(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ヒドロキシ基含有化合物が、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオールよりなる群から選ばれる少なくとも1種からなる、請求項1に記載の導電性高分子有機溶剤分散液の製造方法。
前記3級アミンが、トリオクチルアミン、トリブチルアミンよりなる群から選ばれる少なくとも1種からなる、請求項3に記載の導電性高分子有機溶剤分散液の製造方法。
前記有機溶剤が、イソプロパノール、メチルエチルケトンよりなる群から選ばれる少なくとも1種からなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の導電性高分子有機溶剤分散液の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<導電性高分子有機溶剤分散液>
本発明の一態様の導電性高分子有機溶剤分散液は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と、ヒドロキシ基含有化合物と、アミン化合物と、分散媒としての有機溶剤とを含有する分散液である。
該分散液は、導電層を形成するための塗料として使用される。
【0008】
(導電性複合体)
[π共役系導電性高分子]
π共役系導電性高分子としては、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であれば本発明の効果を有する限り特に制限されず、例えば、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン系導電性高分子、ポリアセチレン系導電性高分子、ポリフェニレン系導電性高分子、ポリフェニレンビニレン系導電性高分子、ポリアニリン系導電性高分子、ポリアセン系導電性高分子、ポリチオフェンビニレン系導電性高分子、及びこれらの共重合体等が挙げられる。空気中での安定性の点からは、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン類及びポリアニリン系導電性高分子が好ましく、透明性の面から、ポリチオフェン系導電性高分子がより好ましい。
【0009】
ポリチオフェン系導電性高分子としては、ポリチオフェン、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−エチルチオフェン)、ポリ(3−プロピルチオフェン)、ポリ(3−ブチルチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルチオフェン)、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(3−デシルチオフェン)、ポリ(3−ドデシルチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルチオフェン)、ポリ(3−ブロモチオフェン)、ポリ(3−クロロチオフェン)、ポリ(3−ヨードチオフェン)、ポリ(3−シアノチオフェン)、ポリ(3−フェニルチオフェン)、ポリ(3,4−ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4−ジブチルチオフェン)、ポリ(3−ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3−エトキシチオフェン)、ポリ(3−ブトキシチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3−デシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ブテンジオキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−メトキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−エトキシチオフェン)、ポリ(3−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン)が挙げられる。
ポリピロール系導電性高分子としては、ポリピロール、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルピロール)、ポリ(3−エチルピロール)、ポリ(3−n−プロピルピロール)、ポリ(3−ブチルピロール)、ポリ(3−オクチルピロール)、ポリ(3−デシルピロール)、ポリ(3−ドデシルピロール)、ポリ(3,4−ジメチルピロール)、ポリ(3,4−ジブチルピロール)、ポリ(3−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルピロール)、ポリ(3−ヒドロキシピロール)、ポリ(3−メトキシピロール)、ポリ(3−エトキシピロール)、ポリ(3−ブトキシピロール)、ポリ(3−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)が挙げられる。
ポリアニリン系導電性高分子としては、ポリアニリン、ポリ(2−メチルアニリン)、ポリ(3−イソブチルアニリン)、ポリ(2−アニリンスルホン酸)、ポリ(3−アニリンスルホン酸)が挙げられる。
上記π共役系導電性高分子の中でも、導電性、透明性、耐熱性の点から、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)が特に好ましい。
前記π共役系導電性高分子は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0010】
[ポリアニオン]
ポリアニオンとは、アニオン基を有するモノマー単位を、分子内に2つ以上有する重合体である。このポリアニオンのアニオン基は、π共役系導電性高分子に対するドーパントとして機能して、π共役系導電性高分子の導電性を向上させる。
ポリアニオンのアニオン基としては、スルホ基、またはカルボキシ基であることが好ましい。
このようなポリアニオンの具体例としては、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリルスルホン酸、ポリメタクリルスルホン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸、ポリスルホエチルメタクリレート、ポリ(4−スルホブチルメタクリレート)、ポリメタクリルオキシベンゼンスルホン酸等のスルホン酸基を有する高分子や、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリルカルボン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸)、ポリイソプレンカルボン酸、ポリアクリル酸等のカルボン酸基を有する高分子が挙げられる。これらの単独重合体であってもよいし、2種以上の共重合体であってもよい。
これらポリアニオンのなかでも、帯電防止性をより高くできることから、スルホン酸基を有する高分子が好ましく、ポリスチレンスルホン酸がより好ましい。
前記ポリアニオンは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリアニオンの質量平均分子量は2万〜100万であることが好ましく、10万〜50万であることがより好ましい。
本明細書における質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定し、標準物質をポリスチレンとして求めた値である。
【0011】
導電性複合体中の、ポリアニオンの含有割合は、π共役系導電性高分子100質量部に対して1〜1000質量部の範囲であることが好ましく、10〜700質量部であることがより好ましく、100〜500質量部の範囲であることがさらに好ましい。ポリアニオンの含有割合が前記下限値未満であると、π共役系導電性高分子へのドーピング効果が弱くなる傾向にあり、導電性が不足することがあり、また、導電性高分子有機溶剤分散液における導電性複合体の分散性が低くなる。一方、ポリアニオンの含有量が前記上限値を超えると、π共役系導電性高分子の含有量が少なくなり、やはり充分な導電性が得られにくい。
【0012】
ポリアニオンが、π共役系導電性高分子に配位してドープすることによって導電性複合体を形成する。
ただし、本態様におけるポリアニオンにおいては、全てのアニオン基がπ共役系導電性高分子にドープすることはなく、ドープに寄与しない余剰のアニオン基を有するようになっている。本態様の導電性高分子有機溶剤分散液では、ドープに関与しない余剰のアニオン基にアミン化合物が配位又は付加して、導電性複合体が疎水化されている。疎水化された導電性複合体は有機溶剤に対する分散性が高くなっている。
【0013】
(ヒドロキシ基含有化合物)
本態様におけるヒドロキシ基含有化合物は、ヒドロキシ基を2つ以上有する化合物であって、大気圧(1013hPa)で液状の化合物である。
ヒドロキシ基含有化合物のなかでも、ヒドロキシ基を2つ有するジオール化合物が好ましい。さらに、ジオール化合物のなかでも、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオールよりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。これら好ましいジオール化合物を用いると、後述する製造方法において、導電性複合体の乾燥体を有機溶剤に容易に分散させることができる。
【0014】
上記ヒドロキシ基含有化合物の含有割合は、導電性複合体100質量部に対して100質量部以上であることが好ましく、1000質量部以上であることがより好ましく、5000質量部以上であることがより好ましい。
一方、上記ヒドロキシ基含有化合物の含有割合は、100000質量部以下であることが好ましい。
【0015】
(アミン化合物)
アミン化合物は、π共役系導電性高分子にドープしていないポリアニオンの余剰のアニオン基と反応し、親油性を向上させて、導電性複合体の有機溶剤に対する分散性を向上させる機能を有する。
アミン化合物としては、1級アミン、2級アミン、3級アミン、4級アンモニウム塩のいずれであってもよい。また、アミン化合物は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
アミン化合物は、炭素数2〜12の直鎖、もしくは分岐鎖のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜12のアラルキル基、炭素数2〜12のアルキレン基、炭素数6〜12のアリーレン基、炭素数7〜12のアラルキレン基、及び炭素数2〜12のオキシアルキレン基から選択される置換基を有していてもよい。
【0016】
具体的な1級アミンとしては、例えば、アニリン、トルイジン、ベンジルアミン、エタノールアミン等が挙げられる。
具体的な2級アミンとしては、例えば、ジエタノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジフェニルアミン、ジベンジルアミン、ジナフチルアミン等が挙げられる。
具体的な3級アミンとしては、例えば、トリエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、トリフェニルアミン、トリベンジルアミン、トリナフチルアミン等が挙げられる。
具体的な4級アンモニウム塩としては、例えば、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラプロピルアンモニウム塩、テトラフェニルアンモニウム塩、テトラベンジルアンモニウム塩、テトラナフチルアンモニウム塩等が挙げられる。アンモニウムの対となる陰イオンとしてはヒドロキシドイオンが挙げられる。
【0017】
これらアミン化合物のうち、得られる導電性複合体の有機溶剤に対する分散性がより高くなることから、3級アミンが好ましく、トリブチルアミン、トリオクチルアミンがより好ましい。
【0018】
アミン化合物の含有割合は、導電性複合体を100質量部とした際に、10〜300質量部であることが好ましく、50〜150質量部であることがより好ましい。アミン化合物の含有割合が前記下限値以上であれば、導電性複合体の有機溶剤に対する分散性がより高くなり、前記上限値以下であれば、導電性の低下を防ぐことができる。
【0019】
(バインダ化合物)
本態様の導電性高分子有機溶剤分散液は、得られる導電層の塗膜強度及び硬度を向上させるために、バインダ化合物を含有してもよい。
バインダ化合物としては、ポリマー、熱硬化性化合物、活性エネルギー線硬化性化合物が挙げられる。
バインダ化合物として使用できる樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、酢酸ビニル樹脂などが用いられる。
熱硬化性化合物及び活性エネルギー線硬化性化合物としては、ビニル基を有する化合物、エポキシ基を有する化合物、オキセタン基を有する化合物等が挙げられる。これらは、モノマーでもよいし、オリゴマーでもよい。
これらバインダ化合物のなかでも、有機溶剤に分散又は溶解させやすく、硬化が容易であることから、活性エネルギー線硬化性アクリル化合物が好ましい。活性エネルギー線硬化性アクリル化合物は、活性エネルギー線(紫外線、電子線、可視光線)の照射によってラジカル重合して硬化するアクリル化合物である。
活性エネルギー線硬化性アクリル化合物としては、例えば、アクリレート、メタクリレート、(メタ)アクリルアミド、ビニルエーテル、カルボン酸ビニルエステル等が挙げられる。また、活性エネルギー線硬化性アクリル化合物は、ビニル基を1つのみ有する単官能モノマーでもよいし、ビニル基を2つ以上有する多官能モノマーでもよいし、単官能モノマーと多官能モノマーの併用でもよい。
【0020】
アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ビスフェノールA・エチレンオキサイド変性ジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート等が挙げられる。
メタクリレートとしては、例えば、n−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、アリルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等が挙げられる。
(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、メタクリルアミド、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、アクリロイルモルホリン、アクリロイルピペリジン等が挙げられる。
ビニルエーテルとしては、例えば、2−クロロエチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、トリエチレングリコールビニルエーテル等が挙げられる。
カルボン酸ビニルエステルとしては、例えば、酪酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、ピバリン酸ビニル等が挙げられる。
また、活性エネルギー線硬化性アクリル化合物は、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリアクリルアクリレート等の、アクリルモノマーと他の化合物とを反応させて得た多官能アクリレートであってもよい。
上記活性エネルギー線硬化性アクリル化合物は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0021】
バインダ化合物の含有割合は、前記導電性複合体100質量部に対して1000〜100000質量部であることが好ましく、3000〜50000質量部であることがより好ましい。バインダ化合物の含有割合が前記下限値以上であれば、得られる導電層の強度及び硬度を充分に向上させることができ、前記上限値以下であれば、充分な導電性を確保できる。
【0022】
(有機溶剤)
本態様における有機溶剤としては、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、ジイソプロピルケトン、メチルエチルケトン、アセトンなどのケトン系溶媒;ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテルなどのエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼンなどの芳香族系溶媒;エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール、アリルアルコールなどのアルコール系溶媒;N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶媒、が挙げられるが、上記に限定されるものではない。これら有機溶剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記有機溶剤のなかでも、導電性複合体の分散性、バインダ樹脂の分散性、導電性高分子有機溶剤分散液を塗布した後の乾燥性が高いことから、イソプロパノール、メチルエチルケトンよりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
有機溶剤の含有量は、導電性高分子有機溶剤分散液の固形分濃度が好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.2〜5質量%になる量とする。
【0023】
(添加剤)
導電性高分子有機溶剤分散液には、公知の添加剤が含まれてもよい。
添加剤としては、本発明の効果を有する限り特に制限されず、例えば、界面活性剤、無機導電剤、消泡剤、カップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などを使用できる。ただし、添加剤は、前記ポリアニオン、前記ヒドロキシ基含有化合物、前記アミン化合物、前記バインダ樹脂及び前記有機溶剤以外の化合物からなる。
界面活性剤としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系の界面活性剤が挙げられるが、保存安定性の面からノニオン系が好ましい。また、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどのポリマー系界面活性剤を添加してもよい。
無機導電剤としては、金属イオン類、導電性カーボン等が挙げられる。なお、金属イオンは、金属塩を水に溶解させることにより生成させることができる。
消泡剤としては、シリコーン樹脂、ポリジメチルシロキサン、シリコーンオイル等が挙げられる。
カップリング剤としては、ビニル基、アミノ基、エポキシ基等を有するシランカップリング剤等が挙げられる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、糖類、ビタミン類等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、オキサニリド系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0024】
(導電性高分子有機溶剤分散液の製造方法)
本態様の導電性高分子有機溶剤分散液の製造方法は、乾燥工程と、予備分散液調製工程と、導電性高分子有機溶剤分散液調製工程とを有する。
【0025】
乾燥工程は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含有する導電性複合体が水系分散媒中に含まれる導電性高分子水分散液を凍結乾燥又は噴霧乾燥して乾燥体を得る工程である。
【0026】
導電性高分子水系分散液は、例えば、ポリアニオンの水溶液中で、π共役系導電性高分子を形成するモノマーを化学酸化重合することにより得られる。また、導電性高分子水系分散液は市販のものを使用しても構わない。
【0027】
凍結乾燥では、前記導電性高分子水系分散液中の水分を凍結させ、真空乾燥する。
凍結乾燥の際の温度は、−60〜60℃とすることが好ましく、−40〜40℃とすることがより好ましい。凍結乾燥温度が前記下限値以上であれば、温度調整しやすく、前記上限値以下であれば、導電性高分子水系分散液を容易に凍結乾燥できる。
真空乾燥の際には、水系分散媒を充分に揮発させるために、前記凍結乾燥温度にした後に、例えば40℃以上に加熱してもよい。
噴霧乾燥では、前記導電性高分子水系分散液を真空容器中に噴霧することにより水分を蒸発させて乾燥する。
噴霧乾燥の際の温度は、−20〜40℃とすることが好ましく、0〜30℃とすることがより好ましい。噴霧乾燥温度が前記下限値以上であれば、導電性高分子水系分散液を容易に乾燥でき、前記上限値以下であれば、導電性複合体の熱劣化を防止できる。
乾燥工程によって得られる乾燥体の水分量はできるだけ少ないことが好ましく、水分を全く含まないことが最も好ましいが、実用の観点からは、水分を10質量%以下の範囲で含んでも構わない。
水分量を少なくするためには、例えば、乾燥時間を長く、乾燥温度を高く、真空度を高くすればよい。
【0028】
予備分散液調製工程は、前記乾燥体を、上記ヒドロキシ基含有化合物に添加して予備分散液を調製する工程である。
乾燥体及びヒドロキシ基含有化合物の割合は、予備分散液における乾燥体濃度が0.05〜20質量%になる割合が好ましく、0.1〜10質量%になる割合がより好ましく、0.5〜5質量%になる割合がさらに好ましい。予備分散液における乾燥体濃度が前記下限値以上であれば、導電性高分子有機溶剤分散液の導電性複合体濃度を充分に高くすることができ、前記上限値以下であれば、予備分散液中の乾燥体を容易に有機溶剤に分散させることができる。
乾燥体をヒドロキシ基含有化合物に添加した後には攪拌することが好ましい。攪拌の方法は特に制限されず、スターラー等の剪断力が弱い攪拌であってもよい。高剪断力の分散機(ホモジナイザ等)を用いて攪拌しても構わないが、過剰な攪拌であり、コストの点で不利である。
【0029】
導電性高分子有機溶剤分散液調製工程は、前記予備分散液にアミン化合物及び有機溶剤を添加し、攪拌して導電性高分子有機溶剤分散液を調製する工程である。
アミン化合物の添加量は、導電性複合体を100質量部とした際に、10〜300質量部であることが好ましく、50〜150質量部であることがより好ましい。アミン化合物の添加量が前記下限値以上であれば、有機溶剤に対して導電性複合体を充分に分散性させることができ、前記上限値以下であれば、導電性の低下を防ぐことができる。
有機溶剤の添加量は、導電性高分子有機溶剤分散液の固形分濃度が好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.2〜5質量%になる量とする。
予備分散液にアミン化合物及び有機溶剤を添加した後には攪拌することが好ましい。しかし、高剪断力の分散機(ホモジナイザ等)を用いなくても、導電性複合体を有機溶剤に充分に分散させることができる。
【0030】
(作用効果)
導電性高分子水系分散液を凍結乾燥又は噴霧乾燥して得た乾燥体にアミン化合物及び有機溶剤を添加して有機溶剤分散液にする場合には、高い剪断力を付与する分散処理を施す必要があった。
しかし、前記乾燥体を、ヒドロキシ基を2つ以上有するヒドロキシ基含有化合物に一旦分散させて予備分散液を調製し、該予備分散液にアミン化合物及び有機溶剤を添加する本発明では、高い剪断力を付与しなくても、有機溶剤に対して導電性複合体を容易に分散させることができる。そのため、高い生産性で導電性高分子有機溶剤分散液を製造できる。
また、有機溶剤中の導電性複合体の分散性が高いことにより、導電性高分子有機溶剤分散液から形成される導電層は欠陥が少なくなるため、導電性に優れる。
【0031】
(用途)
上記製造方法により製造された導電性高分子有機溶剤分散液は、塗料として好適に使用される。塗布される対象物としては、フィルム基材、立体形状の樹脂成形体等が挙げられる。フィルム基材の少なくとも一方の面に導電性高分子有機溶剤分散液を塗布して導電層を形成した場合には、導電性フィルムを製造することができる。
以下に、導電性高分子有機溶剤分散液を用いて製造した導電性フィルムの一態様について説明する。
【0032】
本態様の導電性フィルムは、フィルム基材と、該フィルム基材の少なくとも一方の面に上記導電性高分子有機溶剤分散液が塗工されて形成された導電層とを備える。
【0033】
フィルム基材としては、プラスチックフィルムを用いることができる。
プラスチックフィルムを構成する樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン、ポリアリレート、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなどが挙げられる。これらの樹脂材料の中でも、透明性、可撓性、汚染防止性及び強度等の点から、ポリエチレンテレフタレートが好ましく、非晶性ポリエチレンテレフタレートがより好ましい。
プラスチックフィルムは未延伸のフィルムでもよいし、一軸延伸のフィルムでもよいし、二軸延伸のフィルムでもよい。機械的物性に優れる点では、プラスチックフィルムは二軸延伸のフィルムが好ましい。
【0034】
導電性フィルムを構成するフィルム基材の平均厚みとしては、5〜400μmであることが好ましく、10〜200μmであることがより好ましい。導電性フィルムを構成するフィルム基材の平均厚みが前記下限値以上であれば、破断しにくくなり、前記上限値以下であれば、フィルムとして充分な可撓性を確保できる。
本明細書における平均厚さは、任意の10箇所について厚さを測定し、その測定値を平均した値である。
【0035】
導電層は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と、ヒドロキシ基含有化合物と、アミン化合物とを含有する。導電性高分子有機溶剤分散液がバインダ化合物を含有する場合には、導電層は、バインダ化合物又はその硬化物をさらに含有する。
導電層の平均厚みとしては、10〜5000nmであることが好ましく、20〜1000nmであることがより好ましく、30〜500nmであることがさらに好ましい。導電層の平均厚みが前記下限値以上であれば、充分に高い導電性を発揮でき、前記上限値以下であれば、導電層を容易に形成できる。
【0036】
導電層の形成方法としては、フィルム基材に導電性高分子分散液を塗工した後、硬化させる方法が挙げられる。
導電性高分子有機溶剤分散液の塗工方法としては、グラビアコーター、ロールコーター、カーテンフローコーター、スピンコーター、バーコーター、リバースコーター、キスコーター、ファンテンコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、キャストコーター、スクリーンコーター等のコーターを用いた塗工方法、エアスプレー、エアレススプレー、ローターダンプニング等の噴霧器を用いた噴霧方式、ディップ等の浸漬方法等を適用することができる。
導電性高分子有機溶剤分散液の塗工には、必要に応じて、乾燥させてもよい。乾燥法としては、例えば、熱風加熱による乾燥法や、赤外線加熱による乾燥法などの通常の方法を採用できる。
バインダ化合物が活性エネルギー線硬化性アクリル化合物である場合には、導電性高分子有機溶剤分散液を塗工して形成した塗膜に活性エネルギー線を照射して該アクリル化合物を硬化させる。
活性エネルギー線のなかでも、汎用的である点では、紫外光(紫外線)が好ましい。紫外光の照射においては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプなどの光源を用いることができる。
紫外光照射における照度は100mW/cm
2以上が好ましい。照度が100mW/cm
2未満であると、前記活性エネルギー線硬化性アクリル化合物が充分に硬化しないことがある。また、積算光量は50mJ/cm
2以上が好ましい。積算光量が50mJ/cm
2未満であると、充分に架橋しないことがある。なお、本発明における照度、積算光量は、トプコン社製UVR−T1(工業用UVチェッカー、受光器;UD−T36、測定波長範囲;300〜390nm、ピーク感度波長;約355nm)を用いて測定した値である。
【実施例】
【0037】
(製造例1)
1000mlのイオン交換水に206gのスチレンスルホン酸ナトリウムを溶解し、80℃で攪拌しながら、予め10mlの水に溶解した1.14gの過硫酸アンモニウム酸化剤溶液を20分間滴下し、この溶液を12時間攪拌した。
得られたスチレンスルホン酸ナトリウム含有溶液に10質量%に希釈した硫酸を1000ml添加し、限外ろ過法によりポリスチレンスルホン酸含有溶液の約1000ml溶液を除去し、残液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000ml溶液を除去した。上記の限外ろ過操作を3回繰り返した。さらに、得られたろ液に約2000mlのイオン交換水を添加し、限外ろ過法により約2000mlの溶液を除去した。この限外ろ過操作を3回繰り返した。
得られた溶液中の水を減圧除去して、無色の固形状のポリスチレンスルホン酸を得た。
【0038】
(製造例2)
14.2gの3,4−エチレンジオキシチオフェンと、36.7gのポリスチレンスルホン酸を2000mlのイオン交換水に溶かした溶液とを20℃で混合させた。
これにより得られた混合溶液を20℃に保ち、掻き混ぜながら、200mlのイオン交換水に溶かした29.64gの過硫酸アンモニウムと8.0gの硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とをゆっくり添加し、3時間攪拌して反応させた。
得られた反応液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000ml溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。
そして、得られた溶液に200mlの10質量%に希釈した硫酸と2000mlのイオン交換水とを加え、限外ろ過法により約2000mlの溶液を除去し、これに2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000ml溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。
さらに、得られた溶液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000mlの溶液を除去した。この操作を5回繰り返し、1.2質量%のポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)水分散液(PEDOT−PSS水分散液)を得た。
【0039】
(製造例3)
上記PEDOT−PSS水分散液1000gを凍結乾燥して、12gの凍結乾燥体を得た。
【0040】
(製造例4)
上記PEDOT−PSS水分散液1000gを噴霧乾燥して、12gの噴霧乾燥体を得た。
【0041】
(実施例1)
製造例3で得た凍結乾燥体1.0gにプロピレングリコール49.0g添加し、スターラーを用いて1000rpmの攪拌回転数で2時間攪拌して予備分散液を調製した。該予備分散液に、イソプロパノール49.1gとトリオクチルアミン0.9gの混合液を添加して、100gの導電性高分子有機溶剤分散液を得た。
【0042】
(実施例2)
製造例3で得た凍結乾燥体1.0gにプロピレングリコール49.0g添加し、スターラーを用いて1000rpmの攪拌回転数で2時間攪拌して予備分散液を調製した。該予備分散液に、イソプロパノール149.1gとトリオクチルアミン0.9gの混合液を添加して、200gの導電性高分子有機溶剤分散液を得た。
【0043】
(実施例3)
製造例3で得た凍結乾燥体1.0gにプロピレングリコール49.0g添加し、スターラーを用いて1000rpmの攪拌回転数で2時間攪拌して予備分散液を調製した。該予備分散液に、イソプロパノール349.1gとトリオクチルアミン0.9gの混合液を添加して、400gの導電性高分子有機溶剤分散液を得た。
【0044】
(実施例4)
製造例4で得た噴霧乾燥体1.0gにプロピレングリコール49.0g添加し、スターラーを用いて1000rpmの攪拌回転数で2時間攪拌して予備分散液を調製した。該予備分散液に、イソプロパノール49.1gとトリオクチルアミン0.9gの混合液を添加して、100gの導電性高分子有機溶剤分散液を得た。
【0045】
(実施例5)
製造例3で得た凍結乾燥体1.0gにプロピレングリコール49.0g添加し、スターラーを用いて1000rpmの攪拌回転数で2時間攪拌して予備分散液を調製した。該予備分散液に、イソプロパノール149.5gとトリブチルアミン0.5gの混合液を添加して、200gの導電性高分子有機溶剤分散液を得た。
【0046】
(実施例6)
製造例3で得た凍結乾燥体1.0gにプロピレングリコール49.0g添加し、スターラーを用いて1000rpmの攪拌回転数で2時間攪拌して予備分散液を調製した。該予備分散液に、メチルエチルケトン149.1gとトリオクチルアミン0.9gの混合液を添加して、200gの導電性高分子有機溶剤分散液を得た。
【0047】
(実施例7)
製造例3で得た凍結乾燥体0.5gにプロピレングリコール49.5g添加し、スターラーを用いて1000rpmの攪拌回転数で2時間攪拌して予備分散液を調製した。該予備分散液に、イソプロパノール149.1gとトリオクチルアミン0.45gの混合液を添加して、200gの導電性高分子有機溶剤分散液を得た。
【0048】
(実施例8)
製造例3で得た凍結乾燥体0.5gにエチレングリコール49.5g添加し、スターラーを用いて1000rpmの攪拌回転数で2時間攪拌して予備分散液を調製した。該予備分散液に、イソプロパノール149.1gとトリオクチルアミン0.45gの混合液を添加して、200gの導電性高分子有機溶剤分散液を得た。
【0049】
(実施例9)
製造例3で得た凍結乾燥体0.5gにジエチレングリコール49.5g添加し、スターラーを用いて1000rpmの攪拌回転数で2時間攪拌して予備分散液を調製した。該予備分散液に、イソプロパノール149.1gとトリオクチルアミン0.45gの混合液を添加して、200gの導電性高分子有機溶剤分散液を得た。
【0050】
(実施例10)
製造例3で得た凍結乾燥体0.5gに1,4−ブタンジオール49.5g添加し、スターラーを用いて1000rpmの攪拌回転数で2時間攪拌して予備分散液を調製した。該予備分散液に、イソプロパノール149.1gとトリオクチルアミン0.45gの混合液を添加して、200gの導電性高分子有機溶剤分散液を得た。
【0051】
(実施例11)
実施例2で得た導電性高分子有機溶剤分散液53.5gに、ウレタンアクリレート(根上工業株式会社製、アートレジンUN−904M)10gとペンタエルスリトールトリアクリレート20gとジアセトンアルコール15gと光重合開始剤(BASF社製、イルガキュア127)1.2gを添加して、光硬化性の導電性高分子有機溶剤分散液を得た。
【0052】
(比較例1)
実施例1においてプロピレングリコールをイソプロパノールに変更したこと以外は実施例1と同様にして導電性高分子有機溶剤分散液を得た。
【0053】
(比較例2)
実施例2においてプロピレングリコールをイソプロパノールに変更したこと以外は実施例2と同様にして導電性高分子有機溶剤分散液を得た。
【0054】
(比較例3)
実施例3においてプロピレングリコールをイソプロパノールに変更したこと以外は実施例3と同様にして導電性高分子有機溶剤分散液を得た。
【0055】
(比較例4)
実施例4においてプロピレングリコールをイソプロパノールに変更したこと以外は実施例4と同様にして導電性高分子有機溶剤分散液を得た。
【0056】
(比較例5)
実施例5においてプロピレングリコールをイソプロパノールに変更したこと以外は実施例5と同様にして導電性高分子有機溶剤分散液を得た。
【0057】
(比較例6)
実施例6においてプロピレングリコールをイソプロパノールに変更したこと以外は実施例6と同様にして導電性高分子有機溶剤分散液を得た。
【0058】
(比較例7)
実施例7においてプロピレングリコールをイソプロパノールに変更したこと以外は実施例7と同様にして導電性高分子有機溶剤分散液を得た。
【0059】
<評価>
[導電性高分子有機溶剤分散液の分散状態の評価]
各例の導電性高分子有機溶剤分散液を、製造後から24時間放置した。24時間放置後の導電性高分子有機溶剤分散液の状態を目視により観察して下記の基準で評価した。評価結果を表1に示す。
A:固形物の分離は見られず、高い分散性を有していた。
B:固形物の分離が見られ、分散性が低かった。
【0060】
[導電性評価]
実施例11以外の各例については、導電性高分子有機溶剤分散液をポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製、ルミラーT60)の一方の面に、No.4のバーコーターを用いて塗布し、120℃で1分間乾燥させて導電層を形成した。
実施例11については、導電性高分子有機溶剤分散液をポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製、ルミラーT60)の一方の面に、No.8のバーコーターを用いて塗布し、120℃で1分間乾燥させた。次いで、乾燥により形成された塗膜に、400mJの紫外線を照射し、塗膜を硬化させて、導電層を形成した。
導電層の表面抵抗値を、抵抗率計(三菱化学社製ハイレスタMCP−HT450)を用いて測定した。測定結果を表1に示す。なお、表中の「OVER」は、抵抗率計の測定上限値を超えたことを意味する。
【0061】
【表1】
【0062】
PEDOT−PSSの凍結乾燥体又は噴霧乾燥体を、ヒドロキシ基を2つ以上有する液状のヒドロキシ基含有化合物に添加して予備分散液を調製し、該予備分散液にアミン化合物及び有機溶剤を添加して得た各実施例の導電性高分子有機溶剤分散液では、表面抵抗値が小さく、導電性に優れた導電層を形成できた。また、各実施例は、高剪断の分散処理を施していないにもかかわらず、PEDOT−PSSの分散性に優れていた。
ヒドロキシ基を2つ以上有する液状のヒドロキシ基含有化合物の代わりにヒドロキシ基を1つのみ有する液状のヒドロキシ基含有化合物を用いた各比較例の導電性高分子有機溶剤分散液では、導電性が高い導電層は得られなかった。また、各比較例は、PEDOT−PSSの分散性が低かった。