特許第6504016号(P6504016)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6504016-杭の鉛直支持力確認装置及び方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6504016
(24)【登録日】2019年4月5日
(45)【発行日】2019年4月24日
(54)【発明の名称】杭の鉛直支持力確認装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 33/00 20060101AFI20190415BHJP
   G01N 3/00 20060101ALI20190415BHJP
   E02D 5/56 20060101ALI20190415BHJP
【FI】
   E02D33/00
   G01N3/00 D
   E02D5/56
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-206640(P2015-206640)
(22)【出願日】2015年10月20日
(65)【公開番号】特開2017-78291(P2017-78291A)
(43)【公開日】2017年4月27日
【審査請求日】2018年1月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】南部 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】棚邉 隆
【審査官】 石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−047677(JP,A)
【文献】 特開昭57−130619(JP,A)
【文献】 特開平06−257138(JP,A)
【文献】 特開2005−220662(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 33/00
E02D 5/56
G01N 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管からなる本体と、該本体の先端部に設けられた螺旋状の翼部と、前記本体の先端部に該先端開口を塞ぐように設けられた底板と、先端が底板の上面側に固定され、他端が本体の内面に設けられた支持板に固定された鋼管からなる内筒と、該内筒の周面に設けられて内筒の軸方向のひずみを計測するひずみ計と、該ひずみ計の計測値に基づいて、前記底板に生ずる貫入抵抗Ppを演算する演算装置とを備えたことを特徴とする杭の鉛直支持力確認装置。
【請求項2】
鋼管からなる本体と、該本体の先端部に設けられた螺旋状の翼部と、前記本体の先端部に該先端開口を塞ぐように設けられた底板と、先端が底板の上面側に固定され、他端が本体の内面に設けられた支持板に固定された鋼管からなる内筒と、前記本体の上端部の周面に設けられて本体の当該部位の軸方向のひずみを計測する第1ひずみ計と、前記本体における翼部の近傍上部周面に設けられて前記本体の当該部位の軸方向のひずみを計測する第2ひずみ計と、前記内筒の周面に設けられて内筒の軸方向のひずみを計測する第3ひずみ計と、前記第1ひずみ計の計測値に基づいて押し込み力Poを演算し、前記第2ひずみ計の計測値に基づいて翼の推進力Pwを演算し、前記第3ひずみ計の計測値に基づいて貫入抵抗Ppを演算し、これらPo、Pw、Ppの値を用いて、前記本体に生ずる周面摩擦力Pfを、Pf=Pw−Pp+Poとして演算する演算装置とを備えたことを特徴とする杭の鉛直支持力確認装置。
【請求項3】
押し込み力Poを、第1ひずみ計の計測値に代えて本体を地盤に押し込むジャッキの元圧を計測して該計測値に基づいて演算するようにしたことを特徴とする請求項2記載の杭の鉛直支持力確認装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の杭の鉛直支持力確認装置を用いた杭の鉛直支持力確認方法であって、
計測対象とする地盤に前記鉛直支持力確認装置をねじ込みながら、前記演算装置によって演算される貫入抵抗Pp、又は貫入抵抗Pp及び周面摩擦力Pfに基づいて杭の鉛直支持力を確認することを特徴とする杭の鉛直支持力確認方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤に杭を施工するに先だって当該地盤に杭を施工した際に得られる杭の鉛直支持力を杭の施工前に確認する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
杭の鉛直支持力を確認する方法として、打撃工法にあってはハンマーのラム重量、同落下高さ、貫入量、リバウンド量などから鉛直支持力を杭施工中に確認する方法がある。
しかしながら、打撃工法以外の杭工法にあっては、施工前や施工中に杭の鉛直支持力を確認する方法がない。
【0003】
そのため、例えば杭の施工後に載荷試験により確認する方法等が行われている。その具体例としては特許文献1の[従来技術]の欄に記載されているように、測定対象の杭(試験杭)の周囲に2本あるいは4本の反力杭を打設すると共に、試験杭の上方において反力杭に支持された主梁およびこれに係合する副梁を備えた反力桁装置を構築すると共に、前記試験杭と主梁との間に加圧用ジャッキを配設し、該ジャッキにより試験杭に押圧力を作用させ、その反力を副梁に間接的に係合すると共に前記反力杭に係合する引張り材を介して前記複数の反力杭により受けるようにした載荷装置を用いるというものである(特許文献1の段落[0002]〜[0003]参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−47677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような載荷装置を用いる方法の場合は、特許文献1にも記載されているように、反力杭の施工が必要になると共に、反力桁装置の施工が必要になるので、載荷試験にかかる試験費用や所要日数が工事に大きな負担となっている。
また、コンクリートを現場で硬化させて杭を構築する場所打ち杭の場合、そもそも硬化した後でなければ載荷試験ができず、杭の打設後おおよそ1ヵ月後でないと載荷試験ができないという問題がある。
さらに、施工後に実施される載荷試験において鉛直支持力不足が判明した場合は、当初の計画よりも杭の本数を増やす、いわゆる増し杭などによる対応しか取れないという問題もある。
【0006】
以上のような事情から、杭を施工する前に杭を施工した場合の鉛直支持力を確認(予測)できる装置及び方法の開発が望まれていた。
【0007】
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、杭を施工する前に杭を施工した場合の鉛直支持力を精度よく確認できる杭の鉛直支持力確認装置及び方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る杭の鉛直支持力確認装置は、鋼管からなる本体と、該本体の先端部に設けられた螺旋状の翼部と、前記本体の先端部に該先端開口を塞ぐように設けられた底板と、先端が底板の上面側に固定され、他端が本体の内面に設けられた支持板に固定された鋼管からなる内筒と、該内筒の周面に設けられて内筒の軸方向のひずみを計測するひずみ計と、該ひずみ計の計測値に基づいて、前記底板に生ずる貫入抵抗Pを演算する演算装置とを備えたことを特徴とするものである。
【0009】
(2)本発明に係る杭の鉛直支持力確認装置は、鋼管からなる本体と、該本体の先端部に設けられた螺旋状の翼部と、前記本体の先端部に該先端開口を塞ぐように設けられた底板と、先端が底板の上面側に固定され、他端が本体の内面に設けられた支持板に固定された鋼管からなる内筒と、前記本体の上端部の周面に設けられて本体の当該部位の軸方向のひずみを計測する第1ひずみ計と、前記本体における翼部の近傍上部周面に設けられて前記本体の当該部位の軸方向のひずみを計測する第2ひずみ計と、前記内筒の周面に設けられて内筒の軸方向のひずみを計測する第3ひずみ計と、前記第1ひずみ計の計測値に基づいて押し込み力Pを演算し、前記第2ひずみ計の計測値に基づいて翼の推進力Pを演算し、前記第3ひずみ計の計測値に基づいて貫入抵抗Pを演算し、これらP、P、Pの値を用いて、前記本体に生ずる周面摩擦力Pを、P=P−P+Pとして演算する演算装置とを備えたことを特徴とするものである。
【0010】
(3)また、上記(2)に記載のものにおいて、押し込み力Pを、第1ひずみ計の計測値に代えて本体を地盤に押し込むジャッキの元圧を計測して該計測値に基づいて演算するようにしたことを特徴とするものである。
【0011】
(4)本発明に係る杭の鉛直支持力確認方法は、上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の杭の鉛直支持力確認装置を用いた杭の鉛直支持力確認方法であって、
計測対象とする地盤に前記鉛直支持力確認装置をねじ込みながら、前記演算装置によって演算される貫入抵抗P、又は貫入抵抗P及び周面摩擦力Pに基づいて杭の鉛直支持力を確認することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、鋼管からなる本体と、該本体の先端部に設けられた螺旋状の翼部と、前記本体の先端部に該先端開口を塞ぐように設けられた底板と、先端が底板の上面側に固定され、他端が本体の内面に設けられた支持板に固定された鋼管からなる内筒と、該内筒に生じる軸方向のひずみを計測するひずみ計と、該ひずみ計によって前記内筒に生ずるひずみを計測し、該ひずみに基づいて、前記底板に生ずる貫入抵抗Pを演算する演算装置とを備えたことにより、杭を施工する前に杭を施工した場合の鉛直支持力を精度よく確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態に係る杭の鉛直支持力確認装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施の形態1]
本発明に係る杭の鉛直支持力確認装置1を図1に基づいて説明する。
杭の鉛直支持力確認装置1の基本的な形状は鋼管杭と同様であり、鋼管からなる本体3と、本体3の先端部に設けられた螺旋状の翼部5と、本体3の先端部に該先端部から1〜2cm下方側に離れた位置に本体3の先端開口を塞ぐように設けられた底板7と、先端が底板7の上面側に固定され、他端が本体3の内周面に設けられた円環板9に固定された鋼管からなる内筒11とを備えている。
【0015】
また、杭の鉛直支持力確認装置1は、本体3の上端部の内周面に設けられて本体3の当該部位の軸方向のひずみを計測する第1ひずみ計13と、本体3における翼部5の近傍上部内周面に設けられて本体3の当該部位の軸方向のひずみを計測する第2ひずみ計15と、内筒11の内周面に設けられて内筒11の軸方向のひずみを計測する第3ひずみ計17とを備えている。
さらに、第1ひずみ計13の計測値に基づいて押し込み力Pを演算し、第2ひずみ計15の計測値に基づいて翼の推進力Pを演算し、第3ひずみ計17の計測値に基づいて貫入抵抗Pを演算し、これらP、P、Pの値を用いて、本体3に生ずる周面摩擦力Pを演算する演算装置19を備えている。
なお、杭の鉛直支持力確認装置1は、図1に示すように、演算装置19の演算結果を表示する表示部21を備えるのが望ましい。
以下、各構成について説明する。
【0016】
<本体>
本体3は、外径が例えばφ400mm〜φ600mmの鋼管からなる。本体3の先端近傍に翼部5が溶接されており、翼部5の推進力によって本体3が地中に回転貫入される。
本体3の上端部の外周面には、図示しない突起が設けられ、該突起に回転力が付与される。
【0017】
<翼部>
翼部5は、本体3に推進力を与えるものであり、例えば螺旋翼によって構成されている。
【0018】
<底板>
底板7は、本体3の先端開口を閉塞し、本体3が回転貫入する際に土砂が本体3内に入るのを防止する機能を有する。
該機能を発揮するためには、底板7の面積は本体3の先端開口と同等又は若干大きくすればよいが、底板7は、先端支持力を演算するための地盤反力を受けるという機能も有しているので、これらの機能を発揮するという観点から、底板7は本体3の先端開口と同等にするのが望ましい。
【0019】
<内筒>
内筒11は、本体3と同じ材質の鋼管からなり、底板7を本体3の先端部に該先端部から1〜2cm下方側に離れた位置に支持するものである。内筒11の下端側に底板7が固定され、内筒11の上端は本体3の内周面に設けられた円環板9に固定されている。
なお、内筒11の上端側は、円環板9に固定しなくとも、本体3の内周面に連結するように設けられた支持板に固定するようにしてもよい。
【0020】
<ひずみ計>
第1ひずみ計13は、本体3の上端部の内周面に設けられて本体3の当該部位の軸方向のひずみを計測する。
本体3の上端部には、本体3を地盤に貫入させるための押しこみ力が付与され、この押し込み力に起因して生ずる軸方向のひずみを計測することで、押し込み力を求めることができる。
本例において、第1ひずみ計13は本体3の周方向180°離れた位置で、かつ軸方向が同じ位置に1個づつ設置(1対設置)しており、このような配置にすることで曲げひずみをキャンセルして軸方向ひずみを正確に計測することができる。
なお、ひずみ計は一般に断線することも考えられるので2対以上設けるようにしてもよい。
また、本例では、第1ひずみ計13を本体3の内周面に設けているが、本体3の外周面に設けるようにしてもよい。外周面に設ける場合には、外力によって破損しないように保護すればよい。また、第1ひずみ計13を外周面に設けたとしても、配線は本体3の内側を通すため、配線を通すための孔を本体3に設ける必要がある。この場合、孔の位置は第1ひずみ計13の設置位置から遠ざけるようにする。
以上のような、ひずみ計の設置位置、設置個数に関しては、後述の第2ひずみ計15、第3ひずみ計17でも同様である。
【0021】
第2ひずみ計15は、本体3における翼部5の近傍上部の内周面に設けられて本体3の当該部位の軸方向のひずみを計測する。第2ひずみ計15の本体3における軸方向の位置は、翼部5と円環板9の間であって、両者の中間位置付近が好ましい。両者の中間位置にすることで、両端部の影響を少なくできる。
本体3が回転貫入する際に翼部5が回転すると、土が翼部5によって掬い上げられ、掬い上げた土は翼上面に沿って上方へ押し上げられる。そして、押し上げられた土は次第に締め固まり、この土の反力によって翼部5に推進力が生ずる。このとき、本体3における翼部5の近傍上部には翼部5を介して下方への引張力が作用するので、該引張力によって本体3の当該部位に生ずるひずみを計測することで、翼部5の推進力を求めることができる。
【0022】
第3ひずみ計17は、内筒11の内周面に設けられて内筒11の軸方向のひずみを計測する。第3ひずみ計17の内筒11における軸方向の位置は、底板7と円環板9の間であって、両者の中間位置付近が好ましい。両者の中間位置にすることで、両端部の影響を少なくできる。
本体3が回転貫入する際に底板7には地盤反力が作用し、該地盤反力によって内筒11は圧縮力を受ける。したがって、内筒11に生ずるひずみを計測することで、地盤反力を求めることができる。
【0023】
<演算装置>
演算装置19は、第1ひずみ計13の計測値に基づいて押し込み力Pを演算し、第2ひずみ計15の計測値に基づいて翼の推進力Pを演算し、第3ひずみ計17の計測値に基づいて貫入抵抗Pを演算し、これらP、P、Pの値を用いて、本体3に生ずる周面摩擦力Pを演算する。
なお、演算装置19におけるP、P、Pの演算方法の詳細は、後述の実施の形態2で説明する。
【0024】
<表示部>
表示部21は、演算装置19の演算結果を表示するものである。表示部21を設けることで、本体3が回転貫入している際に、本体3の推進途中の任意の深度における杭の鉛直支持力を確認できる。
【0025】
[実施の形態2]
次に、上記のように構成された杭の鉛直支持力確認装置1を用いて、杭の鉛直支持力を確認する方法について説明する。
杭の鉛直支持力確認装置1を、確認対象とする地盤上に立設して回転させ、翼部5に推進力を生じさせて地中にねじ込む。
回転貫入している間、各ひずみ計は測定値を出力するので、これを記録するようにする。
この杭の鉛直支持力確認装置1が地中にねじ込まれるときの鉛直方向の力の釣り合いを式で表すと下式(1)となる。
+P≧P+P・・・(1)
ここで、
は、翼が回転することにより掬い上げた土を翼上面に沿って上方へ押し上げることにより次第に締め固まった土の反力から翼部5に生じる推進力
は本体3と地盤の摩擦抵抗
は底板7に生じる地盤の貫入抵抗
は本体3に加えられる押しこみ力である。
【0026】
一般の杭と同様にP、Pは接している土の強度や深さに応じて大きさが決まる。
また、Pも接している土の強度や深さに応じて大きさが変わりながら杭の鉛直支持力確認装置1を地中に引き込む働きをする。翼部5の推進力は、底板7が接する地盤の上載圧を減少させて底板7の貫入抵抗を減少させる働きもする。
これらの結果、杭の鉛直支持力確認装置1は主として翼部5の推進力のみで杭が地中へ貫入して行くが、貫入抵抗のPとPが、翼推進力Pより大きいと貫入できなくなり、不足分をPとして付加する。
【0027】
上記のことから、杭の鉛直支持力確認装置1を回転貫入中にP、P、Pの値を求めることによって、最終的に施工される杭が地盤から受ける鉛直支持力を事前に確認することができる。
前述したように、本体3に加えられる押しこみ力Pは、本体3の軸力として第1ひずみ計13の計測値を用いて求めることができる。
また、翼部5の推進力Pは、第2ひずみ計15の計測値を用いて求めることができる。
また、地盤の貫入抵抗Pは、内筒11の軸力として第3ひずみ計17の計測値を用いて求めることができる。
さらに、本体3と地盤の摩擦抵抗Pは、(1)式の不等号を等号した式を変形して、P=P−P+Pより求めることができる。
【0028】
ここで、P、P、P及びPの求め方について説明する。
本体3を構成する鋼管の外径:D、厚み:tと、内筒11を構成する鋼管の外径:D、厚みtとする。
本体3を構成する鋼管の断面積Aは、:A=πD/4−π(D−2t)/4=πt(D−t)となる。
また、内筒11を構成する鋼管の断面積Aは、:A=πD/4−π(D−2t)/4=πt(D−t)となる。
【0029】
第1ひずみ計13の計測値をε、第2ひずみ計15の計測値をε、第3ひずみ計17の計測値をεとし、本体3及び内筒11を構成する鋼管のヤング率をEとすると、本体3における第1ひずみ計13が取り付けられた部位の軸方向応力σは、σ=E・ε、また本体3における第2ひずみ計15が取り付けられた部位の軸方向応力σはσ=E・ε、さらに、内筒11における第3ひずみ計17が取り付けられた部位の軸方向応力σは、σ=E・εとなる。
【0030】
そして、これらσ、σ、σを用いて、本体3に加えられる押し込み力Pは、P=σ・A、土の反力から翼部5に生じる推進力Pは、P=σ・A、底板7に生じる地盤の貫入抵抗Pは、P=σ・Aとしても求めることができる。
また、前述したように、本体3と地盤の摩擦抵抗Pは、P=P−P+Pより求めることができる。
【0031】
地盤から決まる杭の鉛直支持力は一般的に「先端支持力」+「周面摩擦力」で表される。
先端支持力は、貫入抵抗Pとして求められ、また周面摩擦力は、上記の摩擦抵抗Pとして求められる。
したがって、本実施の形態の杭の鉛直支持力確認装置1を地中にねじ込むことで、適宜、貫入抵抗Pと摩擦抵抗Pが得られ、これによって、所定の深さにおける杭の鉛直支持力を確認することができる。
【0032】
なお、先端支持力は、杭径の二乗に比例し、周面摩擦力は、杭径に比例するが、上述のように、杭の鉛直支持力は一般的に「先端支持力」+「周面摩擦力」で表されるため、「先端支持力」と「周面摩擦力」のそれぞれを個別に求めることができなければ、換言すれば「先端支持力」と「周面摩擦力」の配分が分からなければ、杭径が変わった際の鉛直支持力を求めることができない。
この点、本実施の形態の杭の鉛直支持力確認装置1では、先端支持力と周面摩擦力をそれぞれ個別に求めることができ、かつ、P、P、Pを、それぞれ単位面積あたりの荷重に換算することができるので、計測されたP、P、Pの値から打設深度が同じで杭径の異なる杭における「鉛直支持力」を算出することができる。
【0033】
したがって、杭の鉛直支持力確認装置1における本体3の径を、計画された本施工で予定されている杭径と同一にすることができない場合であっても、計測値から本施工の杭径の場合での「周面摩擦力」と「先端支持力」を個別に算出することができる。
これによって例えば、期待していた鉛直支持力が当初の予定杭径では確保できないことが判明した場合に本施工用の杭径を太くした場合の「周面摩擦力」と「先端支持力」を算出したり、あるいは期待していた以上の過剰の鉛直支持力が見込めることが判明した場合には本施工用の杭径を細くした場合の「周面摩擦力」と「先端支持力」を算出したりして、本施工前に過不足の無い適切な杭設計を行うことも出来る。
このように、PとPを個別に導出できることにより、予定杭径で不足が無いかの検証に加え、打設深度が同じ場合で、杭径を違えた場合の鉛直支持力も確認することが可能となる。
また、現場ごとに杭径をあわせた新たな杭の鉛直支持力確認装置1を作るのは非効率であるため、以前に製作・使用した近い径の杭の鉛直支持力確認装置1を使いまわすことも出来る。
【0034】
なお、上記の説明では、杭の鉛直支持力として、周面摩擦力と先端支持力との両方を考慮して杭の鉛直支持力を確認することにしているが、得られた値のうちの先端支持力だけで杭の設計を考えてもよい。(この場合、周面摩擦には期待しないことを意味する。)
また、上記の説明では、Pをひずみ計で計測する例を示したが、Pをジャッキ元圧の計測値に基づいて求めるようにしてもよい。
【0035】
本実施の形態に係る杭の鉛直支持力確認装置1の実際の運用方法について説明する。
(1)回転貫入前に各ひずみゲージのゼロ点を取る。
(2)杭の鉛直支持力確認装置1を地中に回転貫入。その間、演算装置19は常に計測値を出力し、表示部21に表示させたり、記録をしたりする。
(3)杭の鉛直支持力確認装置1を予定深さまで回転貫入させる。なお、予定深さ到達前に期待鉛直支持力が確認できた場合にも、予定深さまでは進めるのが好ましい。
逆に、予定深さに到達しても期待鉛直支持力に達しない場合であっても、予定深さまで回転貫入した時点で完了とする。
(4)杭の鉛直支持力確認装置1を逆回転して地中から回収する。
(5)計測された杭の鉛直支持力の値に基づいて、杭の施工本数、杭径等を決定する。
【0036】
なお、上記の説明では、予定深さまで回転貫入させた時点で完了するようにしたが、期待する鉛直支持力が得られるまで、計測値をモニターしながら更に回転貫入を進めるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 鉛直支持力確認装置
3 本体
5 翼部
7 底板
9 円環板
11 内筒
13 第1ひずみ計
15 第2ひずみ計
17 第3ひずみ計
19 演算装置
21 表示部
図1