(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6504454
(24)【登録日】2019年4月5日
(45)【発行日】2019年4月24日
(54)【発明の名称】除塵機起動制御システム及び除塵機起動制御方法
(51)【国際特許分類】
E02B 5/08 20060101AFI20190415BHJP
【FI】
E02B5/08 103Z
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-140267(P2015-140267)
(22)【出願日】2015年7月14日
(65)【公開番号】特開2017-20293(P2017-20293A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2018年7月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(74)【代理人】
【識別番号】100138416
【弁理士】
【氏名又は名称】北田 明
(72)【発明者】
【氏名】杭本 弘
(72)【発明者】
【氏名】笹谷 美佐夫
【審査官】
苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】
特開平4−197408(JP,A)
【文献】
特開2001−98531(JP,A)
【文献】
特開2015−86519(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0116151(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 5/00〜 7/18
E03F 1/00〜 11/00
E02B 9/00〜 13/02
B01D 23/00〜 37/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水路に設けたスクリーンに捕捉される塵芥を取り除くための除塵機の起動を制御する除塵機起動制御システムであって、
前記スクリーンよりも上流側に設置される設備と、水路を流れる水の流速に基づいて前記設備から前記除塵機へ塵芥が到達する到達時間を割り出す割出手段と、前記設備から信号を出力する信号出力手段と、該信号出力手段からの出力信号に基づいて前記割出手段で割り出した塵芥の到達時間をカウントするカウント手段と、該カウント手段でカウントが終了したときの信号に基づいて前記除塵機を起動させる起動手段とを備えていることを特徴とする除塵機起動制御システム。
【請求項2】
前記信号出力手段は、所定量の塵芥群が前記設備から前記スクリーンに向けて流出したときに該設備から信号を出力する手段であることを特徴とする請求項1に記載の除塵機起動制御システム。
【請求項3】
前記設備は、前記スクリーンよりも上流側に設置される上流側スクリーンと、該上流側スクリーンの上流側の水位と下流側の水位との水位差を検出する水位差検出手段とを備え、前記信号出力手段は、前記水位差検出手段からの水位差が設定値を越えてから許容範囲に収束して正常に戻ったときに、前記所定量の塵芥群が前記設備から前記スクリーンに向けて流出したと判断して信号を出力する手段であることを特徴とする請求項2に記載の除塵機起動制御システム。
【請求項4】
前記カウント手段が、タイマから構成され、該タイマは、前記割出手段で割り出した到達時間をカウントしカウント終了時に信号を前記起動手段に出力するように構成されていることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載の除塵機起動制御システム。
【請求項5】
水路に設けたスクリーンに捕捉される塵芥を取り除くための除塵機の起動を制御する除塵機起動制御方法であって、
水路を流れる水の流速に基づいて前記スクリーンよりも上流側に設置される設備から前記除塵機へ塵芥が到達する到達時間を割り出す割出ステップと、前記設備から出力される信号に基づいて前記割出ステップで割り出した塵芥の到達時間をカウントするカウントステップと、該カウントステップでカウントが終了したときの信号に基づいて前記除塵機を起動させる起動ステップとを備えていることを特徴とする除塵機起動制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除塵機の起動を制御する除塵機起動制御システム及び除塵機起動制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水力発電設備においては、水路を流れる塵芥を捕捉するスクリーンと、そのスクリーンに補足した塵芥を取り除くための除塵機とを備えている。また、スクリーンの上流に、塵芥を検出する検知器を備え、その検知器により検出される塵芥の検出頻度からスクリーンが塵芥を捕捉する捕捉推定量を算出し、算出された捕捉推定量に基づいて除塵機の起動を制御する除塵機起動制御方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−127013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構成の除塵機起動制御方法では、捕捉推定量を塵芥の検知器の検出頻度に基づいて算出するのであるが、塵芥の検出頻度が時間経過とともに変化するため、多くの量の塵芥を検出して捕捉推定量を算出しないと、捕捉推定量の精度を高めることができない。このため、検出時間が多くかかってしまい、除塵機の起動が遅れてしまうことになる。除塵機の起動が遅れると、能力以上の塵芥が除塵機に到達してしまうため、除塵機が過負荷運転を行うことになる。その結果、除塵機が停止するという故障が度々発生して、発電が一時的に停止状態となり、溢水電力が発生するという不都合があった。一般的に、水路の上流側には、多量の塵芥を除去することができる大きな処理能力を有する大型の除塵機を配置し、多量の塵芥が流れてこない水路の下流側には、小型の除塵機を設置している。このような状況において、例えば大雨等の出水時には、下流側へも多量の塵芥が流れてくるため、上記のように除塵機の起動が遅れると、小型の除塵機は、過負荷運転による故障が更に発生し易く、早期改善が要望されている。
【0005】
そこで、本発明は、スクリーンに到達する塵芥の到達時間に合わせて除塵機を起動することによって、除塵機の過負荷運転による故障を防止することができる除塵機起動制御システム及び除塵機起動制御方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の除塵機起動制御システムは、水路に設けたスクリーンに捕捉される塵芥を取り除くための除塵機の起動を制御する除塵機起動制御システムであって、前記スクリーンよりも上流側に設置される設備と、水路を流れる水の流速に基づいて前記設備から前記除塵機へ塵芥が到達する到達時間を割り出す割出手段と、前記設備から信号を出力する信号出力手段と、該信号出力手段からの出力信号に基づいて前記割出手段で割り出した塵芥の到達時間をカウントするカウント手段と、該カウント手段でカウントが終了したときの信号に基づいて前記除塵機を起動させる起動手段とを備えていることを特徴としている。
【0007】
上記のように、設備からの信号が信号出力手段から出力されると、その出力信号に基づいて割出手段で割り出した塵芥の到達時間をカウントし、カウント終了後に起動手段が除塵機を起動させる。つまり塵芥が除塵機へ到達する到達時間に合わせて除塵機を起動させるので、除塵機の起動が遅れることがない。これにより、除塵機を過負荷運転させることなく、通常運転で塵芥を処理することができる。
【0008】
また、本発明に係る除塵機起動制御システムは、前記信号出力手段が、所定量の塵芥群が前記設備から前記スクリーンに向けて流出したときに該設備から信号を出力する手段であってもよい。
【0009】
上記のように、信号出力手段が、所定量の塵芥群が設備からスクリーンに向けて流出したときに設備から信号を出力する構成であれば、所定量の塵芥群が設備からスクリーンに向けて確実に流出したことを認識することができ、塵芥の処理を確実に行うことができる。
【0010】
また、本発明に係る除塵機起動制御システムは、前記設備が、前記スクリーンよりも上流側に設置される上流側スクリーンと、該上流側スクリーンの上流側の水位と下流側の水位との水位差を検出する水位差検出手段とを備え、前記信号出力手段は、前記水位差検出手段からの水位差が設定値を越えてから許容範囲に収束して正常に戻ったときに、前記所定量の塵芥群が前記設備から前記スクリーンに向けて流出したと判断して信号を出力する手段であってもよい。
【0011】
上記のように、水位差検出手段からの水位差が設定値を越えてから塵芥が除去されることによって、上流側スクリーンの上流側の水位と下流側の水位との水位差が許容範囲に収束して正常に戻ったときに、所定量の塵芥群が前記設備から前記スクリーンに向けて流出したと判断して信号を出力する。信号が出力されると、割出手段で割り出した塵芥の到達時間をカウントする。よって、塵芥の到達時間のカウントを開始するタイミングを上流側スクリーンの水位差により精度よく捉えて、除塵機の起動を高精度で制御することができる。
【0012】
また、本発明に係る除塵機起動制御システムは、前記カウント手段が、タイマから構成され、該タイマは、前記割出手段で割り出した到達時間をカウントしカウント終了時に信号を前記起動手段に出力するように構成されていてもよい。
【0013】
上記構成によれば、割出手段で割り出した到達時間をタイマがカウントしカウント終了時の出力信号を起動手段に出力して、除塵機が起動する。
【0014】
本発明に係る除塵機起動制御方法は、水路に設けたスクリーンに捕捉される塵芥を取り除くための除塵機の起動を制御する除塵機起動制御方法であって、水路を流れる水の流速に基づいて前記スクリーンよりも上流側に設置される設備から前記除塵機へ塵芥が到達する到達時間を割り出す割出ステップと、前記設備から出力される信号に基づいて前記割出ステップで割り出した塵芥の到達時間をカウントするカウントステップと、該カウントステップでカウントが終了したときの信号に基づいて前記除塵機を起動させる起動ステップとを備えていることを特徴としている。
【0015】
上記のように、設備から出力される出力信号に基づいて割出ステップで割り出した塵芥の到達時間をカウントし、カウント終了後に起動ステップが除塵機を起動させる。つまり塵芥が除塵機へ到達する到達時間に合わせて除塵機を起動させるので、除塵機の起動が遅れることがない。これにより、除塵機を過負荷運転させることなく、通常運転で塵芥を処理することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、スクリーンに到達する塵芥の到達時間に合わせて除塵機を起動する構成にすることによって、除塵機の過負荷運転による故障を防止することができる除塵機起動制御システム及び除塵機起動制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】水力発電設備に水を供給する水路を示す縦断側面図である。
【
図3】本発明の除塵機起動制御システムの構成を示すブロック図である。
【
図4】本発明の除塵機起動制御を示す第1のフローチャートである。
【
図5】本発明の除塵機起動制御を示す第2のフローチャートである。
【
図6】本発明の除塵機起動制御を示す第3のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る除塵機起動制御システムを図面に基づいて説明する。
図1には、貯水池(調整池)1を形成するためのダム2と、ダム2とダム2よりも下流側に設置する取水口ゲート3との間に形成される沈砂池4と、取水口ゲート3から流れる水を一旦蓄えておくための水槽5(
図2参照)とを備えている。以下において、ダム2と沈砂池4と取水口ゲート3とを上流側と称し、水槽5を下流側と称して説明する。
【0019】
沈砂池4は、水から土砂を取り除くための設備である。また、沈砂池4のダム2寄りに塵芥を捕捉するための1次スクリーン6を設置し、沈砂池4の取水口ゲート3寄りに塵芥を捕捉するための2次スクリーン7を設置し、2次スクリーン7の前面(上流側の面)に補足した塵芥を取り除くための2次用除塵機8を設置している。この2次用除塵機8は、図示していない電動モータの動力により駆動されて塵芥を取り除くように構成されている。
【0020】
水槽5は、発電所の出力変動による水の流量変化を吸収する設備である。また、水槽5には、
図2に示すように、塵芥を捕捉するための水槽スクリーン9を設置し、水槽スクリーン9の前面(上流側の面)に補足した塵芥を取り除くための水槽用除塵機10を設置している。この水槽用除塵機10は、爪状のレーキ11を備えるレーキ部12と、レーキ部12を上下方向に移動させるための電動モータ13と、レーキ部12を上下方向に移動案内するための案内部材14を備えている。レーキ11を水槽スクリーン9の前面に接触した状態で
図2の状態から矢印で示す上方へ電動モータ13の動力によりレーキ部12を移動させることによって、水槽スクリーン9の前面に補足した塵芥を上方へ掻き上げて図示していない上方の収容部へ収容するようにしている。
【0021】
除塵機起動制御システム15は、
図3に示すように、水槽スクリーン9よりも上流側に設置される設備16と、水路を流れる水の流速に基づいて設備16から水槽用除塵機10へ塵芥が到達する到達時間を割り出す割出手段17と、設備16から信号を出力する信号出力手段18と、信号出力手段18からの出力信号に基づいて割出手段17で割り出した塵芥の到達時間をカウントするカウント手段19と、カウント手段19でカウントが終了したときの信号に基づいて水槽用除塵機10を起動させる起動手段20を備えている。
【0022】
また、除塵機起動制御方法は、水路を流れる水の流速に基づいて水槽スクリーン9よりも上流側に設置される設備16から水槽用除塵機10へ塵芥が到達する到達時間を割り出す割出ステップと、設備16から出力される信号に基づいて割出ステップで割り出した塵芥の到達時間をカウントするカウントステップと、カウントステップでカウントが終了したときの信号に基づいて水槽用除塵機10を起動させる起動ステップとを備えている。
【0023】
設備16は、沈砂池4に設置された1次スクリーン6、2次スクリーン7、2次用除塵機8と、1次スクリーン6の上流側の水位と下流側の水位との水位差を検出する1次用水位差検出手段21と、2次スクリーン7の上流側の水位と下流側の水位との水位差を検出する2次用水位差検出手段22とを備えている。
【0024】
図1に示すように、1次用水位差検出手段21は、1次スクリーン6の上流側の水位を計測する第1水位センサ23と、1次スクリーン6の下流側の水位を計測する第2水位センサ24とから構成されている。第1水位センサ23及び第2水位センサ24は、1次用制御部27に接続されている。従って、1次用制御部27は、第1水位センサ23からの水位と第2水位センサ24との水位差が設定値を越えていると判定すると、信号を出力すると共に警報を発する。また、2次用水位差検出手段22は、2次スクリーン7の上流側の水位を計測する第3水位センサ25と、2次スクリーン7の下流側の水位を計測する第4水位センサ26とから構成されている。第3水位センサ25及び第4水位センサ26は、2次用制御部28に接続されている。従って、2次用制御部28は、第3水位センサ25からの水位と第4水位センサ26との水位差が設定値を越えていると判定すると、2次スクリーン7に塵芥が所定量以上溜まっていると判断して、信号を出力すると共に警報を発する。
【0025】
割出手段17は、設備16から水槽用除塵機10までの距離を水路を流れる水の流速で割ることによって予め割り出す手段であり、ここでは60分と割り出している。この60分は、設備16から水槽用除塵機10へ塵芥が到達するまで余裕の時間を加味した時間にしており、例えば大雨等の出水時において水路を流れる水の流速が速くなった場合でも、設備16から水槽用除塵機10へ塵芥が到達する前に、水槽用除塵機10の起動を開始できる時間である。
【0026】
信号出力手段18は、1次用水位差検出手段21又は2次用水位差検出手段22からの水位差が設定値を越えてから許容範囲に収束して正常に戻ったと判断した時に信号を出力する手段である。この1次用水位差検出手段21からの水位差により信号出力手段18から出力信号が出力される場合には、1次スクリーン6から2次スクリーン7に向けて所定量の塵芥群が流出したと判断し、2次用水位差検出手段22設備16からの水位差により信号出力手段18から出力信号が出力される場合には、2次スクリーン7から水槽スクリーン9に向けて所定量の塵芥群が流出したと判断する。
【0027】
カウント手段19は、タイマから構成され、タイマは、割出手段17で割り出した到達時間をカウントしカウント終了時に信号を起動手段20に出力するように構成されている。
【0028】
このように構成された水槽用除塵機の起動制御が3通りあり、それぞれについて説明する。まず第1の起動制御として、
図4に示すように、第1水位センサ23からの検出値と第2水位センサ24からの検出値とを1次用制御部27に取り込む(ステップS1,S2)。これらの検出値を取り込む度に検出値の差(水位差)が設定値を越えたかどうかを1次用制御部27が判定する(ステップS3)。設定値を越えたと判定すると、人手により塵芥を取り除く作業を行う(ステップS4)。作業後に水位差が許容範囲(例えば水位差0)になっているかどうかを判定し(ステップS5)、水位差が許容範囲に入っていると、1次スクリーン6から2次スクリーン7に向けて所定量の塵芥群が流出したと判断し、タイマが割出手段17で割り出した時間(ここでは60分)のカウントを開始する(ステップS6、カウントステップ)。カウントが終了しているかどうかを判定し(ステップS7)、終了している場合には、水槽用除塵機10を起動するために電動モータ13に駆動信号を出力する(ステップS8、起動ステップ)。
【0029】
上記のように設備16からの出力信号、つまり水位差が許容範囲(例えば水位差0)になった時の出力信号に基づいて割出手段17で割り出した塵芥の到達時間(ここでは60分)をカウントし、カウント終了後に起動手段20が水槽用除塵機10を起動させる。つまり塵芥が水槽用除塵機10へ到達する到達時間に合わせて水槽用除塵機10を起動させるので、水槽用除塵機10の起動が遅れることがない。
【0030】
第2の起動制御として、
図5に示すように、第1水位センサ23からの検出値と第2水位センサ24からの検出値とを1次用制御部27に取り込む(ステップS10,S11)。これらの検出値を取り込む度に検出値の差(水位差)が設定値を越えたかどうかを1次用制御部27が判定する(ステップS12)。1次用制御部27が設定値を越えたと判定し、かつ、水の流れが速くて塵芥を人為的に取り除く作業がし難いと判断すると、取水口ゲート3の切替スイッチ43Rを遠方操作から直接操作へ切り替える。続いて取水口ゲート3まで移動して取水口ゲート3を全閉にする(ステップS14)。この状態から塵芥を取り除く作業を行う(ステップS15)。作業後に水位差が許容範囲(例えば水位差0)になっているかどうかを判定し(ステップS16)、水位差が許容範囲になっていると、全閉となっている取水口ゲート3を全開にし(ステップS17)、その後、切替スイッチ43Rを直接操作から遠方操作へ切り替える(ステップS18)。この切り替えによって、1次スクリーン6から2次スクリーン7に向けて所定量の塵芥群が流出したと判断し、タイマが割出手段17で割り出した時間(ここでは60分)のカウントを開始する(ステップS19、カウントステップ)。カウントが終了しているかどうかを判定し(ステップS20)、終了している場合には、水槽用除塵機10を起動するために電動モータ13に駆動信号を出力する(ステップS21、起動ステップ)。
【0031】
この場合も、第1の起動制御と同様に、設備16からの出力信号、つまり水位差が許容範囲(例えば水位差0)になった時の信号により、1次スクリーン6から2次スクリーン7に向けて所定量の塵芥群が流出したと判断して、割出手段17で割り出した塵芥の到達時間(ここでは60分)をカウントし、カウント終了後に起動手段20が水槽用除塵機10を起動させる。つまり塵芥が水槽用除塵機10へ到達する到達時間に合わせて水槽用除塵機10を起動させるので、水槽用除塵機10の起動が遅れることがない。
【0032】
第3の起動制御として、
図6に示すように、第3水位センサ25からの検出値と第4水位センサ26からの検出値とを2次用制御部28に取り込む(ステップS30,S31)。これらの検出値を取り込む度に検出値の差(水位差)が設定値を越えたかどうかを2次用制御部28が判定する(ステップS32)。2次用制御部28が設定値を越えたと判定すると、2次用除塵機8を起動して2次スクリーン7に捕捉された塵芥を自動的に取り除く(ステップS33)。2次用除塵機8の起動後に水位差が許容範囲(例えば水位差0)になっているかどうかを2次用制御部28が判定し(ステップS34)、水位差が許容範囲になっていると、2次スクリーン7から水槽スクリーン9に向けて所定量の塵芥群が流出したと判断して、タイマが割出手段17で割り出した時間(ここでは60分)のカウントを開始する(ステップS35、カウントステップ)。カウントが終了しているかどうかを判定し(ステップS36)、終了している場合には、水槽用除塵機10を起動するために電動モータ13に駆動信号を出力する(ステップS37、起動ステップ)。
【0033】
この場合も、第1及び第2の起動制御と同様に、設備16からの出力信号、つまり水位差が許容範囲(例えば水位差0)になった時の信号により、2次スクリーン7から水槽スクリーン9に向けて所定量の塵芥群が流出したと判断して、割出手段17で割り出した塵芥の到達時間(ここでは60分)をカウントし、カウント終了後に起動手段20が水槽用除塵機10を起動させる。つまり塵芥が水槽用除塵機10へ到達する到達時間に合わせて水槽用除塵機10を起動させるので、水槽用除塵機10の起動が遅れることがない。
【0034】
第1の起動制御は、水路の水の流れが穏やかで、1次スクリーン6に捕捉された塵芥を人手で除去できる場合に用いるものであり、第2の起動制御は、水路の水の流れが速くて1次スクリーン6に捕捉された塵芥を人手で除去できない場合に用いることになる。つまり、第1の起動制御と第2の起動制御とは、第1水位センサ23からの検出値と第2水位センサ24からの検出値とに基づいて起動制御する時に、水路の水の流れに応じて人為的に選択して使用することになる。そして、第3の起動制御は、第3水位センサ25からの検出値と第4水位センサ26からの検出値とに基づいて起動制御されるが、第1の起動制御又は第2の起動制御を行っている最中に、第3の起動制御が開始されたとしても、第1の起動制御又は第2の起動制御による水槽用除塵機10の起動制御を優先して行い、第3の起動制御からの信号は無視することにしている。また、第3の起動制御が先に開始され、第3の起動制御中に、第1の起動制御又は第2の起動制御が開始されたとしても、第3の起動制御により水槽用除塵機10の起動制御を優先して行い、第1の起動制御又は第2の起動制御からの信号は無視することにしている。
【0035】
なお、本発明に係る除塵機起動制御システム及び除塵機起動制御方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々変更することができる。
【0036】
例えば、設備16から水槽用除塵機10へ塵芥が到達する到達時間を予め割り出した所定時間(60分)を用いたが、水槽用除塵機10の起動制御が開始されてからタイマによるカウントが開始されるまでの間に、水の流速の測定値と設備16から水槽用除塵機10までの距離(既知)とから到達時間を割り出す(演算する)ように構成してもよい。このように水槽用除塵機10の起動制御を行う度に、到達時間を割り出すことによって、水の流速の変動分を加味することができ、到達してくる塵芥に対する水槽用除塵機10の起動タイミングを常に同一のタイミングにすることができる利点がある。
【0037】
実施形態では、設備16を、沈砂池4に設置された1次スクリーン6、2次スクリーン7、2次用除塵機8と、1次スクリーン6の上流側の水位と下流側の水位との水位差を検出する1次用水位差検出手段21と、2次スクリーン7の上流側の水位と下流側の水位との水位差を検出する2次用水位差検出手段22とから構成したが、設備16を、貯水池1から沈砂池4へ排出される水と共に流れてくる所定量の塵芥群を検出する検出手段から構成してもよい。この場合、第1スクリーン6に捕捉される塵芥を自動的に取り除く除塵機を設けて、所定量の塵芥群を検出する検出手段からの検出信号に基づいて第1スクリーン6に塵芥が到達する到達時間を割り出して第1スクリーン6に塵芥が到達する前に、除塵機を起動するように構成してもよい。つまり、所定量の塵芥群を検出する検出手段からの検出信号に基づいて下流側に位置する任意のスクリーンに備えた除塵機又は全てのスクリーンに備えた除塵機を、各スクリーンに塵芥が到達する前に、各スクリーンに該当する除塵機を起動するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0038】
1…貯水池(調整池)、2…ダム、3…取水口ゲート、4…沈砂池、5…水槽、6…1次スクリーン、7…2次スクリーン、8…2次用除塵機、9…水槽スクリーン、10…水槽用除塵機、11…レーキ、12…レーキ部、13…電動モータ、14…案内部材、15…除塵機起動制御システム、16…設備、17…割出手段、18…信号出力手段、19…カウント手段、20…起動手段、21…1次用水位差検出手段、22…2次用水位差検出手段、23…第1水位センサ、24…第2水位センサ、25…第3水位センサ、26…第4水位センサ、27…1次用制御部、28…2次用制御部