特許第6504303号(P6504303)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6504303
(24)【登録日】2019年4月5日
(45)【発行日】2019年4月24日
(54)【発明の名称】車両用スリップ発生補助輪装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 61/12 20060101AFI20190415BHJP
   G09B 9/042 20060101ALI20190415BHJP
【FI】
   B62D61/12
   G09B9/042 A
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-120738(P2018-120738)
(22)【出願日】2018年6月26日
【審査請求日】2018年7月18日
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、権利譲渡・実施許諾の用意がある。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518279026
【氏名又は名称】阿部 隆男
(72)【発明者】
【氏名】山口 健
(72)【発明者】
【氏名】阿部 隆男
【審査官】 川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−142508(JP,A)
【文献】 特表昭60−500208(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3107685(JP,U)
【文献】 特開2001−287628(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 61/12
G09B 9/042
B60S 9/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接地及び接地解除が可能な補助輪を車両に設け、前記車両に意図的にスリップ状態を起こすことが出来る車両用スリップ発生補助輪装置において、
接地可能な補助輪と、前記補助輪を輪転可能に軸支する補助輪支持軸を有する補助輪取付けブラケットと、
前記補助輪取付けブラケットに設けられ回動可能に軸支されて前記回動により前記補助輪取付けブラケットを介して前記補助輪を揺動させることにより車両をスリップさせる回動軸と、
前記回動軸を軸支する回動軸受けと、
前記補助輪を前記車両前進時の車輪の回転と同方向の回転により補助輪を接地させる又は前記補助輪を車両前進時の車輪の回転と反対方向の回転により補助輪の接地を解除させる回転軸を有し、
前記回転軸は、前記補助輪による車両直進時には地面に対して前記補助輪支持軸の鉛直上になるよう設けられ、
前記回動軸受けに一端部が固定され、反対端部が前記回転軸に固定されている回転軸受けブラケットと、
前記回転軸を前記回転させ前記回動軸受けを進退移動させ前記補助輪を接地位置又は接地解除位置に位置決めする複動型油圧シリンダ装置と、
を備えて構成したことを特徴とする車両用スリップ発生補助輪装置。
【請求項2】
前記補助輪、前記補助輪取付けブラケット、前記回動軸、前記回動軸受け及び前記回軸受けブラケットのユニットを一対設け、前記一対のユニットの回軸受けブラケットを所定間隔で前記回転軸に連結することを特徴とする請求項1記載の車両用スリップ発生補助輪装置。
【請求項3】
前記複動型油圧シリンダ装置を、シリンダ及び前記シリンダに対して伸縮可能なピストンを有し、前記ピストンは前記回転軸が回転可能になるよう回転軸に連結され、前記複動型油圧シリンダ装置のピストン縮小時に前記補助輪を接地位置に又は前記複動型油圧シリンダ装置のピストン伸長時に前記補助輪を接地解除位置に位置決めすることを特徴とする請求項2記載の車両用スリップ発生補助輪装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転中に意図的にスリップ状態を起こすことが出来る運転訓練車両用スリップ発生補助輪装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術としては特開2000−142508号公報に掲載されているものが知られている。これは図7に示すように油圧シリンダ装置76のピストンの伸縮により連結部材79を介して補助輪ユニットUを回転(地面に対して縦方向の回転A又は回転B)させるものであるが、油圧シリンダ装置76の油圧回路は、上記ピストンの伸長時に油圧を付加し、縮小時に油圧を解除する回路で構成しており、油圧シリンダ装置76の油圧解除時には油圧シリンダ装置76のピストンを縮小方向に付勢するコイルスプリング75の収縮力のみにより、補助輪71を接地解除位置に位置させるため、連結部材79と回転軸78間の回転半径rを長くすることで収納力を確保していた(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−142508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以下、発明が解決しようとする課題について、添付図面の図7により説明する。従来の車両用スリップ発生補助輪装置では、補助輪71を回動(地面に対して横方向の回転)させ車両にスリップを生じさせるためには、回動軸73を中心にブラケットを介して補助輪71を回動させることとなり、回動軸73と補助輪支持軸70を回動半径r2とするモーメントにより抵抗が生じていた。その際に、前記のとおり回転半径r1をできるだけ長く確保しまければならないため、回動半径r2も長くならざるを得ず、スリップによる急激な方向転換に際して、補助輪71の接地部では補助輪進行方向に対する回動半径r2の長さに比例した横応力が発生し、この横応力がスリップに対する抵抗力となりスリップが円滑に行われない問題点があった。また、回動半径r2が長いため、回動時に車体に補助輪71にぶつかり、回動角度が制限されていた。本発明は、上記従来技術の問題点を解決するために、補助輪71の回転半径r1及び回動半径r2を短くし、円滑なスリップを発生させることを課題とする。
【0005】
また、補助輪71による走行の際は、車両前進による地面からの反力Cと補助輪収納の回転方向Bが一致しているため、車両前進による地面からの反力Cが補助輪収納方向Bの力となり、これにコイルスプリング75の収縮力Eが付加されて補助輪71を接地させる油圧力が弱められ、補助輪71が瞬間的に収納方向Bに動き、補助輪走行が不安定になることがあった。本発明は、上記従来技術の問題点を解決し、補助輪走行の安定を図ることを課題とする。
【0006】
さらに、補助輪ユニットUの接地解除時Bには油圧シリンダ装置76の油圧が解除され、コイルスプリング75の収縮力Eのみに頼って収納を行う必要があった。このため回転(地面に対して縦方向の回転A又は回転B)軸78と補助輪支持軸70との回転半径を長くし、梃子の原理を利用してコイルスプリング75の収縮力を増加させる必要があった。その結果、必要な収縮力を得るための長い回転半径r1を確保し、かつ狭い車両の下部に油圧シリンダ装置76を接触させないように、回転スタンド80の高さ、連結部材79の長さ、コイルスプリング75の長さ及び収縮力の強さ等に微妙な調整が必要となり、調整が困難なため補助輪ユニットUの収納が不能になることもあった。本発明は、上記従来技術の問題点を解決し、補助輪71の回転範囲r1を短くして車両用スリップ発生補助輪装置の取付けの調整を効率良く行えるようにするとともに、コイルスプリング75の収縮力の不足による補助輪71収納不能の不安定さを除去することを課題とする。
【0007】
加えて、補助輪71を収納し一般道路を車両の車輪で走行した際に、補助輪ユニットUを収納位置に定着させているコイルスプリング75の収縮力Eが不足した場合、車両のバウンドにより補助輪ユニットUが跳ね上がり上下動を繰り返して、収納していた補助輪71が路面に接触し車両の走行を阻害する問題点があった。本発明は、上記従来技術の問題点を解決し、補助輪71を装着した車両の一般道走行の安全性を高めることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、課題を解決するための手段について、添付図面の図1図2図5図7に基づき説明する。上記課題を解決するために、図1に示すように、接地及び接地解除が可能な補助輪7を車両5に設け、車両5に意図的にスリップ状態を起こすことが出来る車両用スリップ発生補助輪装置1において、接地可能な補助輪7と、補助輪7を輪転可能に軸支する補助輪支持軸9を有する補助輪取付けブラケット8と、補助輪取付けブラケット8に設けられ回動(地面に対して横方向の回転D)可能に軸支されて図5に示すように回動Dにより補助輪取付けブラケット8を介して補助輪7を揺動させることにより車両をスリップさせる回動軸10と、回動軸10を軸支する回動軸受け11と、補助輪7を車両前進時の車輪の回転と同方向の回転(地面に対して縦方向の回転a)により補助輪を接地させる又は補助輪7を車両前進時の車輪の回転と反対方向の回転(地面に対して縦方向の回転b)により補助輪7の接地を解除させる回転軸13を有し、回転軸13は、補助輪7による車両直進時には地面に対して補助輪支持軸9の鉛直上になるよう設けられ、回動軸受け11に一端部が固定され、反対端部が回転軸13に固定されている回転軸受けブラケット12と、回転軸13を回転させ回動軸受け11を進退移動させ補助輪7を接地位置A又は接地解除位置Bに位置決めする複動型油圧シリンダ装置16と、を備えて構成したことを特徴とする。
【0009】
また、補助輪7、補助輪取付けブラケット8、回動軸10、回動軸受け11及び回動軸受けブラケット12のユニットUを一対設け、一対のユニットの回動軸受けブラケット12を所定間隔で回転軸13に連結することを特徴とする。
【0010】
さらに、複動型油圧シリンダ装置36を、シリンダ17及びシリンダ17に対して伸縮可能なピストン18を有し、ピストン18は回転軸13が回転可能になるよう回転軸13に連結され、複動型油圧シリンダ装置36のピストン18縮小時に補助輪7を接地位置Aに又は油圧シリンダ装置36のピストン18伸長時に補助輪7を接地解除位置Bに位置決めすることを特徴とする。
【0011】
上記課題の解決により、車両直進時において補助輪支持軸9の鉛直上になるように回転軸10を設け、回動軸10の鉛直方向延長線と補助輪支持軸9の鉛直方向延長線との間の長さである回動半径R1を補助輪7の半径以下にすることにより、回動時の抵抗モーメント力を弱め、円滑にスリップを発生させるとともに、補助輪7での走行時には、地面からの補助輪7に対する反力Cが補助輪7を接地位置に回転させる方向aと同方向になるため、車両前進による補助輪7への地面からの反力Cと補助輪7接地の回転方向aが一致しており、車両前進による補助輪7への地面からの反力Cが補助輪7接地の力に付加され、補助輪走行時の補助輪7の接地力を高め、補助輪走行の安定が図られている。
【0012】
また、補助輪接地解除位置Bの収納時において油圧による応力の付加が可能なため、従来の車両用スリップ発生補助輪装置で備えていたコイルスプリング75(図7)が不要となる上に、収納力が従来のものに比較して強くなる。このため回転軸13と補助輪支持軸9との間の長さである回転半径R2を短くでき、補助輪7の回転範囲が小さくなり、従来のものよりコンパクトになるため車両用スリップ発生補助輪装置の取付けの調整が効率良く行えるようになるとともに、従来の車両用スリップ発生補助輪装置のコイルスプリング75(図7)の収縮力の不足による補助輪収納不能の不安定さが解消される。
【0013】
加えて、補助輪7の接地解除をし、補助輪7を収納した状態で、車両の車輪で一般道路を走行した場合においても、油圧力により収納状態を維持しているため、車両のバウンドによる補助輪ユニットUの上下動がなくなり、車両の一般道路における走行の安全性が増加している。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態に係る車両用スリップ発生補助輪装置を車両に取付けた図である。
図2】本発明の実施の形態に係る車両用スリップ発生補助輪装置を示す斜視図である。
図3】本発明の実施の形態に係る車両用スリップ発生補助輪装置の接地解除位置の状態で示す側面図である。
図4】本発明の実施の形態に係る車両用スリップ発生補助輪装置の接地位置の状態で示す側面図である。
図5】本発明の実施の形態に係る車両用スリップ発生補助輪装置の接地位置における回動の状態を示す平面図である。
図6】本発明の実施の形態に係る車両用スリップ発生補助輪装置の回動軸受け部を示す要部断面図である。
図7】車両用スリップ発生補助輪装置の従来例を示す図である。
【符号の説明】
【0015】
1 車両用スリップ発生補助輪装置
2 車両
3 前輪
4 後輪
5 車体
6 車軸支持体
※ U ユニット
7 補助輪
8 補助輪取付けブラケット
9 補助輪支持軸
10 回動軸、
11 回動軸受け
12 回動軸受けブラケット
13 回転軸
14 ベース部材
15 連結部材
A 補助輪接地位置
B 補助輪接地解除位置
C 車両の前進時の補助輪への地面からの反力
D 補助輪の回動方向
a 補助輪接地解除位置から補助輪接地位置への補助輪の回転方向
b 補助輪接地位置から補助輪接地解除位置への補助輪の回転方向
16 複動型油圧シリンダ装置
17 シリンダ
18 ピストン
19 油圧パイプ
20 リンク部材
21 駆動装置固定部材
22 回転軸ストッパー
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施の形態に係る車両用スリップ発生補助輪装置について説明する。なお、上記と同様のものには同一の符号を付して説明する。図1に示すように、実施の形態に係る車両用スリップ発生補助輪装置1は、前輪3及び後輪4を有した車両2の車体5に取付けられる。車両2としては、例えば、前輪駆動タイプの乗用車であり、左右の後輪4は、独立懸架式になっていて、車体5の車幅方向に架設される車軸支持体6の左右に回動可能に支持されている。そして、実施の形態に係る車両用スリップ発生補助輪装置1は、左右の後輪4の間であって、車軸支持体6の後側に取付けられている連結部材15の中央に設けられている。
【0017】
実施の形態に係る車両用スリップ発生補助輪装置1は、図1乃至図5に示すように、接地及び接地解除が可能な補助輪7を車両2に設け、車両2に意図的にスリップ状態を起こすことが出来る車両用スリップ発生補助輪装置において、接地可能な補助輪7と、補助輪7を輪転可能に軸支する補助輪支持軸9を有する補助輪取付けブラケット8と、補助輪取付けブラケット8に設けられ回動D(地面に対して横方向の回転)可能に軸支されて回動Dにより補助輪取付けブラケット8を介して補助輪7を揺動させることにより車両をスリップさせる回動軸10と、回動軸10を軸支する回動軸受け11と、補助輪7を車両前進時の車輪の回転と同方向の回転a(地面に対して縦方向の回転)により補助輪を接地させる又は補助輪7を車両前進時の車輪の回転と反対方向の回転b(地面に対して縦方向の回転)により補助輪7の接地を解除させる回転軸13を有し、回転軸13は、車両直進時には地面に対して補助輪支持軸9の鉛直上になるよう設けられ、回動軸受け11に一端部が固定され、反対端部が回転軸13に固定されている回転軸受けブラケット12と、回転軸13を回転させ回動軸受け11を進退移動させ補助輪7を接地位置A又は接地解除位置Bに位置決めする複動型油圧シリンダ装置16と、を備えている。
【0018】
また、補助輪7、補助輪取付けブラケット8、回動軸10、回動軸受け11及び回動軸受けブラケット12のユニットUを一対設け、一対のユニットの回動軸受けブラケット12を所定間隔で回転軸13に連結している。詳細には、補助輪7は、前輪3及び後輪4と同様にホイルとホイルに設けられたゴム製のタイヤとを備えている。補助輪7の直径dは約36cmである。これより小さいと、支持が不安定になり、これより大きいと装着及び収納が難しくなる。補助輪7の幅tは約7cmである。これよりも小さいと、支持が不安定になり、これより大きいと補助輪7の揺動の応答が悪くなる。
【0019】
また、補助輪取付けブラケット8は、略コ字状に形成され、補助輪7の両側に延びる支持板23と、回動軸10が溶接固定される固定板24とを備えて構成されている。補助輪支持軸9は支持板23間に架設され補助輪7が輪転可能に軸支している。回動軸10と補助輪支持軸9とはこれらの軸線同士が互いに直角方向を向くように結合されている。回動軸受け11は、金属製の外筒31と、外筒31に内嵌し回動軸10が摺接する平軸受け32とを備えている。回動軸10の中間には鍔部33が設けられ、この鍔部33と回動軸受け11との間には回動軸10に嵌着されるスラストベアリング34が設けられている。35は回動軸10の上端にボルト36で固定され回動軸受け11の上端37に摩擦的に当接するキャップであり、ボルト36の締め付け程度によって回動軸受け11に対する摩擦抵抗が調整される。
【0020】
このように構成された一対のユニットU同士は図5に示すように、回動軸受け11が所定間隔Lに設定されて回転軸13で連結されている。上記の一対の回動軸受け部11同士の所定間隔Lは、後輪4同士の間隔に近いほど実際にスリップした感覚に近くなるが、収納スペース等を考慮して適宜に定めて良い。この回転軸13は、金属製の連結部材15を構成する連結部材横板15bに回転可能に支持されている。連結部材15は、車体5の車軸支持体6に溶接固定されている金属製のベース部材14に溶接固定されており、図2に示すように、連結部材スタンド15a、連結部材横板15b、 連結部材背板15cから構成される。
【0021】
また、車両用スリップ発生補助輪装置1は、複動型油圧シリンダ装置16を備えており、この複動型油圧シリンダ装置16のピストン18の伸縮による力は、回転軸13に溶接固定されているリンク部材20を介して、回転軸13を回転させる力に変換され、回転軸13を回転させ回動軸受け11を進退移動させ補助輪7を接地位置A又は接地解除位置Bに位置決めする力となる。
【0022】
図4で示すように、複動型油圧シリンダ装置16は、シリンダ17及びシリンダ17に対して伸縮可能なピストン18を有し、複動型油圧シリンダ装置16を作動させるための油圧タンク25と、油圧ポンプ26と、油圧パイプ19とを備えて構成されている。複動型油圧シリンダ装置16は、シリンダ17がベース部材14に固定された連結部材15を構成する連結部材背板15cに駆動装置固定部材21により回転可能に設けられている。油圧タンク25及び油圧ポンプ26は、車体5の適宜の位置に取り付けられた連結部材背板15cの適宜の位置に設けられている。そして、複動型油圧シリンダ装置16のピストン18の縮小時に補助輪7を接地位置Aに位置決めし、ピストン18の伸長時に補助輪7を設置解除位置Bに位置決めするようにしている。
【0023】
また、車両用スリップ発生補助輪装置1は、油圧シリンダ装置16のピストン18の伸長終端位置を調整可能に構成されている。実施の形態では、図2に示すように、複動油圧シリンダ装置16のピストン18が伸長した場合、リンク部材20を介して回転軸13を回転させ、リンク部材20が回転軸ストッパーに接触するとピストン18の伸長が止まるようにしており、さらに、連結部材横板15bはスタンド15aにネジ手段等により位置調整が安納になっている。これにより、補助輪7を接地させて後輪4を持ち上げる接地位置Aの高さを調整できるようにし、後輪4が持ち上がり過ぎないで適正位置に持ち上がるように調整可能にしている。
【0024】
従って、この実施の形態に係る車両用スリップ発生補助輪装置1を車両2に取付けるときは、ベース部材14を、車体2の車軸支持体6に溶接固定して付設する。また、油圧ポンプ26や油圧タンク25は適宜の位置に付設する。この場合、車両2に付設するだけで良いので、車両2に大幅な特別の改造をしなくても良く、容易に取付けを行なうことができる。そのため、種々の車両2に取付けることができ、汎用性が極めて良いものになる。次に、この実施の形態に係る車両用スリップ発生補助輪装置2を取付けた車両2を、車両運転訓練車として使用し、教官が補助席に着座して運転席の受講者に運転を教授するときは、教官は運転席内に設けられたコントローラにより油圧を制御する。通常走行時には、補助輪7は、ピストン18が伸長して接地解除位置Bになるように位置決めされる。この状態では、後輪4が接地しているので、通常走行が行なわれる。
【0025】
この通常走行において、例えば、カーブにさしかかった車両2に強制的にスリップ状態を作り出して、運転者にスリップ状態を体験させ、ハンドル操作を教授するときは、コントローラの操作によって、油圧ポンプ26と油圧タンク25とを連通させてオイルを供給可能にするとともに、油圧ポンプ26を駆動してオイルを供給する。これにより、複動型油圧シリンダ装置16のピストン18を収縮させた場合は補助輪7が接地位置Aに位置決めされ、後輪4が持ち上げられ、一対の前輪3のみが接地することになる。この場合、カーブ等では遠心力が作用することから、に図4示すように、補助輪7を支持している回動軸10が回動し、補助輪7が揺動する。そのため、後輪4側が横にスリップしたように移動し、尻振り現象が生じる。これにより、運転者は、雨やアイスバーン等の路面で生じるスリップ現象を容易に体験することができ、かつ、通常走行中に急にスリップ現象が生じるので、ハンドル操作を行なって、スリップ時の車両2の修正技術を身につけることが可能になる。
【0026】
また、補助輪7を接地位置Aに位置決めするだけで良いので、容易にスリップ状態を実現でき、かつ、適正と思われる条件で、必要なときに、安全にスリップ状態を生じさせることができる。このため、ハンドル操作の教授も確実かつ容易に行なうことができるようになると同時に、わずかな遠心力でも、補助輪7が揺動するので、運転が未熟な者に対しても、低速状態で容易にスリップ状態を体験させることができる。
【0027】
スリップ状態を解除するときには、コントローラの操作により、図3に示すように、車体重量及び複動型油圧シリンダ装置により、ピストン18が伸長させられ、補助輪7は接地解除位置Bに位置させられて、後輪4が接地して、通常走行が行なわれる。この場合、油圧により補助輪7を伸長するので、接地解除位置Bへ補助輪7を位置させる力が強くなり、そのため、より確実かつ円滑な補助輪の収納が可能になっている。特に、スリップ状態において、運転手が未熟な場合に即座に中止したいときに、極めて対応が良くなる。
【要約】
【課題】運転中に意図的にスリップ状態を起こすことが出来る運転訓練車両用スリップ発生補助輪装置において、円滑なスリップの発生、補助輪収納の安定性及び一般道路における通常走行の安全性を向上させる。
【解決手段】補助輪7による車両直進時に、地面に対して補助輪支持軸9の鉛直上になるように設けられた回転軸13を、複動型油圧シリンダ装置により回転させることにより、接地及び接地解除が可能な補助輪7を、回動軸10により回動させる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7