特許第6503428号(P6503428)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6503428
(24)【登録日】2019年3月29日
(45)【発行日】2019年4月17日
(54)【発明の名称】パンツタイプ使い捨ておむつ
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/494 20060101AFI20190408BHJP
   A61F 13/49 20060101ALI20190408BHJP
【FI】
   A61F13/494 110
   A61F13/49 413
【請求項の数】6
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2017-187204(P2017-187204)
(22)【出願日】2017年9月27日
(65)【公開番号】特開2019-58544(P2019-58544A)
(43)【公開日】2019年4月18日
【審査請求日】2018年10月19日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】特許業務法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 祥丈
【審査官】 住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−113347(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15−13/84
A61L15/16−15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前身頃の少なくとも胴周り部を構成する前側外装体及び後身頃の少なくとも胴周り部を構成する後側外装体を別々に備え、これら前側外装体及び後側外装体が前後方向に離間しており、
吸収体を内蔵する内装体が、前記前側外装体から前記後側外装体にかけて前後方向に延在し、かつ前記前側外装体及び後側外装体にそれぞれ接合され、
前記前側外装体の両側部と前記後側外装体の両側部とがそれぞれ接合されたサイドシール部と、ウエスト開口及び左右一対の脚開口とを備え、
前記内装体は、両側部から起き上がる起き上がりギャザーを備え、
前記起き上がりギャザーは、前記内装体の表面の両側部から幅方向中央側に延びる第1部分、及びこの第1部分の先端から幅方向外側に延びる第2部分を有する本体部分と、この本体部分における前端部及び後端部が倒伏状態で前記内装体の表面に固定された部分である前倒伏部分及び後倒伏部分と、前倒伏部分及び後倒伏部分の間に位置する非固定の起き上がり部分と、この起き上がり部分の少なくとも先端部に前後方向に沿って設けられたギャザー弾性部材とを有している、
パンツタイプ使い捨ておむつにおいて、
前記前倒伏部分及び後倒伏部分は、前記第2部分が前記第1部分の側縁よりも幅方向外側に5〜40mmはみ出したはみ出し部をそれぞれ有しており、
前記前倒伏部分のはみ出し部はその裏側に重なる前記前側外装体に対して、及び前記後倒伏部分のはみ出し部はその裏側に重なる前記後側外装体に対して、それぞれ固定されたはみ出し固定部を有しており
前記前倒伏部分及び後倒伏部分は、前記第1部分及び前記内装体の表面が接合された第1固定部と、前記第2部分及び前記第1部分が接合された第2固定部とを有しており、
前記後倒伏部分は、前記第1固定部及び第2固定部を有する全倒伏領域を後側に、及び第1固定部を有せずかつ第2固定部を有する半倒伏領域を前側に有するとともに、前記第2固定部の前後方向寸法が前記第1固定部の前後方向寸法の2倍以上であり、
前記前倒伏部分では、前記第1固定部及び第2固定部を有する全倒伏領域を前側に、及び第2固定部を有せずかつ第1固定部を有する半倒伏領域を後側に有する、
ことを特徴とするパンツタイプ使い捨ておむつ。
【請求項2】
前身頃の少なくとも胴周り部を構成する前側外装体及び後身頃の少なくとも胴周り部を構成する後側外装体を別々に備え、これら前側外装体及び後側外装体が前後方向に離間しており、
吸収体を内蔵する内装体が、前記前側外装体から前記後側外装体にかけて前後方向に延在し、かつ前記前側外装体及び後側外装体にそれぞれ接合され、
前記前側外装体の両側部と前記後側外装体の両側部とがそれぞれ接合されたサイドシール部と、ウエスト開口及び左右一対の脚開口とを備え、
前記内装体は、両側部から起き上がる起き上がりギャザーを備え、
前記起き上がりギャザーは、前記内装体の表面の両側部から幅方向中央側に延びる第1部分、及びこの第1部分の先端から幅方向外側に延びる第2部分を有する本体部分と、この本体部分における前端部及び後端部が倒伏状態で前記内装体の表面に固定された部分である前倒伏部分及び後倒伏部分と、前倒伏部分及び後倒伏部分の間に位置する非固定の起き上がり部分と、この起き上がり部分の少なくとも先端部に前後方向に沿って設けられたギャザー弾性部材とを有している、
パンツタイプ使い捨ておむつにおいて、
前記前倒伏部分及び後倒伏部分は、前記第2部分が前記第1部分の側縁よりも幅方向外側に5〜40mmはみ出したはみ出し部をそれぞれ有しており、
前記前倒伏部分のはみ出し部はその裏側に重なる前記前側外装体に対して、及び前記後倒伏部分のはみ出し部はその裏側に重なる前記後側外装体に対して、それぞれ固定されたはみ出し固定部を有しており、
前記前倒伏部分及び後倒伏部分は、前記第1部分及び前記内装体の表面が接合された第1固定部と、前記第2部分及び前記第1部分が接合された第2固定部とを有しており、
前記後倒伏部分における前記はみ出し固定部の前後方向寸法は、その側方に位置する前記第1固定部の前後方向寸法及び第2固定部の前後方向寸法のいずれか長い方の0.7〜1倍であり、
前記前倒伏部分における前記はみ出し固定部の前後方向寸法は、その側方に位置する前記第1固定部の前後方向寸法及び第2固定部の前後方向寸法のいずれか短い方の0.7〜1倍である、
ことを特徴とするパンツタイプ使い捨ておむつ。
【請求項3】
前記はみ出し部の側縁部は非固定の自由縁部となっており、
前記起き上がり部分の先端部に設けられたギャザー弾性部材が、前記自由縁部まで延びており、
前記自由縁部は前記ギャザー弾性部材の収縮により起き上がるようになっている、
請求項又は記載のパンツタイプ使い捨ておむつ。
【請求項4】
前記前側外装体及び後側外装体は、前記はみ出し部と重なる部分に幅方向に伸縮する伸縮領域を有しており、
前記前倒伏部分の前記はみ出し固定部は前記前側外装体の伸縮領域に、及び前記後倒伏部分の前記はみ出し固定部は前記後側外装体の伸縮領域に、それぞれ固定されるとともに、その伸縮領域とともに伸縮可能となっている、
請求項1〜のいずれか1項に記載のパンツタイプ使い捨ておむつ。
【請求項5】
前記はみ出し固定部は、前記ギャザー弾性部材の収縮により収縮しない部分となっている、
請求項記載のパンツタイプ使い捨ておむつ。
【請求項6】
前記後倒伏部分は後側外装体の前縁と同じか、又はそれより後側に設けられ、前記前倒伏部分は前側外装体の後縁と同じか、又はそれより前側に設けられている、
請求項1〜のいずれか1項に記載のパンツタイプ使い捨ておむつ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンツタイプ使い捨ておむつに関するものである。
【背景技術】
【0002】
パンツタイプ使い捨ておむつの一形態として、外装二分割タイプのものが知られている(例えば特許文献1〜6参照)。外装二分割タイプのパンツタイプ使い捨ておむつは、前身頃の少なくとも胴周り部を構成する前側外装体及び後身頃の少なくとも胴周り部を構成する後側外装体を別々に備え、これら前側外装体及び後側外装体が前後方向に離間しており、吸収体を内蔵する内装体が、前側外装体から後側外装体にかけて取り付けられ、前側外装体の両側部と後側外装体の両側部とがそれぞれ接合されてサイドシール部が形成されることにより、ウエスト開口及び左右一対の脚開口が形成されているものである。このような外装二分割タイプのものは、脚開口を形成するために外装体を切除しなくて済む、又は切除するとしても小面積で済むといった利点がある。すなわち、切離し片(トリム)は廃棄処分されるため、その資材の無駄(トリムロス)を抑えることができるという利点を有している。
【0003】
また、パンツタイプ使い捨ておむつにおいては、いわゆる横漏れを防止するために、内装体の幅方向の両側に表面から起き上がる起き上がりギャザーを設けることが一般的となっている。起き上がりギャザーには種々の構造のものが存在するが、多くの起き上がりギャザーは次のような基本構造を有する。すなわち、使い捨て着用物品に固定された付根部分と、この付根部分より延び出る本体部分と、本体部分の前端部が倒伏状態に固定されて形成された前倒伏部分及び本体部分の後端部が倒伏状態に固定されて形成された後倒伏部分と、本体部分における前倒伏部分及び後倒伏部分の間に位置する非固定の起き上がり部分と、起き上がり部分の少なくとも先端部に前後方向に沿って取り付けられたギャザー弾性部材とを有するものである。
【0004】
しかしながら、外装二分割タイプのパンツタイプ使い捨ておむつでは、外装体の脚開口側の縁が幅方向に沿う直線状又はそれに近い形状となっており、内装体の側縁と直角又はそれに近い角度で交差するため、従来の起き上がりギャザーでは、臀部や鼠径部をカバーしにくい(部分的にはみ出す又は露出する)という問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−073428号公報
【特許文献2】特表2006−525857号公報
【特許文献3】特開2011−147516号公報
【特許文献4】特開2014−028308号公報
【特許文献5】特許第4964993号公報
【特許文献6】特開2015−092947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の主たる課題は、外装二分割タイプのパンツタイプ使い捨ておむつにおける、臀部及び鼠径部のカバー性を向上すること等にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決したパンツタイプ使い捨ておむつの各種態様は次記のとおりである。
<第1の態様>
前身頃の少なくとも胴周り部を構成する前側外装体及び後身頃の少なくとも胴周り部を構成する後側外装体を別々に備え、これら前側外装体及び後側外装体が前後方向に離間しており、
吸収体を内蔵する内装体が、前記前側外装体から前記後側外装体にかけて前後方向に延在し、かつ前記前側外装体及び後側外装体にそれぞれ接合され、
前記前側外装体の両側部と前記後側外装体の両側部とがそれぞれ接合されたサイドシール部と、ウエスト開口及び左右一対の脚開口とを備え、
前記内装体は、両側部から起き上がる起き上がりギャザーを備え、
前記起き上がりギャザーは、前記内装体の表面の両側部から幅方向中央側に延びる第1部分、及びこの第1部分の先端から幅方向外側に延びる第2部分を有する本体部分と、この本体部分における前端部及び後端部が倒伏状態で前記内装体の表面に固定された部分である前倒伏部分及び後倒伏部分と、前倒伏部分及び後倒伏部分の間に位置する非固定の起き上がり部分と、この起き上がり部分の少なくとも先端部に前後方向に沿って設けられたギャザー弾性部材とを有している、
パンツタイプ使い捨ておむつにおいて、
前記前倒伏部分及び後倒伏部分は、前記第2部分が前記第1部分の側縁よりも幅方向外側に5〜40mmはみ出したはみ出し部をそれぞれ有しており、
前記前倒伏部分のはみ出し部はその裏側に重なる前記前側外装体に対して、及び前記後倒伏部分のはみ出し部はその裏側に重なる前記後側外装体に対して、それぞれ固定されたはみ出し固定部を有している、
ことを特徴とするパンツタイプ使い捨ておむつ。
【0008】
(作用効果)
本態様のパンツタイプ使い捨ておむつでは、装着状態では、内装体の前後方向中間では、起き上がりギャザーの起き上がり部分が起き上がることにより内装体の幅が狭くなるものの、前倒伏部分及び後倒伏部分の第2部分に、それぞれ前側外装体及び後側外装体に対して固定されたはみ出し部が設けられることにより、内装体の前後両側にむかうにつれて内装体の幅が拡大するため、外装二分割タイプの使い捨ておむつでありながら、前側外装体及び後側外装体の脚開口側の縁と内装体の側縁との角部近傍のカバー性、つまり臀部及び鼠径部をカバー性が向上するようになる。
【0009】
<第2の態様>
前記前倒伏部分及び後倒伏部分は、前記第1部分及び前記内装体の表面が接合された第1固定部と、前記第2部分及び前記第1部分が接合された第2固定部とを有しており、
前記後倒伏部分は、前記第1固定部及び第2固定部を有する全倒伏領域を後側に、及び第1固定部を有せずかつ第2固定部を有する半倒伏領域を前側に有するとともに、前記第2固定部の前後方向寸法が前記第1固定部の前後方向寸法の2倍以上であり、
前記前倒伏部分では、前記第1固定部及び第2固定部を有する全倒伏領域を前側に、及び第2固定部を有せずかつ第1固定部を有する半倒伏領域を後側に有する、
第1の態様のパンツタイプ使い捨ておむつ。
【0010】
(作用効果)
本態様のように、後倒伏部分の前側に第2固定部のみの半倒伏領域を有することにより、第2部分が幅方向内側に倒れにくくなるため、上面が臀部表面に良好にフィットし、臀裂側に食い込みにくくなる。しかも、後倒伏部分の半倒伏領域はお尻の膨らんでいる部分に当接するため、第2部分が第1部分に接合されていても、体との間に隙間が生じる心配もない。また、前倒伏部分の後側に第1固定部のみの半倒伏領域を有することにより、第1固定部により固定された第1部分を基礎として第2部分がしっかりと立ち上がり、鼠径部の窪みに対してより安定した姿勢でフィットするようになるため好ましい。
【0011】
<第3の態様>
前記前倒伏部分及び後倒伏部分は、前記第1部分及び前記内装体の表面が接合された第1固定部と、前記第2部分及び前記第1部分が接合された第2固定部とを有しており、
前記後倒伏部分における前記はみ出し固定部の前後方向寸法は、その側方に位置する前記第1固定部の前後方向寸法及び第2固定部の前後方向寸法のいずれか長い方の0.7〜1倍であり、
前記前倒伏部分における前記はみ出し固定部の前後方向寸法は、その側方に位置する前記第1固定部の前後方向寸法及び第2固定部の前後方向寸法のいずれか短い方の0.7〜1倍である、
第1又は2の態様のパンツタイプ使い捨ておむつ。
【0012】
(作用効果)
はみ出し固定部の前後方向寸法を本態様の範囲とすることにより、第1固定部及び第2固定部の前後方向寸法の大小関係に依存することなく、臀部のカバー性が良好となるとともに、鼠径部の窪みに対してより安定した姿勢でフィットするようになる。
【0013】
<第4の態様>
前記はみ出し部の側縁部は非固定の自由縁部となっており、
前記起き上がり部分の先端部に設けられたギャザー弾性部材が、前記自由縁部まで延びており、
前記自由縁部は前記ギャザー弾性部材の収縮により起き上がるようになっている、
第2又は3の態様のパンツタイプ使い捨ておむつ。
【0014】
(作用効果)
このように、前側外装体及び後側外装体に対し、はみ出し部の側縁部まで固定することは実際上は困難である。そこで、これを利用して、はみ出し部の側縁部をギャザー弾性部材により起き上がるように構成し、漏れ防止性を高めるのも好ましい。
【0015】
<第5の態様>
前記前側外装体及び後側外装体は、前記はみ出し部と重なる部分に幅方向に伸縮する伸縮領域を有しており、
前記前倒伏部分の前記はみ出し固定部は前記前側外装体の伸縮領域に、及び前記後倒伏部分の前記はみ出し固定部は前記後側外装体の伸縮領域に、それぞれ固定されるとともに、その伸縮領域とともに伸縮可能となっている、
第1〜4のいずれか1つの態様のパンツタイプ使い捨ておむつ。
【0016】
(作用効果)
装着前にははみ出し部が前側外装体及び後側外装体とともに収縮し、脚開口が広がるため、装着作業の際に手や足を脚開口に通しやすくなる。そして、装着時にははみ出し部が前側外装体及び後側外装体とともに伸長して広がり、臀部及び鼠径部がカバーされるようになる。
【0017】
<第6の態様>
前記はみ出し固定部は、前記ギャザー弾性部材の収縮により収縮しない部分となっている、
第5の態様のパンツタイプ使い捨ておむつ。
【0018】
(作用効果)
はみ出し固定部が前側外装体及び後側外装体とともに幅方向に伸縮可能である場合に、ギャザー弾性部材により前後方向に伸縮可能となっていると、装着状態でははみ出し部は幅方向及び前後方向に収縮し、硬いこぶのようになるため、装着感が悪化するおそれがある。したがって、はみ出し固定部はギャザー弾性部材の収縮により収縮しない部分となっていることが望ましい。
【0019】
<第7の態様>
前記後倒伏部分は後側外装体の前縁と同じか、又はそれより後側に設けられ、前記前倒伏部分は前側外装体の後縁と同じか、又はそれより前側に設けられている、
第1〜6のいずれか1つの態様のパンツタイプ使い捨ておむつ。
【0020】
(作用効果)
上述のように起き上がりギャザーがはみ出し部を有する場合、起き上がり部分が内側に倒れこむといった問題が生じにくいため、起き上がり部分の範囲を前後方向に広くし、臀部や鼠径部に対するフィット性を高いものとすることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
以上のとおり、本発明によれば、外装二分割タイプのパンツタイプ使い捨ておむつにおける、臀部及び鼠径部のカバー性を向上することができる、等の利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】展開状態のパンツタイプ使い捨ておむつの内面を示す、平面図である。
図2】展開状態のパンツタイプ使い捨ておむつの外面を示す、平面図である。
図3図1の2−2断面図である。
図4図1の3−3断面図である。
図5】(a)図1の4−4断面図、及び(b)図1の5−5断面図である。
図6】パンツタイプ使い捨ておむつの斜視図である。
図7】パンツタイプ使い捨ておむつの要部を示す、平面図である。
図8】展開状態のパンツタイプ使い捨ておむつの後側の要部を示す平面図である。
図9図8の(a)6−6断面図、(b)7−7断面図である。
図10】展開状態のパンツタイプ使い捨ておむつの前側の要部を示す平面図である。
図11図10の(a)6−6断面図、(b)7−7断面図である。
図12】展開状態のパンツタイプ使い捨ておむつの後側の要部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しつつ詳説する。断面図における点模様部分はその表側及び裏側に位置する各構成部材を接合する接合手段としての接着剤を示しており、ホットメルト接着剤のベタ、ビード、カーテン、サミット若しくはスパイラル塗布、又はパターンコート(凸版方式でのホットメルト接着剤の転写)などにより、あるいは弾性部材の固定部分はこれに代えて又はこれとともにコームガンやシュアラップ塗布などの弾性部材の外周面への塗布により形成されるものである。ホットメルト接着剤としては、例えばEVA系、粘着ゴム系(エラストマー系)、オレフィン系、ポリエステル・ポリアミド系などの種類のものが存在するが、特に限定無く使用できる。各構成部材を接合する接合手段としてはヒートシールや超音波シール等の素材溶着による手段を用いることもできる。
【0024】
図1図11は、パンツタイプ使い捨ておむつの一例を示している。本パンツタイプ使い捨ておむつは、前身頃Fの少なくとも胴周り部を構成する前側外装体12F及び後身頃Bの少なくとも胴周り部を構成する後側外装体12Bと、前側外装体12Fから股間部を経て後側外装体12Bまで延在するように外装体12F,12Bの内側に設けられた内装体200とを備えており、前側外装体12Fの両側部と後側外装体12Bの両側部とが接合されてサイドシール部12Aが形成されることにより、外装体12F,12Bの前後端部により形成される開口が装着者の胴を通すウエスト開口WOとなり、内装体200の幅方向両側において外装体12F,12Bの下縁及び内装体200の側縁によりそれぞれ囲まれる部分が脚を通す脚開口LOとなる。内装体200は、尿等の排泄物等を吸収保持する部分であり、外装体12F,12Bは着用者の身体に対して内装体200を支えるための部分である。また、符号Yは展開状態におけるおむつの全長(前身頃Fのウエスト開口WOの縁から後身頃Bのウエスト開口WOの縁までの前後方向長さ)を示しており、符号Xは展開状態におけるおむつの全幅を示している。
【0025】
本形態のパンツタイプ使い捨ておむつは、サイドシール部12Aを有する前後方向範囲(ウエスト開口WOから脚開口LOの上端に至る前後方向範囲)として定まる胴周り領域Tと、脚開口LOを形成する部分の前後方向範囲(前身頃Fのサイドシール部12Aを有する前後方向領域と後身頃Bのサイドシール部12Aを有する前後方向領域との間)として定まる中間領域Lとを有する。胴周り領域Tは、概念的にウエスト開口の縁部を形成する「ウエスト部」Wと、これよりも下側の部分である「ウエスト下方部」Uとに分けることができる。通常、胴周り領域T内に幅方向WDの伸縮応力が変化する境界(例えば弾性部材の太さや伸長率が変化する)を有する場合は、最もウエスト開口WO側の境界よりもウエスト開口WO側がウエスト部Wとなり、このような境界が無い場合は吸収体56又は内装体200よりもウエスト開口WO側がウエスト部Wとなる。これらの前後方向長さは、製品のサイズによって異なり、適宜定めることができるが、一例を挙げると、ウエスト部Wは15〜40mm、ウエスト下方部Uは65〜120mmとすることができる。一方、中間領域Lの両側縁は被着者の脚周りに沿うようにコ字状又は曲線状に括れており、ここが装着者の脚周りに沿う部分となる。
【0026】
(外装体)
外装体12F,12Bは、前身頃Fから後身頃Bにかけて股間を通り連続する一体的な外装体ではなく、前身頃Fの少なくとも胴周り部を構成する部分である前側外装体12Fと、後身頃Bの少なくとも胴周り部を構成する部分である後側外装体12Bとからなり、前側外装体12F及び後側外装体12Bは股間側で連続しておらず、前後方向LDに離間されたものである。この離間距離12dは例えば150〜250mm程度とすることができる。
【0027】
外装体12F,12Bは、胴周り領域Tと対応する前後方向範囲である胴周り部を有する。また、本形態では、前側外装体12Fよりも後側外装体12Bの方が前後方向寸法が長くなっており、前側外装体12Fには中間領域Lと対応する部分を有していないが、後側外装体12Bは胴周り領域Tから中間領域L側に延び出た臀部カバー部Cを有している。図示しないが、前側外装体12Fにも胴周り領域Tから中間領域L側に延び出る鼠蹊カバー部を設けたり、鼠径カバー部は設けるものの臀部カバー部は設けない形態としたり、前側外装体12F及び後側外装体12Bの両方に中間領域Lと対応する部分を設けなくても良い。また、図示形態では、臀部カバー部Cの下縁は、前側外装体12Fの下縁と同様、幅方向WDに沿う直線状に形成しているが、幅方向外側に向かうにつれてウエスト開口側に位置するようになる曲線とすることもできる。
【0028】
臀部カバー部Cの側縁の前後方向寸法は適宜定めればよいが、長すぎると、側縁の脚開口LO側の角がひらひらして外観及び装着感が悪化するおそれがあるため20mm以下であると好ましい。
【0029】
外装体12F,12Bは、図4及び図5に示されるように、後述する弾性部材15〜19の外側及び内側にそれぞれ位置する外側シート層12S及び内側シート層12Hがホットメルト接着剤や溶着等の接合手段により接合されたものである。外側シート層12Sを形成するシート材及び内側シート層12Hを形成するシート材は、共通の一枚のシート材とする他、個別のシート材とすることもできる。すなわち、前者の場合、外装体の一部又は全部において、ウエスト開口WOの縁(脚開口側の縁としても良い)で折り返された一枚のシート材の内側の部分及び外側の部分により内側シート層12H及び外側シート層12Sがそれぞれ形成される。なお、前者の形態では、シート材の資材数が少ないという利点があり、後者の形態では内側シート層12H及び外側シート層12Sを貼り合わせる際に位置ずれしにくいという利点がある。図示形態は後者に相当するものであり、内側シート層12Hを形成するシート材はウエスト開口WOの縁までしか延在していないが、外側シート層12Sを形成するシート材は、内側シート層12Hのシート材のウエスト側の縁を回り込んでその内側に折り返されており、この折り返し部分12rは内装体200のウエスト側端部上までを被覆するように延在されている。
【0030】
外側シート層12S及び内側シート層12Hに用いるシート材としては、特に限定無く使用できるが不織布が好ましく、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維や、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などからなる不織布を使用することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。不織布を用いる場合、その目付けは10〜30g/m2程度とするのが好ましい。
【0031】
(伸縮領域・非伸縮領域)
外装体12F,12Bには、装着者の胴周りに対するフィット性を高めるために、外側シート層12S及び内側シート層12H間に弾性部材15〜19が設けられ、弾性部材の伸縮を伴って幅方向WDに弾性伸縮する伸縮領域A2が形成されている。この伸縮領域A2では、自然長の状態では外側シート層12S及び内側シート層12Hが弾性部材の収縮に伴って収縮し、皺又は襞が形成されており、弾性部材の長手方向に伸長すると、外側シート層12S及び内側シート層12Hが皺なく伸び切る所定の伸長率まで伸長が可能である。弾性部材15〜19としては、糸ゴム等の細長状弾性部材(図示例)のほか、帯状、網状、フィルム状等、公知の弾性部材を特に限定なく用いることができる。弾性部材15〜19としては合成ゴムを用いても、天然ゴムを用いても良い。
【0032】
外装体12F,12Bにおける外側シート層12S及び内側シート層12Hの貼り合わせや、その間に挟まれる弾性部材15〜19の固定には、種々の塗布方法によるホットメルト接着剤及びヒートシールや超音波シール等の素材溶着による固定手段の少なくとも一方を用いることができる。外装体12F,12B全面を強固に固定すると柔軟性を損ねるため、弾性部材15〜19の接着部以外の部分は接着しないか弱く接着するのが好ましい。図示形態では、コームガンやシュアラップノズル等の塗布手段により弾性部材15〜19の外周面にのみホットメルト接着剤を塗布して両シート層12S,12H間に挟むことにより、当該弾性部材15〜19の外周面に塗布したホットメルト接着剤のみで、両シート層12S,12Hへの弾性部材15〜19の固定と、両シート層12S,12H間の固定とを行う構造となっている。弾性部材15〜19は伸縮領域における伸縮方向の両端部のみ、外側シート層12S及び内側シート層12Hに固定することができる。
【0033】
図示形態の弾性部材15〜19についてより詳細に説明すると、外装体12F,12Bのウエスト部Wにおける外側シート層12S及び内側シート層12H間には、幅方向WDの全体にわたり連続するように、複数のウエスト部弾性部材17が前後方向に間隔を空けて取り付けられている。また、ウエスト部弾性部材17のうち、ウエスト下方部Uに隣接する領域に配設される1本又は複数本については、内装体200と重なっていてもよいし、内装体200と重なる幅方向中央部を除いてその幅方向両側にそれぞれ設けてもよい。このウエスト部弾性部材17としては、太さ155〜1880dtex、特に470〜1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05〜1.5mm2、特に0.1〜1.0mm2程度)の糸ゴムを、4〜12mmの間隔で3〜22本程度設けるのが好ましく、これによるウエスト部Wの幅方向WDの伸長率は150〜400%、特に220〜320%程度であるのが好ましい。また、ウエスト部Wは、その前後方向LDのすべてに同じ太さのウエスト部弾性部材17を用いたり、同じ伸長率にしたりする必要はなく、例えばウエスト部Wの上部と下部で弾性部材17の太さや伸長率が異なるようにしてもよい。
【0034】
また、外装体12F,12Bのウエスト下方部Uにおける外側シート層12S及び内側シート層12H間には、細長状弾性部材からなるウエスト下方部弾性部材15,19が複数本、前後方向に間隔を空けて取り付けられている。
【0035】
ウエスト下方部弾性部材15,19としては、太さ155〜1880dtex、特に470〜1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05〜1.5mm2、特に0.1〜1.0mm2程度)の糸ゴムを、1〜15mm、特に3〜8mmの間隔で5〜30本程度設けるのが好ましく、これによるウエスト下方部Uの幅方向WDの伸長率は200〜350%、特に240〜300%程度であるのが好ましい。
【0036】
また、後側外装体12Bの臀部カバー部Cにおける外側シート層12S及び内側シート層12H間には、細長状弾性部材からなるカバー部弾性部材16が取り付けられている。
【0037】
カバー部弾性部材16としては、太さ155〜1880dtex、特に470〜1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05〜1.5mm2、特に0.1〜1.0mm2程度)の糸ゴムを、1本、又は前後方向に間隔を空けて複数本設けるのが好ましく、これによる臀部カバー部Cの幅方向WDの伸長率は150〜300%、特に180〜260%であるのが好ましい。
【0038】
前側外装体12Fに鼠径カバー部を設ける場合には同様にカバー部弾性部材を設けることができる。
【0039】
図示形態のウエスト下方部Uや臀部カバー部Cのように、吸収体56を有する前後方向範囲に弾性部材15,16,19を設ける場合には、その一部又は全部において吸収体56の幅方向WDの収縮を防止するために、吸収体56と幅方向WDに重なる部分の一部又は全部を含む幅方向中間(好ましくは内外接合部201,202の全体を含む)が非伸縮領域A1とされ、その幅方向両側が伸縮領域A2とされる。ウエスト部Wは幅方向WDの全体にわたり伸縮領域A2とされるのが好ましいが、ウエスト下方部Uと同様に、幅方向中間に非伸縮領域A1を設けても良い。
【0040】
このような伸縮領域A2及び非伸縮領域A1は、内側シート層12Hと、外側シート層12Sとの間に、弾性部材15〜17,19を供給し、弾性部材15,16,19を伸縮領域A2における少なくとも伸縮方向の両端部でホットメルト接着剤を介して固定し、非伸縮領域A1となる領域では固定せず、非伸縮領域A1となる領域において、弾性部材15,16,19を幅方向中間の1か所で加圧及び加熱により切断するか、又は弾性部材15,16,19のほぼ全体を加圧及び加熱により細かく切断し、伸縮領域A2に伸縮性を残しつつ非伸縮領域A1では伸縮性を殺すことにより構築することができる。前者の場合、図4に示すように、非伸縮領域A1には、伸縮領域A2の弾性部材15,16,19から連続する切断残部が不要弾性部材18として単独で自然長まで収縮した状態で、外側シート層12S及び内側シート層12H間に残ることとなり、後者の場合、図示しないが、伸縮領域A2の弾性部材15,16,19から連続する切断残部、及び両方の伸縮領域A2の弾性部材15,16,19と連続しない弾性部材の切断片が不要弾性部材として単独で自然長まで収縮した状態で、外側シート層12S及び内側シート層12H間に残ることになる。
【0041】
(カバー不織布)
外装二分割タイプのパンツタイプ使い捨ておむつでは、前側外装体12F及び後側外装体12Bとの間に内装体200が露出するため、内装体200の裏面に液不透過性シート11が露出しないように、前側外装体12Fと内装体200との間から、後側外装体12Bと内装体200との間にかけて、内装体200の裏面を覆うカバー不織布13を備えていることが好ましい。
【0042】
カバー不織布13に用いる不織布は、例えば外装体12F,12Bの素材と同様のものを適宜選択することができる等、繊維の種類や、繊維の結合(交絡)方法により特に限定されるものではないが、エアスルー不織布を用いることが望ましく、その場合の目付けは20〜40g/m2、厚みは0.3〜1.0mmであると好ましい。カバー不織布13としては、表裏に貫通する孔を有しない無孔不織布を用いても、また表裏に貫通する孔が間隔を空けて多数設けられた有孔不織布を用いてもよい。
【0043】
カバー不織布13の前後方向範囲は特に限定されず、図5に示すように、内装体200の前端から後端までの全体にわたり前後方向LDに延在していてもよく、図7に示すように、前側外装体12Fと内装体200とが重なる領域の前後方向中間位置から後側外装体12Bと内装体200とが重なる領域の前後方向中間位置まで前後方向LDに延在していてもよい。また、図7に示す例の場合、カバー不織布13と前側外装体12Fとの重なり部分の前後方向長さ13y、及びカバー不織布13と後側外装体12Bとの重なり部分の前後方向長さ13yは適宜定めることができるが、通常の場合それぞれ20〜40mm程度とすることができる。
【0044】
カバー不織布13の幅方向範囲は、液不透過性シート11の裏面露出部分を隠しうる範囲とされる。このため、図示例では、左右の起き上がりギャザー60の基端の間に液不透過性シート11が露出するため、少なくとも一方の起き上がりギャザー60の基端部の裏側から他方の起き上がりギャザー60の基端部の裏側までの幅方向範囲を覆うようにカバー不織布13が設けられている。これにより、液不透過性シート11をカバー不織布13と起き上がりギャザー60のギャザーシート62とで隠蔽することができる。また、カバー不織布13の幅方向両端部が起き上がりギャザー60の基端部の裏側を覆うのではなく、ギャザーシート62がカバー不織布13の幅方向両端部の裏側を覆うようにしても、カバー不織布13とギャザーシート62とで液不透過性シート11を隠蔽することは可能である。
【0045】
カバー不織布13の内面及び外面は、それぞれ対向面にホットメルト接着剤を介して接着することができる。カバー不織布13の固定領域は、カバー不織布13の前後方向全体及び幅方向全体とするほか、一部を非固定とすることもできる。例えばカバー不織布13の幅方向両端部が非固定であると、起き上がりギャザー60の影響で吸収体56の側部がいくらか収縮した状態でもその影響を受けにくくなり、カバー不織布13に皺や折れが形成されにくいという利点がもたらされる。この場合におけるカバー不織布13の幅方向両端部の非固定部分の幅は適宜定めればよいが、例えば3〜10mm、好ましくは5〜8mmとすることができる。
【0046】
(内外接合部)
内装体200の外装体12F,12Bに対する固定は、ヒートシール、超音波シールのような素材溶着による接合手段や、ホットメルト接着剤により行うことができる。図示例では、内装体200の裏面、つまりこの場合は液不透過性シート11の裏面及び起き上がりギャザー60の付根部分65に塗布されたホットメルト接着剤を介して外装体12F,12Bの内面に対して固定されている。この内装体200と外装体12F,12Bとを固定する内外接合部201,202は、図2に示すように、両者が重なる領域のほぼ全体に設けることができ、例えば内装体200の幅方向両端部を除いた部分に設けることもできる。
【0047】
(内装体)
内装体200は任意の形状を採ることができるが、図示の形態では長方形である。内装体200は、図1図5に示されるように、吸収要素50と、吸収要素50の表側(身体側)を覆うトップシート30と、吸収要素50の裏側を覆う液不透過性シート11とを備えているものであり、吸収保持機能を担う部分である。符号40は、トップシート30を透過した液を速やかに吸収要素50へ移行させるために、トップシート30と吸収要素50との間に設けられた中間シート(セカンドシート)を示しており、符号60は、内装体200の両脇に排泄物が漏れるのを防止するために、内装体200の両側部から装着者の脚周りに接するように延び出た起き上がりギャザー60を示している。
【0048】
(吸収要素)
吸収要素50は、吸収体56と、この吸収体56の全体を包む包装シート58とを有する。包装シート58は省略することもできる。
【0049】
(吸収体)
吸収体56は、繊維の集合体により形成することができる。この繊維集合体としては、綿状パルプや合成繊維等の短繊維を積繊したものの他、セルロースアセテート等の合成繊維のトウ(繊維束)を必要に応じて開繊して得られるフィラメント集合体も使用できる。繊維目付けとしては、綿状パルプや短繊維を積繊する場合は、例えば100〜300g/m2程度とすることができ、フィラメント集合体の場合は、例えば30〜120g/m2程度とすることができる。合成繊維の場合の繊度は、例えば、1〜16dtex、好ましくは1〜10dtex、さらに好ましくは1〜5dtexである。フィラメント集合体の場合、フィラメントは、非捲縮繊維であってもよいが、捲縮繊維であるのが好ましい。捲縮繊維の捲縮度は、例えば、2.54cm当たり5〜75個、好ましくは10〜50個、さらに好ましくは15〜50個程度とすることができる。また、均一に捲縮した捲縮繊維を用いることができる。吸収体56中には高吸収性ポリマー粒子を分散保持させるのが好ましい。
【0050】
吸収体56は長方形形状でも良いが、図7等にも示すように、前後方向中間に、その前後両側よりも幅が狭い括れ部56Nとを有する砂時計形状をなしていると、吸収体56自体と起き上がりギャザー60の、脚周りへのフィット性が向上するため好ましい。
【0051】
また、吸収体56の寸法は股間部を含む限り適宜定めることができるが、前後方向LD及び幅方向WDにおいて、内装体200の周縁部又はその近傍まで延在しているのが好ましい。なお、符号56Xは吸収体56の全幅を示している。
【0052】
(高吸収性ポリマー粒子)
吸収体56には、その一部又は全部に高吸収性ポリマー粒子を含有させることができる。高吸収性ポリマー粒子とは、「粒子」以外に「粉体」も含む。高吸収性ポリマー粒子54としては、この種の使い捨ておむつに使用されるものをそのまま使用でき、例えば500μmの標準ふるい(JIS Z8801−1:2006)を用いたふるい分け(5分間の振とう)でふるい上に残る粒子の割合が30重量%以下のものが望ましく、また、180μmの標準ふるい(JIS Z8801−1:2006)を用いたふるい分け(5分間の振とう)でふるい上に残る粒子の割合が60重量%以上のものが望ましい。
【0053】
高吸収性ポリマー粒子の材料としては、特に限定無く用いることができるが、吸水量が40g/g以上のものが好適である。高吸収性ポリマー粒子としては、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系などのものがあり、でんぷん−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん−アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体などのものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子の形状としては、通常用いられる粉粒体状のものが好適であるが、他の形状のものも用いることができる。
【0054】
高吸収性ポリマー粒子としては、吸水速度が70秒以下、特に40秒以下のものが好適に用いられる。吸水速度が遅すぎると、吸収体56内に供給された液が吸収体56外に戻り出てしまう所謂逆戻りを発生し易くなる。
【0055】
また、高吸収性ポリマー粒子としては、ゲル強度が1000Pa以上のものが好適に用いられる。これにより、嵩高な吸収体56とした場合であっても、液吸収後のべとつき感を効果的に抑制できる。
【0056】
高吸収性ポリマー粒子の目付け量は、当該吸収体56の用途で要求される吸収量に応じて適宜定めることができる。したがって一概には言えないが、50〜350g/m2とすることができる。ポリマーの目付け量が50g/m2未満では、吸収量を確保し難くなる。350g/m2を超えると、効果が飽和する。
【0057】
必要であれば、高吸収性ポリマー粒子は、吸収体56の平面方向で含有量を調整できる。例えば、液の排泄部位を他の部位より含有量を多くすることができる。また、吸収体56の平面方向において局所的(例えばスポット状)に高吸収性ポリマー粒子が存在しない部分を設けることもできる。
【0058】
(包装シート)
包装シート58を用いる場合、その素材としては、ティッシュペーパ、特にクレープ紙、不織布、ポリラミ不織布、小孔が開いたシート等を用いることができる。ただし、高吸収性ポリマー粒子が抜け出ないシートであるのが望ましい。クレープ紙に換えて不織布を使用する場合、親水性のSMS不織布(SMS、SSMMS等)が特に好適であり、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレン複合材などを使用できる。目付けは、5〜40g/m2、特に10〜30g/m2のものが望ましい。
【0059】
包装シート58の包装形態は適宜定めることができるが、製造容易性や前後端縁からの高吸収性ポリマー粒子の漏れ防止等の観点から、吸収体56の表裏面及び両側面を取り囲むように筒状に巻き付け、且つその前後縁部を吸収体56の前後からはみ出させ、巻き重なる部分及び前後はみ出し部分の重なり部分をホットメルト接着剤、素材溶着等の接合手段により接合する形態が好ましい。
【0060】
(トップシート)
トップシート30は、液を透過する性質を有するものであり、例えば、有孔又は無孔の不織布や、多孔性プラスチックシートなどを例示することができる。また、このうち不織布は、その原料繊維が何であるかは、特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。例えば、柔軟性、ドレープ性を求めるのであれば、スパンボンド法、スパンレース法が、嵩高性、ソフト性を求めるのであれば、エアスルー法、ポイントボンド法、サーマルボンド法が、好ましい加工方法となる。
【0061】
また、トップシート30は、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートを貼り合せて得た積層シートからなるものであってもよい。同様に、トップシート30は、平面方向に関して、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートからなるものであってもよい。
【0062】
トップシート30の両側部は、吸収要素50の側縁で裏側に折り返しても良く、また折り返さずに吸収要素50の側縁より側方にはみ出させても良い。
【0063】
トップシート30は、裏側の部材に対する位置ずれを防止する等の目的で、ヒートシール、超音波シールのような素材溶着による接合手段や、ホットメルト接着剤により裏側に隣接する部材に固定することが望ましい。図示例では、トップシート30はその裏面に塗布されたホットメルト接着剤により中間シート40の表面及び包装シート58のうち吸収体56の表側に位置する部分の表面に固定されている。
【0064】
(中間シート)
トップシート30を透過した液を速やかに吸収体へ移行させるために、トップシート30より液の透過速度が速い、中間シート(「セカンドシート」とも呼ばれている)40を設けることができる。この中間シート40は、液を速やかに吸収体へ移行させて吸収体による吸収性能を高め、吸収した液の吸収体からの「逆戻り」現象を防止するためのものである。中間シート40は省略することもできる。
【0065】
中間シート40としては、トップシート30と同様の素材や、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、SMS不織布、パルプ不織布、パルプとレーヨンとの混合シート、ポイントボンド不織布又はクレープ紙を例示できる。特にエアスルー不織布が嵩高であるため好ましい。エアスルー不織布には芯鞘構造の複合繊維を用いるのが好ましく、この場合芯に用いる樹脂はポリプロピレン(PP)でも良いが剛性の高いポリエステル(PET)が好ましい。目付けは17〜80g/m2が好ましく、25〜60g/m2がより好ましい。不織布の原料繊維の太さは2.0〜10dtexであるのが好ましい。不織布を嵩高にするために、原料繊維の全部又は一部の混合繊維として、芯が中央にない偏芯の繊維や中空の繊維、偏芯且つ中空の繊維を用いるのも好ましい。
【0066】
図示例の中間シート40は、吸収体56の幅より短く中央に配置されているが、全幅にわたって設けてもよい。中間シート40の前後方向長さは、おむつの全長と同一でもよいし、吸収要素50の長さと同一でもよいし、液を受け入れる領域を中心にした短い長さ範囲内であってもよい。
【0067】
中間シート40は、裏側の部材に対する位置ずれを防止する等の目的で、ヒートシール、超音波シールのような素材溶着による接合手段や、ホットメルト接着剤により裏側に隣接する部材に固定することが望ましい。図示例では、中間シート40はその裏面に塗布されたホットメルト接着剤により包装シート58のうち吸収体56の表側に位置する部分の表面に固定されている。
【0068】
(液不透過性シート)
液不透過性シート11の素材は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂等からなるプラスチックフィルムや、不織布の表面にプラスチックフィルムを設けたラミネート不織布、プラスチックフィルムに不織布等を重ねて接合した積層シートなどを例示することができる。液不透過性シート11には、ムレ防止の観点から好まれて使用されている液不透過性かつ透湿性を有する素材を用いることが好ましい。透湿性を有するプラスチックフィルムとしては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られた微多孔性プラスチックフィルムが広く用いられている。この他にも、マイクロデニール繊維を用いた不織布、熱や圧力をかけることで繊維の空隙を小さくすることによる防漏性強化、高吸水性樹脂又は疎水性樹脂や撥水剤の塗工といった方法により、プラスチックフィルムを用いずに液不透過性としたシートも、液不透過性シート11として用いることができるが、後述するカバー不織布13とのホットメルト接着剤を介した接着時に十分な接着強度を得るため、樹脂フィルムを用いるのが望ましい。
【0069】
液不透過性シート11は、図示のように吸収要素50の裏側に収まる幅とする他、防漏性を高めるために、吸収要素50の両側を回り込ませて吸収要素50のトップシート30側面の両側部まで延在させることもできる。この延在部の幅は、左右それぞれ5〜20mm程度が適当である。
【0070】
(起き上がりギャザー)
起き上がりギャザー60は、内装体200の側部から起き上がる起き上がり部分68を有しており、この起き上がり部分68が、装着者の鼠径部から脚周りを経て臀部までの範囲に接して横漏れを防止するものである。
【0071】
図示例の起き上がりギャザーは、内装体200の前後方向長さに等しい長さを有する帯状のギャザーシート62を、先端となる部分で幅方向WDに折り返して二つに折り重ねて二層構造とするとともに、層間に、細長状のギャザー弾性部材63を長手方向に沿って伸長状態で、幅方向WDに間隔を空けて複数本固定してなるものである。起き上がりギャザー60のうち先端部と反対側に位置する基端部(幅方向WDにおいてシート折り返し部分と反対側の端部)は、内装体200における液不透過性シート11より裏側の側部に固定された付根部分65とされ、この付根部分65以外の部分は付根部分65から延び出る本体部分66とされている。また、本体部分66は、内装体200の表面の両側部から幅方向中央側に延びる第1部分60Aと、この第1部分60Aの先端で折り返され、幅方向外側に延びる第2部分60Bとを有している。本体部分66のうち前端部及び後端部は倒伏状態でトップシート30の側部表面に対して固定された前倒伏部分67F及び後倒伏部分67Bとされる。一方、前倒伏部分67F及び後倒伏部分67Bの間に位置する前後方向中間部は非固定の起き上がり部分68とされ、この起き上がり部分68の少なくとも先端部に前後方向LDに沿うギャザー弾性部材63が伸長状態で固定されている。
【0072】
特徴的には、前倒伏部分67F及び後倒伏部分67Bは、第2部分60Bが第1部分60Aの側縁よりも幅方向外側に5〜40mmはみ出したはみ出し部69をそれぞれ有しており、前倒伏部分67Fのはみ出し部69はその裏側に重なる前側外装体12Fに対して、及び後倒伏部分67Bのはみ出し部69はその裏側に重なる後側外装体12Bに対して、それぞれ固定されたはみ出し固定部CFを有している。
【0073】
以上のように構成された起き上がりギャザー60では、装着状態では、図3に二点鎖線で示すように、ギャザー弾性部材63の収縮力により起き上がり部分68が装着者の身体表面に接するように起き上がる。より詳細には、図示例の起き上がりギャザー60では、図3に二点鎖線で示すように、内装体200の前後方向LD中間では、起き上がりギャザー60の起き上がり部分68が起き上がることにより内装体200の幅が狭くなるものの、図4に示すように、前倒伏部分67F及び後倒伏部分67Bの第2部分60Bに、それぞれ前側外装体12F及び後側外装体12Bに対して固定されたはみ出し部69が設けられることにより、内装体200の前後両側にむかうにつれて内装体200の幅が拡大する。このため、外装二分割タイプの使い捨ておむつでありながら、前側外装体12F及び後側外装体12Bの脚開口側の縁と内装体200の側縁との角部近傍のカバー性、つまり臀部及び鼠径部をカバー性が向上するようになる。
【0074】
図8図11に示すように、前倒伏部分67F及び後倒伏部分67Bは、倒伏状態とするために、第1部分60A及びトップシート30が接合された第1固定部AFと、第2部分60B及び第1部分60Aが接合された第2固定部BFとを有している。これら第1固定部AF及び第2固定部BFにおける対向面の接合には、種々の塗布方法によるホットメルト接着剤、及びヒートシールや超音波シール等の素材溶着による手段の少なくとも一方を用いることができる。この場合において、第1固定部AFの接合と、第2固定部BFの接合とを同じ手段により行っても、また異なる手段により行っても良い。なお、図面では第1固定部AF及び第2固定部BFともにホットメルト接着剤で接合する場合を示している。はみ出し固定部CFにおける対向面の接合も、第1固定部AF及び第2固定部BFと同様に行うことができる。
【0075】
図8及び図9に示すように、後倒伏部分67Bは、第1固定部AF及び第2固定部BFを有する全倒伏領域H1を後側に、及び第1固定部AFを有せずかつ第2固定部BFを有する半倒伏領域H2を前側に有するとともに、第2固定部BFの前後方向寸法Z2が第1固定部AFの前後方向寸法Z1の2倍以上であると好ましい。このように、後倒伏部分67Bの前側に第2固定部BFのみの半倒伏領域を有することにより、第2部分60Bが幅方向内側に倒れにくくなるため、上面が臀部表面に良好にフィットし、臀裂側に食い込みにくくなる。しかも、後倒伏部分67Bの半倒伏領域はお尻の膨らんでいる部分に当接するため、第2部分60Bが第1部分60Aに接合されていても、体との間に隙間が生じる心配もない。
【0076】
図10及び図11に示すように、前倒伏部分67Fでは、第1固定部AF及び第2固定部BFを有する全倒伏領域H1を前側に、及び第2固定部BFを有せずかつ第1固定部AFを有する半倒伏領域H2を後側に有すると、第1固定部AFにより固定された第1部分60Aを基礎として第2部分60Bがしっかりと立ち上がり、鼠径部の窪みに対してより安定した姿勢でフィットするようになるため好ましい。
【0077】
また、上述のように起き上がりギャザー60がはみ出し部69を有する場合、起き上がり部分68が内側に倒れこむといった問題が生じにくいため、起き上がり部分68の範囲を前後方向LDに広くし、臀部や鼠径部に対するフィット性を高いものとすることが好ましい。具体的には、後倒伏部分67Bは後側外装体12Bの前縁と同じか、又はそれより後側に設けられ、前倒伏部分67Fは前側外装体12Fの後縁と同じか、又はそれより前側に設けられていると好ましい。
【0078】
はみ出し固定部CFの前後方向寸法Z3は適宜定めることができる。後倒伏部分67Bにおけるはみ出し固定部CFの前後方向寸法Z3は、その側方に位置する第1固定部AFの前後方向寸法Z1及び第2固定部BFの前後方向寸法Z2のいずれか長い方の0.7〜1倍であると、第1固定部AF及び第2固定部BFの前後方向寸法Z1,Z2の大小関係に依存することなく、臀部のカバー性が良好となるため好ましい。例えば、後倒伏部分67Bにおいて、図12に示すように、半倒伏領域H2に第2固定部BFを有しない場合でも、はみ出し固定部CFの前後方向寸法Z3が十分に長ければ、第2部分60B全体としての固定長さは長いものとなる。よって、この場合であっても、第2部分60Bが幅方向内側に倒れにくくなるため、上面が臀部表面に良好にフィットし、臀裂側に食い込みにくくなる。一方、前倒伏部分67Fにおけるはみ出し固定部CFの前後方向寸法Z3は、その側方に位置する第1固定部AFの前後方向寸法Z1及び第2固定部BFの前後方向寸法Z2のいずれか短い方の0.7〜1倍であると、鼠径部の窪みに対してより安定した姿勢でフィットするようになるため好ましい。
【0079】
前述のように、パンツタイプ使い捨ておむつの前側外装体12F及び後側外装体12Bは、幅方向に伸縮する伸縮領域A2を有することが一般的である。そこで、図2及び図4に示すように、前側外装体12F及び後側外装体12Bにおける伸縮領域A2を、はみ出し部69と重なる部分を含むように設けるとともに、はみ出し固定部CFを伸縮領域A2に固定し、伸縮領域A2とともに伸縮可能とするのは好ましい。これにより、装着前にははみ出し部69が前側外装体12F及び後側外装体12Bとともに収縮し、脚開口が広がるため、装着作業の際に手や足を脚開口に通しやすくなる。そして、装着時にははみ出し部69が前側外装体12F及び後側外装体12Bとともに伸長して広がり、臀部及び鼠径部がカバーされるようになる。
【0080】
はみ出し固定部CFが前側外装体12F及び後側外装体12Bとともに幅方向に伸縮可能である場合に、ギャザー弾性部材63により前後方向LDに伸縮可能となっていると、装着状態でははみ出し部69は幅方向及び前後方向LDに収縮し、硬いこぶのようになるため、装着感が悪化するおそれがある。したがって、はみ出し固定部CFはギャザー弾性部材63の収縮により収縮しない部分となっていることが望ましい。すなわち、起き上がり部分68の第2部分60Bには、先端部だけでなく、第1部分60A側の端部まで間隔を空けて複数本のギャザー弾性部材63を設けることが好ましいが、これらのギャザー弾性部材63のうち前後方向LDにはみ出し固定部CFを有するものは、はみ出し固定部CFまで延びていないか、又は延びているとしても収縮力が作用しないようにギャザーシート62に固定されていないことが好ましい。
【0081】
一方、はみ出し部69を側縁部まで前側外装体12F及び後側外装体12Bに固定することは実際上は困難であるため、図示例のように、はみ出し部69の側縁部は非固定の自由縁部69fとすることが好ましい。この場合、図8図11に示すように、起き上がり部分68の先端部に設けられたギャザー弾性部材63を、はみ出し部69の自由縁部69fまで延ばし、自由縁部69fをギャザー弾性部材63の収縮により起き上がるようにすると、漏れ防止性が高くなるため好ましい。
【0082】
ギャザーシート62の素材は特に限定されないが、スパンボンド不織布(SS、SSS等)やSMS不織布(SMS、SSMMS等)、メルトブロー不織布等の柔軟で均一性・隠蔽性に優れた不織布に、必要に応じてシリコーンなどにより撥水処理を施したものを好適に用いることができ、繊維目付けは10〜30g/m2程度とするのが好ましい。ギャザー弾性部材63としては糸ゴム等を用いることができる。スパンデックス糸ゴムを用いる場合は、太さは470〜1240dtexが好ましく、620〜940dtexがより好ましい。固定時の伸長率は、150〜350%が好ましく、200〜300%がより好ましい。なお、用語「伸長率」は自然長を100%としたときの値を意味する。また、図示のように、二つに折り重ねたギャザーシート62の間に防水フィルム64を介在させることもでき、この場合には防水フィルム64の存在部分においてギャザーシート62を部分的に省略することもできるが、製品の外観及び肌触りを布のようにするためには、図示形態のように、少なくとも起き上がりギャザー60の基端から先端までの外面がギャザーシート62で形成されていることが必要である。
【0083】
ギャザー弾性部材63の本数は2〜6本が好ましく、3〜5本がより好ましい。配置間隔60dは3〜10mmが適当である。このように構成すると、ギャザー弾性部材63を配置した範囲で肌に対して面で当たりやすくなる。先端側だけでなく付け根側にもギャザー弾性部材63を配置しても良い。前倒伏部分67F及び後倒伏部分67Bにおける、第1固定部AF、第2固定部BF及びはみ出し固定部CFには、ギャザー弾性部材63の収縮力が作用しないようになっていることが望ましい。なお、ギャザー弾性部材63の収縮力が作用しない部分には、ギャザー弾性部材63を有しない部分の他、ギャザー弾性部材63を有するがギャザー弾性部材63がギャザーシート62に固定されておらず、自然長まで収縮している部分も含む。
【0084】
起き上がり部分68では、ギャザーシート62の内側層及び外側層の貼り合わせや、その間に挟まれるギャザー弾性部材63の固定に、種々の塗布方法によるホットメルト接着剤及びヒートシールや超音波シール等の素材溶着による固定手段の少なくとも一方を用いることができる。ギャザーシート62の内側層及び外側層の全面を貼り合わせると柔軟性を損ねるため、ギャザー弾性部材63の接着部以外の部分は接着しないか弱く接着するのが好ましい。図示形態では、コームガンやシュアラップノズル等の塗布手段によりギャザー弾性部材63の外周面にのみホットメルト接着剤を塗布してギャザーシート62の内側層及び外側層間に挟むことにより、当該ギャザー弾性部材63の外周面に塗布したホットメルト接着剤のみで、ギャザーシート62の内側層及び外側層へのギャザー弾性部材63の固定と、ギャザーシート62の内側層及び外側層間の固定とを行う構造となっている。
【0085】
同様に、起き上がりギャザー60に組み込まれる防水フィルム64とギャザーシート62との固定や、倒伏部分67の固定についても、種々の塗布方法によるホットメルト接着剤、及びヒートシールや超音波シール等の素材溶着による手段の少なくとも一方を用いることができる。
【0086】
起き上がりギャザー60の寸法は適宜定めることができるが、乳幼児用途の場合は、例えば図3に示すように、起き上がりギャザー60の起立高さ(展開状態における本体部分66の幅方向長さ)W2は15〜60mm、特に20〜40mmであるのが好ましい。また、起き上がりギャザー60をトップシート30表面と平行になるように、平坦に折り畳んだ状態において最も内側に位置する折り目間の離間距離W1は60〜190mm、特に70〜140mmであるのが好ましい。大人用途の場合、起き上がりギャザー60の起立高さ(展開状態における本体部分66の幅方向長さ)W2は20〜60mm、特に30〜55mmであるのが好ましい。また、起き上がりギャザー60をトップシート30表面と平行になるように、平坦に折り畳んだ状態において最も内側に位置する折り目間の離間距離W1は110〜190mm、特に120〜150mmであるのが好ましい。
【0087】
<諸特性の評価>
図1図11に示す外装二分割タイプのパンツタイプ使い捨ておむつの構造を基本とし、表1に示すように各部の寸法を変化させたサンプルを作製し、臀部・鼠蹊部のカバー性、起き上がりギャザー60のフィット性、脚開口LOへの手の通しやすさについて、◎(非常によい)、〇(よい)、△(ふつう)、×(悪い)の4段階で評価した。評価結果を表1に示した。
【表1】
【0088】
<明細書中の用語の説明>
明細書中の以下の用語は、明細書中に特に記載が無い限り、以下の意味を有するものである。
【0089】
・「前後(縦)方向」とは腹側(前側)と背側(後側)を結ぶ方向を意味し、「幅方向」とは前後方向と直交する方向(左右方向)を意味する。
【0090】
・「表側」とはパンツタイプ使い捨ておむつを着用した際に着用者の肌に近い方を意味し、「裏側」とはパンツタイプ使い捨ておむつを着用した際に着用者の肌から遠い方を意味する。
【0091】
・「表面」とは部材の、パンツタイプ使い捨ておむつを着用した際に着用者の肌に近い方の面を意味し、「裏面」とはパンツタイプ使い捨ておむつを着用した際に着用者の肌から遠い方の面を意味する。
【0092】
・「面積率」とは単位面積に占める対象部分の割合を意味し、対象領域(例えばカバー不織布)における対象部分(例えば孔)の総和面積を当該対象領域の面積で除して百分率で表すものである。対象部分が間隔を空けて多数設けられる形態では、対象部分が10個以上含まれるような大きさに対象領域を設定して、面積率を求めることが望ましい。例えば、孔の面積率は、例えばKEYENCE社の商品名VHX−1000を使用し、測定条件を20倍として、以下の手順で測定することができる。
(1)20倍のレンズにセットし、ピントを調節する。穴が4×6入るように不織布の位置を調整する。
(2)孔の領域の明るさを指定し、孔の面積を計測する。
(3)「計測・コメント」の「面積計測」の色抽出をクリックする。孔の部分をクリックする。
(4)「一括計測」をクリックし、「計測結果ウィンドを表示」にチェックを入れ、CSVデータで保存をする。
【0093】
・「伸長率」は、自然長を100%としたときの値を意味する。
【0094】
・「ゲル強度」は次のようにして測定されるものである。人工尿(尿素:2wt%、塩化ナトリウム:0.8wt%、塩化カルシウム二水和物:0.03wt%、硫酸マグネシウム七水和物:0.08wt%、及びイオン交換水:97.09wt%を混合したもの)49.0gに、高吸収性ポリマーを1.0g加え、スターラーで攪拌させる。生成したゲルを40℃×60%RHの恒温恒湿槽内に3時間放置したあと常温にもどし、カードメーター(I.techno Engineering社製:Curdmeter−MAX ME−500)でゲル強度を測定する。
【0095】
・「目付け」は次のようにして測定されるものである。試料又は試験片を予備乾燥した後、標準状態(試験場所は、温度23±1℃、相対湿度50±2%)の試験室又は装置内に放置し、恒量になった状態にする。予備乾燥は、試料又は試験片を温度100℃の環境で恒量にすることをいう。なお、公定水分率が0.0%の繊維については、予備乾燥を行わなくてもよい。恒量になった状態の試験片から、試料採取用の型板(100mm×100mm)を使用し、100mm×100mmの寸法の試料を切り取る。試料の重量を測定し、10倍して1平米あたりの重さを算出し、目付けとする。
【0096】
・「厚み」は、自動厚み測定器(KES−G5 ハンディ圧縮計測プログラム)を用い、荷重:0.098N/cm2、及び加圧面積:2cm2の条件下で自動測定する。
【0097】
・吸水量は、JIS K7223−1996「高吸水性樹脂の吸水量試験方法」によって測定する。
【0098】
・吸水速度は、2gの高吸収性ポリマー及び50gの生理食塩水を使用して、JIS K7224‐1996「高吸水性樹脂の吸水速度試験法」を行ったときの「終点までの時間」とする。
【0099】
・「展開状態」とは、収縮や弛み無く平坦に展開した状態を意味する。
【0100】
・各部の寸法は、特に記載が無い限り、自然長状態ではなく展開状態における寸法を意味する。
【0101】
・試験や測定における環境条件についての記載が無い場合、その試験や測定は、標準状態(試験場所は、温度23±1℃、相対湿度50±2%)の試験室又は装置内で行うものとする。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明は、パンツタイプ使い捨ておむつに利用できるものである。
【符号の説明】
【0103】
11…液不透過性シート、12B…後側外装体、12E…ウエスト延出部分、12F…前側外装体、12H…内側シート層、12S…外側シート層、13…カバー不織布、17…ウエスト部弾性部材、18…不要弾性部材、200…内装体、201,202…内外接合部、30…トップシート、40…中間シート、50…吸収要素、56…吸収体、58…包装シート、60…起き上がりギャザー、60A…第1部分、60B…第2部分、62…ギャザーシート、63…ギャザー弾性部材、67B…後倒伏部分、67F…前倒伏部分、68…起き上がり部分、69…はみ出し部、69f…自由縁部、A1…非伸縮領域、A2…伸縮領域、AF…第1固定部、BF…第2固定部、CF…はみ出し固定部、H1…全倒伏領域、H2…半倒伏領域、L…中間領域、LD…前後方向、T…胴周り領域、U…ウエスト下方部、W…ウエスト部、WO…ウエスト開口。
図1
図2
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図10
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図12