特許第6504683号(P6504683)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6504683
(24)【登録日】2019年4月5日
(45)【発行日】2019年4月24日
(54)【発明の名称】放射能消滅用原子炉システム
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/00 20060101AFI20190415BHJP
   G21D 5/08 20060101ALI20190415BHJP
   G21C 1/02 20060101ALI20190415BHJP
   G21C 1/06 20060101ALI20190415BHJP
   G21C 5/00 20060101ALI20190415BHJP
   G21C 3/07 20060101ALI20190415BHJP
   G21C 3/06 20060101ALI20190415BHJP
   G21C 3/30 20060101ALI20190415BHJP
   G21C 7/28 20060101ALI20190415BHJP
   G21D 3/12 20060101ALI20190415BHJP
   G21C 15/00 20060101ALI20190415BHJP
【FI】
   G21F9/00 N
   G21D5/08
   G21C1/02 200
   G21C1/06
   G21C5/00 A
   G21C5/00 C
   G21C3/07 200
   G21C3/06 120
   G21C3/30 100
   G21C7/28
   G21D3/12 F
   G21C15/00 Z
   G21C15/00 B
   G21C15/00 G
【請求項の数】27
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2017-556099(P2017-556099)
(86)(22)【出願日】2016年12月14日
(86)【国際出願番号】JP2016087241
(87)【国際公開番号】WO2017104708
(87)【国際公開日】20170622
【審査請求日】2018年3月13日
(31)【優先権主張番号】特願2015-243675(P2015-243675)
(32)【優先日】2015年12月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】515091636
【氏名又は名称】株式会社クリア
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澄田 修生
(72)【発明者】
【氏名】上野 勲
(72)【発明者】
【氏名】横峯 健彦
【審査官】 山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−48390(JP,A)
【文献】 特開2001−264487(JP,A)
【文献】 特開2004−191190(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/094196(WO,A1)
【文献】 特開昭50−1299(JP,A)
【文献】 特開昭59−56200(JP,A)
【文献】 特開2004−93141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/00
G21C 1/02
G21C 1/06
G21C 3/06
G21C 3/07
G21C 3/30
G21C 5/00
G21C 7/28
G21C 15/00
G21D 3/12
G21D 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉容器を備えた原子炉システムであって、
前記原子炉容器は、高速中性子を利用する領域である第1容器と、原子炉の中の約0.5MeV以下のエネルギーの熱中性子を利用する領域である第2容器とから構成され、
前記高速中性子を利用する領域は、ジルコニウム(Zr)とウラン(U)、および/またはプルトニウム(Pu)からなる合金組成を有した金属燃料ピンをステンレス鋼からなるシースに入れた金属燃料棒を50本以上束ねた複数の燃料集合体と、1次冷却材である液体金属を備え、
前記熱中性子を利用する領域には、中性子減速材と2次冷却材が兼用可能な非金属材料と、使用済燃料棒再処理プロセスにより分離されたマイナーアクチノイド核種または核分裂生成物である放射性核種をペレットまたはピン状に加工した放射性物質をステンレス鋼またはZr材からなるシースの中に入れた放射能消滅用集合体を装荷し、
前記高速中性子により発生した熱エネルギーを前記1次冷却材で熱交換器へ伝達し、該熱交換器で前記1次冷却材と前記2次冷却材の間で熱交換した後、前記2次冷却材によりタービン系に熱エネルギーを供給して発電を行うと同時に、前記高速中性子を減速することにより生成された熱中性子を用いて、放射性核種を安定核種に変換する速度を加速して放射生核種濃度を低減するように構成されている
原子炉システム。
【請求項2】
前記燃料集合体に対する前記1次冷却材として、金属ナトリウム(Na)を用い前記放射能消滅用集合体に対する2次冷却材として冷却材兼減速材である炭酸ガス(CO)を用い、さらにCOガス駆動タービンを備えた、請求項1に記載の原子炉システム。
【請求項3】
前記タービン系から戻ってきた前記COガスを、放射能消滅用である前記第2容器に一旦供給した後、前記1次冷却材と前記2次冷却材の前記熱交換器に供給することにより熱交換効率を向上させる、請求項1または2に記載の原子炉システム。
【請求項4】
前記燃料集合体の前記1次冷却材として鉛−ビスマス(Pb−Bi)またはPb単独を用い、前記消滅用集合体の減速材を兼ねた前記2次冷却材として水(HO)を用い、さらに蒸気タービンを備えた、請求項1に記載の原子炉システム。
【請求項5】
前記タービン系から戻ってきたHOを前記放射能消滅用集合体を装荷する第2容器に供給した後、前記1次冷却材と前記2次冷却材の前記熱交換器に供給することにより熱交換効率を向上させる、請求項1または4に記載の原子炉システム。
【請求項6】
前記第2容器内に装荷する前記放射能消滅用集合体として、使用済み核燃料から分離精製した放射性核分裂生成物(FP)として、Se79、Sr90、Zr93、Tc99、Sn126、Cs135、Cs137の内の少なくとも1つを混入させたペレット又はピンを用い、この前記放射能消滅用集合体に0.5MeV以下のエネルギーの熱中性子照射することにより、効率的に放射性核種を安定核種に変換する速度を加速して放射生核種濃度を低減する、請求項1に記載の原子炉システム。
【請求項7】
前記熱中性子用第2容器を前記速高速中性子用第1容器内に納めた、請求項1または2に記載の原子炉システム。
【請求項8】
前記高速中性子第1容器を前記熱中性子用第2容器内に納めた、請求項1または4に記載の原子炉システム。
【請求項9】
前記2次冷却材として超臨界二酸化炭素(CO)ガスを用いる、請求項1または2に記載の原子炉システム。
【請求項10】
前記第1容器内に装荷した複数の前記燃料集合体の周囲に、熱膨張により変形可能であり、温度と反射体効率が逆相関の構造であり、高速中性子による核分裂反応を自動的に制御可能な前記反射体を配置した、請求項1に記載の原子炉システム。
【請求項11】
前記反射体の構造が、構成材料としてカーボン(C)またはベリリウム(Be)を用い、前記反射体を周方向に4分割以上に分割し、さらに分割反射体に熱膨張係数が大きいステンレス鋼製スプリングを取り付け、昇温と共にスプリングの熱膨張により反射効率が低下するように構成された構造である、請求項10に記載の原子炉システム。
【請求項12】
前記反射体の構造が、半径方向および高さ方向に分割され、分割された各々の反射体は、ステンレス鋼のケースに黒鉛またはカーボンを充填されたものであり、各反射体間がステンレス鋼により繋がれ、ステンレス鋼の熱膨張により前記反射体の中性子反射効率を低減可能なように構成された構造である、請求項10に記載の原子炉システム。
【請求項13】
前記第2容器内に装荷した前記核分裂生成物(FP)を混入させた前記放射能消滅用集合体の周囲にソレノイドコイルを配置し、50KHz〜50MHzの低周波電磁場を発生させると同時に、前記第2容器の外側の前記第1容器内で発生する前記高速中性子を減速した前記熱中性子を前記放射能消滅集合体に印加することにより、前記放射性核分裂生成物のβ崩壊速度を加速するように構成されている、請求項1または7に記載の原子炉システム。
【請求項14】
前記第2容器の半径方向の周囲にソレノイド状巻き線を設置し、前記放射性核分裂廃棄物を混入させた前記放射能消滅用集合体を前記第2容器内に装荷して、前記放射能消滅用集合体に100KHz〜10MHzの低周波電磁場を印加し、さらに前記第2容器内の前記第1容器内において、前記反射体を含む炉心から発生する熱中性子を照射し、FP元素を安定元素に変換する速度を加速するように構成されている、請求項1または8に記載の原子炉システム。
【請求項15】
前記第1容器は、直径を2m以下とする円筒状に形成され、前記原子炉容器に収納される前記燃料集合体は、直径を5〜15mm、その長さを2m以下に形成された50本以上の燃料棒からなり、前記燃料集合体は6体以上装荷され、前記燃料集合体の周囲に、負荷追随型制御が可能なように、熱膨張により変形する前記反射体が設置された、請求項1に記載の原子炉システム。
【請求項16】
前記燃料集合体の中に、マイナーアクチノイド元素を混入した燃料ピンを燃料棒シースに入れることにより、前記高速中性子により放射性マイナーアクチノイド元素を安定元素への変化を加速させるように構成されている、請求項1に記載の原子炉システム。
【請求項17】
原子炉容器の半径が2m以上であり、前記金属燃料集合体を装荷し、さらに液体金属1次冷却材を充填した高速中性領域である第1容器2台以上と、マイナーアクチノイドおよび/または核分裂廃棄物を収納した消滅用集合体を装荷した、熱中性領域である第2容器2台以上とを前記容器の中に設置し、前記容器と、放射性廃棄物を収納した前記消滅用集合体に前記2次冷却材を通して熱を除去し、該熱をさらに発電に使用する、請求項1に記載の原子炉システム。
【請求項18】
原子炉システムにおいて、原子炉容器を高速中性子を利用する領域である第1容器と、原子炉の中の約0.5MeV以下のエネルギーの熱中性子を利用する領域である第2容器とで構成し、
前記高速中性子を利用する領域には、ジルコニウム(Zr)とウラン(U)、および/またはプルトニウム(Pu)からなる合金組成を有した金属燃料ピンをステンレス鋼からなるシースに入れた金属燃料棒を50本以上束ねた複数の燃料集合体と、1次冷却材である液体金属を配置し、
前記熱中性子を利用する領域には、中性子減速材と2次冷却材が兼用可能な非金属材料と、使用済燃料棒再処理プロセスにより分離されるマイナーアクチノイド核種または核分裂生成物である放射性核種をペレットまたはピン状に加工した放射性物質を、ステンレス鋼またはZr材からなるシースの中に入れた放射能消滅用集合体を装荷し、
前記高速中性子による熱エネルギーを前記1次冷却材で熱交換器へ伝達し、該熱交換器で前記1次冷却材と前記2次冷却材の間で熱交換した後、前記2次冷却材によりタービン系に熱エネルギーを供給し発電を行うと同時に、前記高速中性子を減速することにより生成された熱中性子を用いて放射性核種を安定核種に変換する速度を加速して放射生核種濃度を低減する方法。
【請求項19】
前記燃料集合体に対する前記1次冷却材として金属ナトリウム(Na)を用い、前記放射能消滅用集合体に対する2次冷却材として冷却材兼減速材である炭酸ガス(CO)を用い、さらにCOガス駆動タービンを用いる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記タービン系から戻ってきた前記COガスを、放射能消滅用である前記第2容器に一旦供給した後、前記1次冷却材と前記2次冷却材の前記熱交換器に供給することにより熱交換効率を向上させる、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
前記燃料集合体の前記1次冷却材として鉛−ビスマス(Pb−Bi)またはPb単独を用い、前記消滅用集合体の減速材を兼ねた前記2次冷却材として水(HO)を用い、さらに蒸気タービンを用いる、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記タービン系から戻ってきたHOを前記放射能消滅用集合体を装荷する第2容器に供給した後、前記1次冷却材と前記2次冷却材の前記熱交換器に供給することにより熱交換効率を向上させる、請求項18または21に記載の方法。
【請求項23】
前記第2容器内に装荷する前記放射能消滅用集合体として、使用済み核燃料から分離精製した放射性核分裂生成物(FP)として、Se79、Sr90、Zr93、Tc99、Sn126、Cs135、Cs137の内の少なくとも1つを混入させたペレット又はピンを用い、この前記放射能消滅用集合体に0.5MeV以下のエネルギーの熱中性子照射することにより、効率的に放射性核種を安定核種に変換する速度を加速して放射生核種濃度を低減する、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記第2容器内に装荷した前記核分裂生成物(FP)を混入させた前記放射能消滅用集合体の周囲にソレノイドコイルを配置し、50KHz〜50MHzの低周波電磁場を発生させると同時に、前記第2容器の外側の前記第1容器内で発生する前記高速中性子を減速した前記熱中性子を前記放射能消滅集合体に印加することにより、前記放射性核分裂生成物のβ崩壊速度を加速する、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記第2容器の半径方向の周囲にソレノイド状巻き線を設置し、前記放射性核分裂廃棄物を混入させた前記放射能消滅用集合体を前記第2容器内に装荷して、前記放射能消滅用集合体に100KHz〜10MHzの低周波電磁場を印加し、さらに前記第2容器内の前記第1容器内において、前記反射体を含む炉心から発生する熱中性子を照射し、FP元素を安定元素に変換する速度を加速する、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
前記第1容器を、直径を2m以下とする円筒状に形成し、前記原子炉容器に収納される前記燃料集合体に、直径を5〜15mm、その長さを2m以下に形成した50本以上の燃料棒を用い、前記燃料集合体を6体以上装荷し、前記燃料集合体の周囲に、熱膨張により変形する前記反射体を設置することにより負荷追随型制御を行う、請求項18に記載の方法。
【請求項27】
前記燃料集合体の中に、マイナーアクチノイド元素を混入した燃料ピンを燃料棒シースに入れることにより、前記高速中性子により放射性マイナーアクチノイド元素を安定元素への変化を加速させる、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は原子炉システムに関し、詳しくは、発電を行うと同時に、放射性核分裂生成物等の長寿命放射性元素を安定元素に核変換することを促進し、比較的短寿命の放射性同位元素の崩壊速度を上昇させることが可能な原子炉容器、原子炉システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1.原子炉の冷却系
現在建設されている原子炉は、高速中性子を利用した高速炉と熱中性子を利用した熱中性子炉に大別される。高速炉では、ウラン(U)および/またはプルトニウム(Pu)を燃料とし、1次冷却材として金属ナトリウム(Na)を利用する炉が多い。発電システムには、従来蒸気タービンが用いられ、ここでは金属Naと水(HO)との熱交換器が必要であり、金属NaとHOが接触すると反応し、爆発性の水素ガスを発生することが問題となってきた。この金属NaとHOの反応に起因する危険性を考慮し、過去に高速炉実用炉は多く建設されてこなかった。冷却系に金属NaとHOの組み合わせを使用しない方法として、以下の方法がある。
【0003】
まず、1次冷却材として金属Naを使用するが、2次冷却材としてHOを使用しない方法がある。
2次冷却材として最も有望な候補は二酸化炭酸ガス(CO)である。超臨界二酸化炭素ガスのタービンへの応用に関する研究開発が行われ、現在は実機生産開始段階にあり、〜10MWの超臨界二酸化炭素ガスタービンの製作は可能となっている。1次冷却材として金属Naを用い、2次冷却材として超臨界二酸化炭素ガスを用いた小型原子力発電システムに関しては、特許文献1がある。しかし、ボイド反応率が正であり、不透明であるため燃料交換時等のメンテナンス性に難があるとされている。
【0004】
別の方法として、2次冷却材としてHOを利用する場合、1次冷却材としてPb−BiあるいはPb単独を利用する方法がある。Pb−Bi炉はロシアで研究開発されており、Pb−Bi共晶合金(Pb45%−Bi55%)を使用している。このほかにSnを使用する方法もある。ここでは、Pb−Biに着目して、その有効性等を説明する。
【0005】
Pb−Bi冷却材の長所としては以下があげられる。
(1)中間冷却系が不要であり、重金属は水と空気の反応性が低いため、冷却材漏えい燃焼に起因した火災の防止設備も不要となる。
(2)鉛と鉛ビスマスの沸点は各々1,737℃、1,670℃ とNaより高く、この冷却材の高沸点を活用すれば高い安全性が得られる。
(3)Naより中性子吸収断面積が小さく、散乱断面積が大きいため、優れた増殖性、マイナーアクチノイド(MA)燃焼が期待できる。
(4)冷却材密度が混合酸化物燃料(MOX燃料)とほぼ等しいので,仮に燃料が溶融しても炉容器底部に堆積し難いため、再臨界回避ロジック構築による炉心設計への影響が、Na冷却炉の場合より小さくなる可能性がある。
(5)さらに、Pu−U−Zr3元合金金属燃料では、中性子照射により生成された希ガス成分が金属組織内で均一に分布する。このために、金属熱膨張量が希ガス成分生成されない場合に比較して3桁以上大きくなることが報告されている(非特許文献1)。この結果から、MOX燃料と同様に3元合金金属燃料においても、金属燃料の比重が冷却材より小さくなる現象が起きることが予測される。
【0006】
一方、Pb−Bi冷却材の短所としては以下があげられる。
(1)重金属は腐食性が強いため構造材料選択の範囲が狭い。
(2)Naよりも高比重であることから、同じ流速で比較すれば構造材の腐食は一段と生じやすいと考えられる。したがって、線流速の制限が厳しくなり、設計自由度が低くなる。
(3)冷却材の中性子照射により揮発性のポロニウム(Po210)が生じるため、冷却材を覆うカバーガス系、および燃料取扱系を密閉管理する必要があり、またメンテナンス作業も困難になる。
(4)冷却材が高比重のため、大きなポンプ軸動力が必要になる。また、「トリチェリの真空」が問題となり、主冷却系および崩壊熱除去系をトップエントリ方式とすることができない等、設計自由度が小さくなる。
(5)高比重の冷却材および厚肉化により重量が増加するため、容器・配管の支持構造を考慮する必要があり、また耐震設計に留意することも必要となる。
【0007】
既に十分な実績がある蒸気タービンを利用する場合、金属Naに代わりに高温で液体となるPb−BiまたはSnを使用すると、高速炉を稼働させることが可能となる。1次冷却材としてPb−Biを利用した高速炉の開発研究は既に広く実施されている。1次冷却材としてPb−Biを利用すると、実績のある蒸気タービンが利用できる利点があるが、Pb−Bi等の重金属は、高温で構造材に腐食損傷を与える危険性があり、実用上大きな問題点となっている(非特許文献2)。
【0008】
一方、熱中性子炉の体表的な炉は軽水炉であり、軽水炉には加圧水型炉と沸騰水型炉があり、技術はほぼ確立されている。以前はカーボンを減速材とし、炭酸ガスを冷却材として利用する炭酸ガス冷却炉があったが、現在は軽水炉が主流となっている。軽水炉では酸化物燃料が用いられ、核燃料の燃焼度は基本的に制御棒により制御されている。使用済み核燃料は湿式再処理が行われている。
【0009】
2.放射性核種の核種分離・消滅処理について
2−1.原子力発電に伴う放射性元素の生成とその特徴
原子炉内で生じている主な核反応は、U235やPu239が中性子によって核分裂を起こし、別の核種(核分裂生成物)が生成する反応と、Uの中でも核分裂を起こしにくいU238等が中性子を取り込んで、Puやその他の超ウラン元素に変換する反応である。原子炉から排出される使用済み核燃料の中に含まれる放射性核種の内、長寿命で放射線量が大きく毒性の高い核種を、非特許文献3を参考にしてまとめたものを表1に示す。表1から分かるように、使用済み核燃料は超ウラン元素(TUR)と核分裂生成物(FP)に大別され、さらにTRUにはマイナーアクチノイド(MA)が含まれる。MAは長寿命で放射線量が大きく、中性子を放出し、発熱する。見方を変えるとエネルギー源として有効と言える。MAは基本的にα崩壊とそれに伴いγ線を放出する。その後β崩壊とγ崩壊を繰り返して安定核に変換する。MAを安定化するためには、中性子を照射することが有効である。MA以外に、比較的長寿命で毒性がある放射性核種としてFPがある。多くのFPはβ崩壊、γ崩壊を経由して安定核となる傾向にある。
【0010】
表1 使用済み燃料における主たる放射性元素

【0011】
例えばU235が核分裂を起こした場合、その核分裂生成物が80種類程度生じ、質量数は72から160と広範囲に分布している。これらは質量数90と140付近のピークを中心として鞍型の分布をなしている。これらの分裂生成物の崩壊は、α崩壊、β崩壊の二種類に大別される。通常これらの崩壊後にγ崩壊が続いて起きる。本発明で対象としている核分裂生成物は以下の通りである。
【0012】
(1)長寿命の半減期をもつマイナーアクチノイド元素
これらの元素はα崩壊をして、中性子放出、β崩壊とγ線の放出の後安定元素に転換することが報告されている。具体的には、表1に示すように、Np237、Am241、Am243、Cm244等が問題視されている。これらの核種の半減期は長寿命、発熱性があり、γ線、中性子線の強い放出等への対策が必要である。さらに、これらのマイナーアクチノイド元素(MA)のうち、Cm244は自発核分裂性が非常に高い。原子炉内でMA等の放射性核種を消滅させる場合、この自発核分裂による中性子対策をすることが必要である。
【0013】
(2)比較的短寿命の放射性同位元素
マイナーアクチノイド元素を除いた放射性元素で、崩壊速度は主としてβ崩壊過程により決定されている.β崩壊の直後にγ崩壊が付随して起こる。このβ崩壊は量子論的に禁止遷移であるので遷移確率が小さく、結果としてβ崩壊速度は小さくなる。
【0014】
2−2.核種分離・消滅処理に期待される効果
原子力発電所の運転により発生する低レベル放射性廃棄物に比べ、高レベル放射性廃棄物は、放射能が強く発熱量が大きいが半減期の短い核分裂生成物と、放射能はそれほど強くないが半減期が長い核分裂生成物や超ウラン元素を多く含んでいる。後者の存在により、放射性核種濃度の減少に応じ段階的に管理を軽減し、数100年後に管理を終了する「管理型の処分」によっては安全を確保することは出来ない。このため、高レベル放射性廃棄物は、生活環境に有意な影響が生じないように、人間の生活環境から離れた深い安定な地層中に安全に埋設処分(地層処分)を行うこととしている。しかし、埋設処分するための場所を確保することが困難であるため、放射性廃棄物を消滅する技術が必要となる。
【0015】
2−3.核種分離技術
前述の通り、高レベル放射性廃棄物には、放射能が強く発熱量が大きいが半減期が短い核分裂生成物と、アクチノイド元素のように放射能はそれほど強くないが半減期が長い核分裂生成物がある。これらの分離技術は、使用済燃料からUやPuを取り出す再処理技術が基本となるが、いくつかの異なる方法も検討されている。大別して、現在日本で再処理の方法として採用されている、溶媒として水と有機溶媒を用いる湿式再処理方法を高度化する方法と、溶媒として溶融塩化物とカドミウム(Cd)液体金属を用いる乾式再処理方法がある。金属酸化物を用いた燃料には主として湿式再処理法が用いられている。湿式再処理法を適用すると、UまたはPuの純度を上げて核兵器製造をすることが可能になる。一方、乾式再処理は金属燃料に適しており、放射性同位元素の不純物濃度が高いため、核兵器製造には適さないと言われている。乾式再処理ではU235およびPu239を電解精錬により抽出するが、これらの核種に近いマイナーアクチノイド核種不純物の混入は避けられない。電解精製精度を向上させる方法として特許文献2がある。一方、比較的質量数が小さい放射性核分裂生成物(FP)は分離が容易である。
【0016】
2−4.崩壊速度加速(消滅処理)技術
崩壊速度加速(消滅処理)技術には、以下に示すようにいくつかの種類がある。
(中性子による崩壊速度加速:α崩壊元素)
中性子は、中性子のエネルギーにより大別して、0.5MeV以上エネルギーを有する高速中性子と、0.5MeV以下のエネルギーを有する熱中性子に分類される。熱中性子はさらに分類される場合があるが、本発明では0.5MeV以下を熱中性子と総称する。
【0017】
表1に示したマイナーアクチノイド(MA)元素は、UやPuと同様に中性子によって核変化を起こしうる物質である。このため、マイナーアクチノイド元素を他の安定元素に変換するには、原子炉を用いて核分裂反応を起こさせることが最も効果的であると考えられる。原子炉としては、軽水炉、高速炉および陽子加速器駆動未臨界高速炉が考えられるが、図1(非特許文献4)に示す様に、マイナーアクチノイド元素については高いエネルギーを持つ高速中性子の方が効率よく中性子捕獲または核分裂反応を起こすという特徴がある。また、原子炉を用いた消滅処理は、マイナーアクチノイド元素を発電のための燃料として利用していると考えることができる。
【0018】
核分裂生成物(FP)にもヨウ素(I)129(ガラス固化体には含まれない)やテクネチウム(Tc)99のように長半減期の核種がある。これらの核種には、中性子を捕獲させ別の核種に変換する中性子捕獲反応を利用することが考えられる。このため、高速炉を用いてこのような核種を消滅させるには、消滅の対象とする物質に中性子が到達するまでに十分減速するような工夫が必要となる。また、γ線を核分裂生成物に吸収させて他の物質に変換する光核反応も考えられる。これにより、たとえばセシウム(Cs)137を安定な核種であるバリウム(Ba)136に変換する事ができる。この反応を起こすため、加速器の利用が検討されている。
【0019】
(素粒子を用いる方法)
上記の方法以外に素粒子を使用する方法がある。Jere H. Jenkinsは、太陽から地球に到達するニュートリノが放射性核種の崩壊速度の変化と相関があることを報告している(非特許文献5)。具体的にはβ崩壊するSi32の崩壊速度がニュートリノ束と相関して変化し、さらにα崩壊するRa226の崩壊速度もニュートリノ束と相関して変化することが報告されている。
【0020】
さらに、S. Abeは、ミュオンがβ崩壊速度を加速し、放射性原子炉廃棄物の消滅処理に将来的に有効であることを報告している(非特許文献6)。ミュオンを核が吸収することにより元素変換が起き、新しい同位元素となる。しかし、大量の放射性廃棄物を処理する場合、大量のミュオンを発生させることが必要である。一般的には、巨大な加速器を用いてミュオン、および元となる素粒子を生成することが報告されている。
【0021】
(その他の場を利用した崩壊速度促進:β崩壊元素)
β崩壊は、電子が放出されるβと陽電子が放出されるβに分類される。1990年代以前は、β崩壊速度は外的条件より変化しないと言われてきた。さらに、長寿命のβ崩壊遷移は基本的に量子論的には禁止されている。しかし、禁止遷移は絶対的な意味をもつもではなく、量子力学的選択則を破るだけの角運動量を与えることが可能な、強く低周波数の電磁場を原子核に印加すれば崩壊速度を上げることが可能であることが提案されている。原子核の崩壊速度を変えるためには、電磁場が核内の電子状態を変えることが必要である。H. R. Reissらは、次に示す報告書(非特許文献7)においてβ崩壊速度を上げる方法に関して提案を行っている。
【0022】
非特許文献7は、低周波数の電磁場と原子核を強く相互作用させることによる基本的な物理的現象、特にβ崩壊速度を記述する基本的理論に関してまとめている。基本的に禁止遷移である現象に許容遷移を付加することを考えるために、原子核と電磁場との相互作用に関して、当初量子力学における摂動論が適用されてきた。例えば、原子核の状態を表すハミルトニアンHは、相互作用のハミルトニアンλHを用いて次のように表わせる。
(式1) H=H + λH
摂動項が有効的になれば、エネルギー順位が複数となり、部分的に許容遷移が混合されることになる。
【0023】
別の方法として、完全に別のメカニズムを非摂動項としてハミルトニアンHに組み合わせる方法もある。例えば、原子をプラズマ状態にして、原子核周囲の電子による遮蔽効果を低減する方法である。遮蔽効果が低減すると、外部場を直接原子核に影響させることが可能となる。また、原子核自体が崩壊をする等の不安定な状態であれば、原子核が外場の影響を受けやすくなる。
【0024】
具体的な方法としては、摂動項として扱えるβ崩壊速度加速の可能性が測定されている。1kHzから50MHzのラジオ波の空洞共振器内に放射性元素のCs137を置いた時のβ崩壊速度が、10−4以上上昇することが確認された。この他に、MeVのエネルギーでパルス状のレーザ光を照射することにより、崩壊速度を上げることが可能であることが最近報告されている(非特許文献8)。例えば、1kHz以下の周波数で数100フェムト秒(10−15秒)のパルスを照射することが有望であると報告されている(非特許文献8)。これらの結果に基づき、低周波数の電磁場を放射性元素に照射することにより、放射性元素の崩壊速度を変えることが原理的に可能となった。低周波の電磁場印加をすることにより、原子外核電子よる遮蔽効果を低減することが可能となるためと考えられる。
【0025】
一方、M. Pitkanenは、回転磁場の特殊性に関して、トポロジー的幾何学的力学(topological geometro-dynamics(TGD))に基づいて引き起こされる現象について報告している(非特許文献9)。磁場を回転したとき、ローレンツ力により電場が誘起される。このような電場・磁場を利用して原子核外の遮蔽効果を低減することにより、外場によるβ崩壊速度の上昇が可能になる可能性について報告している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】国際公開第2013/094196号
【特許文献2】特願2015−197656
【特許文献3】特願2015−075942
【非特許文献】
【0027】
【非特許文献1】W. F. Murphy, W. N. Beck, F. L. Brown, B. J. Koprowski, and L. A. Neimark, “POSTIRRADIATION EXAMINATION OF U-Pu-Zr FUEL ELEMENTS IRRADIATED IN EBR-I 1 TO 4.5 ATOMIC PERCENT BURNUP”, ARGONNE NATIONAL LABORATORY, 9700 South Cass Avenue, Argonne.
【非特許文献2】此村 守、島川 佳郎、堀 徹、川崎 信史、江沼 康弘、木田 正則、笠井 重夫、一宮 正和、「サイクル機構技報」No.12別冊、2001.9
【非特許文献3】大井川 宏之、「東海フォーラム 放射性廃棄物の核変換技術への挑戦」日本原子力研究開発機構、原子力基礎工学研究部門・J-PARCセンター
【非特許文献4】Waste Transmutation / Energy for Peace; Nuclear Power Deception (Vol. 8, No. 3)
【非特許文献5】Jere H. Jenkins, Ephraim Fischbach, John B. Buncher, John T. Gruenwald, Dennis E. Krause, and Joshua J. Mattes,“Evidence for Correlations Between Nuclear Decay Rates and Earth-Sun Distance”, Astropart. Phys. 32, 42-46 (2009); arXiv:0808.3283v1
【非特許文献6】Shin-ichiro Abe, and Tatsuhiko Sato,“Feasibility study of nuclear transmutation by negative muon capture reaction using the PHITS code”, EPJ Web of Conferences 122, 04002 (2016)
【非特許文献7】Final Report, “ACCELERATED BETA DECAY for DISPOSAL OF FISSION, FRAGMENT WASTES”:Principal Investigator: Howard R. Reiss, Physics Department, American University, Washington, DC 20016-8058
【非特許文献8】A.V. Simakin, G.A. Shafeev, “Accelerated alpha-decay of 232U isotope achieved by exposure of its aqueous solution with gold nanoparticles to laser radiation”,Physics of Wave Phenomena, 2013, vol.21, No.1 pp.31-37
【非特許文献9】M. Pitkanen, “About Strange Effects Related to Rotating Magnetic Systems”, Dept. of Physics, University of Helsinki, Helsinki, Finland. Email: matpitka@rock.helsinki.fi.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
本発明は、原子炉で生成された高レベル放射性廃棄物を、生活環境に有意な影響が生じないように深い安定な地層中に安全に埋設処分するための場所を確保することが困難である、という問題を解決するためになされたものである。
【0029】
上で説明した原理を応用して、原子炉で発電を行うと同時に、原子炉の中で、高速中性子と熱中性子を利用してマイナーアクチノイド元素およびその他の放射性核分裂生成物等の長寿命放射性元素を安定元素に核変換することを促進し、低周波磁場印加を利用することにより、比較的短寿命の放射性同位元素の崩壊速度を上昇させることが可能な原子炉、原子炉システム、およびその方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明では、前述の現象に基づき、下記の方法により放射性核種のα崩壊およびβ崩壊速度を加速する機能を有する原子炉を提供する。
1.二つの領域(高速中性子+熱中性子)を有する原子炉
中性子を利用してα崩壊速度及びβ崩壊速度を加速するためには、放射性元素の中性子捕獲断面積、および核分裂断面と中性子エネルギーの関係に着目することが必要である。幅広いエネルギー分布の中性子を利用するために、高速中性子および熱中性子の両者を同時に利用できる原子炉が望ましい。このためには、基本的に一つの原子炉容器内に、高速中性子領域の第1容器と熱中性子領域の第2容器の二つの領域が存在する。具体的には、一つの原子炉容器内にもう一つの容器を入れることでそれを実現する。
【0031】
図2A、2Bおよび2Cは、高速中性子領域と熱中性子領域の二つが存在する原子炉の構造を模式的に示す。図2Aに示す構造では、第2容器12内にまず放射能消滅用集合体(FP)24を熱中性子領域に装荷する。この第2容器には2次冷却材入り口43と出口44が取り付けてある。さらに第2容器12内に第1容器11を収容し、内部にUとPuに加えてMAを混合した燃料棒を集合した燃料集合体22を装荷する。燃料集合体の周囲には、特許文献3に基づいた、支持体等の熱変形により中性子反射体の反射体効率が変化する負荷追随型制御方式を可能にする反射体31を設置する。
図2Bに示す構造では、第2容器12内にまずFP消滅用集合体24を装荷する。この第2容器には2次冷却材入り口43と出口44が取り付けてある。さらに第2容器12内に第1容器11を収容し、内部に燃料集合体22を装荷する。燃料集合体の周囲には、特許文献3に基づいた熱変形する反射体31を設置する。さらに、この構造では、燃料集合体22に混合するMA濃度が高い場合を想定している。従って、前述の通り、MAの自発核分裂により発生する中性子の過剰対策として、制御棒140を装荷することも有効である。そして追加的措置として、必要に応じて、基本的に炉心を臨界寸法に近くして、熱膨張/収縮に基づいた負荷追随型制御方式分轄反射体31を設置する。
図2Bに示した原子炉内構造とは別の構造を図2Cに示す。この構造では、第1容器内に注入する一次冷却材を自然対流させる。原子炉容器1の中に第1容器11を配置する。そして第1容器11内に燃料集合体22、MA消滅用集合体23を装荷し、その周囲に反射体31を配置する。反射体31と燃料集合体22、MA消滅集合体23の周囲に第1冷却材の自然対流を促進する円筒160を配置する。さらに第1容器の周りに第2容器12を配置する。第2容器12内にFP消滅用集合体24を配置し、第2次冷却材を2次冷却材入口43から出口44に通水・循環させる。第1容器内の核反応および第2容器内のFPからの発熱により第2次冷却材を加熱する。第1冷却材としてPb−Bi以外にSnを使用することも可能である。
本発明では、製造および運転コストを低減した放射能消滅用原子炉製造を目的としている。そこで、特許文献3に詳述されているような、小型の炉心(燃料集合体)の周りに、熱膨張現象による反射体の熱変形を利用した負荷追随型制御方式を採用する。本発明の反射体の材料はカーボン(C)またはベリリウム(Be)で作製する。さらに、本発明で用いる燃料集合体を構成するステンレス鋼製燃料棒には、Zr−Pu−U組成の金属燃料ピンを挿入する。この燃料棒を50本以上束ねて燃料棒とする。この金属燃料ピンは、中性子照射により燃料ピンの中に希ガス生成物が均一分布状に生成され、さらに600〜650℃の間で相変化が発生することが報告されている(非特許文献10)。この二つの現象により、燃料ピンが数%オーダーで熱膨張することに起因して、この温度範囲で核分裂の反応度が臨界以下(中性子倍増係数:keff<1)となる。このように、前術の工学的な安全系でなく、熱膨張という自然現象に基づいて安価な安全設計が可能となる。
【0032】
2.放射能崩壊速度加速に適した放射能消滅用集合体の配置
表1に示したように、主としてFPを混合した放射性消滅用燃料集合体は燃料と同様に加工し、放射能消滅用棒として熱中性子領域である第2容器に装荷する。この第2容器を熱中性子が利用できる領域とするため、第1領域で生成された高速中性子を熱中性子に転換する必要がある。そのため、第2容器内には減速材兼冷却材を循環させる。本発明において用いる減速材兼冷却材として、以下の材料を検討する。
【0033】
(減速材を兼ねた2次冷却材)
減速材兼冷却材として利用可能な素材としてCOガス(超臨界COまたは亜臨界COガス)と水(軽水または重水)が有効である。本発明では、1次冷却材として金属Naを用いる場合、超臨界COガスまたは亜臨界COガス用タービンを組み込む。COは減速材としても有効である。これをタービンの動力として使用した後は超臨界COを加熱することが必要となる。そこで、第2容器内で超臨界COを予備的に再加熱した後、主熱交換器で加熱することにより熱効率を向上させることが可能となる。1次冷却材としてPb−BiまたはSnを使用する場合は、2次冷却材として水が使用可能となる。水は効率的な減速材でもあるので、本発明でも有効である。
【0034】
(燃料集合体(MA混合)の配置)
本発明では、金属燃料を装荷するので、使用済み燃料は乾式再処理することを想定している。乾式再処理により燃料ピンを製造する場合、不純物であるMAを完全に除くことは不可能である。結果として燃料集合体にはMAが混入されており、MAは高速中性子が照射されることにより安定核に変換される。このメカニズムを積極的に利用するために、燃料ピンの中のMA混入度を上げることにより、MA消滅の割合を上昇させることができる。
【0035】
(燃料集合体および放射能消滅用集合体の配置)
高速中性領域および熱中性子領域における、燃料集合体および放射能消滅用集合体の配置例を図4に示す。図4では、熱中性子領域である第2容器12を高速中性子領域である第1容器11の外側に設置する。燃料集合体22を第1容器内11内に装荷し、その周りに反射体31を設置する。さらに、必要に応じてMA消滅用集合体23を合わせて装荷する。MAから発生する中性子対策として、高速中性子用制御棒140を必要に応じて配置する。一方、第2容器12内には消滅用集合体23、24を装荷する。消滅用集合体は、MA消滅用集合体23を内側に、FP消滅用集合体24を外側に設置する。MAを消滅させるには高エネルギーの中性子が適しているため、第2容器の最内側にMA消滅用集合体23を配置している。
【0036】
(放射能消滅用第2容器を利用した効率的な熱(電気)の生成システム)
本発明では、第一義的に、高速中性子領域の第1容器において、原子炉を臨界以上に保ち熱エネルギーを発生させると共に電気出力を発生させる。高速中性子炉として金属燃料棒を使用する。ステンレス鋼製の燃料棒シースのなかにZr-Pu−Uの3元組成合金の燃料ピンを挿入する。この組成の合金は、600℃から650℃の間で相変化をすると共に、原子炉運転に伴い、希ガス成分が、燃料内に均一に分布して生成されることが報告されている(非特許文献10)。この相変化と希ガスの存在により、600℃〜650℃に領域において燃料棒が%オーダーで膨張する。この結果、この燃料棒を装荷した原子炉は暴走する危険性は非常に低くなる。シースと燃料ピンとの間には、熱伝特性を改善するために金属Naを充填する。またこの容器内には高温において液体金属である金属Na、Sn、またはPb−Biを充填する。
【0037】
まず、図5を用いて本発明の基本的システムを以下に説明する。この図は、1次冷却材として金属Naを、2次冷却材として超臨界COガスを用い、超臨界COガスタービンにより発電するシステムを示す。原子炉容器1と放射能消滅用の第2容器12を供用とし、その中心部に第1容器11を入れる。第1容器内には燃料集合体22を装荷し、その周りには熱膨張により変形する反射体31を配置する。一次冷却材は1次冷却材入口41から第1容器内に供給され、出口42から供給ライン46を経由して主熱交換器7に供給される。熱伝達を終了した一次冷却材は戻りライン47を経由して第1容器に再び供給される。
【0038】
第2冷却材である超臨界COガスは、戻りライン43から第2容器内に充填される。超臨界COガスは、高速中性子および放射能消滅用集合体により加熱された後、出口ライン44を経由して熱交換器7に供給される。このシステムではタービンから排出される超臨界COガスが、原子炉容器1内で予備的に加熱されるので、熱交換効率がより向上する。
【0039】
原子炉容器1内と主熱交換器7で加熱された超臨界COガスは、超臨界COガスタービン8を回転させて発電する。タービン8にはCOガスを圧縮する圧縮器9が結合されている。使用されたCOガスは再び熱交換器で冷却された後、圧縮器9に供給されてCOガスが圧縮されて超臨界COガスとなる。この超臨界COガスは、再び熱交換器を通った後に、戻りライン51を経由して第2容器12に再び供給される。
【0040】
次に1次冷却材として金属Naの代わりにPb−Biを用いるケースを説明する。1次冷却材をPb−Biにした場合は、2次冷却材として水も使用可能である。ただし、2次冷却材としてCOガスを使用することもできる。図6Aに示すように、COガスタービン8の代わりに蒸気タービン60が使用可能となる。蒸気タービンを用いると、圧縮器9と冷却器52の代わりに復水器61が必要となる。そこで蒸気を水に戻し、水を加熱するために加熱器62および63を設置する。一般的に大型の蒸気タービンシステムでは、低圧の加熱器62と高圧の加熱器63と2段の加熱システムを利用する。本発明のシステムでは、2段加熱が可能となる。このように2段加熱した水は、供給ポンプ36を用いて、配管51および第2容器入口43を経由し第2容器12に供給される。第2容器内で加熱された原料水は、第2容器出口44から主熱交換器7に供給される。主熱交換器7で加熱された蒸気はタービン60に供給される。このように、原料水は主熱交換器に送られる前に予備的に原子炉内で加熱されるので、原子炉熱効率のさらなる向上が可能となる。
一次冷却材としてPb−Biを使用する別の方法を図6Bに示す。原子炉容器1において内側に第1容器11を、外側に第2容器12を配置する。第1容器内には、第1冷却材、燃料集合体22、反射体31、第1冷却材自然対流加速筒160を配置する。また、必要に応じて高速中性子吸収体140を装荷する。第2容器内には、FP消滅用集合体24を配置し、第2冷却材を供給する。この実施例では、第2冷却材として水を用いる。FP消滅集合体24と燃料集合体22から発生する熱は、二次冷却材循環ポンプ36を用いて熱交換器7との間を循環させる。二次冷却材である水の蒸気発生を抑制するためにアキュムレーター59を用いる。熱交換器7で加熱生成した蒸気はタービン60で発電した後、復水器61において蒸気から水に戻り、水は供給ポンプ37により熱交換器7に再度供給され加熱される。
【0041】
(β崩壊速度加速)
本発明では、前述の通りα崩壊速度は中性子により加速される。ここでは、β崩壊を加速する方法について説明する。外場を用いてβ崩壊速度を加速するためには、前述のように核外電子による遮蔽効果を大きく低減して、外部の電場・磁場の原子核に対する影響が大きくなるようにし、その結果、放射性元素の崩壊速度が大きくなる原子炉構造が提供される。基本的に以下の項目を考慮する。
(1)β崩壊速度を上げるために、素粒子(ニュートリノ、ミューオン)と中性子を共存させた素粒子束、および中性子束を低コストで高めること。
(2)原子核外電子による遮蔽効果を低減できる機構を組み込むこと。
(3)低周波数(1kHzから50MHz)の電磁場の印加が可能であること。
本発明では、α崩壊加速に加えて、前述の原子炉内で生成される長寿命放射性核種のβ崩壊半減期を短くするための機構を組み込む。β崩壊を加速する方法には、中性子捕獲反応を利用して安定核へ変換する方法と、量子論における摂動論に基づく方法に大別される。中性子を利用する方法の典型的な例として、I129とCs135がある。I129は中性子を捕獲して最終的にXe130となって安定する。Cs135は同様にBa136となって安定する。前述の通り、これらの中性子捕獲反応は原子炉熱中性子領域に於いて促進される。本発明では、比較的長寿命の半減期をもつβ-崩壊をする放射性核種に対象を絞る。
【0042】
一方、β崩壊を直接加速するために、H. R. Reissが提唱した摂動論によるβ崩壊加速理論に基づき、電磁場を放射性核種に印加して放射性核種のβ崩壊を促進させる(非特許文献7)。基本的に、励起核が安定核種に変化するときにβ崩壊が起こるが、長寿命のβ崩壊は量子論的には禁止遷移である。長寿命β崩壊が禁止遷移であるために、崩壊の半減期は長くなり、従って放射性核種の半減期が長くなることになる。この禁止遷移に部分的に許容遷移成分を組み込むために、摂動項として、50kHz〜50MHzの低周波の電磁場成分を印加する。この低周波電磁の印加に加えて、原子炉特有であるニュートリノおよびミュオン等の素粒子(原子炉内1個の元素が核分裂をすると、6個のニュートリノが生成される)、および約300℃以上の高温との相乗効果が期待できる。
【0043】
本発明の2領域原子炉における低周波電磁場の印加方法を図7に示す。熱中性子領域(第2容器)12内に高速中性子領域(第1容器)11を入れ、第2容器12内に放射能消滅用集合体(FP消滅用集合体)21を装荷する。一方第1容器11内には燃料集合体22と必要に応じてMA消滅用集合体23を装荷する。燃料集合体22の周囲には反射体31を配置する。次に、放射能消滅用集合体21の周囲にソレノイドコイル123を配置し、50kHzから50MHz、好ましくは100KHz〜10MHzの交流磁場から発生した低周波電磁場を印加する。この構造において、ソレノイドコイル123による中心磁場は以下の式で表される。
(式2) H=nI/2 (H:コイルの中心磁場、n:コイルの巻き数、I:電流)
ソレノイドコイルは基本的に磁場形成を目的としているが、本発明では交流を通電することにより交流磁界が発生し、交流磁界に伴い電磁場が発生することになる。この電磁場を低周波電磁場と称する場合がある。
【0044】
具体的に本発明の原子炉システムの構成は以下のとおりである。
原子炉容器を備えた原子炉システムであって、
前記原子炉容器は、高速中性子を利用する領域である第1容器と、原子炉の中の約0.5MeV以下のエネルギーの熱中性子を利用する領域である第2容器とから構成され、
前記高速中性子を利用する領域は、ジルコニウム(Zr)とウラン(U)、および/またはプルトニウム(Pu)からなる合金組成を有した金属燃料ピンをステンレス鋼からなるシースに入れた金属燃料棒を50本以上束ねた複数の燃料集合体と、1次冷却材である液体金属を備え、
前記熱中性子を利用する領域には、中性子減速材と2次冷却材が兼用可能な非金属材料と、使用済燃料棒再処理プロセスにより分離されたマイナーアクチノイド核種または核分裂生成物である放射性核種をペレットまたはピン状に加工した放射性物質をステンレス鋼またはZr材からなるシースの中に入れた放射能消滅用集合体を装荷し、
前記高速中性子により発生した熱エネルギーを前記1次冷却材で熱交換器へ伝達し、該熱交換器で前記1次冷却材と前記2次冷却材の間で熱交換した後、前記2次冷却材によりタービン系に熱エネルギーを供給して発電を行うと同時に、前記高速中性子を減速することにより生成された熱中性子を用いて、放射性核種を安定核種に変換する速度を加速して放射生核種濃度を低減するように構成されている
原子炉システム。
【0045】
また、本発明の原子炉システムは、前記燃料集合体に対する前記1次冷却材として金属ナトリウム(Na)を用い、前記放射能消滅用集合体に対する2次冷却材として冷却材兼減速材である炭酸ガス(CO)を用い、さらにCOガス駆動タービンを備える。さらに、1冷却材としてPb−BiまたはSnを利用する場合、二次冷却材として軽水を活用することが可能となる。軽水は炭酸ガスと同様に減速材としても利用可能である。二次冷却材として軽水を用いた場合は蒸気タービンを使用することになる。
【0046】
また、本発明の原子炉システムは、前記タービン系から戻ってきた前記COガスまたは軽水を、放射能消滅用である前記第2容器に一旦供給した後、前記1次冷却材と前記2次冷却材の前記熱交換器に供給することにより熱交換効率を向上させる。
【0047】
また、本発明の原子炉システムは、前記燃料集合体の前記1次冷却材として鉛−ビスマス(Pb−Bi)またはPb単独を用い、前記消滅用集合体の減速材を兼ねた前記2次冷却材として水(HO)を用い、さらに蒸気タービンを備える。
【0048】
また、本発明の原子炉システムは、前記タービン系から戻ってきたHOを前記放射能消滅用集合体を装荷する第2容器に供給した後、前記1次冷却材と前記2次冷却材の前記熱交換器に供給することにより熱交換効率を向上させる。
【0049】
また、本発明の原子炉システムは、前記第2容器内に装荷する前記放射能消滅用集合体として、使用済み核燃料から分離精製した放射性核分裂生成物(FP)として、Se79、Sr90、Zr93、Tc99、Sn126、Cs135、Cs137の内の少なくとも1つを混入させたペレット又はピンを用い、この前記放射能消滅用集合体に0.5MeV以下のエネルギーの熱中性子照射することにより、効率的に放射性核種を安定核種に変換する速度を加速して放射生核種濃度を低減する。
【0050】
また、本発明の原子炉システムは、前記熱中性子用第2容器を前記速高速中性子用第1容器内に納める。
【0051】
また、本発明の原子炉システムは、前記高速中性子第1容器を前記熱中性子用第2容器内に納める。
【0052】
また、本発明の原子炉システムは、前記2次冷却材として超臨界二酸化炭素(CO)ガスまたは軽水を用いる。
【0053】
また、本発明の原子炉システムは、前記第1容器内に装荷した複数の前記燃料集合体の周囲に、熱膨張により変形可能であり、温度と反射体効率が逆相関の構造であり、高速中性子による核分裂反応を自動的に制御可能な前記反射体を配置する。
【0054】
また、本発明の原子炉システムは、前記反射体の構造が、構成材料としてカーボン(C)またはベリリウム(Be)を用い、前記反射体を周方向に4分割以上に分割し、さらに分割反射体に熱膨張係数が大きいステンレス鋼製スプリング、または鉄とニッケル合金にマンガン、クロム、銅などを添加した2種類の熱膨張率の異なる金属板を用いたバイメタルを取り付け、昇温と共にスプリングの熱膨張により反射効率が低下するように構成された構造である。
【0055】
また、本発明の原子炉システムは、前記反射体の構造が、半径方向および高さ方向に分割され、分割された各々の反射体は、ステンレス鋼のケースに黒鉛またはカーボンを充填されたものであり、各反射体間がステンレス鋼、または鉄とニッケル合金にマンガン、クロム、銅などを添加した2種類の熱膨張率の異なる金属板を用いたバイメタルにより繋がれ、ステンレス鋼の熱膨張により前記反射体の中性子反射効率を低減可能なように構成された構造である。
【0056】
また、本発明の原子炉システムは、前記第2容器内に装荷した前記核分裂生成物(FP)を混入させた前記放射能消滅用集合体の周囲にソレノイドコイルを配置し、50KHz〜50MHzの低周波電磁場を発生させると同時に、前記第2容器の外側の前記第1容器内で発生する前記高速中性子を減速した前記熱中性子を前記放射能消滅集合体に印加することにより、前記放射性核分裂生成物のβ崩壊速度を加速するように構成されている。
【0057】
また、本発明の原子炉システムは、前記第2容器の半径方向の周囲にソレノイド状巻き線を設置し、前記放射性核分裂廃棄物を混入させた前記放射能消滅用集合体を前記第2容器内に装荷して、前記放射能消滅用集合体に100KHz〜10MHzの低周波電磁場を印加し、さらに前記第2容器内の前記第1容器内において、前記反射体を含む炉心から発生する熱中性子を照射し、マイナーアクチノイド元素を安定元素に変換する速度を加速するように構成されている。
【0058】
前記第1容器は、直径を2m以下とする円筒状に形成され、前記原子炉容器に収納される前記燃料集合体は、直径を5〜15mm、その長さを3m以下に形成された50本以上の燃料棒からなり、前記燃料集合体は6体以上装荷され、前記燃料集合体の周囲に、負荷追随型制御が可能なように、熱膨張により変形する前記反射体が設置されている。
【0059】
また、本発明の原子炉システムは、前記燃料集合体の中に、マイナーアクチノイド元素を混入した燃料ピンを燃料棒シースに入れることにより、前記高速中性子により放射性マイナーアクチノイド元素を安定元素への変化を加速させるように構成されている。
【0060】
また、本発明の原子炉システムは、原子炉容器の半径が2m以上であり、前記金属燃料集合体を装荷し、さらに液体金属1次冷却材を充填した高速中性領域である第1容器2台以上と、マイナーアクチノイドおよび/または核分裂廃棄物を収納した消滅用集合体を装荷した、熱中性領域である第2容器2台以上とを前記容器の中に設置し、前記容器と、放射性廃棄物を収納した前記消滅用集合体に前記2次冷却材を通して熱を除去し、該熱をさらに発電に使用する。
【0061】
また、本発明は以下に示す方法も提供する。
原子炉システムにおいて、原子炉容器を高速中性子を利用する領域である第1容器と、原子炉の中の約0.5MeV以下のエネルギーの熱中性子を利用する領域である第2容器とで構成し、
前記高速中性子を利用する領域には、ジルコニウム(Zr)とウラン(U)、および/またはプルトニウム(Pu)からなる合金組成を有した金属燃料ピンをステンレス鋼からなるシースに入れた金属燃料棒を50本以上束ねた複数の燃料集合体と、1次冷却材である液体金属を配置し、
前記熱中性子を利用する領域には、中性子減速材と2次冷却材が兼用可能な非金属材料と、使用済燃料棒再処理プロセスにより分離されるマイナーアクチノイド核種または核分裂生成物である放射性核種をペレットまたはピン状に加工した放射性物質を、ステンレス鋼またはZr材からなるシースの中に入れた放射能消滅用集合体を装荷し、
前記高速中性子による熱エネルギーを前記1次冷却材で熱交換器へ伝達し、該熱交換器で前記1次冷却材と前記2次冷却材の間で熱交換した後、前記2次冷却材によりタービン系に熱エネルギーを供給し発電を行うと同時に、前記高速中性子を減速することにより生成された熱中性子を用いて、放射性核種を安定核種に変換する速度を加速して放射生核種濃度を低減する方法。
【0062】
また、本発明の方法は、前記燃料集合体に対する前記1次冷却材として金属ナトリウム(Na)を用い、前記放射能消滅用集合体に対する2次冷却材として冷却材兼減速材である炭酸ガス(CO) または軽水を用い、さらにCOガス駆動タービンまたは蒸気タービンを用いる。
【0063】
また、本発明の方法は、前記タービン系から戻ってきた前記COガスを、放射能消滅用である前記第2容器に一旦供給した後、前記1次冷却材と前記2次冷却材の前記熱交換器に供給することにより熱交換効率を向上させる。
【0064】
また、本発明の方法は、前記燃料集合体の前記1次冷却材として鉛−ビスマス(Pb−Bi)、Pb単独、またはSnを用い、前記消滅用集合体の減速材を兼ねた前記2次冷却材として水(HO)を用い、さらに蒸気タービンを用いる。
【0065】
また、本発明の方法は、前記タービン系から戻ってきたHOを前記放射能消滅用集合体を装荷する第2容器に供給した後、前記1次冷却材と前記2次冷却材の前記熱交換器に供給することにより熱交換効率を向上させる。
【0066】
また、本発明の方法は、前記第2容器内に装荷する前記放射能消滅用集合体として、使用済み核燃料から分離精製した放射性核分裂生成物(FP)として、Se79、Sr90、Zr93、Tc99、Sn126、Cs135、Cs137の内の少なくとも1つを混入させたペレット又はピンを用い、この前記放射能消滅用集合体に0.5MeV以下のエネルギーの熱中性子照射することにより、効率的に放射性核種を安定核種に変換する速度を加速して放射生核種濃度を低減する。
【0067】
また、本発明の方法は、前記第2容器内に装荷した前記核分裂生成物(FP)を混入させた前記放射能消滅用集合体の周囲にソレノイドコイルを配置し、50KHz〜50MHzの低周波電磁場を発生させると同時に、前記第2容器の外側の前記第1容器内で発生する前記高速中性子を減速した前記熱中性子を前記放射能消滅集合体に印加することにより、前記放射性核分裂生成物のβ崩壊速度を加速する。
【0068】
また、本発明の方法は、前記第2容器の半径方向の周囲にソレノイド状巻き線を設置し、前記放射性核分裂廃棄物を混入させた前記放射能消滅用集合体を前記第2容器内に装荷して、前記放射能消滅用集合体に100KHz〜10MHzの低周波電磁場を印加し、さらに前記第2容器内の前記第1容器内において、前記反射体を含む炉心から発生する熱中性子を照射し、FP元素を安定元素に変換する速度を加速する。
【0069】
また、本発明の方法は、前記第1容器を、直径を2m以下とする円筒状に形成し、前記原子炉容器に収納される前記燃料集合体に、直径を5〜15mm、その長さを2m以下に形成した50本以上の燃料棒を用い、前記燃料集合体を6体以上装荷し、前記燃料集合体の周囲に、熱膨張により変形する前記反射体を設置することにより負荷追随型制御を行う。
【0070】
また、本発明の方法は、前記燃料集合体の中に、マイナーアクチノイド元素を混入した燃料ピンを燃料棒シースに入れることにより、前記高速中性子により放射性マイナーアクチノイド元素を安定元素へ変化することを加速させる。
【発明の効果】
【0071】
発電を行うと同時に、放射性核分裂生成物等の長寿命放射性元素を安定元素に核変換することを促進し、比較的短寿命の放射性同位元素の崩壊速度を上昇させることが可能な原子炉システムが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
図1】マイナーアクチノイド元素の一種であるAm243の中性子捕獲断面積の中性子のエネルギー依存性を示すグラフである。
図2A】本発明による、熱中性子領域の中に高速中性値子領域を配置した原子炉の模式的断面図である。
図2B】本発明による、熱中性子領域の中に高速中性値子領域を配置した別の原子炉の模式的断面図である。
図2C】本発明による、熱中性子領域の中に高速中性値子領域を配置したまた別の原子炉の模式的断面図である。
図3】本発明による、燃料集合体の構造である。
図4】本発明による、熱中性子領域(第2容器)と第2容器内に設置した高速中性子領域(第1容器)に装荷した燃料集合体、および放射能消滅用集合体(MA消滅用集合体およびFP消滅用集合体)の配置の例である。
図5】本発明による、1次冷却材として金属Naを、2次冷却材として超臨界二酸化COを用いた原子炉システムである。
図6A】本発明による、1次冷却材としてPb−BiまたはSnを、2次冷却材として水を用いた原子炉システムである。
図6B】本発明による、自然対流させる1次冷却材としてPb−Biを用い、2次冷却材として水を用いた原子炉システムである。
図7】本発明による、低周波電磁場印加により放射能消滅を可能にする原子炉の模式的断面図である。
図8A】本発明による分轄型反射体の、炉心温度が低い場合の斜視図である。
図8B】本発明による分轄型反射体の、炉心温度が高い場合の斜視図である。
図9】第2容器内に第1容器を設置した原子炉において、高速中性子束および熱中性子束の炉心からの半径方向分布を示すグラフである。
図10】本発明による、高速中性子領域である第1容器の中に熱中性領域である第2容器が有る原子炉の模式的断面図である。
図11】本発明による、高速中性子領域(第1容器)と第1容器内に設置した熱中性子領域(第2容器)に装荷した、燃料集合体および放射能消滅用集合体(MA消滅用集合体およびFP消滅用集合体)の配置の例である。
図12】本発明による、第2容器内に第1容器を設置した炉心において、高速中性子束および熱中性子束の炉心からの半径方向分布を示すグラフである。
図13】本発明による、第1容器内に燃料集合体を装荷する第2容器を入れた小型原子炉システムの模式的な図である。
図14】本発明による、第2容器を第1容器内に設置し、消滅用集合体を装荷した第2容器におけるソレノイドコイル配置を示す図である。
図15】本発明による、第2容器内に複数の第1容器を配置した原子炉の模式的横断面図である。
図16】本発明による、循環型で1次冷却材および2次冷却材を利用する原子炉の模式的断面図である。
図17】本発明による、複数の燃料集合体群(第1容器)を設置し、1次冷却材として金属Naを、2次冷却材として超臨界COガスを利用した原子炉システムの模式的な図である。
図18】本発明による、循環型2次冷却材のみを利用する原子炉の模式的断面図である。
図19】本発明による、2次冷却材循環タイプの複数の燃料集合体 (第2容器)群を装荷した原子炉システムの模式的な図である。
図20】本発明による、マルチ燃料集合体群を装荷した大型原子炉の模式的横断面図である。
図21】本発明による、自然対流1次冷却材タイプのマルチ放射能消滅対応の原子炉システムの模式的な図である。
図22】本発明による、自然対流1次冷却材タイプのマルチ放射能消滅対応のより大規模な原子炉システムの模式的な図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0073】
図2Aおよび2Bに示した原子炉は、高速中性子領域である第1容器11の外側に、熱中性子領域である第2容器12が有る構造である。第1容器11内における主な要素は燃料集合体22と反射体31である。第1容器内の原子炉の炉心は、ジルコニウム(Zr)とU(235、238)およびPu239とからなる合金、またはZrとU(235、238)およびPu239のいずれか一方とからなる合金からなり、この金属燃料ピンをフェライト系ステンレス鋼又はクロム・モリブデン鋼からなる被覆管に封入し、伝熱特性を向上させるために燃料ピンと被覆管の間に金属Naを充填して燃料棒を構成し、この燃料棒24本の集合体によって構成されている。金属Na以外に、カドミウム(Cd)、スズ(Sn)、セシウム(Cs)等も使用可能である。第1容器の直径は2m以下とし、燃料棒を装荷する有効的な高さを約20m以下とする円筒状に形成される。第2容器12内には放射能消滅用棒23および24が装荷されている。
【0074】
本実施の形態において用いられる、図3に示す金属燃料棒に収納する金属燃料ピンは、ZrとU(235、238)およびPu239との合金よりなり、19%の冨化度で、直径を〜10mmとし、高さを10cm以上の棒状に形成されている。この金属燃料ピンは、フェライト系ステンレス鋼からなる被覆管に封入されて燃料棒221を構成する。金属燃料ピンが封入される被覆管は、直径を〜10mmとしその長さを3mとする細長い円筒状に形成されている。金属燃料棒の核分裂有効長さは約1.5mである。この燃料棒を150本束ねて燃料集合体とする。従って、燃料集合体22は長さを約1.5mとする燃料棒から構成されているので、燃料棒とほぼ同一の1.5mの長さとなっている。そして、高さを約1.5mとした燃料集合体22は、図2A、2Bに示すように、高さH1を20m以下とする第1容器11の底部側に装填されるので、第1容器1の上部側には3〜5m程度の空間部が設けられる。
【0075】
反射体31は、熱膨張により変形をする反射体を用いた負荷追随型小型原子炉(特許文献3)に用いたものと同様の構造を有している。本実施例では、図8Aおよび8Bに示す12分轄型反射体31を使用した。反射体31は、分割反射体302を支持する棒300にスプリング状バイメタル301を取り付けた構造である。反射体ステンレス製の容器にグラファイトカーボンを充填する。この他にベリリウム、炭化タングステンを用いることもできる。原子炉炉心の温度が低いときは、図8Aに示す様に分轄反射体は閉じている。逆に炉心温度が高くなると、図8Bに示す様に分割反射体は開き中性子反射効率が低下する。このように分轄反射体を用いることにより、自動的に炉心温度を制御することが可能となる。臨界特性は計算コードCITATIONを利用して確認できる。
【0076】
さらに、第2容器内の熱中性子領域に装荷する放射能消滅用棒にMAを添加した場合、中性子を放出する元素であるCm244、Am243が含有されると、過剰な中性子が放出され、原子炉の臨界特性を乱すことが想定されるので、第1容器内に過剰な中性子を吸収する制御棒140を装荷する。本発明の効果を確認するために中性子分布を計算した。その結果を図9に示す。第1容器内に装荷する燃料集合体の半径は35cmで、反射体は厚さを10cmとした。さらに、第2容器内に減速材兼冷却材を供給した。このように原子炉中心に高速中性領域を設け、外部に熱中性子領域を設けることにより、第2容器内の熱中性束の減衰度が小さくなる。
【実施例2】
【0077】
特許文献3に説明されるように、使用済み金属燃料棒を処理する効率的な方法として乾式再処理がある。使用済金属燃料を約500℃の高温LiCl−KCl溶融塩中で電解精錬して、核燃料であるU、Puと超ウラン元素であるMAおよびFPを分離するが、この電解精錬プロセスにおいて、FeまたはCdを用いたカソード極の還元反応により、UおよびPuが析出するが、MAはUおよびPuと比較的化学的特性が近いので、一部のMAが同時に析出して最大10%のMAが混入する。このようにU、PuとMAを完全に分離することは困難である。このためにU、Puを主成分とする金属燃料ピンにはMAが混入しており、従って、燃料集合体の中にはMA成分が含まれている。
【0078】
基本的乾式再処理プロセスにおいて、分離されたMAは最終的に酸化物に転換することにより、廃棄物保管が容易な状態になる。この酸化物状態にしたMAを内径10mmから150mmのステンレス鋼筒状容器に挿入する。内径が30mm以下の容器の場合は、集合体状にまとめて第2容器12内に装荷する。一方、FPは溶融塩に残留する可能性が高く、FPが混入した溶融塩をゼオライトフィルターを用いて濾過する。FPを濾過したフィルターは、最終的にガラス固化する。ガラス固化したFPは、MAと同様に高さ3m内径10mmから150mmのステンレス鋼筒状容器に挿入する。内径が30mm以下の容器の場合は、集合体状にまとめて第2容器12内に装荷する。以下の実施例3で示す様に、装荷するFPがガラス固化した状態であるので、低周波電磁場の印加に適している。
【実施例3】
【0079】
図10では高速中性子領域である第1容器11を、熱中性子領域である第2容器12の外側に設置する。燃料集合体22を第1容器内に装荷し、その周りに反射体31を設置する。さらに、MAから発生する中性子対策として、高速中性子用制御棒141を必要に応じて配置する。一方、第2容器12内に消滅用集合体21を装荷する。消滅用集合体は、図11に示すようにMA消滅用集合体24を内側にFP消滅用集合体23を外側に設置する。MAを消滅させるためには高エネルギーの中性子が適しているので、第2容器の最内側にMA消滅用集合体24を配置する。
【0080】
一方、第1容器内に燃料集合体22を装荷する。この燃料集合体群の外形半径を60cmとし、さらに燃料集合体群の外側に反射体31を設けた。この炉心構造について中性子分布を計算した結果を図12に示す。この図から分かるように、原子炉中心領域である第2容器内の高速中性子束は低下する。一方、熱中性子束は原子炉中心部で最大となる。このことはMA及びFPの放射能半減期加速にとって好都合な状態であることを示す。
【実施例4】
【0081】
図13は原子炉容器である第1容器11内の中に第2容器12を備えたシステムを示す。このシステムでは、第1容器11内に燃料集合体22を装荷し、その周りに反射体31を配置する。1次冷却材供給ライン47に設置した循環ポンプ5を用いてこの容器11に入口41から金属Naを充填し、出口42から一次冷却材戻りライン46を経由して主熱交換器7に1次冷却材を送る。
【0082】
放射能消滅用集合体21は第2容器12内に装荷する。2次冷却材である超臨界COは循環ポンプ36を用いて2次冷却材供給ライン51を経由して第2容器入口43から第2容器12に供給する。放射能消滅集合体21により加熱された2次冷却材は、容器出口44から主熱交換器7に送られる。主熱交換器7でさらに加熱された2次冷却材は、超臨界COタービン8に送られ、ガスタービン8を回転して発電する。ガスタービン8にはCOガスを圧縮する圧縮器9が結合されている。使用されたCOガスは再生熱交換器53と冷却器52を経由して冷却された後、圧縮器9に供給され、COガスが圧縮されて超臨界COガスとなる。超臨界COガスは再生熱交換器53で事前に加熱された後、供給ライン51を経由して循環ポンプ36により再び第2容器12に送られる。
【0083】
次に、1次冷却材として金属Naの代わりにPb−Bi用いるケースを説明する。1次冷却材をPb−Biにした場合は、2次冷却材として水も使用可能である。ただし、2次冷却材としてCOガスも使用することもできる。基本的なシステムは図6において説明した内容と同様である。COガスタービン8の代わりに蒸気タービン60が使用可能となる。蒸気タービンを用いると、圧縮器9と冷却器52の代わりに復水器61が必要となる。そこで蒸気を水に戻し、水を加熱するために加熱器62および63を設置する。一般的に大型の蒸気タービンシステムでは、低圧の加熱器62と高圧の加熱器63と2段の加熱システムを利用する。本発明のシステムでは、これらの加熱器と放射能消滅用第2容器12を用いた2段加熱が可能となる。この様に2段加熱した水は主熱交換器7に供給され、蒸気を発生する。
【実施例5】
【0084】
実施例4の2領域原子炉において、低周波電磁場を印加する方法を図14を用いて説明する。高速中性子領域(第1容器)11内に熱中性子領域(第2容器)12を入れて、第2容器12内に放射能消滅用集合体(MA消滅用集合体+FP消滅用集合体)21を装荷する。一方、第1容器11内には燃料集合体22を装荷する。そして燃料集合体22の周囲に反射体31を配置する。次に、放射能消滅用集合体21を包囲するように内殻ソレノイドコイル121、および外殻ソレノイドコイル122を配置し、10kHz〜100MHz、好ましくは50KHz〜50MHzの交流磁場から発生した低周波電磁場を印加する。
これとは逆に、第2容器内に第1容器を設置する場合は図7に示したとおりである。この場合ソレノイドコイルは炉心全体に設置されている。
【実施例6】
【0085】
本発明は、基本的に負荷追随型制御型炉心(特許文献3)の確立を目的としている。このため、第1容器に装荷する燃料集合体群の寸法には制限がある。このため、原子炉の出力を上げるためには、大きな寸法の原子炉容器のなかに2個以上の第1容器を設置することが有効となる。原子炉容器1内に4個の燃料集合体を装荷する第1容器を設置する実施例を図15に示す。原子炉容器1の内部に4個の第1容器11を設置する。第1容器内には燃料集合体22と反射体31を設ける。一方、第2容器内には、MA消滅用集合体23を第2容器の中心部に装荷し、FP消滅用集合体24を第2容器の周辺部に装荷する。このような放射能消滅用集合体配置を採用することにより、熱中性子の利用効率が向上する。
【0086】
図16にこの原子炉構造の模式的縦断面を示す。原子炉容器1に取り付けた1次冷却材入口配管41を、複数設置した第1容器11への入口配管と接続するために、入口配管マニホールド411を利用して分岐する。そして複数の第1容器出口配管は、出口配管マニホールド421を用いて一つの原子炉出口配管42に接続されている。
【0087】
次に、図17に1次冷却材として金属Na、2次冷却材として超臨界COガスを用い、上記の複数の燃料集合体群を設置した原子炉システムを示す。原子炉容器1外部の装置の動作は図5の場合と同様であるので省略する。
【実施例7】
【0088】
実際に軽水炉型の原子炉を運転する場合、コスト低減を考慮すると運転効率を向上させることが望まれる。運転効率の向上には核燃料の燃焼度を制御することが重要となる。この制御には、制御棒、緊急冷却系等の工学的な安全システムの使用が必須である。しかし、燃料棒の高温における損傷の可能性は残される。本発明では、金属燃料棒と負荷追随型制御方式を採用することにより、より安全でかつ放射能を低減することを可能にする、簡単化した原子炉システムを目的にしている。原子炉システムを簡単化する場合、1次冷却材としてPb−Biを用い、2次冷却材として水を利用することが前提となる。
図18は、入口配管部を閉鎖して、第1容器内の1次冷却材を強制循環でなく自然循環させる方法を示す。図18において複数の第1容器11はマニホールド411および421により接続されている。このために各第1容器間で1次冷却材が自然対流する。第1容器11内には反射体31と燃料集合体22を装荷する。そして第2容器12内の外周部にFA消滅用棒24を配置し、中心部の第1容器内には高速中性密度が高くなるのでMA消滅用棒23を配置する。第2容器12の入口部43から水を注入し出口部44から排出する。第1容器11の出口配管42は、一次冷却材から発生したガス状成分等を除去するために使用する。
【0089】
この原子炉を組み込んだ原子炉システムを図19に示す。第2容器出口44からでた蒸気は蒸気タービン60に送られ、蒸気は復水器61で水に戻り、加熱器62、63を経由して循環ポンプにより原子炉容器1に戻る。2次冷却材水は燃料集合体群22により再加熱され、再度蒸気となる。
【実施例8】
【0090】
次に、図20および21を参照しながら、本発明を大型原子炉に適用する方法に関して説明する。原子炉容器1の中に反射体31と燃料集合体22の群を入れた第1容器11を複数設置する。圧力容器1に一次冷却材としてPb−BiまたはSnを充填した後、一次冷却材用出入り口である41および42は閉鎖する。この実施例は、大型原子炉仕様に合わせることが可能な構造である。まず、原子炉容器が大きくなれば、中に収納可能な反射体と燃料集合体群の数を増やすことが可能になる。図21の例では、複数の第2容器12の入口をマニホールド431で接続する。さらに、複数の第2容器出口をマニホールド441で接続する。第1容器11には1次冷却材循環ラインを接続しないで、1次冷却材を自然対流させる。この実施例では、1次冷却材としてPb−Biを、2次冷却材として水を用いる。消滅用集合体23、24が装荷された第2容器内で水が加熱され、蒸気に変わる。この蒸気がタービン60と復水器61に送られ、発電が行われる。
【実施例9】
【0091】
次に、図22に、より大規模な原子炉を対象としたときの本発明の実施例を示す。原子炉圧力容器1の中に高速中性領域である複数の第1容器11と複数の熱中性領域である第2容器12を配置する。第1容器には、燃料集合体22と反射体31を配置する。第2容器にはMA消滅用集合体23とFP消滅用集合体24を装荷する。冷却水は復水器61から循環ポンプ36を用いて圧力容器1の2次冷却材入口48に供給される。圧力容器内に供給された2次冷却材である水は、第2容器12により予備的に加熱される。この予備的に加熱された2次冷却材は出口49から排出され、第2容器12に取り付けられた2次冷却材入口マニホールド431に送られる。2次冷却材である水は、第2容器内でさらに加熱され蒸気となる。蒸気は出口マニホールド441を経由して蒸気ライン501に送られる。この蒸気によりタービン60が駆動され、発電が行われる。この実施例においては、第1容器11の出口および入口は閉鎖し、中に充填した1次冷却材であるPb−Biは、自然対流により熱を除去する。さらに燃料集合体の燃焼は多層反射体を利用して、第1容器内の温度により制御される。
【0092】
上記記載は実施例についてなされたが、本発明はそれに限らず、本発明の精神と添付の請求の範囲の範囲内で種々の変更および修正をすることができることは当業者に明らかである。
【符号の説明】
【0093】
1原子炉圧力容器
5 1次冷却材循環ポンプ
7 主熱交換器
8 超臨界COガスタービンン
9 超臨界COガス圧縮器
11 高速中性子領域(第1容器)
12 熱中性子領域(第2容器)
21 放射能消滅用集合体
22 燃料集合体
23 MA消滅用集合体
24 FP消滅用集合体
31 反射体
36 2次冷却材循環ポンプ
37 供給ポンプ
41 1次冷却材入口
42 1次冷却材出口
43 減速材兼冷却材(2次冷却材)入口
44 減速材兼冷却材(2次冷却剤)出口
46 1次冷却材戻りライン
47 1次冷却材供給ライン
50 2次冷却材タービン供給ライン
51 2次冷却材戻りライン
52 冷却器
53 再生熱交換器
54 超臨界COガス循環ポンプ
55 隔離弁
59 アキュムレーター
60 蒸気タービンン
61 復水器
62 低圧加熱器
63 高圧加熱器
121 外殻ソレノイドコイル
122 内殻ソレノイドコイル
123 ソレノイドコイル
140 高速中性子用制御棒
141 熱中性子用制御棒
160 自然対流加速用筒
221 燃料棒
222 燃料集合体スペーサー
300 反射体支持棒
301 スプリング状バイメタル
302 分轄反射体
311 リング状多層反射体本体
313 リング状多層反射体支持板
315 反射体熱望張変形用スプリング
411 1次冷却材入口配管マニホールド
421 1次冷却材出口配管マニホールド
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22