(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記測定部によって測定された出力電圧又は出力電流若しくは出力電力と、目標電圧又は目標電流若しくは目標電力と、の差分を、各制御サイクル毎に積算し、これを補正値として目標電圧又は目標電流若しくは目標電力に加算する積分演算部を備えることを特徴とする請求項2に記載の交流電力調整器。
出力電圧又は出力電流若しくは出力電力と、目標電圧又は目標電流若しくは目標電力と、の差分を、各制御サイクル毎に積算し、これを補正値として目標電圧又は目標電流若しくは目標電力に加算する処理を実行することを特徴とする請求項8に記載の交流電力制御方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
位相制御方式に関し、
図12(a)に例示した一般的な電圧比例位相制御方式の場合、交流電源3の電圧変動や、負荷2の負荷変動に伴い、出力電圧(負荷に印加される電圧)が変動してしまう(目標電圧と出力電圧が一致しない)という問題がある。
これに対し、
図12(b)に例示した定電圧位相制御方式の場合、PI制御によって目標値に近づける処理が行われるため、交流電源3の電圧変動や、負荷2の負荷変動があっても、目標電圧と出力電圧が一致するような制御が行われる。
しかしながら、
図12(b)に例示したPI制御を用いた位相制御方式の場合、
図13に示したように、応答が遅くなるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑み、電源電圧の変動等があった場合においても目標電圧と出力電圧が一致するように制御することが可能であり、且つ、高い応答性を有する交流電力調整器及び交流電力制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(構成1)
負荷に対する電力供給の制御を位相制御によって行う交流電力調整器であって、前記負荷に供給された出力電圧又は出力電流若しくは出力電力の値を測定する測定部と、前記測定部によって測定された前の制御サイクルの出力電圧又は出力電流若しくは出力電力の値と、前の制御サイクルの目標負荷率と、に基づいて、交流電圧を半サイクルの間全てオン状態にする点弧角における前の制御サイクルの推定出力電圧又は推定出力電流若しくは推定出力電力を算出する出力推定部と、与えられた目標値と、負荷電源の定格電圧又は定格電流若しくは定格電力と、前記出力推定部によって算出された前の制御サイクルの出力電圧又は出力電流若しくは出力電力と、に基づいて、今回の制御サイクルの目標負荷率を算出する目標負荷率算出部と、を備えることを特徴とする交流電力調整器。
【0007】
(構成2)
前記目標負荷率算出部が、与えられた目標値と、負荷電源の定格電圧又は定格電流若しくは定格電力と、に基づいて、目標電圧又は目標電流若しくは目標電力を算出する目標電圧算出部と、出力電圧又は出力電流若しくは出力電力と、目標電圧又は目標電流若しくは目標電力と、の比から、目標負荷率を算出する目標負荷率補正値算出部と、によって構成され、前記目標負荷率補正値算出部において、前記出力推定部によって算出された前の制御サイクルの推定出力電圧又は推定出力電流若しくは推定出力電力と、今回の制御サイクルの目標電圧又は目標電流若しくは目標電力と、の比から、今回の制御サイクルの目標負荷率を算出することを特徴とする構成1に記載の交流電力調整器。
【0008】
(構成3)
前記測定部によって測定された出力電圧又は出力電流若しくは出力電力と、目標電圧又は目標電流若しくは目標電力との差分を各制御サイクル毎に積算し、これを補正値として目標電圧又は目標電流若しくは目標電力に加算する積分演算部を備えることを特徴とする構成2に記載の交流電力調整器。
【0009】
(構成4)
前記積分演算部によって算出された補正値に対して所定のリミットを設けるリミッタ―部を備えることを特徴とする構成3に記載の交流電力調整器。
【0010】
(構成5)
前記目標負荷率を点弧角に変換する変換部と、点弧角に制限を加える点弧角制限処理部と、前記点弧角制限処理部によって制限が加えられた点弧角を、負荷率に再変換する再変換部と、を備え、前記出力推定部において、前記測定部によって測定された前の制御サイクルの出力電圧又は出力電流若しくは出力電力の値と、前記点弧角制限処理部によって再変換された前の制御サイクルの負荷率とに基づいて、出力が最大となる点弧角における前の制御サイクルの推定出力電圧又は推定出力電流若しくは推定出力電力を算出することを特徴とする構成1から構成4の何れか1つに記載の交流電力調整器。
【0011】
(構成6)
サイリスタと、前記目標負荷率を点弧角に変換する変換部と、前記点弧角に基づいて前記サイリスタを制御するサイリスタ点弧処理部と、を備えることを特徴とする構成1から構成5の何れか1つに記載の交流電力調整器。
【0012】
(構成7)
負荷に対する電力供給の制御を位相制御によって行う交流電力制御方法であって、各制御サイクルにおいて、前の制御サイクルにおける目標負荷率を取得する処理と、前の制御サイクルにおける出力電圧又は出力電流若しくは出力電力の値を取得する処理と、前の制御サイクルの出力電圧又は出力電流若しくは出力電力の値と、前の制御サイクルの目標負荷率と、に基づいて、交流電圧を半サイクルの間全てオン状態にする点弧角における前の制御サイクルの推定出力電圧又は推定出力電流若しくは推定出力電力を算出する処理と、与えられた目標値と、負荷電源の定格電圧又は定格電流若しくは定格電力と、前の制御サイクルの推定出力電圧又は推定出力電流若しくは推定出力電力と、に基づいて、今回の制御サイクルの目標負荷率を算出する処理と、を実行することを特徴とする交流電力制御方法。
【0013】
(構成8)
前記目標負荷率を算出する処理が、与えられた目標値と、負荷電源の定格電圧又は定格電流若しくは定格電力と、に基づいて、目標電圧又は目標電流若しくは目標電力を算出する処理と、前の制御サイクルの推定出力電圧又は推定出力電流若しくは推定出力電力と、今回の制御サイクルの目標電圧又は目標電流若しくは目標電力と、の比から、今回の制御サイクルの目標負荷率を算出する処理と、によって実行されることを特徴とする構成7に記載の交流電力制御方法。
【0014】
(構成9)
出力電圧又は出力電流若しくは出力電力と、目標電圧又は目標電流若しくは目標電力との差分を各制御サイクル毎に積算し、これを補正値として目標電圧又は目標電流若しくは目標電力に加算する処理を実行することを特徴とする構成8に記載の交流電力制御方法。
【0015】
(構成10)
前記算出された補正値に対して所定のリミットを設ける処理を実行することを特徴とする構成9に記載の交流電力制御方法。
【0016】
(構成11)
前記目標負荷率を点弧角に変換する処理と、点弧角に制限を加える処理と、前記制限が加えられた点弧角を、負荷率に再変換する処理と、前の制御サイクルの出力電圧又は出力電流若しくは出力電力の値と、前記再変換された前の制御サイクルの負荷率とに基づいて、出力が最大となる点弧角における前の制御サイクルの推定出力電圧又は推定出力電流若しくは推定出力電力を算出する処理と、を実行することを特徴とする構成7から構成10の何れか1つに記載の交流電力制御方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明の交流電力調整器及び交流電力制御方法によれば、電源電圧の変動等があった場合においても目標電圧と出力電圧が一致するように制御することが可能であり、且つ、高い応答性を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施態様について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下の実施態様は、本発明を具体化する際の一形態であって、本発明をその範囲内に限定するものではない。
【0020】
<実施形態1>
図1は、本発明に係る実施形態1の交流電力調整器の構成の概略を示すブロック図である。本実施形態の交流電力調整器100は、負荷に対する電力供給の制御を位相制御によって行う交流電力調整器であり、より具体的には、外部装置である温度調節器(図示せず)から入力される目標値に基づいて、負荷2であるヒータに対する交流電源3からの電力供給の制御を行うものである。
交流電力調整器100は、交流電源(負荷電源)3の定格電圧が記憶されている定格電圧記憶部102と、与えられた目標値と定格電圧とに基づいて目標電圧を算出する目標電圧算出部101と、出力電圧と目標電圧との比から目標負荷率を算出する目標負荷率補正値算出部103と、目標負荷率を一時記憶する負荷率記憶部108と、目標負荷率を点弧角に変換する変換部104と、点弧角に基づいてサイリスタ106を制御するサイリスタ点弧処理部105と、点弧角及びゼロクロスのタイミングで交流電源3から負荷2への電力供給をスイッチングするサイリスタ106と、負荷2に対して出力された(供給された)出力電圧の値を測定する出力電圧測定部107と、前の制御サイクルの出力電圧の値と前の制御サイクルの目標負荷率とに基づいて、交流電圧を半サイクルの間全てオン状態にする点弧角における前の制御サイクルの推定出力電圧(以降、特にことわりが無い場合は、単に「推定出力」若しくは「推定出力電圧」という)を算出する出力電圧推定部109と、を備える。なお、目標電圧算出部101と目標負荷率補正値算出部103によって目標負荷率算出部120が構成される。
各構成は、それぞれ専用回路等でハード的に構成されるものであってもよいし、マイコン等の汎用的な回路上でソフトウェア的に実現されるものであってもよい。
【0021】
目標電圧算出部101は、外部装置である温度調節器(図示せず)から入力される目標値(0〜100%)に、定格電圧記憶部102から取得される交流電源3の定格電圧を乗算し、これを目標電圧とする。例えば目標値が40%で、定格電圧が200Vである場合には、目標電圧は80Vとなる。
【0022】
目標負荷率補正値算出部103は、目標電圧算出部101から入力される目標電圧を、後に説明する出力電圧推定部109から入力される「前の制御サイクルにおける推定出力電圧」で除算することにより目標負荷率を算出する。例えば、目標電圧は80Vで、推定出力電圧が180Vであった場合には、44.4%が目標負荷率となる。
当該算出された目標負荷率は、負荷率記憶部108に格納される。
【0023】
変換部104は、各目標負荷率に対応する点弧角が定められたテーブルを有しており、当該テーブルを参照することにより、目標負荷率補正値算出部103から入力された目標負荷率を、点弧角に変換する処理を行う。
図3には、目標負荷率と点弧角の対応関係のグラフを示した。当該グラフの対応関係に応じたテーブルが変換部104に備えられるものである。なお、テーブルを保有するのではなく、
図3のグラフの式に基づいて目標負荷率から点弧角を随時算出するものであってもよい。
なお、
図3は、本実施形態のような電圧制御の場合に使用する、電圧の実効値に基づく目標負荷率と点呼角の対応関係を示すグラフであるが、後に例示する電流制御の場合には、電流の実効値に基づく目標負荷率と点呼角の対応関係、電力制御の場合には、電力の平均値に基づく目標負荷率と点呼角の対応関係をそれぞれ使用する。
【0024】
サイリスタ点弧処理部105は、サイリスタ106を駆動するものであり、変換部104から入力された点弧角のタイミングにてサイリスタ106をONにする。サイリスタ106はゼロクロスのタイミングでOFFになり、これにより、交流電源3から負荷2へ供給される電力が制御される。
【0025】
出力電圧測定部107は、負荷2に対する出力電圧の値を測定するものであるが、各制御サイクルにおいて出力される出力電圧値を、その制御サイクル中にリアルタイムに取得することは基本的にはできないので、出力電圧測定部107から得られる出力電圧値は前の制御サイクルにおける出力電圧値である。
“出力電圧値を、その制御サイクル中にリアルタイムに取得することは基本的にはできない”とは、サンプリング周期に基づいて得られる瞬時値である電圧測定値(AD変換瞬時値)を、一つの制御サイクル中にわたって取得し、これに基づいて出力電圧値を算出する必要があり、これをリアルタイムの制御サイクル中に行うことが難しいためである。しかしながら、非常に演算能力の高いマイクロコンピュータで、任意の点より前の半サイクルのAD変換瞬時値の2乗値の積算値を算出し、その平方根値を瞬時に算出して実効値を算出して、且つ、本発明の処理も瞬時に出来る処理能力があれば、AD変換サイクル毎に実効値を算出する事も可能ではある。ただし、この場合においても、かなりの部分において前の制御サイクル中のAD変換瞬時値を利用するものであり、“前の制御サイクルにおける出力電圧値”といってよい。今回の制御サイクル中のAD変換瞬時値を多く利用しようとする場合、必然的に今回の制御サイクルがかなり進んだ状況となるが、これらの処理は、今回の制御サイクルにおける点弧角を算出するためのものであり、今回の制御サイクルが終わろうとするようなタイミングで、このような処理を行っても意味が無いからである。
【0026】
出力電圧推定部109は、出力電圧測定部107から入力される前の制御サイクルの出力電圧値を、負荷率記憶部108から得られる前の制御サイクルの目標負荷率で除算することにより、交流電圧を半サイクルの間全てオン状態にする点弧角における前の制御サイクルの推定出力電圧を算出する。例えば、前の制御サイクルの出力電圧値(測定値)が72Vであり、前の制御サイクルの目標負荷率が40%であった場合には、推定出力電圧が180Vとなる。
推定出力電圧は、目標負荷率と、当該目標負荷率に基づいて実際に負荷に供給された出力電圧(測定値)に基づき、目標負荷率100%換算(=点弧角100%換算)における出力電圧を算出(推定)したものである。
【0027】
以上の構成を有する実施形態1の交流電力調整器100の、本発明に関する制御サイクル毎の処理動作について、
図2を参照しつつ説明する。
【0028】
ステップ201は、初期化処理であり、nに1を代入している。nは制御サイクルを示す整数値であり、n=1であれば1回目の制御サイクル、n=100であれば100回目の制御サイクルを示す。なお、位相制御の制御サイクルは、通常、交流電源電圧の半サイクルと同一であり、本実施形態においても交流電源電圧の半サイクルを制御サイクルとしている。
nは説明の便宜上のために使用している変数であり、実際の装置の制御処理では必ずしも必要ない。
【0029】
ステップ202では、目標電圧算出部101において、目標値
n(n回目の制御サイクルにおける目標値。添字nはn回目の制御サイクルであることを示すものであり、以降の各添字も同義)に、定格電圧を乗算し、これを目標電圧
nとする。
【0030】
続くステップ203では制御サイクルnが1であるか否かを判別し、1であればステップ204へ、1以外であればステップ205へと移行する。
1回目の制御サイクルの場合には、目標負荷率補正値算出部103において、目標電圧
n(目標電圧
1)を、定格電圧記憶部102から取得される交流電源3の定格電圧で除算することで、目標負荷率
n(目標負荷率
1)を算出し、これを負荷率記憶部108に格納する(ステップ203:Yes→ステップ204→ステップ208)。
1回目の制御サイクルにおいては、“前の制御サイクル”が存在しないため、前の制御サイクルにおける結果を必要とする処理をスキップするものである。
【0031】
一方、2回目以降の制御サイクルである場合、出力電圧推定部109において、出力電圧測定部107から出力電圧値
n−1、負荷率記憶部108から負荷率
n−1をそれぞれ取得し、出力電圧値
n−1を負荷率
n−1で除算することにより、推定出力電圧
n−1を算出する(ステップ203:No→ステップ205→ステップ206)。
続くステップ207では、目標負荷率補正値算出部103において、目標電圧
nを、出力電圧推定部109から取得される推定出力電圧
n−1で除算することで、目標負荷率
nを算出し、これを負荷率記憶部108に格納する(ステップ208)。
【0032】
ステップ209では、変換部104において、目標負荷率補正値算出部103から入力された目標負荷率
nを、点弧角
nに変換する処理を行い、当該点弧角
nに基づいて、サイリスタ106を駆動する(ステップ210)。
【0033】
上記のステップ202〜ステップ210の一連の処理が、各制御サイクル毎に繰り返される。即ち、制御サイクルに同期してnをインクリメント(ステップ211)してステップ202へと戻り、上記処理を繰り返すものである(なお、終了指示があった場合には処理を終了する(ステップ212:Yes→終了))。
【0034】
以上の構成及び処理動作を備える本実施形態の交流電力調整器100によれば、実際に負荷に供給された出力電圧(測定値)に基づいて目標負荷率を算出しているため、交流電源の電圧変動や負荷の負荷変動等によって定格電圧通りの電圧が出力されていない場合においても、目標値に対応する目標電圧が負荷へと出力されるような制御が行われる。
且つ、
図12(b)に例示したPI制御を用いた位相制御方式においてみられたような応答の遅れ(
図13)がなく、高速な応答を得ることができる。
図4は、本実施形態の交流電力調整器100におけるステップ応答を示す図である。同図に示されるように、本実施形態によれば極めて高いステップ応答性が得られる。
【0035】
<実施形態2>
図5は、本発明に係る実施形態2の交流電力調整器の構成の概略を示すブロック図である。実施形態1(
図1)と同様の構成については同一の符号を使用し、ここでの説明を省略若しくは簡略化する。
【0036】
実施形態2の交流電力調整器200は、実施形態1に対して、交流電源3の電圧波形の歪みによる誤差を積分補正する機能を追加したものである。
位相制御方式においては、サイリスタにより急峻な電流の立ち上がりが生じるが、これと回路のインダクタンス成分により、電源電圧波形に
図7に示したような落ち込みやスパイク電圧が現れる。
前述のごとく、実施形態1によれば、電源電圧に変動があってもその影響を受けずに目標値に沿った出力電圧が得られるものであるが、これは電源の電圧波形(正弦波)が保たれた状態であることを要する。従って、電源電圧波形に
図7に示されるような歪みが生じた場合には、この歪みに基づく誤差が生じてしまう。(例えば、
図7に示されるような歪みが生じた場合、この歪み分の出力低下(低レベルの出力低下)が生じる。)
交流電力調整器200は、この歪みによる誤差を積分補正するために、目標電圧記憶部110と、積分演算部111と、を備えるものである。
【0037】
積分演算部111は、出力電圧測定部107によって測定された出力電圧と目標電圧との差分を積分時間で割った値を、各制御サイクル毎に積算し、これを補正値として目標電圧に加算する処理を行うものである。例えば、前サイクルの出力電圧が79Vであり、前サイクルの目標電圧が80Vであった場合において、積分時間を5としている場合には、0.2Vが積算される。例えばこの状態が10サイクル継続した場合、その積算値は2Vとなり、これが目標電圧に加算されるものである。
【0038】
次に、実施形態2の交流電力調整器200の、本発明に関する制御サイクル毎の処理動作について、
図6を参照しつつ説明する。実施形態1(
図2)と同様の処理概念となるものについては同一の符号を使用し、ここでの説明を省略若しくは簡略化する。
【0039】
目標電圧算出部101において、目標電圧
nが算出されたら(ステップ202)、これを目標電圧記憶部110に格納する(ステップ601)。
【0040】
1回目の制御サイクルの場合には、積分演算部111における積分値を0とし、目標負荷率補正値算出部103において目標負荷率
1を算出し、これを負荷率記憶部108に格納する(ステップ203:Yes→ステップ602→ステップ204→ステップ208)。
なお、積分値を0とする処理(ステップ602)は初期化処理としてステップ201等で行うものであって良い。
【0041】
一方、2回目以降の制御サイクルである場合、積分演算部111において、目標電圧記憶部110から取得した目標電圧
n−1から、出力電圧測定部107から取得した出力電圧値
n−1を減算した値を、積分時間で割った値を算出し、これを積分値に積算して積分値
nを算出する(ステップ603)。
これに続くステップ206は実施形態1と同様であり、推定出力電圧
n−1が算出される。
続くステップ604では、目標電圧
nに積分値
nが加算されることで目標電圧
nが補正され、これを推定出力電圧
n−1で除算することで、目標負荷率
nが算出され、これが負荷率記憶部108に格納される(ステップ208)。
【0042】
以降の処理は実施形態1と同様である。
【0043】
以上の構成及び処理動作を備える本実施形態の交流電力調整器200によれば、
図7に示されるような電源電圧波形の歪みに基づく比較的低レベルな出力変動についても、補正をすることができる。
【0044】
なお、積分演算部111によって算出された補正値に対して所定のリミットを設けるリミッタ―部(図示せず)を備えるようにしてもよい。
実施形態1で説明したごとく、本発明によれば、高い応答性をもって出力電圧が制御されるため、積分演算部111における補正値(積分値
n)が過度に増大することは通常はないが、何らかの不具合により目標電圧と出力電圧に隔たりがある状態が続いた場合、補正値が過大になってしまい、オーバーシュートが大きくなる恐れもあるため、補正値が一定値以上にならないようにリミッタ―を設けるものである。
リミット値としては、絶対値として定めるもの(例えば5V)であってもよいし、定格電圧や推定出力電圧若しくは目標電圧に対する所定割合(例えば3%)等としてもよい。
【0045】
<実施形態3>
図8は、本発明に係る実施形態3の交流電力調整器の構成の概略を示すブロック図である。実施形態1(
図1)と同様の構成については同一の符号を使用し、ここでの説明を省略若しくは簡略化する。
【0046】
実施形態3の交流電力調整器300は、実施形態1に対して、いわゆるソフトスタート等の、点弧角に制限を加える機能を追加したものである。
交流電力調整器300は、点弧角に制限を加える点弧角制限処理部112と、当該制限が加えられた点弧角を記憶する点弧角記憶部113と、当該制限が加えられた点弧角を負荷率に再変換する再変換部114と、を備える。
【0047】
点弧角制限処理部112は、位相制御方式における高調波障害(ノイズ発生)といった問題を低減するために、出力変動をゆるやかにする(点弧角に制限を加える)ものであり、いわゆるソフトスタートやソフトダウンを行うものである。点弧角制限処理部112によって制限が加えられた点弧角は点弧角記憶部113に記憶される。
【0048】
再変換部114は、各点弧角に対応する負荷率が定められたテーブルを有しており、当該テーブルを参照することにより、点弧角記憶部113から入力された点弧角を負荷率に再変換する処理を行う。
なお、テーブルを保有するのではなく、
図3のグラフの式の逆関数に基づいて点弧角から負荷率を随時算出するものであってもよい。
【0049】
次に、実施形態3の交流電力調整器300の、本発明に関する制御サイクル毎の処理動作について、
図9を参照しつつ説明する。なお、実施形態1(
図2)と同様の処理概念となるものについては同一の符号を使用し、ここでの説明を省略若しくは簡略化する。
【0050】
ステップ201〜ステップ209の処理については基本的に実施形態1と同様であるが、出力電圧推定部109における推定出力電圧
n−1の算出(ステップ206)のために用いる負荷率
n−1を、再変換部114から取得している点(ステップ901)で異なる。
ステップ901では、再変換部114において、点弧角記憶部113から点弧角
n−1を取得し、これを負荷率に再変換して負荷率
n−1とする。
ソフトスタート等によって点弧角が制限されている場合には、目標負荷率補正値算出部103によって算出された目標負荷率に対応しないため、制限された点弧角に対応する負荷率を取得し、これに基づいて推定出力電圧
n−1を算出しているものである。
【0051】
ステップ902〜ステップ905は、ソフトスタート処理の一例であり、ソフトスタート期間である場合には、ステップ209で得られた点弧角に対して制限を加えるものである。
xは、ソフトスタート期間を定める制御サイクルの数であり、例えばx=100である場合、100サイクル未満においてステップ903〜905の処理が実行され、100サイクル以上になると、ソフトスタート処理(ステップ903〜905)がスキップされて通常の点弧角での制御が行われるものである。
本実施形態におけるソフトスタート動作は、例えばソフトスタートの設定を100サイクルと設定した場合(x=100)には、トリガ角の1サイクルあたり変化の上限値を1%(100%÷100(xの設定値))として、変換部104で算出した点弧角が「前回の点弧角 − 今回の点弧角 >1%」の時には「前回の点弧角 + 1%→点弧角」とするものである。即ち、点弧角の変化量を100/xに制限するものである。なお、当該ソフトスタート処理において、「前回の点弧角(点弧角
n−1)」が必要となるため、点弧角制限処理部112が、点弧角記憶部113に記憶されている点弧角
n−1を取得できるように構成される。
【0052】
ソフトスタート期間である場合には(ステップ902:No)、点弧角制限処理部112において、「点弧角
n−1 − 点弧角
n」を算出し、これが100/xを超えているか否かを判別する(ステップ903〜904)。「点弧角
n−1 − 点弧角
n > 100/x」である場合には、「点弧角
n−1 + 100/x」を新たな点弧角
nとし(ステップ904:Yes→ステップ905)、「点弧角
n−1 − 点弧角
n ≦100/x」である場合には(ステップ904:No)、ステップ905をスキップして、点弧角の更新(制限)を行わない。
ステップ906では、点弧角
nを点弧角記憶部113に記憶する。
このように、ソフトスタート期間においては、変化量の最大値が100/xに制限された点弧角に基づいて、サイリスタ106が駆動される(ステップ210)。
一方、ソフトスタート期間を過ぎた場合には、ステップ903〜905をスキップして、点弧角
n(ステップ209で得られた点弧角)をそのまま点弧角記憶部113に記憶する(ステップ902:Yes→ステップ906)。
なお、ここでは、点弧角に制限を加える機能の例としてソフトスタートを例としているが、その他の処理(例えばソフトダウン等)であっても勿論よい。
【0053】
以降の処理は実施形態1と同様である。
【0054】
以上の構成及び処理動作を備える本実施形態の交流電力調整器300によれば、ソフトスタートやソフトダウン等の機能を備える場合(点弧角が制限される場合)においても、推定出力電圧を正確に算出することができ、電源電圧の変動等があった場合においても目標電圧と出力電圧が一致するように制御することが可能であり、且つ、高い応答性を得ることができる。
【0055】
なお、上記各実施形態では、出力電圧を測定して電圧ベースで動作する電圧制御方式を例としているが、
図10(a)に示したようにカレントトランス4等によって出力電流を測定し、各部の処理を電流ベースで動作させる電流制御方式であってもよい。同様に、
図10(b)に示したように、出力電圧及び出力電流を測定し、これらに基づいて出力電力を算出して、各部の処理を電力ベースで動作させる電力制御方式であってもよい(何れの場合も本発明として同様の概念である)。電流制御方式である場合には、変換部104における目標負荷率を点弧角に変換する処理が、電流の実効値に基づく目標負荷率と点呼角の対応関係に基づいて行われ、電力制御方式である場合には、電力の平均値に基づく目標負荷率と点呼角の対応関係に基づいて行われる点は、前述の通りである。
【0056】
実施形態2は、実施形態1に対して交流電源3の電圧波形の歪みによる誤差を積分補正する機能を追加したものとし、実施形態3は、実施形態1に対していわゆるソフトスタート等の、点弧角に制限を加える機能を追加したものとしてそれぞれ説明したが、実施形態2と実施形態3の双方を同時に採用するもの(積分補正機能とソフトスタート機能の同時採用)であっても勿論よい。
図10(a)及び
図10(b)では、実施形態2に対応する電流制御方式、電力制御方式を例示しているが、実施形態1や3又は実施形態1〜3を同時採用したものについて電流制御方式、電力制御方式とできることは勿論である(実施形態3については、電流制御方式である場合には、再変換部114における点弧角を負荷率に再変換する処理が、電流の実効値に基づく点呼角と負荷率の対応関係に基づいて行われ、電力制御方式である場合には、電力の平均値に基づく点呼角と負荷率の対応関係に基づいて行われる)。
【0057】
また、各実施形態では“前の制御サイクル”が、直近の(1つ前の)サイクルであるものとして説明しているが、本発明における“前の制御サイクル”をこれに限るものではなく、例えば、数サイクル前を“前の制御サイクル”とするものであってもよい。
直近の(1つ前の)サイクルの測定値等に基づいて“今回の制御サイクル”の各動作を定めるもの(各実施形態)の方がより好適ではあるが、例えば、2サイクル前の制御サイクルを、“前の制御サイクル”として、2サイクル前の制御サイクルにおける測定値等に基づいて“今回の制御サイクル”の各動作を定めるものであっても動作として問題はない。
【0058】
各実施形態では、目標電圧算出部101と目標負荷率補正値算出部103によって目標負荷率算出部120が構成されるものを例としているが、目標負荷率算出部120は、目標値と、定格電圧(or 定格電流若しくは定格電力)と、前の制御サイクルの推定出力電圧(or 推定出力電流若しくは推定出力電力)と、に基づいて、今回の制御サイクルの目標負荷率を算出するものであればよい。
例えば、
図11に示したごとく、定格電圧補正値算出部115と目標負荷率補正値算出部103によって目標負荷率算出部120を構成し、定格電圧補正値算出部115にて、定格電圧(例えば200V)を、前の制御サイクルの推定出力電圧(例えば180V)で除算することで、補正係数(例えば1.11)を算出し、目標負荷率補正値算出部103において、当該補正係数を、目標値(例えば40%)に乗算することで、目標負荷率(例えば44.4%)を算出するものであってもよい。
即ち、目標負荷率算出部120は、定格電圧(or 定格電流若しくは定格電力)と目標値の積を、前の制御サイクルの推定出力電圧(or 推定出力電流若しくは推定出力電力)で除算することで、今回の制御サイクルの目標負荷率を算出するものであればよい。