特許第6503740号(P6503740)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱自動車工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6503740-車両の制御装置 図000002
  • 特許6503740-車両の制御装置 図000003
  • 特許6503740-車両の制御装置 図000004
  • 特許6503740-車両の制御装置 図000005
  • 特許6503740-車両の制御装置 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6503740
(24)【登録日】2019年4月5日
(45)【発行日】2019年4月24日
(54)【発明の名称】車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/32 20060101AFI20190415BHJP
【FI】
   B60H1/32 626E
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-2906(P2015-2906)
(22)【出願日】2015年1月9日
(65)【公開番号】特開2016-128279(P2016-128279A)
(43)【公開日】2016年7月14日
【審査請求日】2017年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】藤井 優
【審査官】 ▲高▼藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−094016(JP,A)
【文献】 特開2009−035072(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内エアコンに用いられる冷媒を冷却するコンデンサと、
前記コンデンサに送風するファンと、
前記ファンを駆動するモータと、
前記車室内エアコンの作動状態を検出するエアコン作動状態検出手段と、
外気温度を検出する外気温度検出手段と、
前記エアコン作動状態検出手段によって検出された前記車室内エアコンの作動状態に基づいて前記モータへの通電可否を判定する第一判定手段と、
前記モータへの通電状態を制御する制御手段と、を備えた車両の制御装置であって、
前記制御手段は、
前記第一判定手段によって前記モータへの通電が許可されたとき、前記外気温度検出手段によって検出された外気温度が所定の第1温度以上である場合には前記モータへ連続的に通電し、前記外気温度検出手段によって検出された外気温度が前記第1温度未満である場合には前記モータへ間欠的に通電するエアコン要求制御を実行し、
さらに、前記エアコン要求制御として前記モータへの間欠的な通電を実行する場合、前記外気温度検出手段によって検出された外気温度が前記第1温度よりも低い所定の第2温度以下のときの前記モータへの通電周期を、前記外気温度検出手段によって検出された外気温度が前記第2温度よりも高いときの前記モータへの通電周期よりも短く設定する
ことを特徴する車両の制御装置。
【請求項2】
前記第1温度は零度よりも高い
ことを特徴とする請求項に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記車両に搭載されたエンジンの冷媒を冷却するラジエータと、
前記エンジンの作動状態を検出するエンジン作動状態検出手段と、
前記エンジン作動状態検出手段によって検出された前記エンジンの作動状態に基づいて前記モータへの通電を許可するか否かを判定する第二判定手段と、を更に備え、
前記ファンは、前記ラジエータにも送風可能に構成されており、
前記制御手段は、前記第二判定手段によって前記モータへの通電が許可されたとき、前記外気温度検出手段によって検出された外気温度が前記第1温度よりも低い所定の第3温度以上である場合には前記モータへ連続的に通電し、前記外気温度検出手段によって検出された外気温度が前記第3温度未満である場合には前記モータへ間欠的に通電するエンジン要求制御を実行する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記エンジン要求制御として前記モータへの間欠的な通電を実行する場合、前記外気温度検出手段によって検出された外気温度が低いほど前記モータへの通電周期を短く設定する
ことを特徴とする請求項記載の車両の制御装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記第一判定手段及び前記第二判定手段によって前記モータへの通電が許可されたとき、前記エンジン要求制御を実行する
ことを特徴とする請求項又はに記載の車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エンジン冷却に用いられる冷媒を冷却するラジエータ及び/又は車室内エアコンに用いられる冷媒を冷却するコンデンサを冷却するファンを搭載した車両の制御装置に係る。
【背景技術】
【0002】
車両のエンジン冷却水放熱用のラジエータやカーエアコン用のコンデンサ(凝縮器)には、これらの放熱効果を高めるために、これらの前方又は後方側に電動ファンが設けられ、この電動ファンは制御装置によって回転が制御されている。
【0003】
この電動ファンの制御装置は、特許文献1に記載されているように、外気温度を検出する外気温検出センサによって検出された外気温度が所定値以下のときにファンのモータを非作動状態にし、外気温度が所定値以上のときにファンのモータを作動させるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−50219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この特許文献1に記載の電動ファンの制御装置では、寒冷地においてファンに氷が付着した場合、エアコンの作動時にモータに通電して駆動させようとしてもファンが回転しないので、モータが発熱して溶損する虞がある。
【0006】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも幾つかの実施形態は、ファンに氷が付着等してファンが回転できない状態となってモータが溶損する虞を防止することができる車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の幾つかの実施形態に係わる車両の制御装置は、車室内エアコンに用いられる冷媒を冷却するコンデンサと、前記コンデンサに送風するファンと、前記ファンを駆動するモータと、前記車室内エアコンの作動状態を検出するエアコン作動状態検出手段と、外気温度を検出する外気温度検出手段と、前記エアコン作動状態検出手段によって検出された前記車室内エアコンの作動状態に基づいて前記モータへの通電可否を判定する第一判定手段と、前記モータへの通電状態を制御する制御手段と、を備えた車両の制御装置であって、前記制御手段は、前記第一判定手段によって前記モータへの通電が許可されたとき、前記外気温度検出手段によって検出された外気温度が所定の第1温度以上である場合には前記モータへ連続的に通電し、前記外気温度検出手段によって検出された外気温度が前記第1温度未満である場合には前記モータへ間欠的に通電するエアコン要求制御を実行するように構成される。
【0008】
ここで、ファンが凍結している状態でモータへの通電を連続的に行なうと、モータが発熱し溶損してしまう虞がある。しかしながら、上記車両の制御装置によれば、外気温度が第1温度より低い場合にはモータへの通電を間欠的に行なうようにしたので、凍結していたとしてもモータの発熱を抑制し、溶損リスクを低減することができるとともに、作動を停止しないことで、ファンが凍結していない場合にファンを適切に駆動することができ、コンデンサにおいて冷媒を適切に冷却するためのエアコン要求を満たすことができる。よって、ファンに氷が付着等してファンが回転できない状態となってモータが溶損する虞を防止可能な車両の制御装置を実現できる。
【0009】
また、幾つかの実施形態では、
前記制御手段は、前記エアコン要求制御として前記モータへの間欠的な通電を実行する場合、前記外気温度検出手段によって検出された外気温度が前記第1温度よりも低い所定の第2温度以下のときの前記モータへの通電周期を、前記外気温度検出手段によって検出された外気温度が前記第2温度よりも高いときの前記モータへの通電周期よりも短く設定するように構成される。
【0010】
この場合、制御手段は、モータへの間欠的な通電を実行する場合、外気温度が第1温度よりも低い所定の第2温度以下のときのモータへの1周期の通電時間がより短くなるので、より確実にモータの溶損リスクを低減することができる。
【0011】
また、幾つかの実施形態では、
前記第1温度は零度よりも高いように設定される。
【0012】
この場合、外気温度が零度以上でも凍結している虞はあるため、第1温度を零度よりも高く設定することで、より確実に凍結によるモータの溶損リスクを低減することができる。
【0013】
また、幾つかの実施形態では、前記車両に搭載されたエンジンの冷媒を冷却するラジエータと、前記エンジンの作動状態を検出するエンジン作動状態検出手段と、前記エンジン作動状態検出手段によって検出された前記エンジンの作動状態に基づいて前記モータへの通電を許可するか否かを判定する第二判定手段と、を更に備え、前記ファンは、前記ラジエータにも送風可能に構成されており、前記制御手段は、前記第二判定手段によって前記モータへの通電が許可されたとき、前記外気温度検出手段によって検出された外気温度が前記第1温度よりも低い所定の第3温度以上である場合には前記モータへ連続的に通電し、前記外気温度検出手段によって検出された外気温度が前記第3温度未満である場合には前記モータへ間欠的に通電するエンジン要求制御を実行するように構成される。
【0014】
ここで、外気温度が第3温度より低い場合にはモータへの通電を間欠的に行なうようにしたので、凍結していたとしてもモータの発熱を抑制し、モータの溶損リスクを低減することができる。また、第3温度を第1温度よりも低く設定することで、エアコン要求制御よりも間欠作動が実行され難くなる。ところで、外気温度が第3温度以上でも凍結している虞はあるが、凍結していない状態で間欠作動させてしまうとラジエータの冷却が不要に妨げられてしまい、エンジン要求を満たせなくなりオーバーヒートしてしまう虞がある。そこで、エンジン要求によりファンを作動させる場合は、外気温度が第3温度以上であれば連続的にモータへ通電させることで、凍結していない場合の確実な冷却を実施することができるとともに、凍結の虞が高い第3温度未満であれば間欠作動させることでモータの溶損リスクを低減することができる。
【0015】
また、幾つかの実施形態では、
前記制御手段は、前記エンジン要求制御として前記モータへの間欠的な通電を実行する場合、前記外気温度検出手段によって検出された外気温度が低いほど前記モータへの通電周期を短く設定するように構成される。
【0016】
ここで、外気温度が低いほど凍結リスクも高まるため、外気温度が低いほどモータへの通電周期を短く設定することで、より確実にモータの溶損リスクを低減することができる。
【0017】
また、幾つかの実施形態では、
前記制御手段は、前記第一判定手段及び前記第二判定手段によって前記モータへの通電が許可されたとき、前記エンジン要求制御を実行するように構成される。
【0018】
つまり、エアコン要求制御とエンジン要求制御が重なった場合には、エンジン要求制御を優先する。このため、ファンが凍結してない場合のエンジンのオーバーヒートをより確実に抑制することができる。
【0019】
本発明の幾つかの実施形態に係わる車両の制御装置は、車両に搭載されたエンジンの冷媒を冷却するラジエータと、前記ラジエータに送風するファンと、前記ファンを駆動するモータと、前記エンジンの作動状態を検出するエンジン作動状態検出手段と、外気温度を検出する外気温度検出手段と、前記エンジン作動状態検出手段によって検出された前記エンジンの作動状態に基づいて前記モータへの通電可否を判定する第二判定手段と、前記モータへの通電状態を制御する制御手段と、を備えた車両の制御装置であって、前記制御手段は、前記第二判定手段により前記モータへの通電が許可されたとき、前記外気温度検出手段によって検出された外気温度が所定の第3温度以上である場合には前記モータへ連続的に通電し、前記外気温度検出手段によって検出された外気温度が前記第3温度未満である場合には前記モータへ間欠的に通電するエンジン要求制御を実行するように構成される。
【0020】
ここで、ファンが凍結している状態でモータへの通電を連続的に行なうと、モータが発熱し溶損してしまう虞がある。しかしながら、上記車両の制御装置によれば、外気温度が第3温度より低い場合にはモータへの通電を間欠的に行なうようにしたので、凍結していたとしてもモータの発熱を抑制し、溶損リスクを低減することができるとともに、作動を停止しないことで、ファンが凍結していない場合にファンを適切に駆動することができ、ラジエータにおいて冷媒を適切に冷却するためのエンジン要求を満たすことができる。よって、ファンに氷が付着等してファンが回転できない状態となってモータが溶損する虞を防止可能な車両の制御装置を実現できる。
【0021】
また、幾つかの実施形態では、
前記制御手段は、前記エンジン要求制御として前記モータへの間欠的な通電を実行する場合、前記外気温度検出手段によって検出された外気温度が低いほど前記モータへの通電周期を短く設定するように構成される。
【0022】
ここで、外気温度が低いほど凍結リスクも高まるため、外気温度が低いほどモータへの通電周期を短く設定することで、より確実にモータの溶損リスクを低減することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の少なくとも幾つかの実施形態によれば、ファンに氷が付着等してファンが回転できない状態となってモータが溶損する虞を防止可能な車両の制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態である車両の制御装置が設けられた車両前部の平面視における概略説明図である。
図2】エアコン要求時における外気温度に対応するファンの作動時間を示した表である。
図3】エンジン要求時における外気温度に対応するファンの作動時間を示した表である。
図4】制御手段によるファンのモータの作動を制御する制御内容を記載したフローチャートである。
図5】ファンモータの制御を記載したタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面に従って本発明の車両の制御装置の実施形態について、図1図5を参照しながら説明する。なお、この実施形態に記載されている構成部品の材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。また、本実施形態では、車両のエンジンルーム内に車両の制御装置が設けられている場合を例にして説明する。
【0026】
図1は、本発明の一実施形態である車両の制御装置が設けられた車両前部の平面視における概略説明図である。本実施形態の車両の制御装置は、ファンを回転させるモータの作動を制御する制御装置に関する。
【0027】
図1に示すように、エンジンルーム1内には、エンジン3と、エンジン3の前方に配設されたファン5及びファン5を駆動させるモータ7が配設されている。ファン5の前方にはラジエータ9が配設され、ラジエータ9の前方には、コンデンサ11(凝縮器)が配設されている。コンデンサ11の前方には、フロントグリル(図示せず)が配設されて、車両の走行時に外気がエンジンルーム1内に流入可能に構成されている。ファン5、ラジエータ9、コンデンサ11の幅方向両側には、エンジンルーム1内に流入した外気をエンジン3側に案内するエアガイド13が設けられている。コンデンサ11は、車両の車室15内を空調するエアコン20の一部を構成する。エアコン20の詳細は後述する。
【0028】
制御装置40は、エアコン作動状態検出手段41によって検出されたエアコン20の作動状態に基づいてモータ7への通電可否を判定する第一判定部47と、エンジン作動状態検出手段51によって検出されたエンジン3の作動状態に基づいてモータ7への通電を許可するか否かを判定する第二判定部55と、モータ7への通電状態を制御するコントローラ60(制御手段)と、を備える。
【0029】
コンデンサ11は、エアコン20に用いられる冷媒を冷却する。コンデンサ11の下流側には冷媒流路21aを介して膨張弁23が接続され、膨張弁23の下流側には冷媒流路21bを介してエバポレータ25(蒸発器)が接続され、エバポレータ25(蒸発器)の下流側には冷媒流路21cを介してコンプレッサ27が接続されている。コンプレッサ27の下流側には冷媒流路21dを介してコンデンサ11が接続されている。コンデンサ11、膨張弁23、エバポレータ25、コンプレッサ27は、冷媒流路21a、21b,21c,21dを介して循環路を構成している。
【0030】
冷媒は、コンプレッサ27で圧縮された後にコンデンサ11で冷却されて液化する。液化された冷媒は膨張弁23で断熱膨張された後にエバポレータ25で車室15内の空気と熱交換される。冷媒から冷熱を得た(冷媒に熱を奪われた)空気は、図示しないブロワファンによって車室内に送り込まれる。
【0031】
モータ7は、その回転軸7aにファン5が取り付けられ、モータ7の駆動によりファン5を回転して、車両の前方から吸引された外気が後方側へ流れて、コンデンサ11、ラジエータ9及びエンジン3を冷却する。モータ7は、後述するコントローラ60によって回転が制御される。
【0032】
エアコン作動状態検出手段41は、コンプレッサ27から吐出する冷媒の圧力が所定値を超えているか否かを検出するセンサである。このエアコン作動状態検出手段41は、コンプレッサ27とコンデンサ11とを繋ぐ冷媒流路21dに設けられている。コンプレッサ27から吐出する冷媒の圧力が高すぎると、コンデンサ11において冷媒の冷却が不足して、車室15内の空気を冷却する冷却能力が不足する虞が生じる。このため、冷却能力が不足する虞がない冷媒圧力の範囲のうちの上限値よりも僅かに小さい値を所定値と設定している。エアコン作動状態検出手段41の検出信号は第一判定部47に送られる。なお、エアコン作動状態検出手段41は、エバポレータ25(蒸発器)から吐出された冷媒ガスの温度が所定値を超えているか否かを検出するセンサでもよく、またコンプレッサ27から吐出する冷媒の圧力を検出するセンサの少なくともいずれかでもよい。
【0033】
外気温度検出手段43は、外気の温度を検出するセンサであり、本実施形態ではコンデンサ11の幅方向一方側の前面11aよりも前方位置に配設されている。外気温度検出手段43の検出信号はコントローラ60に送られる。
【0034】
第一判定部47は、エアコン作動状態検出手段41によって検出されたエアコン20の作動状態に基づいてモータ7への通電可否を判定する。すなわち、第一判定部47は、エアコン作動状態検出手段41によって検出された冷媒圧力が所定値を超えていると検出されると、モータ7への通電を許可する判定を行い、エアコン作動状態検出手段41によって検出された冷媒圧力が所定値を超えていないと検出されると、モータ7への通電を許可しない判定を行う。第一判定部47の判定結果はコントローラ60に送られる。
【0035】
エンジン作動状態検出手段51は、エンジン3の作動状態を検出する手段であり、具体的には、エンジン3を冷却する冷却水の温度を検出するセンサである。なお、エンジン作動状態検出手段51は、エンジン油温や吸気温度等のエンジン3の温度に相関する温度を検出するセンサでもよい。
第二判定部55は、エンジン作動状態検出手段51によって検出されたエンジン3の作動状態に基づいてモータ7への通電を許可するか否かを判定する。具体的には、第二判定部55は、エンジン作動状態検出手段51によって検出された冷却水の温度が所定値(例えば、80℃)を超えていると検出されると、モータ7への通電を許可する判定を行い、エンジン作動状態検出手段51によって検出された冷却水の温度が所定値(例えば、80℃)を超えていないときには、モータ7への通電を許可しない判定を行う。第二判定部55の判定結果はコントローラ60に送られる。
【0036】
コントローラ60は、第一判定部47によってモータ7への通電が許可されたとき、外気温度検出手段43によって検出された外気温度が所定の第1温度(例えば、15℃)以上である場合にはモータ7へ連続的に通電し、外気温度検出手段43によって検出された外気温度が第1温度(例えば、15℃)未満である場合にはモータ7へ間欠的に通電するエアコン要求制御を実行する。
【0037】
具体的には、図1及び図2に示すように、外気温度が20℃以上になると、コントローラ60はモータ7へ連続的に通電する通常作動を実行し、外気温度15℃以下になると、コントローラ60はモータ7を間欠的に通電する間欠作動を実行する。なお、図2では5℃ごとの温度区分を示すため、20℃未満15℃を超える範囲については、15℃以下又は20℃以上のいずれかに含めてもよい。他の区分についても同様である。
【0038】
また、コントローラ60は、エアコン要求制御としてモータ7への間欠的な通電を実行する場合、外気温度検出手段43によって検出された外気温度が第1温度(例えば、15℃)よりも低い所定の第2温度(例えば、0℃)以下のときのモータ7への通電周期を、外気温度検出手段43によって検出された外気温度が第2温度(例えば、0℃)よりも高いときのモータ7への通電周期よりも短く設定する。
【0039】
また、コントローラ60は、図1及び図3に示すように、第二判定部55によってモータ7への通電が許可されたとき、外気温度検出手段43によって検出された外気温度が第1温度(例えば、15℃)よりも低い所定の第3温度(例えば、0℃)以上である場合にはモータ7へ連続的に通電し、外気温度検出手段43によって検出された外気温度が第3温度(例えば、0℃)未満である場合にはモータ7へ間欠的に通電するエンジン要求制御を実行する。
【0040】
具体的には、外気温度が0℃以上になると、コントローラ60はモータ7へ連続的に通電する通常作動を実行し、外気温度−5℃以下になると、コントローラ60はモータ7へ間欠的に通電する間欠作動を実行する。
【0041】
また、コントローラ60は、第一判定部47及び第二判定部55によってモータ7への通電が許可されたとき、エンジン要求制御を実行する。即ち、エアコン要求制御とエンジン要求制御が重なった場合には、エンジン要求制御を優先する。
【0042】
次に、車両の制御装置40の作動について、図1図5を参照しながら説明する。なお、図5のタイムチャートは、冷却ファンが凍結していない場合のファン5のモータ7の制御状態等を記載している。先ず、時刻t0でエンジン3が始動した後に、時刻tでエアコン20がON作動されると、冷媒が流動可能になり、コンプレッサ27の作動条件成立によりエアコン20のコンプレッサ27が作動して冷媒の圧力が上昇する。その後、時刻tでエアコン作動状態検出手段41によって冷媒圧力が所定値を超えていると検出されると、第一判定部47はモータ7への通電を許可する判定を行って通電許可のフラグ(モーター通電許可フラグ)を立てる。
【0043】
コントローラ60は、モータ通電許可フラグが立っていることを確認すると、外気温度検出手段43によって検出された外気温度を読み込み、図2に示したマップに基づいてエアコン要求制御を実行する。ここで、時刻tにおける外気温度は第2温度(0℃)以下であるため、コントローラ60は、モータ7への通電周期を最大作動時間が5sec、停止時間が5secの通電周期に設定し、モーター通電許可フラグが下がるまでファン5を間欠作動させる。そして、時刻tでエアコン作動状態検出手段41によって冷媒圧力が所定値を下回ったと検出されると、第一判定部47はモーター通電許可フラグを下げ、コントローラ60はエアコン要求制御を停止する。
【0044】
時刻tからtでは、コントローラ60は、時刻tからtの場合と同様にエアコン要求制御を実行する。但し、このときの外気温度は第2温度(0℃)よりも高く第1温度よりも低いため、外気温度が第2温度(0℃)以下の場合よりも長い通電周期が選択される。つまり、コントローラ60は、時刻tからtの場合に比べて長い周期でファン5を間欠作動する。
【0045】
ここで、ファン5が凍結している状態でモータ7への通電を連続的に行なうと、モータ7が発熱し溶損してしまう虞があるが、外気温度が第1温度(15℃)より低い場合にはモータ7への通電を間欠的に行なうようにしたので、ファン5が凍結していたとしてもモータ7の発熱を抑制し、溶損リスクを低減することができるとともに、モータ7の作動を停止しないことで、凍結していない場合にファン5を適切に駆動することができ、エアコン要求を満たすことができる。
【0046】
時刻tからtでは、コントローラ60は、時刻tからtの場合と同様にエアコン要求制御を実行する。ここで、時刻tにおいて、冷却水の温度(エンジン水温)が所定温度(例えば、80℃)を超えた場合には、コントローラ60は、エンジン要求制御を実行する。つまり、時刻tにおける外気温度は第3温度(0℃)以上であるため、コントローラ60は、モータ7へ連続的に通電してファン5を連続的に作動させる。
【0047】
そして、エンジン作動状態検出手段51によって冷却水の温度(エンジン水温)が所定温度(例えば、70℃)よりも低くなったと検出されると、第一判定部47はモーター通電許可フラグを下げ、コントローラ60はエンジン要求制御を停止する。
【0048】
時刻t10からt11では、コントローラ60は、時刻tからtの場合と同様にエンジン要求制御を実行する。そして、エアコン作動状態検出手段41によって冷却水の温度(エンジン水温)が所定温度(例えば、70℃)よりも低くなったと検出されると、第一判定部47はモーター通電許可フラグを下げ、コントローラ60はエンジン要求制御を停止する。
【0049】
時刻t13からt14では、エンジン作動状態検出手段51によって冷却水の温度(エンジン水温)が所定温度(例えば、80℃)を超えていないと検出され、エアコン作動状態検出手段41によって冷媒圧力が所定値を超えていると検出されると、コントローラ60はエアコン要求制御を実行する。ここで、時刻t13における外気温度は第1温度(15℃)以下であるため、コントローラ60は、モータ7へ連続的に通電する。そして、時刻t14でエアコン作動状態検出手段41によって冷媒圧力が所定値を下回ったと検出されると、第一判定部47はモーター通電許可フラグを下げ、コントローラ60はモータ7への通電を停止する。
【0050】
次に、車両の制御装置40の作動について図4のフローチャートを参照しながら説明する。先ず、エンジン作動状態検出手段51によって検出された冷却水の温度(エンジン水温)が所定温度(例えば、80℃)を超えているか否かが判断される(ステップ100)。冷却水の温度(エンジン水温)が所定温度(例えば、80℃)を超えている場合には、エンジン要求制御が実行される(ステップ101)。このエンジン要求制御では、外気温度検出手段43によって検出された温度に応じて図3に示すモータ7の通電周期が設定される。
【0051】
そして、冷却水の温度(エンジン水温)が所定温度(例えば、70℃)を超えていないか否かが判断される(ステップ102)。冷却水の温度(エンジン水温)が所定温度(例えば、70℃)を超えていない場合には、エンジン要求制御が停止され(ステップ103)、冷却水の温度(エンジン水温)が所定温度(例えば、70℃)を超えている場合には、エンジン要求制御が継続して実行される(ステップ101)。
【0052】
一方、ステップ100において、冷却水の温度(エンジン水温)が所定温度(例えば、80℃)を超えていないと判断されると、エアコン作動状態検出手段41によって検出されたコンプレッサ27の冷媒圧力が所定値を超えているか否かが判定される(ステップ104)。
【0053】
コンプレッサ27の冷媒圧力が所定値を超えている場合には、エアコン要求制御が実行される(ステップ105)。このエアコン要求制御では、外気温度検出手段43によって検出された温度に応じて図2に示すモータ7の通電周期が設定される。
【0054】
そして、コンプレッサ27の冷媒圧力が所定値を超えていないか否かが判断される(ステップ106)。コンプレッサ27の冷媒圧力が所定値を超えていない場合には、エアコン要求制御が停止される(ステップ107)。
一方、コンプレッサ27の冷媒圧力が所定値を超えている場合には、冷却水の温度(エンジン水温)が所定温度(例えば、80℃)を超えているか否かが再度判断される(ステップ108)。そして、冷却水の温度(エンジン水温)が所定温度(例えば、80℃)を超えている場合には、エアコン要求制御が停止され(ステップ109)、エンジン要求制御が実行される(ステップ101)。一方、ステップ108において、冷却水の温度(エンジン水温)が所定温度(例えば、80℃)を超えていないと判断されると、エアコン要求制御が継続して実行される(ステップ105)。
【0055】
このように、外気温度が第2温度(0℃)より低い場合にはモータ7への通電を間欠的に行なうようにしたので、ファン5が凍結していたとしてもモータ7の発熱を抑制することができ、モータ7の溶損リスクを低減することができる。また、モータ7への通電を間欠的に行うことで、モータ7の作動が停止しないので、ファン5が凍結していない場合にファン5を適切に駆動することができ、コンデンサ11において冷媒を適切に冷却するためのエアコン要求を満たすことができる。よって、ファン5に氷が付着等してファン5が回転できない状態となってモータ7が溶損する虞を防止可能な車両の制御装置を実現できる。
【0056】
また、外気温度が零度以上であってもファン5が凍結している虞はあるため、本実施形態ではエアコン20からの要求によりファン5を駆動させる場合には、外気温度が第1温度(15℃)よりも低ければモータ7への通電を間欠的に行なうようにした。これにより、より確実にモータ7の溶損リスクを低減することができる。
【0057】
一方、エンジン3からの要求によりファン5を駆動させる場合には、外気温度が第1温度よりも低い第3温度(0℃)未満である場合に限ってモータ7への通電を間欠的に行なうようにした。ここで、前述の通り外気温度が零度以上であってもファン5が凍結している虞はあるが、凍結していない状態で間欠作動させてしまうとラジエータ9の冷却が不要に妨げられてしまい、エンジン要求を満たせなくなりオーバーヒートしてしまう虞がある。そこで、エンジン要求によりファン5を作動させる場合は、外気温度が第3温度(0℃)以上であれば連続的にモータ7へ通電させることで、凍結していない場合のラジエータ9の確実な冷却を実施することができるとともに、凍結の虞が高い第3温度未満であれば間欠作動させることでモータ7の溶損リスクを低減することができる。
【0058】
また、モータ7への間欠的な通電を実行する場合には、外気温度が低いほどモータ7への通電周期を短く設定するようにしたので、より確実にモータの溶損リスクを低減することができる。
またさらに、エアコン要求制御とエンジン要求制御が重なった場合にはエンジン要求制御を優先して実行するようにしたので、ファン7が凍結してない場合のラジエータ9の冷却を確実に実施し、エンジン3のオーバーヒートをより確実に抑制することができる。
【0059】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない範囲での種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 エンジンルーム
3 エンジン
5 ファン
7 モータ
7a 回転軸
11 コンデンサ
13 エアガイド
15 車室
20 エアコン
21a、21b、21c、21d 冷媒流路
23 膨張弁
25 エバポレータ
27 コンプレッサ
40 制御装置
41 エアコン作動状態検出手段
43 外気温度検出手段
47 第1判定部(第1判定手段)
51 エンジン作動状態検出手段
55 第2判定部(第2判定手段)
60 コントローラ(制御手段)
図1
図2
図3
図4
図5