【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明では、前述の現象に基づき、下記の方法により放射性核種のα崩壊およびβ崩壊速度を加速する機能を有する原子炉を提供する。
1.二つの領域(高速中性子+熱中性子)を有する原子炉
中性子を利用してα崩壊速度及びβ崩壊速度を加速するためには、放射性元素の中性子捕獲断面積、および核分裂断面と中性子エネルギーの関係に着目することが必要である。幅広いエネルギー分布の中性子を利用するために、高速中性子および熱中性子の両者を同時に利用できる原子炉が望ましい。このためには、基本的に一つの原子炉容器内に、高速中性子領域の第1容器と熱中性子領域の第2容器の二つの領域が存在する。具体的には、一つの原子炉容器内にもう一つの容器を入れることでそれを実現する。
【0031】
図2A、2Bおよび2Cは、高速中性子領域と熱中性子領域の二つが存在する原子炉の構造を模式的に示す。
図2Aに示す構造では、第2容器12内にまず放射能消滅用集合体(FP)24を熱中性子領域に装荷する。この第2容器には2次冷却材入り口43と出口44が取り付けてある。さらに第2容器12内に第1容器11を収容し、内部にUとPuに加えてMAを混合した燃料棒を集合した燃料集合体22を装荷する。燃料集合体の周囲には、特許文献3に基づいた、支持体等の熱変形により中性子反射体の反射体効率が変化する負荷追随型制御方式を可能にする反射体31を設置する。
図2Bに示す構造では、第2容器12内にまずFP消滅用集合体24を装荷する。この第2容器には2次冷却材入り口43と出口44が取り付けてある。さらに第2容器12内に第1容器11を収容し、内部に燃料集合体22を装荷する。燃料集合体の周囲には、特許文献3に基づいた熱変形する反射体31を設置する。さらに、この構造では、燃料集合体22に混合するMA濃度が高い場合を想定している。従って、前述の通り、MAの自発核分裂により発生する中性子の過剰対策として、制御棒140を装荷することも有効である。そして追加的措置として、必要に応じて、基本的に炉心を臨界寸法に近くして、熱膨張/収縮に基づいた負荷追随型制御方式分轄反射体31を設置する。
図2Bに示した原子炉内構造とは別の構造を
図2Cに示す。この構造では、第1容器内に注入する一次冷却材を自然対流させる。原子炉容器1の中に第1容器11を配置する。そして第1容器11内に燃料集合体22、MA消滅用集合体23を装荷し、その周囲に反射体31を配置する。反射体31と燃料集合体22、MA消滅集合体23の周囲に第1冷却材の自然対流を促進する円筒160を配置する。さらに第1容器の周りに第2容器12を配置する。第2容器12内にFP消滅用集合体24を配置し、第2次冷却材を2次冷却材入口43から出口44に通水・循環させる。第1容器内の核反応および第2容器内のFPからの発熱により第2次冷却材を加熱する。第1冷却材としてPb−Bi以外にSnを使用することも可能である。
本発明では、製造および運転コストを低減した放射能消滅用原子炉製造を目的としている。そこで、特許文献3に詳述されているような、小型の炉心(燃料集合体)の周りに、熱膨張現象による反射体の熱変形を利用した負荷追随型制御方式を採用する。本発明の反射体の材料はカーボン(C)またはベリリウム(Be)で作製する。さらに、本発明で用いる燃料集合体を構成するステンレス鋼製燃料棒には、Zr−Pu−U組成の金属燃料ピンを挿入する。この燃料棒を50本以上束ねて燃料棒とする。この金属燃料ピンは、中性子照射により燃料ピンの中に希ガス生成物が均一分布状に生成され、さらに600〜650℃の間で相変化が発生することが報告されている(非特許文献10)。この二つの現象により、燃料ピンが数%オーダーで熱膨張することに起因して、この温度範囲で核分裂の反応度が臨界以下(中性子倍増係数:keff<1)となる。このように、前術の工学的な安全系でなく、熱膨張という自然現象に基づいて安価な安全設計が可能となる。
【0032】
2.放射能崩壊速度加速に適した放射能消滅用集合体の配置
表1に示したように、主としてFPを混合した放射性消滅用燃料集合体は燃料と同様に加工し、放射能消滅用棒として熱中性子領域である第2容器に装荷する。この第2容器を熱中性子が利用できる領域とするため、第1領域で生成された高速中性子を熱中性子に転換する必要がある。そのため、第2容器内には減速材兼冷却材を循環させる。本発明において用いる減速材兼冷却材として、以下の材料を検討する。
【0033】
(減速材を兼ねた2次冷却材)
減速材兼冷却材として利用可能な素材としてCO
2ガス(超臨界CO
2または亜臨界CO
2ガス)と水(軽水または重水)が有効である。本発明では、1次冷却材として金属Naを用いる場合、超臨界CO
2ガスまたは亜臨界CO
2ガス用タービンを組み込む。CO
2は減速材としても有効である。これをタービンの動力として使用した後は超臨界CO
2を加熱することが必要となる。そこで、第2容器内で超臨界CO
2を予備的に再加熱した後、主熱交換器で加熱することにより熱効率を向上させることが可能となる。1次冷却材としてPb−BiまたはSnを使用する場合は、2次冷却材として水が使用可能となる。水は効率的な減速材でもあるので、本発明でも有効である。
【0034】
(燃料集合体(MA混合)の配置)
本発明では、金属燃料を装荷するので、使用済み燃料は乾式再処理することを想定している。乾式再処理により燃料ピンを製造する場合、不純物であるMAを完全に除くことは不可能である。結果として燃料集合体にはMAが混入されており、MAは高速中性子が照射されることにより安定核に変換される。このメカニズムを積極的に利用するために、燃料ピンの中のMA混入度を上げることにより、MA消滅の割合を上昇させることができる。
【0035】
(燃料集合体および放射能消滅用集合体の配置)
高速中性領域および熱中性子領域における、燃料集合体および放射能消滅用集合体の配置例を
図4に示す。
図4では、熱中性子領域である第2容器12を高速中性子領域である第1容器11の外側に設置する。燃料集合体22を第1容器内11内に装荷し、その周りに反射体31を設置する。さらに、必要に応じてMA消滅用集合体23を合わせて装荷する。MAから発生する中性子対策として、高速中性子用制御棒140を必要に応じて配置する。一方、第2容器12内には消滅用集合体23、24を装荷する。消滅用集合体は、MA消滅用集合体23を内側に、FP消滅用集合体24を外側に設置する。MAを消滅させるには高エネルギーの中性子が適しているため、第2容器の最内側にMA消滅用集合体23を配置している。
【0036】
(放射能消滅用第2容器を利用した効率的な熱(電気)の生成システム)
本発明では、第一義的に、高速中性子領域の第1容器において、原子炉を臨界以上に保ち熱エネルギーを発生させると共に電気出力を発生させる。高速中性子炉として金属燃料棒を使用する。ステンレス鋼製の燃料棒シースのなかにZr-Pu−Uの3元組成合金の燃料ピンを挿入する。この組成の合金は、600℃から650℃の間で相変化をすると共に、原子炉運転に伴い、希ガス成分が、燃料内に均一に分布して生成されることが報告されている(非特許文献10)。この相変化と希ガスの存在により、600℃〜650℃に領域において燃料棒が%オーダーで膨張する。この結果、この燃料棒を装荷した原子炉は暴走する危険性は非常に低くなる。シースと燃料ピンとの間には、熱伝特性を改善するために金属Naを充填する。またこの容器内には高温において液体金属である金属Na、Sn、またはPb−Biを充填する。
【0037】
まず、
図5を用いて本発明の基本的システムを以下に説明する。この図は、1次冷却材として金属Naを、2次冷却材として超臨界CO
2ガスを用い、超臨界CO
2ガスタービンにより発電するシステムを示す。原子炉容器1と放射能消滅用の第2容器12を供用とし、その中心部に第1容器11を入れる。第1容器内には燃料集合体22を装荷し、その周りには熱膨張により変形する反射体31を配置する。一次冷却材は1次冷却材入口41から第1容器内に供給され、出口42から供給ライン46を経由して主熱交換器7に供給される。熱伝達を終了した一次冷却材は戻りライン47を経由して第1容器に再び供給される。
【0038】
第2冷却材である超臨界CO
2ガスは、戻りライン43から第2容器内に充填される。超臨界CO
2ガスは、高速中性子および放射能消滅用集合体により加熱された後、出口ライン44を経由して熱交換器7に供給される。このシステムではタービンから排出される超臨界CO
2ガスが、原子炉容器1内で予備的に加熱されるので、熱交換効率がより向上する。
【0039】
原子炉容器1内と主熱交換器7で加熱された超臨界CO
2ガスは、超臨界CO
2ガスタービン8を回転させて発電する。タービン8にはCO
2ガスを圧縮する圧縮器9が結合されている。使用されたCO
2ガスは再び熱交換器で冷却された後、圧縮器9に供給されてCO
2ガスが圧縮されて超臨界CO
2ガスとなる。この超臨界CO
2ガスは、再び熱交換器を通った後に、戻りライン51を経由して第2容器12に再び供給される。
【0040】
次に1次冷却材として金属Naの代わりにPb−Biを用いるケースを説明する。1次冷却材をPb−Biにした場合は、2次冷却材として水も使用可能である。ただし、2次冷却材としてCO
2ガスを使用することもできる。
図6Aに示すように、CO
2ガスタービン8の代わりに蒸気タービン60が使用可能となる。蒸気タービンを用いると、圧縮器9と冷却器52の代わりに復水器61が必要となる。そこで蒸気を水に戻し、水を加熱するために加熱器62および63を設置する。一般的に大型の蒸気タービンシステムでは、低圧の加熱器62と高圧の加熱器63と2段の加熱システムを利用する。本発明のシステムでは、2段加熱が可能となる。このように2段加熱した水は、供給ポンプ36を用いて、配管51および第2容器入口43を経由し第2容器12に供給される。第2容器内で加熱された原料水は、第2容器出口44から主熱交換器7に供給される。主熱交換器7で加熱された蒸気はタービン60に供給される。このように、原料水は主熱交換器に送られる前に予備的に原子炉内で加熱されるので、原子炉熱効率のさらなる向上が可能となる。
一次冷却材としてPb−Biを使用する別の方法を
図6Bに示す。原子炉容器1において内側に第1容器11を、外側に第2容器12を配置する。第1容器内には、第1冷却材、燃料集合体22、反射体31、第1冷却材自然対流加速筒160を配置する。また、必要に応じて高速中性子吸収体140を装荷する。第2容器内には、FP消滅用集合体24を配置し、第2冷却材を供給する。この実施例では、第2冷却材として水を用いる。FP消滅集合体24と燃料集合体22から発生する熱は、二次冷却材循環ポンプ36を用いて熱交換器7との間を循環させる。二次冷却材である水の蒸気発生を抑制するためにアキュムレーター59を用いる。熱交換器7で加熱生成した蒸気はタービン60で発電した後、復水器61において蒸気から水に戻り、水は供給ポンプ37により熱交換器7に再度供給され加熱される。
【0041】
(β崩壊速度加速)
本発明では、前述の通りα崩壊速度は中性子により加速される。ここでは、β崩壊を加速する方法について説明する。外場を用いてβ崩壊速度を加速するためには、前述のように核外電子による遮蔽効果を大きく低減して、外部の電場・磁場の原子核に対する影響が大きくなるようにし、その結果、放射性元素の崩壊速度が大きくなる原子炉構造が提供される。基本的に以下の項目を考慮する。
(1)β崩壊速度を上げるために、素粒子(ニュートリノ、ミューオン)と中性子を共存させた素粒子束、および中性子束を低コストで高めること。
(2)原子核外電子による遮蔽効果を低減できる機構を組み込むこと。
(3)低周波数(1kHzから50MHz)の電磁場の印加が可能であること。
本発明では、α崩壊加速に加えて、前述の原子炉内で生成される長寿命放射性核種のβ崩壊半減期を短くするための機構を組み込む。β崩壊を加速する方法には、中性子捕獲反応を利用して安定核へ変換する方法と、量子論における摂動論に基づく方法に大別される。中性子を利用する方法の典型的な例として、I129とCs135がある。I129は中性子を捕獲して最終的にXe130となって安定する。Cs135は同様にBa136となって安定する。前述の通り、これらの中性子捕獲反応は原子炉熱中性子領域に於いて促進される。本発明では、比較的長寿命の半減期をもつβ-崩壊をする放射性核種に対象を絞る。
【0042】
一方、β崩壊を直接加速するために、H. R. Reissが提唱した摂動論によるβ崩壊加速理論に基づき、電磁場を放射性核種に印加して放射性核種のβ崩壊を促進させる(非特許文献7)。基本的に、励起核が安定核種に変化するときにβ崩壊が起こるが、長寿命のβ崩壊は量子論的には禁止遷移である。長寿命β崩壊が禁止遷移であるために、崩壊の半減期は長くなり、従って放射性核種の半減期が長くなることになる。この禁止遷移に部分的に許容遷移成分を組み込むために、摂動項として、50kHz〜50MHzの低周波の電磁場成分を印加する。この低周波電磁の印加に加えて、原子炉特有であるニュートリノおよびミュオン等の素粒子(原子炉内1個の元素が核分裂をすると、6個のニュートリノが生成される)、および約300℃以上の高温との相乗効果が期待できる。
【0043】
本発明の2領域原子炉における低周波電磁場の印加方法を
図7に示す。熱中性子領域(第2容器)12内に高速中性子領域(第1容器)11を入れ、第2容器12内に放射能消滅用集合体(FP消滅用集合体)21を装荷する。一方第1容器11内には燃料集合体22と必要に応じてMA消滅用集合体23を装荷する。燃料集合体22の周囲には反射体31を配置する。次に、放射能消滅用集合体21の周囲にソレノイドコイル123を配置し、50kHzから50MHz、好ましくは100KHz〜10MHzの交流磁場から発生した低周波電磁場を印加する。この構造において、ソレノイドコイル123による中心磁場は以下の式で表される。
(式2) H=nI/2 (H:コイルの中心磁場、n:コイルの巻き数、I:電流)
ソレノイドコイルは基本的に磁場形成を目的としているが、本発明では交流を通電することにより交流磁界が発生し、交流磁界に伴い電磁場が発生することになる。この電磁場を低周波電磁場と称する場合がある。
【0044】
具体的に本発明の原子炉システムの構成は以下のとおりである。
原子炉容器を備えた原子炉システムであって、
前記原子炉容器は、高速中性子を利用する領域である第1容器と、原子炉の中の約0.5MeV以下のエネルギーの熱中性子を利用する領域である第2容器とから構成され、
前記高速中性子を利用する領域は、ジルコニウム(Zr)とウラン(U)、および/またはプルトニウム(Pu)からなる合金組成を有した金属燃料ピンをステンレス鋼からなるシースに入れた金属燃料棒を50本以上束ねた複数の燃料集合体と、1次冷却材である液体金属を備え、
前記熱中性子を利用する領域には、中性子減速材と2次冷却材が兼用可能な非金属材料と、使用済燃料棒再処理プロセスにより分離されたマイナーアクチノイド核種または核分裂生成物である放射性核種をペレットまたはピン状に加工した放射性物質をステンレス鋼またはZr材からなるシースの中に入れた放射能消滅用集合体を装荷し、
前記高速中性子により発生した熱エネルギーを前記1次冷却材で熱交換器へ伝達し、該熱交換器で前記1次冷却材と前記2次冷却材の間で熱交換した後、前記2次冷却材によりタービン系に熱エネルギーを供給して発電を行うと同時に、前記高速中性子を減速することにより生成された熱中性子を用いて、放射性核種を安定核種に変換する速度を加速して放射生核種濃度を低減するように構成されている
原子炉システム。
【0045】
また、本発明の原子炉システムは、前記燃料集合体に対する前記1次冷却材として金属ナトリウム(Na)を用い、前記放射能消滅用集合体に対する2次冷却材として冷却材兼減速材である炭酸ガス(CO
2)を用い、さらにCO
2ガス駆動タービンを備える。さらに、1冷却材としてPb−BiまたはSnを利用する場合、二次冷却材として軽水を活用することが可能となる。軽水は炭酸ガスと同様に減速材としても利用可能である。二次冷却材として軽水を用いた場合は蒸気タービンを使用することになる。
【0046】
また、本発明の原子炉システムは、前記タービン系から戻ってきた前記CO
2ガスまたは軽水を、放射能消滅用である前記第2容器に一旦供給した後、前記1次冷却材と前記2次冷却材の前記熱交換器に供給することにより熱交換効率を向上させる。
【0047】
また、本発明の原子炉システムは、前記燃料集合体の前記1次冷却材として鉛−ビスマス(Pb−Bi)またはPb単独を用い、前記消滅用集合体の減速材を兼ねた前記2次冷却材として水(H
2O)を用い、さらに蒸気タービンを備える。
【0048】
また、本発明の原子炉システムは、前記タービン系から戻ってきたH
2Oを前記放射能消滅用集合体を装荷する第2容器に供給した後、前記1次冷却材と前記2次冷却材の前記熱交換器に供給することにより熱交換効率を向上させる。
【0049】
また、本発明の原子炉システムは、前記第2容器内に装荷する前記放射能消滅用集合体として、使用済み核燃料から分離精製した放射性核分裂生成物(FP)として、Se79、Sr90、Zr93、Tc99、Sn126、Cs135、Cs137の内の少なくとも1つを混入させたペレット又はピンを用い、この前記放射能消滅用集合体に0.5MeV以下のエネルギーの熱中性子照射することにより、効率的に放射性核種を安定核種に変換する速度を加速して放射生核種濃度を低減する。
【0050】
また、本発明の原子炉システムは、前記熱中性子用第2容器を前記速高速中性子用第1容器内に納める。
【0051】
また、本発明の原子炉システムは、前記高速中性子第1容器を前記熱中性子用第2容器内に納める。
【0052】
また、本発明の原子炉システムは、前記2次冷却材として超臨界二酸化炭素(CO
2)ガスまたは軽水を用いる。
【0053】
また、本発明の原子炉システムは、前記第1容器内に装荷した複数の前記燃料集合体の周囲に、熱膨張により変形可能であり、温度と反射体効率が逆相関の構造であり、高速中性子による核分裂反応を自動的に制御可能な前記反射体を配置する。
【0054】
また、本発明の原子炉システムは、前記反射体の構造が、構成材料としてカーボン(C)またはベリリウム(Be)を用い、前記反射体を周方向に4分割以上に分割し、さらに分割反射体に熱膨張係数が大きいステンレス鋼製スプリング、または鉄とニッケル合金にマンガン、クロム、銅などを添加した2種類の熱膨張率の異なる金属板を用いたバイメタルを取り付け、昇温と共にスプリングの熱膨張により反射効率が低下するように構成された構造である。
【0055】
また、本発明の原子炉システムは、前記反射体の構造が、半径方向および高さ方向に分割され、分割された各々の反射体は、ステンレス鋼のケースに黒鉛またはカーボンを充填されたものであり、各反射体間がステンレス鋼、または鉄とニッケル合金にマンガン、クロム、銅などを添加した2種類の熱膨張率の異なる金属板を用いたバイメタルにより繋がれ、ステンレス鋼の熱膨張により前記反射体の中性子反射効率を低減可能なように構成された構造である。
【0056】
また、本発明の原子炉システムは、前記第2容器内に装荷した前記核分裂生成物(FP)を混入させた前記放射能消滅用集合体の周囲にソレノイドコイルを配置し、50KHz〜50MHzの低周波電磁場を発生させると同時に、前記第2容器の外側の前記第1容器内で発生する前記高速中性子を減速した前記熱中性子を前記放射能消滅集合体に印加することにより、前記放射性核分裂生成物のβ崩壊速度を加速するように構成されている。
【0057】
また、本発明の原子炉システムは、前記第2容器の半径方向の周囲にソレノイド状巻き線を設置し、前記放射性核分裂廃棄物を混入させた前記放射能消滅用集合体を前記第2容器内に装荷して、前記放射能消滅用集合体に100KHz〜10MHzの低周波電磁場を印加し、さらに前記第2容器内の前記第1容器内において、前記反射体を含む炉心から発生する熱中性子を照射し、マイナーアクチノイド元素を安定元素に変換する速度を加速するように構成されている。
【0058】
前記第1容器は、直径を2m以下とする円筒状に形成され、前記原子炉容器に収納される前記燃料集合体は、直径を5〜15mm、その長さを3m以下に形成された50本以上の燃料棒からなり、前記燃料集合体は6体以上装荷され、前記燃料集合体の周囲に、負荷追随型制御が可能なように、熱膨張により変形する前記反射体が設置されている。
【0059】
また、本発明の原子炉システムは、前記燃料集合体の中に、マイナーアクチノイド元素を混入した燃料ピンを燃料棒シースに入れることにより、前記高速中性子により放射性マイナーアクチノイド元素を安定元素への変化を加速させるように構成されている。
【0060】
また、本発明の原子炉システムは、原子炉容器の半径が2m以上であり、前記金属燃料集合体を装荷し、さらに液体金属1次冷却材を充填した高速中性領域である第1容器2台以上と、マイナーアクチノイドおよび/または核分裂廃棄物を収納した消滅用集合体を装荷した、熱中性領域である第2容器2台以上とを前記容器の中に設置し、前記容器と、放射性廃棄物を収納した前記消滅用集合体に前記2次冷却材を通して熱を除去し、該熱をさらに発電に使用する。
【0061】
また、本発明は以下に示す方法も提供する。
原子炉システムにおいて、原子炉容器を高速中性子を利用する領域である第1容器と、原子炉の中の約0.5MeV以下のエネルギーの熱中性子を利用する領域である第2容器とで構成し、
前記高速中性子を利用する領域には、ジルコニウム(Zr)とウラン(U)、および/またはプルトニウム(Pu)からなる合金組成を有した金属燃料ピンをステンレス鋼からなるシースに入れた金属燃料棒を50本以上束ねた複数の燃料集合体と、1次冷却材である液体金属を配置し、
前記熱中性子を利用する領域には、中性子減速材と2次冷却材が兼用可能な非金属材料と、使用済燃料棒再処理プロセスにより分離されるマイナーアクチノイド核種または核分裂生成物である放射性核種をペレットまたはピン状に加工した放射性物質を、ステンレス鋼またはZr材からなるシースの中に入れた放射能消滅用集合体を装荷し、
前記高速中性子による熱エネルギーを前記1次冷却材で熱交換器へ伝達し、該熱交換器で前記1次冷却材と前記2次冷却材の間で熱交換した後、前記2次冷却材によりタービン系に熱エネルギーを供給し発電を行うと同時に、前記高速中性子を減速することにより生成された熱中性子を用いて、放射性核種を安定核種に変換する速度を加速して放射生核種濃度を低減する方法。
【0062】
また、本発明の方法は、前記燃料集合体に対する前記1次冷却材として金属ナトリウム(Na)を用い、前記放射能消滅用集合体に対する2次冷却材として冷却材兼減速材である炭酸ガス(CO
2) または軽水を用い、さらにCO
2ガス駆動タービンまたは蒸気タービンを用いる。
【0063】
また、本発明の方法は、前記タービン系から戻ってきた前記CO
2ガスを、放射能消滅用である前記第2容器に一旦供給した後、前記1次冷却材と前記2次冷却材の前記熱交換器に供給することにより熱交換効率を向上させる。
【0064】
また、本発明の方法は、前記燃料集合体の前記1次冷却材として鉛−ビスマス(Pb−Bi)、Pb単独、またはSnを用い、前記消滅用集合体の減速材を兼ねた前記2次冷却材として水(H
2O)を用い、さらに蒸気タービンを用いる。
【0065】
また、本発明の方法は、前記タービン系から戻ってきたH
2Oを前記放射能消滅用集合体を装荷する第2容器に供給した後、前記1次冷却材と前記2次冷却材の前記熱交換器に供給することにより熱交換効率を向上させる。
【0066】
また、本発明の方法は、前記第2容器内に装荷する前記放射能消滅用集合体として、使用済み核燃料から分離精製した放射性核分裂生成物(FP)として、Se79、Sr90、Zr93、Tc99、Sn126、Cs135、Cs137の内の少なくとも1つを混入させたペレット又はピンを用い、この前記放射能消滅用集合体に0.5MeV以下のエネルギーの熱中性子照射することにより、効率的に放射性核種を安定核種に変換する速度を加速して放射生核種濃度を低減する。
【0067】
また、本発明の方法は、前記第2容器内に装荷した前記核分裂生成物(FP)を混入させた前記放射能消滅用集合体の周囲にソレノイドコイルを配置し、50KHz〜50MHzの低周波電磁場を発生させると同時に、前記第2容器の外側の前記第1容器内で発生する前記高速中性子を減速した前記熱中性子を前記放射能消滅集合体に印加することにより、前記放射性核分裂生成物のβ崩壊速度を加速する。
【0068】
また、本発明の方法は、前記第2容器の半径方向の周囲にソレノイド状巻き線を設置し、前記放射性核分裂廃棄物を混入させた前記放射能消滅用集合体を前記第2容器内に装荷して、前記放射能消滅用集合体に100KHz〜10MHzの低周波電磁場を印加し、さらに前記第2容器内の前記第1容器内において、前記反射体を含む炉心から発生する熱中性子を照射し、FP元素を安定元素に変換する速度を加速する。
【0069】
また、本発明の方法は、前記第1容器を、直径を2m以下とする円筒状に形成し、前記原子炉容器に収納される前記燃料集合体に、直径を5〜15mm、その長さを2m以下に形成した50本以上の燃料棒を用い、前記燃料集合体を6体以上装荷し、前記燃料集合体の周囲に、熱膨張により変形する前記反射体を設置することにより負荷追随型制御を行う。
【0070】
また、本発明の方法は、前記燃料集合体の中に、マイナーアクチノイド元素を混入した燃料ピンを燃料棒シースに入れることにより、前記高速中性子により放射性マイナーアクチノイド元素を安定元素へ変化することを加速させる。