特許第6504384号(P6504384)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6504384
(24)【登録日】2019年4月5日
(45)【発行日】2019年4月24日
(54)【発明の名称】糸屑捕集装置および洗濯機
(51)【国際特許分類】
   D06F 39/10 20060101AFI20190415BHJP
   D06F 23/06 20060101ALI20190415BHJP
【FI】
   D06F39/10 B
   D06F23/06
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-229810(P2014-229810)
(22)【出願日】2014年11月12日
(65)【公開番号】特開2016-93237(P2016-93237A)
(43)【公開日】2016年5月26日
【審査請求日】2017年10月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】307036856
【氏名又は名称】アクア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087701
【弁理士】
【氏名又は名称】稲岡 耕作
(74)【代理人】
【識別番号】100101328
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 実夫
(74)【代理人】
【識別番号】100183450
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 太知
(72)【発明者】
【氏名】香月 淳吾
(72)【発明者】
【氏名】辻 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】米田 昌令
【審査官】 青木 正博
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭54−032979(JP,U)
【文献】 特開2004−337368(JP,A)
【文献】 特開平08−084894(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0196452(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 1/00−51/02
D06F 58/02−58/08
D06F 58/20−58/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向または上下方向に対する傾斜方向に延びる中心軸線を有する円筒状の洗濯槽を備える洗濯機に用いられ、前記洗濯槽内の糸屑を捕集する糸屑捕集装置であって、
糸屑を収容するための収容室を内部に有する本体部と、
前記洗濯槽内に露出されるように前記本体部の表面部に設けられ、前記洗濯槽内に溜まった水に含まれる糸屑を取り込むための取込口と、
前記収容室と前記取込口とを連通させる開位置と、前記収容室と前記取込口との間を遮断する閉位置とに移動可能であり、前記取込口に流れ込む水の勢いが強まることによって前記開位置まで移動し、前記取込口に流れ込む水の勢いが弱まることによって前記閉位置まで移動して前記収容室の外への糸屑の流出を防止する流出防止部材とを含み、
前記取込口は、前記洗濯槽の周方向において前記流出防止部材を挟むように並んで配置される第1取込口および第2取込口を含み、
前記開位置は、前記流出防止部材が前記収容室と前記第1取込口とを連通させつつ前記収容室と前記第2取込口との間を遮断する第1開位置と、前記流出防止部材が前記収容室と前記第2取込口とを連通させつつ前記収容室と前記第1取込口との間を遮断する第2開位置とを含み、
前記流出防止部材は、前記第2取込口よりも前記第1取込口に流れ込む水の勢いが強まることによって前記第1開位置まで移動し、前記第1取込口よりも前記第2取込口に流れ込む水の勢いが強まることによって前記第2開位置まで移動し、
前記洗濯槽内の構造物の表面部に着脱可能に埋め込まれることを特徴とする糸屑捕集装置。
【請求項2】
前記構造物は、前記洗濯槽内の洗濯物を撹拌するためのバッフルであることを特徴とする請求項1記載の糸屑捕集装置。
【請求項3】
前記閉位置は、前記第1開位置と前記第2開位置との間にあり、
前記流出防止部材は、前記第1取込口および第2取込口のそれぞれに流れ込む水の勢いが弱まると、自重によって前記閉位置まで移動し、前記閉位置において、前記第1取込口および前記第2取込口のそれぞれと前記収容室との間をまとめて遮断することを特徴とする請求項1または2記載の糸屑捕集装置。
【請求項4】
上下方向または上下方向に対する傾斜方向に延びる中心軸線を有する円筒状の洗濯槽と、
請求項1〜のいずれかに記載の糸屑捕集装置とを備えることを特徴とする洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、洗濯機の洗濯槽内の糸屑を捕集する糸屑捕集装置および当該糸屑捕集装置を備える洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に開示された洗濯機では、脱水槽の中央底部にパルセータが配置され、脱水槽の内側側面に還流水路が取り付けられる。還流水路の下端は、パルセータの側方に接続される。還流水路の上部には、ろ過部材を備えたフィルタユニットが取り付けられる。パルセータが回転すると、パルセータの下面の洗濯水が押し出されて還流水路に到達し、還流水路を上昇する。還流水路を上昇した洗濯水は、フィルタユニット内部に進入し、ろ過部材を通過してから脱水槽内部に排出される。これにより、洗濯水に含まれる糸屑などのリント類がフィルタユニット内部に捕集される。
【0003】
下記特許文献2に開示された洗濯機では、洗濯兼脱水槽の内部にパルセータが水平回転できるように配置される。洗濯兼脱水槽の内壁側面は、袋状のフィルタの開口部を縁取ったフィルタ枠を水平方向に回転可能に支持する。パルセータが回転することによって洗濯兼脱水槽内で水流が発生すると、この水流は、フィルタの開口部からフィルタ内に入る。これにより、洗濯水中の糸屑などが捕獲される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−141553号公報
【特許文献2】特開平11−319384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の洗濯機では、脱水槽内においてフィルタユニットの近くに糸屑が存在しても、この糸屑は、脱水槽の底部まで一旦下降した後に還流水路内を上昇するという長い経路を流れなければ、フィルタユニットによって捕集されない。これでは、糸屑を効率的に捕集することが難しい。
【0006】
特許文献2の洗濯機では、フィルタの開口部が洗濯兼脱水槽の内部に露出されることから、フィルタは、洗濯兼脱水槽内で開口部の近くに位置する糸屑を直接捕集できる。そのため、糸屑を効率的に捕集できる。しかし、洗濯兼脱水槽内にはみ出した袋状のフィルタに洗濯物が絡みやすいので、フィルタが破損し易い。また、洗濯兼脱水槽内の水流の勢いが弱まると、フィルタ内に捕集された糸屑が、水流の勢いによってフィルタ内に押さえ込まれなくなるので、フィルタの開口部から洗濯兼脱水槽内に流出する虞がある。
【0007】
この発明は、かかる背景のもとでなされたもので、糸屑の捕集効率の向上を図りつつ、捕集された糸屑の流出および破損を防止できる糸屑捕集装置、ならびに当該糸屑捕集装置を備える洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上下方向または上下方向に対する傾斜方向に延びる中心軸線を有する円筒状の洗濯槽を備える洗濯機に用いられ、前記洗濯槽内の糸屑を捕集する糸屑捕集装置であって、糸屑を収容するための収容室を内部に有する本体部と、前記洗濯槽内に露出されるように前記本体部の表面部に設けられ、前記洗濯槽内に溜まった水に含まれる糸屑を取り込むための取込口と、前記収容室と前記取込口とを連通させる開位置と、前記収容室と前記取込口との間を遮断する閉位置とに移動可能であり、前記取込口に流れ込む水の勢いが強まることによって前記開位置まで移動し、前記取込口に流れ込む水の勢いが弱まることによって前記閉位置まで移動して前記収容室の外への糸屑の流出を防止する流出防止部材とを含み、前記洗濯槽内の構造物の表面部に着脱可能に埋め込まれることを特徴とする糸屑捕集装置である。
【0009】
また、本発明は、前記構造物は、前記洗濯槽内の洗濯物を撹拌するためのバッフルであることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、前記取込口は、前記洗濯槽の周方向において前記流出防止部材を挟むように並んで配置される第1取込口および第2取込口を含み、前記開位置は、前記流出防止部材が前記収容室と前記第1取込口とを連通させつつ前記収容室と前記第2取込口との間を遮断する第1開位置と、前記流出防止部材が前記収容室と前記第2取込口とを連通させつつ前記収容室と前記第1取込口との間を遮断する第2開位置とを含み、前記流出防止部材は、前記第2取込口よりも前記第1取込口に流れ込む水の勢いが強まることによって前記第1開位置まで移動し、前記第1取込口よりも前記第2取込口に流れ込む水の勢いが強まることによって前記第2開位置まで移動することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、前記閉位置は、前記第1開位置と前記第2開位置との間にあり、前記流出防止部材は、前記第1取込口および第2取込口のそれぞれに流れ込む水の勢いが弱まると、自重によって前記閉位置まで移動し、前記閉位置において、前記第1取込口および前記第2取込口のそれぞれと前記収容室との間をまとめて遮断することを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上下方向または上下方向に対する傾斜方向に延びる中心軸線を有する円筒状の洗濯槽と、以上の糸屑捕集装置とを備えることを特徴とする洗濯機である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、糸屑捕集装置は、上下方向または上下方向に対する傾斜方向に延びる中心軸線を有する円筒状の洗濯槽を備える洗濯機に用いられる。
糸屑捕集装置は、洗濯槽内の構造物の表面部に着脱可能に埋め込まれるので、当該表面部からはみ出さないように洗濯槽内に配置される。そのため、洗濯槽内の洗濯物が糸屑捕集装置にぶつかったり絡まったりしにくいので、糸屑捕集装置の破損を防止できる。
糸屑捕集装置において糸屑を取り込む取込口は、本体部の表面部において、洗濯槽内に露出されるように設けられる。これにより、糸屑捕集装置は、洗濯槽内で取込口の近くに存在する糸屑を直接かつ速やかに捕集できる。そのため、糸屑捕集装置における糸屑の捕集効率の向上を図ることができる。
糸屑捕集装置において移動可能に設けられた流出防止部材は、取込口に流れ込む水の勢いが強まることによって開位置まで移動して、本体部の内部の収容室と取込口とを連通させる。これにより、糸屑捕集装置は、取込口に流れ込む水の勢いを利用することによって、この水に含まれる糸屑を効率的に捕集できる。捕集された糸屑は、収容室に収容される。取込口に流れ込む水の勢いが強まった状態では、収容室に収容された糸屑は、取込口に流れ込む水の勢いによって収容室内に押し込められるので、捕集された糸屑が取込口を経由して収容室の外へ流出することを防止できる。
一方、流出防止部材は、取込口に流れ込む水の勢いが弱まることによって閉位置まで移動して収容室と取込口との間を遮断する。これにより、取込口に流れ込む水の勢いが弱まった状態でも、捕集された糸屑が取込口を経由して収容室の外へ流出することを防止できる。
【0014】
また、本発明によれば、洗濯槽内で糸屑捕集装置が装着される構造物は、洗濯槽内の洗濯物を撹拌するためのバッフルである。糸屑捕集装置は、バッフルの表面部からはみ出さないように洗濯槽内に配置される。そのため、バッフルが洗濯槽内の洗濯物を撹拌する際に、洗濯物が糸屑捕集装置にぶつかったり絡まったりしにくいので、糸屑捕集装置の破損を防止できる。
【0015】
また、本発明によれば、糸屑を取り込むための取込口は、洗濯槽の周方向において流出防止部材を挟むように並んで配置される第1取込口および第2取込口を含む。そして、前述した開位置は、第1開位置と、第2開位置とを含む。
流出防止部材は、第2取込口よりも第1取込口に流れ込む水の勢いが強まることによって第1開位置まで移動し、収容室と第1取込口とを連通させつつ収容室と第2取込口との間を遮断する。このとき、糸屑捕集装置は、捕集された糸屑が第2取込口を経由して収容室の外へ流出することを防止しつつ、第1取込口に流れ込む水に含まれる糸屑を捕集できる。
一方、洗濯槽内における水の流れが逆転することによって、第1取込口よりも第2取込口に流れ込む水の勢いが強まることがある。その場合、流出防止部材は、第2開位置まで移動し、収容室と第2取込口とを連通させつつ収容室と第1取込口との間を遮断する。このとき、糸屑捕集装置は、捕集された糸屑が第1取込口を経由して収容室の外へ流出することを防止しつつ、第2取込口に流れ込む水に含まれる糸屑を捕集できる。
このように、洗濯槽内における水の流れが反転する場合であっても、糸屑捕集装置は、捕集された糸屑が取込口を経由して収容室の外へ流出することを防止しつつ、取込口に流れ込む水に含まれる糸屑を捕集できる。
【0016】
また、本発明によれば、流出防止部材は、第1取込口および第2取込口のそれぞれに流れ込む水の勢いが弱まると、自重によって第1開位置と前記第2開位置との間の閉位置まで移動し、閉位置において、第1取込口および第2取込口のそれぞれと収容室との間をまとめて遮断する。これにより、捕集された糸屑が第1取込口および第2取込口のいずれかを経由して収容室の外へ流出することを防止できる。
【0017】
また、本発明によれば、以上の糸屑捕集装置を備える洗濯機では、当該糸屑捕集装置において、糸屑の捕集効率の向上を図りつつ、捕集された糸屑の流出および当該糸屑捕集装置の破損を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、この発明の一実施形態に係る洗濯機の内部構造の模式的な縦断面図である。
図2図2は、洗濯機における洗濯槽の内周部の一部を洗濯槽の中心軸線側から見た斜視図である。
図3図3は、使用状態における糸屑捕集装置の斜視図である。
図4図4は、メンテナンス状態における糸屑捕集装置の斜視図である。
図5図5は、糸屑捕集装置におけるベース部の正面図である。
図6図6は、流出防止部材が第1開位置にある状態におけるベース部の正面図である。
図7図7は、流出防止部材が第2開位置にある状態におけるベース部の正面図である。
図8図8は、変形例に係る糸屑捕集装置におけるベース部の正面図である。
図9図9は、変形例に係る糸屑捕集装置において流出防止部材が開位置にある状態におけるベース部の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下には、図面を参照して、この発明の実施形態について具体的に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る洗濯機1の内部構造の模式的な縦断面図である。
【0020】
まず、図1における上下方向Xを基準として洗濯機1の概要について説明する。上下方向Xのうち、上方を上方X1と称し、下方を下方X2と称する。なお、洗濯機1には、洗濯物Sの乾燥機能を有する洗濯乾燥機も含まれる。
【0021】
洗濯機1は、ボックス状に形成された筐体2と、筐体2内に収容された水槽3、洗濯槽4、モータ5、パルセータ6、構造物7および糸屑捕集装置8とを備える。
【0022】
水槽3は、たとえば樹脂製であり、有底円筒状に形成される。水槽3は、上端に開口部3Aを有する略円筒状の円周壁3Bと、円周壁3Bの中空部分を下方X2から塞ぐ円板形状の底壁3Cとを一体的に有する。開口部3Aは、円周壁3Bに連結されたカバー9によって開閉される。水槽3内には、水道水、風呂水および洗剤が溶けた液体などの水が溜められる。
【0023】
洗濯槽4は、たとえば金属製であり、水槽3よりも一回り小さい有底円筒状に形成される。洗濯槽4は、上端に出入口4Aを有する略円筒状の円周壁4Bと、円周壁4Bの中空部分を下方X2から塞ぐ円板形状の底壁4Cとを一体的に有する。洗濯槽4の円中心を通る中心軸線10は、この実施形態では、上下方向Xに沿って垂直に延びる。そのため、洗濯機1は、洗濯槽4が縦に配置された縦型洗濯機である。なお、中心軸線10が上下方向Xおよび水平方向Hのそれぞれに対する傾斜方向に延びることによって、洗濯槽4が斜めに配置されてもよい。
【0024】
この実施形態の洗濯槽4は、水槽3内に収容され、中心軸線10を中心として回転可能である。洗濯槽4の回転方向は、水槽3および洗濯槽4のそれぞれの周方向Yと一致する。以下では、中心軸線10を基準とした径方向を径方向Zと称し、径方向Zのうち、中心軸線10に向う側を径方向内側Z1と称し、中心軸線10から離れる側を径方向外側Z2と称する。この実施形態における周方向Yおよび径方向Zは、いずれも水平方向Hに沿う方向である。
【0025】
出入口4Aは、開口部3Aに下方X2から連通し、開口部3Aおよび出入口4Aは、カバー9によって一括開閉される。洗濯機1の使用者は、開放された出入口4Aを介して、洗濯槽4内に洗濯物Sを出し入れすることができる。底壁4Cには、貫通孔(図示せず)が形成され、水槽3内の水は、貫通孔を介して、水槽3と洗濯槽4との間で行き来できる。そのため、水槽3の水位と、洗濯槽4の水位とはほぼ一致する。
【0026】
モータ5は、水槽3の底壁3Cの下方X2に配置される。モータ5の出力軸は、中心軸線10に沿って上方X1へ延びる管状の第1出力軸5Aと、第1出力軸5Aに対して遊びを持って挿通される第2出力軸5Bとに分岐する。モータ5は、駆動力を第1出力軸5Aおよび第2出力軸5Bのどちらか一方または両方から出力することができる。
【0027】
第1出力軸5Aは、上方X1へ延びて、底壁3Cの円中心を貫通する。第1出力軸5Aは、底壁3Cと底壁4Cとの間で鍔状に張り出したフランジ部5Cを有し、フランジ部5Cが底壁4Cに固定されることで、洗濯槽4に連結される。モータ5が駆動されて第1出力軸5Aに駆動力が伝達されると、洗濯槽4が回転する。
【0028】
パルセータ6は、洗濯槽4の底壁4C上において水平方向Hに沿って配置される円盤である。パルセータ6の周方向は、洗濯槽4の周方向Yに一致し、パルセータ6の径方向は、洗濯槽4の径方向Zに一致する。パルセータ6の上面には、径方向Zに沿いつつ上方X1へ盛り上がった筋状の凸部6Aが周方向Yに並んで複数設けられる。
【0029】
モータ5の第2出力軸5Bにおいてフランジ部5Cよりも上方X1にはみ出た上端部が、洗濯槽4の底壁4Cの円中心を貫通して、パルセータ6の円中心部分に取り付けられる。モータ5が駆動されて第2出力軸5Bに駆動力が伝達されると、パルセータ6が、中心軸線10まわりに回転する。このとき、洗濯槽4の回転は、停止した状態にある。洗い運転やすすぎ運転の際、洗濯槽4内の洗濯物Sは、周方向Yに回転するパルセータ6の凸部6Aによって撹拌される。これにより、洗濯槽4内には、主に周方向Yに沿った水流が発生する。なお、パルセータ6とともに洗濯槽4も回転させることによって、周方向Yへ向けて一層勢いよく流れる水流を発生させることができる。
【0030】
構造物7は、洗濯槽4内、詳しくは、円周壁4Bの内周面4Dに設けられる。この実施形態の構造物7は、円周壁4Bの内周面から径方向内側Z1へ突出しつつ上下方向Xに沿って延びる筋状のバッフルである。構造物7は、径方向Zに扁平であり、周方向Yに沿って間隔を隔てて複数設けられる。構造物7は、図1に示すように中実であってもよいし、中空であってもよい。また、構造物7の径方向Zにおける寸法は、上下方向Xの全域で一定であってもよいし、図1に示すように、下部において一段小さくてもよい。構造物7は、洗濯槽4とともに回転し、その際、洗濯槽4内の洗濯物Sにぶつかって洗濯物Sを撹拌する。
【0031】
糸屑捕集装置8は、洗濯槽4内に溜まった水の中を漂う糸屑Kを捕集するために洗濯機1に用いられる装置である。なお、ここでの糸屑Kには、洗濯物Sから抜き出た糸だけでなく、ごみなどの固形浮遊物も含まれる。糸屑捕集装置8は、その外殻を構成する本体部20と、本体部20の内部に配置される流出防止部材21とを含む。図1では、説明の便宜上、本体部20の一部および流出防止部材21の断面部分にハッチングを付けることが省略される。
【0032】
図2は、洗濯槽4の内周部において糸屑捕集装置8が位置する部分を中心軸線10側から見た斜視図である。以下で構造物7および糸屑捕集装置8について説明する場合、「周方向Y」には、周方向Yに対する接線方向も含まれる。図2を参照して、構造物7は、周方向Yに沿って上下方向Xに延びる略長方形状の主面7Aと、周方向Yにおける主面7Aの両端から径方向外側Z2へ延びて洗濯槽4の円周壁4Bの内周面4Dに接続される一対の側面7Bとを含む。主面7Aおよび一対の側面7Bが、構造物7において洗濯槽4内に露出されるように径方向内側Z1へ突出した表面部7Cを構成する。表面部7Cの上下方向Xの途中には、主面7Aおよび一対の側面7Bを周方向Yに沿って切り欠くように径方向外側X2へ窪んだ凹部7Dが設けられる。凹部7Dに、糸屑捕集装置8が収容される。
【0033】
図3は、構造物7に取り付けられた使用状態における糸屑捕集装置8を抜き出した斜視図である。以降では、使用状態を基準として、上下方向X、周方向Yおよび径方向Zを用いて糸屑捕集装置8について説明する。図3を参照して、本体部20は、周方向Yに長手で径方向Zに扁平のボックス形状に形成される。本体部20は、カバー部22と、ベース部23とを含む。
【0034】
カバー部22は、図3において最も大きく表れた部分である。カバー部22は、上下方向Xおよび周方向Yに沿う主壁24と、周方向Yにおける主壁24の両端から径方向外側Z2へ延びる一対の側壁25と、主壁24の上端から径方向外側Z2へ延びる上壁26と、主壁24の下端から径方向外側Z2へ延びる下壁27とを一体的に含む。
【0035】
主壁24は、径方向Zに薄く周方向Yに長手の略矩形状の板状に形成される。主壁24は、その大部分の領域を径方向Zに貫通する略矩形状の排出口28が形成されることによって、排出口28を取り囲む額縁形状に形成される。排出口28の全域は、たとえばメッシュなどで構成されたシート状のフィルタ部材29によって覆われる。
【0036】
一対の側壁25は、径方向外側Z2へ向かうにつれて周方向Yにおける互いの間隔が広がるように、周方向Yおよび径方向Zの両方に対して傾斜して配置される。それぞれの側壁25は、上下方向Xに長手の略矩形状の板状に形成され、上下方向Xにおいて主壁24と同じ寸法を有する。それぞれの側壁25は、その大部分の領域を貫通する上下方向Xに長手の略矩形状の取込口30が形成されることによって、取込口30を取り囲む額縁形状に形成される。
【0037】
主壁24において径方向内側Z1を臨む側面と、一対の側壁25のそれぞれにおいて当該側面に連続する側面とは、本体部20の表面部20Aを構成する。表面部20Aにおいて、一対の側壁25の取込口30は、周方向Yにおける排出口28の両側に配置されるように設けられる。一対の取込口30のうち、図3における左側の取込口30を第1取込口30Aといい、図3における右側の取込口30を第2取込口30Bということにする。
【0038】
上壁26は、水平方向Hに沿う板状であり、一対の側壁25の上端間に架設されるとともに、主壁24の上端の周方向Yにおける全域に接続される。上壁26の上面には、係合部31が設けられる。係合部31は、構造物7に係合可能な爪(図示せず)を有する。
【0039】
下壁27は、水平方向Hに沿う板状であり、一対の側壁25の下端間に架設されるとともに、主壁24の下端の周方向Yにおける全域に接続される。下壁27の下面には、係合部32が設けられる。係合部32は、構造物7に係合可能な爪形状に形成される。
【0040】
図4は、メンテナンス状態における糸屑捕集装置8の斜視図である。図4では、図3の姿勢のカバー部22が水平方向Hに沿うように径方向内側Z1へ傾けられた状態が図示される。カバー部22の全体は、一対の側壁25と上壁26と下壁27とによって囲まれた開口33から主壁24へ向かう窪み34を有する皿状に形成される。
【0041】
ベース部23は、径方向Zに薄く上下方向Xおよび周方向Yに沿う略矩形の板状に形成された縦壁40と、縦壁40の上端部として周方向Yにおける全域に亘って径方向内側Z1へ折り曲げられた上壁41と、縦壁40の下端部として周方向Yにおける全域に亘って径方向内側Z1へ折り曲げられた下壁42とを含む。上壁41および下壁42のそれぞれの上面および下面は、水平方向Hに沿って平坦である。
【0042】
上壁41の下面には、下方X2へ突出した突出部43が一体的に設けられる。突出部43は、縦壁40から径方向内側Z1へ延び出たブロック状であり、径方向内側Z1から見て、下方X2へ細くなる略三角形状に形成される。突出部43は、その下端をなす先端44と、先端44から周方向Yの両側かつ上方X1へ向けて水平方向Hに対して傾斜して延びる一対の傾斜面45とを有する。
【0043】
先端44は、縦壁40の上下方向Xおよび周方向Yのそれぞれにおける略中央に位置する。一対の傾斜面45のうち、図4における左側の傾斜面45を第1傾斜面45Aといい、図4における右側の傾斜面45を第2傾斜面45Bということにする。第1傾斜面45Aおよび第2傾斜面45Bのそれぞれの下端が先端44であり、第1傾斜面45Aおよび第2傾斜面45Bのそれぞれの上端は上壁41の下面に接続される。第1傾斜面45Aと第2傾斜面45Bとは、先端44から上方X1へ向かうにつれて、周方向Yにおいて互いに離れるように延びる。
【0044】
縦壁40において径方向内側Z1の側面には、径方向内側Z1へ延びる支持軸46が設けられる。支持軸46は、先端44に対して僅かな隙間を隔てて下方X2に位置する。
【0045】
下壁42の上面において周方向Yにおける両端部には、仕切壁47が1つずつ一体的に設けられる。一対の仕切壁47は、周方向Yに薄く上下方向Xに延びる板状である。一対の仕切壁47のうち、図4における左側の仕切壁47を第1仕切壁47Aといい、図4における右側の仕切壁47を第2仕切壁47Bということにする。第1仕切壁47Aおよび第2仕切壁47Bのそれぞれの上端部47Cは、互いに接近するように折り曲げられ、上下方向Xおよび水平方向Hの両方に対して傾斜して延びる。それぞれの上端部47Cの延びる先には、突出部43の先端44が位置する。それぞれの上端部47Cの上端縁47Dは、径方向Zに沿って直線状に延びる。それぞれの仕切壁47は、径方向Zにおいて下壁42とほぼ同じ寸法を有し、上下方向Xにおける全域において縦壁40に接続される。
【0046】
第1仕切壁47Aの上端部47Cの上端縁47Dと、突出部43の先端44との間には、当該上端部47Cに沿う方向において長手の第1連通口48が形成される。第2仕切壁47Bの上端部47Cの上端縁47Dと、突出部43の先端44との間には、当該上端部47Cに沿う方向において長手の第2連通口49が形成される。
【0047】
下壁42において少なくとも周方向Yにおける両端部には、周方向Yに延びる回動軸50が設けられる。回動軸50は、カバー部22における一対の側壁25において、下壁27側の端部に連結される。これにより、カバー部22とベース部23とは、回動軸50まわりに相対的に回動可能である。そのため、カバー部22およびベース部23のうち、一方を他方に接近するように回動させると、ベース部23の上壁41、下壁42、突出部43および仕切壁47が、カバー部22の窪み34に収容され、糸屑捕集装置8は、図3に示す使用状態になる。このとき、第1取込口30Aは、周方向Yにおいて第1連通口48と同じ側にあり、第2取込口30Bは、周方向Yにおいて第2連通口49と同じ側にある。
【0048】
使用状態の糸屑捕集装置8において、カバー部22およびベース部23のうち、一方を他方から離れるように回動させると、ベース部23の上壁41、下壁42、突出部43および仕切壁47が、カバー部22の窪み34の外に配置され、糸屑捕集装置8は、図4に示すメンテナンス状態になる。
【0049】
流出防止部材21は、第1板51と、第2板52と、中間板53とを一体的に有する。第1板51、第2板52および中間板53は、いずれも、縦壁40の支持軸46から延びる略長方形状の薄板である。図4における流出防止部材21の姿勢を基準として、第1板51と第2板52とは周方向Yにおいて互いに離れるように延び、第1板51は、第1仕切壁47Aへ向けて延び、第2板52は、第2仕切壁47Bへ向けて延びる。中間板53は、第1板51と第2板52との間を下方X2へ延びる。径方向内側Z1から見て、第1板51と中間板53とのなす角度αと、第2板52と中間板53とのなす角度βとは同じである。
【0050】
第1板51と第2板52とは、図4では一体化された状態で図示され、たとえば1枚の長方形状の板を長手方向の中央で折り曲げることによって形成される。もちろん、第1板51と第2板52とは、別々に準備された後に接着や溶着などによって一体化されてもよい。いずれにせよ、第1板51において支持軸46とは反対側の先端51Aは、径方向Zに沿って直線状に延び、第2板52において支持軸46とは反対側の先端52Aは、径方向Zに沿って直線状に延びる。同様に、中間板53において支持軸46とは反対側の先端53Aも、径方向Zに沿って直線状に延びる。
【0051】
支持軸46は、流出防止部材21に対して挿通される。支持軸46は、図4では中間板53において先端53Aとは反対側の端部に挿通されるが、第1板51と第2板52との連結部分に挿通されてもよい。いずれにせよ、支持軸46が挿通された状態の流出防止部材21は、支持軸46まわりに周方向Yの両側へ回動するように移動可能である。
【0052】
図4における流出防止部材21は、閉位置にある。このとき、径方向内側Z1から見た流出防止部材21では、第1板51が、第1仕切壁47Aの上端部47Cと面一になって、第1連通口48を塞いだ状態にある。また、第2板52が第2仕切壁47Bの上端部47Cと面一になって、第2連通口49を塞いだ状態にある。また、中間板53は、上下方向Xに沿って延び、その先端53Aは、ベース部23の下壁42から隙間54を隔てて上方X1へ離れた状態にある。
【0053】
閉位置にある流出防止部材21の第1板51および第2板52と、第1仕切壁47Aおよび第2仕切壁47Bと、ベース部23の下壁42とによって囲まれた空間は、捕集された糸屑を収容するための収容室60である。収容室60は、径方向内側Z1から見て上方X1へ向けて周方向Yに狭くなる略三角形状に形成され、径方向Zに奥行きを有する空間である。収容室60は、ベース部23の縦壁40によって常に径方向外側Z2から塞がれた状態にある。流出防止部材21が閉位置にあるとき、中間板53が、周方向Yにおける収容室60の中央位置で上下方向Xに延びた状態にあるが、収容室60において中間板53を挟んだ2つの領域は、前述した隙間54を介して互いに連通した状態にある。
【0054】
流出防止部材21が閉位置にある状態で、糸屑捕集装置8を、図4に示すメンテナンス状態から図3に示す使用状態にすると、収容室60は、カバー部22の窪み34(図4参照)に収容された状態で、カバー部22の主壁24の排出口28に径方向外側Z2から対向し、主壁24のフィルタ部材29によって径方向内側Z1から覆われる。このときの収容室60は、流出防止部材21の本体部20の内部に存在し、フィルタ部材29の網目だけを介して本体部20の外部に連通した状態にある。
【0055】
使用状態の糸屑捕集装置8を、前述した構造物7の凹部7Dに嵌め入れると、本体部20の上下の係合部31および32が構造物7に係合することによって、図2に示すように、糸屑捕集装置8が構造物7に装着される。この状態の糸屑捕集装置8は、構造物7の表面部7Cに埋め込まれた状態にあり、本体部20の表面部20Aは、洗濯槽4内に露出され、構造物7の表面部7Cとほぼ面一である。表面部20Aでは、第1取込口30Aおよび第2取込口30Bのそれぞれが、周方向Yにおける両側を臨んだ状態で洗濯槽4内に露出される。
【0056】
このように、糸屑捕集装置8は、バッフルである構造物7の表面部7Cからはみ出さないように洗濯槽4内に配置される。そのため、構造物7が洗濯槽4内の洗濯物Sを撹拌する際に、洗濯槽4内の洗濯物Sが糸屑捕集装置8にぶつかったり絡まったりしにくいので、糸屑捕集装置8の破損を防止できる。
【0057】
たとえば係合部31を操作することによって、係合部31および32のそれぞれと構造物7との係合を解除すると、糸屑捕集装置8を構造物7の凹部7Dから離脱させて構造物7から分離することができる。その後、分離された糸屑捕集装置8を図4のメンテナンス状態にすることによって、収容室60に収容された糸屑を取り出して捨てることができる。
【0058】
次に、構造物7に装着された使用状態における糸屑捕集装置8の動作について、図5図7を参照しながら説明する。図5図7では、糸屑捕集装置8の本体部20の内部空間を径方向内側Z1から見た状態が図示される。
【0059】
図5では、流出防止部材21が閉位置にある状態が図示される。このとき、前述した第1取込口30Aおよび第2取込口30Bは、周方向Yにおいて流出防止部材21を挟むように並んで配置された状態にある。閉位置の流出防止部材21は、第1板51が第1連通口48を塞いで第2板52が第2連通口49を塞ぐことによって、第1取込口30Aおよび第2取込口30Bのそれぞれと収容室60との間をまとめて遮断した状態にある。
【0060】
周方向Yのうち、第1取込口30Aから第2取込口30Bに向かう方向を、第1方向Y1といい、第2取込口30Bから第1取込口30Aに向かう方向を、第2方向Y2という。洗濯槽4内において第1方向Y1または第2方向Y2へ向かう水の流れが発生すると、流出防止部材21は、閉位置から開位置まで回動する。この開位置は、流出防止部材21の回動方向において閉位置の両側にある第1開位置および第2開位置を含む。つまり、閉位置は、第1開位置と第2開位置との間にある。
【0061】
流出防止部材21は、その自重、特に中間板53の自重によって、常に閉位置へ向かうように付勢される。流出防止部材21を閉位置へ向かわせる付勢力を発生させるために、中間板53を少なくとも第1板51および第2板52よりも重くする必要がある。このように流出防止部材21の自重を用いる構成であれば、ばねなどの付勢部材を別途設けることによって流出防止部材21を閉位置へ付勢する構成に比べて、部品点数の削減を図れる。
【0062】
洗濯槽4内において第1方向Y1へ向かう水の流れが発生すると、その水が、白抜き矢印で示すように、第1取込口30Aから本体部20内部に流れ込んで流出防止部材21の第1板51を第1方向Y1へ向けて押す。このとき、第2取込口30Bよりも第1取込口30Aに流れ込む水の勢いが強まるので、流出防止部材21は、閉位置から図6に示す第1開位置まで回動する。
【0063】
第1開位置にある流出防止部材21は、第1板51が第1連通口48から下方X2へ外れて収容室60内に進入して上下方向Xに延びることによって、収容室60と第1取込口30Aとを連通させる。そのため、洗濯槽4内に溜まった水のうち第1取込口30Aに流れ込む水に含まれる糸屑Kが、第1取込口30Aによって取り込まれ、収容室60に収容される。なお、このときの第1板51の先端51Aは、ベース部23の下壁42から隙間55を隔てて離間した状態にあるので、糸屑Kは、隙間55を通ることによって、収容室60において、第1連通口48側の手前側領域だけでなく、第2連通口49側の奥側領域にも溜まる。
【0064】
前述したように、第1取込口30Aは、本体部20の表面部7Cにおいて、洗濯槽4内に露出されるように設けられる(図2参照)。これにより、糸屑捕集装置8は、洗濯槽4内で第1取込口30Aの近くに存在する糸屑Kを直接かつ速やかに捕集できる。また、糸屑捕集装置8は、第1取込口30Aに流れ込む水の勢いを利用することによって、この水に含まれる糸屑Kを効率的に捕集できる。そのため、糸屑捕集装置8における糸屑Kの捕集効率の向上を図ることができる。そして、第1取込口30Aに流れ込む水の勢いが強まった状態では、収容室60に収容された糸屑Kは、白抜き矢印で示すように第1取込口30Aから第1連通口48に流れ込む水の勢いによって収容室60内に押し込められるので、捕集された糸屑Kが第1取込口30Aを経由して収容室60の外へ流出することを防止できる。
【0065】
第1取込口30Aに流れ込んだ水は、図1において太い破線矢印で示すように、収容室60を経て排出口28から洗濯槽4内に戻される。水が排出口28を通過する際、水に含まれる糸屑Kは、排出口28に設けられたフィルタ部材29によって捕獲されて収容室60に留められる。
【0066】
図6に戻り、第1開位置にある流出防止部材21では、第2板52が第2連通口49から上方X1へ外れて突出部43の第2傾斜面45Bに下方X2から沿った状態にある。一方、中間板53が第2仕切壁47Bの上端部47Cに下方X2から接触して第2連通口49を下方X2から塞ぐことによって、第1開位置にある流出防止部材21は、収容室60と第2取込口30Bとの間を遮断する。そのため、流出防止部材21が第1開位置にある状態において、糸屑捕集装置8は、糸屑Kが第2取込口30Bを経由して収容室60の外へ流出することが防止しつつ、第1取込口30Aに流れ込む水に含まれる糸屑Kを捕集できる。
【0067】
流出防止部材21が第1開位置にある状態で、第1取込口30Aに流れ込む水の勢いが弱まると、流出防止部材21は、自重によって閉位置まで移動し、図5に示すように、閉位置において、第1取込口30Aおよび第2取込口30Bのそれぞれと収容室60との間をまとめて遮断する。これにより、第1取込口30Aに流れ込む水の勢いが弱まった状態でも、捕集された収容室60内の糸屑Kが浮力で浮かび上がることによって第1取込口30Aおよび第2取込口30Bのいずれかを経由して収容室60の外へ流出し、洗濯槽4内が糸屑Kで汚染されることを防止できる。
【0068】
一方、洗濯槽4内における水の流れが逆転することによって、洗濯槽4内において第1方向Y1とは逆の第2方向Y2へ向かう水の流れが発生すると、その水が、黒抜き矢印で示すように、第2取込口30Bから本体部20内部に流れ込んで流出防止部材21の第2板52を第2方向Y2へ向けて押す。このとき、第1取込口30Aよりも第2取込口30Bに流れ込む水の勢いが強まるので、流出防止部材21は、閉位置から図7に示す第2開位置まで回動する。
【0069】
第2開位置にある流出防止部材21は、第2板52が第2連通口49から下方X2へ外れて収容室60内に進入して上下方向Xに延びることによって、収容室60と第2取込口30Bとを連通させる。そのため、洗濯槽4内に溜まった水のうち第2取込口30Bに流れ込む水に含まれる糸屑Kが、第2取込口30Bによって取り込まれ、収容室60に収容される。なお、このときの第2板52の先端52Aは、ベース部23の下壁42から隙間56を隔てて離間した状態にあるので、糸屑Kは、隙間56を通ることによって、収容室60において、第2連通口49側の手前側領域だけでなく、第1連通口48側の奥側領域にも溜まる。
【0070】
前述したように、第2取込口30Bは、本体部20の表面部7Cにおいて、洗濯槽4内に露出されるように設けられる(図2参照)。これにより、糸屑捕集装置8は、洗濯槽4内で第2取込口30Bの近くに存在する糸屑Kを直接かつ速やかに捕集できる。また、糸屑捕集装置8は、第2取込口30Bに流れ込む水の勢いを利用することによって、この水に含まれる糸屑Kを効率的に捕集できる。そのため、糸屑捕集装置8における糸屑Kの捕集効率の向上を図ることができる。そして、第2取込口30Bに流れ込む水の勢いが強まった状態では、収容室60に収容された糸屑Kは、黒抜き矢印で示すように第2取込口30Bから第2連通口49に流れ込む水の勢いによって収容室60内に押し込められるので、捕集された糸屑Kが第2取込口30Bを経て収容室60の外へ流出することを防止できる。
【0071】
第2取込口30Bに流れ込んだ水は、前述したように、収容室60を経て排出口28から洗濯槽4内に戻され、その際、排出口28を通過する水に含まれる糸屑Kは、排出口28に設けられたフィルタ部材29によって捕獲されて収容室60に留められる(図1参照)。
【0072】
また、第2開位置にある流出防止部材21では、第1板51が第1連通口48から上方X1へ外れて突出部43の第1傾斜面45Aに下方X2から沿った状態ある。一方、中間板53が第1仕切壁47Aの上端部47Cに下方X2から接触して第1連通口48を下方X2から塞ぐことによって、第2開位置にある流出防止部材21は、収容室60と第1取込口30Aとの間を遮断する。そのため、流出防止部材21が第2開位置にある状態において、糸屑捕集装置8は、糸屑Kが第1取込口30Aを経由して収容室60の外へ流出することが防止しつつ、第2取込口30Bに流れ込む水に含まれる糸屑Kを捕集できる。
【0073】
流出防止部材21が第2開位置にある状態で、第2取込口30Bに流れ込む水の勢いが弱まると、流出防止部材21は、自重によって閉位置まで移動し、図5に示すように、閉位置において、第1取込口30Aおよび第2取込口30Bのそれぞれと収容室60との間をまとめて遮断する。これにより、第2取込口30Bに流れ込む水の勢いが弱まった状態でも、捕集された収容室60内の糸屑Kが浮力で浮かび上がることによって第1取込口30Aおよび第2取込口30Bのいずれかを経由して収容室60の外へ流出し、洗濯槽4内が糸屑Kで汚染されることを防止できる。
【0074】
以上のように、洗濯槽4内における水の流れが反転する場合であっても、糸屑捕集装置8は、捕集された糸屑Kがいずれかの取込口30を経由して収容室60の外へ流出することを防止しつつ、取込口30に流れ込む水に含まれる糸屑Kを捕集できる。
【0075】
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
【0076】
たとえば、前述した実施形態では、第1方向Y1および第2方向Y2という2つの方向に反転して水が流れることを想定して、流出防止部材21が閉位置から第1開位置および第2開位置という2つの開位置へ移動できる。水が第1方向Y1および第2方向Y2のどちらか一方にしか流れない場合には、流出防止部材21は、閉位置から1つの開位置だけに移動する。具体的には、図8に示す変形例のように、水が第1方向Y1にしか流れない場合には、本体部20は、第2取込口30Bおよび第2連通口49が省略された構成であり、図8において閉位置にある流出防止部材21は、第2板52が省略された構成である。
【0077】
洗濯槽4内において第1方向Y1へ向かう水の流れが発生すると、一部の水が、図8において白抜き矢印で示すように、第1取込口30Aから本体部20内部に流れ込んで流出防止部材21の第1板51を第1方向Y1へ向けて押す。このとき、第1取込口30Aに流れ込む水の勢いが強まるので、流出防止部材21は、閉位置から図9に示す開位置まで回動し、開位置において、収容室60と第1取込口30Aとを連通させる。一方、流出防止部材21が開位置にある状態で、第1取込口30Aに流れ込む水の勢いが弱まると、流出防止部材21は、自重によって閉位置まで回動し、図8に示すように、閉位置において、収容室60と第1取込口30Aとの間を遮断する。
【0078】
この変形例では、中間板53の自重を効果的に作用させて流出防止部材21を閉位置まで円滑に移動させるために、流出防止部材21が閉位置にあるときにおける中間板53は、第1板51から離れるように上下方向Xに対して傾斜して延びるとよい。また、洗濯槽4内において第2方向Y2だけに向かう水の流れが発生する場合には、糸屑捕集装置8の構成は、図8および図9を周方向Yに反転させた構成となる。
【0079】
また、流出防止部材21が円滑に回動できるように、径方向Zにおいて、流出防止部材21とフィルタ部材29および縦壁40のそれぞれとの間に、図1に示すような若干の隙間61が確保されることが好ましい。もちろん、流出防止部材21の円滑な回動を確保できるのであれば、収容室60からの糸屑Kの漏れを防止するために、隙間61を塞ぐシール部材(図示せず)を流出防止部材21に設けてもよい。
【0080】
また、前述した構造物7は、バッフルであったが、代わりに、洗濯槽4内の水を汲み上げるための流路(図示せず)であってもよい。この場合、パルセータ6の下面に、中心軸線10から放射状に延びる複数の羽根(図示せず)が形成され、パルセータ6の回転によって、これらの羽根が流路の下端の入口に水を押し込む。これにより、水が流路を上昇して、流路の上端の出口から吐き出されて洗濯槽4内に戻される。これにより、洗濯槽4内の水を循環させることによって繰り返し洗濯に用いられるので、少ない水での洗濯が可能になる。たとえば、この流路に糸屑捕集装置8を装着して、流路を流れる水が取込口30から収容室60を経由して排出口28から吐き出されて洗濯槽4内に戻るようにすれば、流路を流れる水に含まれる糸屑Kを捕集することができる。
【0081】
また、前述した実施形態では、1つの構造物7に対して1つの糸屑捕集装置8が装着されるが、1つの構造物7に対して複数の糸屑捕集装置8が装着されてもよい。また、洗濯機1が複数の構造物7を備える場合、全ての構造物7に糸屑捕集装置8が装着されてもよいし、糸屑捕集装置8が装着されない構造物7が存在してもよい。
【符号の説明】
【0082】
1 洗濯機
4 洗濯槽
7 構造物
7C 表面部
8 糸屑捕集装置
10 中心軸線
20 本体部
20A 表面部
21 流出防止部材
30 取込口
30A 第1取込口
30B 第2取込口
60 収容室
K 糸屑
X 上下方向
Y 周方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9