特許第6503712号(P6503712)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6503712
(24)【登録日】2019年4月5日
(45)【発行日】2019年4月24日
(54)【発明の名称】孔内撮影装置
(51)【国際特許分類】
   E21B 47/002 20120101AFI20190415BHJP
【FI】
   E21B47/002
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-246182(P2014-246182)
(22)【出願日】2014年12月4日
(65)【公開番号】特開2016-108800(P2016-108800A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2017年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】畑 浩二
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 大輔
【審査官】 西田 光宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−145350(JP,A)
【文献】 特開2012−235435(JP,A)
【文献】 特開2002−172185(JP,A)
【文献】 特開昭49−100801(JP,A)
【文献】 特開平05−321567(JP,A)
【文献】 特開昭53−143258(JP,A)
【文献】 特開昭63−234106(JP,A)
【文献】 特開平09−132992(JP,A)
【文献】 特開平03−132588(JP,A)
【文献】 米国特許第05652617(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 47/00
E21B 47/002
E21B 49/00
F16L 11/12
G01B 11/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
横方向ボーリング孔の孔内を撮影するための孔内撮影装置であって、
照明装置とカメラ本体とを前端側に備える孔内カメラと、
該孔内カメラの外面に設置され、前記横方向ボーリング孔の径方向に突出するように配置されて前記孔内カメラを支持する複数の突起体と、
前記孔内カメラの後端側に設置され、長さを調整可能なロッドと、を備え、
前記突起体が、引張力により前記孔内カメラの外面から分離可能に設置されることを特徴とする孔内撮影装置。
【請求項2】
横方向ボーリング孔の孔内を撮影するための孔内撮影装置であって、
照明装置とカメラ本体とを前端側に備える孔内カメラと、
該孔内カメラの外面に設置され、前記横方向ボーリング孔の径方向に突出するように配置されて前記孔内カメラを支持する複数の突起体と、
前記孔内カメラの後端側に設置され、長さを調整可能なロッドと、を備え、
前記突起体が、前記孔内カメラの外面に対して引張力により分離可能に巻き付け固定した面状材に設置されることを特徴とする孔内撮影装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の孔内撮影装置において、
前記突起体が、合成樹脂材よりなることを特徴とする孔内撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横方向ボーリング孔の孔内を撮影するための孔内撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
構造物を構築するにあたり、施工予定領域の地質状況を把握するべく地山を水平方向に穿孔して調査用のボーリング孔を設け、地質調査を行うボーリング調査が広く知られている。また、これらボーリング孔を利用してカメラを挿入し、カメラにて撮影されたボーリング孔内の画像を施工管理者が目視で観察することにより、施工予定領域の地質状況を把握する調査方法も知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ケーシングを用いた中堀工法にて水平方向に地山を穿孔して調査用のボーリング孔を設け、該調査用のボーリング孔にケーシングを残して穿孔ビットを引き抜いたのち、ボアホールカメラをケーシング内に挿入するとともにケーシングの先端開口から突出させ、ボアホールカメラにて孔壁を撮影する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09−132992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の撮影方法は崩壊性の地盤を調査することを目的としていることから、水平方向のボーリング孔内に孔壁を保護するためのケーシングを設置している。このため、水平方向のボーリング孔が長尺な場合には、ケーシングの設置が煩雑であるとともに、工費が膨大となりやすい。
【0006】
また、崩壊性でない地盤を調査する場合であっても、水平方向にボーリング孔を穿孔すると、ボーリング孔内の下部にスライムが貯留しやすい。このため、ボーリング孔内に挿入したカメラはスライム内に埋没して孔内を鮮明に撮影できない、もしくは、スライムにて進路が塞がれ、カメラが所望の撮影位置まで到達できない等の課題が生じる。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みなされたものであって、その主な目的は、簡略な構成で操作性がよく、また鮮明な画像を撮影することが可能な横方向ボーリング孔の孔内を撮影するための孔内撮影装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するため、本発明の孔内撮影装置は、横方向ボーリング孔の孔内を撮影するための孔内撮影装置であって、照明装置とカメラ本体とを前端側に備える孔内カメラと、該孔内カメラの外面に設置され、前記横方向ボーリング孔の径方向に突出するように配置されて前記孔内カメラを支持する複数の突起体と、前記孔内カメラの後端側に設置され、長さを調整可能なロッドと、を備え、前記突起体が、引張力により前記孔内カメラの外面から分離可能に設置されることを特徴とする。また、本発明の孔内撮影装置は、前記突起体が、前記孔内カメラの外面に対して引張力により分離可能に巻き付け固定した面状材に設置されることを特徴とする。
【0009】
上記の孔内撮影装置によれば、孔内カメラが横方向ボーリング孔の孔壁と孔内カメラの外面との間に位置する突起体により支持されるから、孔内カメラと孔壁との間に隙間が形成される。これにより、例えば地山に穿孔した横方向ボーリング孔に孔内撮影装置を適用する場合、ボーリング孔内にスライムが滞留していても、これらの大半は、孔内カメラと孔壁との間の隙間に位置することとなる。
【0010】
このため、孔内カメラがスライムに埋没することがなく、孔内カメラにて孔壁の亀裂や地質状況等ボーリング孔内における孔壁の状態を鮮明に撮影することができ、調査対象の地質を正確に目視確認することが可能となる。
【0011】
また、孔内カメラを前進または後退させる際に、スライムが滞留していることによる孔内カメラに作用する挿入抵抗や引抜抵抗を最小限に抑えることができる。これにより、ロッドを介して人力にて孔内カメラを容易に挿入または引抜きできるため、カメラ画像による孔壁の目視観察を短時間かつ簡易に行うことが可能となる。
【0012】
さらに、孔内撮影装置が、孔内カメラに突起体と長さ調整可能なロッドを備えるのみの簡略な構造であるため、安価な材料にて孔内撮影装置を製作することができ、調査に係る費用を大幅に削減することが可能となるとともに、汎用性が高く、横方向ボーリング孔の内径の大小や長さの長短に影響されることなく、いずれの横方向ボーリング孔の孔壁観察にも適用することが可能となる。
【0015】
上記の孔内撮影装置によれば、何らかの事情により横方向ボーリング孔に狭隘部が生じ突起体が食い込んだ場合に、孔内撮影装置に対して横方向ボーリング孔の軸心方向に所定以上の力を作用させると、突起体および面状体に引張力が作用するため、突起体および面状体を孔内カメラの外周面から分離させることができる。これにより、突起体および面状体がボーリング孔内に残置されるものの、孔内カメラをスムーズに回収することができ、回収した孔内カメラを繰り返し使用することが可能となり経済的である。
【0016】
本発明の孔内撮影装置は、前記突起体が、合成樹脂材よりなることを特徴とする。
【0017】
上記の孔内撮影装置によれば、突起体を現場にて適宜カットし、横方向ボーリング孔の内径に応じた長さに適宜調整することができるため、汎用性が高く取り扱いも容易である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、孔内カメラの外周面に孔内カメラの荷重を支持可能に形成される突起体を設けるとともに、後端側に長さ調整可能なロッドを備えるから、構成が簡略で操作性がよく、長尺なボーリング孔に容易に適用することが可能になるとともに、突起体により孔壁と孔内カメラの下部との間に形成された隙間により孔内に貯留するスライムの影響を最小にして、鮮明な画像を撮影することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】孔内撮影装置をボーリング孔内に配置する際の図である。
図2】孔内撮影装置の外周面に設置する突起体を示す図である。
図3】孔内撮影装置のロッドを示す図である。
図4】突起体の詳細を示す図である。
図5】孔内撮影装置をボーリング孔から撤去する際の図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の孔内撮影装置1を、図1図5を用いて説明する。
【0021】
本発明の孔内撮影装置1は、新設または既設の横方向ボーリング孔に挿入し、孔壁や孔底の状態をカメラ画像にて目視観察するための装置である。本実施の形態では、図1に示すように、孔内撮影装置1を地山に穿孔した横方向のボーリング孔Aに適用する場合を例にとり、以下に詳述する。なお、本発明において、横方向とは水平方向のみでなく、斜め方向を含むものである。
【0022】
孔内撮影装置1は、図1に示すように、孔内カメラ2と、孔内カメラ2の外面に設置した複数の突起体3と、孔内カメラ2の後端側に設置したロッド4とにより構成される。
【0023】
孔内カメラ2は、図2(a)に示すように、孔内を撮影するカメラ本体21と、カメラ本体21を収納して保護するカメラ保護体22とを備える。
【0024】
カメラ本体21は、鉛直方向のボーリング孔や井戸内の撮影等に従来より広く使用されているCCD方式のカメラであり、静止画および動画のいずれも撮影することも可能である。このカメラ本体21には、図2(b)に示すように、LED照明23が備えられており、暗い孔内においてもフルカラーの明瞭な画像が得られる構成となっている。
【0025】
また、カメラ本体21はビデオケーブル24を介して、図1に示すような、ボーリング孔Aの孔外に設置した端末装置Pと有線接続されている。したがって、カメラ本体21にて撮影した孔内画像は、端末装置Pに備えたディスプレイ等の出力装置にてリアルタイムで目視確認することが可能であるとともに、端末装置Pに備えた記憶装置にて記憶することも可能である。
【0026】
カメラ保護体22は、図2(a)、(b)に示すように、カメラ本体21を収納できる大きさの筒状体であり、塩ビ管やアルミニウム管等の軽量かつ水密で、ボーリング孔Aの孔壁に崩落が生じても変形しない程度の剛性を有する材料により形成される。そして、カメラ保護体22の一方の端面22aは開口され、他方の端面22bは閉塞されており、図2(b)に示すように、一方の端面22aにカメラ本体21が臨むようにして、カメラ保護体22の内方にカメラ本体21が配置される。
【0027】
したがって、孔内カメラ2は、カメラ本体21が臨むカメラ保護体22の一方の端面22aを前端側としてボーリング孔A内に挿入される。
【0028】
なお、カメラ保護体22の形状は必ずしも筒状体に限定されるものではなく、カメラ本体21を収納できる大きさであれば何れの形状のものを適用してもよい。
また、カメラ本体21には防水仕様のカメラを採用するが、カメラ保護体22の一方の端面22aにおける開口とその内方に位置するカメラ本体21との間には図示しないパッキン等の止水部材を配置する。これにより、ボーリング孔A内に地下水が滞留している場合や湧水によりボーリング孔A内が水没した場合にも、カメラ保護体22の内方に水が入ることはない。
【0029】
そして、図2(a)に示すように、上述する孔内カメラ2の後端側、つまりカメラ保護体22の他方の端面22bには、ボーリング孔A内にて孔内カメラ2を前進もしくは後退させるためのロッド4が着脱自在に設置されている。
【0030】
該ロッド4は、図3に示すように、パイプ材よりなる複数のロッド本体41を連結して形成されるものであり、その材質は、カメラ保護体22と同様に、塩ビ管やアルミニウム管等の軽量で、ボーリング孔Aの孔壁に崩落が生じても変形しない程度の剛性を有する材料よりなる。そして、ロッド本体41の一方の端部には雄継手41a、他方の端部に雌継手41bがそれぞれ設けられており、これらは互いに嵌合する。したがって、ロッド4は、ロッド本体41を所望の数量だけ連結することにより、その長さを自在に調整することが可能である。
【0031】
また、孔内カメラ2の後端側、つまりカメラ保護体22の他方の端面22bに、ロッド本体の雄継手41aまたは雌継手41bのいずれかに嵌合可能な継手22cが形成されており、ロッド本体41の雄継手41aまたは雌継手41bが着脱自在に取り付け可能となっている。これにより、該ロッド4は、孔内カメラ2と接続される。
【0032】
これにより、孔内撮影装置1は施工者がロッド4を把持し孔内カメラ2をボーリング孔内に挿入することにより、孔内カメラ2に収納されたカメラ本体21にて孔内の様子を撮影することが可能となる。また、ボーリング孔Aが長尺な場合には、適宜ロッド本体41を連結しつつロッド4の長さを調整しながら孔内カメラ2を挿入することにより、ボーリング孔A内におけるいずれの孔壁位置にも孔内カメラ2を到達させることができる。
【0033】
なお、ロッド4の構造やロッド4と孔内カメラ2との連結構造は、必ずしも上述した構成に限定されるものではない。施工者が孔内カメラ2をボーリング孔A内に挿入できる構成を有していれば、いずれに形成されていてもよい。
【0034】
また、図2(a)に示すように、カメラ保護体22の他方の端面22bには、ロッド4の内部と連通する図示しない通し穴が設けられている。そして、この通し穴を介して前述したカメラ保護体22に収納されたカメラ本体21のビデオケーブル24が、ロッド4の内部に配線されるが、ビデオケーブル24の配線は必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、ロッド4の外周面に沿わせる構成としてもよい。
【0035】
さらに、図示しないが、ロッド本体41に目盛を設けておき、孔内撮影装置1をボーリング孔A内に挿入した際に、孔口から孔内カメラ2までの距離を簡易測定可能に構成してもよい。
【0036】
孔内撮影装置1はさらに、図1に示すように、孔内カメラ2の外周面に複数の突起体3を備えている。
【0037】
突起体3は棒状体よりなり、図1(b)に示すように、前述した孔内カメラ2を構成するカメラ保護体22の外面にボーリング孔Aの径方向に突出するように設置される。本実施の形態では、突起体3は円筒状のカメラ保護体22の外周面から放射方向に等間隔で突出するように複数配置されている。放射方向の配置間隔はいずれでもよいが、40°〜45°のピッチで配置することが望ましい。また、突起体3はカメラ保護体22の放射方向だけでなく、図1(a)に示すように、長手方向にも複数本配置されている。
【0038】
これら複数の突起体3は、図2(b)に示すように、孔内カメラ2におけるカメラ本体21の中心とボーリング孔Aの軸線Cとが一致するように、その長さを調整しており、孔内カメラ2がボーリング孔A内に挿入された際にセンタライザとして機能する。本実施の形態では、突起体3に合成樹脂材を適用しており、センタライザとして機能する長さとなるよう、ボーリング孔Aの内径に応じて現場にて適宜突起体3をカットし、その長さを調整可能にしている。
【0039】
ところで、本発明の孔内撮影装置1は横方向のボーリング孔Aに適用するものであるから、孔内撮影装置1を横方向のボーリング孔Aに挿入した際に、孔内カメラ2の下部とボーリング孔Aの孔壁との間に位置する突起体3には、図1(b)に示すように、孔内カメラ2の荷重が作用する。このため、複数の突起体3は、孔内カメラ2の荷重が作用した際にも変形することなく支持可能に形成されている。
【0040】
孔内カメラ2を支持するための突起体3の構造としては、例えば、突起体3に孔内カメラ2を支持するのに十分な剛性を有する材料を採用すればよい。この場合には、孔内カメラ2に対する放射方向の配置間隔を広くすることができるとともに、長手方向の配置本数を減らすことができる。また、突起体3に剛性の低い材料を用いる場合には、孔内カメラ2に対する放射方向の配置間隔を狭くし、また長手方向の配置本数を増やせばよい。
このように突起体3は、適用したい材料の剛性と孔内カメラ2に対する放射方向の配置間隔および長手方向の配置本数を適宜調整することにより、孔内カメラ2を支持可能な構成とすればよい。
【0041】
さらに、上述する構成の突起体3は、所定量以上の引張力が作用すると孔内カメラ2の外面から分離するよう設置されている。しかし、その設置方法はなんら限定されるものではなく、直接設置してもよいし、間接的に設置してもよい。
【0042】
突起体3を直接的に設置する方法としては、例えば孔内カメラ2の外面に接着剤により接着固定すればよい。また、突起体3を間接的に設置する方法としては、例えば図4に示すような、突起体3を備えた面状体31を孔内カメラ2の外面に分離可能に設置するとよい。
以下に、突起体3を備えた面状体31を孔内カメラ2の外面に対して分離可能に設置する事例を詳述する。
【0043】
面状体31は、図4に示すように、一方向に延在する線材31aを複数並列に間隔を設けて配置するとともに、これと交差する方向に延在する線材31bを同じく複数並列に間隔を設けて配置し、交点を一体に固着した格子状の網体により構成されている。これらは、突起体3と同様の合成樹脂材により成形され、一方の面に間隔を設けて複数の突起体3を一体に固着している。
【0044】
これら面状体31を孔内カメラ2に設置する際には、図2(a)に示すように、突起体3が配置された面を外側に向けた面状体31を、孔内カメラ2を構成するカメラ保護体22に巻き付けたうえで、面状体31の両端に位置する線材31aに結束バンド等の固定部材5を掛け渡し締め付け固定する。また、カメラ保護体22の一方の端部22aの端縁に図示しない穴を形成し、図2(b)に示すように、該穴を介して面状体31を構成する線材31bとカメラ保護体22とを同じく結束バンド等の固定部材5にて固定する。
【0045】
また、固定部材5は、面状体31を構成する線材31a、31bより引張力の強い部材を採用している。これにより、所定量以上の引張力が固定部材5と面状体31の両者に作用した際には、固定部材5より先行して線材31a、31bが破断する。
【0046】
このため、例えば、突起体3を備えた面状体31がボーリング孔Aの孔壁における狭隘部に食い込んだ場合、孔内撮影装置1にボーリング孔Aの軸線方向の力、つまり押込力もしくは引抜力を加える。すると、面状体31及び固定部材5の両者に引張力が作用する。そして、この引張力が所定量以上になると、面状体31を構成する線材31a、31bが固定部材5より先行して破断するため、面状体31は孔内カメラ2から容易に分離する。
【0047】
なお、面状体31と固定部材5は必ずしも上記の構成に限定されるものではなく、面状体31と孔内カメラ2とを分離可能にするものであれば、例えば、固定部材5に、面状体31を構成する線材31a、31bより先行して破断する材料を採用してもよい。
【0048】
上述する構成により、本発明の孔内撮影装置1は、施工者がロッド4を把持して孔内カメラ2をボーリング孔A内に挿入すると、複数の突起体3がセンタライザとして機能するため、孔内カメラ2はボーリング孔Aの孔壁に触れることなく、カメラ本体21の中心はボーリング孔Aの軸線と合致する位置に配置される。
【0049】
また、孔内カメラ2とボーリング孔Aの孔壁との間には突起体3により隙間が形成されるから、例えば図1に示すように、ボーリング孔A内にスライムBが滞留している場合においても、これらスライムBは大半が、突起体3により形成された孔内カメラ2とボーリング孔Aの孔壁との間に位置することとなる。このため、孔内カメラ2をボーリング孔A内に挿入しても孔内カメラ2がスライムBに埋没することがなく、カメラ本体21にてボーリング孔Aにおける孔壁の亀裂や地質状況等ボーリング孔A内を鮮明に撮影することができ、調査対象の地質を正確に目視確認することが可能となる。
【0050】
また、孔内カメラ2をボーリング孔A内にて前進させても、スライムBを孔内カメラ2とボーリング孔Aの孔壁との間の隙間から逃すことができる。したがって、孔内カメラ2に作用する挿入抵抗を最小限に抑えることができるため、人力にて孔内撮影装置1による孔内の観察を短時間かつ簡易に行うことが可能となる。
【0051】
一方、孔内カメラ2を引き抜く際においても同様に、スライムBを孔内カメラ2とボーリング孔Aの孔壁との間の隙間から逃すことができる。したがって、孔内カメラ2に作用する引抜抵抗を最小限に抑えることが可能となる。
【0052】
また、例えば孔内カメラ2による孔内観察の途中段階において、ボーリング孔Aにおける孔壁の一部が崩壊してボーリング孔Aに部分的な狭隘部が生じ、当該狭隘部に突起体3が食い込んだ場合には、ロッド4を介して孔内カメラ2に引抜力を作用させ続ければよい。
【0053】
そうすると、面状体31及び固定部材5には孔内カメラ2を介して引張力が作用するため、当該引張力が所定量以上になると、図5に示すように、面状体31は孔内カメラから分離される。これにより、突起体3および面状体31は、ボーリング孔A内に残置されるものの、孔内カメラ2をスムーズに回収することが可能となる。したがって、回収した孔内カメラ2を繰り返し使用することが可能となる。
【0054】
本発明の孔内撮影装置1は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0055】
例えば、本実施の形態では、孔内撮影装置1を地山に穿孔したボーリング孔Aに適用する場合を例にとり詳述したが、横方向ボーリング孔は、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、既存のコンクリート構造物に対して健全性を調査する際に、コアを採取するべく穿孔した水平方向のコアボーリング等に適用してもよい。
【0056】
また、本実施の形態では、突起体3を棒状体に形成し、図2に示すように、孔内カメラ2の外周面に対して放射方向に40°の等間隔で配置するとともに、長手方向に6本配置したが、突起体3の形状や本数、配置間隔は、必ずしも上述する構成に限定されるものではない。センタライザとして機能するとともに、孔内カメラ2の下部とボーリング孔Aの孔壁との間に位置する突起体3にて孔内カメラ2の荷重を支持できれば、いずれの形状、数量及び配置に設置してもよい。
【0057】
さらに、本実施の形態では、面状体31に格子状の網体を採用したが、必ずしもこれに限定されるものではない。孔内カメラ2の外面に沿うように屈曲することが可能な部材であれば、織布や格子形状の異なる網体、帯状材等いずれの面状体31を採用してもよい。また、面状体31は、ジオグリッドや猫除け用マット等市販の合成樹脂材よりなる材料を適宜使用してもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 孔内撮影装置
2 孔内カメラ
21 カメラ本体
22 カメラ保護体
23 LED照明
24 ビデオケーブル
3 突起体
31 面状体
4 ロッド
41 ロッド本体
5 固定部材
A 横方向のボーリング孔
B 端末装置
図1
図2
図3
図4
図5