(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1は、ポンプが停止することなく過給機が通常運転していても、何らかの原因で逆止弁が閉じてしまうと、潤滑油供給管からヘッドタンクへの潤滑油の供給が行われなくなる。すると、軸受で潤滑油が不足してしまう可能性が有る。
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ヘッドタンクから軸受への潤滑油の供給を確実に行うことができる過給機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
この発明の第一態様によれば、過給機は、中心軸回りに回転自在に支持された回転軸と、前記回転軸の第一端部側に設けられたタービンホイールと、前記回転軸の第二端部側に設けられたコンプレッサホイールと、前記回転軸から径方向外側に延び、前記回転軸と一体に回転するスラストディスクと、前記スラストディスクに対して前記中心軸方向で対向する静止ディスクと、前記スラストディスクと前記静止ディスクとの隙間に供給する潤滑油を蓄えるヘッダタンクと、前記ヘッダタンク内に前記潤滑油を送り込むポンプと、前記ヘッダタンクから前記隙間に前記潤滑油を供給する潤滑油供給路と、前記ヘッダタンクの内部と外部とを連通し、前記ヘッダタンク内の前記潤滑油の油量の変動にともなって前記ヘッダタンク内の空気を外部に出し入れする連通部と、
前記連通部が外部と連通させる前記ヘッダタンク
の内部に
、前記ヘッダタンクの外部から空気を導入する空気導入部と、前記空気導入部に設けられ、
前記連通部の前記ヘッダタンク内における開口部よりも前記ヘッダタンク内の潤滑油のレベルが高くなり、前記潤滑油が前記連通部に流れ込んで前記連通部による連通が遮断されて、
前記連通部が外部と連通させる前記ヘッダタンク
の内部の空気の圧力が前記ヘッダタンク
の外部の空気の圧力よりも小さくなった場合にのみ開弁する逆止弁と、を備える。
【0008】
このように構成することで、過給機の通常運転中は、連通部がヘッダタンクの内部と外部とを連通しているので、ヘッダタンク内の潤滑油量が変動しても、ヘッダタンク内の空気の圧力は変動しない。これにより、ヘッダタンク内の潤滑油に、ヘッダタンクの外部と同等の圧力が作用し、ヘッダタンクからスラストディスクと静止ディスクとの隙間への潤滑油の供給は、安定して行われる。
過給機の運転中に、何らかの原因でポンプが停止した場合、ポンプからヘッダタンクへの潤滑油の送り込みは行われなくなる。このとき、ヘッダタンク内の潤滑油のレベルが、連通部のヘッダタンク内における開口よりも高いと、潤滑油が連通管に流れ込み、連通管を通してのヘッダタンクの内部と外部との連通が遮断される場合がある。この状態で、ヘッダタンク内の潤滑油のレベルが下がると、ヘッダタンク内の空気の圧力が低下する。すると、空気導入部に設けられた逆止弁が開弁する。これにより、空気導入部を通して、ヘッダタンクの外部からヘッダタンク内に空気が導入される。その結果、ヘッダタンク内の空気の圧力が過度に低下することを抑え、過給機の運転中にポンプが停止した場合であっても、ヘッダタンクからスラストディスクと静止ディスクとの隙間への潤滑油の供給を安定して行うことができる。
【0009】
この発明の第二態様によれば、第一態様に係る静止ディスクは、前記スラストディスクに対向する側に前記中心軸に直交する平坦面を有し、前記スラストディスクは、前記静止ディスクの前記平坦面に対向する側に、テーパランドを有するようにしてもよい。
一般に、スラストディスクにテーパランドを有する場合、スラストディスクと静止ディスクとの隙間の径方向内側から空気を吸い込むと、回転軸の回転による遠心力によって、吸い込まれた空気が径方向外側に広がる。すると、スラストディスクと静止ディスクとの隙間への潤滑油も、径方向外側に流出してしまいやすい。これに対し、スラストディスクにテーパランドを有する構成において、ヘッダタンクに空気導入部及び逆止弁を備えることで、過給機の運転中にポンプが停止した場合であっても、ヘッダタンクからスラストディスクと静止ディスクとの隙間への潤滑油の供給を安定して行うことができる。
【0010】
この発明の第三態様によれば、第二態様に係る潤滑油供給路は、前記静止ディスクの前記平坦面に開口し、前記隙間に前記潤滑油を供給する供給口と、前記静止ディスクの前記平坦面において前記供給口よりも径方向外側に開口し、前記供給口よりも開口面積が小さい外周孔と、を有するようにしてもよい。
このように構成することで、過給機が通常運転している場合、ヘッダタンクから潤滑油供給路を通して送り込まれる潤滑油は、供給口から、スラストディスクと静止ディスクとの隙間に供給される。この場合、外周孔は供給口よりも開口面積が小さいので、ヘッダタンクから潤滑油供給路を通して送り込まれる潤滑油は、主に供給口から流れ出る。
過給機の運転中にポンプが停止し、スラストディスクと静止ディスクとの隙間の径方向内側から空気を吸い込むと、供給口からの潤滑油の供給が行われにくくなるが、このときには、供給口よりも径方向外側に設けられた外周孔を通して、ヘッダタンクからスラストディスクと静止ディスクとの隙間への潤滑油の供給が行われる。
【0011】
この発明の第四態様によれば、第三態様に係る過給機において、前記静止ディスクの前記平坦面に、前記外周孔から前記平坦面に沿って連続する凹部が形成されているようにしてもよい。
このように構成することで、外周孔を通してスラストディスクと静止ディスクとの隙間に供給された潤滑油は、凹部を経て、スラストディスクと静止ディスクとの隙間で効率良く広がる。これにより、スラストディスクと静止ディスクとの隙間への潤滑油の供給を、より確実に行うことができる。
【0012】
この発明の第五態様によれば、第四態に係る凹部は、前記外周孔から前記中心軸の径方向外側に延びているようにしてもよい。
このように構成することで、外周孔を通して供給された潤滑油は、凹部を経て、スラストディスクと静止ディスクとの隙間で径方向外側に効率良く広がる。これにより、スラストディスクと静止ディスクとの隙間への潤滑油の供給を、より確実に行うことができる。
【0013】
この発明の第六態様によれば、第一から第五態様の何れか一つの態様に係る静止ディスクは、前記回転軸の外周面に対して前記中心軸の径方向に間隔をあけて対向する内周面を有する。また、前記中心軸方向において前記静止ディスクに対して前記スラストディスクとは反対側に、前記静止ディスクの内周面と前記回転軸の外周面との間に空気が流入することを抑えるシール部が設けられているようにしてもよい。
このように構成することで、過給機の運転中にポンプが停止した場合に、シール部によって、静止ディスクの内周面と回転軸の外周面との間に空気が流入することを抑えることができる。これにより、スラストディスクと静止ディスクとの隙間の径方向内側から空気が吸い込まれることを抑えることができる。したがって、スラストディスクと静止ディスクとの隙間に存在する潤滑油が流出することを抑え、潤滑性を維持することができる。
【発明の効果】
【0014】
上記過給機によれば、ヘッドタンクから軸受への潤滑油の供給を確実に行うことが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の実施形態における過給機を図面に基づき説明する。
(第一実施形態)
図1は、この発明の第一実施形態における過給機の全体構成を示す模式図である。
図1に示すように、この実施形態の過給機1Aは、回転軸2と、タービンホイール3と、コンプレッサホイール4と、ラジアル軸受5と、スラスト軸受6と、ヘッダタンク40と、を備えている。この過給機1Aは、例えば、回転軸2の中心軸Oが水平方向に延在するような姿勢で船舶に搭載される。
【0017】
回転軸2は、過給機1Aのハウジング(図示無し)に、中心軸O周りに回転自在に支持される。回転軸2は、中心軸O方向両側の第一端部2aと第二端部2bとを、ハウジングの外部に突出させて設けられている。
【0018】
タービンホイール3は、回転軸2の第一端部2a側に設けられている。タービンホイール3は、船舶の主機等から排出される排気ガス流により、中心軸O周りに回転軸2と一体に回転する。
【0019】
コンプレッサホイール4は、回転軸2の第二端部2b側に設けられている。コンプレッサホイール4は、回転軸2と一体に中心軸O周りに回転する。コンプレッサホイール4は、外部から導入された空気を圧縮し、主機等に供給する。
【0020】
ラジアル軸受5は、過給機1Aのハウジング(図示無し)内に設けられている。ラジアル軸受5は、中心軸O方向に間隔をあけて複数設けられ、回転軸2を中心軸O周りに回転自在に支持する。ラジアル軸受5は、回転軸2の中心軸Oに直交する径方向の荷重を支持する。このようなラジアル軸受5は、滑り軸受等によって形成される。
【0021】
スラスト軸受6は、過給機1Aのハウジング(図示無し)内に設けられている。スラスト軸受6は、回転軸2の中心軸O方向の荷重を支持する。スラスト軸受6は、スラストディスク20と、静止ディスク30と、を備える。
【0022】
図2、
図3に示すように、スラストディスク20は、円盤状で、回転軸2から径方向外側に延びるよう形成されている。スラストディスク20は、回転軸2と一体に回転する。
スラストディスク20は、静止ディスク30に対向する側の側面21に形成されたテーパランド22を備える。
【0023】
図2は、上記過給機の第一実施形態におけるスラスト軸受およびヘッダタンクの構成を示す図である。
図3は、上記スラスト軸受のスラストディスクの構成を示す図であり、
図2のA−A線に沿う断面図である。
図4は、上記スラストディスクのテーパランドを示す図であり、
図3のB−B線に沿う断面図である。
図2〜
図4に示すように、テーパランド22は、潤滑油受入溝23と、給油溝24と、テーパ部25と、を備える。
潤滑油受入溝23は、スラストディスク20の側面21の径方向の内側部分に形成されている。潤滑油受入溝23は、中心軸O周りの周方向に連続している。潤滑油受入溝23は、スラストディスク20の側面21に、静止ディスク30から離間する方向に窪んで形成されている。
【0024】
給油溝24は、潤滑油受入溝23から径方向外側に延びるよう形成されている。給油溝24は、スラストディスク20の側面21に、静止ディスク30から離間する方向に窪んで形成されている。給油溝24は、中心軸O周りの周方向に間隔をあけて複数形成されている。
【0025】
テーパ部25は、各給油溝24から周方向に連続して形成されている。各テーパ部25は、周方向で静止ディスク30側に漸次接近するように傾斜して形成されている。換言すると、各テーパ部25は、周方向で給油溝24から離間するにしたがい、側面21からの窪み寸法が小さくなるように形成されている。
【0026】
図2に示すように、静止ディスク30は、スラストディスク20に対し、中心軸O方向に間隔をあけて設けられている。静止ディスク30は、過給機1Aのハウジング(図示無し)に設けられた軸受支持部7に支持されている。静止ディスク30は、スラストディスク20に対向する側に、中心軸Oに直交する平坦面31を有している。平坦面31には、軟質材料からなり、スラストディスク20の側面21に摺接可能なパッド部32が形成されている。
【0027】
図5は、上記スラスト軸受の静止ディスクの構成を示す図であり、
図2のC−C線に沿う断面図である。
図2、
図5に示すように、静止ディスク30は、潤滑油供給路33を備えている。潤滑油供給路33は、ヘッダタンク40から供給される潤滑油を、スラストディスク20と静止ディスク30との隙間に供給する。潤滑油供給路33は、静止ディスク30において周方向に間隔をあけて複数個所に設けられている。各潤滑油供給路33は、静止ディスク30において、径方向に延びるよう形成されている。潤滑油供給路33の径方向外側の端部には、ヘッダタンク40からの供給管44Cが接続されている。
【0028】
静止ディスク30の平坦面31は、周方向に連続する供給溝(供給口)34を備えている。この供給溝34は、スラストディスク20側を向いて開口している。言い換えれば、供給溝34は、平坦面31に、スラストディスク20から離間する方向に窪んで形成されている。この供給溝34には、潤滑油供給路33の径方向内側の端部が連通している。スラストディスク20のテーパランド22の潤滑油受入溝23と、静止ディスク30の供給溝34とは、中心軸O方向で互いに対向する位置に設けられている。
【0029】
図1に示すように、ヘッダタンク40は、ラジアル軸受5、スラスト軸受6に供給する潤滑油を蓄える。このヘッダタンク40は、ラジアル軸受5及びスラスト軸受6よりも鉛直方向で上方に配置されている。
【0030】
図2に示すように、ヘッダタンク40の外部には、ヘッダタンク40内に潤滑油を送り込むためのポンプ41が設けられている。また、ヘッダタンク40には、ラジアル軸受5及びスラスト軸受6のそれぞれに潤滑油を供給する供給管44A〜44C(
図1参照)が接続されている。
【0031】
ヘッダタンク40から供給管44Cを経てスラスト軸受6に供給される潤滑油は、潤滑油供給路33及び供給溝34を介して、スラストディスク20と静止ディスク30との隙間に供給される。このとき、スラストディスク20に形成されたテーパランド22により、スラストディスク20と静止ディスク30との隙間に負圧が生じる。この負圧により、静止ディスク30の供給溝34からスラストディスク20と静止ディスク30との隙間に潤滑油が吸い出される。スラストディスク20と静止ディスク30との隙間の潤滑油は、回転軸2とともに回転するスラストディスク20による遠心力の作用で、径方向外側に広がっていく。
【0032】
また、ヘッダタンク40には、連通管(連通部)42と、空気導入管(空気導入部)43と、が設けられている。
連通管42は、ヘッダタンク40の内部と外部とを連通する。連通管42は、ヘッダタンク40内の潤滑油量の変動にともなってヘッダタンク40内で増減する空気を、外部に出し入れする。すなわち、ヘッダタンク40内の潤滑油量が増えたときには、ヘッダタンク40内の空気を外部に排出する。ヘッダタンク40内の潤滑油量が減ったときには、外部からヘッダタンク40内に空気を取り込む。連通管42は、ヘッダタンク40内の上部に開口部42aを有している。
【0033】
空気導入管43は、ヘッダタンク40内の空気の圧力がヘッダタンク40外の空気の圧力よりも小さくなった場合に、ヘッダタンク40内に外部から空気を導入する。空気導入管43は、ヘッダタンク40内の上部に開口部43aを有している。空気導入管43の開口部43aは、連通管42の開口部42aよりも、ヘッダタンク40内で高い位置に配置してもよい。
【0034】
空気導入管43の開口部43aには、逆止弁45が設けられている。逆止弁45は、ヘッダタンク40内の空気の圧力がヘッダタンク40外の空気の圧力よりも小さくなった場合にのみ開弁する。すなわち、ヘッダタンク40内の圧力がヘッダタンク40外の圧力(大気圧)と同じである状態、又はヘッダタンク40内の圧力がヘッダタンク40外の圧力よりも大きい状態では、逆止弁45は閉じており、空気導入管43を遮断している。
【0035】
このような過給機1Aが通常運転している場合、ヘッダタンク40から潤滑油供給路33を通して、スラストディスク20と静止ディスク30との隙間に潤滑油が供給される。ポンプ41によるヘッダタンク40内への潤滑油の供給、ヘッダタンク40からスラストディスク20と静止ディスク30との隙間への潤滑油の供給により、ヘッダタンク40内の潤滑油量は変動する。これに伴って、ヘッダタンク40内の空気量も変動するが、連通管42を介してヘッダタンク40の内部と外部とが連通しているので、過給機1Aの通常運転時には、ヘッダタンク40内の空気の圧力は、ヘッダタンク40の外部の圧力と同等に維持される。そのため、過給機1Aの通常運転時には、ヘッダタンク40からスラストディスク20と静止ディスク30との隙間への潤滑油の供給が安定して行われる。
【0036】
図6は、上記過給機において、ヘッダタンクの逆止弁が開いた状態を示す図である。
過給機1Aの運転中に、何らかの原因でポンプ41が停止した場合、ポンプ41からヘッダタンク40内への潤滑油の送り込みは行われなくなる。このとき、
図6に示すように、ヘッダタンク40内の潤滑油のレベルLが、連通管42のヘッダタンク40内における開口部42aよりも高く、潤滑油が連通管42に流れ込んでいると、ヘッダタンク40の内部と外部との連通管42を通しての連通が遮断される場合がある。この遮断状態で、ヘッダタンク40内の潤滑油のレベルが下がると、ヘッダタンク40内の空気の圧力が低下する。ヘッダタンク40内の空気の圧力がヘッダタンク40外の空気の圧力(大気圧)よりも小さくなると、空気導入管43に設けられた逆止弁45が開弁する。これにより、空気導入管43を通して、ヘッダタンク40の外部からヘッダタンク40内に空気が導入される。その結果、ヘッダタンク40内の空気の圧力が過度に低下することを抑え、ヘッダタンク40からスラストディスク20と静止ディスク30との隙間への潤滑油の供給が安定して行われる。
【0037】
上述した第一実施形態のヘッダタンク40を備えた過給機1Aでは、ヘッダタンク40内の空気の圧力がヘッダタンク40外の空気の圧力よりも小さくなった場合に、空気導入管43の逆止弁45が開弁する。これにより、空気導入管43を通して、ヘッダタンク40の外部からヘッダタンク40内に空気が導入され、ヘッダタンク40内の空気の圧力が過度に低下することを抑制できる。その結果、過給機1Aの運転中にポンプ41が停止した場合であっても、自重により潤滑油が潤滑油供給路33及び供給溝34に流下可能となるので、ヘッダタンク40からスラストディスク20と静止ディスク30との隙間への潤滑油の供給を安定して継続的に行うことができる。
【0038】
また、上述したスラストディスク20は、静止ディスク30に対向する側にテーパランド22を有している。一般に、テーパランド22を備えた構成の場合、ポンプ41が停止したときに、スラストディスク20と静止ディスク30との隙間に、ハウジング(図示無し)の外部から空気が吸い込まれて潤滑性が損なわれる場合がある。しかしながら、上述した第一実施形態では、テーパランド22を有した構成において、ヘッダタンク40に空気導入管43及び逆止弁45を備えている。そのため、過給機1Aの運転中にポンプ41が停止した場合であっても、ヘッダタンク40からスラストディスク20と静止ディスク30との隙間への潤滑油の供給を行うことができるその結果、スラストディスク20と静止ディスク30との隙間の潤滑性を安定して維持することができる。
【0039】
(第二実施形態)
次に、この発明に係る第二実施形態を図面に基づき説明する。以下に説明する第二実施形態においては、第一実施形態に対し、外周孔51及び溝52を備える構成のみが異なるので、第一実施形態と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複説明を省略する。
【0040】
図7は、上記過給機の第二実施形態におけるスラスト軸受およびヘッダタンクの構成を示す図である。
図8は、上記スラスト軸受のスラストディスクの構成を示す図であり、
図7のD−D線に沿う断面図である。
図7、
図8に示すように、この実施形態におけるヘッダタンク40を備えた過給機1Bは、静止ディスク30に、外周孔51と溝(凹部)52と、を備える。
【0041】
外周孔51は、中心軸O方向に延び、各潤滑油供給路33に連通している。これにより、静止ディスク30には、周方向に複数の外周孔51が形成されている。これら外周孔51は、それぞれ静止ディスク30の平坦面31において、供給溝34よりも径方向外側に開口している。平坦面31におけるこれら複数の外周孔51の開口面積の合計は、平坦面31における供給溝34の開口面積よりも小さい。例えば、複数の外周孔51の開口面積の合計は、供給溝34の開口面積に対し、1/20〜1/10程度とすることができる。
【0042】
溝52は、外周孔51から平坦面31に沿って径方向外側に連続して形成されている。溝52は、平坦面31において、スラストディスク20から中心軸O方向に離間する方向に窪んで形成されている。
【0043】
上述した過給機1Bが通常運転している場合、ヘッダタンク40から潤滑油供給路33を通して、スラストディスク20と静止ディスク30との隙間に潤滑油が供給される。このとき、複数の外周孔51の開口面積の合計は、供給溝34の開口面積よりも小さいので、スラストディスク20と静止ディスク30との隙間には、主に供給溝34から潤滑油が供給される。
【0044】
過給機1Bの運転中に、ハウジング(図示無し)の外部から吸い込まれた空気が、スラストディスク20と静止ディスク30との隙間に径方向内側から侵入し、テーパランド22に噛み込むと、スラストディスク20と静止ディスク30との隙間に生じる負圧が減少する。すると、供給溝34よりも径方向外側に形成された複数の外周孔51を通して、潤滑油供給路33からスラストディスク20と静止ディスク30との隙間へと潤滑油が供給される。外周孔51から供給された潤滑油は、回転軸2と一体に回転するスラストディスク20による遠心力により、溝52を介して、スラストディスク20と静止ディスク30との隙間で径方向外側に広がる。これにより、スラストディスク20と静止ディスク30との間の潤滑性が、少なくともスラストディスク20と静止ディスク30との隙間の径方向外側の部分で維持される。このとき、外周孔51は、供給溝34よりも径方向外側に形成されているため、外周孔51からスラストディスク20と静止ディスク30との隙間に供給された潤滑油には、径方向内側の供給溝34から供給される潤滑油よりも、より大きな遠心力が作用する。これにより、外周孔51から供給された潤滑油よりも径方向内側の領域に負圧が生じ、この負圧によって、径方向内側の供給溝34からスラストディスク20と静止ディスク30との隙間に潤滑油を吸い出す効果も期待される。
【0045】
したがって、上述した第二実施形態によれば、供給溝34よりも径方向外側に外周孔51を設けることで、スラストディスク20と静止ディスク30との隙間に径方向内側から空気が噛み込んでも、スラストディスク20と静止ディスク30との隙間の潤滑性を安定して維持することができる。
【0046】
また、外周孔51に連続して平坦面31に沿って延びる溝52を備えることで、外周孔51を通して供給された潤滑油を、スラストディスク20と静止ディスク30との隙間に効率良く広げることができる。これにより、スラストディスク20と静止ディスク30との隙間への潤滑油の供給を、より確実に行うことができる。
【0047】
さらに、溝52は、外周孔51から中心軸Oの径方向外側に延びているので、外周孔51から供給された潤滑油は、遠心力により、スラストディスク20と静止ディスク30との隙間で径方向外側に効率良く広がる。これにより、スラストディスク20と静止ディスク30との隙間への潤滑油の供給を、より確実に行うことができる。
【0048】
また、上記第一実施形態と同様、空気導入管43及び逆止弁45を備えることで、過給機1Bの運転中にポンプ41が停止した場合であっても、ヘッダタンク40からスラストディスク20と静止ディスク30との隙間への潤滑油の供給を確実に行うことができる。
【0049】
第二実施形態においては、溝52を外周孔51の径方向外側に延びるように形成する場合を例示したが、これに限らない。例えば、溝52は、外周孔51から径方向内側に延びるように形成してもよい。溝52は、外周孔51から周方向に延びるように形成してもよい。
さらに、第二実施形態では、凹部として溝52を形成する場合を例示したが、凹部の形状についてはいかなる形状としてもよい。
【0050】
(第三実施形態)
次に、この発明の第三実施形態を図面に基づき説明する。以下に説明する第三実施形態においては、第一、第二実施形態に対し、回転軸2と静止ディスク30との間に、シール部60を備える構成のみが異なるので、第一、第二実施形態と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複説明を省略する。
【0051】
図9は、この発明の第三実施形態におけるスラスト軸受およびヘッダタンクの構成を示す図である。
図9に示すように、この実施形態におけるヘッダタンク40を備えた過給機1Cは、中心軸O方向において静止ディスク30に対してスラストディスク20とは反対側に、シール部60を備える。シール部60は、外周側凸部62と、内周側凸部63と、を備える。
静止ディスク30には、中心軸O方向に沿ってスラストディスク20と反対側に延びる延伸部61が形成されている。外周側凸部62は、延伸部61から径方向内側に突出している。外周側凸部62は、中心軸O方向に間隔をあけて複数設けられている。
【0052】
内周側凸部63は、回転軸2の外周面2fから径方向外側に突出している。内周側凸部63は、中心軸O方向に間隔をあけて複数設けられている。それぞれの内周側凸部63は、外周側凸部62に対し、中心軸O方向にずれて配置されている。これら複数の外周側凸部62と複数の内周側凸部63とは、互いに噛み合うような配置となる、いわゆるラビリンスシールを構成している。
【0053】
このようなシール部60を備えることで、過給機1Cの運転中にポンプ41が停止した場合に、シール部60によって、ハウジング(図示無し)の外部から、静止ディスク30の内周面30gと回転軸2の外周面2fとの間に空気が流入するのを抑制できる。
【0054】
したがって、上述した第三実施形態のヘッダタンク40を備えた過給機1Cによれば、シール部60によって、静止ディスク30の内周面30gと回転軸2の外周面2fとの間に空気が流入することを抑制できる。これにより、スラストディスク20と静止ディスク30との隙間に径方向内側から空気が吸い込まれることを抑える。したがって、スラストディスク20と静止ディスク30との隙間に存在する潤滑油が流出することを抑え、潤滑性を維持することができる。
【0055】
また、上記第一実施形態と同様、空気導入管43及び逆止弁45を備えることで、過給機1Cの運転中にポンプ41が停止した場合であっても、ヘッダタンク40からスラストディスク20と静止ディスク30との隙間への潤滑油の供給を確実に行うことができる。
【0056】
なお、上述した第三実施形態において、シール部60がラビリンス構造の場合について説明したが、ラビリンス構造のシール部に限られず、各種のシール部材等を用いることができる。
【0057】
(その他の変形例)
なお、この発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な形状や構成等は一例にすぎず、適宜変更が可能である。
例えば、第二実施形態で示した外周孔51及び溝52と、第三実施形態で示したシール部60とを、兼ね備える構成とすることができる。
【0058】
また、テーパランド22の構成については、上記実施形態で示した構成に限るものではなく、適宜変更することが可能である。
さらに、過給機1A、1B、1Cの各部の構成は、この発明の主旨の範囲内であれば、適宜変更することが可能である。
加えて、過給機1A、1B、1Cの用途が船舶用の場合について説明したが、船舶用に限られるものでは無い。例えば、過給機1A、1B、1Cの用途は、発電機等であってもよい。
【解決手段】過給機1Aは、回転軸2と、タービンホイールと、コンプレッサホイールと、スラストディスク20と、スラストディスク20に対して中心軸O方向で対向する静止ディスク30と、スラストディスク20と静止ディスク30との隙間に供給する潤滑油を蓄えるヘッダタンク40と、ヘッダタンク40内に潤滑油を送り込むポンプ41と、ヘッダタンク40からスラストディスク20と静止ディスク30との隙間に潤滑油を供給する潤滑油供給路33と、ヘッダタンク40の内部と外部とを連通する連通管42と、ヘッダタンク40内に外部から空気を導入する空気導入管43と、空気導入管43に設けられ、ヘッダタンク40内の空気の圧力がヘッダタンク40外の空気の圧力よりも小さくなった場合にのみ開弁する逆止弁45と、を備える。