(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記イベントは、前記少なくとも1台の風力発電装置の予め設定した停止中の記録開始指示、起動、停止、併入、解列、状態の変化の検知、またはトリップの少なくとも一つである
ことを特徴とする請求項2に記載の風力発電施設のデータ収集システム。
前記代表データ記憶部は、前記イベントの発生毎に、前記代表データ選択部により選択された前記代表データとともに、前記制御部の内部時計により取得される前記イベントの発生時刻を記憶するように構成された
ことを特徴とする請求項2乃至5の何れか一項に記載の風力発電施設のデータ収集システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、通常、風車の状態監視は、風車の状態等を示す時系列データを、所定のサンプリングレートで所定期間にわたって連続的に取得及び蓄積し、蓄積されたデータを解析することにより行われる。このように、風車の状態監視において所定のサンプリングレートで連続して取得される時系列データを用いる場合、処理対象のデータ量が非常に多くなる。よって、蓄積されたデータを解析用の計算機等へ送信するための通信負荷が大きくなり、あるいは、状態監視のためのデータ解析が複雑となる。
また、上述のように所定のサンプリングレートで所定期間にわたって連続的に取得及び蓄積された時系列データのうちすべてのデータを解析対象とするのではなく、蓄積されたデータから風車の状態監視に有用なデータ(例えば、所定期間におけるデータの最小値や最大値)を選別し、このデータのみを解析に用いることがある。このとき、上述のサンプリング周期が比較的長い場合には、取得及び蓄積されるデータが粗くなるため、選別されたデータは、風力発電装置の状態又は運転履歴を的確に表すものではない場合がある。
【0006】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、風力発電装置の状態又は運転履歴を的確に表すデータを収集可能であるとともに、通信負荷の低減及びデータ解析の簡素化が可能な風力発電施設のデータ収集システム及びデータ収集方法並びに風力発電施設を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る風力発電施設のデータ収集システムは、
少なくとも1台の風力発電装置を含む風力発電施設のデータ収集システムであって、
前記少なくとも1台の風力発電装置をそれぞれ制御するための制御部と、前記少なくとも1台の風力発電装置の状態又は運転履歴を示す1以上のパラメータに関する代表データを記憶するための代表データ記憶部と、前記1以上のパラメータに関するデータを前記制御部の演算制御周期毎にそれぞれ取得し、取得した前記1以上のパラメータの前記データを該パラメータの前記代表データとして前記代表データ記憶部に記憶すべきか否かを前記演算周期ごとに判断するように構成された代表データ選択部と、を含む少なくとも1つの風車コントローラと、
各々の前記風車コントローラの前記代表データ記憶部に記憶された各々の前記風力発電装置の状態に関する前記1以上のパラメータの前記代表データを各々の前記風車コントローラから収集するように構成されたデータ収集部と、を備える。
【0008】
風車コントローラは、風力発電装置の制御を司る部分であるため、風力発電装置の状態又は運転履歴を示すパラメータを制御演算周期ごとに所持している。
そこで、上記(1)の構成に係る風車コントローラでは、制御部の制御演算周期ごとにこうしたパラメータのデータを取得し、当該データを代表データとして記憶すべきか否かを代表データ選択部において判断するようになっている。そして、風車コントローラの代表データ記憶部には、代表データ選択部によって代表データとして記憶すべきであると判断されたデータが記憶される。こうして代表データ記憶部に記憶された代表データ(例えば、所定期間におけるデータの最小値や最大値)は、制御演算周期ごとの細やかなデータから得たものであり、風力発電装置の状態又は運転履歴を的確に表すものであるから、風力発電装置の監視のために有用である。
また、データ収集部により、代表データ記憶部から代表データを収集するようにしたので、制御演算周期ごとにデータを風車コントローラから直接取り出す場合に比べて、通信負荷を低減できるとともに、その後のデータ解析を容易に行うことができる。
よって、上記(1)の構成によれば、上述のようにして収集された代表データを用いることにより、通信負荷を低減しながら、容易なデータ解析により風力発電装置の状態監視を適切に行うことができる。
【0009】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記代表データ選択部は、前記少なくとも1台の風力発電装置に関するイベントが発生したときに、前記イベントの発生時刻における前記データ、または、該発生時刻の前後を含む期間における前記データのうち規定条件を満たすデータを前記代表データとして前記代表データ記憶部に記憶すべきであると判断するように構成される。
【0010】
風力発電装置に関するイベントの発生は、風車コントローラの制御演算周期に関連している。よって、上記(2)の構成によれば、イベントの発生時刻を基準として代表データを選択するので、過去のイベント発生時、又は、他の風車でのイベント発生時との間で、代表データの選択条件を精度よく揃えることができる。よって、風力発電施設の状態監視をより適切に行うことができる。
【0011】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)の構成において、
前記イベントは、前記少なくとも1台の風力発電装置の予め設定した停止中の記録開始指示、起動、停止、併入、解列、状態の変化の検知、またはトリップの少なくとも一つである。
【0012】
上記(3)の構成によれば、風力発電装置において所定のイベントが発生したときの該風力発電装置の状態を適切に把握することができる。これにより、例えば、風力発電装置の停止中や起動中に構成機器のヘルスチェックを行ったり、風力発電装置に異常事象が生じた場合等にその原因や影響を調査したりすることができる。
【0013】
(4)幾つかの実施形態では、上記(2)の構成において、
前記イベントは、前記少なくとも1台の風力発電装置に作用する荷重が規定値を超えたことである。
【0014】
上記(4)の構成によれば、風力発電装置に作用する荷重が規定値を超えたときの該風力発電装置の状態を適切に把握することができる。
【0015】
(5)幾つかの実施形態では、上記(2)の構成において、
前記イベントは、前記少なくとも1台の風力発電装置が接続される電力系統の系統電圧の変動量が規定値を超えたことである。
【0016】
上記(5)の構成によれば、風力発電装置が接続される電力系統の系統電圧の変動量が規定値を超えたときの該風力発電装置の状態を適切に把握することができる。これにより、例えば、電力系統において瞬時電圧低下が発生したときに、電力系統の状態や、LVRT機能による風力発電装置の運転継続が行われたか否か、等を把握することができる。
【0017】
(6)幾つかの実施形態では、上記(2)乃至(5)の何れかの構成において、
前記代表データ記憶部は、前記イベントの発生毎に、前記代表データ選択部により選択された前記代表データとともに、前記制御部の内部時計により取得される前記イベントの発生時刻を記憶するように構成される。
【0018】
上記(6)の構成によれば、制御部の内部時計でイベントの発生時刻を取得することにより、風車コントローラの制御演算周期に関連するイベントの発生の時刻を、制御部の内部時計で取得するので、正確なイベント発生時刻を取得及び記憶することができる。これにより、過去のイベント発生時、又は、他の風車でのイベント発生時との間で、代表データの選択条件をより精度よく揃えることができる。よって、風力発電施設の状態監視をより適切に行うことができる。
【0019】
(7)幾つかの実施形態では、上記(2)乃至(6)の構成において、
前記データ収集システムは、
前記データ収集部によって収集された前記代表データに基づいて、前記風力発電装置の状態監視を行うように構成された状態監視部をさらに備え、
前記代表データ記憶部は、前記イベントの発生毎に、前記代表データ選択部により選択された前記代表データを記憶するように構成され、
前記データ収集部は、前記代表データ記憶部に前記イベントの発生毎に記憶された複数の前記代表データを収集するように構成され、
前記状態監視部は、前記複数の前記代表データを比較することにより、前記少なくとも1台の風力発電装置の異常を検知するように構成される。
【0020】
上記(7)の構成によれば、風力発電装置における過去の複数回のイベントについて、イベントの発生毎に選択及び記憶された代表データを比較するので、簡素なデータ解析により各イベント発生毎の風力発電装置の状態を的確に把握して、風力発電装置の異常を検知することができる。
【0021】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(7)の構成において、
前記データ収集システムは、
前記データ収集部によって収集された前記代表データに基づいて、前記風力発電装置の状態監視を行うように構成された状態監視部をさらに備え、
前記風力発電施設は複数の風力発電装置を含み、
前記データ収集部は、前記複数の風力発電装置の各々の前記代表データ記憶部に記憶された前記代表データを収集するように構成され、
前記状態監視部は、前記複数の風力発電装置についての前記代表データを比較することにより、前記少なくとも1台の風力発電装置の異常を検知するように構成される。
【0022】
上記(8)の構成によれば、複数の風力発電装置において選択及び記憶された代表データを比較するので、簡素なデータ解析により、複数の風力発電装置の各々の状態を的確に把握して、風力発電装置の異常を検知することができる。
【0023】
(9)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(8)の何れかの構成において、
前記データ収集システムは、
前記少なくとも1つの風車コントローラが接続されるローカルネットワークをさらに備え、
前記ローカルネットワークに接続された、前記データ収集部としての計算機が、前記ローカルネットワークを介して各々の前記風車コントローラから前記代表データを収集するように構成される。
【0024】
上記(9)の構成によれば、ローカルネットワークに接続された計算機が、該ネットワークを介して各風車コントローラから代表データを収集する。よって風力発電装置の台数が多い場合であっても、各風力発電装置の代表データを容易に収集することができる。
【0025】
(10)幾つかの実施形態では、上記(9)の構成において、
前記データ収集システムは、
前記データ収集部によって収集された前記代表データに基づいて、前記風力発電装置の状態監視を行うように構成された状態監視部をさらに備え、
前記ローカルネットワークは、インターネットを介して前記状態監視部と接続されており、
前記データ収集部は、各々の前記風車コントローラから収集した前記代表データを、前記インターネットを介して前記状態監視部に送信するように構成される。
【0026】
上記(10)の構成によれば、収集された代表データはインターネットを介して状態監視部に送信されるので、風力発電施設から遠隔の場所においても、容易に風力発電施設の状態監視を行うことができる。
【0027】
(11)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(10)の何れかの構成において、
前記データ収集システムは、
前記少なくとも1台の風力発電装置の運転制御又は状態監視を行うための監視制御部をさらに備え、
前記監視制御部は、前記制御部の制御演算周期よりも長い周期で前記少なくとも1台の風力発電装置からの監視制御データを受け取るように構成される。
【0028】
上記(11)の構成によれば、風車コントローラの制御演算周期で取得されたデータを用いた風力発電装置の状態監視に加え、上記制御演算周期よりも長い周期で取得される監視制御データを用いた監視制御を行う。よって、上述の監視制御データを用いることにより、風力発電装置の状態等を示すデータに関して、より長期にわたる経時的変化を把握することができ、一時点でのデータである代表データを用いた状態把握とは異なる観点での状態監視が可能となり、より詳細に風力発電装置の状態監視を行うことができる。
【0029】
(12)本発明の少なくとも一実施形態に係る風力発電施設は、
少なくとも1台の風力発電装置と、
前記少なくとも1台の風力発電装置の状態又は運転履歴を示す1以上のパラメータに関する代表データを収集するように構成された上記(1)乃至(11)の何れか一項に記載のデータ収集システムと、
を備える。
【0030】
上記(12)の構成に係る風車コントローラでは、制御部の制御演算周期ごとに風力発電装置の状態又は運転履歴を示すパラメータのデータを取得し、当該データを代表データとして記憶すべきか否かを代表データ選択部において判断するようになっている。そして、風車コントローラの代表データ記憶部には、代表データ選択部によって代表データとして記憶すべきであると判断されたデータが記憶される。こうして代表データ記憶部に記憶された代表データ(例えば、所定期間におけるデータの最小値や最大値)は、制御演算周期ごとの細やかなデータから得たものであり、風力発電装置の状態又は運転履歴を的確に表すものであるから、風力発電装置の監視のために有用である。
また、データ収集部により、代表データ記憶部から代表データを収集するようにしたので、制御演算周期ごとデータを風車コントローラから直接取り出す場合に比べて、通信負荷を低減できるとともに、その後のデータ解析を容易に行うことができる。
よって、上記(12)の構成によれば、上述のようにして収集された代表データを用いることにより、通信負荷を低減しながら、容易なデータ解析により風力発電装置の状態監視を適切に行うことができる。
【0031】
(13)本発明の少なくとも一実施形態に係る風力発電施設のデータ収集方法は、
少なくとも1台の風力発電装置を含む風力発電施設のデータ収集方法であって、
前記少なくとも1台の風力発電装置は、該風力発電装置をそれぞれ制御するための制御部を含む風車コントローラを含み、
前記風車コントローラにより、前記少なくとも1台の風力発電装置の状態又は運転履歴を示す1以上のパラメータに関するデータを前記制御部の演算制御周期毎にそれぞれ取得し、取得した前記1以上のパラメータの前記データを該パラメータの代表データとして記憶すべきか否かを前記制御演算周期毎に判断する代表データ選択ステップと、
前記風車コントローラにより、前記代表データ選択ステップで記憶すべきと判断された前記代表データを記憶する代表データ記憶ステップと、
前記代表データ記憶ステップにおいて記憶された各々の前記風力発電装置の状態に関する前記1以上のパラメータの前記代表データを各々の前記風車コントローラから収集するデータ収集ステップと、
を備える。
【0032】
そこで、上記(13)の方法では、風車コントローラにより、制御部の制御演算周期ごとに風力発電装置の状態又は運転履歴を示すパラメータのデータを取得し、当該データを代表データとして記憶すべきか否かを判断するようになっている。そして、風車コントローラは、代表データとして記憶すべきであると判断されたデータを記憶する。こうして風車コントローラに記憶された代表データ(例えば、所定期間におけるデータの最小値や最大値)は、制御演算周期ごとの細やかなデータから得たものであり、風力発電装置の状態又は運転履歴を的確に表すものであるから、風力発電装置の監視のために有用である。
また、上記(13)の方法では、風車コントローラにより記憶された代表データを収集するので、制御演算周期ごとデータを風車コントローラから直接取り出す場合に比べて、通信負荷を低減できるとともに、その後のデータ解析を容易に行うことができる。
よって、上記(13)の方法によれば、上述のようにして収集された代表データを用いることにより、通信負荷を低減しながら、容易なデータ解析により風力発電装置の状態監視を適切に行うことができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、風力発電装置の状態又は運転履歴を的確に表すデータを収集可能であるとともに、通信負荷の低減及びデータ解析の簡素化が可能な風力発電施設のデータ収集システム及びデータ収集方法並びに風力発電施設が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0036】
図1は、幾つかの実施形態に係る風力発電施設に含まれる風力発電装置の構成の概略を示す図である。
図1に示すように、風力発電装置100は、タワー2と、タワー2の上部に設けられ、タワー2に支持されるナセル4と、風車ロータ6と、風車ロータ6の回転エネルギーによって駆動されるように構成された発電機8と、を有する。風車ロータ6は、ロータハブ5と、ロータハブ5に取り付けられたブレード7と、を有し、ナセル4に回転自在に支持される。
【0037】
図1に示す風力発電装置100では、風車ロータ6の回転エネルギーは、ドライブトレイン10を介して発電機8に伝えられるようになっている。
図1に示す風力発電装置100のドライブトレイン10は、風車ロータ6のロータハブ5に接続される主軸12と、主軸12を回転自在に支持する主軸受14と、トランスミッション16と、を含む。
【0038】
なお、主軸12を含む種々の機器は、水上又は地上に立設されたタワー2の上に設置されたナセル4に収納され、ナセル4のナセルカバー4Bによって覆われていてもよい。
また、タワー2は、ヨー旋回座軸受15を介してナセル4のナセル台板4Aを支持していてもよい。
また、
図1に示す風力発電装置100において、主軸12は、一対の主軸受14(14A,14B)によってナセル4に支持される。一対の主軸受14(14A,14B)は、それぞれ、軸受箱13(13A,13B)に収容されていてもよい。
【0039】
図1に示す風力発電装置100のトランスミッション16は、油圧ポンプ18と、油圧モータ20と、油圧ポンプと油圧モータとを接続する高圧ライン22及び低圧ライン24と、を含む油圧トランスミッションである。油圧ポンプ18は、風車ロータ6の回転エネルギーによって駆動されるように構成される。油圧モータ20は、油圧ポンプ18で生成された圧油によって駆動されて、発電機シャフト9を介して発電機8に機械的エネルギーを入力するように構成される。高圧ライン22は油圧ポンプ18の吐出側と油圧モータ20の吸込側とを接続するようになっており、低圧ライン24は油圧モータ20の吐出側と油圧ポンプ18の吸込側とを接続するようになっている。
【0040】
風力発電装置100は、トランスミッション16として、主軸12の回転を増速して発電機シャフト9に伝えるように構成されたギア式の増速機を有していてもよい。
あるいは、風力発電装置100は、ドライブトレインを介さずに主軸12の回転により発電機8を駆動するダイレクトドライブ型の風力発電装置であってもよい。
【0041】
風力発電装置100には、該風力発電装置100を制御するための風車コントローラ101が設けられている。
また、風力発電装置100には、各種センサ90が設けられている。センサ90は、ナセル外部の風速を計測するための風速計、軸受の振動を計測するための振動センサ、軸受や各種機器の温度を計測するための温度センサ、油圧機器の所定部位の圧力を計測するための圧力センサ、ブレード7に作用する荷重を計測するための荷重センサ、又は、発電機巻線に流れる電流を計測するための電流計等を含んでいてもよい。
【0042】
図2は、一実施形態に係る風力発電施設の全体構成を示す図である。
図2に示すように、風力発電施設1は、少なくとも1台の風力発電装置100と、データ収集システム200と、を備える。データ収集システム200は、各風力発電装置100に設けられた風車コントローラ101(
図1及び
図3参照)と、データ収集部42とを含み、各風力発電装置100の状態又は運転履歴を示す1以上のパラメータに関する代表データRDを収集するように構成されている。代表データRDについては後で詳述するが、該代表データRDは、例えば、風力発電装置100の状態監視に用いることができる。
【0043】
風力発電施設1において、少なくとも1台の風力発電装置100は、ウィンドファーム30を構成していてもよく、風力発電施設1は、複数のウィンドファーム30を含んでいてもよい。
図2に示す例示的な実施形態では、風力発電施設1は2つのウィンドファーム30(ウィンドファームA及びウィンドファームB)を含み、各ウィンドファーム30には、それぞれ、複数の風力発電装置100が属している。そして、風力発電施設1のデータ収集システム200は、各ウィンドファーム30に属する複数の風力発電装置100の各々に関する前述の代表データRDを、収集するようになっていてもよい。
【0044】
各ウィンドファーム30には、LAN(ローカルエリアネットワーク)が設けられており、ウィンドファーム30を構成する機器は、当該LANに接続されている。
図2に示すように、各ウィンドファーム30のLANは、風力発電装置100の各々に設けられた風車コントローラ101が接続される風車ネットワーク34と、データ収集部42が接続されるデータ収集ネットワーク36と、を含んでいてもよい。
図2に示す実施形態では、風車ネットワーク34とデータ収集ネットワーク36とは、スイッチ38(ネットワーク機器)を介して接続されている。すなわち、データ収集部42は、スイッチ38を介して風車ネットワーク34に接続されており、該風車ネットワーク34を介して、各風車コントローラ101から上述の代表データRDを収集するようになっている。
【0045】
なお、データ収集部42は、例えばパーソナルコンピュータ等の計算機によって構成されていてもよい。また、
図2に示すように、データ収集部42は、ウィンドファーム30ごとに設けられていてもよい。
【0046】
データ収集システム200は、風力発電装置100の状態監視を行うための状態監視部50をさらに備えていてもよい。状態監視部50は、データ収集部42によって収集された代表データRDに基づいて、風力発電装置100の状態監視を行うように構成されていてもよい。
【0047】
図2に示す例示的な実施形態では、状態監視部50は、データ蓄積部54と、データ分析部52と、を含む。データ分析部52は、例えばパーソナルコンピュータ等の計算機によって構成されていてもよい。データ蓄積部54は、データを蓄積可能なストレージ装置54aを含んでいてもよい。
【0048】
また、
図2に示す例示的な実施形態では、状態監視部50は、状態監視ネットワーク(LAN)56を含み、データ蓄積部54及びデータ分析部52は、それぞれ、状態監視ネットワーク56に接続されている。そして、状態監視ネットワーク56は、インターネット130を介して、各ウィンドファーム30のLANと接続されている。より具体的には、状態監視ネットワーク56及びウィンドファーム30のデータ収集ネットワーク36は、それぞれ、ルータ58,40を介してインターネット130に接続されている。
したがって、ウィンドファーム30のデータ収集部42で収集された各風力発電装置100の代表データRDは、データ収集部42からインターネット130を介して状態監視部50に送信可能となっている。
【0049】
また、
図2に示すように、データ収集システム200は、風力発電装置100の運転制御又は状態監視を行うための監視制御部60をさらに備えていてもよい。
監視制御部60は、例えば、風力発電装置100の運転状況を示すデータを収集して制御に用いるSCADA(Supervisory Control And Data Acquisition)や、風力発電装置100の状態を監視するための状態モニタシステム(CMS:Condition Monitoring System)等を含んでいてもよい。
【0050】
図2に示す例示的な実施形態では、データ収集システム200は、監視制御部60として、風力発電装置100の運転状況を示すデータを収集して制御を行うためのSCADAサーバを含む。また、
図2に示すSCADAサーバ(監視制御部60)は、収集したデータを蓄積するための、ストレージ装置60aを含んでいてもよい。
また、
図2に示すように、監視制御部60は、風力発電施設1を構成するウィンドファーム30ごとに設けられていてもよい。
【0051】
図3は、一実施形態に係るデータ収集システム200の物理的構成を示す図であり、
図4は、
図3に示すデータ収集システム200の機能的構成及び処理の流れを示す図である。
なお、
図3及び
図4では、
図2に示したネットワーク構成装置(各LAN34,36,56、インターネット130、及びルータ40,58やスイッチ38等のネットワーク機器等)の図示を省略している。
【0052】
上述したように、データ収集システム200は、各風力発電装置100に設けられた風車コントローラ101と、データ収集部42とを含む。
【0053】
風車コントローラ101は、例えば
図3に示すように、CPU(中央演算処理装置)102と、I/Oインターフェース104と、通信インターフェース106と、記憶装置108と、を含み、これらはバス105によって接続され、該バス105を介して相互に通信可能になっている。
【0054】
CPU102は、種々のセンサ90(例えば、荷重センサ、振動センサ、温度センサ、圧力センサ、電流計等)から受け取られる情報を処理するように構成される。
【0055】
記憶装置108は、CPU102によって処理される情報や命令を格納及び転送するために用いられる。また、記憶装置108は、センサ90から受け取った種々のデータを格納するために用いられる。記憶装置108は、揮発性のRAM(random access memory)及び/又は不揮発性のRAM(NVRAM;non−volatile RAM)を含んでいてもよい。
【0056】
I/Oインターフェース104は、風車コントローラ101と種々のセンサ90を含む各種外部機器との間の接続を可能とするインターフェースである。I/Oインターフェース104は、例えば、センサ90から受け取ったアナログ信号を、CPU102が処理可能なデジタル信号に変換する機能を有していてもよい。
【0057】
通信インターフェース106は、風車コントローラ101と、該風車コントローラ101が接続されるネットワークとの間の通信を可能とするインターフェースである。例えば、記憶装置108に記憶されたデータをネットワークを介して他の装置(例えばデータ収集部42)に送信する場合、該データは、通信インターフェース106を介して当該他の装置に送信されるようになっている。
【0058】
なお、上述したように、風車コントローラ101は、各風力発電装置100ごとに設けられているが、
図3には、ウィンドファームAに含まれる複数の風車コントローラ101のうち、1つの風車コントローラ101についてのみ、CPU102、I/Oインターフェース104、通信インターフェース106及びバス105を含む具体的構成を示している。そして、他の風車コントローラ101については、図の簡略化のため、記憶装置108のみ示し、他の要素については図示を省略している。また、
図4には、各風力発電装置100ごとに設けられた風車コントローラ101のうち1つの風車コントローラ101のみが図示されており、他の風車コントローラ101については図示を省略している。
【0059】
図4に示すように、風車コントローラ101は、風力発電装置100を制御するための制御部110と、代表データ選択部112と、代表データ記憶部113と、を含む。
【0060】
制御部110は、制御演算周期毎に、風力発電装置100の制御(例えば、翼ピッチ角、ヨー角、発電機回転数などの制御)のための演算を行い、制御演算の結果に基づいて、風力発電装置100の各部(例えば、ピッチアクチュエータ、ヨーモータ、又は、油圧トランスミッション等)に制御信号を送るようになっている。
すなわち、風車コントローラ101は、風力発電装置100の制御を司る部分であるため、風力発電装置100の状態又は運転履歴を示すパラメータを制御演算周期ごとに所持している。
【0061】
代表データ選択部112は、風力発電装置100の状態又は運転履歴を示す1以上のパラメータに関するデータを制御部110の制御演算周期毎にそれぞれ取得し、取得した前記データを該パラメータの代表データRDとして、代表データ記憶部113に記憶すべきか否かを、制御部110の制御演算周期ごとに判断するように構成されている。
代表データ記憶部113は、代表データ選択部112によって記憶すべきであると判断されたデータを、上述のパラメータの代表データRDとして記憶するように構成されている。
【0062】
制御部110及び代表データ選択部112(
図4参照)は、例えば、CPU102、I/Oインターフェース104、記憶装置108(
図3参照)等により構成されていてもよい。
また、代表データ記憶部113(
図4参照)は、記憶装置108(
図3参照)により構成されていてもよい。代表データ記憶部113として、NVRAMを用いてもよい。
【0063】
幾つかの実施形態では、代表データ選択部112は、風力発電装置100の運転に関するイベントが発生したときに、該イベントの発生時刻における前記データ、または、該発生時刻の前後を含む期間における前記データのうち規定条件を満たすデータを代表データRDとして代表データ記憶部113に記憶すべきであると判断するように構成されている。
風力発電装置100の運転に関するイベントの発生は、風車コントローラ101の制御演算周期に関連しているので、イベントの発生時刻を基準として代表データRDを選択することにより、例えば、過去のイベント発生時、又は、他の風力発電装置100でのイベント発生時との間で、代表データRDの選択条件を精度よく揃えることができる。
【0064】
例えば、一実施形態では、代表データ選択部112は、風力発電装置100の起動及び該起動後の風力発電装置100の停止をイベントとして、該風力発電装置100の起動から停止までの間(すなわち、風力発電装置100の一続きの運転期間)におけるデータを、代表データRDとして記憶すべきか否かの判断対象とするように構成されていてもよい。また、代表データ選択部112は、代表データRDとして、例えば、前述の運転期間中に制御演算周期毎に取得された、風力発電装置100の状態又は運転履歴を示す1以上のパラメータに関するデータ(例えば、ブレード7に作用する荷重や、油圧機器における所定部位の圧力等)のうち最大値、又は最小値を、代表データRDとして代表データ記憶部113に記憶すべきであると判断するようになっていてもよい。
なお、ブレード7に作用する荷重は、ブレード7に取り付けられた荷重センサ90により取得されるようになっていてもよい。また、油圧機器における所定部位の圧力は、圧力センサによって取得されるようになっていてもよい。
【0065】
このようにして代表データ選択部112により、代表データRDとして記憶すべきであると判断されたデータは、代表データRDとして代表データ記憶部113に記憶される。
【0066】
代表データ記憶部113は、記憶装置108において、複数のバッファ118がリング状に配列されたリングバッファ116形式の記憶領域であってもよい。
そして、各バッファ118には、1回のイベントに関連する少なくとも1つの代表データRD(例えば、上述の、ブレード7に作用する荷重の最大値、及び、油圧機器の所定部位の圧力の最大値、及び、最小値等)が1組のデータとして記憶されるようになっていてもよい(
図4の代表データRD参照)。
【0067】
例えば、代表データ記憶部113として、M種のデータを格納可能な、合計N個のバッファ118が論理的にリング状に配列されたリングバッファ116を用いる場合、該リングバッファ116には、イベントN回分に対応する(例えば、風力発電装置100の一続きの運転期間のN回分に対応する)代表データRDの1組のデータを、最大N組記憶することができる。
リングバッファ116に記憶された代表データRDの処理は、例えば以下のようになっていてもよい。例えば、リングバッファ116において、1回目のイベントに対応する代表データRDは1つ目のバッファ118に格納され、2回目のイベントに対応する代表データRDは2つ目のバッファ118に格納され、順次、N回目のイベントに対応する代表データRDはN個目のバッファ118に格納される。そして、N+1回目のイベントに対応する代表データRDは、1回目のイベントに対応する代表データRDが格納されていた1つ目のバッファに格納(上書き)されるようになっている。
このように、リングバッファ116を用いることにより、複数回のイベントに対応する複数個の代表データRDの管理を、容易に行うことができる。
【0068】
また、リングバッファ116は、データ取得対象のイベントの種類に応じて、複数個用意されていてもよい。例えば、風力発電装置100の起動及び該起動後の風力発電装置100の停止をイベントとして、該風力発電装置100の起動から停止までの間(すなわち、風力発電装置100の一続きの運転期間)を1つのデータ取得対象期間とし、さらに、ブレード7に作用する荷重が閾値を超えたこと(翼荷重過大となったこと)をイベントとして、翼荷重過大となった時刻から規定時間経過後までの期間を別の1つのデータ取得対象とする場合、2種類のデータ取得対象のイベントそれぞれに対応するように、リングバッファ116を2つ用意してもよい。
このように、イベント毎にリングバッファ116を複数用意することにより、記憶装置108におけるデータの管理が容易となる。
【0069】
代表データ記憶部113は、イベントの発生毎に、代表データ選択部112により選択された代表データRDとともに、制御部110の内部時計114(
図4参照)により取得される前記イベントの発生時刻を記憶するように構成されていてもよい。イベントの発生時刻は風車コントローラ101の制御演算周期に関連するので、制御部110の内部時計114により、正確なイベントの発生時刻を取得することができる。
よって、例えば、過去のイベント発生時、又は、他の風力発電装置100でのイベント発生時との間で、代表データRDの選択条件をより精度よく揃えることができる。
【0070】
図3及び
図4に示すように、データ収集部42には、各々の風車コントローラ101の代表データ記憶部113(記憶装置108)に記憶された各々の風力発電装置100の状態に関する1以上のパラメータの代表データRDを、各々の風車コントローラ101から収集するように構成される。
代表データ記憶部113(記憶装置108)に記憶された代表データRDは、風車コントローラ101の通信インターフェース106を介して、データ収集部42に収集されるようになっていてもよい。
【0071】
データ収集部42は、同じウィンドファーム30に属する複数の風力発電装置100の風車コントローラ101を巡回して、各風車コントローラから代表データRDを収集するように構成されていてもよい。
データ収集部42による複数の風力発電装置100の風車コントローラ101の巡回は、自動的に行われてもよく(例えば、1日又は1週間に1回等、定期的に行われてもよい)、あるいは、オペレータが適時にデータ収集部42に指令を出すことにより行われてもよい。
【0072】
データ収集部42が各風力発電装置100で取得された代表データRDを収集する結果、データ収集部42には、複数の風力発電装置100のそれぞれにおいて、例えば過去の複数回のイベント発生に対応して取得された複数の代表データRDが蓄積されていく。よって、このように蓄積された代表データRD同士を比較することにより、各風力発電装置100の状態監視を行うことができる。
【0073】
状態監視部50は、データ収集部42によって収集された代表データRDに基づいて、各々の風力発電装置100の状態監視を行うように構成される。
【0074】
状態監視部50は、
図2に示すように、インターネット130を介してデータ収集部42に接続されており、データ収集部42で収集された代表データRDが、インターネット130を介して、状態監視部50に送信されるようになっていてもよい。この場合、ウィンドファーム30から離れた遠隔地においても風力発電装置100の状態監視を容易に行うことができる。
あるいは、図示しないが、状態監視部50は、各ウィンドファーム30のLANに直接接続されており、各ウィンドファーム30内で、それぞれのウィンドファーム30に属する風力発電装置100の状態監視を行ってもよい。
【0075】
なお、状態監視部50において、データ収集部42からの代表データRDはデータ蓄積部54に蓄積されるようになっており、該データ蓄積部54に蓄積された代表データRDをデータ分析部52が分析することにより、各風力発電装置100の状態監視を行うようになっていてもよい。
【0076】
状態監視部50は、例えば、多変量解析や、PCA等の各種分析を実施することにより、各風力発電装置100の状態監視を行うようになっていてもよい。
【0077】
いくつかの実施形態では、データ収集部42は、イベントの発生毎に代表データ記憶部113に記憶された複数の代表データRDを収集するようになっており、状態監視部50は、これらの複数の代表データRDを比較することにより、風力発電装置100の異常を検知するように構成されていてもよい。すなわち、風力発電装置100における過去の複数回のイベントについて、イベントの発生毎に選択及び記憶された代表データRDを比較するので、簡素なデータ解析により各イベント発生毎の風力発電装置100の状態を的確に把握して、風力発電装置100の異常を検知することができる。
【0078】
また、幾つかの実施形態では、データ収集部42は、ウィンドファーム30に属する複数の風力発電装置100の各々の代表データ記憶部113に記憶された代表データRDを収集するように構成されており、状態監視部50は、複数の風力発電装置100についての代表データRDを比較することにより、風力発電装置100の異常を検知するように構成されていてもよい。すなわち、複数の風力発電装置100において選択及び記憶された代表データRDを比較することにより、簡素なデータ解析により、複数の風力発電装置100の各々の状態を的確に把握して、風力発電装置100の異常を検知することができる。
【0079】
すでに述べたように、風車コントローラ101は、風力発電装置100の制御を司る部分であるため、風力発電装置100の状態又は運転履歴を示すパラメータを制御演算周期ごとに所持している。
そこで、上述した実施形態では、風車コントローラ101では、制御部110の制御演算周期ごとにこうしたパラメータのデータを取得し、当該データを代表データRDとして記憶すべきか否かを代表データ選択部112において判断するようになっている。また、風車コントローラ101の代表データ記憶部113には、代表データ選択部112によって代表データRDとして記憶すべきであると判断されたデータが記憶される。よって、このようにして代表データ記憶部113に記憶された代表データRD(例えば、所定期間におけるデータの最小値や最大値)は、制御演算周期ごとの細やかなデータから得たものであり、風力発電装置100の状態又は運転履歴を的確に表すものであるから、風力発電装置100の監視のために有用である。
また、上述の実施形態では、データ収集部42により、代表データ記憶部113から代表データRDを収集するようにしたので、制御演算周期ごとにデータを風車コントローラ101から直接取り出す場合に比べて、通信負荷を低減できるとともに、その後のデータ解析を容易に行うことができる。
よって、上述のようにして収集された代表データRDを用いることにより、通信負荷を低減しながら、容易なデータ解析により風力発電装置100の状態監視を適切に行うことができる。
【0080】
ここで、
図5は、上述した実施形態に係るデータ収集システム200によって風力発電装置100の運転状態を示すパラメータ(例えば油圧機器の所定部位の圧力)の最大値(Max)及び最小値(Min)の抽出の流れを示す図である。また、
図6は、従来のデータ収集システムとしてのSCADAによって、同様のパラメータの最大値(Max)及び最小値(Min)の抽出の流れを示す図である。
図5及び
図6のいずれにおいても、パラメータの最大値及び最小値は、風力発電装置100の状態監視を行うために取得(抽出)するものである。
【0081】
上述したように風車コントローラ101では、風力発電装置100の状態又は運転履歴を示すパラメータを制御演算周期(
図5に示す周期T1)ごとに取得し、所持している。風車コントローラ101の制御演算周期は、例えば、10ms以上100ms以下程度である。
ここで、風力発電装置100におけるパラメータの最大値及び最小値を評価する対象期間をTPとする(
図5及び
図6参照)。
【0082】
一般的に、SCADAのデータサンプリング周期T2(
図6参照)は、例えば500ms以上20分以下程度であり、風車コントローラ101の制御演算周期T1(10ms以上100ms以下程度)より長い。このため、SCADAサーバ(監視制御部60)によって取得されるパラメータに関するデータは情報が間引かれていることが通常である(
図6のSCADAサーバ(監視制御部60)参照)。したがって、SCADAで収集したデータをオフライン分析して上述のパラメータの最大値及び最小値を評価する場合、上述のように間引かれたデータから最大値(Max)及び最小値(Min)を抽出するので(
図6のデータ分析部52を参照)、実際の最大値及び最小値とは大きくずれている場合がある。また、通常、SCADAで取得するデータは、風力発電装置100の運転中、長時間にわたり所定のデータサンプリング周期T2で継続して取得し続けるものであるから、SCADAサーバ(監視制御部60)に蓄積されるデータ量が膨大となる。そして、このような膨大なデータの中から、上記パラメータに関する所定期間における最大値や最小値等の代表値をオフライン分析により取得するためには、多大なデータ処理が必要となる。
【0083】
これに対し、上述した実施形態によれば(
図5参照)、風車コントローラ101において、制御部110の制御演算周期T1ごとにパラメータのデータを取得し、当該データを代表データRDとして記憶すべきか否かを代表データ選択部112において判断する。即ち、風車コントローラ101には、制御演算周期T1ごとに各パラメータのデータがセンサ等から入力される。そして、代表データ選択部112では、このデータ(Y)について、制御演算周期毎T1に、最大値に関して「If Y > Y_max, then Y_max = Y, end if」との処理を行い、最小値に関しては「if Y<Y_min, then Y_min=Y, end if」の処理が行われ(
図5の代表データ選択部112参照)、この処理の結果に従って、代表データ記憶部113(記憶装置108)に代表データRD(すなわち最大値Y_max又は最小値Y_min)が上書き更新されていくようになっている(
図6の代表データ記憶部113参照)。このようにして、代表データ選択部112によって代表データRDとして記憶すべきであると判断されたデータ(Y_max及びY_min)が、代表データ記憶部113に記憶されるようになっている。
したがって、代表データ記憶部113に記憶された代表データ(例えば、所定期間TPにおけるデータの最小値Y_minや最大値Y_max)は、制御演算周期T1ごとの細やかなデータから得たものであり、風力発電装置の状態又は運転履歴を的確に表すものである。よって、データ分析部52(
図5参照)における分析対象のデータ精度を向上し、データ抽出処理を用意に行うことができる。
【0084】
なお、代表データ選択部112において記憶すべきか否かを判断し、代表データ記憶部113に記憶される代表データは、風力発電装置100の運転状態を示すパラメータの所定期間における最大値又は最小値であってもよく、あるいは、該パラメータの所定期間における平均値、標準偏差、又は標準偏差の最大等の各種統計量であってもよい。あるいは、該代表データは、所定時刻における上記パラメータの値であってもよい。所定時刻とは、例えば、風力発電装置100の併入から規定時間経過後、又はシャットダウンの瞬間等であってもよい。
【0085】
上述したように、幾つかの実施形態では、代表データ選択部112は、少なくとも1台の風力発電装置100の運転に関するイベントが発生したときに、該イベントの発生時刻における上述のパラメータに関するデータ、または、該発生時刻の前後を含む期間におけるデータのうち規定条件を満たすデータを代表データRDとして代表データ記憶部113に記憶すべきであると判断するように構成される。
風力発電装置100の運転に関するイベントとしては、例えば、以下のものが挙げられる。
【0086】
幾つかの実施形態では、上述のイベントは、少なくとも1台の風力発電装置100の予め設定した停止中の記録開始指示、起動、停止、併入、解列、最大、最小、状態の変化の検知、またはトリップの少なくとも一つであってもよい。
この場合、風力発電装置100において所定のイベントが発生したときの該風力発電装置100の状態を適切に把握することができる。これにより、例えば、風力発電装置100の停止中や起動中に構成機器のヘルスチェックを行ったり、風力発電装置100に異常事象が生じた場合等にその原因や影響を調査したりすることができる。
【0087】
また、この場合、風力発電装置100の状態又は運転履歴を示すパラメータの代表データRDとして、例えば以下のものを採用することができる。
・風力発電装置100の起動/停止の時刻、一回の起動/停止における発電量、風況、最大回転数、定格での運転時間等。
・風力発電装置100を構成する機器の温度の併入時点の値、又は、運転中(起動から停止まで)の最大値等。
・油圧機器に関連する計測値(圧力等)の最小値又は最大値、圧力偏差の最大値等。
・風力発電装置100の起動から停止までにおける(すなわち1回の運転中の)発電機冷却ファンの運転時間又は運転回数等。
・風力発電装置100の起動から停止までにおけるブレード7に作用する荷重の最大値、風車ロータの最大回転数等。
【0088】
また、幾つかの実施形態では、上述のイベントは、少なくとも1台の風力発電装置100に作用する荷重が規定値を超えたことである。
この場合、風力発電装置100に作用する荷重が規定値を超えたときの該風力発電装置の状態を適切に把握することができる。
【0089】
この場合、風力発電装置100に作用する荷重が規定値を超えた時刻(すなわち、イベント発生時刻)よりも所定時間前の時刻から、当該イベント発生時刻よりも所定時間経過後の時刻までの期間における、風車ロータ6を構成する複数のブレード7の各々に採用する荷重の最大値を、代表データRDとしてもよい。
この場合、例えば、風車ロータ6を構成する3枚のブレード7において、複数回のイベント毎に記憶される代表データRDを比較し、仮に、何れか1枚のブレード7について、代表データRDの経時的な変化が他のブレード7よりも大きいような場合には、例えば、当該ブレード7に設けられた荷重センサにおいてドリフトが発生している可能性があることを検知することができる。
【0090】
また、幾つかの実施形態では、上述のイベントは、少なくとも1台の風力発電装置100が接続される電力系統の系統電圧の変動量が規定値を超えたことである。
この場合、風力発電装置100が接続される電力系統の系統電圧の変動量が規定値を超えたときの該風力発電装置100の状態を適切に把握することができる。これにより、例えば、電力系統において瞬時電圧低下が発生したときに、電力系統の状態や、LVRT機能による風力発電装置100の運転継続が行われたか否か、等を把握することができる。
【0091】
上述の場合、風力発電装置100が接続される電力系統の系統電圧の変動量が規定値を超えた時刻(すなわち、イベント発生時刻)よりも所定時間前の時刻における上述のパラメータの値、及び、当該イベント発生時刻移行、当該イベント発生時刻から所定時間経過後の時刻までの期間における、上述のパラメータの最大値及び/又は最小値を、代表データRDとしてもよい。
この場合、風力発電装置100の状態又は運転履歴を示すパラメータとして、例えば以下のものを採用することができる。
・系統電圧低下時間、無効電力供給量、有効電力低下量、固定子電流及び回転子電流、発電機回転数の変動量等。
【0092】
幾つかの実施形態では、データ収集システム200は、上述したように、風力発電装置100の運転制御又は状態監視を行うための監視制御部60をさらに備えている(
図2参照)。監視制御部60は、風車コントローラ101の制御部110の制御演算周期よりも長い周期で少なくとも1台の風力発電装置100からの監視制御データを受け取るように構成される。
【0093】
一実施形態では、監視制御部60は、風速計や各種センサから情報を収集し、収集した情報に基づく制御信号を生成して風車に送るように構成された、又は、収集した情報を分析して、該情報を動的かつ視覚的に表示するための信号をディスプレイに送るように構成されたSCADA(Supervisory Control And Data Acquisition)システムであってもよい。
あるいは、一実施形態では、監視制御部60は、例えば振動センサを用いてギアや軸受等の振動を示す計測データを収集し、収集した計測データの分析結果に基づいて故障診断を行うように構成された状態モニタシステム(CMS:Condition Monitoring System)であってもよい。
【0094】
監視制御部60が風力発電装置100からの監視制御データを受け取る周期は、例えば、500ms以上20分以下であってもよい。
【0095】
このように、風車コントローラ101の制御演算周期で取得されたデータを用いた風力発電装置100の状態監視に加え、上記制御演算周期よりも長い周期で取得される監視制御データを用いた監視制御を行えば、上述の監視制御データを用いることにより、風力発電装置100の状態等を示すデータに関して、より長期にわたる経時的変化を把握することができ、一時点でのデータである代表データRDを用いた状態把握とは異なる観点での状態監視が可能となり、より詳細に風力発電装置100の状態監視を行うことができる。
【0096】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0097】
本明細書において、「ある方向に」、「あ向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
また、本明細書において、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
また、本明細書において、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。