(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6504387
(24)【登録日】2019年4月5日
(45)【発行日】2019年4月24日
(54)【発明の名称】重金属を含む廃水の凝集横流沈降分離装置
(51)【国際特許分類】
B01D 21/02 20060101AFI20190415BHJP
【FI】
B01D21/02 F
B01D21/02 G
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-7723(P2015-7723)
(22)【出願日】2015年1月19日
(65)【公開番号】特開2016-131922(P2016-131922A)
(43)【公開日】2016年7月25日
【審査請求日】2018年1月12日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000229162
【氏名又は名称】日本ソリッド株式会社
(72)【発明者】
【氏名】波多野 倫
【審査官】
佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−085998(JP,A)
【文献】
特開2013−146685(JP,A)
【文献】
特開2013−022552(JP,A)
【文献】
特開2013−132621(JP,A)
【文献】
実開昭59−184903(JP,U)
【文献】
特開2012−110865(JP,A)
【文献】
実開平07−037999(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0162195(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 21/00−21/34
C02F 1/00−11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製錬用凝集横流分離装置の流入口の下流側に、トラクターまたはショベルカー、ダンプカーが進入するためのゲートを有する潜堤を設け、かつ該潜堤の下流側に撤去可能な越流壁と、該越流壁の下流側に垂下体の上縁部にフロートを設けた水流傾斜板とを各々少なくとも1列設けることを特徴とする、製錬用凝集横流沈降分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重金属を含む廃水の凝集横流沈降分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金、銀、白金などの金属は、例えばアルカリや酸を用いて鉱石に含まれる目的の金属を溶解し、その溶液から金属を取り出す湿式製錬法が採用されている。
この湿式製錬法の場合、多量の廃水が生ずるが、この廃水中には、多くの重金属が含有されているために、そのまま放流することができなかった。そこでこれらの廃水中から重金属等を除去するために、シックナーや凝集横流沈降分離装置によって処理がされていた。
【0003】
しかしながら、シックナーで処理する場合、多量の廃水を処理するためには莫大な設備を作らなければならず、また、固液分離された汚泥物も水分含量が多いために、その後の処理に多額の費用を要していた。
また凝集横流沈降分離装置の場合、凝集剤等を添加してフロックを形成させ、凝集横流沈降分離装置を流下する間に固形粒子の沈降分離を行っていた。この凝集横流沈降分離装置の場合、汚泥物は圧密され、水分含量も少ないことから、多くの精錬所で採用されている。しかしながら汚泥物を凝集横流沈降分離装置外に取りだす場合、凝集横流沈降分離装置内にトラクターまたはショベルカー、ダンプカーが進入し、トラクターで汚泥をかき集めてポンプで吸い出すかまたはショベルカーで掬い上げてダンプカーにのせて運び出すため、凝集横流沈降分離装置内に固液分離を促進するための装置類を設置することが不可能であった。
【0004】
従来の製錬用の凝集横流沈降分離装置は、
図1および
図2に示すように、例えば幅15m、深さ1.5m、長さ200m規模の凝集横流沈降分離装置1の一方に廃水の流入口2を設け、該流入口2の下流側に潜堤3を設け、他方流入口2に対向するように放流口4を設けると共に、凝集横流沈降分離装置1内にトラクターまたはショベルカー、ダンプカーが進入するためのスロープ状の斜路5が設けられている。潜堤3には、トラクターまたはショベルカー、ダンプカーが進入するためのゲート16が設けられている。
この凝集横流沈降分離装置は、通常2基以上を設置し、一方が汚泥物の搬出を行う場合は、他の凝集横流沈降分離装置に切り替えて連続処理を行っていた。
しかしながら、このような構造の凝集横流沈降分離装置は固形粒子の自然沈降を利用するため、放流口4における重金属の含有量が短期間で、国が定める基準値に達するために、直ぐに停止せざるを得なかった。従って1回の汚泥物の回収量も少ないと云う欠点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の水深の浅い凝集横流沈降分離装置は、沈殿物(汚泥物)の上を廃水が流れて、撹拌擾乱し、その上、風の影響で、浅い凝集横流沈降分離装置に沈殿した沈殿物が擾乱し易く、再浮上し、汚濁が常時発生する状態となり、その結果放流口における水質の悪化を招来していた。すなわち、一回の運転時間が短いために交互運転頻度が多くなり、また汚泥物を凝集横流沈降分離装置外に搬出するために該凝集横流沈降分離装置内の大量の水抜きが必要と成り、かつ汚泥物の濃度が低い(水分含量が多い)ため、投棄場所の面積確保をしなければならない等の問題があった。
本発明者は、これら従来の水深の浅い凝集横流沈降分離装置における欠点を解消すべく種々の研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は、水深の浅い凝集横流沈降分離装置において、流入口2の下流側に撤去可能な越流壁および/または水流傾斜板を少なくとも1列設けることを特徴とする凝集横流沈降分離装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、一回当りの運転時間を飛躍的に長くすることができるので交互運転頻度が少なくて済み、汚泥物の搬出時の凝集横流沈降分離装置内の水抜きの水量を少なくし、圧密度の高い汚泥物(水分含量が少ない)を得ることができる。それに伴って投棄場所のスペースを減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図5】本発明の越流壁として用いるコンクリートブロックの斜視図
【
図6】本発明の越流壁として用いるパネル型の正面図
【
図8】本発明の水流傾斜板を連結した状態を示した正面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
発明の対象となる凝集横流沈降分離装置は、特に金属の精錬時に生起する重金属を含有する廃水の処理に適したものであり、水深が通常1〜5m、長さ5〜700mの規模のものである。
【0010】
次に本発明を図面を参照しながら説明する。
図3は、幅10m、水深1m、長さ150mの凝集横流沈降分離装置の断面図であり、
図4はその平面図である。
凝集横流沈降分離装置1の流入口2から約6mの位置に潜堤3が設けられていると共に、凝集横流沈降分離装置1内にトラクターまたはショベルカー、ダンプカーが進入するためのスロープ状の斜路5が設けられている。潜堤3には、トラクターまたはショベルカー、ダンプカーが進入するためのゲート16が設けられている。
また潜堤3の下流側に流入口2から約30mの間隔を置いた位置に撤去可能な越流壁6が設けられている。この越流壁6の設ける位置は、廃水の単位時間当たりの流入量、廃水中の重金属含有量等を考慮して適宜決定される。この撤去可能な越流壁6は必要によりさらに下流側に越流壁6と間隔を設けて複数壁設けることができる。
図3および
図4の場合は流入口2から約70mの位置に2段目の越流壁7を設けた場合の凝集横流沈降分離装置である。
【0011】
本発明の撤去可能な越流壁6は例えば大型土嚢をそれぞれ隣接させて1列に設けることによって構築することができる。また撤去可能な越流壁6は大型土嚢の外、
図5に示すようなコンクリート製ブロック8や
図6に示す重錘代りのブロック体9にH型鋼10を鉛直に固定した支柱を間隔を設けて一列に配置し、そのH型鋼間にパネル11を差し込んで越流壁6とすることもできる。
【0012】
本発明は、前記撤去可能な越流壁6の下流側にさらに間隔を設けて水流傾斜板12を少なくとも流入口2に対向するよう1列設ける。
図3および
図4においては、最前列の水流傾斜板12は流入口2から約90mの位置に設置し、7列設けた場合を例示したものである。
本発明の水流傾斜板12とは、
図7に示すように垂下体13の上縁部にフロート14を設けたものであり、これを
図8に示すように連結して流入口2に対向するように展張する。
水流傾斜板12の垂下体13としては板状体、シート膜、メッシュ体、その他例えば実公平7−591号公報に開示されているものが使用できる。
また垂下体13の板状体としては、プラスチック板、金属板等が揚げられる。
【0013】
凝集横流沈降分離装置に展張される水流傾斜板12は、その両端を凝集横流沈降分離装置の両側壁に固定して設けてもよいが、例えば凝集横流沈降分離装置の両側壁の上縁部にレールを敷設し、そのレール上を滑走する連結具に水流傾斜板12の両端部を固定することもできる。このようにすることによって水流傾斜板12の展張位置を任意に変えることができるので、凝集横流沈降分離装置内の汚泥物の蓄積程度により適当な箇所に容易に設置することができる。
【0014】
本発明の凝集横流沈降分離装置に越流壁6と水流傾斜板12とを併用する場合は、
図3および
図4に示すように越流壁6の下流側に水流傾斜板12を設けることが好ましい。
【0015】
次に本発明を
図3および
図4に示した凝集横流沈降分離装置を用いた処理方法について説明する。
重金属を含有する廃水を凝集横流沈降分離装置の流入口2から300m
3/hrの量を連続的に投入すると汚泥物15が沈積し、放流口4部における廃水の濁度が1mg/Lに成るまで連続的に処理した。
また比較のため撤去可能な越流壁6・7および水流傾斜板12を用いない場合の処理を行った。その結果は以下のとおりである。
【符号の説明】
【0016】
1・・・・・凝集横流沈降分離装置
6・・・・・撤去可能な越流堤
12・・・・水流傾斜板