特許第6504347号(P6504347)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱自動車工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6504347-クラッチアクチュエータ 図000003
  • 特許6504347-クラッチアクチュエータ 図000004
  • 特許6504347-クラッチアクチュエータ 図000005
  • 特許6504347-クラッチアクチュエータ 図000006
  • 特許6504347-クラッチアクチュエータ 図000007
  • 特許6504347-クラッチアクチュエータ 図000008
  • 特許6504347-クラッチアクチュエータ 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6504347
(24)【登録日】2019年4月5日
(45)【発行日】2019年4月24日
(54)【発明の名称】クラッチアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   F16D 28/00 20060101AFI20190415BHJP
   F16H 21/18 20060101ALI20190415BHJP
【FI】
   F16D28/00 Z
   F16H21/18
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-45846(P2015-45846)
(22)【出願日】2015年3月9日
(65)【公開番号】特開2016-166629(P2016-166629A)
(43)【公開日】2016年9月15日
【審査請求日】2018年2月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174366
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 史郎
(72)【発明者】
【氏名】清水 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】村上 剛
(72)【発明者】
【氏名】澤瀬 薫
(72)【発明者】
【氏名】日向 賢彬
【審査官】 岡澤 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−299738(JP,A)
【文献】 芦葉 清三郎,機械運動機構,日本,株式会社技報堂,1961年10月15日,20頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 28/00
F16H 21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの出力軸の回転運動をスライダクランク機構により直線運動に変換して、クラッチを係合離脱させるクラッチアクチュエータであって、
前記スライダクランク機構は、
前記モータによりクランク軸回りに回転駆動されるクランク部材と、
往復移動して前記クラッチの係合離脱を行なうスライダと、
前記クランク部材の前記クランク軸から離間した部位と前記スライダとを回転可能に連結するリンク部材と、により構成され、
前記スライダの移動線に対し、前記クランク軸がオフセットして配置されるとともに、
前記クランク部材が、前記スライダの移動線と垂直でかつ前記クランク軸を通る垂線から前記クラッチの押し付け方向と反対側に回転し、かつ前記クランク部材と前記リンク部材とが垂直であるときの前記スライダの移動位置を、前記クラッチが完全に開放される初期位置とする一方、
前記クラッチの締結位置となる前記スライダの移動位置を、前記クラッチの接続開始から前記締結位置までの前記スライダの移動位置よりも、前記クランク部材の回転トルクに対する前記スライダによる前記クラッチの押し付け力が大きくなる位置とすることを特徴とするクラッチアクチュエータ。
【請求項2】
前記締結位置となる前記スライダの移動位置は、前記スライダの移動範囲の中で、前記回転トルクに対する前記押し付け力が最も大きくなる位置であることを特徴とする請求項1に記載のクラッチアクチュエータ。
【請求項3】
前記クラッチは、複数の変速段の変速ギヤが2つのグループに分けられて第1の主軸及び第2の主軸のいずれかに配置された変速機の入力軸と前記第1の主軸及び前記第2の主軸との間に介装されるデュアルクラッチであることを特徴とする請求項1または2に記載のクラッチアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラッチを作動するクラッチアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の変速機等に採用されているクラッチにおいて、その作動をクラッチアクチュエータにより行う技術が開発されている。例えば特許文献1には、クラッチの係合離脱をモータの駆動によって行うクラッチアクチュエータが開示されている。特許文献1のクラッチアクチュエータでは、クランク機構とスライダを組み合わせたスライダクランク機構により、モータの回転運動をスライダの直線運動に変換する構成となっており、詳しくはモータにより回転駆動される歯車の外周部付近の部位とスライド可能なピストン(スライダ)とをリンク部材で連結しており、ピストンの直線運動によってクラッチの係合離脱を行う。
【0003】
更に、特許文献1は、デュアルクラッチトランスミッションにおける2つのクラッチをモータによって駆動する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−299738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般的なシングルクラッチでは、スプリング等により係合方向に付勢しており、アクチュエータ等で離脱方向に作動させることが多い。
これに対し、デュアルクラッチトランスミッションでは、アクチュエータ等の故障時に変速機内での駆動系のロックを防止するために、スプリング等により離脱方向に付勢しており、アクチュエータによりクラッチを押し付けて係合する構成となっている。
【0006】
このように、アクチュエータによりクラッチを押し付ける構成のクラッチ装置では、アクチュエータによってクラッチを押し付ける際に大きい押し付け力が必要となる。したがって、特許文献1のような、モータによってスライダクランク機構を介してクラッチを作動させる構成では、モータの回転トルクに対してクラッチを押し付けるためのスライダ推力が大きくなるようなリンク構成が望ましい。一方、クラッチの接続開始位置付近では、クラッチにおける伝達トルクを細かくコントロールするために、モータの回転角に対してスライダの移動距離を大きくした構成が望ましい。モータの回転トルクに対してスライダ推力を大きくするには、モータの回転角に対してスライダの移動距離を小さくすることになるので、クラッチの締結位置とクラッチの接続開始位置付近とでは相反する機能が要求されることになり、この要求を満たすようなスライダクランク機構に設定することが困難である。
【0007】
また、このようなクラッチアクチュエータは、変速機に内蔵するので、スライダクランク機構の各要素の長さ等に制約があり、スライダクランク機構の設定が更に困難となってしまう。
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、スライダクランク機構を介してモータによりクラッチの係合離脱を行なうクラッチアクチュエータにおいて、クラッチの押し付け力確保とクラッチの伝達力の制御精度を両立させるとともに、押し付け力の設定を容易に行なうことのできるクラッチアクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本願発明のクラッチアクチュエータは、モータの出力軸の回転運動をスライダクランク機構により直線運動に変換して、クラッチを係合離脱させるクラッチアクチュエータであって、前記スライダクランク機構は、前記モータによりクランク軸回りに回転駆動されるクランク部材と、往復移動して前記クラッチの係合離脱を行なうスライダと、前記クランク部材の前記クランク軸から離間した先端部と前記スライダとを回転可能に連結するリンク部材と、により構成され、前記スライダの移動線に対し、前記クランク軸がオフセットして配置されるとともに、前記クランク部材が、前記スライダの移動線と垂直でかつ前記クランク軸を通る垂線から前記クラッチの押し付け方向と反対側に回転し、かつ前記クランク部材と前記リンク部材とが垂直であるときの前記スライダの移動位置を、前記クラッチが完全に開放される初期位置とする一方、前記クラッチの締結位置となる前記スライダの移動位置を、前記クラッチの接続開始から前記締結位置までの前記スライダの移動位置よりも、前記クランク部材の回転トルクに対する前記スライダによる前記クラッチの押し付け力が大きくなる位置とすることを特徴とする。
【0009】
また、好ましくは、前記締結位置となる前記スライダの移動位置は、前記スライダの移動範囲の中で、前記回転トルクに対する前記押し付け力が最も大きくなる位置であるとよい。
また、好ましくは、前記クラッチは、複数の変速段の変速ギヤが2つのグループに分けられて第1の主軸及び第2の主軸のいずれかに配置された変速機の入力軸と前記第1の主軸及び前記第2の主軸との間に介装されるデュアルクラッチであるとよい。
【発明の効果】
【0010】
本願発明のクラッチアクチュエータによれば、モータの駆動によってクラッチの係合離脱を行ない、モータとクラッチとの間にスライダクランク機構が介在することで、モータの駆動トルクに対してクラッチの押し付け力を非線形に制御することができる。そして、クラッチの締結位置となるスライダの移動位置を、クラッチの接続開始から締結位置までのスライダの移動位置よりも、スライダによるクラッチの押し付け力が大きくなる位置とすることで、クラッチの締結位置においてはクラッチの押し付け力を大きく、かつクラッチの接続開始から締結位置においてはモータの回転に対するスライダの移動距離を長くしてクラッチの押し付け力を細かく制御することができる。これにより、クラッチの接続の際に伝達力の制御を容易にすることができるとともに、締結後のクラッチの保持力を少ないモータの出力トルクで確保することができる。
【0011】
更に、スライダの移動線に対してクランク軸がオフセットして配置されるので、当該オフセット量を変更することでモータの回転トルクに対するクラッチの押し付け力を変更することができる。これにより、スライダクランク機構の設計自由度が増し、スライダクランク機構の設定を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態のクラッチアクチュエータを採用した車両の走行駆動系の模式図である。
図2】本実施形態のクラッチアクチュエータの構成図である。
図3】本実施形態におけるスライダクランク機構の模式図である。
図4】スライダクランク機構におけるスライダストロークとスライダ推力との関係の一例を示すグラフである。
図5】クランクの回転半径を変更した場合での、スライダ推力の変化の一例を示すグラフである。
図6】リンク長を変更した場合での、スライダ推力の変化の一例を示すグラフである。
図7】オフセット量を変更した場合での、スライダ推力の変化の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態のクラッチアクチュエータ20を採用した車両の走行駆動系の模式図である。
本実施形態のクラッチアクチュエータ20は、デュアルクラッチトランスミッション1(変速機)を搭載した車両に採用されている。
【0014】
図1に示すように、デュアルクラッチトランスミッション1は、第1の主軸2及び第2の主軸3を備えている。この第1の主軸2及び第2の主軸3と、フライホイール4を介してエンジン5の出力軸6に連結されるデュアルクラッチトランスミッション1の入力軸7との間には、夫々クラッチ8、9が備えられている(デュアルクラッチ10)。第1の主軸2には偶数段の変速ギヤ、第2の主軸3には奇数段の変速ギヤが設けられており、これらの変速ギヤのうち任意のギヤを出力軸11に設けられたギヤと係合して出力軸11に動力を伝達する構造となっている。出力軸11は、デフ12を介して、車両の駆動輪13に連結されている。
【0015】
そして、2つのクラッチ8、9を交互に接続して、奇数及び偶数の変速ギヤに順次つなぎ替えることで変速時にエンジン5から駆動輪13に切れ目の少ない動力伝達が可能となっている。
また、デュアルクラッチ10に用いられるクラッチ8、9は、乾式単板のクラッチが用いられている。更に、クラッチ8、9は、動力を伝達しない離脱方向に向けて図示しないスプリングによって付勢されている。
【0016】
クラッチ8、9は、図示しないダイヤフラムスプリングにより、プレッシャプレートを介して押し付けられて係合する。本実施形態では、クラッチアクチュエータ20によって図示しないダイヤフラムスプリングに荷重を付与してクラッチ8、9を押し付ける構成となっている。
図2は、本実施形態のクラッチアクチュエータ20の構成図である。
【0017】
なお、図2は、デュアルクラッチ10の2つのクラッチ8、9のうち一方のクラッチ8を係合離脱させるクラッチアクチュエータ20について記載しており、他のクラッチ9も同様に、異なるクラッチアクチュエータ20によって係合離脱させる。
図2に示すように、クラッチアクチュエータ20は、モータ21、減速機22、スライダクランク機構23を含んで構成されている。
【0018】
減速機22は複数の歯車によって構成され、モータ21の出力軸の回転を減速して、最終段の扇形歯車24を回転させる。なお、モータ21は、例えば電気モータであって、限られた角度範囲内で回転するよう制御されており、よって扇形歯車24も限られた角度範囲内で回転する。
スライダクランク機構23は、クランク30(クランク部材)と、スライダ31と、リンク部材32により構成されている。
【0019】
クランク30は、扇形歯車24の回転中心軸(クランク軸33)に一端が固定されており、扇形歯車24の回転によって揺動する。
スライダ31は、クラッチ8の押し付け方向に移動可能に支持されている。
リンク部材32は、一端部(連結部32a)において揺動するクランク30の先端に回転可能に連結されるとともに、他端部(連結部32b)においてスライダ31に回転可能に連結されている。
【0020】
更に、本実施形態のスライダクランク機構23では、クランク軸33とスライダ31の移動線であるスライダ軸線m(スライダ移動線)とがオフセットして配置されている。
本実施形態のクラッチアクチュエータ20は、モータ21の回転を減速機22により減速し、スライダクランク機構23により直線運動に変換してスライダ31をクラッチ8の軸線方向に直線移動させ、クラッチ8の係合離脱を行なう構成となっており、特に、モータ21の回転トルクによってクラッチ8を押し付け方向に移動させて係合させる。
【0021】
図3は、スライダクランク機構23の模式図である。
図3に示すように、スライダクランク機構23の構成について、クランク30の回転半径(クランク軸33と連結部32aとの間の長さ)をA、リンク長(リンク部材32の連結部32aと連結部32bとの間の長さ)をB、クランク軸33とスライダ軸線mとのオフセット量をCとし、モータ21によって減速機22を介してクランク30に回転トルクTを与えると、スライダ軸線mと垂直でかつクランク軸33を通る線n(垂線)とクランク30との角度であるクランク角θであるときに、スライダ31がスライダ軸線m方向に押す力であるスライダ推力Fは、以下の式(1)で求められる。
【0022】
【数1】
【0023】
したがって、クランク角θが変化することでスライダ推力Fが変化する。
また、クランク30の回転角に対するスライダ31の移動距離についても、クランク角θに伴って変化する。なお、スライダ31の移動距離は、スライダ推力Fが小さくなるクランク角θでは大きく、スライダ推力Fが大きくなるクランク角θでは小さくなるといったように相反関係となる。
【0024】
本実施形態では、このスライダクランク機構23のクランク30が線nからクラッチ8の押し付け方向と反対側に角度θ1回転した位置(例えばクランク30とリンク部材32とが垂直になる位置)を、クラッチ8が完全に開放されるスライダ初期位置(初期位置)とし、スライダ初期位置からクラッチ8の押し付け側に角度θ2回転した位置をクラッチ8が締結する締結位置とする。
【0025】
なお、上記のように、スライダ31とクラッチ8を押すプレッシャプレートとの間には、ダイヤフラムスプリングが介在しており、ダイヤフラムスプリングは、クラッチ8が接続開始してからスライダ31の移動量が増加するに伴ってクラッチ8を押す力が増加する荷重特性であるので、このダイヤフラムスプリングの荷重特性とクラッチアクチュエータ20によるスライダ推力Fの出力特性を加えて、クラッチ8の締結位置において確実に締結されるのに必要な押し付け力が得られるように設定すればよい。
【0026】
図4は、スライダクランク機構23におけるスライダストロークSとスライダ推力Fとの関係の一例を示すグラフである。
本実施形態では、スライダクランク機構23を用いることで、図4に示すように、スライダ初期位置から押し付け方向へのスライダ31の移動量(スライダストロークS)とスライダ推力Fとが非線形の関係となる。特に、クランク30とリンク部材32との角度が180度付近でスライダ推力Fは急激に大きくなる。
【0027】
そして、このスライダクランク機構23によって非線形となるクラッチアクチュエータ20の出力特性とクラッチ8の締結位置とを関連付けて設定しており、クラッチ8が締結されるスライダ31の移動位置(締結領域E)では、クラッチ8の接続開始から締結位置までのスライダ31の移動位置(領域D)よりもスライダ推力Fが大きくなるように設定されている。特にクラッチ8の締結位置では、スライダ31の移動範囲の中で、クランク30の回転トルクTに対するスライダ推力Fが最も大きくなるように、例えばクランク30とリンク部材32との角度を180度付近の領域に設定するとよい。
【0028】
なお、図4では、回転トルクTを変更した場合でのスライダ推力Fを示しており、図4中のa線が回転トルクTの最小設定時、b線が回転トルクTの最大設定時を示している。図4に示すように、スライダストロークSが増加するに伴ってスライダ推力Fが大きくなるが、回転トルクTが小さくなるほど締結位置付近でより急激にスライダ推力Fが増加するようになる。
【0029】
図5図7は、本実施形態においてスライダクランク機構23の各部位の長さを変更した場合での、スライダ推力Fの変化の一例を示すグラフである。クランク30の回転トルクTを一定にした状態で、図5はクランク30の回転半径Aを変更した場合、図6はリンク長Bを変更した場合、図7はオフセット量Cを変更した場合を示す。図5図7において、線aは基準値であり、線bは長さを基準値の1.3倍に変更した場合を示す。
【0030】
図5に示すように、クランク30の回転半径Aを1.3倍に変更するとスライダ推力Fは増加する。図6に示すように、リンク長Bを1.3倍に変更するとスライダ推力Fは大幅に増加する。図7に示すように、オフセット量Cを1.3倍に変更すると、スライダ推力Fは減少する。このように、クランク30の回転半径A、リンク長B、オフセットCのいずれを変更しても、スライダ推力F、即ちクラッチアクチュエータ20の出力特性を変更することができる。
【0031】
以上のように、本実施形態では、スライダクランク機構23を備えたクラッチアクチュエータ20をクラッチ8に採用することで、モータ21による回転運動をスライダ31の直線運動に変換する構成となっており、クランク30の回転位置によって、モータ21の回転トルクに対するスライダ推力Fが変化する。このとき、クラッチアクチュエータ20の出力であるスライダ推力Fは、非線形の特性となる。そして、この非線形となるクラッチアクチュエータ20の出力特性とクラッチ8の接続状態とを関連づけて設定することで、図4に示すように、クラッチ8の接続開始から締結するまでのクラッチストロークSの領域(D)ではクラッチストロークSに対するスライダ推力Fの増加率を抑え、クラッチ8が締結される締結領域(E)ではスライダ推力Fを大幅に増加させることができる。
【0032】
したがって、クラッチ8の接続開始から締結するまでは、クラッチストロークSの変化に対してスライダ推力Fの変化が抑えられ、モータ21の回転角の制御によってスライダ推力Fを細かく制御することができる。これにより、クラッチ8の接続の際に伝達トルクの制御を精度よく行なうことができる。
また、クラッチ8の締結時(締結後)には、モータ21の回転トルクに対してスライダ推力Fを大幅に大きくすることができるので、モータ21の回転トルクを抑えた上でスライダ推力Fを大きく確保して、クラッチ8を確実に締結保持することができる。
【0033】
更に、本実施形態では、減速機22によってモータ21の回転トルクを増幅してクランク30の回転トルクTとし、更にスライダクランク機構23によってクランク30の回転トルクTから大きなスライダ推力Fに変換することができるので、モータ21の必要な出力が抑えられ小型化することができる。
また、スライダクランク機構23を用いることで、クランク30の回転半径A、リンク長B、オフセット量Cの各設定によって、クラッチアクチュエータ20の出力特性を夫々変更することができるので、所望の出力特性となるようにスライダクランク機構23の構成を容易に設定することができる。
【0034】
特に、本実施形態では、クランク30の回転半径A、リンク長Bだけでなく、オフセット量Cも変更設定可能であるので、設計自由度を大幅に増加させることができる。また、オフセット量Cを設ける、即ちクランク軸33とスライダ軸線mとをオフセットして配置することで、クランク軸33とクラッチ8の中心軸との干渉を容易に防止することができる。
【0035】
また、本実施形態では、デュアルクラッチ10に本発明のクラッチアクチュエータ20を採用しているが、デュアルクラッチトランスミッション1では、2個のクラッチ8、9が同時に接続されると内部でロックしてしまう虞がある。
しかし、本実施形態では、クラッチアクチュエータ20が、減速機22及びスライダクランク機構23によってモータ21からスライダ31に動力を伝達する構造であり、スライダ31からモータ21へ動力を伝達可能な可逆性を有している。したがって、例えばモータ21等の故障によりモータ21の出力軸の回転がフリーとなった場合には、クラッチ8の離脱方向へのスライダ31の移動が可能であり、クラッチ8の押し戻しによる自動開放が可能となり、デュアルクラッチトランスミッション1内でのロックを防止することができる。
【0036】
なお、本願発明は上記実施形態に限定するものではない。例えば、スライダクランク機構23におけるスライダ初期位置等の詳細な設定については、適宜変更してもよい。また、シングルクラッチの変速機に本願発明のクラッチアクチュエータを適用してもよい。
本願発明は、クラッチをモータによって作動させるクラッチアクチュエータにおいて、広く適用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 デュアルクラッチトランスミッション(変速機)
2 第1の主軸
3 第2の主軸
8、9 クラッチ
10 デュアルクラッチ
20 クラッチアクチュエータ
21 モータ
23 スライダクランク機構
30 クランク(クランク部材)
31 スライダ
32 リンク部材
33 クランク軸
m スライダ軸線(スライダ移動線)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7