(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6504558
(24)【登録日】2019年4月5日
(45)【発行日】2019年4月24日
(54)【発明の名称】車両用ノイズキャンセリング装置
(51)【国際特許分類】
H04B 1/10 20060101AFI20190415BHJP
【FI】
H04B1/10 L
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-20235(P2015-20235)
(22)【出願日】2015年2月4日
(65)【公開番号】特開2016-144131(P2016-144131A)
(43)【公開日】2016年8月8日
【審査請求日】2018年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100149261
【弁理士】
【氏名又は名称】大内 秀治
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(72)【発明者】
【氏名】軽部 俊和
(72)【発明者】
【氏名】田野 哲
【審査官】
前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−142937(JP,A)
【文献】
特開2006−254314(JP,A)
【文献】
特開2005−252919(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0117529(US,A1)
【文献】
特開2010−279001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放送信号が送信されていない周波数帯域においてアンテナが受信した受信信号から、前記放送信号が送信されている周波数帯域における車両ノイズ信号を推定するノイズ推定部と、
前記放送信号が送信されている周波数帯域で受信した受信信号から、前記車両ノイズ信号を除去するノイズ除去部と、
を備え、
前記ノイズ推定部は、前記放送信号が送信されている周波数帯域を周波数軸上で挟んだ、前記放送信号が送信されていない2つの周波数帯域のそれぞれにおいて前記アンテナが受信した前記受信信号から、前記放送信号が送信されている周波数帯域における前記車両ノイズ信号を推定する、車両用ノイズキャンセリング装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用ノイズキャンセリング装置であって、
前記放送信号は、所定の周波数帯域の範囲内で送信される信号であり、
前記ノイズ推定部は、前記所定の周波数帯域の範囲内で、前記放送信号が送信されていない周波数帯域において前記アンテナが受信した受信信号から、前記放送信号が送信されている周波数帯域における前記車両ノイズ信号を推定する、車両用ノイズキャンセリング装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用ノイズキャンセリング装置であって、
前記ノイズ推定部は、前記所定の周波数帯域の範囲内で、前記放送信号が送信されていない周波数帯域において前記アンテナが受信した受信信号から、前記所定の周波数帯域の全範囲における前記車両ノイズ信号を推定する、車両用ノイズキャンセリング装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用ノイズキャンセリング装置であって、
前記ノイズ除去部は、アンテナが受信した前記所定の周波数帯域の全範囲の受信信号から、前記所定の周波数帯域の全範囲における前記車両ノイズ信号を除去する、車両用ノイズキャンセリング装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用ノイズキャンセリング装置であって、
前記アンテナが受信した受信信号を周波数軸上で掃引することで、前記放送信号が送信されていない周波数帯域を検出する検出部を備える、車両用ノイズキャンセリング装置。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用ノイズキャンセリング装置であって、
前記車両用ノイズキャンセリング装置が搭載される車両には、前記車両の現在位置を検出するGPS装置が設けられ、
前記GPS装置が検出した前記現在位置に基づいて前記放送信号が送信されていない周波数帯域を検出する検出部を備える、車両用ノイズキャンセリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されたアンテナで受信される放送信号からノイズ信号を除去する車両用ノイズキャンセリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、ノイズ除去機能を備えた無線装置が開示されている。簡単に説明すると、通信を行う第1のアンテナが受信する受信信号と、ノイズ受信を行う第2のアンテナが受信するノイズ信号とをベースバンド信号の周波数に変換する。そして、それぞれのベースバンド信号をデジタル受信信号とデジタルノイズ信号とに変換し、2つのデジタル信号の差分をノイズ差分情報としてメモリに記憶し、新たに受信したデジタル受信信号からノイズ差分情報を減算することで、ノイズを除去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−304670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1では、信号を受信するための第1のアンテナと、ノイズを受信するための第2のアンテナとの2つのアンテナが必要なので、アンテナを搭載するスペースが1つのアンテナで済む場合に比べ2倍になるとともに、アンテナのコストも2倍となる。
【0005】
そこで、本発明は、ノイズ用のアンテナを設けることなく、受信信号に含まれるノイズを低減させる車両用ノイズキャンセリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車両用ノイズキャンセリング装置であって、放送信号が送信されていない周波数帯域においてアンテナが受信した受信信号から、前記放送信号が送信されている周波数帯域における車両ノイズ信号を推定するノイズ推定部と、前記放送信号が送信されている周波数帯域で受信した受信信号から、前記車両ノイズ信号を除去するノイズ除去部と、を備える。
【0007】
この発明によれば、アンテナが受信した受信信号に含まれるノイズを低減させることができ、ノイズ用のアンテナを別途設ける必要がない。
【0008】
本発明は、前記車両用ノイズキャンセリング装置であって、前記放送信号は、所定の周波数帯域の範囲内で送信される信号であり、前記ノイズ推定部は、前記所定の周波数帯域の範囲内で、前記放送信号が送信されていない周波数帯域において前記アンテナが受信した受信信号から、前記放送信号が送信されている周波数帯域における前記車両ノイズ信号を推定するようにしてもよい。これにより、車両ノイズ信号の推定を精度よく行うことができ、且つ、車両ノイズ信号の推定の処理負担を軽減させることができる。
【0009】
本発明は、前記車両用ノイズキャンセリング装置であって、前記ノイズ推定部は、前記所定の周波数帯域の範囲内で、前記放送信号が送信されていない周波数帯域において前記アンテナが受信した受信信号から、前記所定の周波数帯域の全範囲における前記車両ノイズ信号を推定してもよい。
【0010】
本発明は、前記車両用ノイズキャンセリング装置であって、前記ノイズ除去部は、アンテナが受信した前記所定の周波数帯域の全範囲の受信信号から、前記所定の周波数帯域の全範囲における前記車両ノイズ信号を除去してもよい。これにより、アンテナが受信した所定の周波数帯域の全範囲における受信信号に含まれるノイズを一括して低減させることができる。
【0011】
本発明は、前記車両用ノイズキャンセリング装置であって、前記アンテナが受信した受信信号を周波数軸上で掃引することで、前記放送信号が送信されていない周波数帯域を検出する検出部を備えてもよい。これにより、放送信号が送信されていない周波数帯域を容易に検出することができる。
【0012】
本発明は、前記車両用ノイズキャンセリング装置であって、前記車両用ノイズキャンセリング装置が搭載される車両には、前記車両の現在位置を検出するGPS装置が設けられ、前記GPS装置が検出した前記現在位置に基づいて前記放送信号が送信されていない周波数帯域を検出する検出部を備えてもよい。これにより、放送信号が送信されていない周波数帯域を容易に検出することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、アンテナが受信した受信信号に含まれるノイズを低減させることができ、ノイズ用のアンテナを別途設ける必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】
図1に示す車両に搭載されるラジオ受信機の概略構成図を示す。
【
図3】
図2に示す車両用ノイズキャンセリング装置の構成を示す図である。
【
図4】
図3に示す周波数解析部によって生成された受信信号の周波数スペクトルの一例を示す図である。
【
図5】
図3に示すノイズ推定部によって推定されたFMラジオ放送信号の全周波数帯域における車両ノイズ信号の周波数スペクトルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る車両用ノイズキャンセリング装置(車両用ラジオノイズ除去装置)について、好適な実施の形態を掲げ、添付の図面を参照しながら以下、詳細に説明する。
【0016】
図1は、実施の形態に係る車両10の側面図である。車両10は、駆動源となるモータ12と、モータ12を駆動し、その駆動を制御するモータ駆動制御装置14とを有する電動車両である。なお、車両10は、エンジンとモータとを搭載したハイブリッド車両であってもよく、エンジンのみを有する車両10であってもよい。モータ12は、例えば、車両10の前方に配置されたボンネット16下で、前輪WFの近傍に設けられた図示しないモータルーム内に配置されており、モータ駆動制御装置14は、後輪WRの近傍に設けられている。モータ駆動制御装置14は、図示しないバッテリの直流電流を3相の交流電流に変換してモータ12を駆動するドライバ(例えば、インバータ)14aと、ドライバ14aを制御する制御装置(コンピュータ)14bとを有する。
【0017】
ドライバ14aは、UVWの3相に応じたスイッチング素子(図示略)を複数有する。制御装置14bがこのスイッチング素子のオンオフを、PWM周期の範囲内で定められたデューティ比に応じて切り換えることで、ドライバ14aは前記バッテリの直流電流を3相の交流電流に変換して、モータ12を駆動させる。制御装置14bがデューティ比を変えることで、モータ12の駆動が制御される。車両10のルーフパネル18の後方には、放送信号(放送電波)を受信するアンテナ20が設けられている。なお、モータ駆動制御装置14のドライバ14aとモータ12とは、ハーネス22によって接続されており、このハーネス22によって3相の交流電流がモータ12に供給される。
【0018】
図2は、
図1に示す車両10に搭載されるラジオ受信機30の概略構成図を示す。ラジオ受信機30は、アンテナ20、バンドパスフィルタ32、AD変換器34、車両用ノイズキャンセリング装置36、および、チューナ38を有する。アンテナ20は、放送信号(以下、FMラジオ放送信号(FMラジオ放送電波)を例に挙げて説明する)を受信し、受信したアナログの受信信号をバンドパスフィルタ32に出力する。バンドパスフィルタ32は、アンテナ20が受信した受信信号のうち、FMラジオ放送信号の周波数帯域幅の受信信号ArfをAD変換器34に出力する。つまり、バンドパスフィルタ32から出力される受信信号Arfは、FMラジオ放送信号が放送される所定の周波数帯域(例えば、76MHz〜108MHzのFMラジオ周波数帯域)に制限されたアナログ信号となる。AD変換器34は、アナログの受信信号Arfをデジタルの受信信号Drfに変換して車両用ノイズキャンセリング装置36に出力する。
【0019】
なお、モータ駆動制御装置14がモータ12を駆動することで車両ノイズ信号(車両ノイズ電波)が発生することから、アンテナ20が受信する受信信号Arfは、FMラジオ放送信号と車両ノイズ信号とを含むことになる。これにより、AD変換器34から出力されるデジタルの受信信号Drfは、FMラジオ放送信号と、車両ノイズ信号とを有する。この車両ノイズ信号は、モータ駆動制御装置14がモータ12を駆動することで発生するものであることから、周波数軸上で繰り返し発生する。つまり、一定の周波数で車両ノイズ信号が発生する。
【0020】
車両用ノイズキャンセリング装置36は、デジタルの受信信号Drfから、車両ノイズ信号を除去(減算)した出力信号Soutを生成して、チューナ38に出力する。この車両用ノイズキャンセリング装置36の構成については後で詳しく説明する。チューナ38は、出力信号Soutをアナログ信号に変換して、検波・復調する。このチューナ38は、一般的に市販されているRFチューナであってもよい。チューナ38の出力信号であるオーディオ信号は、オーディオ増幅器(図示略)を通じて車両10の車室内に設けられたスピーカ(図示略)に供給され、前記スピーカから音が出力される。なお、チューナ38にDA変換器が設けられていない場合は、車両用ノイズキャンセリング装置36とチューナ38との間にDA変換器を設けてもよい。
【0021】
図3は、車両用ノイズキャンセリング装置36の構成を示す図である。車両用ノイズキャンセリング装置36は、周波数解析部40、空きチャネル検出部42、ノイズ推定部44、および、ノイズ除去部46を備える。この車両用ノイズキャンセリング装置36は、コンピュータとプログラムが記憶された記憶媒体とを有し(図示略)、該コンピュータがプログラムを実行することで、本実施の形態の車両用ノイズキャンセリング装置36として機能する。
【0022】
周波数解析部40は、AD変換器34が出力したデジタルの受信信号Drfの周波数を解析する。つまり、周波数解析部40は、受信信号Drfを時間領域から周波数領域に変換して周波数スペクトルの受信信号FDrfを生成することで周波数を解析する。周波数解析部40は、例えば、高速フーリエ変換(FFT)を用いて受信信号Drfの周波数を解析することができる。周波数解析部40は、生成した周波数スペクトルの受信信号FDrfを、空きチャネル検出部42、ノイズ推定部44、および、ノイズ除去部46に出力する。
図4は、周波数解析部40によって生成された受信信号FDrfの周波数スペクトルの一例を示す図である。この
図4は、FMラジオ放送信号が放送される所定の周波数帯域の一部の周波数帯域における受信信号FDrfの周波数スペクトルを示している。
【0023】
空きチャネル検出部(検出部)42は、周波数解析部40から送られてきた周波数スペクトルの受信信号FDrfを周波数軸上で掃引することで空きチャネルの周波数帯域(FMラジオ放送信号が送信または受信されていない周波数帯域)を検出する。空きチャネル検出部42は、検出した空きチャネルの周波数帯域をノイズ推定部44に出力する。なお、空きチャネル検出部42は、経度および緯度、または、地域に応じて、空きチャネルの周波数帯域が予め記憶されたテーブル(記録媒体)を有し、現在の車両10の位置情報に基づいて空きチャネルの周波数帯域を検出するようにしてもよい。この場合は、車両10には、車両10の現在位置を検出するためのGPS(Global Positioning System)装置が設けられている。
図4においては、受信信号FDrfの周波数スペクトルの図に重畳して、検出された空きチャネルの周波数帯域を図示するとともに、使用チャネルの周波数帯域(FMラジオ放送信号が送信または受信されている周波数帯域)を図示している。
【0024】
ノイズ推定部44は、空きチャネルの周波数帯域においてアンテナ20から受信した受信信号から、使用チャネルの周波数帯域における車両ノイズ信号を推定する。詳しく説明すると、ノイズ推定部44は、空きチャネルノイズ推定部44aと、所定周波数ノイズ推定部44bとを有する。空きチャネルノイズ推定部44aは、周波数解析部40が生成した周波数スペクトルの受信信号FDrfのうち、空きチャネル検出部42が検出した空きチャネルの周波数帯域における受信信号FDrfから、空きチャネルの周波数帯域における周波数スペクトルの車両ノイズ信号FDn1を推定する。具体的は、
図4に示す空きチャネルの周波数帯域の受信信号FDrfを、空きチャネルの周波数帯域における車両ノイズ信号FDn1と推定する。なお、ノイズ推定部44は、空きチャネルの周波数帯域の受信信号FDrfから車両ノイズ成分を抽出することで、周波数スペクトルの車両ノイズ信号FDn1を推定してもよい。
【0025】
そして、所定周波数ノイズ推定部44bは、空きチャネルノイズ推定部44aが推定した空きチャネルの周波数帯域における周波数スペクトルの車両ノイズ信号FDn1から、使用チャネルの周波数帯域における周波数スペクトルの車両ノイズ信号FDn2を推定する。ここで、周波数が変わると車両ノイズ信号も変動することから、これを考慮して、使用チャネルの周波数帯域における車両ノイズ信号FDn2を推定する。また、所定周波数ノイズ推定部44bは、推定した複数の空きチャネルの周波数帯域の車両ノイズ信号FDn1を補間することで、使用チャネルの周波数帯域の車両ノイズ信号FDn2を推定してもよい。例えば、
図4に示すように、使用チャネルの周波数帯域を挟んで、空きチャネルの周波数帯域が存在する場合は、これらの2つの空きチャネルの周波数帯域の車両ノイズ信号FDn1を補間することで、その間にある使用チャネルの周波数帯域における車両ノイズ信号FDn2を推定する。
【0026】
なお、ノイズ推定部44は、推定した空きチャネルの周波数帯域における周波数スペクトルの車両ノイズ信号FDn1と、推定した使用チャネルの周波数帯域における周波数スペクトルの車両ノイズ信号FDn2とを合成することで、FMラジオ放送信号の全周波数帯域(例えば、76MHz〜108MHz)における車両ノイズ信号FDntを推定してもよい。
図5は、ノイズ推定部44によって推定された車両ノイズ信号FDntの周波数スペクトルの一例を示す図であり、FMラジオ放送信号が放送される所定の周波数帯域の一部の周波数帯域における車両ノイズ信号FDntの周波数スペクトルを示している。
図5に示すように、FMラジオ放送信号が放送される所定の周波数帯域の車両ノイズ信号FDntは、車両ノイズ信号FDn1と車両ノイズ信号FDn2とが合成された信号であることがわかる。
【0027】
ノイズ除去部46は、周波数解析部40が出力した周波数スペクトルの受信信号FDrfから、ノイズ推定部44が推定した周波数スペクトルの車両ノイズ信号FDn2またはFDntを除去(減算)する。このとき、ノイズ除去部46は、同じ周波数同士で受信信号FDrfから車両ノイズ信号FDn2またはFDntを減算することで、受信信号FDrfから車両ノイズ信号FDn2またはFDntを除去する。これにより、車両ノイズ信号が除去された受信信号FDrfを得ることができる。ノイズ除去部46は、車両ノイズ信号FDn2またはFDntを除去した受信信号FDrfを出力信号Soutとしてチューナ38に出力する。
【0028】
チューナ38は、逆FFTを用いて出力信号Soutを周波数領域から時間領域に変換し、変換後の出力信号SoutをDA変換してアナログ信号に変換した後、検波・復調する。なお、チューナ38に逆FFTの機能やDA変換の機能がない場合には、ラジオ受信機30に、出力信号Soutに対して逆FFTを行う逆FFT処理部や、逆FFTが行われた後のデジタルの出力信号Soutをアナログに変換するDA変換器を設けてもよい。
【0029】
このように、本実施の形態の車両用ノイズキャンセリング装置36においては、ノイズ推定部44が、放送信号が送信されていない周波数帯域においてアンテナ20が受信した受信信号FDrfから、放送信号が送信されている周波数帯域における車両ノイズ信号FDn2を推定し、ノイズ除去部46が、放送信号が送信されている周波数帯域で受信した受信信号FDrfから、車両ノイズ信号FDn2を除去する。これにより、アンテナ20が受信した受信信号Arfに含まれるノイズを低減させることができ、ノイズ用のアンテナを別途設ける必要がない。
【0030】
放送信号は、所定の周波数帯域(76MHz〜108MHz)の範囲内で送信される信号であり、ノイズ推定部44は、所定の周波数帯域の範囲内で、放送信号が送信されていない周波数帯域においてアンテナ20が受信した受信信号FDrfから、放送信号が送信されている周波数帯域における車両ノイズ信号FDn2を推定する。これにより、車両ノイズ信号FDn2の推定を精度よく行うことができ、且つ、車両ノイズ信号FDn2の推定の処理負担を軽減させることができる。
【0031】
ノイズ推定部44は、所定の周波数帯域の範囲内で、放送信号が送信されていない周波数帯域においてアンテナ20が受信した受信信号FDrfから、所定の周波数帯域の全範囲における車両ノイズ信号FDntを推定し、ノイズ除去部46は、アンテナ20が受信した所定の周波数帯域の全範囲の受信信号FDrfから、車両ノイズ信号FDntを除去する。これにより、アンテナ20が受信した所定の周波数帯域の全範囲における受信信号Arfに含まれるノイズを一括して低減させることができる。
【0032】
空きチャネル検出部42が、アンテナ20が受信した受信信号FDrfを周波数軸上で掃引することで、放送信号が送信されていない周波数帯域を検出するので、放送信号が送信されていない周波数帯域を容易に検出することができる。なお、車両10に車両10の現在位置を検出するGPS装置が設けられている場合は、空きチャネル検出部42は、このGPS装置が検出した現在位置に基づいて放送信号が送信されていない周波数帯域を検出してもよい。この場合であっても、放送信号が送信されていない周波数帯域を容易に検出することができる。
【0033】
なお、上記実施の形態では、放送信号として、FMラジオ放送信号を例に挙げたが、AMラジオ放送信号(AMラジオ放送電波)であってもよく、地上デジタルTV信号等の他の放送信号であってもよい。要は、信号を電波で送信するものであれば適用可能である。
【符号の説明】
【0034】
10…車両 12…モータ
14…モータ駆動制御装置 14a…ドライバ
14b…制御装置 20…アンテナ
30…ラジオ受信機 32…バンドパスフィルタ
34…AD変換器 36…車両用ノイズキャンセリング装置
38…チューナ 40…周波数解析部
42…空きチャネル検出部 44…ノイズ推定部
46…ノイズ除去部