(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において「フィルム」や「シート」は、厚みによって区別されないものとする。換言すると、本明細書の「シート」は、厚みの薄いフィルム状のものも含まれ、本明細書の「フィルム」は、厚みのあるシート状のものも含まれるものとする。
また、本明細書において、「(メタ)アクリル系共重合体」は、「アクリル系共重合体」、「メタクリル系共重合体」、「アクリル系−メタクリル系共重合体」を包含する意であり、「(メタ)アクリロイル」は、「アクリロイル」、「メタクリロイル」を包含する意であり、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」「メタクリル」を包含する意である。また、被着体は、樹脂層が形成された基材を貼り合わせる相手方をいう。
【0013】
本発明のアンカーコート剤は、複素環含有樹脂(A)と、硬化剤(B)とを含み、前記複素環が炭素−炭素二重結合を有する。アンカーコート剤は、基材上に塗工して樹脂層を形成する。そして、樹脂層付基材は、被着体と貼り合わせることで高い剥離強度が得られる。被着体は、各種プラスチック素材が好ましいところ、太陽電池封止材に用いられるEVAやポリオレフィンフィルムであることが好ましい。
【0014】
本発明で用いる複素環含有樹脂(A)(以下「樹脂(A)」という。)は、複素環を有する樹脂であり、複素環内に炭素−炭素二重結合を有する樹脂である。樹脂(A)と硬化剤を配合したアンカーコート剤は、被着体と加熱圧着する際にラジカル架橋する被着体(例えば、太陽電池封止材のEVAシート)との剥離強度に優れることに加え、保存安定性にも優れるという驚くべき効果を有する。
【0015】
本発明のアンカーコート剤が被着体との剥離強度と保存安定性を両立できる要因は、樹脂(A)の、環内に炭素−炭素二重結合を有する複素環(ヘテロ環ともいう)は、従来のエチレン性不飽和二重結合と比較して反応性が低いため、保管時に光や熱などによって増粘や、ゲル化することが少ない。一方、環内に炭素−炭素二重結合を有する複素環は、ラジカル架橋性を有するため前記EVAシートのようなラジカル架橋性の被着体とは十分に反応して良好な剥離強度が得られる。このように樹脂(A)を含むことアンカーコート剤は、保存安定性と剥離強度を両立している。
【0016】
炭素−炭素二重結合を有する複素環は、例えばピロール、フラン、チオフェン、ピリジン、アゼピン、オキセピン、チエピン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、チアゾール等が挙げられる。これらの中でも5員環の複素環が好ましく、フランがより好ましい。
【0017】
樹脂(A)の種類としては、例えば(メタ)アクリル系樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリオレフィン等が好ましい。
【0018】
(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル系モノマーを重合することで合成できる。(メタ)アクリル系モノマーは、例えば(メタ)アクリル酸アルキルエステル、水酸基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー、グリシジル基含有モノマー、その他ビニルモノマーが挙げられる。
【0019】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ノルマルブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0020】
水酸基含有モノマーは、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0021】
カルボキシル基含有モノマーは、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸等が挙げられる。
【0022】
グリシジル基含有モノマーは、例えばアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0023】
その他ビニルモノマーは、例えば酢酸ビニル、無水マレイン酸、ビニルエーテル、プロピオン酸ビニル、スチレン等の(メタ)アクリル系モノマーと共重合可能なモノマーが挙げられる。
【0024】
(メタ)アクリル系モノマーを重合する方法は、通常のラジカル重合、例えば、溶液重合、塊状重合、乳化重合等の公知の重合法が使用できる。これらの方法の中でも溶液重合が好ましい。重合反応に使用する重合開始剤は、有機過酸化物、アゾ系開始剤等が好ましい。有機過酸化物は、例えばベンゾイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等が挙げられる。アゾ系開始剤は、例えばアゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
【0025】
ポリエステルは、カルボン酸成分と水酸基成分とを常法に従い反応(エステル化反応、エステル交換反応)させて合成できる。
前記カルボン酸成分は、例えば安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、無水コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、テトラクロル無水フタル酸、1、4−シクロヘキサンジカルボン酸、無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸無水物、無水ピロメリット酸、ε−カプロラクトン、脂肪酸等が挙げられる。
【0026】
前記水酸基成分は、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1、3−ブチレングリコール、1、6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、3−メチルペンタンジオール、1、4−シクロヘキサンジメタノール等のジオール成分の他、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の多官能アルコールが挙げられる。
【0027】
ポリウレタンは、イソシアネート化合物と水酸基成分を常法に従い反応させることで合成できる。
【0028】
前記イソシアネート化合物は、例えばトリメチレンジイソシアネート(TDI)、ヘキ
サメチレンジイソシアネート(HDI)、メチレンビス(4、1−フェニレン)=ジイソシアネート(MDI)、3−イソシアネートメチル−3、5、5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)等のジイソシアネート、ならびにこれらジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ならびにこれらジイソシアネートの三量体であるイソシアヌレート体、ならびにこれらジイソシアネートのビューレット結合体、ポリメリックジイソシアネート等が挙げられる。
【0029】
ポリウレタンを構成する水酸基成分は、例えばポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ならびにこれらのポリオールとジイソシアネートとの反応物であるポリウレタンポリオール等が挙げられる。
【0030】
ポリエステルポリオールは、例えば前記ポリエステルで説明した中の分子末端に水酸基を有するポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0031】
ポリエーテルポリオールは、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコールのような2個以上の水酸基を有する化合物や水などを開始剤として用いて、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン等のオキシラン化合物を重合させて合成したポリエーテルポリオール等が挙げられる。具体的にはポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の官能基数が2
以上の化合物が挙げられる。
【0032】
ポリカーボネートポリオールは、例えば、(1)エチレングリコール、プロピレングリコールのような2個以上の水酸基を有する化合物と炭酸エステルとの反応生成物、(2)エチレングリコール、プロピレングリコールのような2個以上の水酸基を有する化合物にアルカリの存在下でホスゲンを反応させた化合物等が挙げられる。
【0033】
前記(1)の製法で用いる炭酸エステルは、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等が挙げられる。
【0034】
ポリウレタンを合成する際に公知の触媒を使用できる。触媒は、例えば三級アミン系化合物、有機金属系化合物等が挙げられる。
【0035】
三級アミン系化合物は、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N, N
−ジメチルベンジルアミン、N−メチルモルホリン、1,8−ジアザビシクロ−(5,4,0)−ウンデセン−7(DBU)等が挙げられる。
【0036】
有機金属系化合物は、例えば、錫系化合物、非錫系化合物を挙げることができる。
錫系化合物は、例えばジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジブロマイド、ジブチル錫ジマレエート、ジブチル錫ジラウレート(DBTDL)、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫スルファイド、トリブチル錫スルファイド、トリブチル錫オキサイド、トリブチル錫アセテート、トリエチル錫エトキサイド、トリブチル錫エトキサイド、ジオクチル錫オキサイド、トリブチル錫クロライド、トリブチル錫トリクロロアセテート、2−エチルヘキサン酸錫等が挙げられる。
【0037】
非錫系化合物は、例えばジブチルチタニウムジクロライド、テトラブチルチタネート、ブトキシチタニウムトリクロライドなどのチタン系、オレイン酸鉛、2−エチルヘキサン酸鉛、安息香酸鉛、ナフテン酸鉛などの鉛系、2−エチルヘキサン酸鉄、鉄アセチルアセトネートなどの鉄系、安息香酸コバルト、2−エチルヘキサン酸コバルトなどのコバルト系、ナフテン酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛などの亜鉛系、ナフテン酸ジルコニウム
等が挙げられる。
【0038】
ポリオレフィンは、エチレン性モノマーを、ラジカル重合する公知の方法で合成できる。ポリオレフィンは、ホモポリマーであってもよいし、コポリマー(共重合体)であってもよく、コポリマー(共重合体)であることが好ましい。
【0039】
エチレン性モノマーは、例えばエチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブチレン、2−ブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン等のオレフィン;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシプロピルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル等のビニルエーテル;酢酸ビニル、カプロン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、シクロヘキシルカルボン酸ビニル等のビニルエステル等が挙げられる。エチレン性モノマーは、単独または2種類以上を併用できる。
【0040】
ポリオレフィンの市販品は、例えば、「ユニストール」(三井化学社製)、「アウローレン」(日本製紙ケミカル社製)等が挙げられる。
【0041】
樹脂(A)は、例えば、公知の方法で樹脂に水酸基と反応可能な官能基を付与し、前記官能基に炭素−炭素二重結合を有する複素環および水酸基を有する化合物(a)と反応させることで合成できる。なお、本発明では、合計経路の関係なく樹脂(A)を使用することが重要であるので、下記合成方法に限定されないことはいうまでもない。
【0042】
前記水酸基と反応可能な官能基は、例えばイソシアネート基等が好ましい。
【0043】
(メタ)アクリル系樹脂にイソシアネート基を導入する方法としては、例えば(メタ)アクリル系モノマーとしてイソシアネート基を有する(メタ)アクリル系モノマーを使用する方法が挙げられる。イソシアネート基を有する(メタ)アクリル系モノマーとしては、2−イソシアナトエチルアクリレート、2−イソシアナトエチルメタクリレート等が挙げられる。前記モノマーの市販品は、昭和電工社製のカレンズAOI、カレンズMOIなどがある。
【0044】
ポリエステルにイソシアネート基を導入する方法としては、例えばカルボン酸成分と水酸基成分とを反応させてポリエステルを得る際に水酸基成分を過剰にすることで末端が水酸基のポリエステルを得、さらに末端水酸基と当量のジイソシアネートを付加する方法が挙げられる。
【0045】
ポリウレタンにイソシアネート基を導入する方法としては、例えばイソシアネート化合物と水酸基成分を反応させてポリウレタンを得る際に、イソシアネート化合物の量を過剰にすることで末端がイソシアネート基のポリウレタンを得ることができる。
【0046】
炭素−炭素二重結合を有する複素環および水酸基を有する化合物(a)としては、例えば2−フランメタノール(2−フリルメタノール)、3−フランメタノール、2−チオフェンメタノール、3−チオフェンメタノール等が挙げられる。
【0047】
ポリオレフィンに炭素−炭素二重結合を有する複素環を含有させる方法としては、例えば無水マレイン酸変性ポリオレフィンに炭素−炭素二重結合を有する複素環および水酸基を有する化合物(a)を反応させることで合成できる。
【0048】
(メタ)アクリル系樹脂に炭素−炭素二重結合を有する複素環を含有させる他の方法としては、(メタ)アクリル系モノマーに加え、フリル基を有するモノマーを共重合させることで合成できる。この方法は、合成の反応プロセスを少なくできる点で優れている。
【0049】
フリル基を有するモノマーとしては、例えばフルフリルメタクリレート、フルフリルビニルエーテル、フルフリルアリルエーテル等が挙げられる。これらの中でもモノマーの安定性や重合性の観点からフルフリルメタクリレートが好ましい。
【0050】
本発明において樹脂(A)の重量平均分子量は、10,000〜1,000,000が好ましく、20,000〜750,000がより好ましく、30,000〜500,000がさらに好ましい。樹脂(A)の重量平均分子量が1,000,000以下になるとアンカーコート剤の塗工性がより向上する。また重量平均分子量が10,000以上になるとアンカーコート剤の耐湿熱試験後の剥離強度がより向上する。
【0051】
なお、重量平均分子量は、樹脂(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算の値である。例えば、カラム(昭和電社製KF−805L、KF−803L、及びKF−802)の温度を40℃として、溶離液としてTHFを用い、流速を0.2ml/minとし、検出をRI、試料濃度を0.02%とし、標準試料と
してポリスチレンを用いて行ったものである。本発明の重量平均分子量は、上記の方法により測定した値を記載している。
【0052】
樹脂(A)中が炭素−炭素二重結合を有する複素環の量は、複素環全体を官能基とした場合、官能基当量50,000以下が好ましく、40,000以下がより好ましく、30,000以下がさらに好ましい。官能基当量が50,000以上になると被着体への密着性がより向上する。
【0053】
本発明において官能基当量とは、[樹脂(A)の重量平均分子量]÷[樹脂(A)が有する官能基の個数]で計算される。換言すると、官能基一つあたりの樹脂(A)の重量平均分子量である。例えば、重量平均分子量が50,000、官能基の個数が20であれば、この官能基当量は2,500と計算できる。樹脂(A)の重量平均分子量は先述した方法で測定することができる。
【0054】
樹脂(A)のガラス転移温度は−20〜100℃が好ましく、0〜90℃がより好ましく、20〜80℃がさらに好ましい。樹脂(A)のガラス転移温度が100℃以下になると基材への接着力がより向上する。また、ガラス転移温度が−20℃以上になると塗布物同士のブロッキングを抑制し易い。
【0055】
なお、ガラス転移温度とは、樹脂(A)を乾燥させて不揮発分100%にした樹脂について、示差走査熱量分析(DSC)によって計測したガラス転移温度のことを示す。例えば、ガラス転移温度は、試料約10mgを秤量したサンプルを入れたアルミニウムパンと、試料を入れていないアルミニウムパンとをDSC装置にセットし、これを窒素気流中で、液体窒素を用いて−100℃まで急冷処理し、その後、20℃/分で200℃まで昇温し、DSC曲線をプロットする。このDSC曲線の低温側のベースライン(試験片に転移および反応を生じない温度領域のDSC曲線部分)を高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線の勾配が最大になるような点で引いた接線との交点から、補外ガラス転移開始温度(Tig)を求め、これをガラス転移温度として求めることができる。本発明のガラス転移温度は、上記の方法により測定した値を記載している。
【0056】
樹脂(A)は、硬化剤(B)と架橋可能な官能基を有することが好ましい。
前記官能基が水酸基である場合、樹脂(A)の水酸基価は0.1〜100(mgKOH
/g)が好ましく、1〜50(mgKOH/g)がより好ましく、2〜30(mgKOH/g)がさらに好ましい。水酸基価が100(mgKOH/g)以下になると基材への接着性がより向上する。また、水酸基価が0.1(mgKOH/g)以上になると湿熱試験後の剥離強度の低下を抑制し易い。
また、前記官能基がカルボキシル基である場合、樹脂(A)の酸価は0.1〜100(mgKOH/g)が好ましく、1〜50(mgKOH/g)がより好ましく、2〜30(mgKOH/g)がさらに好ましい。酸価が100(mgKOH/g)以下になると基材への接着性がより向上する。また、酸価が0.1(mgKOH/g)以上になると湿熱試験後の剥離強度の低下を抑制し易い。
【0057】
本発明で用いる硬化剤(B)は、樹脂(A)に含まれる官能基に結合(反応)する官能基を二つ以上有する化合物であれば良く限定されない。硬化剤(B)が樹脂(A)を架橋させることで耐久性の向上、および基材への密着性が向上する。
【0058】
硬化剤(B)は、例えば、樹脂(A)が水酸基、カルボキシル基などの反応性官能基を含有する場合、これらの官能基と反応する化合物が好ましい。硬化剤(B)は、例えば、イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤、金属キレート系硬化剤、アジリジン系硬化剤、オキサゾリン系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤等が挙げられる。これらの中でも、イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤が好ましく、イソシアネート系硬化剤がより好ましい。
【0059】
イソシアネート系硬化剤は、ジイソシアネート化合物として、例えば1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、2,4,6−トリイソシアネートトルエン、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0060】
また、上記ジイソシアネート化合物とトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、上記ジイソシアネート化合物のビュレット体、上記ジイソシアネート化合物のイソシアヌレート体、更にはイソシアネート化合物と公知のポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等とのアダクト体等、3官能以上のイソシアネート系硬化剤が挙げられる。これらの中でもヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のイソシアヌレート体、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)のイソシアヌレート体が好ましい。
【0061】
また、イソシアネート系硬化剤としてブロックイソシアネート系硬化剤を使用することも好ましい。これにより耐湿熱試験後の剥離強度がより向上する。
本発明のアンカーコート剤を太陽電池用保護シート用途で使用する場合、イソシアネート化合物は、ブロック化イソシアネート化合物であることが好ましい。
【0062】
ブロックイソシアネート系硬化剤のブロック化剤としては、例えばフェノール、チオフェノール、メチルチオフェノール、キシレノール、クレゾール、レゾルシノール、ニトロフェノール、クロロフェノール等のフェノール;アセトンオキシム、メチルエチルケトンオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム;メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール、t−ペンタノール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ベンジルアルコールなどのアルコール;3,5−ジメチルピラゾール、1,2−ピラゾール等のピラゾール;1,2,4−トリアゾール等のトリアゾール;エチレンクロルヒドリン、1,3−ジクロロ−2−プロパノール等のハロゲン置換アルコール;ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピルラクタム等のラクタム類、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン、マロン酸メチル、マロン酸エチル等の活性メチレン化合物等が挙げられる。その他にもアミン、イミド、メルカプタン、イミン、尿素、ジアリール等も挙げられる。ブロック化剤は、単独または2種類以上を併用できる。
ブロック剤の解離温度は、80〜150℃が好ましく、90〜140℃がより好ましい。ブロック剤は、例えばメチルエチルケトンオキシム(解離温度:140℃、以下同様)、3,5−ジメチルピラゾール(120℃)、ジイソプロピルアミン(120℃)等がより好ましい。
【0063】
本発明のアンカーコート剤は、さらに粒子(有機系粒子、無機系粒子)を含有できる。粒子を含むことで、樹脂層のタックを抑制できる。無機系粒子は、基材への密着性が向上するため好ましい。無機粒子の中でも、タルク、ハイドロタルサイト、マイカ、カオリンがより好ましい。
【0064】
有機系粒子は、例えば、ポリスチレン、ナイロン(登録商標)樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、シリコン樹脂、メタクリレート樹脂、アクリレート樹脂などのポリマー粒子;セルロースパウダー、ニトロセルロースパウダー、木粉、古紙粉、籾殻粉、澱粉等が挙げられる。
【0065】
前記ポリマー粒子は、乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法、ソープフリー重合法、シード重合法、マイクロサスペンジョン重合法などの重合法により得ることができる。
ポリマー粒子は、融点もしくは軟化点が150℃以上の粒子が好ましい。融点もしくは軟化点が150℃以上になることで、樹脂層形成時に熱で軟化しにくいので、ブロッキング性を抑制し易い。
【0066】
無機系粒子は、例えばマグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、ジルコニウム、モリブデン、ケイ素、アンチモン、チタン等の金属の酸化物、ならびにその水酸化物、ならびにその硫酸塩、ならびにその炭酸塩、ならびにそのケイ酸塩等が挙げられる。無機系粒子は、例えば、シリカゲル、酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、鉛酸化物、珪藻土、ゼオライト、アルミノシリケート、タルク、ホワイトカーボン、マイカ、ガラス繊維、ガラス粉末、ガラスビーズ、クレー、ワラスナイト、酸化鉄、酸化アンチモン、酸化チタン、リトポン、軽石粉、硫酸アルミニウム、ケイ酸ジルコニウム、炭酸バリウム、ドロマイト、二硫化モリブデン、砂鉄、カーボンブラック等が挙げられる。
【0067】
粒子は、単独または2種類以上を併用できる。
【0068】
また、アンカーコート剤には、課題を解決できる範囲内であれば、さらに架橋促進剤を添加できる。架橋促進剤は、樹脂(A)と硬化剤(B)の反応を促進する触媒としての役割を果たす。架橋促進剤は、スズ化合物、金属塩、塩基などが挙げられ、具体的にはオクチル酸スズ、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、塩化スズ、オクチル酸鉄、オクチル酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン等が挙げられる。
架橋促進剤は、単独または2種類以上を併用できる。
【0069】
また、アンカーコート剤には、課題を解決できる範囲内であれば、さらに顔料を添加できる。顔料は、無機顔料よび有機顔料が挙げられる。
無機顔料は、例えばカーボンブラック、酸化チタン、炭酸カルシウム等が挙げられる。
有機顔料は、例えばトルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザエロー、ベンジジンエロー、ピラゾロンレッド等の不溶性アゾ顔料;リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2B等の溶性アゾ顔料;アリザリン、インダントロン、チオインジゴマルーン等の建染染料からの誘導体;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系有機顔料;キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタ等のキナクリドン系有機顔料;ペリレンレッド、ペリレンスカーレット等のペリレン系有機顔料;イソインドリノンエロー、イソインドリノンオレンジ等のイソインドリノン系有機顔料;ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジ等のピランスロン系有機顔料、チオインジゴ系有機顔料、縮合アゾ系有機顔料、ベンズイミダゾロン系有機顔料、キノフタロンエロー等のキノフタロン系有機顔料;イソインドリンエロー等のイソインドリン系有機顔料:その他の顔料として、フラバンスロンエロー、アシルアミドエロー、ニッケルアゾエロー、銅アゾメチンエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ジオキサジンバイオレット等が挙げられる。
【0070】
顔料を使用する場合は、同時に分散剤を添加することが好ましい。これにより顔料の分散性の向上、およびアンカーコート剤の保存安定性を向上できる。
【0071】
分散剤としては、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ステアリルアミンアセテート等が挙げられる。
【0072】
また、本発明のアンカーコート剤に、エポキシ樹脂(Ep)を添加することにより、耐湿熱性向上の効果を期待できる。エポキシ樹脂の添加量は、樹脂(A)100部に対して0.1〜70重量部が好ましく、0.5〜60重量部がより好ましく、1〜50重量部がさらに好ましい。
【0073】
エポキシ樹脂は、例えばグリシジルエーテル化合物、グリシジルエステル化合物等が挙げられる。
【0074】
グリシジルエーテル化合物としては、例えばビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0075】
ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0076】
ノボラック型エポキシ樹脂としては、例えばフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格含有フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有フェノールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0077】
グリシジルエステル化合物としては、例えばテレフタル酸ジグリシジルエステルなどが挙げられる。
エポキシ樹脂は、単独または2種類以上を併用できる。
【0078】
本発明のアンカーコート剤は、溶剤を添加できる。
溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル等のアルコール;
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン;
テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル;、
ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の炭化水素類、
ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等の芳香族;
酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル等が挙げられる。これらの中でも沸点が50℃〜200℃の溶剤が好ましい。沸点が50以上によると塗工で均一な厚さの樹脂層を形成し易い。また、沸点が200℃以下になると塗工の際の乾燥性がより向上する。
溶剤は単独または2種類以上を併用できる。
【0079】
本発明のアンカーコート剤には、必要に応じて、充填剤、チクソトロピー付与剤、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、熱伝導性改良剤、可塑剤、ダレ防止剤、防汚剤、防腐剤、殺菌剤、消泡剤、レベリング剤、硬化剤、増粘剤、顔料分散剤、シランカップリング剤等の各種の添加剤を添加してもよい。
【0080】
本発明の塗工物は、基材と、アンカーコート剤を含む樹脂層とを備えている。樹脂層は、アンカーコート剤と塗工することで形成できる。
【0081】
アンカーコート剤を、基材に塗工する方法としては、従来公知の方法を用いることができる。塗工方法(塗工装置)は、例えばコンマコーティング、グラビアコーティング、リバースコーティング、ロールコーティング、リップコーティング、スプレーコーティング等が挙げられる。塗工の際に加熱乾燥を行うことが好ましい。
【0082】
基材は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリシクロペンタジエンなどのオレフィンフィルム、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、エチレン‐テトラフルオロエチレン共重合体フィルム等のフッ素系フィルム;、アクリルフィルム、トリアセチルセルロースフィルム等のプラスチックフィルムが挙げられる。その他、例えばガラス板などの剛直な基材(板材)に塗工しても良い。また、基材は2層以上の複層構造でも良く、金属酸化物や非金属無機酸化物を蒸着した蒸着フィルムが積層されていても良い。さらに、基材は透明であっても着色されていても良い。
基材の厚みは、通常10〜300μm程度である。
【0083】
樹脂層の厚みは、通常0.1〜30μm程度である。
【0084】
本発明の塗工物は、多くの実施態様があるところ、太陽電池モジュールを構成する保護シート(前面保護シートまたは裏面保護シート)として使用することが好ましい。
【0085】
保護シートとして使用する場合、例えば太陽電池モジュールを製造する際に太陽電池封止材のEVAシート面と保護シートが加熱圧着されて両者が密着する。加熱圧着条件としては、例えば140℃〜170℃で3〜10分間程度真空脱泡し、その後温度を維持したまま大気圧で10〜50分間程度圧着する。加熱圧着後、必要に応じて100〜200℃オーブンに入れて5〜60分程度の加熱を行っても良い。
【0086】
次に太陽電池モジュールについて説明する。
太陽電池モジュールの代表的な構成は、
図1の断面図に示すように、太陽電池素子3に対し、太陽電池素子3の受光面側に位置する太陽電池表面保護材1を太陽電池セルの受光面側に位置する封止材2を介して積層し、保護シート5を太陽電池セルの非受光面側に位置する封止材4を介して積層し、加熱圧着することによって得ることができる。
【0087】
太陽電池表面保護材1としては、ガラス板、ポリカーボネートやポリアクリレートのプラスチック板などを挙げることができる
【0088】
封止材2および封止材4は、EVAやオレフィンフィルム等が好ましい。これらの封止材には耐候性向上のための紫外線吸収剤、光安定剤や、封止材自身を架橋させるための有機過酸化物などの添加剤が含まれていても良い。
【0089】
太陽電池素子3としては、結晶シリコン、アモルファスシリコン、銅インジウムセレナイドに代表される化合物半導体などの光電変換層に電極を設けた素子が挙げられる。前記素子はガラス等の基板上に形成されていても良い。
【0090】
本発明のアンカーコート剤は、太陽電池保護シート用途のみでなく、さまざまな被着体と基材との剥離強度を向上するために使用することができる。具体的に、本発明のアンカーコート剤が剥離強度を向上できると考えられる被着体としては、例えばUV硬化型印刷インキやUV硬化型ハードコート剤などが挙げられる。
【0091】
本発明のアンカーコート剤がこれらの被着体との剥離強度を向上できるメカニズムは、樹脂(A)がラジカル架橋性を有しているので、これらの被着体にUV照射してラジカル架橋させる際に被着体とアンカーコート剤が化学架橋を形成するためと推測している。
【実施例】
【0092】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例によって限定されるものではない。なお、実施例中、部は重量部を示し、%は重量%を示す。
【0093】
ガラス転移温度、水酸基価は、下記の通り測定した。
【0094】
<ガラス転移温度(Tg)の測定>
ガラス転移温度の測定は、前述した示差走査熱量測定(DSC)法により求めた。
なお、Tg測定用の試料は、測定する樹脂溶液を150℃で約15分、加熱し、乾固させた不揮発分を用いた。
【0095】
<酸価の測定>
共栓三角フラスコ中に試料(樹脂の溶液:約50%)約1gを精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液100mlを加えて溶解する。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間保持する。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定する。酸価は次式により求めた。酸価は樹脂の乾燥状態の数値とした(単位:mgKOH/g)。
酸価(mgKOH/g)={(5.611×a×F)/S}/(不揮発分濃度/100)
ただし、S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
【0096】
<水酸基価の測定>
共栓三角フラスコ中に試料約1gを精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液100mlを加えて溶解する。更にアセチル化剤(無水酢酸25gをピリジンで溶解し、容量100mlとした溶液)を正確に5ml加え、約1時間攪拌した。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間持続する。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.5Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定する。
水酸基価は次式により求めた。水酸基価は樹脂の乾燥状態の数値とした(単位:mgKOH/g)。
水酸基価(mgKOH/g)=[{(b−a)×F×28.05}/S]/(不揮発分濃度/100)+D
ただし、S:試料の採取量(g)
a:0.5Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
b:空実験の0.5Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
F:0.5Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
D:酸価(mgKOH/g)
【0097】
<合成例1(メタ)アクリル系樹脂A1溶液>
冷却管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコにトルエン50部、メチルエチルケトン50部を仕込み、窒素雰囲気下で100℃に昇温した。次にメチルメタクリレート10部、シクロヘキシルメタクリレート10部、n−ブチルメタクリレート71部、フルフリルメタクリレート5部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート4部、アゾビスイソブチロニトリル0.25部を含むモノマー液を滴下ロートに仕込み、モノマー液を2時間かけて連続滴下した。続いて、フラスコ中にアゾビスイソブチロニトリル0.25部を3分割して1時間ごとに添加して重合反応を行い、さらに1時間反応を継続した。反応終了後、冷却を行い重量平均分子量が82,000、水酸基価が17.0(mgKOH/g)、酸価が0(mgKOH/g)、Tgが36℃、フリル基の官能基当量が3323、不揮発分50%の(メタ)アクリル系共重合体A1溶液を得た。
【0098】
<合成例2(メタ)アクリル系樹脂A2溶液>
冷却管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコにトルエン50部、メチルエチルケトン50部を仕込み、窒素雰囲気下で100℃に昇温した。次にn−ブチルメタクリレート60部、t−ブチルメタクリレート24部、フルフリルメタクリレート10部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート6部、アゾビスイソブチロニトリル0.5部を含むモノマー液を滴下ロートに仕込み、モノマー液を2時間かけて連続滴下した。続いて、フラスコ中にアゾビスイソブチロニトリルを0.25部を3分割して1時間ごとに添加して重合反応を行い、さらに1時間反応を継続した。反応終了後、冷却を行い重量平均分子量が55,000、水酸基価が25.9(mgKOH/g)、酸価が0(mgKOH/g)、Tgが45℃、フリル基の官能基当量が1662、不揮発分50%の(メタ)ア
クリル系共重合体A2溶液を得た。
【0099】
<合成例3(メタ)アクリル系樹脂A3溶液>
冷却管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコにトルエン50部、メチルエチルケトン50部を仕込み、窒素雰囲気下で100℃に昇温した。次にメチルメタクリレート18部、シクロヘキシルメタクリレート10部、n−ブチルメタクリレート40部、フルフリルメタクリレート30部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート2部、アゾビスイソブチロニトリル0.20部を含むモノマー液を滴下ロートに仕込み、モノマー液を2時間かけて連続滴下した。続いて、フラスコ中にアゾビスイソブチロニトリルを0.25部を3分割して1時間ごとに添加して重合反応を行い、さらに1時間反応を継続した。反応終了後、冷却を行い、重量平均分子量が123,000、水酸基価が8.9(mgKOH/g)、酸価が0(mgKOH/g)、Tgが51℃、フリル基の官能基当量が554、不揮発分50%の(メタ)アクリル系共重合体A3溶液を得た。
【0100】
<合成例4(メタ)アクリル系樹脂A4溶液>
冷却管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコにトルエン50部、メチルエチルケトン50部を仕込み、窒素雰囲気下で100℃に昇温した。次にシクロヘキシルメタクリレート20部、n−ブチルメタクリレート20部、フルフリルメタクリレート50部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10部、アゾビスイソブチロニトリル0.20部を含むモノマー液を滴下ロートに仕込み、モノマー液を2時間かけて連続滴下した。続いて、フラスコ中に、アゾビスイソブチロニトリルを0.25部を3分割して1時間ごとに添加して重合反応を行い、さらに1時間反応を継続した。反応終了後、冷却を行い、重量平均分子量が134,000、水酸基価が43.4(mgKOH/g)、酸価が0(mgKOH/g)、Tgが55℃、フリル基の官能基当量が332、不揮発分50%の(メタ)アクリル系共重合体A4溶液を得た。
【0101】
<合成例5(メタ)アクリル系樹脂A5溶液>
冷却管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコにトルエン50部、メチルエチルケトン50部を仕込み、窒素雰囲気下で100℃に昇温した。次にn−ブチルメタクリレート5部、フルフリルメタクリレート90部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート5部、アゾビスイソブチロニトリル0.15部を含むモノマー液を滴下ロートに仕込み、モノマー液を2時間かけて連続滴下した。続いて、フラスコ中に、アゾビスイソブチロニトリルを0.25部を3分割して1時間ごとに添加して重合反応を行い、さらに1時間反応を継続した。反応終了後、冷却を行い、重量平均分子量が178,000、水酸基価が22.1(mgKOH/g)、酸価が0(mgKOH/g)、Tgが57℃、フリル基の官能基当量が185、不揮発分50%の(メタ)アクリル系共重合体A5溶液を得た。
【0102】
<合成例6(メタ)アクリル系樹脂A6溶液>
冷却管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコにトルエン50部、メチルエチルケトン50部を仕込み、窒素雰囲気下で100℃に昇温した。次にメタクリル酸5部、メチルメタクリレート10部、シクロヘキシルメタクリレート10部、n−ブチルメタクリレート65部、2−イソシアナトエチルメタクリレート10部、アゾビスイソブチロニトリル0.15部を含むモノマー液を滴下ロートに仕込み、モノマー液を2時間かけて連続滴下した。続いて、フラスコ中に、アゾビスイソブチロニトリルを0.25部を3分割して1時間ごとに添加して重合反応を行い、さらに1時間撹拌して重合させた。次いで、フルフリルアルコール6.3部、ジブチルスズジラウレート0.03部を加え、40℃で撹拌しながら2時間かけて反応させた。IRでイソシアネートピーク(2260cm−1)が消失したことを確認し、重量平均分子量が152,000、水酸基価が0(mgKOH/g)、酸価が29.0(mgKOH/g)、Tgが43℃、フリル基の官能
基当量が1650、不揮発分50%の(メタ)アクリル系共重合体A6溶液を得た。
【0103】
<合成例7(メタ)アクリル系樹脂A7溶液>
冷却管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコにトルエン50部、メチルエチルケトン50部を仕込み、窒素雰囲気下で100℃に昇温した。次にメチルメタクリレート10部、シクロヘキシルメタクリレート15部、n−ブチルメタクリレート60部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート15部、アゾビスイソブチロニトリル0.15部を含むモノマー液を滴下ロートに仕込み、モノマー液を2時間かけて連続滴下した。続いて、フラスコ中に、アゾビスイソブチロニトリルを0.25部を3分割して1時間ごとに添加して重合反応を行い、さらに1時間撹拌して重合させた。次いで、イソホロンジイソシアネートの一級イソシアネート基に2−チオフェンメタノールを付加した化合物(分子量336.46)25.9部、ジブチルスズジラウレート0.03部を加え、60℃で撹拌しながら5時間かけて反応させた。IRでイソシアネートピーク(2260cm−1)が消失したことを確認し、重量平均分子量が166,000、水酸基価が17.0(mgKOH/g)、酸価が0(mgKOH/g)、Tgが20℃、チエニル基の官能基当量が1638、不揮発分50%の(メタ)アクリル系共重合体A7溶液を得た。
【0104】
<合成例8(メタ)アクリル系樹脂A8溶液>
冷却管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコにトルエン50部、メチルエチルケトン50部を仕込み、窒素雰囲気下で100℃に昇温した。次にメチルメタクリレート10部、シクロヘキシルメタクリレート15部、n−ブチルメタクリレート60部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート15部、アゾビスイソブチロニトリル0.15部を含むモノマー液を滴下ロートに仕込み、モノマー液を2時間かけて連続滴下した。続いて、フラスコ中に、アゾビスイソブチロニトリルを0.25部を3分割して1時間ごとに添加して重合反応を行い、さらに1時間撹拌して重合させた。次いで、イソホロンジイソシアネートの一級イソシアネート基に3−ピリジンメタノールを付加した化合物(分子量331.42)25.5部、ジブチルスズジラウレート0.03部を加え、60℃で撹拌しながら5時間かけて反応させた。IRでイソシアネートピーク(2260cm−1)が消失したことを確認し、重量平均分子量が181,000、水酸基価が18.1(mgKOH/g)、酸価が0(mgKOH/g)、Tgが23℃、ピリジル基の官能基当量が1633、不揮発分50%の(メタ)アクリル系共重合体A8溶液を得た。
【0105】
<合成例9(メタ)アクリル系樹脂A9溶液>
冷却管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコにトルエン50部、メチルエチルケトン49.33部を仕込み、窒素雰囲気下で100℃に昇温した。次にメチルメタクリレート5部、シクロヘキシルメタクリレート10部、n−ブチルメタクリレート60部、t−ブチルメタクリレート19部、フルフリルメタクリレート0.34部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート5部、アゾビスイソブチロニトリル0.25部を含むモノマー液を滴下ロートに仕込み、モノマー液を2時間かけて連続滴下した。続いて、フラスコ中に、アゾビスイソブチロニトリルを0.25部を3分割して1時間ごとに添加して重合反応を行い、さらに1時間反応を継続した。反応終了後、冷却を行い、重量平均分子量が78,000、水酸基価が21.7(mgKOH/g)、酸価が0(mgKOH/g)、Tgが46℃、フリル基の官能基当量が48551、不揮発分50%の(メタ)アクリル系共重合体A9溶液を得た。
【0106】
<合成例10(メタ)アクリル系樹脂A21溶液>
冷却管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコにトルエン50部、メチルエチルケトン50部を仕込み、窒素雰囲気下で100℃に昇温した。次にメチルメタクリレート10部、シクロヘキシルメタクリレート16部、n−ブチルメタクリレート70部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート2部、グリシジルメタクリレート2部、アゾ
ビスイソブチロニトリル0.15部を含むモノマー液を滴下ロートに仕込み、モノマー液を2時間かけて連続滴下した。続いて、フラスコ中に、アゾビスイソブチロニトリルを0.25部を3分割して1時間ごとに添加して重合反応を行い、さらに1時間撹拌して重合させた。
その後、ジメチルベンジルアミンを0.8部、アクリル酸を1部と重合禁止剤を添加し、100℃で15時間加熱撹拌した。酸価が2以下であることを確認した後、冷却を行い重量平均分子量が39,000、水酸基価が17.2(mgKOH/g)、酸価が0(mgKOH/g)、Tgが30℃、アクリロイル基の官能基当量が7278、不揮発分50%の(メタ)アクリル系共重合体A21溶液を得た。
【0107】
<合成例11(メタ)アクリル系樹脂A22溶液>
冷却管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコにトルエン50部、メチルエチルケトン50部を仕込み、窒素雰囲気下で100℃に昇温した。次にメチルメタクリレート10部、シクロヘキシルメタクリレート20部、ブチルアクリレート25部、n−ブチルメタクリレート5部、t−ブチルメタクリレート15部、テトラヒドロフルフリルメタクリレート20部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート5部、アゾビスイソブチロニトリル0.30部を含むモノマー液を滴下ロートに仕込み、モノマー液を2時間かけて連続滴下した。続いて、フラスコ中に、アゾビスイソブチロニトリルを0.25部を3分割して1時間ごとに添加して重合反応を行い、さらに1時間反応を継続した。反応終了後、冷却を行い、重量平均分子量が66,000、水酸基価が21.0(mgKOH/g)、酸価が0(mgKOH/g)、Tgが32℃、テトラヒドロフリル基の官能基当量が851、不揮発分50%の(メタ)アクリル系共重合体A22溶液を得た。
【0108】
<合成例12(メタ)アクリル系樹脂A23溶液>
冷却管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコにトルエン50部、メチルエチルケトン50部を仕込み、窒素雰囲気下で100℃に昇温した。次にメチルメタクリレート10部、シクロヘキシルメタクリレート20部、ブチルアクリレート25部、n−ブチルメタクリレート25部、t−ブチルメタクリレート15部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート5部、アゾビスイソブチロニトリル0.30部を含むモノマー液を滴下ロートに仕込み、モノマー液を2時間かけて連続滴下した。続いて、フラスコ中に、アゾビスイソブチロニトリルを0.25部を3分割して1時間ごとに添加して重合反応を行い、さらに1時間反応を継続した。反応終了後、冷却を行い、重量平均分子量が61,000、水酸基価が23.0(mgKOH/g)、酸価が0(mgKOH/g)、Tgが25℃、不揮発分50%の(メタ)アクリル系共重合体A23溶液を得た。
【0109】
<合成例13(メタ)アクリル系樹脂A24溶液>
撹拌機、還流冷却器、温度計および滴下層を取りつけた4つ口フラスコに、水90部を投入し、フラスコ中の温度を85℃に上げてから、過硫酸カリウム0.2部を添加した。次に、水50部、n−ブチルメタクリレート92部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート8部、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム(製品名:エレミノールCLS−20[三洋化成工業社製])の20%水溶液1.5部、およびポリオキシエチレンアルキルエーテル(製品名:エマルゲンE1118S−70[花王社製])の25%水溶液2部を混合した混合液を、フラスコ中へ滴下層より2時間かけて滴下した。滴下中はフラスコ中の温度を80℃に保った。滴下が終了してからフラスコ中の温度を85℃にして30分保持した。次に、フラスコ内の温度を62℃まで冷却し、t-ブチル
ヒドロペルオキシドの5%水溶液1部、イソアスコルビン酸ナトリウムの1%水溶液2部を続けて添加し、フラスコ内の温度を62℃で30分保持した。最後に、室温まで冷却し、25%アンモニア水を添加してpH8に調整してからナイロンメッシュでろ過し、水酸基価が34.4(mgKOH/g)、酸価が0(mgKOH/g)、Tgが21℃、不揮発分40%の(メタ)アクリル系共重合体A24溶液を得た。なお、A24は分子量が高
すぎて重量平均分子量が測定できなかった。
【0110】
<合成例14(メタ)アクリル系樹脂A25溶液>
冷却管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコにトルエン50部、メチルエチルケトン50部を仕込み、窒素雰囲気下で100℃に昇温した。次にシクロヘキシルメタクリレート86部、ブチルアクリレート5部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート9部、アゾビスイソブチロニトリル0.20部を含むモノマー液を滴下ロートに仕込み、モノマー液を2時間かけて連続滴下した。続いて、フラスコ中に、アゾビスイソブチロニトリルを0.25部を3分割して1時間ごとに添加して重合反応を行い、さらに1時間反応を継続した。その後、ジブチルスズジラウレートを0.03部添加し、2−イソシアナトエチルメタクリレート3.58部を40℃で撹拌しながら2時間かけて滴下した。IRでイソシアネートピーク(2260cm−1)が消失したことを確認した後、冷却を行い重量平均分子量が122,000、水酸基価が25.8(mgKOH/g)、酸価が0(mgKOH/g)、Tgが65℃、メタクリロイル基の官能基当量が4493、不揮発分50%の(メタ)アクリル系共重合体A25溶液を得た。
【0111】
<合成例15 ポリエステルP1溶液>
重合槽、攪拌機、温度計、水分離装置、還流冷却器、窒素導入管を備えた重合反応装置の重合槽に、テレフタル酸31部、イソフタル酸31部、アジピン酸5部、エチレングリコール21.5部、ネオペンチルグリコール9部、トリメチロールプロパン1.5部およびフルフリルアルコール1部を重合槽に仕込み、窒素気流下で攪拌しながら160〜240℃に加熱し、エステル交換反応を行なった。次いで重合槽を徐々に1〜2トールまで減圧し、所定の粘度となったところで減圧下での反応を終了し、重量平均分子量が62,0
00、水酸基価が7.2(mgKOH/g)、酸価が0(mgKOH/g)、Tgが28℃、フリル基の官能基当量が9810のポリエステルポリオールを得た。さらに、酢酸エチルで希釈して、不揮発分40%のポリエステルP1溶液を得た。
【0112】
<合成例16 ポリウレタンU1溶液>
冷却管、窒素導入管、撹拌装置、温度計、滴下ロートを備えた4つ口フラスコに、C−2090(クラレ社製、ポリカーボネートポリオール)130部、1,6−ヘキサンジオール10部、シクロヘキサンジメタノール10部、トリメチロールプロパン2部、イソホロンジイソシアネート51部、トルエン100部を仕込み、触媒としてジブチル錫ジラウレート0.03部を仕込み、100℃まで徐々に昇温して、3時間反応を行った。IR測定によりNCOピークがないことを確認した後、イソホロンジイソシアネートの一級イソシアネート基にフルフリルアルコールを付加した化合物(分子量320.39)を2.85部加え、4時間反応して付加させた。再度IR測定によりNCOピークがないことを確認した後、酢酸エチル106部を添加して冷却を行うことで、数平均分子量が39,00
0、水酸基価が4.1(mgKOH/g)、酸価が0(mgKOH/g)、Tgが20℃、フリル基の官能基当量が23162、不揮発分50%のポリウレタンU1溶液を得た。
【0113】
(メタ)アクリル系樹脂A1〜A9、ポリエステルP1、ポリウレタンU1、(メタ)アクリル系樹脂A21〜23の重量平均分子量、OH価、Tg、間の官能基当量を一覧にしたものを表1に示す。
【0114】
【表1】
【0115】
<イソシアネート硬化剤溶液B1>
MEKオキシムでブロックされた、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体および3,5−ジメチルピラゾールでブロックされた、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体を1:1の比率で含む、不揮発分75%の溶液をイソシアネート硬化剤溶液B1とした。
【0116】
<カルボジイミド硬化剤溶液B2>
カルボジライトV−03(日清紡ケミカル社製)をカルボジイミド硬化剤溶液B2とした。
【0117】
<アンカーコート剤溶液1>
(メタ)アクリル系樹脂A1溶液と、イソシアネート硬化剤溶液B1とをNCO/OHのモル比率が1.5となるように配合した溶液をアンカーコート剤溶液1とした。
【0118】
<アンカーコート剤溶液2〜5>
アンカーコート剤溶液1の(メタ)アクリル系樹脂A1を(メタ)アクリル系樹脂A2〜A5溶液に変更したこと以外は、アンカーコート剤溶液1と同様にしてそれぞれアンカーコート剤溶液2〜5を作成した。
【0119】
<アンカーコート剤溶液6>
(メタ)アクリル系樹脂A6溶液と、カルボジイミド硬化剤溶液B2を、カルボキシル基とカルボジイミド基のモル比率が1.5となるように配合した溶液をアンカーコート剤溶液6とした。
【0120】
<アンカーコート剤溶液7〜9>
アンカーコート剤溶液1の(メタ)アクリル系樹脂A1を(メタ)アクリル系樹脂A7〜A9溶液に変更したこと以外は、アンカーコート剤溶液1と同様にしてそれぞれアンカーコート剤溶液7〜9を作成した。
【0121】
<アンカーコート剤溶液10>
ポリエステルP1溶液と、イソシアネート硬化剤溶液B1をNCO/OHのモル比率が1.5となるように配合した溶液をアンカーコート剤溶液10とした。
【0122】
<アンカーコート剤溶液11>
ポリウレタンU1溶液と、イソシアネート硬化剤溶液B1をNCO/OHのモル比率が1.5となるように配合した溶液をアンカーコート剤溶液11とした。
【0123】
<アンカーコート剤溶液12>
(メタ)アクリル系樹脂A21溶液と、イソシアネート硬化剤溶液B1をNCO/OHのモル比率が1.5となるように配合した溶液をアンカーコート剤溶液12とした。
【0124】
<アンカーコート剤溶液13>
(メタ)アクリル系樹脂A22溶液と、イソシアネート硬化剤溶液B1をNCO/OHのモル比率が1.5となるように配合した溶液をアンカーコート剤溶液13とした。
【0125】
<アンカーコート剤溶液14>
(メタ)アクリル系樹脂A23溶液と、イソシアネート硬化剤溶液B1をNCO/OHのモル比率が1.5となるように配合した溶液をアンカーコート剤溶液14とした。
【0126】
<アンカーコート剤溶液15>
(メタ)アクリル系樹脂A24溶液と、オキサゾリン基含有ポリマーの溶液であるエポクロスK−2030E(日本触媒社製、Tg50℃、オキサゾリン基の官能基当量556)を不揮発分比で2:1の割合となるように配合し、ここにブロックイソシアネートの水分散体であるImprafix 2794XP(Bayer MaterialScience AG製)をNCO/OHのモル比率が1.5となるように配合した溶液をアンカーコート剤溶液15とした。
【0127】
<アンカーコート剤溶液16>
(メタ)アクリル系樹脂A25溶液と、イソシアネート硬化剤溶液B1をNCO/OHモル比率が1.5となるように配合した溶液をアンカーコート剤溶液16とした。
【0128】
[実施例1]
アンカーコート剤溶液1を用い、後述する方法で、アンカーコート剤と酢酸ビニル−エ
チレン共重合体フィルム(サンビック社製、ファストタイプ、以下EVAフィルム)との剥離強度、耐湿熱試験(500時間後、1000時間後、2000時間後)剥離強度の評価を行った。
【0129】
<剥離強度>
アンカーコート剤溶液1をグラビアコーターで厚さ188μmのポリエステルフィルム(東レ社製、ルミラーX10S)のコロナ処理面に塗布し、100℃1分で溶剤を乾燥させ、塗布量:3g/平方メートルの樹脂層を設けた。樹脂層の上にEVAフィルム、白板ガラス板を重ね、この積層体を140℃に加熱したモジュールラミネータPVL0505S(日清紡メカトロニクス社製)の熱板の上に、白板ガラスが下になるように置き、1Torr程度に真空排気して5分間放置した。次いで、140℃を維持したまま大気圧でプレスし、15分間放置して測定サンプルを作製した。ポリエステルフィルムの面をカッターで15mm幅に切り、アンカーコート剤とEVAフィルムとの初期の剥離強度を測定した。測定には、引っ張り試験機を用い、荷重速度100mm/minで180度剥離試験を行った。得られた測定値に対して、以下のように評価した。
◎:50N/15mm以上 良好
○:30N/15mm以上〜50N/15mm未満 実用域
△:10N/15mm以上〜30N/15mm未満 実用不可
×:10N/15mm未満 実用不可
【0130】
<耐湿熱試験後剥離強度>
別途作製した測定サンプルを、温度85℃相対湿度85%RH雰囲気中にそれぞれ500時間、1000時間、2000時間静置した後、耐湿熱試験後の剥離強度を測定した。なお、評価基準は、上記同様である。
【0131】
[実施例2
〜5]、[参考例6〜9]、[実施例10〜11]、[比較例1〜4]
実施例1と同様にアンカーコート剤溶液2〜15をそれぞれ評価することでそれぞれ実施例2〜
5、参考例6〜9、実施例10〜11、比較例1〜4とした。
なお、下記表2における実施例6〜9は参考例6〜9の意である。
【0132】
【表2】
【0133】
実施例1
〜5]、[実施例10〜11]は、フラン環と炭素−炭素二重結合を有し、フラン環の官能基当量が40,000以下である樹脂(A)と
、イソシアネート系硬化剤(B)
とを含むアンカーコート剤を使用しているので、初期剥離強度と耐湿熱試験後の剥離強度に優れることが分かる。
【0134】
比較例1はアクリロイル基を有する樹脂である(メタ)アクリル系樹脂A21と硬化剤
を含むアンカーコート剤を使用している。(メタ)アクリル系樹脂A21は溶液作成の際、ゲル化を防ぐ目的で重合禁止剤を多く使用しているため、アンカーコート剤とEVAフィルムとの接着を阻害し、剥離強度に劣る。
【0135】
比較例2はテトラヒドロフリル基を有する樹脂と硬化剤を含むアンカーコート剤を使用している。テトラヒドロフリル基は複素環構造を有するが、複素環が炭素−炭素二重結合を有さないため剥離強度に劣る。
【0136】
比較例3は樹脂と硬化剤を含むアンカーコート剤を使用しているが、樹脂が炭素−炭素二重結合を有する複素環を含有しないため剥離強度に劣る。
【0137】
比較例4はオキサゾリン基を有する樹脂と硬化剤を含むアンカーコート剤を使用している。オキサゾリン基は複素環構造を有するが、複素環が炭素−炭素二重結合を有さないため剥離強度に劣る。
【0138】
<保存安定性>
【0139】
[実施例21]
保存安定性をアンカーコート剤溶液の塗工物の剥離強度で評価した。アンカーコート剤溶液1をグラビアコーターで厚さ188μmのポリエステルフィルム(東レ社製、ルミラーX10S)のコロナ処理面に塗布し、100℃1分乾燥させることで、塗布量:3g/平方メートルの樹脂層を設けた。この樹脂層付きポリエステルフィルムを60℃の恒温槽で3ヶ月間放置した後、上記同様に剥離強度を測定した。なお、評価基準は下記の通りである。
◎:50N/15mm以上 良好
○:30N/15mm以上〜50N/15mm未満 実用域
△:10N/15mm以上〜30N/15mm未満 実用不可
×:10N/15mm未満 実用不可
【0140】
[実施例22
〜25]、[参考例26〜29]、[実施例30〜31]
実施例21のアンカーコート剤溶液1をアンカーコート剤溶液2〜11溶液に変更したこと以外は実施例21と同様にして実施し、それぞれ実施例22
〜25、参考例26〜29、実施例30〜31とした。
【0141】
[比較例5]
実施例21においてアンカーコート剤溶液1をアンカーコート剤溶液16に変更したこ
と以外は実施例21と同様にして実施し、比較例5とした。
【0142】
実施例21
〜25、参考例26〜29、実施例30〜31、比較例5の結果を表3に示す。
なお、表3における実施例26〜29は参考例26〜29の意である。
【0143】
【表3】
【0144】
実施例21
〜25、30〜31は60℃で3ヶ月放置した後も剥離強度が高く、保存安定性に優れることが分かる。一方、比較例5は60℃3ヶ月の保存で変質し剥離強度が低下した。
【0145】
[UV硬化型印刷インキの密着性試験]
【0146】
[実施例41]
密着性を下記の通り評価した。厚さ188μmの透明ポリエステルフィルム(メリネッ
クスS 帝人デュポンフィルム社製)のコロナ処理面に、アンカーコート剤溶液1をグラビアコーターで塗布し、100℃1分で溶剤を乾燥させ、塗布量:3g/平方メートルの樹脂層を設けた。この樹脂層の上に東洋インキ社製UV硬化型印刷インキをRIテスター(簡易展色装置)を用いて厚さが5μmとなるように印刷し、112W/cmの空冷式メタルハライドランプ((株)東芝製)を用いて、所定の照射量で紫外線を照射して、インキ層を硬化させた。このインキ層と樹脂層との密着性を、JIS K 5600−5−6に準拠して、カッターを用いて、独立した縦1cm×横1cm程度のチップを100個備えた試験サンプルを作製した。前記試験サンプル上にセロハンテープを使用して個々のチップが剥離するか否かを試験した。なお、評価は、下記基準で行った。
◎:試験サンプル上のチップの残存率100% 良好
○:試験サンプル上のチップの残存率100%未満80%以上 実用域
△:試験サンプル上のチップの残存率80未満50%以上 実用不可
×:試験サンプル上のチップの残存率50%未満 実用不可
【0147】
[実施例42〜45]
実施例41においてアンカーコート剤溶液1をアンカーコート剤溶液2〜5に変更したこと以外は、実施例41と同様にして実施し、実施例42〜45とした。
【0148】
[比較例6]
実施例41においてアンカーコート剤溶液1をアンカーコート剤溶液12に変更したこと以外は、実施例41と同様にして実施し、比較例6とした。
【0149】
[比較例7]
実施例41においてアンカーコート剤溶液1をアンカーコート剤溶液14に変更したこと以外は、実施例41と同様にして実施し、比較例7とした。
【0150】
[比較例8]
実施例41のアンカーコート剤溶液1を使用せず、透明ポリエステルフィルムのコロナ処理面に直接UV硬化型印刷インキI1を印刷塗布したこと以外は、実施例41と同様にして実施し、比較例8とした。
【0151】
実施例41〜45、比較例6〜8の結果を表4に示す。
【0152】
【表4】
【0153】
表4の結果から実施例41〜45は、インキ層の密着性が向上した。一方、比較例6はゲル化を防ぐ目的で重合禁止剤を多量に含むため密着性が低かった。また、比較例7は、樹脂(A)を含まないため密着性が低かった。また、比較例8は、アンカーコート剤を使用しなかったため、密着性が低い。
【0154】
[UV硬化型ハードコート剤の密着性試験]
【0155】
[実施例51]
厚さ188μmの透明ポリエステルフィルムであるメリネックスS(帝人デュポンフィ
ルム社製)のコロナ処理面に、アンカーコート剤溶液1をグラビアコーターで塗布し、100℃1分で溶剤を乾燥させ、塗布量:3g/平方メートルの樹脂層を設けた。この樹脂層の上に東洋インキ社製UV硬化型ハードコート剤をメイヤーバーを用いて乾燥後厚さが5μmとなるように塗布し、オーブンで溶剤を乾燥させた後、メタルハライドランプで400mJ/cm
2の紫外線を照射し、コート層を形成した。このコート層の密着性試験を上記同様に行い、上記同様の基準で評価した。
【0156】
[実施例52〜55]
実施例51においてアンカーコート剤溶液1をアンカーコート剤溶液2〜5に変更したこと以外は、実施例51と同様にして実施し、実施例52〜55とした。
【0157】
[比較例9]
実施例51においてアンカーコート剤溶液1をアンカーコート剤溶液12に変更したこと以外は、実施例51と同様にして実施し、比較例9とした。
【0158】
[比較例10]
実施例51においてアンカーコート剤溶液1をアンカーコート剤溶液14に変更したこと以外は、実施例51と同様にして実施し、比較例10とした。
【0159】
[比較例11]
実施例51において、アンカーコート剤溶液1を使用せず、透明ポリエステルフィルムのコロナ処理面に直接UV硬化型ハードコート剤を印刷塗布したこと以外は、実施例51
と同様にして実施し、比較例11とした。
【0160】
実施例51〜55、比較例9〜11の結果を表5に示す。
【0161】
【表5】
【0162】
表5の結果から実施例51〜55は、密着性が良好であった。また、比較例6は、ゲル化を防ぐ目的で重合禁止剤を多量に含むため、樹脂層とコート層との密着性が低い。また、比較例7は、樹脂(A)を含まないため密着性が低い。また、比較例8はアンカーコート剤を使用しなかったため、密着性が低い。
【解決手段】複素環含有樹脂(A)と、硬化剤(B)とを含み、前記複素環が炭素−炭素二重結合を有する、アンカーコート剤。なお、前記複素環含有樹脂(A)中の複素環の官能基当量が50,000以下であることが好ましい。また、前記アンカーコート剤は、太陽電池の表面保護シート用のアンカーコート剤、ないし裏面保護シート用のアンカーコート剤として用いることが好ましい。