(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
===BIMの概要===
はじめに、本願発明について説明する上で基本となるBIMの概要について簡単に説明する。
【0015】
BIM(Building Information Modeling)は、コンピューター上に作成された建物の仮想3次元(3D)モデルであり、建物を構成する部品の集合体のモデルである。従来、3次元建物モデルとして3次元CADが用いられてきたが、3次元CADは「形状」についての情報のみしか備えていない場合が多かった。これに対して、BIMは、建物を構成する部品毎に、形態(形状・位置)に関する情報と、形態から算出される体積などの数量と、仕様などの属性情報とを有している。さらにモデル全体では、部品の個数情報も算出できる。例えば、建物の「壁」について、サイズ・厚さ等を含む形状情報と、当該建物中でその壁が配置される位置の情報と、それにより算出される面積や体積と、その壁の名称(型番)や仕様などの情報(属性情報)がコンピューターに登録される。なお、各情報の内容の詳細については後述する。
【0016】
このBIMモデルを用いて、建物の設計などの技術的な検討を行うことができる。
【0017】
===実施形態===
<構成について>
図1は、本実施形態の集計システムの構成の概要を示す説明図である。
【0018】
図に示すシステムは、BIMモデル11用のソフトウェア(以下、BIMソフトともいう)を実行するBIM処理部10、建物に関する情報(関連情報)を格納するデータベース20、BIM処理部10から出力されるBIMデータ12の集計処理を行う集計部30、集計部30の集計結果を明細化する明細化処理部40を備えている。なお、これらの各部(BIM処理部10、データベース20、集計部30、明細化処理部40)は、コンピューターやサーバ装置などにより実現されている。また、
図1のシステム全てが一つのコンピューターに設けられていてもよいし、各部が別々のコンピューターに設けられ、通信回線等を介して接続されていてもよい。
【0019】
BIM処理部10は、不図示の入力部から入力されたデータを基に、BIMソフトを実行して建物のBIMモデル11を作成する。また、そのBIMモデル11からBIMデータ12を生成する。なお、BIMデータ12は、建物を構成する各部品(壁、建具、部屋など)の形状情報と属性情報(数量、仕上げなど)を含んだデータであり、本実施形態ではエクセル(Excel)形式で出力される。
【0020】
データベース20(記憶部に相当)は、例えばハードディスクなどの記憶装置によって構成されており、建物の関連情報や、各部の動作を実行させるプログラム(ソフトウェア)などが格納される。建物の関連情報としては、
図1に示すように、建物概要、外部仕上表、工種マスター・単位、テンプレート、補正係数、各種設定などが含まれる。これらの内容の詳細については後述する。なお、図ではデータベース20は一つであるが、データベース20が複数に構成されていてもよい。そして、上記の各情報が、それぞれ別のデータベースに分かれて格納されていてもよい。
【0021】
集計部30は、BIM処理部10のBIMデータ12と、データベース20のデータとに基づいてデータ処理(積算、見積もり)を行ない、中間ファイル31や、集計ファイル32を作成する。この処理については後述する。
【0022】
明細化処理部40は、明細化用フォーマットで作成された集計ファイル32を開いて明細化し、コンピューターの表示部に表示させる。
【0023】
<集計処理について>
以下、図面を参照しつつ、本実施形態の集計システムの処理について説明する。
図2は、本実施形態の集計システムの処理の流れを示すフロー図である。
【0024】
(BIM処理部10)
図2のステップS01〜S03は、BIM処理部10の処理を示している。
【0025】
また、
図3は、本実施形態のBIMモデル11の全体平面図であり、
図4は、壁の情報の設定画面を示す図であり、
図5は、建具の情報の設定画面を示す図であり、
図6は、部屋の情報の設定画面を示す図である。
【0026】
まず、BIM処理部10は、BIMソフトを用いて3次元のBIMモデル11を作成する(S01)。本実施形態では、説明の簡略化のため、
図3に示すような、床の平面形状が正方形で、4つの壁に囲まれた1部屋の構造のモデルとする。また、4つの壁のうちの2つには、それぞれ、建具としてドア及び窓が設けられている。なお、BIMモデルでは部屋も部品として扱われる。
【0027】
このモデルの各部品(壁、建具、部屋)の情報は、コンピューターに表示される設定画面(
図4、
図5、
図6参照)への入力によって設定される。例えば、壁についての情報として、
図4に示すように、壁の名前、壁の高さ、壁の厚みなどが設定される。さらに、壁の名前と対応する層構成を設定できるようになっている。この層構成の設定画面では、壁のより詳細な構成が、壁の名前や厚みに対応して設定される。
【0028】
また、
図5に示すように、建具(ここではドア)についての情報として、サイズ、種類(建具符号、建具タイプ)、建具枠の詳細などが設定される。本実施形態では図示していないが、窓についても同様である。
【0029】
また、
図6に示すように、部屋についての情報として、部屋のカテゴリ、部屋の名前、部屋内部(床、壁、天井)の仕上情報が設定される。
【0030】
BIM処理部10はこれらの設定画面のデータから一覧表リストを作成し(S02)、このリストをExcel形式にしたデータ(BIMデータ12)を出力する(S03)。
【0031】
図7A〜
図7DはBIMデータ12の一覧表の一例を示す図である。
図7Aは部屋の情報、
図7Bは壁の情報、
図7Cは建具(ドア)の情報、
図7Dは建具(窓)の情報をそれぞれ示している。これらの図に示すように、BIMデータ12には部品のサイズ・厚さ等を含む形状情報に加えて、その部品についての数量情報を含んだ属性情報が付加されている。
【0032】
(データベース20)
図2のステップS04〜S07は、データベース20に情報を格納する処理を示している。
【0033】
まず、予め、建物の概要書(以下、仕様書ともいう)が指定フォーマット(例えばExcel形式)にて作成され(S04)、データベース20に格納される。
図8は、建物の仕様書の一例を示す図である。図のように建物の概要(面積・階高)や外部仕上の仕様などについての情報が設定される。なお、この仕様書はBIMとは連動していない。つまり、BIMモデルを修正しても、仕様書の内容には影響がない(内容が変わらない)。
【0034】
また、コンピューターに表示される集計部30の画面にて、係数表(補正係数)の設定(S05)、壁種仕様対応表の作成(S06)、工種マスターの設定(S07)がそれぞれ行われ、設定された各データがデータベース20に格納される。これらのデータの内容の詳細については、後述する集計部30の処理の説明の際に説明する。
【0035】
なお、
図2では、データベース20に各情報(関連情報)を格納する処理が、BIM処理部10のBIMモデル11の作成よりも後に行われることになっているが、データベース20に情報を格納する処理の少なくとも一部(例えばステップS04)を、BIMモデル11の作成よりも先に行なってもよい。
【0036】
(集計部30)
図9は、集計部30の画面の一例を示す説明図である。なお、この画面は、コンピューターの表示部(ディスプレイなど)に表示されるものである。図の左上の実行区分の欄では、実行する集計処理を設定できる。例えば、この例では、BIMデータ→中間ファイル→明細が選択されており、この順に順次処理を行うようになっている。ただし、これには限られず、BIMデータ→中間ファイルの処理のみや、中間ファイル→明細の処理のみも選択できる。
【0037】
建物概要(仕様書)のデータ及び工種マスターのデータは、
図9に示す建物概要、工種マスターのボタンをクリックすることにより表示・設定することができる。また、この集計部30の画面では図の下側に示すように複数のシートの中からシートを選択でき、このシート選択により、テンプレート、及び、各種設定・係数の情報を設定することができる。
【0038】
図10A〜
図10Fは、各シートの一例の説明図である。なお、これらのシートのデータはデータベース20に格納される。
【0039】
図10Aは建具甲号順のシートの一例を示す図である。ここでは、後述する明細書の甲号順(1、2、3、4・・・・)と、BIMデータ12の建具の種類(スチール建具、アルミ建具・・・)が紐づけ(対応づけ)られる。例えば、図においてスチール建具には甲号順として「1」が対応付けられ、アルミ建具には甲号順として「2」が対応づけられている。このため、明細書ではBIMの建具種類が甲号別に仕分けられ、最初にスチール建具の集計結果が表示され、その後に、アルミ建具の集計結果が表示されることになる。
【0040】
図10Bは、建具甲号区分のシートの一例を示す図である。ここでは図のようにBIMデータ12の建具種類と明細書の建具種類とが紐づけられている。例えば、スチール建具について、SD、SW、SGなどの複数のタイプが紐づけられており、それぞれについてBIMデータ12からの情報を補足する情報(関連情報)が対応づけられている。この例では、建具の各タイプについてそれぞれ、ガラス区分、塗装区分、充填材区分の各情報を補足するように設定されている。
【0041】
図10Cは、建具一式項目のシートの一例を示す図である。ここでは、建具甲号ごとに部材の費用とは別に必要な関連項目を補足している。例えば、スチール建具の場合、防錆費、運搬費、取付費を補足項目としており、アルミ建具の場合、運搬費、取付費、養生費を補足項目としている。
【0042】
図10Dは、建具(主にドア)の係数表のシートの一例を示す図である。ここでは、BIMデータ12からの不足情報を補足する係数(補正係数)を設定している。例えば、図において片開き両面フラッシュ建具の塗装係数として2.9が設定されている。この場合、建具の幅をW、高さをHとすると、塗装面積はW×H×2.9で算出されることになる。
【0043】
図10Eは、建具の係数表(
図10Dの続き、窓など)のシートの一例を示す図であり、
図10Dと同様に、BIMデータ12からの不足情報を補足する係数(補正係数)を設定している。これにより、BIMからの情報に対して、「対象」、「種類」、「内容」ごとに設定された「係数」が乗算されることになる。
【0044】
図10Fは、壁種類のシートの一例を示す図である。ここでは、壁の名前に対して、当該壁の名前と紐付く壁の構成を対応付けている。例えば、本実施形態の壁の名前(L−1/L−1)には、「L65−GR12.9両面」という構成が対応付けられている。
【0045】
これらの設定されたデータは、データベース20に格納される。
【0046】
そして、集計部30は、BIMモデルによって作成されたBIMデータ12と、データベース20のデータに基づいて
図2に示す処理を行う。
【0047】
すなわち、集計部30は、Excel形式のBIMデータ12とデータベース20の各データを取り込み(S08)、BIMデータ12の項目ごとに各データを紐づけて集計する(S09)。そして、各項目ごとに部品を積算した中間ファイル31を作成する(S10)。ここで、エラーが出たらステップS01に戻りモデルを修正、又は、ステップS10の中間ファイル31上で追加補正等の修正を行う。
【0048】
さらに、明細書の項目毎に中間ファイル31の同項目を再集計し(S11)、集計ファイル32を作成する(S12)。なお、集計ファイル32としては、明細化処理部40で扱う明細化用フォーマットの集計ファイル32と、確認用のExcel形式の集計ファイル32が作成される。不足情報があればステップS01に戻ってモデルを修正、又は、ステップS10の中間ファイル上で追加補正などの修正を行う。
【0049】
その後、明細化処理部40が明細化用フォーマットの集計ファイル32の明細化処理を行い(S13)、明細書41をコンピューターの表示部に表示させる。
【0050】
<データの相互関係について>
図11A及び
図11Bは、壁に関する各種情報の相互関係の説明図である。本実施形態では壁の各情報の相互関係について説明する。
【0051】
BIMデータ12には壁の形態(高さ・長さ)に関する情報に加えて、属性情報(ここでは壁名称のL−1/L−1)が付加されている。また、本実施形態のBIMモデル11にはL−1/L−1の壁は4つ設けられている(
図3参照)。そして、その4つの壁のうちの1つには建具(ドア)が設けられており、また別の1つには建具(窓)が設けられている。このため、その建具の面積が開口部の面積として設定されている。例えば、ドアの面積は1.89m
2、窓の面積は1.0m
2である。
【0052】
集計部30は、このようなBIMデータ12を取り込むと、図のようにBIMデータから各壁のそれぞれの面積を算出して中間ファイル31を作成する。例えば、開口部が無い場合は、3×3=9(m
2)とする。開口部(建具)がある場合は、9m
2から開口部の面積を減算する。このようにして、中間ファイル31(壁情報)が作成される。
【0053】
そして、集計部30は、建物全体(本実施形態では1部屋)に関して、中間ファイル31の各データを壁の名称ごとに(この例ではL−1/L−1のみ)積算し、集計ファイル32(明細化用フォーマット、確認用のExcel形式)を作成する。
【0054】
また、
図10Fに示したように、壁名称L−1/L−1には、壁の構成として「L−65GR12.9両面」が対応付けられている。この「L−65GR12.9両面」は、軽鉄間仕切りL65Wを石膏ボードGR12と石膏ボードGR9で両面から挟んだ構成である。このように、集計部30は、壁名称L−1/L−1(部品)を調達単位の部材(L65W、GR12、GR9)に変換し、建物に必要なL65、GR12、GR9をそれぞれ積算する。
【0055】
また、データベース20の工種マスター・単価には、
図11Bに示すように各部材の仕様と単価がそれぞれ設定されており、集計部30は、L65、GR12、GR9のそれぞれの積算値と、仕様・単価を用いて演算を行い、見積り金額を算出する。このようにして、明細化処理部40で扱う明細化用フォーマットの集計ファイル32を作成する。
【0056】
この明細化用フォーマットの集計ファイル32は、明細化処理部40で明細化されて明細書41としてコンピューターの表示部に表示される。
【0057】
本実施形態では、部品として壁の場合について説明したが、部屋、建具(ドア、窓)の場合も同様の処理を行う。なお、建具の場合、前述したように、建具の甲号に対する関連情報として、部材の単価以外の関連情報(例えば、スチール建具では、防錆費、運搬費、取付費)が設定されている(
図10C参照)。この場合、中間ファイルから集計ファイルを作成する際に、これらの値を反映させる。例えば、防錆費の場合、建具の面積(補正係数乗算後)に防錆費の単価を乗算し、建具の見積りに追加する。
【0058】
また、部屋の場合、BIMデータ12には属性情報として床情報(下地、仕上げ)、内壁情報(仕上げ)、天井情報(仕上げ)などのデータが含まれている。この場合には、関連情報を用いずに、BIMデータ12のみで各部材(タイルカーペット、石膏ボードなど)の数量を集計することが可能であり、当該集計結果と、各部材の単価に基づいて見積りを行うことができる。
【0059】
以上説明したように、本実施形態の集計システムは、建物を構成する部品の集合体のBIMモデル11を用いたシステムであり、このBIMモデル11のBIMデータ12には、各部品に対してそれぞれ属性情報が付加されている。そして、属性情報を補足する関連情報を、属性情報に対応づけて格納したデータベース20と、BIMデータ12の属性情報と、当該属性情報に対応する関連情報とを参照して、部品を調達単位の部材に変換し、建物に必要な部材を積算する集計部30とを備えている。
【0060】
これにより、建物を構成する部品の集計を自動的に行うことができ、省力化を図ることができる。また、調達単位の部材に変換して積算するので、集計の精度を高めることができる。
【0061】
===その他の実施の形態===
上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0062】
<BIMについて>
前述の実施形態では、建物の部品を集計するのにBIMモデル(BIMデータ)を用いていたが、BIMには限られず、所定のフォーマットに必要な情報が入力されていればよい。
【0063】
<ファイル形式について>
前述の実施形態では、BIMデータ12、中間ファイル31、確認用の集計ファイル32はエクセル(Excel)形式で作成されていたが、これには限られず他の形式であってもよい。