cm当たり約20〜180ニュートン(N/cm)の圧力で層に押し付けられる。一般に、加えられる圧力は、ローラ表面と層の間の実質的に完全な接触を確保する。一般に、加えられる圧力は、層間の接着を促進する。いくつかの例示的な実施形態では、ローラの温度は、回転の速度と共に、マスクされた部分内の液体担体が実質的に蒸発する前にマスクなし部分の適切な溶融を達成することができるように定義される。典型的には、液体担体は、マスクされた部分において液体担体の蒸発が粉末材料の溶融前に起こるように、粉末材料の溶融温度より低い沸騰温度を有する。マスクなし部分には液体担体がなく、その結果、実質的にすべてのエネルギー移行が粉末材料を溶融するために使用される。これは、モデル流跡線において、マスクされた流跡線におけるアルミニウム溶融前にアルミニウム溶融を引き起こす。この時間遅延が適正に使用された場合、モデル流跡線は、凝固し前の層に結合されることになり、一方、マスクされた流跡線はそうならない。本発明のいくつかの代替実施形態では、焼結は、焼結するために層の上で掃引する垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)のアレイで達成される。本発明のいくつかの追加の代替実施形態では、焼結はローラで達成され、垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)のアレイは、層予熱のために使用される。この予熱は、焼結期間を短縮することができ、焼結ローラの潜在的な汚染を低減することができる。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態によれば、システムは、任意選択で、接触表面、たとえば焼結ローラ及び/又はダイ上の粉末層の剥がれを低減及び/又は防止するための剥がれ防止機構を含む。いくつかの例示的な実施形態では、剥がれ防止機構は、粉末層と接触表面の間に配置された箔及び/又はフィルムを含み、これは、接触表面の最初の係合解除後、粉末層との接触を維持し、次いで徐々に粉末層から分離される。典型的には、箔の存在により、接触表面上での剥がれが防止される。いくつかの例示的な実施形態では、箔が徐々に分離することもまた、箔上の粉末層の剥がれを防止及び/又は低減する。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態によれば、システムは、層を冷却するための冷却ステーションをさらに含む。典型的には、冷却は、加えられた熱が時間の経過につれてマスクされた、焼結されないエリアに貫通しない、及び/又は漏れないように、選択的焼結の直後に適用される。典型的には、冷却は、1つ又は複数のエア・ナイフで適用される。典型的には、窒素ガスが冷却に使用される。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態によれば、構築トレイは、精密ステージ上で、粉末分配ステーション、粉末延展ステーション、印刷ステーション、圧縮成形ステーション、焼結ステーション、及び冷却ステーションを含む複数のステーションのそれぞれに進められる。いくつかの例示的な実施形態では、トレイは、印刷ステーションを離れたとき方向を逆転し、トレイが粉末分配ステーションに向かう方向で戻るとき、圧縮成形、加熱焼結、及び冷却が実施される。典型的には、この往復運動は、印刷される各層について繰り返される。
【0040】
本発明の少なくとも1つの実施形態について詳細に述べる前に、本発明は、その応用に
おいて、これらの構成要素の構造及び構成、ならびに/あるいは以下の説明に示される及び/又は図面及び/もしくは例に示されている方法の詳細に必ずしも限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、様々な方法で実践又は実施することが可能である。
【0041】
次に図面を参照すると、図1は、本発明のいくつかの実施形態による例示的な3D印刷システムの概略図を示し、図2はその概略ブロック図を示す。本発明のいくつかの実施形態によれば、3D印刷システム100が、作業プラットフォーム500上で一体化される。本発明のいくつかの実施形態によれば、作業プラットフォーム500は、物体15を一度に1層ずつ印刷するために複数のステーションを通って構築トレイ200が進められる精密ステージ250を含む。典型的には、精密ステージ250はリニア・ステージ、たとえば層を構築している間、単一の軸、たとえばX軸に沿って動きを提供し、またトレイ200の高さを調整する、たとえば新しい各層が追加されるにつれてトレイ200を下降させるために垂直軸(Z軸)でも動きを提供するXZステージである。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態によれば、作業プラットフォーム500は、粉末層をトレイ200上に分配するための粉末分配ステーション10と、分配された粉末の層を延展するための粉末延展ステーション20と、マスク・パターンに従って粉末の層上にマスクを印刷するための印刷プラットフォーム・ステーション30と、焼結前に粉末の層を圧縮成形するための圧縮成形ステーション40と、圧縮成形された層を焼結するための焼結ステーション50と、焼結された層を冷却するための冷却ステーションとを含む。典型的には、印刷された各層ごとに、トレイ200がステーションのそれぞれに進み、次いですべての層が印刷されるまで工程を繰り返す。いくつかの例示的な実施形態では、トレイ200は、1方向で進められ、粉末分配ステーション10、粉末延展ステーション20、及び印刷プラットフォーム・ステーション30で停止し、次いで粉末分配ステーション10に向かって方向を逆転し、現在を層を完成させるために圧縮成形ステーション40、焼結ステーション50、及び冷却ステーション60で停止する。本発明のいくつかの実施形態によれば、コントローラ300が3D印刷システム100の動作を制御し、ステーションのそれぞれの動作を精密ステージ250上のトレイ200の位置決め及び/又は移動と調和させる。一般に、コントローラ300は、メモリ及び処理機能を含み、及び/又はそれらに関連付けられる。
【0043】
いくつかの例示的な実施形態では、精密ステージ250の経路に沿う1つ又は複数のステーションは、その経路に沿って延びるレール上で、及び/又は1つ又は複数のブリッジ、たとえば作業プラットフォーム500の上に配置されたブリッジ47によって支持される。いくつかの例示的な実施形態では、圧縮成形ステーション40は、作業プラットフォーム500の下方に配置されたピストン42を含み、これは、本明細書において下記にさらに詳細に記載されているようにトレイ200の上方に配置された平坦化表面に向かってトレイ200を上昇させるように動作される。
【0044】
典型的には、作業プラットフォーム500は、フード550で覆われる。本発明のいくつかの実施形態によれば、ガス源510が、フード550を通る入口520を含み、安全のために、たとえば製造工程中、材料の起こり得る燃焼を回避するために、フード550の下の作業エリアに不燃ガスの陽の流れを提供する。典型的には、ガス源510は窒素である。
【0045】
次に、本発明のいくつかの実施形態による粉末分配ステーションの概略ブロック図を示す図3を参照する。典型的には、粉末分配ステーション10は、粉末55を貯蔵する容器12と、粉末55の定義された量及び/又は体積を、チューブ16を通じてトレイ200上に抽出するためのポンプ14とを含む。いくつかの例示的な実施形態では、定義された
体積は、システム100及び/又はコントローラ300からのフィードバックに基づいて構築工程の間に調整される。いくつかの例示的な実施形態では、圧縮成形後の層の厚さが監視され、粉末分配ステーション10によって分配される定義された体積は、圧縮成形された層の厚さに応答して調整される。任意選択で、粉末55は、トレイ200が動いている間に分配され、その結果、粉末55は、トレイ200の長さにわたって延展される。いくつかの例示的な実施形態では、粉末分配ステーション10は、粉末アルミニウムを送達するように適合される。他の例示的な実施形態では、他の金属及び/又は合金が粉末分配ステーション10によって貯蔵及び送達される。任意選択で、容器12は、混合される複数の構成要素を含む。任意選択で、容器12は、貯蔵された内容物を混合するための機構を含む。
【0046】
次に、本発明のいくつかの実施形態による粉末延展ステーションの概略ブロック図を示す図4を参照する。典型的には、延展ステーション20は、心棒24上に回転可能に取り付けられたモータ駆動ローラ25を含む。いくつかの例示的な実施形態では、リニア・モータ22が心棒24と係合し、粉末の均一の層を延展するために往復移動する。いくつかの例示的な実施形態では、テーブル200の高さが調整される、たとえば定義された層厚を得るためにZステージで上下移動される。いくつかの例示的な実施形態では、約150μm厚、たとえば100μmから200μm厚の粉末層がローラ25で延展される。いくつかの例示的な実施形態では、圧縮成形後の層の厚さが監視され、現在の層の厚さを変えて1つ又は複数の前の層の層厚のドリフトを補償するために、テーブル200の高さが調整される。
【0047】
いくつかの例示的な実施形態では、ローラ25は、実質的にトレイ200の長さ全体にわたって延在し、粉末を延展するためにローラの1つのパスが必要とされるだけである。あるいは、ローラ25は、トレイ200の全体の長さ未満にわたって延在し、複数のパスが必要とされる。任意選択で、ローラ25は、トレイ200が動いている間動作される。任意選択で、ローラ25は、トレイ200の上方である高さに保持され、延展に必要とされるとき下降される。
【0048】
次に、本発明のいくつかの実施形態による例示的な印刷システムの概略ブロック図を示す図5を参照する。本発明のいくつかの実施形態によれば、プリント・プラットフォーム・ステーション30は、生成されたマスク・パターン・データ39に基づいてインク32を堆積させるダイレクト・インクジェット印刷ヘッド35を含む。いくつかの例示的な実施形態では、プリント・ヘッド35は静止しており、プリンタ・コントローラ37が、システム・コントローラ300と共に、トレイ200がプリント・ヘッド35の下を進むときインクを堆積させるためのタイミングを制御する。任意選択で、印刷ヘッド35は、Y軸ステージ上に取り付けられ、トレイ200に直交する方向で移動する。あるいは、トレイ200が印刷中静止しており、印刷ヘッド35は、プリント・ヘッド35を1つ又は複数の方向に移動するためにX、Y、又はXYステージによって支持される。典型的には、プリント・ヘッド35は、インクがそこを通って選択的に堆積されるノズルのアレイを含む。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態によれば、プリント・ヘッド35は、マスク及び/又は構築される物体のネガを形成する。典型的には、マスク・パターンは、典型的にはメモリ内に記憶されるマスク・データ39によって定義される。典型的には、マスク・データは、コンピュータ支援設計(CAD)ソフトウェア・プログラムなどによって生成される。任意選択で、印刷される画素の画素サイズは、50μm、たとえば50μm〜300μmの間の大きさ程度である。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態によれば、インク32は、液体担体内に懸濁する粒子を含
む。典型的には、液体担体は、油又は油性である。本発明のいくつかの実施形態によれば、ガラス及び/又はケイ素粒子及び/又はフリットは、1μm未満、たとえば500〜600nmである平均直径を有する。いくつかの例示的な実施形態では、インク溶液内のガラス・フリットの濃度は、最大50%である。典型的には、粒子は、液体担体が粉末層を貫通する間、断熱表面を提供する断熱材料から形成される。典型的には、インク32によって提供される断熱は、マスクされた部分の温度の上昇を遅らせるだけである。典型的には、ガラス・フリットは、粉末粒子より著しく小さく、たとえば、粉末粒子は、約40μmの直径を有し、一方、ガラス・フリットは、約500〜600nmの直径を有する。
【0051】
次に、本発明のいくつかの実施形態による印刷されたマスクを含む物体層の概略図を示す図6を参照する。本発明のいくつかの実施形態によれば、粉末層151は、インク32が堆積されるマスク部分327と、インクが堆積されないマスクなし部分528とを含む。典型的には、マスクなし部分は、粉末材料を含むだけであり、添加剤を含まない。マスク部分327は図6において縁部近くに示されているが、マスク部分は、層151の他の部分に現れることができることに留意されたい。
【0052】
典型的には、インク32は、マスクされた部分の上部表面上に集まるガラス・フリット322と、粉末層151を貫通する油324とを含む。典型的には、油324は、粉末層151内の粉末の溶融温度より低い蒸発温度を有する。本発明のいくつかの実施形態によれば、フリット322と油324は共に、マスクされた部分327の焼結を遅らせることを可能にする。任意選択で、フリット322は、断熱上部表面を提供し、油324は、粉末層151の内部部分を浸し、その結果、フリット322を貫通する熱が、蒸発する油324に向けて送られる。いくつかの例示的な実施形態では、焼結の持続時間及び温度は、マスクされた部分327を焼結することなしにマスクなし部分528を焼結することを可能にするように定義される。
【0053】
次に、本発明のいくつかの実施形態による、それぞれ解放状態及び圧縮状態で示される例示的なダイ圧縮成形ステーションの概略図を示す図7A及び図7Bを参照する。本発明のいくつかの実施形態によれば、粉末層が焼結前に圧縮成形される。本発明のいくつかの実施形態によれば、圧縮成形工程は各層ごとに実施されるので、圧縮成形ステーションは、層ごとにダイを生成する。
【0054】
いくつかの例示的な実施形態では、ダイ圧縮成形は、粉末層上にマスク・パターンを印刷した後実施される。あるいは、ダイ圧縮成形は、印刷前に実施され、又は印刷前にも印刷後にも実施される。本発明のいくつかの実施形態によれば、圧縮成形ステーションは、粉末層151を圧縮成形するための圧縮成形圧力を提供するように動作するピストン42を含む。本発明のいくつかの実施形態によれば、圧縮成形中、ピストン42は、作業プラットフォーム500又は精密ステージ250内の孔49を通じて上昇され、構築トレイ200をトレイ200の上方に配置されたダイ及び/又は表面45に向かって持ち上げる。
【0055】
いくつかの例示的な実施形態では、トレイ200は、ピストン42がトレイ200を上げる、及び/又は下降させるときリニア軸受46に沿って運ばれる1つ又は複数のリニア・ガイド41に固定される。任意選択で、トレイ200は、1つ又は複数の圧縮ばね47に対して持ち上げられる。いくつかの例示的な実施形態では、重力ならびにばね47は、層151を圧縮成形した後、ピストン42を下降させることを可能にする。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態によれば、粉末層を圧縮成形するために、最大100MPaの圧力が加えられる。典型的には、加えられる圧力は、空気を除去し、粉末層151にその弾性状態を越えさせることを可能にし、その結果、層の恒久的な変形が達成される。任意選択で、圧縮成形は、層151内の空気の95%から99%を除去することを可能に
する。任意選択で、圧縮成形は、約50%だけ層の厚さを減少させる。
【0057】
いくつかの例示的な実施形態では、温間ダイ圧縮成形が実施され、ダイ43の上部表面45及び/又はダイ43全体が加熱される、たとえば、圧縮成形中、加熱要素44で予熱される。典型的には、表面45及び/又はダイ43を加熱すると、層151は、より低い圧力を層に加えてその塑性状態及び/又は恒久的な変形状態に達することができる。任意選択で、上部表面45は、150℃、たとえば150℃〜300℃の温度に加熱される。一般に、圧縮成形温度と圧力の間には兼ね合いがある。圧縮成形中に温度を増大することは、より低い圧力で塑性変形に達することを可能にすることができるが、層内に堆積されたインクの望ましくない蒸発を引き起こすこともある。一方、上部表面45の温度を低減することは、より高い圧力が必要となり得るので、圧縮成形のエネルギー効率を低減させることがある。典型的には、加えられる圧力及び温度は、粉末の材料及び層151の厚さに基づいて定義される。
【0058】
いくつかの例示的な実施形態では、テーブル200は、層152の安定した温度を提供するために水冷される。任意選択で、テーブル200は、水及び/又は他の冷媒流が導入される複数の通路及び/又はチャネル205を含む。任意選択で、通路205を通る流体の温度及び流量は、テーブル200を所望の温度で、たとえば周囲温度より最大約10℃高く維持するように定義される。典型的には、この冷却機構もまた、焼結中に適用される。
【0059】
いくつかの例示的な実施形態では、たとえば、アルミニウム粉末が使用されるとき、圧縮成形は、酸化物層、たとえば粉末状粒子上のアルミナを解体するように動作する。典型的には、アルミニウムを露出させることは、粉末状材料のアルミニウム粒子間の直接係合を促進し、焼結中の粒子の結合を改善する。
【0060】
本発明のいくつかの実施形態によれば、物体の高さ、たとえば物体が構築されているときの物体の1つ又は複数の層の高さは、圧縮成形ステーションで検出、決定、及び/又は検知される。任意選択で、ダイ43内で、及び/又は表面45に対して押圧されているときのトレイ200の高さが検出される。本発明のいくつかの実施形態によれば、コントローラ300(図2)は、高さ及び/又は高さの変化を監視し、所望の高さ及び/又は高さの変化からのドリフトを補償するために層厚の調整が必要とされるとき、粉末分配ステーション及び/又はトレイ200のZステージに入力を提供する。いくつかの例示的な実施形態では、コントローラ300は、メモリ内に記憶された1つ又は複数のルックアップ・テーブルを使用し、層厚の調整を制御する。
【0061】
次に、本発明のいくつかの実施形態による、それぞれ圧縮成形状態及び圧縮成形後状態で示される圧縮成形システムのための例示的な剥がれ防止機構の概略図を示す図8A及び図8Bを参照する。本発明のいくつかの実施形態によれば、ローラ47上に支持された箔及び/又はフィルム49が、圧縮成形中、層151と上部表面45の間に配置される。任意選択で、箔は、0.1〜0.3mmの間、たとえば0.2mmの厚さを有する。任意選択で、箔は、ステンレス鋼304L又は316L箔である。典型的には、箔49は、粉末及びインク粒子が蓄積することから上部表面45を保護し、また、上部表面45の分離中、層151の実質的な剥がれを防止する。いくつかの例示的な実施形態では、箔49は、圧縮成形前、表面45上で箔49を延伸するようにローラ47で巻かれ、次いでトレイ200が下降されるにつれて、箔49は、部分的に解かれる。解かれることによる箔49の余分な長さが、層151が下降されるにつれて箔49が徐々に層151から分離することを可能にする。任意選択で、箔49の1つ又は2つの反対側の縁部を引くことによってもたらされる分離が、全表面の分離ではなく線分離による分離を可能にする。本発明者は、箔のこの徐々に進む分離が、箔49上の層151からの材料の剥がれ、及び/又は損失を
回避することを見出した。
【0062】
次に、本発明のいくつかの実施形態による圧縮成形システムのためのクリーニング機構の概略図である図9を参照する。本発明のいくつかの実施形態によれば、圧縮成形ステーション40は、箔49(又は箔49が使用されない場合、表面45)をクリーニングするためのクリーニング・ユニット411を含む。いくつかの例示的な実施形態では、クリーニング・ユニット411は、箔49の上を掃引する回転ブラシ414を含む。任意選択で、ブラシ414は、収集フード415によって部分的に覆われ、ブラシ414によって除去された粉末は、吸引ポート416で除去される。いくつかの例示的な実施形態では、クリーニング・ユニットは、作業プラットフォーム及び/又はフレーム500上に取り付けられたレール417に沿って駆動される。
【0063】
次に、本発明のいくつかの実施形態による例示的な焼結ステーションの概略図である図10を参照する。本発明のいくつかの実施形態によれば、物体15は、焼結ローラ519で一度に1層ずつ焼結される。本発明のいくつかの実施形態によれば、焼結ローラ519は、高サーマル・マス・ローラである。任意選択で、焼結ローラ519は、硬質研磨鋼から形成される。いくつかの例示的な実施形態では、焼結ローラ519は、粉末材料の溶融温度よりわずかに高い、たとえば溶融温度より0℃〜80℃高い温度に加熱され、ローラ長の1cm当たり約20〜180ニュートン(N/cm)の圧力で層に押し付けられる。任意選択で、焼結ローラ519は、トレイ200がステージ250と共に進むにつれて層151の上で転動する。本発明のいくつかの実施形態によれば、インク32で層151上に加えられたマスクは、一時的な断熱材として働き、その結果、焼結ローラ519が層151の上で転動するにつれて、インク32を含まない層151の選択された部分だけが焼結される。典型的には、マスクされた部分、たとえば部分327(図6)内の粉末は元の状態のままであり、任意選択で、吸収された油324が焼結の結果として蒸発する。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態によれば、焼結ローラ519の直径は、トレイ200の長さ及び/又は焼結ローラ519が層151上で転動することを必要とされる長さより焼結ローラ519の円周が大きくなるように定義される。いくつかの例示的な実施形態では、ローラは、電気ヒータ521、たとえばフィンガ・タイプ電気ヒータのアレイを使用して加熱される。典型的には、焼結ローラ519は、600℃〜800℃の間の均一な加熱表面を提供する。典型的には、層151との接触による焼結ローラ519の潜在的な局所冷却が焼結工程に悪影響を及ぼさないように、焼結ローラ519は、1回転よりはるかに少なく層151の上で転動する。さらに、焼結ローラ519上に蓄積する屑は、層151上に再導入されない。さらに、加熱フィンガを支持する電気ケーブルは、一般に撚り線ではない。いくつかの例示的な実施形態では、焼結ローラ519は、ローラ519の心棒に接続されたアーム518上で押下される1つ又は複数のピストン520で層151上に押下される。
【0065】
任意選択で、複数の通路205は、焼結中、テーブル200及びテーブル200に近接する層を所望の温度で、たとえば周囲温度より最大約10℃高く維持することを可能にする。焼結工程中、熱は、一般に上面(高温に保持されている)からテーブル200(比較的低い温度に保持されている)に向かって広がり、流体は、一般にその熱を吸収する。典型的には、通路205を通る流体流は循環性であり、流体を冷却する熱交換ユニットを通過してから通路205に再進入する。本発明のいくつかの実施形態によれば、ローラ519は、焼結後、たとえば各層が焼結された後で、クリーニングされる。いくつかの例示的な実施形態では、ブラシ514がローラ519と擦れ合う。任意選択で、ブラシ514は、収集フード515によって部分的に覆われ、ブラシ514によって除去された粒子は、吸引ポート516で除去される。任意選択で、クリーニング中のローラ519の回転は、ローラ519と接触するアーム24を移動するピストン25によって開始される。
【0066】
いくつかの例示的な実施形態では、50μmの圧縮成形後の層厚及び100μmの圧縮成形後のマスク厚について、完全な焼結のために必要とされる時間は、約0.2ミリ秒とすることができる。そのような例示的な場合、ローラ519の線速度は、1m/秒とすることができ、ローラ回転速度は、20rad/秒とすることができる。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態によれば、層151及び/又は物体15は、焼結後、直ちに冷却ステーション60内で冷却される。任意選択で、冷却ステーション60は、冷却を焼結直後に適用することができるように焼結ステーションに実質的に近接して配置される。本発明のいくつかの実施形態によれば、あるパターンの窒素エア・ナイフ65を使用し、層151及び/又は物体15を冷却するためのガスのジェット噴流をもたらす。
【0068】
次に、本発明のいくつかの実施形態による別の例示的な焼結ステーションの概略図である図11を参照する。本発明のいくつかの実施形態によれば、箔59がローラ519と層151の間の界面を提供する。いくつかの例示的な実施形態では、2次ローラ57が、箔59をある長さにわたって延伸し、一方、焼結ローラ519は、層151上で押し下げ、層151に沿って転動する。典型的には、箔59と圧縮成形後の層との間の接触点は、ローラ519が進む間、変動する。典型的には、焼結ローラ519と2次ローラ57は、箔59の上で共に回転する。任意選択で、2次ローラ57による箔の低い持ち上げは、層151との間の滑らかな分離をもたらし、これは、箔59上での層151からの粒子の剥がれ及び/又は固着を防止することができる。任意選択で、箔59は、箔59が張力で保持されることを可能にするばねマウンティング53でフレームによって支持される。
【0069】
本発明のいくつかの実施形態によれば、焼結ステーションは、本明細書における上記のクリーニング・ユニット411と同様に動作するクリーニング・ユニット511を含む。典型的には、クリーニング・ユニットは、収集フード515によって部分的に覆われるブラシ514を含む。典型的には、ブラシ514によって収集された屑は、吸引ポート516を介した吸引で除去される。
【0070】
典型的には、マスクは、焼結工程において遅延を生成するが、あらゆる状況下で焼結を妨げない。現在の層及び/又は前の層のマスクされたエリア内で自然焼結の可能性がある。マスクされたエリアは、後続の層のための支持を提供し、下側の層内のマスクされたエリアは、マスクなしエリアによって覆われたとき、自然焼結を受けることがある。本発明のいくつかの実施形態によれば、断熱被覆、たとえば閾値厚を超えるフリットを適用することは、自然焼結を防止する助けとなり得る。本発明者は、粉末層を閾値厚未満に維持することもまた、マスク被覆下での自然焼結を防止する助けとなり得ることをも見出した。いくつかの例示的な実施形態では、フリット層の厚さと粉末層の厚さは共に、自然焼結を回避するために制御される。
【0071】
次に、本発明のいくつかの実施形態による3D印刷によって物体を構築するための例示的な方法の概略流れ図である図12を参照する。本発明のいくつかの実施形態によれば、この方法は、粉末層を構築トレイ上に分配する工程(ブロック805)と、粉末の均一な層を得るために粉末層を延展する工程(ブロック810)とを含む。本発明のいくつかの実施形態によれば、物体の境界を画定するマスクが粉末層の上に印刷される(ブロック815)。本発明のいくつかの実施形態によれば、印刷工程で使用されるインクは、後続の焼結工程中、印刷されたエリアを焼結から除外することを可能にする材料から形成される。本発明のいくつかの実施形態によれば、焼結前、焼結のための層を準備するために、印刷された層が圧縮成形される(ブロック820)。典型的には、圧縮成形は、焼結中の熱伝導を改善するために、印刷された層から空気を除去することを可能にする。任意選択で、また、圧縮成形は、一般に金属粉末、たとえばアルミニウム粉末の粒子上に形成される
酸化物の殻を破ることを可能にする。典型的には、粉末状金属の層を通じた熱伝導は、酸化物の殻を破った後、より均一になる。本発明のいくつかの実施形態によれば、焼結(ブロック825)が圧縮成形後の層上で実施される。任意選択で、焼結は、焼結ローラで実施される。本発明のいくつかの実施形態によれば、層は、焼結後、直ちに冷却される(ブロック830)。典型的には、冷却は、焼結中に蓄積される熱が層のマスクされたエリア内に広がるのを防止する。本発明のいくつかの実施形態によれば、ブロック805〜830に記載の方法は、印刷される各層ごとに繰り返される。一般に、すべての層が印刷された後、最終的な物体を粉末ベッドから除去することができる。一般に、追加の仕上げ後手順は必要とされない。
【0072】
「comprises(からなる、含む)」「comprising(からなる、含む)」「includes(含む)」「including(含む)」「having(有する)」という用語、及びそれらの同語源の語は、「それだけには限らないが含む」ことを意味する。
【0073】
「consisting of」という用語は、「含み、それに限定される」ことを意味する。
「consisting essentially of」という用語は、組成、方法、又は構造が、追加の成分、ステップ、及び/又は部分を含み得るが、それは、それらの追加の成分、ステップ、及び/又は部分が、特許請求されている組成、方法、又は構造の基本的特徴及び新規の特徴を実質的に変えない場合だけであることを意味する。
【0074】
わかりやすいように別々の実施形態の状況で記載されている本発明のいくつかの特徴はまた、単一の実施形態に組み合わされて提供され得ることを理解されたい。逆に、話を簡単にするために単一の実施形態の状況で記載されている本発明の様々な特徴はまた、別々に、又は任意の好適なサブコンビネーションで、又は本発明の任意の他の記載の実施形態において好適なように提供され得る。様々な実施形態の状況で記載されているいくつかの特徴は、それらの要素がなければその実施形態が動作不能でない限り、実施形態の本質的な特徴と考えるべきでない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10
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図12