(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
<感温性樹脂>
以下、本発明の一実施形態に係る感温性樹脂について詳細に説明する。本実施形態の感温性樹脂は、上述した一般式(I)で表されるものである。
【0008】
一般式(I)中、複数のR
1は、同一または異なっていてもよい炭素数1〜10の1価の炭化水素基または水素原子を示す。炭素数1〜10の1価の炭化水素基としては、例えば、メチル基などのアルキル基、フェニル基などのアリール基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。アルキル基は、直鎖状であってもよいし、分岐したものであってもよい。
【0009】
一般式(I)中、R
2は、水素原子を示す。R
2が示す水素原子は、本実施形態の感温性樹脂において反応性成分として機能する。
【0010】
一般式(I)中、R
3は、炭素数12〜50の直鎖状アルキル基を示す。R
3が示す炭素数12〜50の直鎖状アルキル基は、本実施形態の感温性樹脂において結晶性成分として機能する。すなわち、本実施形態の感温性樹脂は、側鎖に炭素数12〜50の直鎖状アルキル基を有し、この側鎖が分子間力などによって秩序ある配列に整合されることにより結晶化する。R
3が示す炭素数の好ましい値は15〜30であり、より好ましい値は16〜25である。
【0011】
本実施形態の感温性樹脂は、上述した結晶化することに関連して融点を有する。融点とは、ある平衡プロセスにより、最初は秩序ある配列に整合されていたポリマーの特定部分が無秩序状態になる温度であり、示差熱走査熱量計(DSC)によって10℃/分の測定条件で測定して得られる値のことを意味するものとする。
【0012】
本実施形態の感温性樹脂は、上述した融点未満の温度で結晶化し、かつ融点以上の温度では相転位して流動性を示す。すなわち、本実施形態の感温性樹脂は、温度変化に対応して結晶状態と流動状態とを可逆的に起こす感温性を有する。
【0013】
そして、本実施形態の感温性樹脂は、一般式(I)で表されるように、主鎖にシロキサン結合を有するポリシロキサンである。より具体的には、本実施形態の感温性樹脂は、R
2で示される反応性成分と、R
3で示される結晶性成分とを備え、かつシリコーン骨格を有するポリオルガノシロキサンである。このような構成によれば、耐熱性および耐薬品性に優れるという効果が得られる。すなわち、従来の感温性樹脂は、通常、アクリル骨格を有するため、例えば、アルカリなどの薬品環境下または200℃以上の高温環境下では激しく加水分解を起こす。それゆえ、従来の感温性樹脂は、上述した環境下での使用が困難である。本実施形態の感温性樹脂は、上述のとおりシリコーン骨格を有することから、アクリル骨格を有する従来の感温性樹脂よりも優れた耐熱性および耐薬品性を発揮することが可能となる。
【0014】
一方、本実施形態の感温性樹脂は、一般式(I)中のaが0〜100の整数を示す。また、bは1〜100の整数を示し、好ましくは1〜99の整数を示し、より好ましくは1〜50の整数を示し、さらに好ましくは1〜30の整数を示す。cは1〜100の整数を示し、好ましくは1〜99の整数を示し、より好ましくは1〜79の整数を示し、さらに好ましくは1〜49の整数を示す。
【0015】
本実施形態の感温性樹脂の重量平均分子量としては、10,000〜50,000であるのが好ましく、20,000〜40,000であるのがより好ましいが、これらに限定されるものではない。重量平均分子量は、感温性樹脂をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定し、得られた測定値をポリスチレン換算した値である。
【0016】
上述した本実施形態の感温性樹脂は、例えば、ヒドロシリル化反応などによって調製することができる。具体的には、R
1およびR
2を有するポリヒドロシロキサンと、R
3を構成するアルファオレフィン(αオレフィン)とを、Karstedt触媒の存在下で反応させればよい。
【0017】
ポリヒドロシロキサンの具体例としては、下記式(a1)および(a2)で表される化合物などが挙げられる。
【化2】
[式中、nは1〜100の整数を示す。mは0〜50の整数を示す。]
【0018】
上述した式(a1)および(a2)中のnは、1〜80の整数を示すのが好ましく、1〜50の整数を示すのがより好ましい。また、上述したポリヒドロシロキサンは、市販品を用いることができる。市販のポリヒドロシロキサンとしては、例えば、いずれもGelest.inc製の「HMS−991」、「HMS−501」などが挙げられる。
【0019】
アルファオレフィンの具体例としては、下記式(b1)で表される1−オクタデセン、下記式(b2)で表される1−ドコセンなどが挙げられる。
【化3】
【0020】
上述したアルファオレフィンは、市販品を用いることができる。市販のアルファオレフィンとしては、例えば、出光興産(株)製の「リニアレン18」などが挙げられる。
【0021】
Karstedt触媒は、下記式(c)で表される。
【化4】
【0022】
Karstedt触媒は、市販品を用いることができる。市販のKarstedt触媒としては、例えば、東レ・ダウコーニング(株)製の「NC−25」などが挙げられる。
【0023】
上述したKarstedt触媒の存在下で行うポリヒドロシロキサンおよびアルファオレフィンの反応は、両者を混合した後、所定の反応温度および反応時間で行うのが好ましい。ポリヒドロシロキサンとアルファオレフィンとの混合比(モル)は、ポリヒドロシロキサン:アルファオレフィン=1:0.5〜1:1の範囲にするのが好ましい。Karstedt触媒の添加量としては、ポリヒドロシロキサンおよびアルファオレフィンの総量(以下、「モノマー総量」と言うことがある。)100重量部に対して0.1〜1重量部であるのが好ましい。反応温度としては、50〜80℃であるのが好ましく、60〜80℃であるのがより好ましい。反応時間としては、2〜8時間であるのが好ましく、3〜5時間であるのがより好ましい。
【0024】
反応後は、不純物である不斉オレフィンなどを溶剤洗浄によって取り除くのが好ましい。溶剤としては、例えば、アセトンなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。不純物除去の確認は、例えば、
1H−NMRなどによって行うことができる。
【0025】
<感温性粘着剤>
次に、本発明の一実施形態に係る感温性粘着剤について詳細に説明する。本実施形態の感温性粘着剤は、上述した一実施形態に係る感温性樹脂を含有するとともに、感温性樹脂の融点未満の温度で粘着力が低下するものである。すなわち、本実施形態の感温性粘着剤は、融点未満の温度で感温性樹脂が結晶化したときに粘着力が低下する割合で感温性樹脂を含有することから、被着体から感温性粘着剤を剥離するときには、感温性粘着剤を融点未満の温度に冷却すれば、感温性樹脂が結晶化することによって粘着力が低下する。また、感温性粘着剤を融点以上の温度に加熱すれば、感温性樹脂が流動性を示すことによって粘着力が回復するので、繰り返し使用することができる。
【0026】
融点は、23℃(室温)よりも高い温度であるのが好ましい。これにより、比較的少ない冷却エネルギーで融点未満の温度に冷却できることから、優れた剥離性を発揮することができる。融点の上限値としては、100℃以下であるのが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0027】
本実施形態の感温性粘着剤は、反応性ポリシロキサンおよびシラノール−トリメチルシリル修飾MQレジン(以下、「MQレジン」と言うことがある。)をさらに含有するのが好ましい。
【0028】
反応性ポリシロキサンは、本実施形態の感温性粘着剤において粘着成分として機能するものである。また、反応性ポリシロキサンは、上述した感温性樹脂におけるR
2で示される反応性成分と反応可能な官能基を有する。したがって、本実施形態の感温性粘着剤では、感温性樹脂の反応性成分(R
2)と反応性ポリシロキサンの官能基との反応によって架橋構造が形成されることから、優れた粘着物性を発揮することが可能となる。
【0029】
反応性ポリシロキサンが有する官能基としては、例えば、アルケニル基などが挙げられる。したがって、反応性ポリシロキサンとしては、例えば、アルケニル基含有ポリシロキサンなどが挙げられる。アルケニル基としては、例えば、ビニル基などの炭素数2〜10のアルケニル基が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0030】
反応性ポリシロキサンの具体例としては、下記式(d1)および(d2)で表される化合物などが挙げられる。
【化5】
[式中、xは1〜8,000の整数を示す。yは1〜2,000の整数を示す。zは1〜8,000の整数を示す。]
【0031】
反応性ポリシロキサンは、市販品を用いることができる。市販の反応性ポリシロキサンとしては、例えば、いずれもGelest.inc製の「VGM−021」、「DMS−V41」などが挙げられる。
【0032】
一方、MQレジンは、本実施形態の感温性粘着剤において凝集力成分として機能するものである。また、MQレジンは、下記式(e)で表され、通常、上述した感温性樹脂に相溶する。
【化6】
【0033】
MQレジンは、市販品を用いることができる。市販のMQレジンとしては、例えば、Gelest.inc製の「SQO−299」などが挙げられる。
【0034】
本実施形態の感温性粘着剤は、上述したポリヒドロシロキサンよりも重量平均分子量が大きい高分子量ポリヒドロシロキサンをさらに含有してもよい。これにより、感温性樹脂の反応性成分(R
2)と反応性ポリシロキサンの官能基との反応によって形成される架橋構造に偏りが生じるのを抑制して感温性粘着剤に適度な柔軟性を付与することができ、結果として感温性粘着剤の粘着性を向上させることができる。
【0035】
高分子量ポリヒドロシロキサンの重量平均分子量としては、6,000〜200,000であるのが好ましく、10,000〜150,000であるのがより好ましいが、これらに限定されるものではない。なお、上述したポリヒドロシロキサンの重量平均分子量としては、1,000〜5,000であるのが好ましく、1,000〜3,000であるのがより好ましいが、これらに限定されるものではない。高分子量ポリヒドロシロキサンの重量平均分子量は、上述したポリヒドロシロキサンの重量平均分子量の1.2〜200倍であるのが好ましく、4〜50倍であるのがより好ましい。
【0036】
高分子量ポリヒドロシロキサンの具体例としては、下記式(f)で表される化合物などが挙げられる。
【化7】
[式中、n’は2〜20の整数を示す。m’は50〜7000の整数を示す。]
【0037】
上述した高分子量ポリヒドロシロキサンは、市販品を用いることができる。市販のポリヒドロシロキサンとしては、例えば、Gelest.inc製の「HMS−013」などが挙げられる。
【0038】
本実施形態の感温性粘着剤は、上述した感温性樹脂を0.5〜2.5重量部、反応性ポリシロキサンを0.1〜1.5重量部、MQレジンを1.0〜4.0重量部、高分子量ポリヒドロシロキサンを0〜1.5重量部の割合で含有するのが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0039】
上述した本実施形態の感温性粘着剤の使用形態としては、特に限定されるものではなく、例えば、被着体に直接塗布して使用してもよいし、基材レスのシート状の形態で使用してもよい。感温性粘着剤を感温性粘着シートとして使用する場合には、その厚さが15〜400μmであるのが好ましく、120〜150μmであるのがより好ましい。
【0040】
また、本実施形態の感温性粘着剤は、テープ状の形態で使用することもできる。感温性粘着剤を感温性粘着テープとして使用する場合には、本実施形態の感温性粘着剤からなる粘着剤層を、フィルム状の基材の片面または両面に積層すればよい。フィルム状とは、フィルム状のみに限定されるものではなく、本実施形態の効果を損なわない限りにおいて、フィルム状ないしシート状をも含む概念である。
【0041】
基材の構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンエチルアクリレート共重合体、エチレンポリプロピレン共重合体、ポリ塩化ビニルなどの合成樹脂が挙げられる。
【0042】
基材は、単層体または複層体のいずれであってもよく、その厚さとしては、通常、5〜500μm程度である。基材には、粘着剤層に対する密着性を高めるうえで、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、ブラスト処理、ケミカルエッチング処理、プライマー処理などの表面処理を施すことができる。
【0043】
基材の片面または両面に粘着剤層を積層するには、感温性粘着剤に溶剤を加えた塗布液を、コーターなどによって基材の片面または両面に塗布して乾燥させればよい。なお、塗布液には、架橋反応させるためのKarstedt触媒を添加する。また、塗布液には、塗布前の反応を抑制するための禁止剤をさらに添加してもよい。これにより、禁止剤とKarstedt触媒が錯体を形成し、粘着剤層において架橋反応が生じるのを抑制することができる。そして、禁止剤の沸点以上に加熱して禁止剤を揮発させると、Karstedt触媒を介した架橋反応が進行する。禁止剤としては、例えば、1−ブチン−2−オール、2−メチル−3−ブチン−2−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1−ペンテン−3−オール、フェニルブチノール、1−エチニル−1−シクロヘキサノールなどが挙げられる。Karstedt触媒の添加量としては、感温性粘着剤100重量部に対して固形分換算で0.1〜2.0重量部であるのが好ましい。禁止剤の添加量としては、感温性粘着剤100重量部に対して固形分換算で0.1〜2.0重量部であるのが好ましい。上述した塗布液の構成は、感温性粘着剤を被着体に直接塗布して使用する場合、または基材レスのシート状の形態で使用する場合についても同様である。なお、塗布液を基材に塗布するコーターとしては、例えば、ナイフコーター、ロールコーター、カレンダーコーター、コンマコーター、グラビアコーター、ロッドコーターなどが挙げられる。
【0044】
粘着剤層の厚さとしては、5〜60μmであるのが好ましく、10〜60μmであるのがより好ましく、10〜50μmであるのがさらに好ましい。片面の粘着剤層の厚さと、他面の粘着剤層の厚さは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0045】
なお、本実施形態では、片面の粘着剤層が感温性粘着剤からなる限り、他面の粘着剤層は特に限定されない。他面の粘着剤層を、例えば、感温性粘着剤からなる粘着剤層で構成する場合、その組成は、片面の粘着剤層の組成と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0046】
また、他面の粘着剤層を、例えば、感圧性接着剤からなる粘着剤層で構成することもできる。感圧性接着剤は、粘着性を有するポリマーであり、例えば、天然ゴム接着剤、合成ゴム接着剤、スチレン/ブタジエンラテックスベース接着剤、アクリル系接着剤などが挙げられる。
【0047】
上述した本実施形態の感温性粘着シートおよび感温性粘着テープの表面には、離型フィルムを積層するのが好ましい。離型フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどからなるフィルムの表面に、シリコーンなどの離型剤を塗布したものなどが挙げられる。
【0048】
上述した感温性粘着剤の用途としては、特に限定されるものではなく、例えば、耐熱性および耐薬品性が要求される分野の粘着剤として好適に使用することができる。
【0049】
<感温性粘着剤組成物>
次に、本発明の一実施形態に係る感温性粘着剤組成物について詳細に説明する。本実施形態の感温性粘着剤組成物は、上述した一実施形態に係る感温性樹脂、反応性ポリシロキサン、シラノール−トリメチルシリル修飾MQレジンおよびKarstedt触媒を含有する。本実施形態の感温性粘着剤組成物は、高分子量ポリヒドロシロキサンをさらに含有してもよい。
その他の構成は、上述した一実施形態に係る感温性樹脂および感温性粘着剤と同様であるので、説明を省略する。
【0050】
以上、本発明に係る好ましい実施形態について例示したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り任意のものとすることができることは言うまでもない。
【0051】
例えば、上述の一実施形態では、感温性粘着剤が少なくとも反応性ポリシロキサンおよびMQレジンをさらに含有する場合を例にとって説明したが、感温性粘着剤は、上述した一実施形態に係る感温性樹脂を含有する限り、少なくとも反応性ポリシロキサンおよびMQレジンをさらに含有する構成に限定されるものではなく、いわゆるシリコーン系の粘着剤に使用される一般的な材料で構成することができる。
【0052】
以下、合成例および実施例を挙げて本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明は以下の合成例および実施例に限定されるものではない。
【0053】
合成例で使用した原料は、以下のとおりである。
ポリヒドロシロキサン(a1):Gelest.inc製の重量平均分子量が1,800である上述した式(a1)で表される「HMS−991」
アルファオレフィン(b1):出光興産(株)製の上述した式(b1)で表される1−オクタデセン「リニアレン18」
アルファオレフィン(b2):東京化成工業(株)製の上述した式(b2)で表される1−ドコセン
Karstedt触媒:東レ・ダウコーニング(株)製の上述した式(c)で表される「NC−25」
【0054】
(合成例1)
下記式に基づいて感温性樹脂(I−1)を合成した。
【化8】
[式中、nは1〜100の整数を示す。bは1〜99の整数を示す。cは1〜99の整数を示す。]
【0055】
まず、ガラス製のフラスコにポリヒドロシロキサン(a1)を5.0g、アルファオレフィン(b1)を19.0gの割合でそれぞれ投入し、70℃で加熱撹拌しながらKarstedt触媒を120mg投入し、70℃で4時間加熱撹拌した。なお、ポリヒドロシロキサン(a1)とアルファオレフィン(b1)との混合比(モル)は、ポリヒドロシロキサン(a1):アルファオレフィン(b1)=1:1であり、Karstedt触媒の添加量は、モノマー総量100重量部に対して0.5重量部である。
【0056】
70℃で4時間加熱撹拌した後、液温を50℃に下げてからアセトンを20g投入した。そして、5分間撹拌した後にアセトンを廃棄した。このアセトンによる溶剤洗浄を3回繰り返して不純物を取り除いた後、フラスコ内の残留物を50℃で真空乾燥して感温性樹脂(I−1)を得た。感温性樹脂(I−1)は、上述した一般式(I)中、aが0の構成を有する。
【0057】
得られた感温性樹脂(I−1)において、
1H−NMRから算出した(CH
3HSiO
1/2)ユニットと(CH
3C
18H
37SiO
1/2)ユニットの比は1:9であった。また、感温性樹脂(I−1)の融点および重量平均分子量は、以下のとおりであった。
融点:43℃
重量平均分子量:24,000
【0058】
なお、融点は、感温性樹脂(I−1)をDSCで10℃/分の測定条件で測定することによって得た。重量平均分子量は、感温性樹脂(I−1)をGPCで測定し、得られた測定値をポリスチレン換算することによって得た。
【0059】
(合成例2)
まず、アルファオレフィン(b1)を19.0gに代えて15.2gにした以外は、上述した合成例1と同様にしてポリヒドロシロキサン(a1)、アルファオレフィン(b1)およびKarstedt触媒を加熱撹拌した。なお、ポリヒドロシロキサン(a1)とアルファオレフィン(b1)との混合比(モル)は、ポリヒドロシロキサン(a1):アルファオレフィン(b1)=1:0.8であり、Karstedt触媒の添加量は、モノマー総量100重量部に対して0.5重量部である。
【0060】
次に、合成例1と同様にして溶剤洗浄を行い、不純物を取り除いた後、フラスコ内の残留物を50℃で真空乾燥して感温性樹脂(I−2)を得た。感温性樹脂(I−2)は、上述した一般式(I)中、aが0である。また、bは1〜99の整数を示す。cは1〜99の整数を示す。
【0061】
得られた感温性樹脂(I−2)において、
1H−NMRから算出した(CH
3HSiO
1/2)ユニットと(CH
3C
18H
37SiO
1/2)ユニットの比は1:3であった。また、感温性樹脂(I−2)の融点および重量平均分子量を合成例1と同様にして測定した結果、以下のとおりであった。
融点:38℃
重量平均分子量:28,000
【0062】
(合成例3)
アルファオレフィン(b1)を19.0gに代えて11.4gにした以外は、上述した合成例1と同様にしてポリヒドロシロキサン(a1)、アルファオレフィン(b1)およびKarstedt触媒を加熱撹拌した。なお、ポリヒドロシロキサン(a1)とアルファオレフィン(b1)との混合比(モル)は、ポリヒドロシロキサン(a1):アルファオレフィン(b1)=1:0.6であり、Karstedt触媒の添加量は、モノマー総量100重量部に対して0.5重量部である。
【0063】
次に、合成例1と同様にして溶剤洗浄を行い、不純物を取り除いた後、フラスコ内の残留物を50℃で真空乾燥して感温性樹脂(I−3)を得た。感温性樹脂(I−3)は、上述した一般式(I)中、aが0である。また、bは1〜99の整数を示す。cは1〜99の整数を示す。
【0064】
得られた感温性樹脂(I−3)において、
1H−NMRから算出した(CH
3HSiO
1/2)ユニットと(CH
3C
18H
37SiO
1/2)ユニットの比は2:3であった。また、感温性樹脂(I−3)の融点および重量平均分子量を合成例1と同様にして測定した結果、以下のとおりであった。
融点:36℃
重量平均分子量:29,000
【0065】
(合成例4)
アルファオレフィン(b1)に代えてアルファオレフィン(b2)を23.0g使用した以外は、上述した合成例1と同様にしてポリヒドロシロキサン(a1)、アルファオレフィン(b2)およびKarstedt触媒を加熱撹拌した。なお、ポリヒドロシロキサン(a1)とアルファオレフィン(b2)との混合比(モル)は、ポリヒドロシロキサン(a1):アルファオレフィン(b2)=1:0.8であり、Karstedt触媒の添加量は、モノマー総量100重量部に対して0.5重量部である。
【0066】
次に、合成例1と同様にして溶剤洗浄を行い、不純物を取り除いた後、フラスコ内の残留物を50℃で真空乾燥して感温性樹脂(I−4)を得た。感温性樹脂(I−4)は、上述した一般式(I)中、aが0である。また、bは1〜99の整数を示す。cは1〜99の整数を示す。
【0067】
得られた感温性樹脂(I−4)において、
1H−NMRから算出した(CH
3HSiO
1/2)ユニットと(CH
3C
18H
37SiO
1/2)ユニットの比は1:3であった。また、感温性樹脂(I−4)の融点および重量平均分子量を合成例1と同様にして測定した結果、以下のとおりであった。
融点:66℃
重量平均分子量:33,000
【0068】
[実施例1〜7]
<感温性粘着テープの作製>
まず、合成例1〜4で得た感温性樹脂(I−1〜4)、反応性ポリシロキサン、MQレジンおよび高分子量ポリヒドロシロキサンを表1に示す組み合わせで混合して感温性粘着剤を得た。使用した反応性ポリシロキサン、MQレジンおよび高分子量ポリヒドロシロキサンは、以下のとおりである。
反応性ポリシロキサン:Gelest.inc製の上述した式(d2)で表されるアルケニル基含有ポリシロキサン「DMS−V41」
MQレジン:Gelest.inc製の上述した式(e)で表される「SQO−299」
高分子量ポリヒドロシロキサン:Gelest.inc製の重量平均分子量が60,000である上述した式(f)で表される「HMS−013」
【0069】
次に、得られた感温性粘着剤をトルエンによって固形分濃度が70重量%となるように調整し、合成例で使用したのと同じKarstedt触媒を固形分換算で1重量部、および禁止剤として2−メチル−3−ブチン−2−オールを固形分換算で1重量部加えて塗布液を得た。そして、塗布液を厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムのコロナ処理した片面に塗布し、100℃で10分間加熱して感温性樹脂の反応性成分(R
2)と反応性ポリシロキサンの官能基(ビニル基)を架橋反応させ、厚さ30μmの粘着剤層が形成された感温性粘着テープを得た。
【0070】
<評価>
得られた感温性粘着テープについて、180°剥離強度、耐熱性および耐薬品性を評価した。各評価方法を以下に示すとともに、その結果を表1に示す。
【0071】
(180°剥離強度)
融点+20℃および融点−20℃の各雰囲気温度におけるステンレス鋼板に対する180°剥離強度をJIS Z0237に準拠して測定した。具体的には、以下の条件で感温性粘着テープをステンレス鋼板に貼着した後、ロードセルを用いて300mm/分の速度で180°剥離した。
【0072】
[融点+20℃]
融点+20℃の雰囲気温度で感温性粘着テープをステンレス鋼板に貼着して20分間静置した後、180°剥離した。
【0073】
[融点−20℃]
融点+20℃の雰囲気温度で感温性粘着テープをステンレス鋼板に貼着し、この雰囲気温度で20分間静置した後、雰囲気温度を融点−20℃に下げ、この雰囲気温度で20分間静置した後、180°剥離した。
【0074】
(耐熱性)
熱重量分析(TGA)で評価した。具体的には、セイコーインスツルメンツ社(Seiko Instruments Inc.)製の熱重量分析装置「TG/DTA 6200」を用い、窒素ガス雰囲気下、10℃/分、25〜500℃の昇温過程で重量変化を測定し、式:(200℃における重量)/(25℃における重量)×100に当てはめて200℃における重量残存率(%)を算出した。この値が大きいほど、耐熱性に優れることを示す。
【0075】
(耐薬品性)
感温性粘着テープを10重量%の水酸化ナトリウム水溶液に以下の条件で浸漬することによって評価した。
浸漬温度:40℃
浸漬時間:10分
【0076】
評価基準は、以下のように設定した。
○:感温性粘着テープが膨潤する。
×:感温性粘着テープが膨潤しない。
【0077】
[比較例]
以下のアクリル骨格含有感温性樹脂からなる感温性粘着剤を使用した以外は、上述した実施例1〜7と同様にして感温性粘着テープを得た。
(アクリル骨格含有感温性樹脂)
組成:ベヘニルアクリレート/メチルアクリレート/アクリル酸=45重量部/50重量部/5重量部
融点:55℃
重量平均分子量:540,000
【0078】
そして、得られた感温性粘着テープについて、上述した実施例1〜7と同様にして180°剥離強度、耐熱性および耐薬品性を評価した。その結果を表1に示す。
【0080】
表1から明らかなように、実施例1〜7はいずれも、180°剥離強度、耐熱性および耐薬品性の全てに優れているのがわかる。