(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記停止可否判断工程にて、前記削減期間中にガス圧縮部を停止することが可能と判断された場合に、当該ガス圧縮部を停止するガス圧縮部停止工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の液化天然ガス受入設備の運転方法。
前記気化器は、電動モータ駆動の海水ポンプから供給された海水を熱源として液化天然ガスを気化させる通常稼働用の気化器と、前記天然ガスの燃焼熱を熱源として液化天然ガスを気化させる緊急稼働用の気化器と、を備えることと、
前記ガス圧縮部停止工程の実施に加えて、前記通常稼働用の気化器を、緊急稼働用の気化器に切り替えて液化天然ガスを気化させる気化器切替工程を実施することと、を特徴とする請求項2に記載の液化天然ガス受入設備の運転方法。
前記停止可能期間算出工程では、前記貯蔵タンクから液化天然ガスが払い出されることに伴う気相容積の変化と、当該貯蔵タンク内で発生するボイルオフガス量とに基づき、前記内圧の変化を予測することを特徴とする請求項1に記載の液化天然ガス受入設備の運転方法。
前記停止可能期間算出工程では、前記貯蔵タンクの内圧の変化の予測値が、当該貯蔵タンクに設けられた運転圧力の上限値未満である期間を、前記停止可能期間とすることを特徴とする請求項1に記載の液化天然ガス受入設備の運転方法。
前記削減期間が、前記貯蔵タンクに対して外部から液化天然ガスを受け入れる期間と重なる場合には、前記ガス圧縮部の稼働を継続することを優先する判断を行う継続判断工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の液化天然ガス受入設備の運転方法。
前記停止可否判断工程において判断結果が否であった場合に、消費電力削減のために、前記停止可否判断工程を実施した際の前記貯蔵タンクの圧力よりも低い目標圧力を設定する目標圧力設定工程と、前記貯蔵タンクの内圧を当該目標圧力まで低下させる圧力低下工程とを含み、前記圧力低下工程の後、前記停止可否判断工程を再実施することを特徴とする請求項1に記載の液化天然ガス受入設備の運転方法。
【背景技術】
【0002】
再生可能エネルギーの普及に伴い、電力系統の信頼性の低下が懸念されている。その対策として、電気料金価格の設定やインセンティブの支払いにより需要家側が電力の消費パターンを変化させる電力需要の調整手法であるデマンドレスポンス(Demand Response:以降、「DR」とも記す)の導入が検討されている。
【0003】
例えば工場や大型小売店などの需要家は、電力消費機器の稼働・停止を切り替えたり、保有している自家発電設備の出力を変更したりすることなどにより、電力需要の増減を行う。
しかしながら特に電力需要を削減するDR(「下げDR」)の実施において、自家発電設備や蓄電池などを備えない、またはその能力が十分でない需要家は、電力需要の削減を行わざるを得ない。この結果、例えば工場では生産調整を実施する必要が生じる場合もあり、DRを実施するメリットが生産調整により生じるデメリットを上回ることが確実でない限り、DRの仕組みに参加することが困難となる。
【0004】
ここで特許文献1には、需要家側の電気機器の動作を制御する電気機器制御装置に対して、電力会社側から直接、電力需給調整指令信号を出力して、DRを実施するデマンドレスポンスシステムが記載されている。しかしながら、電気機器を動作させるにあたり、例えば安全確保などの作業が必要な需要家においては、外部の電力会社が直接、電気機器の動作制御を行うデマンドレスポンスシステムに参加することは難しい。
【0005】
また特許文献2には、ガス消費先の要求熱量に応じ、BOG圧縮機の負荷制御を行うことにより、気化器にて気化させた液化天然ガスに対して混合されるBOG(Boil Off Gas:LNGタンク内で気化したLNG成分)の量を調節する技術が記載されている。一方で、当該特許文献2には、DRに係る技術の記載はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような背景の下になされたものであり、液化天然ガス受入設備の安定運転を維持しつつデマンドレスポンス(DR)に対応する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の液化天然ガス受入設備の運転方法は、液化天然ガス受入設備の運転方法であって、
前記液化天然ガス受入設備は、外部から受け入れた液化天然ガスを貯蔵する貯蔵タンクと、前記貯蔵タンクから払い出された液化天然ガスを気化させ、ガスの状態で出荷するための気化器と、前記貯蔵タンク内で発生したボイルオフガスを昇圧し、前記気化器にて気化された天然ガスに混合するための電動モータ駆動のガス圧縮部と、を備えることと、
削減期間に係る情報を含む消費電力削減の依頼を受け取る、もしくは受け取ることを想定して、消費電力削減の検討を開始する検討開始工程と、前記ガス圧縮部を停止した場合の前記貯蔵タンクの内圧の変化を予測して、当該ガス圧縮部の停止可能期間を算出する停止可能期間算出工程と、前記削減期間と、前記ガス圧縮部の停止可能期間との比較結果に基づき、前記ガス圧縮部の停止可否を判断する停止可否判断工程と、を含むことと、を特徴とする。
【0009】
前記液化天然ガス受入設備の運転方法は以下の特徴を備えてもよい。
(a)前記停止可否判断工程にて、前記削減期間中にガス圧縮部を停止することが可能と判断された場合に、当該ガス圧縮部を停止するガス圧縮部停止工程を含むこと。
(b)前記気化器は、電動モータ駆動の海水ポンプから供給された海水を熱源として液化天然ガスを気化させる通常稼働用の気化器と、前記天然ガスの燃焼熱を熱源として液化天然ガスを気化させる緊急稼働用の気化器と、を備えることと、前記ガス圧縮部停止工程の実施に加えて、前記通常稼働用の気化器を、緊急稼働用の気化器に切り替えて液化天然ガスを気化させる気化器切替工程を実施すること。
(c)前記停止可能期間算出工程では、前記貯蔵タンクから液化天然ガスが払い出されることに伴う気相容積の変化と、当該貯蔵タンク内で発生するボイルオフガス量とに基づき、前記内圧の変化を予測すること。前記貯蔵タンク内で発生するボイルオフガス量は、当該貯蔵タンクへの入熱量に基づいて求めること。
(d)前記停止可能期間算出工程では、前記貯蔵タンクの内圧の変化の予測値が、当該貯蔵タンクに設けられた運転圧力の上限値未満である期間を、前記停止可能期間とすること。
(e)前記削減期間が、前記貯蔵タンクに対して外部から液化天然ガスを受け入れる期間と重なる場合には、前記ガス圧縮部の稼働を継続することを優先する判断を行う継続判断工程を含むこと。
(f)前記停止可否判断工程において判断結果が否であった場合に、消費電力削減のために、前記停止可否判断工程を実施した際の前記貯蔵タンクの圧力よりも低い目標圧力を設定する目標圧力設定工程と、前記貯蔵タンクの内圧を当該目標圧力まで低下させる圧力低下工程とを含み、前記圧力低下工程の後、前記停止可否判断工程を再実施すること。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、液化天然ガスの貯蔵タンクからボイルオフガスを抜き出すガス圧縮部の停止可能期間を算出し、その結果に基づいてガス圧縮部の停止可否を判断するので、液化天然ガス受入設備の安定稼働を妨げることなく、デマンドレスポンスを実施することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、DR取引における参加者の関係の一例を示している。送配電事業者11等には、地域電力会社などの一般送配電事業者が含まれる。送配電事業者11に対してDRの契約を行うと報酬が得られる一方、送配電事業者11からのDRの要請に応えられないと、ペナルティの支払いが必要となる場合がある。
【0013】
リソースアグリゲーター12は、複数の需要家13をまとめてDRの需給調整を行い、報酬の分配、ペナルティの支払いリスクの低減を図る。需給調整の内容としては、送配電事業者11からのDRの依頼に対応可能な需要家13の選択や、対応期間の割り当てなどを例示することができる。
【0014】
需要家13は、リソースアグリゲーター12との需給調整を踏まえて、各々、DRを実行する。DRには、電力需要を増加させる「上げDR」と、電力需要を削減する「下げDR」とがある。再生可能エネルギーの発電量が多く、電力需要を増加させる必要がある場合などには、「上げDR」の依頼が出される。一方、送配電事業者11の管轄区域内の電力需要が逼迫している場合などには、「下げDR」の依頼が出される。
本例のLNG受入設備2の事業者は、上述のDR取引の参加者のうち、需要家13の1つを構成している。
【0015】
図1に示す例において、送配電事業者11がリソースアグリゲーター12に対して削減量や削減期間に係る情報を含む「下げDR」の依頼(削減依頼)をする。リソースアグリゲーター12は当該削減依頼に見合う消費電力の削減を行うため、複数の需要家13(需要家A、B、LNG受入設備2)に対して、各々の削減可能量に合わせて需給調整を行う。
図1に示す例では、調整の結果、需要家A及びLNG受入設備2が「下げDR」を実行することが決定されている。そして、これらの需要家A、LNG受入設備2が電力消費量の削減を実行することにより、送配電事業者11は削減依頼に応じて電力負荷を低減の効果を得ることができる。
【0016】
ここで
図1に示すLNG受入設備2は、外部からLNGを受け入れて貯蔵すると共に、貯蔵しているLNGを気化させて需要先3へと出荷する機能を有している。このLNG受入設備2は、「下げDR」(以下、DRと記す)を実施するにあたって生産調整が必要な工場などの需要家13と比較して、DRに適用可能な設備構成を備えているものがある。
以下、
図2を参照しながら本例のLNG受入設備2の構成例について説明する。
【0017】
LNG受入設備2は、LNGを貯蔵するLNGタンク21と、需要先3へガスを払い出すためにLNGタンク21からLNGを送出するためのLNGポンプ211、22と、LNGを気化して気化ガスの状態にする気化器(後述するORV231、SMV232)と、気化ガスに熱量調整用の液化石油ガス(LPG:Liquefied Petroleum Gas)を添加して製品ガスを得る熱量調整部26とを備えている。
【0018】
LNGタンク21は、例えばLNGタンカー4から受け入れたLNGを−162℃程度に冷却された液体の状態で貯蔵する貯蔵タンクであり、その形式(地上式タンク、地下式タンク、地中式タンクなど)や容量に特段の限定はない。
図2には、円筒形状の側壁の上面をドーム状の屋根で覆った地上式タンクの例を示してある。
【0019】
LNGタンク21内に貯蔵されたLNGは、LNGタンク21内に配設されたLNGポンプ211、及び昇圧用の送出ポンプ22を介して気化器231、232に送液される。
【0020】
本例のLNG受入設備2は、電動モータ駆動の海水ポンプ(不図示)から供給された海水(S.W.)を熱源としてLNGを気化させる気化器であるORV(Open Rack Vaporizer)231と、天然ガスの燃焼熱を熱源としてLNGを気化させる気化器であるSMV(Submerged-combustion Vaporizer)232とを切り替えて使用することができる。当該LNG受入設備2において、通常稼働時はORV231を用いてLNGの気化が実施され、SMV232は停電発生時などの緊急稼働用として待機状態となっている。例えばLNG受入設備2には、ORV231、SMV232が複数台ずつ設けられている。
【0021】
なお、ORV231に替えて、海水を用いてプロパンなどの中間媒体を加熱し、当該中間媒体によりLNGを気化させるIFV(Intermediate Fluid Vaporizer)を通常稼働用の気化器として用いてもよい。IFVにおいても海水の供給は電動モータ駆動の海水ポンプを用いて行われる。
【0022】
熱量調整部26は、気化ガスに熱量調整用のLPGを混合し、需要先3にて要求される熱量を有する製品ガスを出荷する。熱量調整部26に対しては、LPGタンク25に貯蔵されているLPG(ブタンやプロパン)が、LPGポンプ251を介して液体の状態で送出される。このLPGが熱量調整部26にて熱媒を利用して気化され、ORV231側から送出された気化ガスと混合されて製品ガスとなる。熱量調整部26で熱量調整された製品ガスは、需要先3に払い出される。
【0023】
またLNGを貯蔵するLNGタンク21内においては、外部からの入熱などによってLNGの一部が気化し、BOGが発生する。LNGタンク21内の圧力が過大になることを防止するため、LNGタンク21にはBOGを抜き出すためのガス圧縮部であるBOG圧縮機24が接続されている。本例のBOG圧縮機24は不図示の電動モータにより駆動される。
【0024】
BOG圧縮機24は、例えば、
図2のように3つの圧縮段を備える複数段式のBOG圧縮機であり、12〜22kPaG程度(1段目の圧縮段の吸込側圧力)のBOGを2〜7.5MPaG程度(最終圧縮段の吐出側圧力)まで昇圧する。昇圧されたBOGは、気化器(ORV231またはSMV232)にて気化されたLNGと合流し、熱量調整された後、製品ガスとして需要先3へ払い出される。
【0025】
上述の構成を備えるLNG受入設備2においては、BOG圧縮機24を停止することにより、数メガワット程度の消費電力を削減することができる。BOG圧縮機24を停止しても、LNGポンプ211、22への影響はなく、LNGの送液は継続することができる。また、ORV231を停止することにより、数百キロワット程度の消費電力を削減することができる。ORV231を停止した場合は、SMV232を稼働すれば、LNGの気化を継続して実施することが可能である。
これらの観点で、LNG受入設備2はDR取引に参加するにあたって、適用可能な設備構成を備えた需要家13であると言える。
【0026】
一方で、BOG圧縮機24を停止する期間が長時間に亘り、LNGタンク21内の圧力が、運転圧力の上限値を超えると、例えばフレア(不図示)へ向けてBOGが放出され、フレアにてガスが燃焼されるロスが生じる。さらにLNGタンク21内の圧力が上昇する場合には、安全弁(不図示)が作動し、余剰なBOGが大気中へと放散される。
【0027】
特にLNG受入設備2においては、LNGタンカー4からのLNGの受け入れが、1カ月に1回〜数回程度行われる。この際にはLNGタンク21におけるBOGの発生量が通常時の数倍、例えば4倍程度にまで増大する。このように大量のBOGが発生する期間中はBOG圧縮機24を停止することが困難な場合もある。
そこで、BOG圧縮機24を停止した場合のLNGタンク21の内圧の変化を予測して、BOG圧縮機24の停止可能期間を特定すれば、LNG受入設備2の安定稼働を妨げることなく、DRの実施可否を判断することができる。
【0028】
以下、BOG圧縮機24の停止可能期間の算出法の一例を説明する。
BOG圧縮機24の停止時刻(BOG圧縮機24内におけるBOGの蓄圧開始時刻)をt1、BOG圧縮機24の再稼働時刻(BOGの蓄圧終了時刻)をt2としたとき、BOG圧縮機24の停止期間は(t2−t1)となる。
LNGタンク21からのLNG払い出し流量をF[m
3/h]、時刻t1におけるLNGタンク21内のLNGの液位をL1[m]としたとき、時刻t2における液位L2[m]は、下記式(数1)で表される(ID[m]はLNGタンク21の内径である)。
【数1】
また、時刻t1におけるLNGタンク21の気相容積をV1[m
3]としたとき、時刻t2における気相容積V2[m
3]は下記式(数2)で表される。
【数2】
【0029】
さらに、単位時間基準での、外気や地盤の凍結防止用のヒーター(不図示)など、外部からLNGタンク21への入熱量をQtank[J/h]、LNGポンプ211からの入熱量をQpump[J/h]、その他設備からの入熱量をQetc[J/h]としたとき、LNGタンク21内における単位時間当たりのBOGの発生量Wbog[kg/h]は下記式(数3)で表される(但し、λはLNGの蒸発潜熱[J/kg])。
【数3】
【0030】
さらにまた、時刻t1におけるLNGタンク21内の圧力をp1[kPaG]、時刻t2における圧力をp2[kPaG]とし、各圧力におけるBOGの密度を各々ρ1、ρ2[kg/m
3]とする。
LNGタンク21内の温度が一定であり、且つLNGタンク21からBOGが抜き出されない場合、停止期間(t2−t1)中にLNGタンク21内で発生するBOG量と、LNGタンク21の気相側の容積変化とに基づきマスバランスを取ると、下記式(数4)が得られる。
【数4】
そして、(数1、2)の関係から(数4)よりV1、V2を消去して整理すると、下記式(数5)が得られる。
【数5】
【0031】
LNGタンク21は、液面計を備えているので、液面のt1、t2の各時刻におけるLNGタンク21内のLNGの液面高さの変化のみに基づいて、当該期間におけるLNGタンク21内の圧力変化を知ることができる。既述のようにBOGの密度ρ1、ρ2は、各時刻の圧力p1、p2に応じて一意に決定されるので、(数5)を利用した停止期間の計算は、LNGタンク21内の圧力変化に基づいて行われている。
【0032】
そこで、時刻t2におけるLNGタンク21の圧力p2(その際のBOGの密度ρ2)として、LNGタンク21の運転圧力の上限値を設定することにより、BOG圧縮機24を停止した条件下で、LNGタンク21内の圧力を運転圧力の上限値未満に維持するための停止可能期間(t2−t1)を特定することができる。なお、既述のように、当該停止可能期間中のLNGの液位の変化(L2−L1)は(数1)より予測できる。
本例のLNG受入設備2においては、上述のBOG圧縮機24の停止可能期間の算出結果に基づいて、DRの実施判断を行うことができる。
【0033】
以下、
図3を参照しながらLNG受入設備2にてDRを実施する際の具体的な内容について説明する。
LNG受入設備2は、通常の運転時においてはLNGポンプ211、22、ORV231、BOG圧縮機24などを稼働させて、需要先3に対して要求された熱量及び流量にて製品ガスを出荷する(P11)。このとき、上述の(数1〜5)を用いた停止可能期間の計算に必要な運転データ(I12:払い出し流量FやLNGタンク21内のLNGの液位L1、入熱量Qtankを算出するための外気温や不図示のヒーターからの供給熱量など)を継続的に取得する。
【0034】
さらにLNG受入設備2では、外気温の変化や、送配電事業者11が発表する電力の需給予測などに基づいて、DRの実施(消費電力の削減)依頼を受け取ることを予想して、消費電力削減の検討を開始することができる(検討開始工程)。
この場合には、取得した運転データと、気温変化の予測(Qtankの予測)などに基づき、(数3、5)の計算を行いDRの実施が予想される時刻からのLNGタンク21内の圧力変化を予測する(P13)。そして、当該圧力変化に基づき、BOG圧縮機24の停止可能時間を算出しておく(P14)。
【0035】
上述の計算は、オペレータがコンピューターを用いてオフラインで実施してもよいし、DCS(Distributed Control System)などのLNG受入設備2の運転管理システムを用いて自動的に算出してもよい。これらLNGタンク21内の圧力変化の予測や、BOG圧縮機24の停止可能時間の算出は、本例の停止可能期間算出工程に相当する。
さらに、気化器に関しては、現在稼働しているORV231、SMV232の台数や海水ポンプの電力消費を算出しておく(P21)。
【0036】
そして送配電事業者11側にてDRの実施が必要になると判断されると、リソースアグリゲーター12から消費電力の削減に係る事前の連絡がなされる(I01)。なお、
図3においてはリソースアグリゲーター12の記載を省略してある。この連絡には、例えばDRの実施期間(削減期間)や要請された削減電力に係る情報が含まれている。
【0037】
上記事前連絡を受け取ったら、DRの実施期間と、先に計算した停止可能期間とを比較し、BOG圧縮機24の停止の可否を検討する(P15:停止可否判断工程)。例えばBOG圧縮機24の停止可能期間がDRの実施期間よりも長い場合に、当該DRの実施が可能であると判断できる。
そして、事前連絡の後、リソースアグリゲーター12から消費電力の削減依頼(I02)を受けたら、実際にBOG圧縮機24を停止する判断を行い(P16)、運転停止操作を実行する(P17:ガス圧縮部停止工程)。
【0038】
また、ORV231、SMV232の稼働状況(通常稼働時においてはORV231の全数が稼働)の把握結果に基づき、さらに削減可能な電力を把握する(P22)。そして、例えばさらに消費電力を削減可能な旨、リソースアグリゲーター12との調整を行った後、消費電力の削減依頼(I02)を受けたらORV231からSMV232への気化器の切り替えを行う(P23:気化器切替工程)。
【0039】
一方で、事前通知を受けてBOG圧縮機24の停止の可否を検討(P15)した結果、例えばBOG圧縮機24の停止可能期間がDRの実施期間よりも短いことが判明した場合には、リソースアグリゲーター12からの依頼に見合う停止可能期間を確保することができないと判断される。
【0040】
このとき、事前通知を受けてから、実際の消費電力削減依頼を受けるまでの時間に余裕がある場合には、LNGタンク21内の圧力を低下させる運転調整を行ってもよい。運転調整の内容としては、製品ガスへのBOGの混合割合を増加させて、LNGタンク21からのBOGの抜き出し量を増やすことや、需要先3に依頼して製品ガスの受け入れ量を増やしてもらい、LNGの送液量を増加させてLNGの液位を低下させることなどを例示することができる。
【0041】
そこで、停止可否検討の段階(P15)で、BOG圧縮機24の停止が困難であると判断されたら、当該判断を行った際のLNGタンク21の圧力よりも低い目標圧力となるように、運転調整実施時の目標圧力を算出する(P31:目標圧力設定工程)。目標圧圧力は、既述の手法により算出されるBOG圧縮機24の停止可能時間が、DRの実施期間よりも長くなる目標圧力に設定する。
【0042】
しかる後、LNGタンク21の内圧を目標圧力まで低下させる運転調整が実施可能と判断したら(P32)、当該運転調整を行う(P33:圧力低下工程)。そして、LNGタンク21の内圧変化の予測(P13)、BOG圧縮機24の停止可能期間の算出(P14)を行い、停止可否検討を再実施する(P15)。運転調整によって、LNGタンク21の内圧が目標圧力に到達している場合は、BOG圧縮機24の停止が可能と判断できる状態となっているので、リソースアグリゲーター12から消費電力の削減依頼(I02)を受けたら、BOG圧縮機24を停止する判断を行い(P16)、運転停止操作を実行する(P17)。
【0043】
一方で既述のように、BOGの発生量が通常時の数倍にもなる、LNGタンカー4からのLNG受け入れ期間と、DRの実施期間が重なる場合には既述の運転調整を行ってもBOG圧縮機24の停止を行うことができない可能性が高い。そこでこの場合には、BOG圧縮機24の停止可否の検討を省略して、BOG圧縮機24の稼働を継続することを優先する判断を行ってもよい(継続判断工程)。
なお、DRの実施依頼が出される可能性の小さい、土曜日や日曜日、祝日にLNGの受け入れが行われるように、LNGタンカー4の配船スケジュールを調整することにより、LNGの受け入れ期間とDRの実施期間の重複を避けてもよい。
【0044】
本実施の形態に係るLNG受入設備2の運転方法によれば、以下の効果がある。LNGタンク21からBOGを抜き出すBOG圧縮機24の停止可能期間を算出し、その結果に基づいてBOG圧縮機24の停止可否を判断するので、LNG受入設備2の安定稼働を妨げることなく、DRを実施することができる。
【0045】
ここで、
図3を用いて説明した例では、DRの実施を予想して、LNGタンク21の内圧変化の予測(P13)、BOG圧縮機24の停止可能期間の算出(P14)を予め実施し、DR実施の事前連絡を受けて、BOG圧縮機24の停止の可否を検討する例を示している。
但し、この検討順序は、適宜、変更してもよい。例えば消費電力の削減依頼(I02)を受けてからこれを実行する(BOG圧縮機24を停止)までに十分な時間がある場合には、当該削減依頼を受けてから、LNGタンク21の内圧変化の予測、及びBOG圧縮機24の停止可能期間の算出(P13、14:停止可能期間算出工程)、停止の可否の検討(P15:停止可否判断工程)を行ってもよい。
【解決手段】液化天然ガス受入設備2は、液化天然ガスを貯蔵する貯蔵タンク21と、ここから払い出された液化天然ガスを気化させ、ガスの状態で出荷するための気化器231と、貯蔵タンク2内で発生したボイルオフガスを昇圧し、気化された天然ガスに混合するための電動モータ駆動のガス圧縮部24と、を備える。そして、検討開始工程にて消費電力削減の検討を開始し、停止可能期間算出工程にてガス圧縮部24を停止した場合の貯蔵タンク21の内圧の変化を予測して、ガス圧縮部24の停止可能期間を算出した後、停止可否判断工程にて、削減期間と停止可能期間との比較結果に基づき、ガス圧縮部24の停止可否を判断する。