特許第6504101号(P6504101)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6504101
(24)【登録日】2019年4月5日
(45)【発行日】2019年4月24日
(54)【発明の名称】電力制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20190415BHJP
   B60L 50/40 20190101ALI20190415BHJP
   B60L 50/50 20190101ALI20190415BHJP
   B60L 53/00 20190101ALI20190415BHJP
   B60L 55/00 20190101ALI20190415BHJP
   B60L 58/00 20190101ALI20190415BHJP
【FI】
   H02J7/00 P
   H02J7/00 301B
   B60L11/18 C
【請求項の数】13
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2016-82381(P2016-82381)
(22)【出願日】2016年4月15日
(65)【公開番号】特開2017-192275(P2017-192275A)
(43)【公開日】2017年10月19日
【審査請求日】2018年2月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003355
【氏名又は名称】株式会社椿本チエイン
(74)【代理人】
【識別番号】100127498
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100158399
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 輝
(72)【発明者】
【氏名】小山 晋吾
【審査官】 宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−242795(JP,A)
【文献】 特開2013−158075(JP,A)
【文献】 特開2014−217083(JP,A)
【文献】 特開2014−054010(JP,A)
【文献】 特開2015−033144(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L1/00−3/12、
7/00−13/00、
15/00−15/42、
50/00−58/40
H02J7/00−7/12、
7/34−7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された蓄電池の充電または放電を行う電力制御装置であって、
上記蓄電池の充電または放電を行うためのケーブルと、
上記ケーブルの一端に設けられ、上記車両に接続されるコネクタと、
上記ケーブルおよび上記コネクタを通じて上記蓄電池の充電または放電を行う電力制御部と、
上記蓄電池の充電または放電を行うための一連の処理手順を上記電力制御部に開始させる規定の開始条件が成立する前に、上記電力制御部が上記蓄電池を充電可能または放電可能な状態にあるか否かを判定する判定部と、
上記電力制御部が上記蓄電池を充電可能または放電可能な状態にあると判定された時点から、上記規定の開始条件が成立するまでの間、上記車両に上記コネクタがロックされている状態を維持するロック制御部と、を備え
上記電力制御部は、上記電力制御部に上記蓄電池の充電または放電を開始させる開始条件が成立する前に、上記蓄電池の充電または放電を行うための一連の処理手順を開始し、さらに、上記一連の処理手順を実行中に、上記電力制御部が上記蓄電池を充電可能または放電可能な状態にあると判定されると、上記一連の処理手順を終了することを特徴とする電力制御装置。
【請求項2】
上記判定部は、上記電力制御部が上記一連の処理手順を実行中に上記電力制御部と上記車両との通信が確立した場合、上記電力制御部が上記蓄電池を充電可能または放電可能な状態にあると判定し、一方、上記電力制御部が上記一連の処理手順を実行中に上記車両との通信が確立しなかった場合、上記電力制御部が上記蓄電池に充電可能な状態にないと判定することを特徴とする請求項に記載の電力制御装置。
【請求項3】
上記判定部は、上記電力制御部が上記一連の処理手順を実行中に上記電力制御部が上記車両から充電または放電を許可する信号を受信した場合、上記電力制御部が上記蓄電池を充電可能または放電可能な状態にあると判定し、一方、上記電力制御部が上記一連の処理手順を実行中に上記電力制御部が上記車両から充電または放電を許可する信号を受信しなかった場合、上記電力制御部が上記蓄電池を充電可能または放電可能な状態にないと判定することを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の電力制御装置。
【請求項4】
上記判定部は、上記電力制御部が上記一連の処理手順を実行中に上記電力制御部が上記車両に実際に充電または放電を行うことができた場合、上記電力制御部が上記蓄電池を充電可能または放電可能な状態にあると判定し、一方、上記電力制御部が上記一連の処理手順を実行中に上記電力制御部が上記車両に実際に充電または放電を行うことができなかった場合、上記電力制御部が上記蓄電池を充電可能または放電可能な状態にないと判定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電力制御装置。
【請求項5】
上記電力制御部は、上記一連の処理手順を終了してから上記規定の開始条件が成立するまでの間に、上記一連の処理手順を再度開始し、
上記判定部は、上記電力制御部が上記一連の処理手順を再度実行中に、上記電力制御部が上記蓄電池を充電可能または放電可能な状態にあるか否かを再度判定することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電力制御装置。
【請求項6】
上記ケーブル内に、上記車両と上記コネクタとの接続を確認するための接続確認線が設けられており、
上記判定部は、上記接続確認線が導通している場合に上記電力制御部が上記蓄電池を充電可能または放電可能な状態にあると判定し、一方、上記接続確認線が導通していない場合に上記電力制御部が上記蓄電池に充電可能な状態にないと判定することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の電力制御装置。
【請求項7】
上記規定の条件を設定するための指示を受け付ける受付部をさらに備えており、
上記判定部は、上記指示が受け付けられると、上記電力制御部が上記蓄電池を充電可能または放電可能な状態にあるか否かを判定することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の電力制御装置。
【請求項8】
上記電力制御部が上記蓄電池を充電可能または放電可能な状態にあると判定された場合、その旨を通知する状態通知部をさらに備えていることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の電力制御装置。
【請求項9】
上記電力制御部が上記蓄電池を充電可能または放電可能な状態にないと判定された場合、異常が発生したことを通知する異常発生通知部をさらに備えていることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の電力制御装置。
【請求項10】
上記電力制御装置の充電または放電を停止させるための操作部と、
上記操作部に対する操作を検出する検出部とをさらに備えており、
上記ロック制御部は、上記電力制御部が上記蓄電池を充電可能または放電可能な状態にあると判定された後から、上記規定の条件が成立するまでの間に、上記操作部が押下されたことを検出すると、上記車両に対するコネクタのロックを解除することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の電力制御装置。
【請求項11】
上記規定の開始条件は、現在の時刻が規定の開始時刻に一致することであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の電力制御装置。
【請求項12】
上記電力制御部は、規定の終了条件が成立すると、上記蓄電池の充電または放電を停止し、
上記ロック制御部は、上記電力制御部が上記蓄電池の充電または放電を停止した後、上記車両に上記コネクタがロックされる状態を維持することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の電力制御装置。
【請求項13】
上記規定の終了条件は、現在の時刻が規定の終了時刻に一致したこと、上記蓄電池の充電率が規定値に達したこと、および上記規定の開始条件が成立してから規定の時間が経過したこと、の少なくともいずれかであることを特徴とする請求項12に記載の電力制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車等の充電または放電を行う電力制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、排気ガスによる環境負荷が大きい内燃機関を用いた自動車に代わって、電力により駆動する電気自動車が普及し始めている。電気自動車には、走行時に用いられる電力を蓄えるための大容量の蓄電池(バッテリ)が搭載されている。そこで従来、電気自動車の新たな活用方法として、電気自動車の蓄電池内の電力を停電時に家庭内の各負荷(機器)に供給すること、および、電力需要の高い時間帯に商用電力系統の電力を補助する形で電気自動車から家庭内の各負荷に電力を供給することが、提案されている。
【0003】
電気自動車の充電、および、電気自動車から家庭内への電力供給(放電)には、多くの場合、充電および放電の両機能を兼ね備えた、いわゆる充放電装置が用いられる。
【0004】
充放電装置の利用者は、充放電装置が充電または放電を行う時間帯を、充放電装置に事前に予約することができる。このような予約に基づく充電または放電の運転を、以下では予約運転と呼ぶ。利用者は、予約運転に対応した充放電装置を利用することによって、たとえば自身の不在時(たとえば外出時)または電気料金の安い時間帯(たとえば深夜)に電気自動車を充電することができる。
【0005】
しかし、従来の充放電装置には、予約運転の開始時に充放電装置が電気自動車を正常に充電または放電できないために予約運転が実際には行われない場合があるという問題がある。このような予約運転の不実行は、充放電装置または電気自動車における何らかの異常または設定を原因として起こりえる。
【0006】
充放電装置側の異常として、たとえば、充放電コネクタが電気自動車に正しく接続されていないこと、充放電コネクタのロックがなされていないこと、および、充放電ケーブルに断線があることなどが挙げられる。また、充放電装置側の設定として、放電に対応しない電気自動車に対して放電の予約運転が設定されたことが挙げられる。
【0007】
電気自動車側の設定として、たとえば、電気自動車をパーキング状態にしていないこと、電気自動車のイグニッションがオンになっていること、電気自動車側においてエアコンの運転予約がなされていること、または電気自動車側において充放電装置の充電方式とは異なる別の充電方式による充電運転の予約がなされていること、などが挙げられる。
【0008】
このような、充放電装置による電気自動車の充電または放電を妨げる要因があると、利用者が予約運転の設定を正しく行ったとしても、充放電装置は予約された充電または放電を正常に行うことができない。そのため従来の充放電装置には、たとえば利用者が電気自動車の充電を深夜に行うことを充放電装置に予約しても、予約された充電が実際には行われなかったため、利用者が早朝に電気自動車を利用したくてもできない事態が生じる恐れがあった。
【0009】
このような問題に対処可能な技術の一つが、特許文献1に開示されている。特許文献1には、コネクタケーブルを電気自動車に接続した後、充電予約スタンドに充電要求の信号を入力すると、制御線および通信線を用いて、急速充電器と電気自動車との間で情報のやり取りを行って、コネクタケーブルの接続状況を急速充電器の接続確認器によって確認する充電方法が開示されている。
【0010】
特許文献1の技術では、充電開始時刻よりも前に充電予約スタンドと電気自動車との間の接続状態の確認が予め行われ、この確認が正常になされた場合に両者の接続が遮断される。その後、充電予約スタンドは充電開始時刻まで待機し、時間が来ると電気自動車に接続して充電を始める。このように、特許文献1の技術によれば、予約充電の開始前に予め電気自動車との正常な接続が確認済みであるので、予約充電が正常に行われることが期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2013−27204号公報(2013年2月4日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし特許文献1には、接続状況が終わった後のコネクタのロック制御について、何ら言及されていない。もし、接続状況の確認が終わった後にコネクタのロックが解除されると、充電開始時刻が到来する前に、いたずらで電気自動車からコネクタが勝手に抜かれる恐れがある。そのため、特許文献1の技術には、接続状況が正常に終了した後に充電順番が到来しても、電気自動車の充電が確実には開始されない恐れがあるという問題が生ずる。
【0013】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものである。そしてその目的は、予約運転をより確実に実行することができる電力制御装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の態様1に係る電力制御装置は、上記の課題を解決するために、車両に搭載された蓄電池の充電または放電を行う電力制御装置であって、上記蓄電池の充電または放電を行うためのケーブルと、上記ケーブルの一端に設けられ、上記車両に接続されるコネクタと、上記ケーブルおよび上記コネクタを通じて上記蓄電池の充電または放電を行う電力制御部と、上記蓄電池の充電または放電を行うための一連の処理手順を上記電力制御部に開始させる規定の開始条件が成立する前に、上記電力制御部が上記蓄電池を充電可能または放電可能な状態にあるか否かを判定する判定する判定部と、上記電力制御部が上記蓄電池を充電可能または放電可能な状態にあると判定された時点から、上記規定の開始条件が成立するまでの間、上記車両に上記コネクタがロックされている状態を維持するロック制御部と、を備えていることを特徴としている。
【0015】
上記の構成によれば、電力制御装置は、規定の開始条件が成立すると、車両の蓄電池の充電または放電を行うための一連の処理手順を開始する。このような電力制御装置の運転を、以下では予約運転と呼ぶ。電力制御装置は、予約運転の開始条件が成立する前に、電力制御部が車両の蓄電池を充電可能または放電可能な状態にあるか否かを判定する。これにより、電力制御装置が蓄電池に充電または放電を行うことができない状態で予約運転の開始条件が成立し、その結果として予約運転が正常に実行されない事態を、未然に防止することができる。
【0016】
電力制御装置は、さらに、予約運転の開始条件が成立する前に、電力制御部が蓄電池を充電可能または放電可能な状態であると判定した場合、それから予約運転の開始条件が成立するまでの間、車両に対するコネクタのロックを維持する。これにより、予約運転が開始される前にいたずらでコネクタが車両から取り外されることを防止することができるので、予約運転が開始されなくなることをより確実に防止することができる。
【0017】
以上のように、電力制御装置は、予約運転をより確実に実行することができるという効果を奏する。
【0018】
本発明の態様2に係る電力制御装置は、上記態様1において、上記電力制御部は、上記開始条件が成立する前に、上記蓄電池の充電または放電を行うための一連の処理手順を開始し、さらに、上記一連の処理手順を実行中に、上記電力制御部が上記蓄電池を充電可能または放電可能な状態にあると判定されると、上記一連の処理手順を終了することを特徴としている。
【0019】
上記の構成によれば、予約運転の開始条件が成立するまで、蓄電池の充電または放電を行うための準備状態を維持する必要がないので、電力制御装置における消費電力を削減することができる。さらに、電気自動車の蓄電池の消耗を防止できる。
【0020】
本発明の態様3に係る電力制御装置は、上記態様2において、上記判定部は、上記電力制御部が上記一連の処理手順を実行中に上記電力制御部と上記車両との通信が確立した場合、上記電力制御部が上記蓄電池を充電可能または放電可能な状態にあると判定し、一方、上記電力制御部が上記一連の処理手順を実行中に上記車両との通信が確立しなかった場合、上記電力制御部が上記蓄電池を充電可能または放電可能な状態にないと判定することを特徴としている。
【0021】
上記の構成によれば、電力制御部が蓄電池を充電可能または放電可能な状態にあるか否かをより早く判定することができる。
【0022】
本発明の態様4に係る電力制御装置は、上記態様2または3のいずれかにおいて、上記判定部は、上記電力制御部が上記一連の処理を実行中に上記電力制御部が上記車両から充電または放電を許可する信号を受信した場合、上記電力制御部が上記蓄電池を充電可能または放電可能な状態にあると判定し、一方、上記電力制御部が上記一連の処理を実行中に上記電力制御部が上記車両から充電または放電を許可する信号を受信しなかった場合、上記電力制御部が上記蓄電池を充電可能または放電可能な状態にないと判定することを特徴としている。
【0023】
上記の構成によれば、電力制御部が蓄電池を充電可能または放電可能な状態にあるか否かをより確実に判定することができる。
【0024】
本発明の態様5に係る電力制御装置は、上記態様2〜4のいずれかにおいて、上記判定部は、上記電力制御部が上記一連の処理を実行中に上記電力制御部が上記車両に実際に充電または放電を行うことができた場合、上記電力制御部が上記蓄電池を充電可能または放電可能な状態にあると判定し、一方、上記電力制御部が上記一連の処理を実行中に上記電力制御部が上記車両に実際に充電または放電を行うことができなかった場合、上記電力制御部が上記蓄電池を充電可能または放電可能な状態にないと判定することを特徴としている。
【0025】
上記の構成によれば、電力制御部が車両の蓄電池を充電可能または放電可能な状態にあるか否かを、もっとも確実に判定することができる。
【0026】
本発明の態様6に係る電力制御装置は、上記態様2〜5のいずれかにおいて、上記電力制御部は、上記一連の処理手順を終了してから上記規定の開始条件が成立するまでの間に、上記一連の処理手順を再度開始し、上記判定部は、上記電力制御部が上記一連の処理手順を再度実行中に、上記電力制御部が上記蓄電池を充電可能または放電可能な状態にあるか否かを再度判定することを特徴としている。
【0027】
上記の構成によれば、いったん電力制御部が蓄電池を充電可能または放電可能な状態にあることが判定された後、予約運転が開始されるまでに異常が発生したか否かを判再度定することができる。
【0028】
本発明の態様7に係る電力制御装置は、上記態様1〜5のいずれかにおいて、上記ケーブル内に、上記車両と上記コネクタとの接続を確認するための接続確認線が設けられており、上記判定部は、上記接続確認線が導通している場合、上記電力制御部が上記蓄電池を充電可能または放電可能な状態にあると判定し、一方、上記接続確認線が導通していない場合、上記電力制御部が上記蓄電池に充電可能な状態にないと判定することを特徴としている。
【0029】
接続確認線の導通の有無を確認する処理は、蓄電池の充電または放電のための一連の処理とは独立して、それよりも先に行うことができる。そのため、上記の構成によれば、電力制御部が蓄電池を充電可能または放電可能な状態にあるか否かをもっとも早く判定することができる。
【0030】
本発明の態様8に係る電力制御装置は、上記態様1〜7のいずれかにおいて、上記規定の条件を設定するための指示を受け付ける受付部をさらに備えており、上記判定部は、上記指示が受け付けられると、上記電力制御部が上記蓄電池を充電可能または放電可能な状態にあるか否かを判定することを特徴としている。
【0031】
上記の構成によれば、予約運転の設定指示に応じて、電力制御部が蓄電池を充電可能または放電可能な状態にあるか否かを判定することができる。
【0032】
本発明の態様9に係る電力制御装置は、上記態様1〜8のいずれかにおいて、上記電力制御部が上記蓄電池を充電可能または放電可能な状態にあると判定された場合、その旨を通知する状態通知部をさらに備えていることを特徴としている。
【0033】
上記の構成によれば、電力制御部が蓄電池を充電可能または放電可能な状態にあると判定された場合、ユーザは、そのことを知ることができるので、安心して電力制御装置から離れることができる。
【0034】
本発明の態様10に係る電力制御装置は、上記態様1〜9のいずれかにおいて、上記電力制御部が上記蓄電池を充電可能または放電可能な状態にないと判定された場合、異常が発生したことを通知する異常発生通知部をさらに備えていることを特徴としている。
【0035】
上記の構成によれば、電力制御部が蓄電池を充電可能または放電可能な状態にないと判定された場合、ユーザは、異常が発生したことを知ることができるので、異常に対処するための適切な行動を取ることができる。
【0036】
本発明の態様11に係る電力制御装置は、上記態様1〜10のいずれかにおいて、上記電力制御装置の運転を停止させるための操作部と、上記操作部に対する操作を検出する検出部とをさらに備えており、上記ロック制御部は、上記電力制御部が上記蓄電池を充電可能または放電可能な状態にあると判定された後から、上記規定の条件が成立するまでの間に、上記操作部が押下されたことを検出すると、上記車両に対するコネクタのロックを解除することを特徴としている。
【0037】
上記の構成によれば、コネクタのロックを解除するための専用の操作部が不要であるため、電力制御装置の構成をより簡素にすることができる。
【0038】
本発明の態様12に係る電力制御装置は、上記態様1〜11のいずれかにおいて、上記規定の開始条件は、現在の時刻が規定の開始時刻に一致することであることを特徴としている。
【0039】
上記の構成によれば、電力制御装置は現在の時刻が開始時刻になると車両の蓄電池の充電または放電を正常に開始することができる。
【0040】
本発明の態様13に係る電力制御装置は、上記態様1〜12のいずれかにおいて、上記電力制御部は、規定の終了条件が成立すると、上記蓄電池の充電または放電を停止し、上記ロック制御部は、上記電力制御部が上記蓄電池の充電または放電を停止した後、上記車両に上記コネクタがロックされる状態を維持することを特徴としている。
【0041】
上記の構成によれば、予約運転の終了後、コネクタのロックが維持されるので、次の予約運転の開始条件が成立するまでにいたずらでコネクタが車両から取り外されることを防止することができる。
【0042】
本発明の態様14に係る電力制御装置は、上記態様13において、上記規定の終了条件は、現在の時刻が規定の終了時刻に一致したこと、上記蓄電池の充電率が規定値に達したこと、および上記規定の開始条件が成立してから規定の時間が経過したこと、の少なくともいずれかであることを特徴としている。
【0043】
上記の構成によれば、電力制御装置はいずれかの終了条件が成立すると、蓄電池の充電または放電を正常に終了することができる。
【発明の効果】
【0044】
本発明の一態様によれば、予約運転をより確実に実行することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】本発明の実施形態1に係る充放電装置の構成を示す図である。
図2】本発明の実施形態1に係る充放電装置が予約運転を実行する際の処理の流れを示すフローチャートである。
図3】本発明の実施形態2に係る充放電装置が予約運転を実行する際の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0046】
〔実施形態1〕
図1および図2を参照して、本発明に係る実施形態1について以下に説明する。
【0047】
(充放電装置1の構成)
図1は、本発明の実施形態1に係る充放電装置1の構成を示す図である。この図に示すように、充放電装置1(電力制御装置)は、入力デバイス11(操作部)、入力部12(検出部、受付部)、表示パネル13、表示部14(状態通知部、異常発生通知部)、制御回路15、トランス16、充放電回路17(電力制御部)、充放電ケーブル18(ケーブル)、充放電コネクタ19(コネクタ)、予約運転制御部20、充電可能状態判定部21(判定部)、およびコネクタロック制御部22(ロック制御部)を備えている。
【0048】
充放電装置1は、商用電力系統4から電気自動車2(車両)に搭載される蓄電池への充電、および、電気自動車2の蓄電池から建物3内の各負荷32への電力供給の双方に用いられる。通常、充放電装置1は建物3の外部(ガレージ内等)に設置される。本実施形態では、充放電装置1は、電気自動車2に対する充放電を行うことが可能な、たとえばCHAdeMO(登録商標)規格に対応した装置である。同様に、電気自動車2は、たとえばCHAdeMO規格に対応した電気自動車である。
【0049】
建物3は、家屋、店舗、オフィスビル、または工場などの、内部で人間が生活または労働などの各種の活動をするために用いられる建設物である。商用電力系統4から建物3内に、規定の電圧(100V/200V)の商用交流電力が供給されている。この交流電力は、建物3内の分電盤31を通じて、建物3内の各負荷32(照明装置、家電装置、および電子機器等)に供給される。各負荷32は供給された電力(またはそれから変換された直流電力)を用いて動作する。
【0050】
充放電装置1は、建物3内の分電盤31の二次側(下流)に交流電力線を介して接続されている。商用交流電力が建物3内に正常に供給されているとき、充放電装置1は分電盤31を通じてこの交流電力の供給を受けることができる。充放電装置1は、商用電力系統4から分電盤31を介して充放電装置1に供給される商用交流電力(以下、系統電源)を、充放電装置1の制御電源として用いる。制御電源とは、充放電装置1の起動およびその後の動作に必要な所定電圧(たとえば12V)の制御電力を得るための電源のことである。
【0051】
入力デバイス11は、ユーザが充放電装置1を操作したり、充放電装置1に情報を入力したりするために用いるデバイスである。たとえば、各種のボタンまたはスイッチとして実装される。入力デバイス11はタッチパネルであってもよい。入力デバイス11は、少なくともスタートボタンおよびストップボタンを含んでいる。
【0052】
スタートボタンは、充放電装置1の運転を制御するためのボタンの一種であり、より具体的には運転を開始させるためのボタンである。充放電装置1の停止中にユーザがスタートボタンを押下すれば、充放電装置1は、設定された種類の運転(充電運転、自立運転、または系統連系運転)を開始する。
【0053】
ストップボタンは、充放電装置1の運転を制御するためのボタンの一種であり、より具体的には充放電装置1に現在の運転を停止させるためのボタンである。ユーザがストップボタンを押下すれば、充放電装置1は、現在実行中の運転を停止し、それから待機状態に移行する。
【0054】
入力部12は、入力デバイス11に対するユーザによる各種の入力(操作)を受け付ける。
【0055】
表示パネル13は、各種の情報を表示するためのデバイスであり、たとえば液晶表示パネル等として実現される。
【0056】
表示部14は、表示用の各種の情報を表示パネル13に出力することによって、当該情報を表示パネル13に表示する。
【0057】
制御回路15は、充放電装置1の運転(充電、放電)を統括的に制御する。本実施形態では、制御回路15内に、予約運転制御部20、充電可能状態判定部21、およびコネクタロック制御部が設けられている。
【0058】
トランス16は、供給された交流電力を、規定の他の電圧の交流電力に変換する。なお、充放電装置1は、充放電回路17内に交流電力線との絶縁箇所があり、その絶縁箇所がトランスとして機能する構成であってもよい。この場合、充放電装置1にはトランス16は不要である。
【0059】
充放電回路17は、充放電装置1と電気自動車2との間における規定の手続き(充電シーケンスまたは放電シーケンス)を行うことによって、電気自動車2の蓄電池を充電したり、または、電気自動車2の蓄電池に蓄積された電力を放電したりことによって建物3内に電力を供給する。充放電回路17は、たとえばCHAdeMO規格に対応した充電シーケンスまたは放電シーケンスを実行する。
【0060】
充放電ケーブル18は、電気自動車2に対する充放電を行うことが可能な、たとえばCHAdeMO規格に対応したケーブルである。図1に示すように、充放電ケーブル18の一端は、充放電装置1の本体に接続されている。充放電ケーブル18は、電力線18aおよび信号線18bを備えている。図中、煩雑さを避けるために電力線18aおよび信号線18bはそれぞれ1つずつしか示していないが、実際には、充放電ケーブル18内には2本の電力線18a(正極用の電力線および負極用の電力線)と、複数の信号線18bとが設けられている。複数の信号線18bのうちの2本は、充放電回路17と電気自動車2との間でCAN(Controller Area Network)通信による各種の信号の送受信を行うための、双方向通信が可能な信号線である。残りは、充電開始信号、充電許可信号、または充電禁止信号などの特定の信号を、充放電回路17から電気自動車2へ送信するか、または電気自動車2から充放電回路17に送信するための、一方向通信のみが可能な信号線(制御線)である。
【0061】
充放電ケーブル18内には、さらに、充放電コネクタ19と電気自動車2との物理的な接続(嵌合)を確認するための図示しない接続確認線が設けられている。充放電コネクタ19が電気自動車2に正しく接続されている場合、接続確認線は導通している。一方、充放電コネクタ19が電気自動車2に正しく接続されていない場合、接続確認線は導通していない。充放電装置1は、接続確認線の導通の有無を確認することによって、充放電コネクタ19が電気自動車2に接続されているか否かを判定することができる。
【0062】
充放電コネクタ19は、電気自動車2に対する充放電を行うことが可能な、たとえばCHAdeMO規格に対応したコネクタである。図1に示すように、充放電コネクタ19は、充放電ケーブル18の他端に取り付けられている。充放電コネクタ19は、電気自動車2に設けられる充放電ポートに接続される。充放電コネクタ19が充放電ポートに接続され、充放電装置1と電気自動車2との間における規定の手続き(充電シーケンスまたは放電シーケンス)が完了すると、充放電装置1を用いて電気自動車2の蓄電池を充電したり、または停電時に電気自動車2の蓄電池に蓄積された電力を建物3内に供給したりすることができるようになる。
【0063】
以下では、電気自動車2に搭載される蓄電池の充電または放電を、単に、電気自動車2の充電または放電と表記することもある。
【0064】
充放電コネクタ19にはロック機構が備えられており、電気自動車2の充電または電気自動車2からの放電時には、安全確保のために充放電コネクタ19はこのロック機構によって電気自動車2にロックされる。これにより、電気自動車2の充電または放電中に誤って充放電コネクタ19が電気自動車2から取り外されることを防ぐことができる。
【0065】
予約運転制御部20は、充放電装置1における予約運転を制御する。予約運転の詳細は後述する。
【0066】
充電可能状態判定部21は、充放電回路17が電気自動車2を充電可能または放電可能な状態にあるか否かを判定する。この判定の詳細は後述する。
【0067】
コネクタロック制御部22は、電気自動車に対する充放電コネクタ19のロックを制御する。コネクタロック制御の詳細は後述する。
【0068】
なお、充放電装置1による充放電の対象となり得るのは、電気自動車2に限らず、駆動用の蓄電池が搭載され、蓄電池内の電力を駆動力に変換して走行可能な各種の車両(ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、燃料電池車等)も挙げられる。
【0069】
充放電装置1は、電気自動車2の充電または放電に関する各種の運転(充電運転、自立運転、系統連系運転、予約運転等)を実行することができる。以下に、充放電装置1が実行可能な各運転の概略について、説明する。
【0070】
(充電運転)
充電運転とは、充放電装置1が電気自動車2の蓄電池を充電する際の運転モードである。充電運転時、建物3から充放電装置1のトランス16に交流電力が供給される。トランス16は、供給された交流電力を、規定の他の電圧の交流電力に変換し、変換後の交流電力を充放電回路17に供給する。充放電回路17は、トランス16から供給された交流電力を、電気自動車2の充電に適した規定の電圧(たとえば400V)の直流電力に変換し、変換後の直流電力を、電気自動車2に接続された充放電ケーブル18内の電力線18aおよび充放電コネクタ19を通じて、電気自動車2に供給する。これにより電気自動車2内の蓄電池が充電される。
【0071】
(自立運転)
自立運転とは、停電時に、充放電装置1が電気自動車2の蓄電池から直流電力を取り出し、これを交流電力に変換して建物3に供給する運転モードである。停電が起こると、商用電力系統4から建物3内に交流電力が供給されなくなる。充放電装置1は、停電時に商用電力系統4以外の電力供給源から建物3内に電力を供給するために、電気自動車2内の蓄電池に蓄積された電力を取り出し、これを建物3用の交流電力に変換して建物3に供給することができる。充放電装置1の自立運転時、分電盤31内の遮断機は充放電装置を商用電力系統4から電気的に切り離す(混色を防ぐ)役割を有する。
【0072】
充放電装置1は、充放電装置1内の図示しないバッテリの電力を用いて図示しない電源回路を駆動することによって、自立運転を開始する。その後、蓄電池から取り出した電力を交流電力に変換して建物3内の電力系統に供給し始めると、当該交流電力で電源回路を駆動することによって、自立運転を継続する。
【0073】
自立運転時、充放電回路17は、充放電ケーブル18を通じて、電気自動車2内の蓄電池から規定電圧(たとえば400V)の直流電力を取り出す。充放電回路17は、電気自動車2から取り出した直流電力を、所定電圧の交流電力に変換して、トランス16に供給する。トランス16は、供給された交流電力を、建物3内で使用可能な規定電圧(たとえば100Vまたは200V)の交流電力に変換し、トランス16と分電盤31とを結ぶ交流電力用の電力線を介して建物3内の分電盤31の二次側に供給する。こうして充放電装置1から建物3に供給された交流電力は、分電盤31の二次側を介して各負荷32に供給される。各負荷32は、充放電装置1から供給された交流電力を用いて動作する。
【0074】
(系統連系運転)
充放電装置1は、非停電時にも、電気自動車2の蓄電池に蓄積された電力を規定の交流電力に変換し、分電盤31が設けられる建物内に供給することができる。このとき、分電盤31には、商用電力系統4および充放電装置1の双方から、交流電力が供給される。このような態様の交流電力供給が建物3に対して行われるときの充放電装置1の運転状況は、特に系統連系運転と呼ばれる。
【0075】
(予約運転)
充放電装置1は、運転開始指示をユーザから受けた場合に直ちに充電運転または系統連系運転を開始することができる。一方、そうではなく、充放電装置1に予め設定された規定の開始条件が成立した場合に、充放電回路17に充電シーケンスまたは放電シーケンスを開始させると共に、充放電装置1に予め設定された規定の終了条件が成立した場合に、充放電回路17に充電シーケンスまたは放電シーケンスを停止させるための充電運転または系統連系運転を実行することもできる。このような開始条件および終了条件の成立に基づき充電シーケンスまたは放電シーケンスの開始および終了が制御される運転モードを、以下では予約運転と呼ぶ。
【0076】
たとえばユーザは、放電装置1に予約運転を実行させたるために、予約運転を実行する時間帯を予め充放電装置1に設定することができる。この設定がある場合、充放電装置1は設定された時間帯において、指定された種類の運転(充電運転または系統連系運転)を、自動的に実行する。
【0077】
このような予約運転の実行によって、充放電装置1のユーザは次の利益を享受する。たとえばユーザは、就寝中の深夜に電気自動車2の予約運転を充放電装置1に実行させることによって、起床時後、充分に充電された電気自動車2を直ちに利用することができる。したがってユーザは、起床後、電気自動車2の充電が完了するまで待機する必要がない。
【0078】
また、電力契約の内容次第では、予約運転によって次のような利点も得られる。すなわち、ユーザは、電気料金の安い時間帯である深夜に電気自動車2の充電を充放電装置1に行わせる一方で、電気料金の高い時間帯である昼間に充放電装置1に系統連系運転を実行させることができる。これにより、ユーザが負担する家庭の電気料金を削減することができる。
【0079】
なお、予約運転の態様は上述した時間帯の設定に基づくものに限られない。他にも、たとえば充放電装置1が複数の充放電ケーブル18および充放電コネクタ19を備えており、これらを通じて充放電装置1に複数の異なる電気自動車2を充電のために接続できる場合、充放電装置1が各電気自動車2を充電するための順番を設定し、その充電順番が到来した電気自動車2を順次充電する態様も、予約運転の範疇に含まれる。この態様では、ある電気自動車2に対して設定された充電順番が到来することが、予約運転を開始するための開始条件が成立することに相当する。
【0080】
本実施形態に係る充放電装置1は、従来技術に比べてより確実に予約運転を実行することができるという利点を有する。これを実現するための具体的な手法について、以下に詳細に説明する。
【0081】
(予約運転の処理の流れ)
図2は、本発明の実施形態に係る充放電装置1が予約運転を実行する際の処理の流れを示すフローチャートである。以下では、充放電装置1が、充電のための予約運転を実行する場合を例に挙げて説明するが、放電のための予約運転(予約系統連系運転)を実行する際も、充電が放電に変わるだけで、処理の流れに本質的な違いはない。
【0082】
ユーザは、充放電装置1に予約運転を実行させたい場合、まず、充放電装置1の充放電コネクタ19を、電気自動車2に備えられる専用の充電ポートに接続する(S1)。
【0083】
その後、ユーザは、入力デバイス11を操作することによって、充放電装置1に実行させる運転モードを選択する。ここでは「予約運転」が選択される。なお、予約運転が、運転モードとして充放電装置1に事前に設定済みである場合、この選択操作は必ずしも必要ではない。入力部12は、この選択を検出すると、充放電装置1が実行すべき運転モードとして予約運転を充放電装置1に設定する。ユーザはさらに、入力デバイス11を操作することによって、充放電装置1に予約運転を実行させる時間帯(運転予約時間帯)を、入力する。なお、時間帯が予め充放電装置1に設定済みである場合、この入力操作は必ずしも必要ではない。ユーザは、予約運転を開始する時間と、終了する時間とを少なくとも入力する。入力部12はこれらの入力を検出し、その結果、入力された開始時刻から終了時刻までの時間帯を予約運転時間帯として予約運転制御部20に通知する。予約運転制御部20は、通知された予約運転時間帯を充放電装置1に設定する。
【0084】
たとえば予約運転の開始時刻として午後23時が入力され、かつ終了時刻として午前5時が入力された場合、運転予約時間帯として午後23時〜午前5時の6時間が充放電装置1に設定される。
【0085】
次にユーザは、充放電装置1の入力デバイス11に備えられるスタートボタンを押下する(S2)。この押下操作を入力部12が検出する。充放電装置1に予約運転に関する設定がなされていることから、入力部12は、この検出に基づき、充放電装置1に対する予約運転の開始指示をユーザから受け付ける。入力部12は、予約運転の開始指示が受け付けられたことを、予約運転制御部20および充電可能状態判定部21に通知する。
【0086】
(充電可能状態の判定)
本実施形態では、充放電回路17が電気自動車2を充電可能な状態にあると判定できる条件として、次の条件1が充放電装置1に設定されている:
条件1:電気自動車2との接続確認線が導通していること。
【0087】
充電可能状態判定部21は、制御回路15に対する入力部12からの通知に基づき、直ちに、すなわち予約運転の開始時刻が到来する前に、条件1が成立するか否かを判定する。具体的には、充電可能状態判定部21は、充放電ケーブル18内に設けられている充放電コネクタ19と電気自動車2との接続を確認するための接続確認線が導通しているか否かを判定する(S3)。
【0088】
(異常発生の通知)
S3がNOの場合、充電可能状態判定部21は、充放電回路17が電気自動車2を充電可能な状態にないと判定し、その旨を表示部14および予約運転制御部20に通知する。表示部14は、充電可能状態判定部21からの通知に基づき、異常が発生したことを通知するためのメッセージを生成し、表示パネル13に表示する。これにより充放電装置1は、異常発生をユーザに通知する(S4)。また、予約運転制御部20は、充電可能状態判定部21からの通知に基づき、充放電装置1に設定された予約運転の設定を取り消す。その結果、図2に示す処理は終了する。したがって、充放電装置1は予約運転を実行しない。
【0089】
本実施形態では、充放電装置1は、S4において、充放電コネクタ19の接続状態の確認を促すメッセージを表示パネル13に表示する。このとき表示されるメッセージとして、たとえば、
・電気自動車2に対する充放電コネクタ19の接続(勘合)状態の確認を求める
・電気自動車2に対する充放電コネクタ19のロック状態の確認を求める
・電気自動車2に対する充放電コネクタ19の挿抜を試みることを求める
などの各種のメッセージが挙げられる。
【0090】
ユーザは、S4において異常発生を伝えるメッセージが表示部14に表示されたことを確認すると、異常を解消するための行動を取る。その際、表示パネル13に表示されるメッセージを適宜参考にすることができる。ユーザは、異常を解消すると、再びスタートボタンを押下することによって、予約運転の開始を充放電装置1に指示することができる。この後、S3の処理が再び行われる。異常が解消されているので、次はS3においてYESになる可能性が高い。
【0091】
(充電可能状態の通知)
一方、S3がYESの場合、充電可能状態判定部21は、充放電回路17が充電可能状態にあると判定し、その旨を表示部14およびコネクタロック制御部22に通知する。この通知を受けて、コネクタロック制御部22は、充放電コネクタ19をロックするように充放電回路17に指示する。この指示を受けて、充放電回路17は、充放電コネクタ19をロックする(S5)。
【0092】
S5の後、表示部14は、充電可能状態判定部21からの通知に基づき、充放電回路17が充電可能状態にあると判定されたことを通知するメッセージを表示パネル13に表示する。これにより、充放電回路17が充電可能状態にあることがユーザに通知される(S6)。ユーザは、表示パネル13を通じてこの通知メッセージを確認することによって、電気自動車2が、充放電装置1によって正常に充電されることが可能なように充放電装置1に接続されたことを知ることができる。したがってユーザは、安心して充放電装置1から離れることができる。
【0093】
S6の後、充放電装置1は、予約運転が開始されるまで待機する。その間、入力部12は、入力デバイス11に備えられているストップボタンの押下の有無を検出し、その結果に基づき、ストップボタンが押下されたか否かを判定する(S7)。S7がYESの場合、入力部12は、その旨をコネクタロック制御部22に通知する。コネクタロック制御部22は、この通知を受けて、充放電回路17に対して充放電コネクタ19のロックを解除するように通知する。充放電回路17は、この通知を受けて、充放電コネクタ19のロックを解除する(S8)。S8の後、図2に示す処理は終了する。
【0094】
ストップボタンは、充放電装置1における各種の運転を停止させるためのボタンである。本実施形態では、このストップボタンが、充放電コネクタ19のロックを解除するためのボタンとしても機能する。このように、本実施形態では入力デバイス11に充放電コネクタ19のロックを解除するための専用のボタン(専用の操作部)を設ける必要がないので、入力デバイス11の構成をより簡素にすることができる。
【0095】
S7がNOの場合、予約運転制御部20は、現在の時刻が、充放電装置1に設定された予約運転時間帯内であるか否かを判定する(S9)。たとえば現在の時刻が予約運転開始時刻に一致した時点で、S9はYESとなる。
【0096】
S9がNOの場合、図2に示す処理はS7に戻る。したがって、S7がYESになるまで、S7およびS9の処理が繰り返される。すなわち充放電装置1は、充放電回路17が充電可能状態にあると判定された後、設定された予約運転開始時刻が到来するまで待機する。
【0097】
S9がYESの場合、予約運転制御部20は、予約運転の開始を充放電回路17に指示する。この指示を受けて、充放電回路17は、電気自動車2を充電するための充電シーケンスを開始する(S10)。充電シーケンスとは、電気自動車2を充電するための一連の処理手順を意味する。本実施形態では、充放電回路17は、電気自動車等の急速充電に関するCHAdeMO(登録商標)規格に基づく充電シーケンスを開始する。
【0098】
以上のように、充放電装置1では、接続確認線が導通されている(充放電回路17が充電可能状態にある)と判定されてから、予約運転の開始時刻が到来するまでの間、充放電コネクタ19のロックが維持される。これにより、ユーザが充放電装置1から離れた後、第三者がいたずらで充放電コネクタ19を電気自動車2から抜くことができない。したがって、予約運転が開始されるまで充放電コネクタ19が電気自動車2に正常に接続され続けることができるので、充放電装置1は、予約運転をより確実に実行することができる。
【0099】
なお、充放電コネクタ19のロック機構はラッチ式であるため、ロック動作の瞬間には電力が必要であるが、いったん確立したロック状態を維持するための電力は不要である。
【0100】
(充電シーケンスの流れ)
充放電回路17と電気自動車2との間で行われる充電シーケンスの流れについて説明する。充電シーケンスの開始後、まず充放電回路17が、充電開始を伝えるための専用の信号線18bを通じて、充電開始信号を電気自動車2に送信する。電気自動車2は、充電開始信号を受信すると、充放電装置1による充電操作が開始されたことを認識して、蓄電池の最大電圧および容量などのパラメータを、CAN通信用の信号線18bを通じてCAN通信によって充放電回路17に送信する。
【0101】
充放電回路17は、電気自動車2から受信したパラメータに基づき、この電気自動車2が充放電装置1によって充電可能な電気自動車2であるか否かを確認する。確認できたら、充放電回路17は、充放電装置1の最大出力電圧および最大出力電流などのパラメータを、CAN通信によって電気自動車2に送信する。電気自動車2は、受信したパラメータに基づき自身との適合性の有無を判定し、問題がなければ、充電の許可を伝えるための専用の信号線18bを通じて、充電許可信号を充放電装置1に送信する。
【0102】
充放電装置1は、充電開始信号を受信すると、電気自動車2が充電を許可したことを了解し、充放電コネクタ19をロックさせた後、電気自動車2に電流を供給するための図示しない出口回路に短絡または地絡などの異常がないことをテストする。異常がなければ、充放電回路17は、充放電装置1側のすべての準備が整ったことを通知するための専用の信号線18bを通じて、充電開始信号を電気自動車2に送信する。これにより、充電準備が完了する。この後、電気自動車2側の制御による蓄電池の充電が開始される。
【0103】
S10の後、充放電回路17は、充電シーケンスに含まれる各処理手順を順次進める。なお、予約運転開始時刻の到来時にすでに充放電コネクタ19がロックされているので、充放電回路17は、充放電コネクタ19がロックされた状態で充電シーケンスを開始する。そして、絶縁試験が完了し、充放電装置1のすべての準備が整ったことを伝えるための充電開始信号を充放電回路17が電気自動車2に送信すると、充電準備が完了する(S11)。充電準備完了後、充放電回路17は、電気自動車2への充電(電流供給)を開始する(S12)。
【0104】
(予約運転の強制終了)
入力部12は、電気自動車2の充電中に、入力デバイス11に備えられているストップボタンの押下の有無を検出し、その結果に基づき、ストップボタンが押下されたか否かを判定する(S13)。S13がYESの場合、入力部12は、その旨を制御回路15に通知する。この通知を受けると、制御回路15は、電気自動車2の充電停止を充放電回路17に指示する。この指示を受けると、充放電回路17は電気自動車2の充電(電流供給)を停止する(S14)。充放電回路17は、充電を停止した後、充電シーケンスを終了させるための終了手順を開始する。充放電回路17は、充放電コネクタ19のロックを解除できる段階まで終了手順を進めた後、充放電コネクタ19のロックを解除する(S15)。その後、充放電回路17は充電シーケンスを終了させる(S16)。これにより図2に示す処理は終了する。
【0105】
このように、予約運転の実行中にユーザが充放電装置1のストップボタンを押下すれば、直ちに予約運転の実行が停止され、かつ、充放電コネクタ19のロックが解除される。この後ユーザは充放電コネクタ19を電気自動車2から外し、電気自動車2に乗車することができる。
【0106】
S13がNOの場合、予約運転制御部20は、現在の時刻が、予約運転時間帯外であるか否かを判定する(S17)。具体的には、充放電回路17は、現在の時刻が予約運転開始時刻よりも前であるか、または、予約運転終了時刻以降であるか否かを判定する。たとえば現在の時刻が予約運転終了時刻に一致した時点で、S17はYESとなる。
【0107】
S17がNOの場合、図2に示す処理はS13に戻り、充放電回路17は電気自動車2の充電を継続する。このように、S17がYESとなるまで、図2に示す処理はS13およびS17を繰り返す。すなわち充放電装置1は、予約運転の開始後、ストップボタンが押下されずにかつ予約運転終了時刻が到来するまで、電気自動車2の充電を継続する。
【0108】
(予約運転の正常終了)
S17がYESの場合、予約運転制御部20は、その旨を充放電回路17およびコネクタロック制御部22に通知する。コネクタロック制御部22は、この通知に基づき、充放電コネクタ19のロックを維持するように充放電回路17に指示する。一方、充放電回路17は、予約運転制御部20からの通知に基づき、電気自動車2の充電を停止する(S18)。充電停止後、充放電回路17は、充電シーケンスを終了させるための終了手順を開始する。ただし充放電回路17は、充放電コネクタ19からの指示に基づき、充放電コネクタ19のロックを解除できる段階まで終了手順を進めた後、充放電コネクタ19のロックを解除せずにそのまま維持する(S19)。その後、充放電回路17は、充放電コネクタ19のロックを維持したまま充電シーケンスを終了させる(S20)。これにより予約運転がいったん終了する。
【0109】
予約運転制御部20は、S17がYESの場合、予約運転の設定を維持する。そのため、S20の後、図2に示す処理はS7に戻る。この結果、予約運転の終了後、充放電装置1は、次の予約運転の開始時刻が到来するまで、自らを再び待機状態に移行させる。これにより、次の予約運転が開始されるまでの間、電気自動車2を充電するための充電準備状態を維持するための電力消費が不要となるので、充放電装置1における電力消費量を減らすことができる。さらには電気自動車2の蓄電池の消耗も防止できる。
【0110】
さらには、予約運転が正常に終了する場合、充電シーケンスの終了後、充放電コネクタ19のロックは維持される。充放電コネクタ19のロックはラッチ機構によって行われるので、ロック実行時に電力は消費するが、ロック状態を維持するための電力消費は不要である。充放電装置1では、予約運転の終了後、充放電コネクタ19のロックが維持されているので、第三者がいたずらで充放電コネクタ19を電気自動車2から抜くことができない。したがって、次の予約運転が開始されるまで充放電コネクタ19が電気自動車2に正常に接続され続けることができるので、充放電装置1は、次の時間帯における予約運転をより確実に実行することができる。
【0111】
なお、図2には特に図示していないが、充放電回路17は、予約運転終了時刻が到来する前に、電気自動車2の充電率が、予め設定された目標の充電率(規定値)に到達した場合に、電気自動車2の充電を停止してもよい。あるいは、予約運転終了時刻が到来する前に、予約運転を開始してから一定時間が経過した場合に、電気自動車2の充電を停止してもよい。この場合も、S18〜S20の処理が実行されることによって、予約運転が正常に終了する。
【0112】
(充電可能状態判定の再実行)
充放電装置1は、待機状態になった後、予約運転の開始時刻が到来するまでの間に、充放電回路17が充電可能状態にあるか否かを再度判定してもよい。すなわち図2の処理は、充放電装置1が待機状態になってから一定時間が経過し、かつ、S9がNOの場合、S7ではなくS3に戻っても良い。この場合、充電可能状態判定部21が、接続確認線の導通の有無を再度確認する(S3)。S3がYESの場合、充放電装置1は、充放電コネクタ19のロックを維持したまま、充放電回路17が充電可能状態にあることをユーザに通知する。一方、NOの場合、異常発生をユーザに通知する。その際、充放電コネクタ19のロックを強制的に(自動的に)解除してもよいし、ストップボタンの押下操作が検出されてから解除してもよい。
【0113】
充放電装置1が予約運転の開始前に待機しているとき、ユーザは、充放電装置1から離れた場所にいる可能性が高い。たとえばユーザが建物3の中に居たり、あるいは外出中であったりすることが想定される。そこで充放電装置1は、予約運転の待機中における充電可能状態の判定結果に基づくユーザへの通知を、通知メッセージを表示パネル13に表示する代わりに、充放電装置1から離れた場所にいるユーザに通知可能な手段を用いて通知すればよい。
【0114】
たとえば、充放電装置1が建物3内に設置される図示しない室内表示パネルに接続されている場合、充放電装置1は通知メッセージをこの室内表示パネルに表示する。あるいは、充放電装置1が無線通信機能を有している場合、充放電装置1は、通知メッセージを本文に含む電子メールを、ユーザのメールアドレス宛に送信する。
【0115】
ユーザは、これらの通知に基づき、予約運転の実行を妨げる事態の発生有無を、予約運転の開始前に再度知ることができる。したがって、たとえば異常発生の通知を受けた場合には、予約運転の開始前にその異常を取り除く措置を適宜取ることができる。この結果、スタートボタンを押下した直後には異常が発生しなかったが、その後の充放電装置1の待機中に何らかの異常が発生したために予約運転が結局行われないという事態の発生を、未然に防ぐことができる。
【0116】
なお、充放電装置1は、スタートボタンが押下された直後に、接続確認線が導通している(充放電回路17が充電可能状態にある)と判定し、それから待機状態になった後、予約運転の開始時刻が到来するまで、接続確認線が導通しているか否かの再度の判定を、定期的に複数回行っても良い。
【0117】
また、ユーザは、充放電装置1に充電運転を行わせる時間帯(充電予約時間帯)と、充放電装置1に系統連系運転を行わせる時間帯(放電予約時間帯)との両方を、充放電装置1に設定することができる。ただし、それぞれの時間帯が重なることがないように設定する必要がある。この場合、充放電装置1は、充放電コネクタ19のロックを維持したまま待機状態になった後、充電予約時間帯が到来すると電気自動車2の充電(充電運転)を開始し、一方、放電予約時間帯が到来すると電気自動車2の放電(系統連系運転)を開始する。したがって充放電装置1は、たとえば、予約された充電の終了後、充放電コネクタ19のロックを維持したまま待機状態となり、それから予約放電時間帯が到来すると今度は予約された放電を開始し、予約放電時間帯が過ぎると再び待機状態となり、それから予約充電時間帯が再び到来すると、予約された充電を再び開始することが、可能なる。
【0118】
〔実施形態2〕
図3を参照して、本発明に係る実施形態2について以下に説明する。本実施形態に係る充放電装置1の構成は、実施形態1と同じである。ただし、本実施形態に係る充放電装置1は、実施形態1と異なり、条件1が成立した(接続確認線の導通有りを判定した)だけでは、充放電回路17が電気自動車2を充電可能な状態にあるとは判定しない。充放電装置1は、接続確認線が導通していることを確認した後、予約運転の開始前に充電シーケンスを実行し、その実行中において、充放電回路17が電気自動車2を充電可能な状態にあると見なせる他の条件2〜4の少なくともいずれかがさらに成立するか否かを判定する。そして、条件1が成立した後、さらに条件2〜4の少なくともいずれかが成立した場合に、充放電回路17が電気自動車2を充電可能な状態にあると判定する。
【0119】
(予約運転の流れ)
図3は、本発明の実施形態に係る充放電装置1が予約運転を実行する際の処理の流れを示すフローチャートである。以下では、充放電装置1が充電のための予約運転を行う場合を例に挙げて説明するが、放電のための予約運転(予約系統連系運転)場合も、充電が放電に変わるだけで、処理の流れに本質的な違いはない。
【0120】
図3のS1〜S4は、図2のS1〜S4と同一であるため、詳細な説明を省略する。S3がYESの場合、すなわち、条件1が成立した(接続確認線が導通していると判定された)場合、充電可能状態判定部21は、充電シーケンスを開始するように充放電回路17に通知する。充放電回路17は、この通知を受けて、直ちに、すなわち、予約運転の開始時刻が到来する前に、充電シーケンスを開始する(S21)。この充電シーケンスは、予約運転の設定に基づく充電を行うためではなく、充放電回路17が電気自動車2を充電可能な状態にあるか否かを、予約運転の開始前において事前に判定するために実行される。
【0121】
充放電回路17は、S21において充電シーケンスを開始した後、充電シーケンスに含まれる各処理手順を順次実行する。その際、充放電回路17は、充電シーケンスにおける規定の途中段階において、各処理手順の成否に関する情報を充電可能状態判定部21に適宜通知する。充電可能状態判定部21は、充放電回路17からの通知に基づき、充放電回路17が電気自動車2を充電可能な状態にあるか否かを判定する(S22)。
【0122】
本実施形態では、充放電回路17が電気自動車2を充電可能な状態にあることを充電シーケンスの実行中に判定できる条件が複数ある。具体的には、
条件2:電気自動車2とのCAN通信が確立していること
条件3:電気自動車2から充電許可信号を受信したこと
条件4:電気自動車2を実際に充電できたこと
が挙げられる。ユーザは、充放電装置1が充電可能状態の判定条件として条件2〜4のうちいずれの条件までの成否を判定するのかを、充放電装置1に事前に設定することができる。充電可能状態判定部21は、設定された条件までの成否を判定することによって、充電可能状態の有無を判定する。条件2〜4にそれぞれ基づく充電可能状態の判定の詳細について、以下に説明する。
【0123】
(条件2の場合)
条件2が充放電装置1に設定されている場合、充放電回路17は、充電シーケンスの開始後、電気自動車2とのCAN通信の確立を試みた結果を充電可能状態判定部21に通知する。充電可能状態判定部21は、充放電回路17から通知された、電気自動車2とのCAN通信の確立を試みた結果に基づき、充放電回路17が電気自動車2とのCAN通信の確立に成功したか否かを判定する。
【0124】
充電可能状態判定部21は、この判定結果がNOの場合、充放電回路17が充電可能状態にないと判定する(S22でNO)。一方、充電可能状態判定部21は、充電可能状態の判定条件として条件2が設定されている場合、この判定結果がYESの場合、充放電回路17が充電可能状態にあると判定する(S22でYES)。
【0125】
充電シーケンスの実行中に、充放電回路17が電気自動車2とのCAN通信を確立させるのは、充放電回路17が充電許可信号を受信するよりも前である。また、充放電回路17が充電許可信号を受信するのは、充放電回路17が電気自動車2を実際に充電できるようになるよりも前である。そのため、条件2に関する判定は、必ず条件3および条件4に関する判定よりも前に行われる。言い換えると、条件2が充放電装置1に設定されている場合、条件3および4の判定が不要であるため、充電可能状態判定部21は、充放電回路17が充電可能状態にあるか否かを、条件1のみに基づき判定する場合(実施形態1の例)の次に早く、判定することができる。
【0126】
(条件3の場合)
条件3が充放電装置1に設定されている場合、充電可能状態判定部21は、条件2が成立した(すなわち電気自動車2とのCAN通信が確立した)だけでは、充放電回路17が充電可能状態にあるとは判定しない。充放電回路17は、電気自動車2とのCAN通信が確立した後、充電許可信号を電気自動車2から受信するまで一定時間待機する。充放電回路17は、充電許可信号の受信結果を、充電可能状態判定部21に通知する。充電可能状態判定部21は、通知された結果に基づき、充放電回路17が充電許可信号を受信したか否かを判定する。
【0127】
充電可能状態判定部21は、この判定結果がNOの場合、充放電回路17が充電可能状態にないと判定する(S22でNO)。一方、充電可能状態判定部21は、充電可能状態の判定条件として条件3が設定されている場合、この判定結果がYESの場合、充放電回路17が充電可能状態にあると判定する(S22でYES)。この場合、電気自動車2が充放電を充放電回路17に許可しているため、このような許可が得られていない時点での条件1および条件2の場合に比べて、充放電回路17が電気自動車2を充電可能な状態にあるか否かをより確実に判定することができる。
【0128】
(条件4の場合)
条件4が充放電装置1に設定されている場合、充電可能状態判定部21は、条件3が成立した(すなわち電気自動車2から充電許可信号を受信した)だけでは、充放電回路17が充電可能状態にあるとは判定しない。充放電回路17は、電気自動車2から充電許可信号を受信した後、充電シーケンスをさらに進め、充放電コネクタ19を電気自動車2にロックすることによって、充電準備を完了する。充放電回路17はそれから電気自動車2への実際の充電を試み、その結果(充電成功または失敗)を、充電可能状態判定部21に通知する。充電可能状態判定部21は、通知された結果に基づき、充放電回路17が電気自動車2の充電に成功したか否かを判定する。
【0129】
充電可能状態判定部21は、この判定結果がNOの場合、充放電回路17が充電可能状態にないと判定する(S22でNO)。一方、充電可能状態判定部21は、充電可能状態の判定条件として条件4が設定されている場合、この判定結果がYESの場合、充放電回路17が充電可能状態にあると判定する(S22でYES)。この場合、電気自動車2への充電が実際に成功したことが確認されているので、充放電装置1が実際に電気自動車2を充電可能な状態にあるか否かをもっとも確実に確認できる。
【0130】
(異常発生の通知)
S22がNOの場合、充電可能状態判定部21は、充放電回路17が電気自動車2を充電可能な状態にないと判定し、その旨を表示部14、予約運転制御部20、および充放電回路17に通知する。充放電回路17は、この通知を受けて、充電シーケンスを終了させる(S23)。S22において、条件2の判定または条件3の判定まで行われた場合、充放電コネクタ19は電気自動車2にロックされていない。そのため充放電回路17は、充放電コネクタ19をそのままロックすることなく、充電シーケンスを終了する。一方、S22において条件4の判定が行われた場合、S22がNOになる時点で充放電コネクタ19はロック済みである。この場合、充放電回路17は、充放電コネクタ19のロックを解除してから充電シーケンスを終了してもよいし、あるいは、充放電コネクタ19のロックを維持したまま充電シーケンスを終了し、その後にストップボタンの押下操作が検出されたら充放電コネクタ19のロックを解除してもよい。
【0131】
S23の後、表示部14は、充電可能状態判定部21からの通知に基づき、異常が発生したことを通知するためのメッセージを生成し、表示パネル13に表示する。これにより充放電装置1は、異常発生をユーザに通知する(S4)。また、予約運転制御部20は、充電可能状態判定部21からの通知に基づき、充放電装置1に設定された予約運転の設定を取り消す。その結果、図3に示す処理は終了する。したがって、充放電装置1は予約運転を実行しない。
【0132】
本実施形態では、表示部14は、充放電装置1に設定されている条件の種類に応じた異常通知メッセージを生成し、表示パネル13に表示する。以下に、条件ごとのメッセージの具体例をそれぞれ説明する。
【0133】
(条件2の場合)
表示部14は、充放電回路17が電気自動車2とのCAN通信を確立できなかったために充放電回路17が充電可能状態にないと判定された場合、充放電コネクタ19の接続状態の確認を促すメッセージを表示パネル13に表示する。このとき表示されるメッセージとして、たとえば、
・電気自動車2に対する充放電コネクタ19の接続(勘合)状態の確認を求める
・電気自動車2に対する充放電コネクタ19のロック状態の確認を求める
・電気自動車2に普通充電ケーブルが接続されているか否かの確認を求める
などの各種のメッセージが挙げられる。
【0134】
(条件3の場合)
表示部14は、充放電回路17が電気自動車2から充放電許可信号を受信できなかったために充放電回路17が充電可能状態にないと判定された場合、電気自動車2の状態の確認を促すメッセージを、表示パネル13に表示する。このとき表示されるメッセージとして、たとえば、
・普通充電を行うためのケーブルが電気自動車2に接続されているか否かの確認を求める
・電気自動車2における普通充電の予約が入っているか否かの確認を求める
・電気自動車2におけるエアコンの運転予約が入っているか否かの確認を求める
・電気自動車2のイグニッションがオンになっているか否かの確認を求める
などの各種のメッセージが挙げられる。表示部14は、接続時の異常の内容が明確であれば、その異常を取り除くための対処方法を表示パネル13に表示してもよい。なお、普通充電とは、交流電力を電気自動車2に送電するためのケーブル(ACケーブル)を用いた電気自動車2の充電のことである。
【0135】
(条件4の場合)
表示部14は、充放電回路17が電気自動車2に実際に充電することができなかったために充放電回路17が充電可能状態にないと判定された場合、充電不可の原因が充放電装置1または電気自動車2のいずれにあるかに応じたメッセージを表示パネル13に表示する。このとき表示されるメッセージとして、たとえば、
・充放電装置1に異常が発生した場合、その旨を伝える
・SOC(充電状態、State of Charge)が充電上限容量に達している場合、その旨を伝える
・電気自動車2に異常が発生した場合、その旨を伝える。
【0136】
・電気自動車2から正常停止指示を受領した場合、その旨を伝える
などの各種のメッセージが挙げられる。表示部14は、充放電装置1が電気自動車2の充電を試みた際に発生した異常の内容が明確であれば、その異常を取り除くための対処方法を表示パネル13に表示してもよい。
【0137】
一方、S22がYESの場合、充放電回路17は、充放電コネクタ19をロックする(S24)。なお、充電可能状態の判定条件として条件4が設定されている場合、S22がYESになる前に、充放電コネクタ19がすでに電気自動車2にロックされている。そのため、S24における充放電コネクタ19のロックは必ずしも必要ではない。充放電回路17は、S24において充放電コネクタ19を再度ロックしてもよいし、充放電コネクタ19のロックを何ら追加制御しなくてもよい(ロック維持)。このように、条件2〜4のいずれが設定されている場合でも、充電可能状態の判定完了後、充放電コネクタ19が電気自動車2に必ずロックされていることが保証される。
【0138】
S24の後、充放電回路17は、充電シーケンスを終了させるための終了手順を開始する。ただし充放電回路17は、充放電コネクタ19のロックを解除できる段階まで終了手順を進めた後、充放電コネクタ19のロックを解除せずにそのまま維持する(S25)。その後、充放電回路17は、充放電コネクタ19のロックを維持したまま充電シーケンスを終了させる(S26)。なお、S22において条件4の判定が行われた場合、充放電回路17は、まず電気自動車2の充電を終了し、それから充電シーケンスの終了手順を開始する。
【0139】
S26の後、表示部14は、充電可能状態判定部21からの通知に基づき、充放電回路17が充電可能状態にあると判定されたことを通知するメッセージを表示パネル13に表示する。これにより、充放電回路17が充電可能状態にあることがユーザに通知される(S6)。図3のS6〜S20は、図2のS6〜S20と同一であるため、詳細な説明を省略する。
【0140】
以上のように、本実施形態に係る充放電装置1は、予約運転開始前の充電シーケンスの実行中に充放電回路17が充電可能状態にあると判定してから、予約運転の開始時刻が到来するまでの間、充放電コネクタ19のロックを維持する。これにより、実施形態1と同様に、ユーザが充放電装置1から離れた後、第三者がいたずらで充放電コネクタ19を電気自動車2から抜くことができない。したがって、予約運転が開始されるまで充放電コネクタ19が電気自動車2に正常に接続され続けることができるので、充放電装置1は、予約運転をより確実に実行することができる。
【0141】
また、本実施形態に係る充放電装置1は、予約運転開始前の充電シーケンスの実行中に充放電回路17が充電可能状態にあると判定した場合、充放電コネクタ19のロックを維持したまま充電シーケンスを終了させ、それから待機状態に移行する。これにより、予約運転が開始されるまでの間、電気自動車2を充電するための充電準備状態を維持するための電力消費が不要になるので、充放電装置1における電力消費量を減らすことができる。さらには電気自動車2の蓄電池の消耗も防止できる。
【0142】
(充電可能状態判定の再実行)
充放電装置1は、待機状態になった後、予約運転の開始時刻が到来するまでの間に、充放電回路17が充電可能状態にあるか否かを再度判定してもよい。すなわち図3の処理は、充放電装置1が待機状態になってから一定時間が経過し、かつ、S9がNOの場合、S7ではなくS3に戻っても良い。この場合、充電可能状態判定部21が、接続確認線の導通の有無を確認する(S3)。S3がYESの場合、充放電回路17は、充電可能状態を判定するための充電シーケンスを再度開始する(S21)。充電可能状態判定部21は、充電シーケンスを再度実行中における充放電回路17からの各種通知に基づき、充放電回路17が充電可能状態にあるか否かを再度判定する(S22)。この判定がYESの場合、充放電装置1は、充放電コネクタ19のロックを維持したまま充電シーケンスを終了させ、さらに、充放電回路17が充電可能状態にあることをユーザに通知する。一方、NOの場合、充電シーケンスを終了させ、さらに異常発生をユーザに通知する。
【0143】
充電可能状態判定部21は、接続確認線が導通しているか否かの判定処理を、スキップしてもよい。この場合、ユーザがスタートボタンを押下すれば、充放電回路17は、充放電回路17が電気自動車2を充電可能な状態にあるか否かを予約運転の開始前において事前に判定するための充電シーケンスを、直ちに開始する。そして充電可能状態判定部21は、この充電シーケンスの実行中における充放電回路17からの各種の通知に基づき、充放電回路17が電気自動車2を充電可能な状態にあるか否かを判定する。
【0144】
(装置の各種態様)
実施形態1および2では、電気自動車2の充電および電気自動車2からの放電のいずれも実行可能な充放電装置1の例を説明した。しかし本発明の実施形態はこれに限られない。すなわち本発明は、電気自動車2の充電または放電を行うことが可能な各種の電力変換装置の形態としても実現される。より詳細には、電気自動車2の充電および放電のうち充電のみが可能な充電装置、および、電気自動車2の充電および放電のうち放電のみが可能な放電装置も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0145】
〔ソフトウェアによる実現例〕
充放電装置1の制御ブロック(特に入力部12、表示部14、予約運転制御部20、充電可能状態判定部21、コネクタロック制御部22)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、CPU(Central Processing Unit)を用いてソフトウェアによって実現してもよい。後者の場合、充放電装置1は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するCPU、上記プログラムおよび各種データがコンピュータ(またはCPU)で読み取り可能に記録されたROM(Read Only Memory)または記憶装置(これらを「記録媒体」と称する)、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などを備えている。そして、コンピュータ(またはCPU)が上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、たとえば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0146】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることによって、新しい技術的特徴を形成することもできる。
【0147】
たとえば、充放電装置1は、CHAdeMO規格とは異なる、電気自動車2の蓄電池の充電または放電を行うための他の規格(COMBO規格等)に対応した装置であってもよい。この場合、充放電ケーブル18および充放電コネクタ19は、当該他の規格に対応したケーブルおよびコネクタである。また、充放電回路17は、当該他の規格に対応した充電シーケンス(または放電シーケンス)を実行する。なお、充放電装置1が他の規格に対応した装置である場合、充放電装置1によって充電または放電が行われる電気自動車2も、当該他に規格に対応する必要がある。
【符号の説明】
【0148】
1 充放電装置(電力制御装置)
2 電気自動車(車両)
3 建物
4 商用電力系統
11 入力デバイス
12 入力部(操作部)
13 表示パネル
14 表示部(状態通知部、異常発生通知部)
15 制御回路
16 トランス
17 充放電回路(電力制御部)
18 充放電ケーブル(ケーブル)
18a 電力線
18b 信号線
20 予約運転制御部
21 充電可能状態判定部(判定部)
22 コネクタロック制御部(ロック制御部)
31 分電盤
32 負荷
図1
図2
図3