【課題を解決するための手段】
【0013】
<カバーの構成>
本発明に係るカバーは、手で引っ張れば伸びる薄さの非吸水性の柔軟なカバー1であって、
図1〜
図4に示すように、被装着者の背中に配置される上部が開口した逆円錐形の袋部2(
図1参照)と、前記袋部2の背中に接する部分から被装着者の両肩を超えて腹部へ垂れ下がる左右の前垂れ部分3(
図2参照)とを備えている。袋部2は、被装着者の両肩と背中を被う大きさであり、左右の前垂れ部分3は、被装着者の前側で部分的に重なった状態で被装着者の胸元から腹部を被う大きさである。この袋部2を背中に垂らした状態で左右の前垂れ部分3の互いに対向する左右の衿部4(
図2の和服の衿に相当する部分)を、被装着者のうなじから揉み上げ、こめかみ、額へと沿わせて額の上部で重ね合わせて綴じると、袋部2と左右の前垂れ部分3とが、
図4のように、頭髪を包囲する形状となる。
【0014】
このカバー1は、これまでのヘアキャップのように、上から被せるのではなく、袋部2を背中に垂らした状態で、左右の衿部4を、うなじから揉み上げ、こめかみ、額へと沿わせて引っ張りながら巻いて、額の上部で重ね合わせて留める。留めるには、例えばピンや粘着テープを使用する。ピンを使用する場合は、前髪と共に重ね合わせた衿部4を留める。そうすれば、
図3に示すように、引っ張った衿部4が伸びて髪の生え際に沿って肌に密着するとともに、
図4に示すように、巻かれた衿部4と左右の前垂れ部分3とが、頭髪の周りを取り囲むから、頭髪に例えば複数のパーマロットやアルミホイル、ストレートパーマ用の撥水紙等が装着されていても、また頭髪が様々な形状にセットされていても、それらを含めて、左右の前垂れ部分3と、それに繋がる袋部2とで、頭髪全体をふんわりと包み込むことができる。
【0015】
このように、衿部4を引っ張りながら巻き付けて留めれば、粘りがあって伸展性のある素材の特定によって、衿部4がうなじから顔周りの肌に密着する。そのため、薬剤の化学反応によって生じた水分が衿部4から漏れ出ることはない。また、髪の生え際に巻き付けられた衿部4を起点とし、そこから立ち上がって頭髪を囲む左右の前垂れ部分3と袋部2とで、頭髪をふんわりと包み込むことができるから、薬剤の付着した頭髪とカバー1との間には、十分な空気層が形成され、その断熱層により、カバー1にエアコン等の冷気が直接当っても、頭皮温度で頭髪全体を保温・保湿することができる。さらにカバー1内では、空気の対流が起きるため、温度の低い毛先から温度の高い地肌までの毛髪温度が均一化される。
【0016】
こうした作用により、薬剤の浸透にバラツキが無くなり、これまでしばしば問題になっていたパーマの当たりムラや、ヘアカラーの染ムラ等の失敗を解消することができる。それに加え、薬剤の浸透効果が促進されるから、施術時間が短縮されて、お客様にも喜ばれる施術となる。
【0017】
また、左右の衿部4をうなじから揉み上げ、こめかみ、額に沿って強く巻き付けて留めるだけで、伸びて薄くなった衿部4が収縮するときの力でうなじから顔周りの肌に張り付いて密着するから、その伸びた衿部4の上からクリップやピン等でもって左右の前垂れ部分3を留めるだけで、例え頭を動かしても外れることはない。また、伸ばされた衿部4が収縮するときに、衿部4に適度なテンションを付与して肌に密着するが、その場合のテンションは、従来のギャザーのゴム紐と違って、お客様に不快感を与えるような強いものではない。それに加え、頭の上から被せるのではなく、衿部4を下から持ち上げて顔周りの肌に密着させるから、衿部4に頭髪の薬剤が付着することはないし、それによってお客様の肌が薬剤で染まるようなこともない。さらに、自己粘着力のあるラップフイルムと違って、カバー1自体が互いに付着するようなことはないから、他者の手を借りなくても、お客様の髪を掻き上げながら衿部4を巻き付けることができるから、美容師や理容師にとっては、一人で作業ができる使い勝手も良いカバー1となる。
【0018】
また、
図3、
図4に示すように、衿部4を襟足から顔周りに沿って巻いた状態に保持できるから、この状態からカバー1を頭髪に被せたり、被せたカバー1を開けて、薬剤の浸透効果を確認したり、さらにパーマロットがずれていれば、それを直したりすることが簡単にできるから、経験の浅い美容師や理容師であっても、このカバー1を使えば、失敗の無い施術が可能となる。
【0019】
また、このカバー1は、
図1、
図2に示すように、被装着者の両腕を除く上半身を被う大きさに形成され、特に袋部2は、被装着者の両肩と背中を被う大きさであるから、頭髪に薬剤を施すときは、汚れ防止用のケープになって、例えば背中に垂れた袋部2内に頭髪を入れて薬剤を塗布したり、流し掛けたりすることができる。これにより、薬剤が周囲に飛散したり、床等に垂れたりする事故を防ぐことができる。また頭髪から垂れる薬剤は、逆円錐形の袋部2内に集めた後、下端部に小さな孔を開けて回収することもできるから、作業性を改善することができる。なお、開けた孔は、テープやクリップ等で止めると元の袋部2として使用することができる。
【0020】
また、髪の生え際に沿う衿部4の上から生え際の毛髪を軽く押さえれば、それが例え薬剤が弾かれ易い白髪であっても、その周りに薬剤が満遍なく付着するから、問題視され易い髪の生え際の白浮きや染残し等を防止することができる。
【0021】
また、このカバー1は、袋部2と左右の前垂れ部分3とが一体的に成形され、
図6に示すように、左右の前垂れ部分3のおもて面(腹部と接しない面)を互いに向い合せに重ねて袋部2の開口を閉じると、袋部2と左右の前垂れ部分3とが扁平な略長方形となる。そして、閉じた長辺を開けて広げると、
図7の平面図のように、平面視が三角形の袋部2とその袋部2と繋がった前垂れ部分3とが現れる。そして、前垂れ部分3は、袋部2の底辺中央から下方に左右に分割され、分割された左右の前垂れ部分3の互いに対向する部分が衿部4となる。
【0022】
この衿部4は、
図7に示すように、うなじに沿う部分4aが円弧状に切り抜かれ、続いて揉み上げからこめかみ、額に沿う曲線に切り抜かれている。これにより、衿部4をうなじから顔周りに沿ってターバンのように巻き付けると、円弧状の部分4aがうなじの生え際に沿い、続く衿部4の一部が耳に被さり、段差部4bが揉み上げに被さるようになっている。ただし、髪の生え際の輪郭は、人によって千差万別であり、ときには、段差部4aが、目じりを被って目障りになることがある。そうした場合は、目障りになる部分を折ったり、切除したりしても良い。したがって、
図7に示す衿部4の形状は、一例であって、これには限定されず、段差部4bのない直線的な形状であっても良い。
【0023】
カバー1は、
図6に示すように、折り畳んだ状態では、扁平な略長方形になるから、形抜きによる量産が可能である。しかも、薄くて伸びる合成樹脂シート、例えば、透明なポリ袋等の素材でも作ることができるから、安価に製造することができる。したがって、使い捨てができ、今までのヘアキャップのように、洗浄する必要がないから、美容室・理容室にとっては、作業性の改善となり、お客様にとっては、衛生的で気持ちのよいカバーとなる。
【0024】
また、袋部2を被装着者の頭部に被せたときの被装着者の額と接する縁部には、
図6、
図7に示すように、左右方向に部分的に分離可能な紐5が形成されており、その紐5は、頭部に被せた袋部2を頭部に保持しておくことのできる長さに形成されている。
【0025】
ここで、部分的に分離可能とは、紐5の付け根が袋部2と一体となり、それ以外の部分は、袋部2から分離可能なものをいう。具体的には、例えば、
図6、
図7に示すように、予め袋部2の前縁に沿ってミシン目6aで切り込みを入れておき、そのミシン目6aで切り離して紐5を形成した後、その紐5の中央部分のミシン目6bを左右に分離すれば、袋部2の前縁両サイドから左右方向に紐5が取り出せるようにしたものである(
図13、
図14参照)。
【0026】
この紐5で頭髪に被せた袋部2を固定するときは、例えば、
図14に示すように、うなじ付近で紐5を結んだり、
図26に示すように、顎下で結んだりする。そうすれば、頭髪に被せた袋部2を固定することができる。また、
図21に示すように、背中に垂らした袋部2を持ち上げるときに、左右の紐5を持って引き上げれば、高齢者であっても、一人で袋部2を頭髪に被せることができる。
【0027】
このカバー1は、前述のように、薄いシートで折り畳み可能であるから、これを箱に収納する時は、
図8に示すように、折り畳んで積層した状態や、
図9に示すように、帯状に連なった複数のカバー1をロール状に巻いた状態で箱に収納して取り出せるようにしておく。そうすれば、
図8では、ティッシュのように、一枚ずつ箱Baの開口部から取り出して使用することができ、
図9では、ラップフイルムのように、箱Bbに収納されたロールからカバー1を一枚分引き出しては、後続カバー1との境目に形成されたミシン目7で切り離して使用することができる。
【0028】
<カバーの使用方法>
次に、このカバー1の使用方法の発明について、
図1〜
図4と、図面代用写真(以下、図と略称する。)である
図10〜
図39に基づいて説明する。
【0029】
<薬剤を施す前の使用方法>
このカバー1を使用するときは、頭髪に薬剤を施す前に、
図1、
図2のように、袋部2の開口を上に向けて被装着者の背中に垂らし、左右の前垂れ部分3を袋部2の前記開口と連なる面を上に向けて被装着者の両肩から腹部へ垂らして、被装着者の両腕を除く上半身を被うことを特徴とする(
図10、11参照)。
【0030】
<薬剤を施すときの使用方法>
このカバー1は、両腕を除く上半身を被う大きさを有しているから、このカバー1で上半身を被うと、汚れ防止用のケープとなる。その状態から、パーマやヘアカラー、トリートメント等の施術を行う。その際、背中に垂らした袋部2内で薬剤を施すと、薬剤が頭髪から垂れたり零れたりしても、それを袋部2内に集めて、周囲を汚さずに施術することができる。特に、ロングヘアの場合には、
図10に示すように、毛先まで袋部2内に納めることができるから、髪に付着した薬剤が周囲に接触して付着することを防いでくれる。また、袋部2内で頭髪に薬剤を掛け流して回収することもできる。
【0031】
また、上半身を被ったカバー1の両肩は、裃の肩衣のように広く開放されているから、素人が自宅で髪を染めるときは、両腕を上げて作業することができ、その場合でもカバー1はずれない。また、
図12のように、背中に垂れる袋部2を自分自身で持ち上げて頭部に被せることもできるから、周囲を汚さずに、一人で髪を染めることができる。
【0032】
<頭髪を包む第1の使用方法>
頭髪に薬剤を施した後は、
図15〜
図17に示すように、袋部2を背中に垂らした状態で、左右の前垂れ部分3の各衿部4を被装着者のうなじから揉み上げ、こめかみ、額へと沿わせて額の上部で重ね合わせて留める。次に
図18〜
図20に示すように、側頭部から垂れ下がる左右の前垂れ部分3とそれに続く袋部2とを頭髪に被せて閉じることにより、被装着者の頭髪全体を包むことを特徴とする。なお、これらの図の生え際に沿う黒線は、衿部4の端と肌とが判別し易いように、衿部4の縁を黒く着色している。
【0033】
この場合も、衿部4を巻き付けるときは、うなじ付近を支点として衿部4を引っ張りながら、襟足から額へと、衿部4を生え際に沿わせて巻き付ける。すると、衿部4がうなじから顔周りの肌に密着する。また、額の上部で重ね合わせた衿部4は、ピンやクリップ等を使って毛髪と共に留める。このとき、粘着テープで衿部4同志を留めても良い。この使用方法は、
図19、
図20に示すように、背中に垂れ下がった薬剤の付着したロングヘアやセミロングヘアをそのまま包むときに有効である。その際、閉じた左右の前垂れ部分3と袋部2とを粘着テープやピン等で留める。或いは、
図38に示すように、左右の前垂れ部分3の合わせ目を捻じって留めても良い。これにより、これまでは、包むことが難しかったロングヘアや、パーマロット、アルミホイル等が装着された頭髪でも、また、様々な形態の施術であっても、その状態を維持したまま頭髪全体を包むことができる。したがって、これまでは、頭髪全体を包むことが難しかった長い髪や凝った形状でも、それらを完全に包み込んで保温・保湿するから、薬剤の効果を促進させ、毛髪温度の均一化を図ることができる。
【0034】
<頭髪を包み込む第2の使用方法>
別な使用方法としては、前述と同様に、被装着者の頭髪に薬剤を施し、次に袋部2を背中に垂らした状態で、
図15〜
図17に示すように、左右の前垂れ部分3の衿部4を被装着者のうなじから揉み上げ、こめかみ、額へと沿わせて額の上部で重ね合わせて留める。続いて
図21〜
図23に示すように、背中に垂れ下がる袋部2を持ち上げて、頭部に被せた左右の前垂れ部分3の上に被せて被装着者の頭髪全体を包むことを特徴とする。
【0035】
この場合も、衿部4を巻き付けるときは、衿部4を引っ張りながら、うなじ付近を支点として髪の生え際の顔周りに沿わせて、衿部4を肌に密着させる。また、背中の袋部2内の縁に薬剤が付着し、それを頭部に被せるときは、薬剤の付着した縁を内側に折り込むかそれを拭き取っておく。また、頭部に被せた袋部2の前縁を、
図27に示すように、額に沿わせた衿部4を留めたピンで一緒に留める。また、袋部2の先端部に孔を開けている場合は、袋部2を頭部に被せる前に、先端部を折ってクリップや粘着テープで閉じておく。
これにより、頭部で重ねられた左右の前垂れ部分3が、薬剤の付着した頭髪の大部分を被い、その上から袋部2を被せて、頭髪を二重三重に被うから、薬剤が付着していない前垂れ部分3の上面と、その上に被せた袋部2との間に空気層が形成されて、カバー1内が断熱され、頭皮温度により温められて、保温・保湿力を高めることができる。しかも、空気層のある袋部2内には、空気の対流が起きるから、毛先から地肌までの毛髪温度が均一化されて、薬剤効果のバラツキを抑えることができる。
【0036】
この使用方法は、ショートヘアや背中に毛髪を垂らさない状態で薬剤を浸透させる施術に有効である。また、新たに生えてきた新生毛を染める場合は、髪の生え際に被さる左右の前垂れ部分3や袋部2の上から新生毛を押さえると、新生毛の間に薬剤が浸透し、その状態が保持されるから、薬剤は、毛髪にはじかれることなく、効果を発揮することができる。これにより、クレーム率の高い生え際の白浮きや染残しを防止することができる。
【0037】
さらに、この使用方法によれば、薬剤が付着していない左右の前垂れ部分3の上面から袋部2を被せて留めているので、袋部2の着脱が容易であり、それに伴って、頭髪を再び露出させて、薬剤の効果を確認することができる。その結果、薬剤効果が不十分であれば、再びカバー1を閉じて保温・保湿を延長させ、薬剤効果のムラがあれば、それを修正することができる。また、パーマロットの位置ずれがあれば、それを修正することができる。このように、髪の生え際だけでなく、頭髪全体の染ムラ、染残しや、パーマの当たりムラ等の失敗を無くすことができる。
【0038】
以上の方法では、衿部4を巻き付けた状態で頭髪をふんわりと包み込んだり、再び露出させたりしたが、髪の生え際の浸透状態を念入りに確認したい場合とか、ヘアカラーでリタッチ(既に染められた頭髪の新たに生えてきた地毛の部分をカラー剤で染めることを)してから、時間差法でもって頭髪に再度ヘアカラー剤を施したり、パーマの施術を段階的に施す場合もある。そうした場合は、次の使用方法が良い。
【0039】
<頭髪全体を再び露出させる方法>
この場合は、前述の第1の使用方法又は第2の使用方法によって頭髪を包んだ後、頭髪を被う袋部2と左右の前垂れ部分3とを開放する。その際、袋部2を背中に垂らし、左右の前垂れ部分3を、薬剤が付着した面を上にして被装着者の両肩から腹部へと垂らす(
図10、
図11参照)。これにより、頭髪全体を露出させることができる。次に、
図28に示すように、薬剤の付着した左右の衿部4を中折りにして、薬剤の付着した面を内側に、付着していない面を外側に向け、その状態で、露出させた髪の生え際部分を確認する。その結果、必要があれば、薬剤を施して修正を加えたり、次の段階の施術に移行したりする。続いて再び頭髪全体を被うときは、
図29に示すように、袋部2を背中に垂らしたまま、中折によって露出した薬剤の付着していない面の縁部を、被装着者のうなじから揉み上げ、こめかみ、額へと沿わせて額の上部で重ね合わせて留める(
図15、
図16、
図17参照)。次に頭部から垂れ下がる左右の前垂れ部分3と、それに続く袋部2とを頭髪に被せて閉じる(
図19、
図20参照)。あるいは、頭部から垂れ下がる袋部2を持ち上げて頭部に被さる左右の前垂れ部分3の上に被せて閉じる(
図22、
図23参照)。こうして被装着者の頭髪全体を包むのである。
【0040】
このように、中折した薬剤の付着していない面を新たな衿部として巻き付けるから、カバー1を解放しても、左右の前垂れ部分3に付着した薬剤がお客様の肌に付着することはない。したがって、カバー1を取り換える必要がなく、従来のように、ヘアキャップやラップフイルムを併用する必要もないから、一つのカバー1で薬剤の付着した頭髪を繰り返し被うことができる。これにより、施術時間が短縮され、お客様に不快な思いをさせない効果がある。この場合、中折にされて新たな衿部となった部分は、厚みが増しても、手で引っ張れば伸びる薄さであり、特に上下に重なった下層部分が、前述のように、伸びた状態で肌に密着するから、中折にしても、衿部のような利便性や機能性が損なわれることは無い。
【0041】
<湿熱促進器を使用する第1の使用方法>
図10、
図11に示すように、カバー1で被装着者の上半身を被った後、被装着者の頭髪に薬剤を施す。次に袋部2を背中に垂らした状態で、左右の衿部4を被装着者のうなじから揉み上げ、こめかみ、額へと沿わせて額の上部で重ね合わせて留める。続いて
図24に示すように、左右の前垂れ部分3と袋部2とで囲まれる頭髪に向けてスチームやミスト等を噴射することを特徴とする。
【0042】
この場合も、衿部4を髪の生え際に沿わせて額の上部で留める。続いて頭頂部で重ね合わせた左右の前垂れ部分3を粘着テープやクリップ等で連結して、その連結した状態が保持されるようにしておく。この状態では、後頭部は、露出したままで、お客様の髪がロングヘアの場合は、毛先まで全ての毛髪を袋部2内に収納しておく。
図24は、その状態を背後から写したものである。この状態で、施術者が手に持って使用するガンタイプやハンディータイプの噴射力の強い湿熱促進器でもってスチームやミスト等を頭髪に向けて噴射すると、左右の前垂れ部分3と袋部2とが、頭髪全体を囲い込むようにバルーン状に膨らみ、そこに供給されたスチームやミスト等がバルーン内で循環する。この場合、湿熱促進器を手に持つ必要はなく、それをスタンドや適宜な箇所に固定しておくと良い。そうすれば、施術者の手が開放される。
これに対し、こうしたカバー1を使用しないで、ガンタイプやハンディータイプの湿熱促進器を使用する従来のやり方では、ドライヤーで頭髪を乾かすときのように、これらの湿熱促進器を手に持って、お客様の頭髪にスチームやミストを噴射し続けなければならないから、施術者の手が取られ、時間も掛かり、湿熱促進器が気軽に使用できない問題がある。しかし、前述の方法によれば、そうした問題が生じないから、湿熱促進器を気軽に使用することができるメリットがある。
【0043】
<湿熱促進器を使用する第2の使用方法>
次に湿熱促進器でスチームやミスト等をカバー1内に供給する場合は、前述と同様に、カバー1で被装着者の上半身を被った後、頭髪に薬剤を施し、続いて腹部へ垂れ下がった左右の前垂れ部分3の衿部4を、被装着者のうなじから揉み上げ、こめかみ、額へと沿わせて額の上部で重ね合わせて留める。続いて背中に垂らした袋部2にスチームやミストの供給口を設けてから、該袋部2を頭部に被せて、前記供給口から袋部2内にスチームやミスト等を供給することを特徴とする。
【0044】
具体的には、
図32に示すように、被せる前の袋部2の任意の場所に供給口Aを開け、その供給口Aに
図33に示す湿熱促進器のアタッチメントBを取り付ける。次に袋部2を頭部に被せて閉じた後、そのアタッチメントBに供給ホースCを取り付ける。或いは、先にアタッチメントBに供給ホースCを取り付けてから袋部2を頭部に被せて密閉する。続いて、
図31に示すように、供給ホースCから袋部2内にスチームやミストを供給する。すると、
図31に示すカバー1が膨らみ、上昇するスチームやミストによって、カバー1は、円錐形状に膨らむ。これにより、毛先から地肌までが保温・保湿されるから、薬剤の浸透効果が一層促進される。
【発明の効果】
【0045】
本発明によれば、左右の衿部4を、うなじから、揉み上げ、こめかみ、額へと沿わせて額の上部で留め、上半身を被う大きさの左右の前垂れ部分3と袋部2とで頭髪の周りを包囲するから、それらを頭髪に被せるだけで、頭髪全体を包むことができる。したがって、頭髪がどの様な形状や長さであっても、また頭髪にパーマロットやストレートパーマ用の撥水紙等が装着されていても、それらを含めて頭髪全体を包むことができる。また、頭髪に被せたカバー内には、十分な空気層が形成され、それによって外気が遮断されるから、毛髪温度の均一化を図ることができる。これにより、薬剤効果を均一化させて、染ムラ、パーマの当りムラを無くすことができる。また、このカバーを一つ用意するだけで、あらゆる形態や形状の頭髪に対して、また、パーマロットや撥水紙等が装着された頭髪に対しても、それらを含めて保温・保湿することができるから、薬剤の浸透作用を促進させて、施術時間の短縮を図ることができる。したがって、理容師や美容師のこれまでの作業を一層効率化させることができる。
【0046】
また、カバー1は、手で引っ張れば伸びる非吸水性の薄くて柔軟な素材で構成されているので、左右の衿部4を引っ張りながら、うなじから揉み上げ、こめかみ、額へと沿わせて、額の上部で交差させて留めるだけで、左右の衿部4をうなじから顔周りの肌に密着させることができる。しかも、肌に密着した衿部4は、頭髪に被せた左右の前垂れ部分3や袋部2を繰り返し開閉しても、簡単には外れないから、安心して施術を行うことができる。
一方、ラップフイルムは、巻いた当初は、肌に張り付いているが、伸縮力が乏しく、テンションをかけ続けるためには、自己粘着力が弱いために、頭を動かすだけで、重ね合わせ部分が緩み、肌に張り付いた部分にも、皺が生じて張り付きがなくなり、うなじ付近にも隙間が生じたりする。また、ピン等で留めても、伸びないために、ずれ落ちることがある。これに対し、本発明に係るカバー1は、自己粘着力はないが、粘りのある伸縮する素材の特性によって、肌に対しては、収縮するときの力でもって肌に張り付いて保持されるから、頭を動かしたり、頭髪に被せたカバー1を繰り返し開閉したりしても、簡単には外れないのである。
【0047】
また、カバー1をケープとして使用するときは、カバー1が、背中に垂れた袋部2から肩を跨いで左右の前垂れ部分3へと前後に分かれて垂れるので、お客様からカバー1が落ちることはない。また、左右の衿部4を引っ張りながら襟足から額へと巻き付けて留めれば、簡単に装着できるから、これまでの施術のように、他者の手を借りなくても、一人で装着できるメリットがある。
【0048】
さらに、左右の衿部4を頭髪の生え際に沿って固定した状態で、頭髪全体を包んだり、露出させたりすることができるから、薬剤を浸透させる待ち時間中に、再び頭髪を露出させて、薬剤の浸透効果を確認したり、施術の修正を行ったり、さらにはパーマロットのずれ等を直すことも簡単にできるから、経験の浅い美容師であっても、失敗のない施術を行うことができる。
【0049】
また、背中に垂らした逆円錐形の袋部2は、その中で頭髪に薬剤を施すことができるから、例え薬剤が飛び散ったり、毛先から垂れたりしても、袋部内に止めて周囲への飛散を防止することができる。さらに、頭髪から垂れる薬剤は、逆円錐形の袋部2内で集めた後、下端部に小さな孔を開けて回収することもできるから、頭髪に薬剤を流し掛ける施術も可能になる。また、孔を開けた袋部は、その部分を折ってテープやクリップ等で止めると、元の袋部2として機能させることができる。
【0050】
また、髪の生え際に沿わせた衿部4の上から薬剤の付着した毛髪を押さえれば、染め残しや白浮きが生じやすい生え際の毛髪や白髪に対しても、薬剤を満遍なく付着させることができるから、素人が自分でカラーリングをするときでも、施術の失敗を無くすことができる。
【0051】
また、このカバー1は、薄くて伸びやすいシートで形成され、折り畳んだ状態では、扁平な略長方形になるから、安価に製造することができる。したがって、使い捨てができ、今までのヘアキャップのように、洗浄する必要がないから、美容室・理容室にとっては、作業性の改善となり、お客様にとっても衛生的で気持ちのよいカバーとなる。
【0052】
また、このカバー1は、これまでのヘアキャップのように、ゴム紐で強く締め付ける必要がなく、ラップフイルムのように、開閉に手間取ったり、水分を含んで頭部から外れたりすることもないから、お客様に不快感を与えずに施術できる効果がある。そして、施術者にとっても、利便性のあるカバーとなる。さらに、頭髪にスチームやミスト等を噴射する場合でも、専用キャップを使用せずにカバー1内に直接スチームやミスト等を送り込むことができるから、今までと違い、容易に湿熱促進器を活用して、薬剤による頭髪のダメージを軽減したり、薬剤効果を向上させたりすることができる。これにより、施術時間をさらに短縮させて、お客様の負担を軽減することができる。
【0053】
また、カバーを開放して、薬剤の効果を確認したり、必要に応じて保温・保湿時間を延長したり、施術を修正したりすることができるから、失敗のない施術ができるとともに、時間差法を用いてヘアカラー剤を施す等、お客様のニーズにも応えることができる。
【0054】
また、時間差法でもってヘアカラー剤を施すときや、パーマにおいて、異なる薬剤を時分割で施すときは、薬剤が付着した前垂れ部分3や袋部2で頭髪を繰り返し被うことになるが、薬剤の付着した前垂れ部分3は、中折りにされ、薬剤の付着していない面で再び巻き付けることができるから、カバー1を取り替えなくても、薬剤が肌へ付着するのを抑えることができる。
【0055】
また、シャンプー台でカバー1を取り外すときに、これまでは、ヘアキャップのゴムが弾いたり、ラップフイルムがずれ落ちたりして、思わぬ事故を招くことがあったが、このカバー1を使用すれば、カバー1を装着したままシャンプーボウルのネックホールに首を載せてから、施術者の都合の良いタイミングで取り外したり、部分的に取り外したりできるので、これまでのような汚染事故や、うなじ付近の髪の逆折れ等も防止することができる。したがって、洗浄作業が容易になり、シャンプー時間も短くなって、お客様や施術者の負担を軽減することができる。