特許第6504139号(P6504139)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6504139
(24)【登録日】2019年4月5日
(45)【発行日】2019年4月24日
(54)【発明の名称】薬剤散布車両
(51)【国際特許分類】
   A01M 7/00 20060101AFI20190415BHJP
【FI】
   A01M7/00 D
【請求項の数】2
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-179738(P2016-179738)
(22)【出願日】2016年9月14日
(65)【公開番号】特開2018-42499(P2018-42499A)
(43)【公開日】2018年3月22日
【審査請求日】2017年10月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 岳行
(74)【代理人】
【識別番号】100096541
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 孝義
(74)【代理人】
【識別番号】100133318
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 向日子
(72)【発明者】
【氏名】松家 伸一
【審査官】 竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−078616(JP,A)
【文献】 実開平02−133468(JP,U)
【文献】 特開2004−275931(JP,A)
【文献】 特開2002−045742(JP,A)
【文献】 米国特許第04854503(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オペレータの操縦室となるキャビン(K)と、
キャビン(K)の後方に設けた薬剤タンク(30)と
を車体(2)上に備え、
車体(2)の左右方向に延びる薬液散布姿勢と、キャビン(K)の側方を前後方向に延びる収納姿勢とに切り替え可能な構成を備えた薬剤を散布する防除ブーム(40)と、
防除ブーム(40)の収納姿勢時に、該防除ブーム(40)を受けるブーム受け(50)を、キャビン(K)を構成するフレーム(21)に設け
防除ブーム(40)はキャビン(K)の左右にそれぞれ設けた左右のサイドブーム(40b、40b)を含み、
前記ブーム受け(50)は左右のサイドブーム(40b、40b)をそれぞれ支持する左右のブーム受け(50L、50R)から構成され、
前記左右のブーム受け(50L、50R)を連結する連結部材(35、43)を設け、
前記連結部材(35,43)は、上側の連結部材(43)と下側の連結部材(35)とを有し、
前記上側の連結部材(43)は、左のブーム受け(50L)の受け部(50a)を支持するパイプ(50b)と、右のブーム受け(50R)の受け部(50a)を支持するパイプ(50b)とを連結し、
前記下側の連結部材(35)は、キャビン(K)を構成するフレーム(21)に連結し、
左右のブーム受け(50R,50L)は、連結部材(35,43)に対して着脱可能に支持され、
サイドブーム(40b、40b)を昇降させる昇降スイッチ(39a)と、サイドブーム(40b、40b)を開閉する開閉スイッチ(39b)とを有するスイッチボックス(37)を、ブーム受け(50R,50L)に設け、
前記パイプ(50b)に支持アーム(70)を設け、
前記支持アーム(70)にスイッチボックス(37)を回転可能に支持して、
前記支持アーム(70)に支持されたロックナット(71)を緩めて、スイッチボックス(37)を回動させて昇降スイッチ(39a)と開閉スイッチ(39b)の向きを変更可能な状態として、前記ロックナット(71)を締めて昇降スイッチ(39a)と開閉スイッチ(39b)の向きを固定可能に構成された
ことを特徴とする薬剤散布車両。
【請求項2】
前記スイッチボックス(37)へのハーネスを、ブーム受け(50R,50L)のパイプ(50b)の内部と、下側の連結部材(35)の内部とを通過させ、
前記パイプ(50b)の周囲にゴム板(52)を巻き付けた
ことを特徴とする請求項1記載の薬剤散布車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、キャビンと薬剤タンクを備え、該薬剤タンクから供給される薬液を圃場に散布する薬液散布用の防除ブームを備えた薬剤散布車両に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に示すように、薬剤タンクから供給される薬液を圃場に散布する薬液散布車両には、オペレータが搭乗して薬液散布作業のための操作などを行うキャビンと薬液を貯留した薬剤タンクと薬液を圃場に散布する防除ブームとを備えている。
【0003】
防除ブームは機体前面のセンターブームと、センターブームの両側に配置され、薬液散布時にはセンターブームの両側に拡げ、薬液散布をしない時は機体の両側面側に折り畳んで収納状態に保持するサイドブームを備えている場合が多い。
【0004】
サイドブームは長手方向の長さがセンターブームに比べて長く、収納時には薬剤タンクを設置した台から上方に延長した棒状のブーム受けにより支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−76789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1に示す薬液散布車両では、薬剤タンクを設置した機体フレームから上方に延びる長い支持棒によりサイドブームを支持している。この支持構成では、サイドブームを支持棒により下から持ち上げているため、サイドブームの荷重が支持棒にかかって、負荷が大きくなるという問題がある。また、薬剤タンクを設置した台に支持棒を設けているため、薬剤タンクの着脱の際に支持棒が妨げとなり、着脱しづらくなって作業性が低下するといった問題もある。
【0007】
本発明の課題は、キャビンと薬剤タンクを備えた薬液散布車両の防除ブームの支持構成において、防除ブームの重量による負荷を軽減し、薬剤タンクの着脱にも支障を来さないような構成とした薬液散布車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記課題は次の解決手段により解決される。
請求項1記載の発明は、オペレータの操縦室となるキャビン(K)と、キャビン(K)の後方に設けた薬剤タンク(30)とを車体(2)上に備え、車体(2)の左右方向に延びる薬液散布姿勢と、キャビン(K)の側方を前後方向に延びる収納姿勢とに切り替え可能な構成を備えた薬剤を散布する防除ブーム(40)と、防除ブーム(40)の収納姿勢時に、該防除ブーム(40)を受けるブーム受け(50)を、キャビン(K)を構成するフレーム(21)に設け、防除ブーム(40)はキャビン(K)の左右にそれぞれ設けた左右のサイドブーム(40b、40b)を含み、前記ブーム受け(50)は左右のサイドブーム(40b、40b)をそれぞれ支持する左右のブーム受け(50L、50R)から構成され、前記左右のブーム受け(50L、50R)を連結する連結部材(35、43)を設け、前記連結部材(35,43)は、上側の連結部材(43)と下側の連結部材(35)とを有し、前記上側の連結部材(43)は、左のブーム受け(50L)の受け部(50a)を支持するパイプ(50b)と、右のブーム受け(50R)の受け部(50a)を支持するパイプ(50b)とを連結し、前記下側の連結部材(35)は、キャビン(K)を構成するフレーム(21)に連結し、左右のブーム受け(50R,50L)は、連結部材(35,43)に対して着脱可能に支持され、サイドブーム(40b、40b)を昇降させる昇降スイッチ(39a)と、サイドブーム(40b、40b)を開閉する開閉スイッチ(39b)とを有するスイッチボックス(37)を、ブーム受け(50R,50L)に設け、前記パイプ(50b)に支持アーム(70)を設け、前記支持アーム(70)にスイッチボックス(37)を回転可能に支持して、前記支持アーム(70)に支持されたロックナット(71)を緩めて、スイッチボックス(37)を回動させて昇降スイッチ(39a)と開閉スイッチ(39b)の向きを変更可能な状態として、前記ロックナット(71)を締めて昇降スイッチ(39a)と開閉スイッチ(39b)の向きを固定可能に構成されたことを特徴とする薬剤散布車両である。
【0009】
請求項2記載の発明は、前記スイッチボックス(37)へのハーネスを、ブーム受け(50R,50L)のパイプ(50b)の内部と、下側の連結部材(35)の内部とを通過させ、前記パイプ(50b)の周囲にゴム板(52)を巻き付けたことを特徴とする請求項1記載の薬剤散布車両である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、防除ブーム(40)を受けるブーム受け(50)をキャビンフレーム(21)に設けることで、ブーム受け(50)の剛性が高まり、防除ブーム(40)の重量による負荷も軽減される。また、キャビン(K)後方の薬剤タンク(30)を着脱する際にもブーム受け(50)が妨げになることはなく、薬剤タンク(30)の着脱も容易にできる。
また、請求項1に記載の発明によれば、連結部材(35、43)により左右のブーム受け(50L、50R)を連結することで、左右のブーム受け(50L、50R)の剛性が高まると共に、キャビンフレーム(21)自体の剛性も高まる。
また、請求項1に記載の発明によれば、スイッチボックス(37)をブーム受け(50R,50L)に設けることで、キャビン(K)の外部からサイドブーム(40b)の操作ができ、利便性に優れる。
さらに、請求項1に記載の発明によれば、ロックナット(71)を緩めた後、スイッチボックス(37)を回動させてロックナット(71)を締めることで、昇降スイッチ(39a)と開閉スイッチ(39b)の向きを任意に変更可能であり、オペレータの作業しやすい位置に昇降スイッチ(39a)と開閉スイッチ(39b)を向けることができ、容易にサイドブーム(40b)の昇降開閉操作ができる。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、ハーネスをパイプ(50b)と連結部材(35)の内部に配策することで、ハーネスが外部の障害物に引っ掛かることを防止できる。
また、請求項2に記載の発明によれば、ゴム板(52)を巻き付けることで、サイドブーム(40b)がブーム受け(50)に当たるときに、そのショックを吸収できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る薬剤散布車両の側面図である。
図2図1に示す薬剤散布車両の平面図である。
図3図1の要部を示した図である。
図4】薬剤散布車両の防除ブームで圃場に薬剤を散布する様子を説明する図である。
図5】キャビンフレームの外形の骨組みを示した簡略図である。
図6図6(A)は、ブーム受けの支持構造を示した背面図であり、図6(B)は、左側のブーム受けの拡大図(斜視図)である。
図7図7(A)は、ブーム受けの支持構造の別の例を示した背面図であり、図7(B)は、左側のブーム受けの拡大図(斜視図)である。
図8図8(A)は、左側のブーム受けの連結部を示した図であり、図8(B)は、右側のブーム受けの連結部を示した図である。
図9】ブーム受けの支持構造の別の例を示した背面図である。
図10図10(A)は、左側のブーム受けの拡大図(斜視図)であり、図10(B)は、図10(A)のブーム受けの先端部の拡大図である。
図11】ブーム受けの別の例を示した図であり、左側のブーム受けの斜視図である。
図12】ブーム受けへのスイッチボックスの取付構造の一例を示した側面図である。
図13図13(A)は、スイッチボックスの別の例の斜視図であり、図13(B)は図13(A)のスイッチボックスのブーム受けへの取付構造の一例を示した斜視図である。
図14】カルチ作業時における作業車両の全体側面図である。
図15図14の作業車両の全体平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づいてこの発明の実施態様について説明する。
図1には、薬剤を圃場に散布する薬剤散布車両の側面図を示し、図2には、図1の薬剤散布車両の平面図(見やすいように、キャビン等一部を省略している)を示している。また、図3には、図1の要部を示している。
【0016】
本実施形態に係る薬剤散布車両1は、作業員等のオペレータが走行車体2に搭乗して運転操作をしながら薬剤を圃場に散布する作業車両である。尚、本明細書では、「薬剤」とは肥料、栄養剤、農薬等を溶媒(例えば、水)に溶解させた液体、および、肥料、農薬等の固形分を含む液体(例えば、水)等の液状物である。
【0017】
薬剤散布車両1は、図1等に示すように、走行車体2と、キャビンKと薬剤タンク30と該薬剤タンク30から供給される薬剤を圃場に散布するための防除ブーム(図4、以下、単にブームという)40等から構成されている。
【0018】
尚、本実施形態において、薬剤散布車両1の進行方向は、走行車体2の前後方向に沿った方向であり、薬剤散布車両1の直進時に運転席4から操向操作用ハンドル8に向かう方向である。また、走行車体2の車幅方向あるいは左右方向は、上記進行方向に対して水平に直交する方向である。また、走行車体2の上下方向は、上記進行方向に対して鉛直に直交する方向である。
【0019】
走行車体2は、メインフレーム3と運転席4とハンドル8と、前輪6と後輪7とを含む構成である。メインフレーム3は、走行車体2の前後に延長して形成されている。運転席4は、オペレータが薬剤散布車両1の運転操作をする際に着座するための座席である。運転席4の右側には、ブーム40の開閉や薬剤の散布等の動作を制御するための操作パネル10が配置されている。ハンドル8は、オペレータによる回動操作によって、少なくとも左右の前輪6を操舵することで、薬剤散布車両1の進行方向を変更する。前輪6は、少なくともハンドル8の回動操作により操舵される操舵輪である。
【0020】
キャビンKは、運転席4およびハンドル8を含んで囲むことで乗員室を形成するものである。キャビンKは、薬剤タンク30とブーム40との間に配置されている。キャビンKは、キャビンフレーム21(21a、21b、21cなど)とキャビンルーフ22を備え、メインフレーム3に基部を支持されている。
【0021】
薬剤タンク30は、運転席4の左右両側および後側を囲むように凹状に形成されており、ブーム40から散布される薬剤を収容する容器である。薬剤タンク30は、図1に示すように、キャビン20の後側であって、メインフレーム3上に着脱可能に搭載されている。
【0022】
走行車体2の前部には、ボンネット12の左右両側部に支持されたリフトリンク13が取り付けられている。リフトリンク13は、アッパリンク13aとロワリンク13bを平行状に配置して、この前端部間をヒッチブラケット14で連結し、後端部間を直立した支柱15に軸支して平行リンク形態に構成され、この平行リンクが昇降シリンダ17により先端部が昇降移動することでブーム40の薬液散布高さを調節することができる。
【0023】
ブーム40は薬剤散布車両1の前側に薬剤を散布するものである。ブーム40は、センターブーム40aと、このセンターブーム40aの外側に折畳可能に連結されるサイドブーム40bから構成される。
【0024】
ヒッチブラケット14の下端部には機体左右方向に伸びるセンターブーム40aを取り付けている。またその左右端部に上方に突出したシリンダ取付支柱16が設けられ、シリンダ取付支柱16の上端には、電気的に作動制御される油圧タンク付ソレノイドバルブ(上下シリンダ19に内装)を介して伸縮するローリングシリンダである上下シリンダ19の上端が取り付けられ、上下シリンダ19の下端にはサイドブーム40bが回動自在に取り付けられている。従って、上下シリンダ19の伸縮によりサイドブーム40bが昇降される。
【0025】
サイドブーム40bはシリンダ取付支柱16を介してセンターブーム40aに取り付けられているが、サイドブーム40bはセンターブーム40aに設けられた開閉シリンダ20により開閉される。
【0026】
図4に、ブーム40による圃場への薬剤散布の様子を示すように、ブーム40は、薬剤散布車両1の前側に薬剤を散布するものである。センターブーム40aには、薬剤を霧状に噴射するノズル41aが間隔をおいて複数配設されている。サイドブーム40bは、走行車体2の車幅方向に延びる散布姿勢と、走行車体2の左右両側に沿う収納姿勢とに切り替え可能に、センターブーム40aの左右両側に取り付けられている。サイドブーム40bは、収納姿勢時に、走行車体2の後側の左右両側に配置されたブーム受け50で支持される。サイドブーム40bには、薬剤を霧状に散布するノズル41bが間隔をおいて複数配設されている。
【0027】
図5には、キャビンKを構成するキャビンフレーム21の外形の骨組みを示した簡略図(斜視図)を示す。
キャビンフレーム21は、メインフレーム3から立設している左右の前部フレーム21a、21aと、メインフレーム3から立設し、湾曲形状の左右の後部フレーム21b、21bと、左右の前部フレーム21a、21a間を連結する上下の前部横フレーム21c、21cと左右の後部フレーム21b、21b間を連結する上下3つの後部横フレーム21d、21d、21dと、左右の前部フレーム21a、21aと左右の後部フレーム21b、21b間を連結する左右の前後フレーム21e、21e等を備えている。
【0028】
本実施形態の薬剤散布車両1によれば、左右のブーム受け50L、50Rを、左右の後部フレーム21b、21bの中間部を連結する後部横フレーム21d(運転席4の真後ろに位置する)の左右にそれぞれ設けている。本構成を採用することにより、サイドブーム40bをキャビンフレーム21から支持することで、ブーム受け50の剛性が高まり、ブーム40の重量による負荷も軽減される。また、キャビンK後方の薬剤タンク30を着脱する際にもブーム受け50が妨げとはならず、薬剤タンク30の着脱も容易にできる。
【0029】
また、このブーム受け50はステップ25に近いキャビンKの後部横フレーム21dに設けている。そして、ドア34側の左側のブーム受け50Lがドア34よりも後ろ側にあることで、オペレータの乗降の妨げにもならない。また、オペレータがステップ25に足を掛ける際のキャビンKへの乗降時の取っ手にもなる。
【0030】
図6(A)には、ブーム受けの支持構造を示した背面図(模式図)を示し、図6(B)には、左側のブーム受け50Lの斜視図を示す。
キャビンKの後部横フレーム21dの背面に、後部横フレーム21dの長手方向に沿って中空状の角柱35を、溶接やボルト・ナット、ネジ等の固定手段により取り付けている。ブーム受け50はサイドブーム40bを受ける受け部50aと受け部50aを支持するパイプ50bからなり、角柱35の左右端部にブーム受け50のパイプ50bを挿入することで、容易に設置できる。尚、角柱ではなく、円柱としても良い。
【0031】
ブーム受け50の受け部50aはU字型(コの字型、V字型も含む)であり、U字の開口部でサイドブーム40bを受けるため、サイドブーム40bを安定して支持できる。また、U字の左右外側50aaよりも左右内側(キャビンK側)50abを長めにすることで、サイドブーム40bを収納する際に、キャビンK本体側にサイドブーム40bが干渉することを防止できる。従って、キャビンKやサイドブーム40bが傷つくことを防止できる。
【0032】
また、受け部50aは、サイドブーム40bの入り口部分を広く、保持部分を狭くすると良い。すなわち、U字の開口幅W(図6)が上方ほど広くなるような形状とすれば、サイドブーム40bを入りやすくすると共に、収納時にはU字の比較的幅の狭い下部に保持されることで、しっかりと固定され、車両の走行時におけるがたつきも防止できる。
【0033】
また、ブーム受け50のパイプ50bは、角柱35の左右端部に挿入されているが、パイプ50bと角柱35の両方に設けた孔(図示せず)にピン57を差し込み、更にノブボルト(押しボルト)55によって角柱35に設けた孔から内部のパイプ50bを押さえつけることで、パイプ50bを角柱35に強固に固定できる。本構成を採用することにより、ピンとノブボルトなどの簡単な部品によってブーム受け50を角柱35に取り付けられるため、他の工具等の必要もなくブーム受け50を容易にキャビンKに設置できる。
【0034】
図7(A)には、ブーム受けの支持構造の別の例を示した背面図(模式図)を示し、図7(B)には、左側のブーム受け50Lの斜視図を示す。
また、左右のブーム受け50L、50Rを連結棒43により連結することで、左右のブーム受け50L、50Rの剛性が高まると共に、キャビンフレーム21自体の剛性も高まる。連結棒43は、パイプ50bに設けた孔(図示せず)に貫通させて、パイプ50b脇の孔からブラケット58を介してノブボルト55で止めれば良い。また、連結棒43は、オペレータがキャビンKに乗車する際の取っ手にもなる。
【0035】
そして、左右のブーム受け50L、50Rから連結棒43を外して、ブーム受け50L、50Rをそれぞれ角柱35の端部から外したり弛めたりすることで、容易に左右のブーム受け50L、50Rの交換や調整が行えるため、左右のブーム受け50L、50Rのメンテナンス性が向上する。
【0036】
図8には、連結棒43とブーム受け50との連結部の拡大図(平面図)を示す。図8(A)は、左側のブーム受け50Lの連結部を示し、図8(B)は、右側のブーム受け50Rの連結部を示している。ブラケット58はコの字形状で、連結棒43に溶接により固着している。
【0037】
これらの図に示すように、連結棒43は左右一方(図示例では右側)がパイプ50bへの差し込み式で、他方(図示例では左側)がノブボルト55で留める構成としても良い。連結棒43の左右両端部共にノブボルト55で留める場合に比べて、一方を差し込み式とすることで、連結棒43の左右のブーム受け50L、50Rからの脱着が容易となる。
【0038】
図9には、ブーム受けの支持構造の別の例を示した背面図(模式図)を示す。また、図10(A)には、図9の左側のブーム受け50Lの拡大図(斜視図)を示し、図10(B)には、図10(A)のブーム受けの先端部の拡大図を示す。
【0039】
そして、図9に示すように、パイプ50bを保護するためのゴム板52をチューブ状に、パイプ50bの周囲に巻くと良い。尚、ゴム板などの弾性体でなくても、気泡緩衝材やスポンジなどの緩衝材でも良い。ゴム板52があることで、サイドブーム40bがブーム受け50に当たるときに、そのショックを吸収できる。また、ゴム板52にスリットが入っていると、剥がしやすく取り外しが容易であり、メンテナンス性や作業性も良い。
【0040】
また、図10(A)に示すように、受け部50aの先端をCカット加工にすることで、サイドブーム40bの収納時に、サイドブーム40bの突起物(薬液ホース、電線など)が引っかかりにくくなる。例えば、サイドブーム40bに沿ってスライドする伸縮ブームを備え、作業時には伸縮ブームを伸ばしてサイドブーム40bの長さを延長し、広範囲の薬剤散布を行える車両がある。このような車両では、薬液ホースを支持するワイヤ(ロープ)などがサイドブーム40bに沿って設置されるが、受け部50aの先端がCカット加工であると、ワイヤが引っかかることも防止できる。
【0041】
そして、受け部50aの内側にもパイプ50bと同様にゴム板54を取り付けることで、ブーム収納時のショックが吸収されやすくなり、且つ薬剤散布車両1の走行時にがたつくこともない。
【0042】
また、図10(B)に示すように、受け部50aのゴム板54は段付き形状とし、その段と同じ高さのネジ頭を持つナベ小ネジ(プラスネジ又はマイナスネジ)56を差し込んで受け部50aに固定すると、ネジ頭がゴム板表面から突出しない。従って、サイドブーム40bの収納時にサイドブーム40bがネジ頭に引っかかることもなく、ブーム受け50にスムーズに収納できる。
【0043】
特に受け部50aのゴム板54は、その上端(受け部50aのブーム入り口部分)をナベ小ネジ56で固定することで、ゴム板54のめくれ防止効果も高い。
【0044】
図11には、ブーム受けの別の例を示し、左側のブーム受け50Lの斜視図を示す。 この図に示すように、ブーム受け51は、受け部51aを支持するパイプ51bの部分を延長し、側面視でL字型にすることで、側面視でI字型の場合(図3、10(A)等)に比べてキャビンKの側部を比較的広い範囲で障害物からガードできる。従って、サイドブーム40bを閉じたり下げたりする際に、サイドブーム40bがブーム受け51にうまく載らなくてもキャビンKに当たることを防止できる。このパイプ51bを側面視でL字型にする構成は、パイプ側ゴム板52や受け部側ゴム板54のないブーム受け50(図6及び図7)にも適用できる。
【0045】
そして、ブーム受け50、51にサイドブーム40bを昇降開閉操作するスイッチ39のスイッチボックス37を設けると、キャビンKの外部からもサイドブーム40bを操作でき、利便性に優れる。
【0046】
スイッチ39を操作することで、図示しない制御装置によって上下シリンダ19と開閉シリンダ20が作動する。また、このスイッチボックス37はボンネット12などの比較的低い位置に設ける場合に比べて、比較的高い位置に配置することで、子供による誤操作も防止できる。スイッチボックス37は、基本的に薬剤散布車両1の左側にのみ設置されるが、右側に設けても良い。
【0047】
尚、スイッチ39は、スイッチボックス37の後ろ側(背面側)に配置すれば、右手で操作しやすい。一方、スイッチ39を、スイッチボックス37の前側に配置しても良い。この場合、背の低いオペレータであっても、手前側のスイッチ39に手が届きやすく、ドア34下のステップ25に足を掛けて操作できる。
【0048】
図12には、ブーム受け50へのスイッチボックス37の取付構造の一例を示した側面図(一部断面)を示す。
スイッチボックス37の上下を貫通するボルト59の上端(先端)をパイプ50b、51bに設けた穴に差し込んでナット60で締めることで、スイッチボックス37はブーム受け50に固定される。ボルト59の軸にはスプリング73が巻回しており、スプリング73が常時伸び方向に作用することで走行時においてもスイッチボックス37の位置が安定して保持される。そして、オペレータがスプリング73の付勢力に抗してスイッチボックス37を押し上げて回すことで、スイッチ39の向きを変更できる。
【0049】
尚、図12にはゴム板52を図示しているが、このスイッチボックス37はゴム板52を巻いていないブーム受け50にも適用できる。
【0050】
図13(A)には、スイッチボックス37の別の例の斜視図を示し、図13(B)には図13(A)のスイッチボックス37のブーム受け50への取付構造の一例を示す。このスイッチボックス37は、その中心に設けた左右方向に長手方向を有する軸45を中心に回動することで、前後上下に回動自在である。従って、背の低いオペレータでもスイッチ39を下に向けることで、容易にサイドブーム40bの昇降開閉操作ができる。
【0051】
図13(B)に示すように、スイッチボックス37は、軸45の左右両端に装着されたロックナット71,71を介してパイプ50bに固定された左右の支持アーム70,70により支持されている。左右のロックナット71,71を緩めることで、スイッチボックス37を回動させて、スイッチ39の向きを調整できる。図13(B)には、パイプ側ゴム板52を図示していないが、ゴム板52を巻いたブーム受け50にも適用できることは言うまでもない。
【0052】
スイッチ39は、十字に動くトグルスイッチ一つとしても良い。また、スイッチ39を昇降スイッチ39aと開閉スイッチ39bの二つとしても良い。すなわち、昇降スイッチ39aは上下方向に動き、開閉スイッチ39bは左右方向に動くトグルスイッチとする。スイッチ39a、39bを二つ設けることで、誤操作を防止できる。また、スイッチ39a、39bの動く方向にサイドブーム40bも作動するため、オペレータが直感的に操作できる。
【0053】
このスイッチボックス37のハーネスは、キャビンKからコネクタを介して延長した配線53であり、スイッチボックス37の上部に設けた穴37aから内部に挿入される。このように、スイッチボックス37のハーネスをパイプ50b、51bと角柱35の内部に配策することで、ハーネスが外部の障害物等に引っかかることを防止できる。
【0054】
また、本実施例のようなキャビンKを装備した作業車両では、薬剤散布の他に、例えば、カルチ作業を行う場合もある。この時には、ブーム40や薬剤タンク30が不要になるため、ブーム40と薬剤タンク30を取り外して作業を行う。ブーム40の取り外し作業は、複数人での作業となり、リフトリンク13、ヒッチブラケット14、シリンダ取付支柱16、上下シリンダ19等のブーム40の支持部材を全て取り外す(分解する)ことになる。この時、スイッチボックス37のハーネスをコネクタから外すことで簡単にブーム受け50と共にスイッチボックス37も取り外すことができる。
【0055】
図14には、カルチ作業時における作業車両の全体側面図を示し、図15には、図14の全体平面図を示す。
カルチ作業とは、カルチベータ(中耕除草機)によって畑を耕す作業のことを言う。中耕除草機は、作業車両Tの後部ヒッチHに昇降可能に連結され、作業時は畝間に下降し、牽引走行によって中耕・培土を行う。
【0056】
中耕除草機61は、作業車両Tの後部ヒッチHに装着可能で複数の並列畝間に及ぶ主フレーム62と、この主フレーム62を介して並列配置される複数の畝間別の作業ユニットUとから構成され、各作業ユニットUに、ゲージ輪63、前後2列のディスク64,65、チゼル群66等を備える。
【0057】
メインフレーム3には、中央及び左右の各作業ユニットUをスライド調節可能に取付けるための箱形構成のスライドブロック67を畝間別に間隔を変更可能に取付けて多連(図例は3連)型に構成する。その中の中央のスライドブロック67の先端に、後部ヒッチHに装着するための連結部67bを水平支軸67dで連結し、連結部67bの上端とスライドブロック67の上端を姿勢調整ハンドル67cで連結することにより、2点リンク型の連結部を構成する。上記連結部67bを牽引側の後部ヒッチHに適宜高さに装着し、その昇降によりメインフレーム3を介して中耕除草機61の全体が昇降動作し、また、調整ハンドル67cの操作により水平支軸67dを支点として中耕除草機61の全体が前後に傾斜する。
【0058】
各作業ユニットUには、スライドブロック67と連結して前後に延びる作業機フレーム68を設け、この作業機フレーム68は、平行リンク機構68aを介して上下動作可能にスライドブロック67と連結するとともに、このスライドブロック67の後部の突出部67aに調整ロッド68cをバネガイドとするバネ68bを連結し、その中間高さでスライド可能に弾発支持する。このバネ68bにより、作業機フレーム68の上下揺動を緩衝することができる。
【0059】
各作業機フレーム68には、圃場面に接地して転動する転輪によるゲージ輪63を先頭に、前端側あるいは後端側を狭く配置した左右のディスクを前後2列に配置したディスク64,65と、その前後間で土塊破砕用ビットを下端に形成したチゼル66a,66bを複数集合したチゼル群66とを一体に支持する。チゼル66a,66bは、前部中央部と、この後側部で左右両側部に位置する三点位置に配置の三本爪配置の形態としている。
【0060】
チゼル66a,66bにより残渣物の根を切断しながら圃場の表層から耕し、前後のディスク64,65により表層部と土と残渣物との混和・整地・鎮圧を行う。
このように、ブーム40や薬剤タンク30等の薬剤散布装置を取り外すことで、他の作業車両としても利用できる。
【符号の説明】
【0061】
1 薬剤散布車両 2 走行車体
3 メインフレーム 4 運転席
6 前輪 7 後輪
8 ハンドル 10 操作パネル
12 ボンネット 13 リフトリンク
14 ヒッチブラケット 15 支柱
16 シリンダ取付支柱 17 昇降シリンダ
19 上下シリンダ 20 開閉シリンダ
21 キャビンフレーム 22 キャビンルーフ
25 ステップ 30 薬剤タンク
34 ドア 35 角柱
37 スイッチボックス 39 スイッチ
40a センターブーム 40b サイドブーム
41 ノズル 43 連結棒
45 軸 50、51 ブーム受け
52 パイプ側ゴム板 53 配線
54 受け部側ゴム板
55 ノブボルト 56 ナベ小ネジ
57 ピン 58 ブラケット
59 ボルト 60 ナット
61 中耕除草機
62 主フレーム 63 ゲージ輪
64、65 ディスク 66 チゼル群
67 スライドブロック 68 作業機フレーム
70 支持アーム 71 ロックナット
73 スプリング
K キャビン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15