特許第6503445号(P6503445)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6503445ビタミンD類似体およびコルチコステロイドを含むスプレー医薬組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6503445
(24)【登録日】2019年3月29日
(45)【発行日】2019年4月17日
(54)【発明の名称】ビタミンD類似体およびコルチコステロイドを含むスプレー医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/59 20060101AFI20190408BHJP
   A61K 31/593 20060101ALI20190408BHJP
   A61K 31/592 20060101ALI20190408BHJP
   A61K 47/08 20060101ALI20190408BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20190408BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20190408BHJP
   A61M 11/00 20060101ALI20190408BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20190408BHJP
   A61K 31/58 20060101ALI20190408BHJP
   A61K 47/06 20060101ALI20190408BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20190408BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20190408BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20190408BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20190408BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20190408BHJP
   A61P 17/08 20060101ALI20190408BHJP
   A61P 17/10 20060101ALI20190408BHJP
【FI】
   A61K31/59
   A61K31/593
   A61K31/592
   A61K47/08
   A61K47/44
   A61K9/12
   A61M11/00 D
   A61K31/573
   A61K31/58
   A61K47/06
   A61K47/10
   A61K47/14
   A61K47/22
   A61P17/00
   A61P17/06
   A61P17/08
   A61P17/10
【請求項の数】29
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2017-234198(P2017-234198)
(22)【出願日】2017年12月6日
(62)【分割の表示】特願2016-106036(P2016-106036)の分割
【原出願日】2011年6月10日
(65)【公開番号】特開2018-65850(P2018-65850A)
(43)【公開日】2018年4月26日
【審査請求日】2018年1月4日
(31)【優先権主張番号】61/353,893
(32)【優先日】2010年6月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508069752
【氏名又は名称】レオ ファーマ アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】マリアネ・リント
(72)【発明者】
【氏名】グリット・ラスムスン
(72)【発明者】
【氏名】メッテ・リダール・ソネ
(72)【発明者】
【氏名】イェンス・ハンスン
(72)【発明者】
【氏名】カールステン・ピーダソン
【審査官】 馬場 亮人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−188223(JP,A)
【文献】 特表2008−502663(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/59
A61K 9/12
A61K 31/573
A61K 31/58
A61K 31/592
A61K 31/593
A61K 47/06
A61K 47/08
A61K 47/10
A61K 47/14
A61K 47/22
A61K 47/44
A61M 11/00
A61P 17/00
A61P 17/06
A61P 17/08
A61P 17/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体およびバルブアセンブリを含む、皮膚患部に局所組成物を分配するのに適合させた加圧容器であって、
当該容器本体が、治療有効量の、カルシポトリオール、カルシトリオール、タカルシトール、マキサカルシトールおよびパリカルシトールからなる群から選択されるビタミンD誘導体または類似体、および、治療有効量のコルチコステロイドを含む、スプレー可能で保存安定な実質的に無水の局所組成物を含み
当該ビタミンD誘導体または類似体および当該コルチコステロイドが、ジメチルエーテルおよびメチルエチル エーテルからなる群から選択される薬学的に許容される噴射剤に溶解しており、
当該組成物が、さらに、当該噴射剤に溶解したまたは懸濁した薬学的に許容される脂質担体を含み、
当該脂質担体が、当該組成物の皮膚への適用および当該噴射剤の蒸発の際に、適用部位で半固体密封層を形成する1種以上の脂質を含
当該バルブアセンブリが、スプレーとして組成物を放出するためのアクチュエータを含む、
加圧容器
【請求項2】
射剤が、ジメチルエーテルである、請求項記載の加圧容器
【請求項3】
ビタミンD類似体が、カルシポトリオールまたはカルシポトリオール 一水和物である、請求項1または2に記載の加圧容器
【請求項4】
ビタミンD類似体が、マキサカルシトールである、請求項1または2に記載の加圧容器
【請求項5】
コルチコステロイドが、ベタメタゾン、ブデソニド、クロベタゾール、クロベタゾン、デスオキシメタゾン、ジフルコルトロン、ジフロラゾン、フルオシノニド、フルオシノロン、ハルシノニド、ハロベタゾール、ヒドロコルチゾン、モメタゾンおよびトリアムシノロンからなる群から選択されるものであるか、またはその薬学的に許容されるエステルである、請求項1〜の何れか1項に記載の加圧容器
【請求項6】
コルチコステロイドが、ベタメタゾンの薬学的に許容されるエステルである、請求項記載の加圧容器
【請求項7】
ビタミンD類似体が、カルシポトリオールまたはカルシポトリオール 一水和物であり、コルチコステロイドが、ベタメタゾンジプロピオン酸エステルである、請求項1〜およびの何れか1項に記載の加圧容器
【請求項8】
組成物が、C3−5アルカン類、ヒドロフルオロアルカン類、ヒドロクロロアルカン類、フルオロアルカン類およびクロロフルオロアルカン類からなる群から選択される噴射剤をさらに含む、請求項1〜7の何れか1項に記載の加圧容器。
【請求項9】
組成物が、下記の溶媒クラス:
(a) 一般式I:
【化1】
[式中、Rは、直鎖または分枝鎖のC1−20アルキルであり、xは2〜60の整数である。]
の化合物;
(b) 直鎖または分枝鎖のC10−18アルカン酸またはアルケン酸のイソプロピル エステル;
(c) C8−14アルカン酸またはアルケン酸のプロピレン グリコール ジエステル;
(d) 直鎖または分枝鎖のC8−24アルカノールまたはアルケノール;
(e) 高精製植物油、例えば中鎖トリグリセリドまたは長鎖トリグリセリド;および
(f) N−アルキルピロリドンまたはN−アルキルピペリドン;
の少なくとも1つから選択される非蒸発油性共溶媒をさらに含む、請求項1〜の何れか1項に記載の加圧容器
【請求項10】
一般式Iの化合物が、ポリオキシプロピレン−15−ステアリル エーテル、ポリオキシプロピレン−11−ステアリル エーテル、ポリオキシプロピレン−14−ブチル エーテル、ポリオキシプロピレン−10−セチル エーテルまたはポリオキシプロピレン−3−ミリスチル エーテルである、請求項記載の加圧容器
【請求項11】
直鎖または分枝鎖のC10−18アルカン酸またはアルケン酸のイソプロピル エステルが、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソプロピル、リノール酸イソプロピルまたはモノオレイン酸イソプロピルである、請求項記載の加圧容器
【請求項12】
8−14アルカン酸のプロピレン グリコール ジエステルが、プロピレン グリコール ジペラルゴネートである、請求項記載の加圧容器
【請求項13】
直鎖のC8−24アルカノールが、カプリル アルコール、ラウリル アルコール、セチル アルコール、ステアリル アルコールまたはミリスチル アルコールであるか、あるいは、分枝鎖のC8−24アルカノールが、分枝鎖のC18−24アルカノール、例えば2−オクチルドデカノールであり、直鎖のC8−24アルケノールが、オレイル アルコールまたはリノレイル アルコールである、請求項記載の加圧容器
【請求項14】
N−アルキルピロリドンがN−メチルピロリドンである、請求項記載の加圧容器
【請求項15】
組成物が、ジメチルエーテルおよび3−5アルカン類好ましくはn−プロパン、イソプロパン、n−ブタンまたはイソブタンからなる群から選択される)を含む、請求項8〜14の何れか1項に記載の加圧容器
【請求項16】
3−5アルカン類が、n−ブタンおよび/またはイソブタンである、請求項15記載の加圧容器
【請求項17】
n−ブタンおよび/またはイソブタン:ジメチルエーテルの比が、6:1〜0:1(v/v)、例えば5:1〜1:2、4:1〜1:1、4:2〜1:1、4:2〜4:3または4:2〜1:1の範囲である、請求項16記載の加圧容器
【請求項18】
組成物が、
(a) 約0.00001〜0.05%(w/w)のビタミンD誘導体または類似体、
(b) 約0.0005〜1%(w/w)のコルチコステロイド、
(c) 約5〜55%(w/w)の脂質担体、および、
(d) 約45〜95%(w/w)の噴射
を含む、請求項1〜17の何れか1項に記載の加圧容器
【請求項19】
組成物が、約10〜50%(w/w)、約15〜45%(w/w)または約20〜40%(w/w)の脂質担体を含む、請求項18記載の加圧容器
【請求項20】
組成物が、約50〜90%(w/w)または約55〜70%(w/w)の噴射剤を含む、請求項18または19記載の加圧容器
【請求項21】
組成物が、約0.1〜10%(w/w)の請求項記載の油性溶媒、例えば約0.5〜3%(w/w)、約1〜2.5%(w/w)または約1.5〜2%(w/w)の油性溶媒をさらに含む、請求項18〜20の何れか1項に記載の加圧容器
【請求項22】
脂質担体が、1種以上のパラフィンを含む、請求項1〜21の何れか1項に記載の加圧容器
【請求項23】
脂質担体が、C14−16、C18−22、C20−22、C20−26、C28−40およびC40−44に鎖長ピーク(ガスクロマトグラフィーによって測定)を有し、C〜C60の鎖長を有する炭化水素からなるパラフィンから選択される少なくとも1種のパラフィンを含むか、あるいは、適用および噴射剤の蒸発の際に皮膚上に半固体密封層を形成する性質を脂質担体に与えられる親油性粘度増大剤であって、微晶性ワックス、シリコン・ワックスおよび水素化ヒマシ油またはそれらの混合物からなる群から選択される親油性粘度増大剤を含むか、あるいは、イソパラフィン類、例えばイソヘキサデカンを含む、請求項22記載の加圧容器
【請求項24】
脂質担体が、ペトロラタムと液体パラフィンの混合物である、請求項22記載の加圧容器
【請求項25】
カルシポトリオールまたはカルシポトリオール 一水和物の量が、噴射剤を除いた組成物の重量の約0.005%(w/w)であり、ベタメタゾンジプロピオン酸エステルの量が、噴射剤を除いた組成物の重量の約0.064%(w/w)である、請求項1〜3および5〜24の何れか1項に記載の加圧容器
【請求項26】
乾癬、掌蹠膿疱症、魚鱗癬、皮膚炎、酒さおよび挫瘡からなる群から選択される皮膚疾患または状態の処置に使用するための、請求項1〜25の何れか1項に記載の加圧容器
【請求項27】
皮膚疾患または状態が、乾癬である、請求項26記載の加圧容器
【請求項28】
バルブアセンブリが、0.05〜1mmの直径を有する少なくとも1個の開口を含む、請求項1〜27の何れか1項に記載の加圧容器。
【請求項29】
アクチュエータに、0.3〜1.5mmの直径を有するオリフィスを提供した、請求項28記載の加圧容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、生物学的に活性なビタミンD誘導体または類似体およびコルチコステロイドを含む局所スプレー組成物、および、皮膚疾患および状態の処置におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
乾癬は、過角化症に起因する紅斑状の乾燥した鱗屑斑として顕在化する慢性炎症性皮膚疾患である。鱗屑斑は、肘、膝および頭皮で最も多く見られるが、より広範囲の病変が、身体の他の部位、特に腰仙部に現れることがある。軽度から中程度の乾癬の最も一般的な処置は、有効成分としてコルチコステロイドを含む組成物の局所適用を含む。有効である一方で、コルチコステロイドの適用は、皮膚萎縮、皮膚線条、挫瘡様発疹、口囲皮膚炎、皮膚の真菌および細菌の異常増殖、有色皮膚の色素脱落および酒さなどの多くの有害作用があるという不都合を有する。
【0003】
しかし、長年、好都合な乾癬の非ステロイド処置が、カルシポトリオールが溶液またはクリーム組成物(Daivonex(登録商標)またはDovonex(登録商標) クリーム(LEO Pharma)として販売)中に存在する、軟膏組成物(Daivonex(登録商標)またはDovonex(登録商標) 軟膏(LEO Pharma)として販売)に製剤化された、ビタミンD類似体化合物であるカルシポトリオールによる局所処置からなる。軟膏組成物中の溶媒は、有効成分の皮膚への浸透を促進して有効性の改善をもたらす利点を有するが、皮膚刺激剤としても作用することが知られているプロピレン グリコールである。このように、局所組成物にプロピレン グリコールを含めることが、しばしば、患者に接触皮膚炎を発症させ(12.5%のプロピレン グリコールに対する幾つかの刺激反応が報告された研究がある, M. Hannuksela et al., Contact Dermatitis 1, 1975, pp. 112-116を参照のこと)、プロピレン グリコールが高濃度で用いられるとき、多くの刺激反応が増大することが報告された(J. Catanzaro and J. Graham Smith, J. Am. Acad. Dermatol. 24, 1991, pp. 90-95でレビューされた)。とりわけプロピレン グリコールの存在による改善されたカルシポトリオールの皮膚への浸透により、Daivonex(登録商標) 軟膏は、Daivonex(登録商標) クリームより乾癬病変の処置に有効であるが、かなりの割合の乾癬患者で皮膚刺激が起こることが見出された。
【0004】
より近年では、乾癬処置用組み合わせ製品が、LEO Pharmaによって、商品名Daivobet(登録商標) 軟膏で販売されている。当該製品は、カルシポトリオールおよびベタメタゾンジプロピオン酸エステルを有効成分として含み、カルシポトリオールをポリオキシプロピレン−15−ステアリル エーテルに溶解し、ベタメタゾンジプロピオン酸エステルが懸濁液として存在する軟膏組成物として製剤化される。組み合わせ剤の有効性は、何れの有効成分自身の有効性より有意に優れている一方、当該軟膏は、皮膚患部に長くすり込む必要があるため適用が煩わしいとされ、多くの患者、特に広範囲の乾癬病変を有する患者は、スプレー組成物によって提供されるものなどの、もっと適用が容易なものを好む。Daivobet(登録商標) 軟膏は、カルシポトリオールの化学的安定性に有害であることが見出されたプロピレン グリコールなどの浸透促進剤を全く含まない(国際公開第00/64450号の実施例2を参照のこと。)。市販の製品に比べて有効成分の皮膚への浸透を改善する製剤ビークルを提供することによって、2種の有効成分の組み合わせ剤の生物学的有効性をさらに改善することが望ましいと考えられる。
【0005】
国際公開第00/64450号は、双方の有効成分が化学的に安定であるビークルを含む溶媒中で製剤化された、ビタミンD類似体およびコルチコステロイドを含む医薬組成物を開示する。本組成物の好ましい態様は軟膏であり、軟膏と比較して改善された性質を有するスプレー組成物の提供について、全く記載していない。
【0006】
米国公開公報第2005/0281749号は、1種以上の油脂からなる油相に可溶化されたコルチコステロイドおよびビタミンD誘導体を含むスプレー組成物を開示する。当該油脂は、植物油、ミネラルオイル、動物性油脂、合成油脂またはシリコンオイルから選択され得る。密封を提供することが望ましいことについて全く示唆されておらず、その結果、当該組成物に半固体密封添加物を加えることが提案されていない。当該組成物が改善された浸透性を示すかどうかについて全く示されていない。
【0007】
米国公開公報第2005/0281754号は、コルチコステロイドおよびビタミンD誘導体を含み、アルコール相および油相を含むビークル中で製剤化されたスプレー組成物を開示している。アルコール相は、例えばエタノール、イソプロパノールまたはブタノールで構成される。油相は、ミネラルオイル、植物油または合成油で構成され得る。当該組成物に半固体密封添加物を含めることについて、全く示唆されておらず、当該組成物が改善された浸透性を示すかどうかについて全く示唆されていない。
【発明の概要】
【0008】
本発明の概要
ビタミンD誘導体または類似体およびコルチコステロイドを有効成分として含み、Daivobet(登録商標) 軟膏より優れた皮膚浸透および生物学的活性を有するが、プロピレン グリコールと異なって、ビタミンD誘導体もしくは類似体またはコルチコステロイドの何れの化学的安定性にも有害でない、有効成分のための溶媒を含む局所スプレー組成物を提供することが、本発明の目的である。
【0009】
ヒトの皮膚、特にその外側の層である角質層は、微生物の病原および毒性化学物質の浸透に対して有効な障壁を提供する。皮膚のこの性質は、一般的には有益であるが、皮膚疾患に罹患している患者の皮膚に適用される有効成分の大部分でなくとも多くの量が、その活性を働かせる皮膚の生存層に浸透できない点で、医薬の皮膚投与を困難にする。真皮および表皮への有効成分の十分な浸透を確実にするために、一般的に、典型的にはアルコール、例えばエタノール、またはジオール、例えばプロピレン グリコールの形態の溶媒の存在下、溶解状態で有効成分を含むことが好ましい。プロピレン グリコールは、周知の浸透促進剤、すなわち角質層に浸透させ、ビークル中の低分子成分、例えば治療活性成分を表皮に“引き込む”ことができる物質である。プロピレン グリコールは、それ自身で、顕著な皮膚刺激を生じる可能性があるものであり、また、ビークルの低分子および刺激性の可能性のある成分を表皮に“引き込む”ことができ、プロピレン グリコールを含む慣用のビークル全体の刺激作用を引き起こす。この理由のために、炎症性皮膚疾患の処置を意図した組成物の溶媒としてのプロピレン グリコールの存在は、炎症応答を増悪させることがある。
【0010】
本発明の他の目的は、カルシポトリオールなどのビタミンD化合物の安定性に有害であるプロピレン グリコールなどの慣用の浸透促進剤の非存在下で、Daivobet(登録商標) 軟膏と比較して、有効成分の改善された浸透および生物活性を有する組成物を提供することである。
【0011】
本発明のさらなる目的は、ビタミンD誘導体または類似体、および、コルチコステロイドの双方が、有意に分解しない組成物を提供することである。例えば、国際公開第00/64450号により、ビタミンD化合物は、酸性環境で、または製剤ビークル中の酸性反応成分または不純物の存在下で、化学的に不安定であることがよく知られている。同様に、コルチコステロイドは、アルカリ性環境で、または、製剤ビークル中のアルカリ性反応成分または不純物の存在下で、化学的に不安定であることがよく知られている。両方の成分を含む組成物において、化学的不安定性の問題は、酸性またはアルカリ性中和剤の添加によって、たやすく解決できない。それどころか、何れの有効成分の化学的安定性にも有害な成分が含まれないように、組成物に含まれる添加物の選択に注意を必要とする。
【0012】
上記引用文献で開示されたスプレー組成物と異なり、本発明の目的は、既知の油性スプレー製剤が適用時に患部でない部分に広がり易いが半固体成分は本発明の組成物を“流れにくく”して有効成分が皮膚患部に優先して適用されることから、相当量の密封半固体担体添加物を含むスプレー組成物を提供することである。
【0013】
従って、一つの局面において、本発明は、治療有効量のビタミンD誘導体または類似体および治療有効量のコルチコステロイドを含むスプレー可能で保存安定な実質的に無水の局所組成物であって、当該ビタミンD誘導体または類似体および当該コルチコステロイドが、ジメチルエーテル、ジエチルエーテルおよびメチルエチル エーテルからなる群から選択される薬学的に許容される噴射剤、あるいは、ジメチルエーテル、ジエチルエーテルおよびメチルエチル エーテルからなる群から選択される第1噴射剤、および、C3−5アルカン類、ヒドロフルオロアルカン類、ヒドロクロロアルカン類、フルオロアルカン類およびクロロフルオロアルカン類からなる群から選択される第2噴射剤を含む噴射剤混合物に溶解しており、当該組成物が、さらに、当該噴射剤または噴射剤混合物に溶解したまたは懸濁した薬学的に許容される脂質担体を含み、当該脂質担体が、皮膚への適用および噴射剤の蒸発の際に、適用部位で半固体密封層を形成する1種以上の脂質を含む、組成物に関する。
【0014】
本発明の組成物は、驚くべきことに、慣用の浸透促進剤の非存在下でさえ、市販の Daivobet(登録商標) 軟膏と比較して、有効成分の改善された浸透を容易にすることが見出された。現在、浸透の改善は、適用および噴射剤または噴射剤混合物の蒸発後、皮膚上で有効成分の過飽和溶液を形成する結果であると考えられている(Reid et al., Pharm. Res. 25(11), 2008, pp. 2573-2580を参照のこと。)。さらに、噴射剤は、それ自身、有効成分を皮膚へと運ぶ浸透促進剤として作用し得ると考えられる。結局、適用部位での半固体密封層の形成は、有効成分の浸透に寄与し得る。
【0015】
他の局面において、本発明は、皮膚疾患または状態の処置に使用するための、本明細書で開示される組成物に関する。
【0016】
本発明の組成物は、典型的には容器本体およびバルブアセンブリを含むタイプのエアゾール容器から分配されてもよい。容器本体は、例えば、好ましくは本体と組成物の間の相互作用による組成物の分解を避けるために、化学的に不活性なコーティング材料で裏打ちされた金属体を含んでもよい。
【0017】
バルブアセンブリは、マウンティングキャップとも呼ばれるバルブキャップ、バルブ本体、または、バルブステム、スプリング、浸漬管およびアクチュエータを提供するハウジングを含んでもよい。内部ガスケットは、典型的には、バルブステム中の穴を密閉しているが、アクチュエータが作動するとき、バルブステムがシフトして、穴が露出する。露出すると、容器本体中の噴射剤によって働く圧力が、穴を通じて、アクチュエータから浸漬管およびバルブステムに組成物を流す。理解されるように、アクチュエータが開放されるとき、バルブスプリングが、穴を再度密閉する位置にバルブステムを戻す。
【0018】
バルブステムおよびアクチュエータは、それぞれ、1個以上の穴(オリフィス)およびチャネルを含み、その数、大きさおよび形は、特定の組成物製剤の物理的性質に関連して、バルブを通る流速、および、アクチュエータから出るスプレーの性質の双方を制御するように決定される。
【0019】
スプレーパターンおよび流速は、アクチュエータアセンブリにおける末端オリフィスを提供するアクチュエータの出口オリフィスに適合させた別のインサートによって制御されてよい。インサートを通って出口に繋がるチャネルは、典型的に、アクチュエータチャネルからインサートチャネルに出る流体が、渦を巻いて、液滴へと分裂するように、アクチュエータ本体中でチャネルより直径の狭い部分を含む。組成物が通常の回転運動よりむしろ前進運動で前進して末端のオリフィスから出るように、インサートを形作ってもよく、例えば階段状にしてもよい。これにより、均一な、または固形化したスプレーパターンが生じ、従って、使用者が、処置される皮膚領域に組成物をよりよく集中させるのを可能にする。
【0020】
本発明の組成物の吸入が望ましくないため、流体チャネル、オリフィス、インサートなどは、放出時の微細な霧の発生を避けるよう選択されることが好ましい。
【0021】
バルブアセンブリは、アクチュエータの作動毎に定量の組成物のみを分配することを可能とする定量バルブを含んでもよい。
【0022】
保存、安全性および/または衛生上の理由のために、アクチュエータには、それと別個のまたはそれと一体となった保護フードまたはオーバーキャップを施してよい。オーバーキャップは、末端オリフィスを封じる1番目の位置から、オリフィスを露出する2番目の位置に移動可能であってもよい。2番目の位置において、カバーはまた、スプレー領域を限定することによって指向性ノズルとして機能してもよい。アクチュエータ自身は、単純なボタンアクチュエータを含んでも、例えば押し上げ式またはネジ式のロックを含んでもよい。他の配置において、一体型フィンガーアクチュエータを有するオーバーキャップは、容器を安全にして、下にあるアクチュエータボタンをカバーしてもよい。オーバーキャップの下側は、例えば、オペレーターの指の圧力によって動くときに、アクチュエータボタンを接触させてバルブを開けるきっかけとなるための複数の突起を含んでもよい。
【0023】
これとは別に、またはこれに加えて、アクチュエータは、バルブが故意にまたは偶発的に作動するのを防ぐ1番目の位置から、2番目の作動位置の間で移動可能であってもよい。例えば、バルブアセンブリの部分は、或る回転位置ではアクチュエータが製品を分配するよう作動可能である一方、他の回転位置ではアクチュエータが作動を防ぐように容器上の突起または迫台を配置するように、バルブステムについて回転可能であってもよい。このような“ネジ式スプレー”メカニズムは、開く位置および閉じる位置が触ってわかるかまたは聞いてわかる指示を含んでもよい。
【0024】
エアゾール容器を最初に使用する前に破らなければならない不正使用防止用タブによる封入が望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1a図1aは、100% ジメチルエーテル(DME)中およびDMEとブタンの異なる比の連続相中(図1a)、および、連続相および分散相の混合物中(図1b)のカルシポトリオールの溶解度を示すグラフである。
図1b図1bは、100% ジメチルエーテル(DME)中およびDMEとブタンの異なる比の連続相中(図1a)、および、連続相と分散相の混合物中(図1b)のカルシポトリオールの溶解度を示すグラフである。
図2a図2aは、100% DME中およびDMEとブタンの異なる比の連続相中(図2a)、および、連続相と分散相の混合物中(図2b)のベタメタゾンジプロピオン酸エステル(BDP)の溶解度を示すグラフである。
図2b図2bは、100% DME中およびDMEとブタンの異なる比の連続相中(図2a)、および、連続相と分散相の混合物中(図2b)のベタメタゾンジプロピオン酸エステル(BDP)の溶解度を示すグラフである。
図3図3は、同様に適用したDaivobet(登録商標) 軟膏からのカルシポトリオールの浸透と比較した、適用2時間後、6時間後および21時間後の本発明の組成物Eから生きた皮膚へのカルシポトリオール(MC 903)の浸透を示すグラフである。
図4図4は、同様に適用したDaivobet(登録商標) 軟膏からのBDPの浸透と比較した、適用2時間後、6時間後および21時間後の本発明の組成物Eから生きた皮膚へのBDPの浸透を示すグラフである。
図5図5は、ヒトのケラチン生成細胞中の、カテリシジンをコードする遺伝子のビタミンDによる活性化の概略図である。カテリシジン遺伝子活性化のメカニズムは、下記の実施例5で詳細に記載する通り、本発明のカルシポトリオール含有組成物がカテリシジンを活性化するために適用される再構築されたヒトの表皮(ヒトの皮膚の特徴を示す表皮層を形成するよう培養されたヒトのケラチン生成細胞)を用いて、生物学的アッセイに用いられる。
図6a図6aは、本発明の加圧されたスプレー組成物のために意図された容器の断面図を示し、該容器は、バルブキャップ(3)、バルブ本体(5)、アクチュエータ(4)および浸漬管(2)を含むバルブアセンブリを備え付けた容器本体(1)を含む。この態様で示す通り、本発明の組成物は、組成物相(6)および蒸気相(8)を含む2相系であってもよい。
図6b図6bは、本発明の加圧されたスプレー組成物のために意図された容器の断面図を示し、該容器は、バルブキャップ(3)、バルブ本体(5)、アクチュエータ(4)および浸漬管(2)を含むバルブアセンブリを備え付けた容器本体(1)を含む。この態様で示す通り、本発明の組成物は、ビークル相(6)、噴射剤相(7)および蒸気相(8)の3相系であってもよい。
図7図7は、容器本体(1)に据え付けるためのバルブアセンブリの断面図を示し、該バルブアセンブリは、容器本体(1)とバルブキャップ(3)の間にシーリング(31)を提供されたバルブキャップ(3)およびガスケット(32)、バルブステム(51)およびスプリング(53)を提供されたバルブ本体(5)、アクチュエータ(4)が押し下げられたときに容器本体(1)中に存在する組成物を放出する末端オリフィス(41)を有するインサート(44)を提供された、バルブ本体と連結しているアクチュエータ(4)を含む。バルブステム(51)は、アクチュエータが押し下げられたときに容器本体(1)中に存在する組成物が流れる開口(52)を含む。バルブ本体には、さらに、浸漬管(2)が連結している尾部(55)を提供する。尾部(55)には、浸漬管(2)から組成物が流れ出ることを可能とする開口(54)を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の詳細な説明
定義
用語“ビタミンD誘導体”は、ビタミンDの生物活性な代謝物、例えばカルシトリオール、または当該代謝物に対する前駆体、例えばアルファカルシドールを示すことが意図される。
【0027】
用語“ビタミンD類似体”は、ビタミンDの側鎖を修飾したおよび/またはビタミンD骨格自身を修飾したビタミンD骨格を含む合成化合物を示すことが意図される。該類似体は、ビタミンD受容体に対して天然由来ビタミンD化合物に匹敵する生物活性を示す。
【0028】
“カルシポトリオール”は、式:
【化1】
のビタミンD類似体である。
【0029】
カルシポトリオールは、2種の結晶形、すなわち無水和物および一水和物で存在することが見出された。カルシポトリオール 一水和物およびその製造は、国際公開第94/15912号で開示される。
【0030】
用語“保存安定性”または“保存安定な”は、組成物が、冷蔵で、または好ましくは室温で、組成物を市販するのに十分な時間、例えば少なくとも12月、特に少なくとも18月、好ましくは少なくとも2年、組成物を保存できる化学的および物理的安定性を示すことを表すことが意図される。
【0031】
用語“化学的安定性”または“化学的に安定な”は、製品の貯蔵寿命の間、典型的には室温で2年間で、有効成分の10%以上、好ましくは6%以上が分解しないことを意味することが意図される。室温の化学的安定性の近似は、組成物を40℃で加熱棚に置いて、サンプルを1月目、2月目および3月目に採取して、HPLCによって分解生成物の存在を試験する40℃での加速安定性試験を、組成物について行うことによって得られる。40℃で3月後に分解した物質が約10%未満であれば、通常、これは室温で2年の貯蔵寿命に対応するとされる。本組成物に含まれる有効成分がカルシポトリオールであるとき、“化学的安定性”は、通常、カルシポトリオールが、最終医薬品において経時的に24−エピカルシポトリオールまたは他の分解生成物に有意に分解しないことを意味することを示す。
【0032】
用語“物理的安定性”または“物理的に安定な”は、本組成物の貯蔵寿命にわたって、有効成分が、噴射剤またはビークル相から沈殿しないことを意味することが意図される。
【0033】
用語“実質的に無水”は、軟膏組成物中の自由水の含量が、本組成物の約2重量%を超えない、好ましくは約1重量%を超えないことを意味することが意図される。
【0034】
用語“中鎖トリグリセリド”は、6〜12個の炭素原子の鎖長を有する脂肪酸のトリグリセリド エステルを示すために用いられる。このような中鎖トリグリセリドの現在好ましい例は、例えば、商品名Miglyol 812で利用可能なカプリル酸(C)およびカプリン酸(C10)トリグリセリドの混合物である。
【0035】
用語“可溶化能”は、ある物質を溶解する溶媒または溶媒混合物の能力を示すことが意図され、物質の完全な可溶化を行うのに必要な量として表される。
【0036】
用語“半固体”は、粘弾性の挙動を示し、非ニュートン性である、すなわち低剪断力では流れないが、室温で高剪断速度で可塑性、擬可塑性またはチキソトロピー流動性の挙動を示す組成物または添加物を表すために用いられる。半固体組成物の典型的な例は、軟膏およびクリームである。
【0037】
用語“密封性”は、経皮水分喪失を減らして皮膚の水和をもたらすのに十分な水和障壁を形成する皮膚表面への液体層の供給を示すことが意図される。
【0038】
用語“皮膚浸透”は、種々の皮膚の層、すなわち角質層、表皮、真皮への有効成分の拡散を意味することが意図される。
【0039】
用語“皮膚透過”は、皮膚を通じた体循環への、または、下記の実施例4に示すようなインビトロ試験の場合では実験で用いられるFranzセル装置のレセプター液への、有効成分の流入を意味することが意図される。
【0040】
用語“生物学的活性”は、本発明の組成物において、皮膚に適用したときのビタミンD誘導体または類似体の活性を意味することが意図される。組成物の生物学的活性は、下記の実施例5に詳細に記載する通り、培養されたヒトのケラチン生成細胞に関する再構築されたヒト表皮モデルにおいて、カテリシジンをコードする標的遺伝子の活性化を測定するインビトロアッセイで決定される。
【0041】
本発明の具体的態様
本発明の組成物に含まれるビタミンD誘導体または類似体は、カルシポトリオール、カルシトリオール、タカルシトール、マキサカルシトール、パリカルシトールおよびアルファカルシドールから選択されてもよい。乾癬の処置に有効なことが示されている好ましいビタミンD類似体は、カルシポトリオールである。溶媒混合物に溶解する前、カルシポトリオールは、水和物または一水和物の形態であってもよく、好ましくは一水和物である。
【0042】
本発明の組成物に含まれるコルチコステロイドは、アムシノニド、ベタメタゾン、ブデソニド、クロベタゾール、クロベタゾン、コルチゾン、デソニド、デスオキシコルチゾン、デスオキシメタゾン、デキサメタゾン、ジフルコルトロン、ジフロラゾン、フルコルチゾン(flucortisone)、フルメタゾン、フルニソリド、フルオシノニド、フルオシノロン、フルオロメトロン、フルプレドニゾロン、フルランドレノロン(flurandrenolide)、フルチカゾン、ハルシノニド、ハロベタゾール、ヒドロコルチゾン、メプレドニゾン、メチルプレドニゾン、モメタゾン、パラメタゾン、プレドニカルベート、プレドニゾン、プレドニゾロンおよびトリアムシノロンからなる群から選択されるもの、またはその薬学的に許容されるエステルまたはアセトニドであってもよい。コルチコステロイドは、好ましくは、ベタメタゾン、ブデソニド、クロベタゾール、クロベタゾン、デスオキシメタゾン、ジフルコルトロン、ジフロラゾン、フルオシノニド、フルオシノロン、ハルシノニド、ハロベタゾール、ヒドロコルチゾン、モメタゾンおよびトリアムシノロンから選択されるもの、またはその薬学的に許容されるエステルであってもよい。コルチコステロイド エステルは、例えば、ベタメタゾン酢酸エステル、ベタメタゾンジプロピオン酸エステル、ベタメタゾン吉草酸エステル、クロベタゾールプロピオン酸エステル、デキサメタゾン酢酸エステル、フルメタゾンピバル酸エステル、フルチカゾンプロピオン酸エステル、ヒドロコルチゾン酢酸エステル、ヒドロコルチゾン酪酸エステルまたはモメタゾンフランカルボン酸エステルであってもよい。アセトニドは、フルオシノロン アセトニドまたはトリアムシノロン アセトニドから選択されるものであってもよい。
【0043】
本発明の組成物は、下記の溶媒のクラス:
(a) 一般式I:
【化2】
[式中、Rは、直鎖または分枝鎖のC1−20アルキルであり、xは2〜60の整数である。]
の化合物;
(b) 直鎖または分枝鎖のC10−18アルカン酸またはアルケン酸のイソプロピル エステル;
(c) C8−14アルカン酸またはアルケン酸のプロピレン グリコール ジエステル;
(d) 直鎖または分枝鎖のC8−24アルカノールまたはアルケノール;
(e) 高精製植物油、例えば中鎖トリグリセリドまたは長鎖トリグリセリド;および
(f) N−アルキルピロリドンまたはN−アルキルピペリドン;
の少なくとも1つから選択される、非蒸発油性共溶媒をさらに含んでもよい。
【0044】
油性共溶媒は、有効成分が噴射剤の蒸発時に皮膚上で迅速に結晶化しないが、皮膚に浸透し得る飽和溶液として皮膚上に存在するように、噴射剤または噴射剤混合物への組成物の可溶化能を維持するために提供されてもよい (Reid et al, Pharm. Res. 25 (11), 2008, pp. 2573-2580を参照のこと。)。
【0045】
一つの態様において、本発明の組成物に含まれる油性共溶媒は、一般式Iの化合物、例えばポリオキシプロピレン−15−ステアリル エーテル、ポリオキシプロピレン−11−ステアリル エーテル、ポリオキシプロピレン−14−ブチル エーテル、ポリオキシプロピレン−10−セチル エーテルまたはポリオキシプロピレン−3−ミリスチル エーテルであってもよい。
【0046】
他の態様において、油性共溶媒は、直鎖または分枝鎖のC10−18アルカン酸またはアルケン酸のイソプロピルエステル、例えばミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソプロピル、リノール酸イソプロピルまたはモノオレイン酸イソプロピルであってもよい。
【0047】
さらなる態様において、油性共溶媒は、C8−14アルカン酸のプロピレン グリコール ジエステル、例えばプロピレン グリコール ジペラルゴネートであってもよい。
【0048】
また、さらなる態様において、油性共溶媒は、直鎖のC8−24アルカノール、例えばカプリル、ラウリル、セチル、ステアリル、オレイル、リノレイルまたはミリスチル アルコール、あるいは、分枝C8−24アルカノール、好ましくはC18−24アルカノール、例えば2−オクチルドデカノールであってもよい。
【0049】
また、さらなる態様において、油性共溶媒は、N−アルキルピロリドン、例えばN−メチルピロリドンである。
【0050】
本発明をもたらす研究において、驚くべきことに、噴射剤として純粋なC3−5アルカン類、例えばブタンを使用すると、有効成分が十分に溶解せず、その結果、経時的にビタミンD類似体が溶液から沈殿して、コルチコステロイドの結晶成長が観察され、すなわち、本組成物が組成物の貯蔵寿命において物理的に安定でないことが見出された。驚くべきことに、ジメチルエーテルをそれ自身噴射剤として用いたとき、または、ある割合のジメチルエーテルをC3−5アルカン類に添加して噴射剤混合物を形成するときにさえ、この問題は起こらないことが見出された。従って、現在好ましい態様において、本発明の組成物は、単独の噴射剤としてまたは噴射剤混合物の第1噴射剤としてジメチルエーテルを含む。
【0051】
本発明の組成物において、噴射剤混合物の第2噴射剤は、好ましくは、C3−5アルカン類であり、好ましくはn−プロパン、イソプロパン、n−ブタンまたはイソブタンからなる群から選択されるものである。特に好ましいC3−5アルカン類は、n−ブタンおよび/またはイソブタンである。
【0052】
噴射剤混合物において、n−ブタンおよび/またはイソブタン:ジメチルエーテルの比は、好ましくは、6:1〜0:1(v/v)の範囲であってもよく、例えば5:1〜1:2、4:1〜1:1、4:2〜1:1、4:2〜4:3または4:3〜1:1の範囲である。
【0053】
特定の態様において、本組成物は、
(a) 約0.00001〜0.05%(w/w)のビタミンD誘導体または類似体、
(b) 約0.0005〜1%(w/w)のコルチコステロイド、
(c) 約5〜55%(w/w)の脂質担体、および、
(d) 約45〜95%(w/w)の噴射剤または噴射剤混合物
を含む。
【0054】
より具体的には、本発明の組成物は、約10〜50%(w/w)、約15〜45%(w/w)または約20〜40%(w/w)の脂質担体を含んでもよい。
より具体的には、本発明の組成物は、約50〜90%(w/w)または約55〜70%(w/w)の噴射剤または噴射剤混合物を含んでもよい。
【0055】
具体的な態様において、本発明の組成物は、約0.1〜10%(w/w)の上で定義した油性溶媒、例えば約0.5〜3%(w/w)、約1〜2.5%(w/w)または約1.5〜2%(w/w)の油性溶媒をさらに含んでもよい。
【0056】
脂質担体は、C〜C60の範囲の鎖長を有する炭化水素であっても炭化水素の混合物であってもよい。しばしば用いられる軟膏担体は、ペトロラタム、または、約C40−44に異なる鎖長ピークを有する炭化水素から構成される白色軟パラフィン、または、ペトロラタムと液体パラフィン(C28−40に異なる鎖長ピークを有する炭化水素からなる)の混合物である。白色軟パラフィンは処置された皮膚表面を密封し、経皮水分喪失を減少させ、組成物中の有効成分の治療効果を強める一方で、適用後にかなり長い時間持続する、脂っぽいかまたはべとつく感触を有する傾向がある。従って、幾らか短い鎖長の炭化水素からなるパラフィン類、例えばC14−16、C18−22、C20−22、C20−26に鎖長ピークを有する炭化水素またはそれらの混合物からなるパラフィンを用いることが好ましい。このようなパラフィン類は、適用時にそれほど脂っぽくないかまたはべとつかない点で、より美容上許容されることが見出された。本発明の組成物にこのようなパラフィンを含めることは、従って、患者コンプライアンスを改善すると予測される。このタイプの適当なパラフィン類は、ペトロラタムゼリーと呼ばれ、Sonnebornにより製造され、商品名Sonnecone、例えばSonnecone CM、Sonnecone DM1、Sonnecone DM2およびSonnecone HVで販売されている。これらのパラフィン類は、さらに、国際公開第2008/141078号(言及することによって本明細書に組み込まれる)で開示され、特性決定されている。その好ましい化粧品特性に加えて、驚くべきことに、これらのパラフィン類を含む組成物は、慣用のパラフィン類(パラフィンの炭化水素組成はガスクロマトグラフィーによって決定)を含む組成物より耐性があることが見出された。脂質担体はまた、イソパラフィン類、例えばイソヘキサデカンであってもよい。
【0057】
本発明の組成物は、適当には、適用および噴射剤の蒸発後に皮膚上に半固体密封層を形成する性質を脂質担体に与えることができる親油性粘度増大成分を含んでもよい。親油性粘度増大成分は、適当には、高分子量炭化水素類、例えば飽和C35−70アルカン類の混合物からなるミネラル・ワックス、例えば微晶性ワックスであってもよい。あるいは、ワックスは、植物ワックスまたは動物ワックスであってもよく、例えば、C14−32脂肪酸とC14−32脂肪アルコールのエステル、例えば蜜蝋、シリコン・ワックスまたは水素化ヒマシ油、またはそれらの混合物である。粘度増大成分の量は、典型的に、組成物の約0.01〜5重量%の範囲であってもよい。粘度増大成分が水素化ヒマシ油であるとき、それは、典型的に、組成物の約0.05〜1重量%、例えば約0.1〜0.5重量%の範囲の量で存在する。
【0058】
本組成物は、乾癬斑の厚くなった表皮を柔らかくするよう作用し得る皮膚軟化剤をさらに含んでもよい。シリコンの存在が皮膚へのカルシポトリオールの浸透を助けることがさらに見出されたことから、本発明の組成物に含まれるのに適当な皮膚軟化剤は、揮発性シリコンオイルであってもよい。シリコンオイルを含む組成物はまた、皮層刺激がより少なくなることが見出された。本発明の組成物に含まれるのに適当なシリコンオイルは、シクロメチコンおよびジメチコンから選択されてもよい。本発明の組成物に含まれるシリコンオイルの量は、典型的に、0.3〜3%(w/w)、例えば約0.5〜1.5%(w/w)の範囲である。
【0059】
本発明の組成物はまた、皮膚製剤に一般的に使用される他の成分、例えば抗酸化剤(例えばα−トコフェロール)、保存料、顔料、皮膚無痛化剤(skin soothing agents)、皮膚治癒剤および皮膚コンディショニング剤、例えば尿素、グリセロール、アラントインまたはビサボロールを含んでもよい(CTFA Cosmetic Ingredients Handbook, 2nd Ed., 1992を参照のこと。)。好ましい態様において、本組成物は、抗刺激剤、例えばメントール、ユーカリプトールまたはニコチンアミドを含んでよい。皮膚へのカルシポトリオールの浸透を増加させることが見出されたため、現時点で好ましい抗刺激剤は、メントールである(図1参照)。メントールは、組成物中で、組成物の約0.001〜1%(w/w)、特に約0.002〜0.003%(w/w)の量で含まれていてもよい。
【0060】
本発明の組成物は、処置を必要とする患者に、有効量の本発明の組成物を局所投与することによって、乾癬、脂漏性乾癬、掌蹠膿疱症、皮膚炎、魚鱗癬、酒さおよび挫瘡、ならびに関連する皮膚疾患の処置に使用され得る。当該方法は、好ましくは、1日1回または2回の治療上十分な量の当該組成物の局所投与を含む。そのためには、本発明の組成物は、好ましくは、約0.001〜0.5mg/g、好ましくは約0.002〜0.25mg/g、特に0.005〜0.05mg/gのビタミンD誘導体または類似体を含む。本発明の組成物は、これらの皮膚疾患の維持処置のために、すなわち症状の再発を遅延させるための疾患の可視症状の消滅後の継続した処置のために、好都合に用いられ得ると認識される。
【0061】
さらなる局面において、本発明は、皮膚患部に局所組成物を分配するよう適合させた加圧容器であって、本発明の組成物、および、スプレーの形態で組成物を放出するためのバルブアセンブリおよびアクチュエータを含む容器に関する。
【0062】
図6aおよび6bに示される通り、加圧製品に適当な容器の例は、本組成物が保存される容器本体(1)、浸漬管(2)、ならびに、バルブキャップ(3)、バルブ本体(5)およびアクチュエータ(4)を含むバルブアセンブリで構成されてもよい。
【0063】
典型的に、容器本体(1)は、金属、ガラス、セラミックス、ポリエステル、ポリエチレン テレフタラート(PET)または他のポリマーなどの材料から構成されてもよい。ガラス容器には、衝撃で硬い表面と共に形成され得るガラス破片を含むポリプロピレンなどの安全コーティングを提供してもよい。金属容器本体は、よりよく衝撃に耐え、表面コーティングしやすいため、現在好ましい。ステンレス鋼、錫板およびアルミニウム(すなわち陽極酸化したアルミニウムを含むアルミニウムまたはアルミニウム合金)の容器本体は、この目的に特に適当な材料であり、アルミニウムは、軽くて、容易に壊れないために、現在好ましい。
【0064】
金属容器は、典型的に、組成物を金属との反応から保護するために、不活性材料で裏打ちされるかまたはコートされ、それによって、有効成分または組成物の他の成分の何らかの分解を防ぐかまたは実質的に排除する。
【0065】
不活性材料は、組成物と容器の間の全ての化学的相互作用を防ぐために、容器と組成物の間で障壁を作る何れかの適当なポリマー、ラッカー、樹脂または他のコーティング処理を含む。好ましくは、不活性材料は、非金属コーティングである。
【0066】
金属容器のための既知のコーティングは、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂およびビニル樹脂を含む。しかし、ビタミンD誘導体または類似体を含む組成物は、酸性条件下または酸性反応性化合物の存在下で、化学的に分解する可能性がある。さらに、コルチコステロイドは、アルカリ条件下またはアルカリ性反応性化合物の存在下で、化学的に分解することが知られている。従って、本発明の組成物と共に使用する容器コーティングは、好ましくは、それ自身酸性反応性またはアルカリ反応性を示さないように、かつ、組成物の存在下でそれから酸性またはアルカリ性反応性不純物が滲み出ないように選択されるべきである。
【0067】
本発明をもたらす研究において、例えば、特定のエポキシフェノール樹脂内部ラッカーが、有効成分の1つと混和可能でなく、カルシポトリオールの許容されない化学的分解を引き起こすことが見出された。このような分解は、おそらくは、酸性基を含むコロホニウムのラッカーの存在によるものであろう。他方、ポリイミド−ポリアミド樹脂が内部コーティングとして用いられたとき、カルシポトリオールの化学的安定性は満足のいくものであった。
【0068】
ポリイミド−ポリアミド・コーティングに加えて、金属容器の内部を裏打ちするのに適当な他の材料は、ポリアミド類、ポリイミド類、ポリプロピレン、ポリエチレン、パーフルオロエチレンプロピレン・コポリマー(FEP)を含むフルオロポリマー、フッ素ゴム(FPM)、エチレン−プロピレンジエンモノマーゴム(EPDM)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン テトラフルオロエチレン コポリマー(EFTE)、パーフルオロアルコキシアルカン類、パーフルオロアルコキシアルキレン類、または、非フッ化炭素ポリマーとフルオロポリマーの混合物を含む。フルオロポリマーは、例えば、ポリイミド−ポリアミド樹脂と組み合わせて用いられてもよい。
【0069】
容器コーティング材料は、単層として、または例えばさらなる層の適用前に各層を硬化させる多層として適用されてもよい。組成物を金属容器から保護すると共に、1以上のコーティングの適用はまた、容器の壁への有効成分の付着を妨げるのを助け得る。
【0070】
同じ理由のために、組成物と接触する容器のバルブ部品はまた、好ましくは、組成物の分解を起こさない材料で作られているか、またはコートされていてもよい。例えば、金属のバルブ部品、例えばバルブキャップは、陽極酸化された銀、エポキシメラミンまたはポリプロピレンでコートされていてもよい。
【0071】
容器からの漏れ、特に噴射剤の漏れを阻止すると共に、容器内のガスケットまたは封止剤に用いられる材料はまた、好ましくは、化学的に不活性であるべきである。例えば、容器本体およびバルブキャップを、少なくとも一部が組成物と接触するよう露出される中間ガスケットを用いて一緒に圧着させ、従って、該ガスケットが不活性材料で作られていなければ、結果として組成物の分解を経時的に起こし得る。
【0072】
慣用のエアゾール容器バルブ中のガスケットに用いられる材料の広範囲の試験により、硫黄含有促進剤(例えばチアゾール類)を用いた加硫によって製造されるポリマー材料が、本発明の組成物を含むことが意図された容器のためのガスケット材料として適当でないことが立証され、これは、おそらくは、化学的分解を引き起こす硫黄含有残渣または不純物と有効成分の一方または両方との反応性に起因する。
【0073】
同様に、本発明の組成物に含まれる噴射剤を透過できるガスケット材料は、本発明の目的のためのガスケット材料として適当でない。
【0074】
本発明の組成物と共に使用するのに適当なガスケットまたは封止剤の材料は、フルオロエラストマー(例えばViton V 600)、フッ素化エチレン−プロピレンコポリマー(FEP)、フッ素ゴム(FPM、例えばVI500)、または、エチレン−プロピレンジエンモノマーゴム(EPDM)を含む。
【0075】
浸漬管に適当な材料は、例えばポリエチレンおよびポリプロピレンであることが見出された。バルブステムに適当な材料は、例えばポリアミドおよびアセタール(POM)であることが見出された。
【0076】
図6bに示される態様において、本組成物は、ビークル相(6)、噴射剤相(7)および蒸気相(8)を含む。この態様において、スプレー容器は、ビークル相(6)が噴射剤相(7)中で均一に懸濁されるように、使用前に徹底的に振盪されるべきである。
【0077】
図7で示される通り、バルブアセンブリは、典型的に金属、例えばアルミニウムから作られるバルブキャップ(3)、圧着によりそれに連結した容器本体(1)、バルブステム(51)およびスプリング(53)を含むバルブ本体(5)、容器から本組成物を放出するよう作動するために押し下げられる、バルブ本体に連結したアクチュエータ(4)で構成されてもよい。バルブステム(51)は、アクチュエータ(4)が押し下げられたときに容器中に存在する組成物が流れる0.05〜1mmの直径を有する少なくとも1個の開口(52)を含む。バルブステム開口(52)には、好ましくは、容器を異なる位置で、例えば逆さままたは横向きで用いることを可能にするようボールを提供してもよい。
【0078】
アクチュエータ(4)には、組成物が放出される直径0.3〜1.5mmの末端オリフィス(41)を有するインサート(44)を提供する。アクチュエータ(4)は、製品の均一なスプレーを確実にするのに十分な程小さいが、容器から放出されたときに、組成物の液滴が、生物学的に活性な物質を含む液滴を偶然吸入し得るような微細な霧を形成しない程大きい大きさの液滴を有するエアゾールスプレーをオリフィス(41)から提供するよう設計されるべきである。
【0079】
インサートオリフィス(41)およびバルブステム開口(52)の大きさ、および、容器内の圧力は、一般的に、組成物が開口(4)から放出されるときに形成されるスプレーコーンの幅を決定し、結果として、スプレーされた組成物によって覆われる領域の大きさを決定する。
特定の態様において、容器に、組成物の用量を測定する手段を提供してもよい。
【0080】
本発明は、下記の実施例によってさらに説明されるが、それは特許請求される本発明の範囲を限定することを一切意図しない。
【実施例】
【0081】
実施例1
異なる噴射剤混合物中のカルシポトリオールおよびBDPの溶解度試験
2×12個の100mlのバルブおよびアクチュエータを取り付けたガラス瓶に、67mgのBDP、13mgのカルシポトリオール、20gのビークル(液体パラフィン、白色軟パラフィンおよびPPG−15−ステアリル エーテルを含む)、および、表1に示す通りに変化させた量のDMEおよびブタンを含む組成物を充填した。組成物は連続相を形成し、分散相は白色軟パラフィン中に存在する長鎖アルカン類(鎖中に≧50個の炭素原子を有する)で構成されると推定される。分散相は、放置したとき、組成物の底部に沈殿した。従って、組成物の上部は、連続相のみを含み、一方、組成物の底部は、連続相と分散相の混合物で構成された。
【0082】
<表1>
【表1】
C1-9は、瓶中の連続相から採取したサンプルである。
D1-9は、瓶中の連続相および分散相の混合物から採取したサンプルである。
【0083】
サンプリングする前に、内容物が均一となるまで瓶を激しく振盪し、その後、瓶を暗所に一夜放置し、瓶の底部に、連続相と混合して、分散相の沈降が起こった。バルブに連結して連続相または混合連続相−分散相に至る浸漬管を通じて、組成物の上部および底部からサンプルを採取し、何れかの相のサンプルを褐色のガラスにスプレーした。分散相が組成物の底部に沈殿したままとなるように、処理の間で瓶を振盪しないよう注意した。スプレーしたサンプルを、噴射剤が蒸発するまで、水浴上で、40℃で5時間置いた。サンプルを室温で1時間冷却した。
【0084】
各サンプル中に存在するカルシポトリオールおよびBDPの量を、下記の作動条件下でHPLCによって測定した。
カラム:Agilent Zorbas Eclipse Plus C18, 150×4.6mm, 3.5μm
移動相:アセトニトリル/メタノール/0.01M (NH)HPO, pH 6.0, 25:45:30(v/v/v)
流速:1.2ml/分
検出:225〜320nm
カルシポトリオールについては264nmで、BDPについては240nmで計算
カラムオーブン:30℃
オートサンプラー:20℃
ランタイム:30分
注入:80μl
【0085】
カルシポトリオールについての結果を図1aおよび1bに、BDPについての結果を図2aおよび2bに示す。図から、カルシポトリオールおよびBDPが両方とも、ブタン:DMEの比4:3で、噴射剤相およびビークル相の両方に完全に溶解していることが明らかである。さらに、カルシポトリオールおよびBDPが、噴射剤としての100% DMEに完全に溶解していることが明らかである。
【0086】
組成物中のカルシポトリオールおよびBDPの物理的安定性を、偏光顕微鏡によって測定した。この結果により、組成物を4月間放置したとき、カルシポトリオールまたはBDPの何れもが再結晶しないことが示された。
【0087】
実施例2
ビークル組成物
組成物A〜E
組成物A〜Eを調製するために、白色軟パラフィンを80℃で融解し、続いて70℃に冷却してその温度に維持した。カルシポトリオール 一水和物をポリオキシプロピレン−15−ステアリル エーテルに溶解して溶液を形成し、それを融解したパラフィンに撹拌しながら加えた。BDPを液体パラフィンに分散し、分散液をカルシポトリオール含有パラフィン混合物に撹拌しながら加え、その後、混合物を30℃未満まで冷却した。ポリアミド−ポリイミド内部ラッカー(HOBA 8460)を提供されたアルミニウムスプレー容器に、混合物30gを移し、その後、圧着によってバルブキャップを容器本体に固定化した。チューブを通じて必要量の噴射剤混合物を加え、その後、カルシポトリオールおよびBDPを完全に溶解させるために容器を5分間振盪した。
【0088】
【表2】
【0089】
【表3】
【0090】
【表4】
【0091】
【表5】
【0092】
【表6】
【0093】
組成物F
組成物Fを調製するために、水素化ヒマシ油を液体パラフィンと共に85〜90℃で融解し、均一化しながら約60℃まで冷却する。混合物を撹拌しながら25〜30℃まで冷却する。BDPを液体パラフィンに懸濁し、均一化された混合物に加える。カルシポトリオール 一水和物をポリプロピレン−15−ステアリル エーテルに溶解し、他の成分の混合物に加え、有効成分を確実に均一に分布させるために製剤を均一化した。ポリアミド−ポリイミド内部ラッカー(HOBA 8460)を提供されたアルミニウムスプレー容器に、混合物30gを移し、その後、圧着によってバルブキャップを容器本体に固定化する。チューブを通じて必要量の噴射剤混合物を加え、その後、カルシポトリオールおよびBDPを完全に溶解させるために、容器を5分間振盪する。
【0094】
【表7】
【0095】
組成物GおよびH
組成物Gを調製するために、N−メチルピロリドン中のカルシポトリオール 一水和物の溶液を、中鎖トリグリセリド類およびポリオキシプロピレン−15−ステアリル エーテルと混合する。Sonnecone DM1および微晶性ワックスを80〜85℃で融解し、液体パラフィン中のα−トコフェロールの溶液を、融解するまで、撹拌しながら80℃で加える。70〜75℃まで冷却した後、カルシポトリオール 一水和物を含む溶媒混合物を、撹拌しながら加える。約40℃まで冷却した後、メントールを加え、得られた混合物を、30℃未満まで冷却しながら撹拌する。ポリアミド−ポリイミド内部ラッカー(HOBA 8460)を提供されたアルミニウムスプレー容器に、混合物30gを移し、その後、圧着によってバルブキャップを容器に固定化する。チューブを通じて必要量の噴射剤混合物を加え、その後、カルシポトリオールおよびBDPを完全に溶解させるために、容器を5分間振盪する。
【0096】
【表8】
【0097】
組成物Hを調製するために、白色軟パラフィンを80〜85℃で融解し、70〜75℃まで冷却し、溶媒混合物を撹拌しながら加える。ポリアミド−ポリイミド内部ラッカー(HOBA 8460)を提供されたアルミニウムスプレー容器に、混合物30gを移し、その後、圧着によってバルブキャップを容器本体に固定化する。チューブを通じて必要量の噴射剤混合物を加え、その後、カルシポトリオールおよびBDPを完全に溶解させるために、容器を5分間振盪する。
【0098】
【表9】
【0099】
組成物I〜P
組成物Iを調製するために、中鎖トリグリセリド類、カプリル酸/カプリン酸グリセリドおよびポリオキシル 40 水素化ヒマシ油を混合し、混合物をマグネチックスターラーで50℃で15分間撹拌する。カルシポトリオール 一水和物を、マグネチックスターラーを用いて、40℃で15分間溶解する。白色軟パラフィンを80℃で融解する。カルシポトリオール 一水和物を含む3成分界面活性剤−溶媒混合物を、融解したパラフィンに加え、軟膏混合物が均一になるまで泡立てる。均一化された混合物を、撹拌しながら、30℃まで冷却する。組成物Jは、カプリル酸/カプリン酸グリセリドの代わりにグリセロール モノオレート 40を共界面活性剤として用いる以外、同様の方法で調製される。ポリアミド−ポリイミド内部ラッカー(HOBA 8460)を提供されたアルミニウムスプレー容器に、混合物30gを移し、その後、圧着によってバルブキャップを容器本体に固定化する。チューブを通じて必要量の噴射剤混合物を加え、その後、カルシポトリオールおよびBDPを完全に溶解させるために、容器を5分間振盪する。
【0100】
【表10】
【0101】
組成物K〜Pは、下記の表に示す通りに界面活性剤、共界面活性剤および溶媒を適切に置き換える以外、組成物Iと同様の方法で調製される。
【表11】

【表12】
【0102】
実施例3
異なる組成物中のカルシポトリオールおよびBDPの化学的安定性
上記の実施例2に記載した通りに調製した組成物Eを、スプレー容器中で、40℃で3月間保存した。1月間、2月間および3月間保存後、それぞれ、組成物のサンプルを採取し、カルシポトリオールおよびBDP、ならびに可能性のある分解生成物(関連する不純物)の含量を、HPLCによって測定した。下記の表に、理論上の当初量のパーセントを示す。
【0103】
【表13】
【0104】
この結果より、40℃で3月後のカルシポトリオールの喪失量と測定された不純物の量が一致しないことが明らかである。このことは、カルシポトリオールの見かけの喪失量が、保存の間のカルシポトリオールの分解の結果ではなく、他の原因、例えば容器の部品の1個以上、おそらくは浸漬管または内部ラッカーへのカルシポトリオールの吸着などに帰することを示唆する。従って、我々は、両方の有効成分は、示された条件下で化学的に安定であり、このことは、組成物が25℃で約2年の貯蔵寿命を有することを示唆すると結論付けた。
【0105】
実施例4
浸透試験
本発明の組成物からのカルシポトリオールの皮膚浸透および透過を調べるために、皮膚拡散実験を行なった。豚耳由来の十分な厚さの皮膚を本試験で用いた。使用前は耳を−18℃で冷凍した。試験前日、ゆっくりと解凍するために耳を冷蔵庫(5±3℃)に入れた。試験の日に、獣医用ヘア・トリマーを用いて毛を除去した。メスを用いて皮膚から皮下脂肪を除去し、2片の皮膚を各耳から切断し、平衡の順でFranz拡散セルにマウントした。
【0106】
実質的にT.J. Franz, “The finite dose technique as a valid in vitro model for the study of percutaneous absorption in man”, in Current Problems in Dermatology, 1978, J.W.H. Mall (Ed.), Karger, Basel, pp. 58-68に記載された方法で、3.14cm2の利用可能な拡散面積と8.6〜11.1mlの範囲のレセプター容積を有する静的Franz型拡散セルを用いた。各セルについて具体的な容積を測定し、記録した。マグネチックバーを各セルのレセプター・コンパートメントに入れた。皮膚をマウントした後に、皮膚を水和するために生理食塩水(35℃)を各レセプターチャンバーに充填した。400rpmに設定されたマグネチックスターラー上に置かれた熱的に制御された水浴に、セルを入れた。水浴中の循環水を35±1℃に維持し、皮膚表面上の温度を約32℃とした。1時間後、食塩水を、レセプター媒体である4% ウシ血清アルブミン含有0.04M 等張リン酸緩衝液(pH7.4)(35℃)に置き換えた。試験期間中常に沈降条件を維持し、すなわち、レセプター媒体中の活性な化合物の濃度は媒体中の化合物の溶解度の10%未満であった。
【0107】
各試験組成物のインビトロの皮膚透過を6複製(すなわちn=6)で試験した。各試験組成物を0時間で皮膚膜にスプレーした。皮膚表面に組成物を均一に広げるために、ガラススパチュラを用いた。
【0108】
皮膚浸透試験を21時間進行させた。2時間、6時間および21時間で、下記のコンパートメントからサンプルを集めた:
角質層を、D-Squame(登録商標)テープ(直径22mm, CuDerm Corp., Dallas, Texas, USA)を用いて、10回テープを剥いで集めた。各テープ片を、試験領域に標準圧力を5秒間使用して適用し、1回の穏やかな、連続的な移動で試験領域から除いた。繰り返し剥離する際にそれぞれ、剥がす方向を変更した。生存表皮および真皮を同様の方法で皮膚からサンプリングした。
【0109】
拡散セルに残るレセプター液のサンプル(1ml)を集めて分析した。
サンプル中のカルシポトリオールの濃度を、LC質量分析によって測定した。
【0110】
下記の図3および4より、この結果は、生存皮膚(真皮および表皮)およびレセプター液中で、適用後2時間、6時間および21時間で測定されたカルシポトリオールおよびBDPの量をそれぞれ適用された量の%で示す。この結果は、組成物Eの適用が、Daivobet(登録商標) 軟膏と比較して、カルシポトリオールおよびBDPの皮膚透過の著しい増大をもたらすことを示している。
【0111】
実施例5
組成物の生物学的活性
下記の図5に示す通り、カテリシジンはヒトのケラチン生成細胞で発現される抗菌ペプチドである。カテリシジンの発現は、皮膚の感染または皮膚障壁の崩壊で強く誘発される。乾癬において、カテリシジンのレベルは乾癬患者の皮膚病変で増加する。カテリシジンをコードする遺伝子の発現は、ビタミンD受容体への結合を介して、ビタミンDまたはビタミンD類似体、例えばカルシポトリオールによって誘発され得ることが見出された(TT Wang et al, J. Immunol. 173(5), 2004, pp. 2909-2912; J Schauber et al., Immunology 118(4), 2006, pp. 509-519; Schauber and Gallo, J. Allergy Clin Immunol 122, 2008, pp. 261-266; M. Peric et al., PloS One 4(7), July 22, 2009, e6340)。この発見は、ヒトのケラチン生成細胞における試験組成物からのカルシポトリオールの取り込みおよび生物学的活性が、カテリシジンをコードする遺伝子の誘発レベルの測定により決定されるアッセイを開発するのに利用されている。
【0112】
本アッセイにおいて、上記の実施例2に記載した通りに調製した組成物Eを、0.5cm2のポリカーボネートフィルター(SkinEthic(登録商標) Laboratories, Nice, Franceから入手可能)上で12日間培養したヒトの正常ケラチン生成細胞からなる再構築されたヒトの表皮上に、3複製で、局所的にスプレーした。ポリカーボネートフィルターから表皮を分離した後組織を2日間処理して、液体窒素中で瞬間冷凍した。RNAを細胞から抽出し、cDNAを慣用の手順によって合成した。定量的リアルタイムPCR(qPCR)を、Applied Biosystemsからの下記のアッセイを用いて行った:CAMP Hs0018038_m1およびGAPDH Hs99999905_m1。カテリシジンの発現レベルをGAPDHに対して標準化し、Daivobet(登録商標) 軟膏との比較によって、相対的な定量化を行った。
【0113】
結果は、Daivobet(登録商標) 軟膏で得られた結果に対して、カテリシジンの生物学的活性化を2.3倍増大させたことを示す。
【0114】
実施例6
異なる内部ラッカーの存在下でのカルシポトリオール/BDPの化学的安定性
実施例2に記載した通りに調製し、2つの異なるタイプの内部ラッカー、すなわちエポキシフェノールをベースとするラッカー(HOBA 7940/7407)およびポリイミド−ポリアミドをベースとするラッカー(HOBA 8460)をそれぞれ提供されたアルミニウムスプレー容器に入れた組成物Aのバッチを、40℃で1月間放置した後の有効成分の化学的安定性について、各バッチのサンプルをガラスにスプレーし、実施例3で記載した手順によって、それらについてHPLCを行うことによって試験した。
【0115】
結果を下記の表に示す。
【表14】
EP=エポキシフェノールをベースとするラッカー
PI-PA=ポリイミド−ポリアミドをベースとするラッカー
【0116】
表から、エポキシフェノールをベースとするラッカーを、スプレー容器の内部ラッカーとして用いるときはカルシポトリオールが許容されない程分解されるが、ポリイミド−ポリアミドをベースとする内部ラッカーの存在下では化学的安定性が許容されることが明らかである。ベタメタゾンジプロピオン酸エステルの化学的安定性は、これらの内部ラッカーの組成物にほとんど影響されないことが明らかである。表に示されるカルシポトリオールの分解は、噴射剤混合物の溶媒作用によりラッカーから滲み出る、エポキシフェノールをベースとするHOBA 7940/7407ラッカー中の1種以上の酸性反応成分によって引き起こされると考えられる。現在、このような成分は、それが酸性基を含むため、コロホニウムであると考えられる。
【0117】
実施例7
異なる噴射剤混合物中のビタミンD類似体およびコルチコステロイドの溶解度試験
バルブおよびアクチュエータを取り付けた100mlのガラス瓶に、API(10mgのカルシトリオール、タカルシトール、マキサカルシトール、30mgのクロベタゾールプロピオン酸エステル、60mgのベタメタゾン 17−バレレート、ヒドロコルチゾン 17−ブチレート、120mgのヒドロコルチゾン吉草酸エステルまたは800mgのヒドロコルチゾン)、および変化させた量のDMEおよびブタン(46.7mlのブタン、6.7mlのDMEおよび40.0mlのブタン、または、23.3mlのDMEおよび23.3mlのブタン)を含む組成物を充填した。
【0118】
サンプリングする前に、内容物が均一となるまで、瓶を激しく振盪し、その後、瓶を暗所に一夜放置し、溶解していないAPIの沈殿が起こった。サンプルをシンチレーションガラスにスプレーすることによって、バルブに連結した浸漬管を通じて組成物の上部からサンプルを採取した。溶解していないAPIが組成物の底部に沈んだままとなるように、処理の間で瓶を振盪しないよう注意した。必要な場合は、HPLCに注入する前に、抽出および希釈のために、ガラス中のAPIを溶媒に溶解した。
【0119】
各サンプル中に存在するカルシトリオール、タカルシトール、マキサカルシトール、ベタメタゾン 17−バレレートおよびクロベタゾールプロピオン酸エステルの量を、下記の作動条件下でHPLCによって測定した。
カラム:4.6×150mm Waters Sunfire C18. 3.5μm カラム
移動相:アセトニトリル−メタノール−水(20:50:30)
流速:1.2ml/分
検出:
PDA 210nm〜350nm
ベタメタゾン 17−バレレートおよびクロベタゾールプロピオン酸エステルについては、240nmで計算
ビタミンD類似体については260nmで計算
カラムオーブン:35℃
オートサンプラー:20℃
ランタイム:40分
注入:各APIで標準曲線に従って変更可能
保持時間:
6.2分(クロベタゾールプロピオン酸エステル)
6.7分(ベタメタゾン 17−バレレート)
10.5分(マキサカルシトール)
28.6分(カルシトリオール)
32.6分(タカルシトール)
【0120】
各サンプル中に存在するヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン吉草酸エステルおよびヒドロコルチゾン 17−ブチレートの量を、下記の作動条件下、HPLCによって測定した。
カラム:
Phenomenex Precolumn C18 4.0mm×2.0mmまたは同等物+Waters
Sunfire C18 3.5μm, 100mm×4.6mmまたは同等物
移動相:
溶出液A=テトラヒドロフラン
溶出液B=水
濃度勾配:
【表15】
流速:1.0ml/分
プレカラム容量:ループサイズに対応
検出:
UV 254nm
PDA検出器 220〜320nm
注入:各APIで標準曲線に従って変更可能
カラムオーブン:40℃
オートサンプラー:環境温度
ランタイム:ヒドロコルチゾンの保持時間の最低4倍
保持時間:
6.0分(ヒドロコルチゾン)
12.7分(ヒドロコルチゾン 17−ブチレート)
14.5分(ヒドロコルチゾン バレレート)
【0121】
結果を、ビタミンD類似体およびコルチコステロイドについて、それぞれ表aおよび表bに示す。表によれば、DMEの量を増大させることによって、ビタミンD類似体およびコルチコステロイドの溶解度が増大することが明らかである。
【0122】
表a:環境温度でのビタミンD類似体の溶解度
【表16】
値は、同じ瓶から2回測定した平均値である。
【0123】
表b:環境温度でのコルチコステロイドの溶解度
【表17】
値は、同じ瓶から2回測定した平均値である。
【0124】
実施例8
異なるガスケット物質存在下でのカルシポトリオール/BDPの化学的安定性
組成物と種々のガスケット材料との適合性を試験するために、組成物E(実施例2参照)でサンプルを調製し、ポリアミド−ポリイミド内部ラッカーを有するアルミニウムスプレー容器に充填し、容器本体に圧着したバルブキャップで密閉した。各容器に、10ピースまたは1当量のガスケット試験材料をスプレー容器に加え、組成物中に沈めた。容器を25℃または40℃で保存し、40℃で1月後および3月後、そして25℃で3月後に試験した。
【0125】
保存後、組成物をガラス瓶にスプレーし、噴射剤を2日間蒸発させた。組成物の非揮発性部分を、カルシポトリオール、ベタメタゾンジプロピオン酸エステルおよびその関連した有機不純物について分析した。
【0126】
カルシポトリオールの量を、液体抽出し、50℃で制御異性化した後、HPLCによって測定した。メチルテストステロンを内部標準として用いた。下記の条件をHPLC分析に用いた。
カラム:LiChrospher RP-18, 125×4mm, 5μm
移動相:アセトニトリル/メタノール/0.01M (NH)PO(20:50:30)
流速:2.0ml/分
検出:UV 264nm
注入:50μl
ランタイム:約9分
【0127】
カルシポトリオールに関する有機性不純物を、液体抽出後、下記の条件を用いて、HPLCによって測定した。
カラム:YMC ODS-AM, 150×4.6mm, 3μm
移動相:アセトニトリル/メタノール/0.01M (NH)PO(20:50:30)
流速:1.0ml/分
検出:UV 264nm
注入:500μl
ランタイム:カルシポトリオールの保持時間の2倍
【0128】
ベタメタゾンジプロピオン酸エステルの量を、液体抽出後、内部標準としてベクロメタゾンプロピオン酸エステルを用いて、下記のHPLC条件を用いて、HPLCによって測定した。
カラム:Superspher RP-18, 75×4mm, 4μm
移動相:アセトニトリル/水(50:55)
流速:1.5ml/分
検出:UV 240nm
注入:20μl
ランタイム:約9分
【0129】
ベタメタゾンジプロピオン酸エステルに関する有機性不純物を液体抽出によって抽出し、下記の条件を用いてHPLCによって分析した。
カラム:LiChrospher RP-18, 125×4mm, 5μm
移動相:アセトニトリル/0.05M (NH)PO pH 7(50:55)
流速:2.0ml/分
検出:UV 240nm
注入:20μl
ランタイム:約20分
【0130】
結果を下記の表に示す。
【表18】
BunaおよびNPRはニトリルゴムであり、Vitonはフルオロエラストマーであり、EPDMはエチレン−プロピレンジエンモノマーゴムである。
【0131】
データは、2つのガスケットタイプ、すなわちBunaおよびNPRが、カルシポトリオールおよびベタメタゾンジプロピオン酸エステルの双方の分解を起こすことを示す。この適合性試験に基づいて、これらの2つの材料が、試験組成物と接触して使用するのに適当でないと結論づけられた。VitonおよびEPDMガスケットは、カルシポトリオールおよびベタメタゾンジプロピオン酸エステルの安定性に負の影響を有さず、従って、それらは、試験された組成物のためのガスケット材料として有用であると考えられる。
図1a
図1b
図2a
図2b
図3
図4
図5
図6a
図6b
図7