【実施例】
【0036】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。
[実施例1]
<合成例1>
5L容量オートクレーブに、3,5,5−トリメチル−1−ヘキサノール(商品名:ノナノール、KHネオケム(株)製)433g(3モル)および水酸化カリウム6gを仕込み、オートクレーブ内の空気を窒素で置換した後、撹拌しながら120℃に昇温した。次に滴下装置にてエチレンオキシド1058g(24モル)を滴下し、1時間撹拌した。さらに、滴下装置にてプロピレンオキシド523g(9モル)を滴下し、2時間撹拌した。その後、オートクレーブから反応物を取り出し、塩酸で中和してpH6〜7とし、含有する水分を除去するために、6.7kPa以下に減圧して、100℃で1時間処理した。さらに処理後に生成した塩を除去するためにろ過を行い、3,5,5−トリメチル−1−ヘキサノールのエチレンオキシド8モル・プロピレンオキシド3モルブロック共重合体を得た。
1H−NMR分析により合成した化合物の構造を同定した。合成した化合物A1の構造を表1に示す。
【0037】
<水溶性切削油の調製>
300mL容量4ツ口フラスコに、水134g(67重量%)、カプリル酸10g(5重量%)、セバシン酸4g(2重量%)、トリエタノールアミン30g(15重量%)を入れ、60℃で30分間撹拌した。これを25℃まで冷却して、化合物A1(1重量%)、ポリアルキレングリコール誘導体20g(10重量%)を加え、30分間撹拌し、水溶性切削油を調製した。
なお、本例で用いるポリアルキレングリコール誘導体はポリプロピレンオキシド・ポリエチレンオキシド・ポリプロピレンオキシドトリブロック共重合体であり、プロピレンオキシドの付加モル数の合計は28モル、エチレンオキシドの付加モル数は11モルであり、分子量は2100であり、1%水溶液の曇点は33℃である。
調製した水溶性切削油の組成を表2に示す。
【0038】
<25℃での分離の有無の評価>
調製した水溶性切削油100gを100mL容量ガラス瓶に入れ、25℃に調温したときの分離の有無を以下の基準で評価した。分離しなかったものについては、25℃の恒温槽で3ヶ月間静置した後、分離の有無を同様の基準で評価した。結果を表3に示す。
○:分離することなく均一である
×:分離している
【0039】
<濡れ性の評価>
水溶性切削油を水で10倍に希釈して10倍希釈液を調製した。この10倍希釈液のアルミニウム板(JIS H4100に定めるA1050P)に対する接触角を測定し、以下の基準で評価した。結果を表3に示す。
◎:接触角30°未満
○:接触角30°以上40°未満
×:接触角50°以上
【0040】
<低起泡性の評価>
水溶性切削油の10倍希釈液30gを100mLガラス瓶に入れ、25℃に調温した後、手で10秒間振とうした。振とう直後の液面からの泡の高さを測定し、以下の基準で低起泡性を評価した。結果を表3に示す。
◎:泡立ち5mm未満
○:泡立ち5mm以上10mm未満
×:泡立ち30mm以上
【0041】
<気泡の消失性の評価>
水溶性切削油の10倍希釈液30gを100mLガラス瓶に入れ、25℃に調温した後、手で10秒間振とうした。5分間静置後の液面からの泡の高さを測定し、以下の基準で気泡の消失性を評価した。結果を表3に示す。
◎:泡立ち5mm未満
○:泡立ち5mm以上10mm未満
×:泡立ち30mm以上
【0042】
[実施例2〜6]
実施例1と同様の方法で、表1に示す式(1)で示される化合物A2〜A5を合成し、表2に示すように、実施例2〜6の各水溶性切削油を調製し、評価を行った。結果を表3に示す。
【0043】
[比較例1]
式(1)で示される化合物を添加しないこと以外は実施例1と同様の方法で、表2に示す水溶性切削油を調製し、評価を行った。結果を表3に示す。
【0044】
[比較例2〜8]
実施例1と同様の方法で、表1に示す式(1)で示される化合物a1〜a7を合成し、表2に示す水溶性切削油の調製、評価を行った。結果を表3に示す。
【0045】
[比較例9]
式(1)で示される化合物の代わりに、3,5,5−トリメチル−1−ヘキサノールのエチレンオキシド8モル・ブチレンオキシド2モルブロック共重合体a8を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で、表2に示す水溶性切削油を調製し、評価を行った。結果を表3に示す。
【0046】
[比較例10]
式(1)で示される化合物の代わりに、イソステアリン酸のエチレンオキシド7モル・プロピレンオキシド2モルブロック共重合体a9を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で、表2に示す水溶性切削油を調製し、評価を行った。結果を表3に示す。
【0047】
[比較例11]
式(1)で示される化合物の代わりに、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのエチレンオキシド10モル付加物a10を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で、表2に示す水溶性切削油を調製し、評価を行った。結果を表3に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
【表3】
【0051】
表3の結果から、実施例1〜6の水溶性切削油は、分離を起こすことなく安定であり、金属への濡れ性が高く、気泡の消失性が高く、さらに起泡性が十分に低いことがわかる。実施例1〜6の水溶性切削油を用いて切削を行った結果、金属加工の精度を向上させることができ、工具寿命を延長させることができた。
【0052】
これに対して比較例1は、本発明の式(1)で示される化合物を用いていないため、金属への濡れ性が不十分であった。
【0053】
比較例2は、式(1)で示される化合物の炭素数2〜3のオキシアルキレン基の平均付加モル数が本発明の範囲より大きいため、金属への濡れ性が不十分であった。
比較例3は、式(1)で示される化合物のオキシプロピレン基の平均付加モル数が本発明の範囲より大きいため、水溶性切削油が分離した。
【0054】
比較例4は、式(1)で示される化合物の炭素数2〜3のオキシアルキレン基とオキシプロピレン基の合計に占める炭素数2〜3のオキシアルキレン基の割合が本発明の範囲より大きいため、金属への濡れ性が不十分であり、起泡性が高い。
【0055】
比較例5は、式(1)で示される化合物の炭素数2〜3のオキシアルキレン基とオキシプロピレン基の合計に占める炭素数2〜3のオキシアルキレン基の割合が本発明の範囲より小さいため、水溶性切削油が分離した。
【0056】
比較例6は、式(1)で示される化合物のアルキル基の炭素数が本発明の範囲より小さいため、金属への濡れ性が不十分であった。
比較例7は、式(1)で示される化合物のアルキル基の炭素数が本発明の範囲より大きいため、起泡性が高く、気泡の消失性が低くなった。
比較例8は、式(1)で示される化合物のアルキル基として、3,5,5−トリメチルヘキシル基の代わりに、同一炭素数のイソノニル基を用いたものであるが、起泡性が高くなった。
【0057】
比較例9は、式(1)で示される化合物の代わりに3,5,5−トリメチル−1−ヘキサノールのエチレンオキシド8モル・ブチレンオキシド2モルブロック共重合体を用いているので、水溶性切削油が分離した。
比較例10は、式(1)で示される化合物の代わりに、イソステアリン酸のエチレンオキシド7モル・プロピレンオキシド2モルブロック共重合体を用いているので、水溶性切削油が経時的に分離し、起泡性が高くなった。
比較例11は、式(1)で示される化合物の代わりに、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのエチレンオキシド10モル付加物を用いているので、金属への濡れ性が不十分であった。