【実施例】
【0023】
図1〜2に示す第1実施例の太陽電池パネル1は、太陽電池モジュール10の周縁に枠体11〜14を配した構成であって、それぞれの枠体11〜14は、太陽電池モジュール10の側縁を支持する支持部111〜141と側面部112〜142とからなり、流れ方向の上側枠11,下側枠14の側面部112,142は、他の2辺の枠体(側方枠)12,13の側面部122,132より低い低側面部であり、これらの下方空間を開口部110,140としている。
そして、この太陽電池パネル1を用いた敷設構造は、下地として、流れ方向に沿うハゼ組み式の折板屋根30のハゼ部35,35'に取り付けられた持出金具4に、前記構成の太陽電池パネル1を敷設したものである。
なお、太陽電池モジュール10を模式的に記載すると、符号等が見えにくくなるため、
図1〜2の殆どにて太陽電池モジュール10を白塗り(白抜き)にて示した。また、
図2は、第1実施例の太陽電池パネル1の敷設構造を示す平面図であるが、意図的にケーブル101を省略した。
【0024】
この第1実施例における下地を構成する前記折板屋根30は、山部と谷部とを構成する外装材3Aと、躯体(H鋼)3B上に固定されて前記外装材3Aを保持する保持部材(タイトフレーム)3Cとからなる。この外装材3Aは、略平坦状の平板部31の左右に傾斜状に立ち上がる立ち上がり部32,32を有し、各立ち上がり部32の上端に外側へ延在する載置部33が形成され、この載置部33の外側を略鉛直状に起立させて起立部34とし、隣接する外装材3A,3Aの当該部分を重合させてカシメてハゼ部としたものであり、外側に位置する重合部35と内側に位置する被重合部35'とした構成である。
この折板屋根30のハゼ部35,35'には、
図1(b)に示す左右分割型の本体4Aと略ハット型の連結枠体4Bと上向きの縦ボルト4Cとからなる持出金具4が所定間隔にて一体化されて取り付けられ、取り付けられた持出金具4の受けフランジ41に、取付部材1が一体的に固定されている。この本体4Aは、上端に略平坦状の受けフランジ41が設けられ、その下方に通孔を有する縦片部分を介して外方へ膨出状の包持部42が設けられ、さらにその他方に着座部43が設けられている。そして、この本体4Aと連結枠体4Bと縦ボルト4Cとは、係合状に組み合わされ、その着座部43を折板屋根30の載置部33上に受支させると共に、その包持部42がハゼ部35,35'を覆うように配置した状態で前記縦片部分に設けた通孔に連結具44を締着することにより一体化されている。
【0025】
この第1実施例における前記下地(持出金具4)上に敷設する太陽電池パネル1は、太陽電池セル10をガラス等に積層させてモジュール化し、周縁に枠体(フレーム)11〜14を配して敷設したものである。
それぞれの枠体11〜14は、支持部111〜141がそれぞれ略コ字状であって、前述のように流れ方向の水上側及び水下側に位置する2辺(上側枠11及び下側枠14)の側面部112,142が、他辺(側方枠12,13)の側面部122,132より低く形成された低側面部である。
【0026】
また、左右の側方枠12,13の側面部122,132は、前記上側枠11及び下側枠14の低側面部112,142より高い高側面部であり、その下端からそれぞれ内側へ略水平状に延在させ、更にその先端を折り上げた浅受皿状の着底部123,133を形成している。この着底部123,133は、太陽電池パネル1の敷設状態において、複数の前記持出金具4の受フランジ41上に受支される。また、この着底部123,133の浅受皿状の内側には、太陽電池モジュール10のケーブル101が垂れ落ちないように収容可能である。
【0027】
このような構成の太陽電池パネル1を下地30上に敷設してなる敷設構造は、隣接する太陽電池パネル1,1が、離間状に配設されると共に、離間部分(開放部15)の風上側に低側面部112を位置させて敷設した構成である。即ち開放部15は、流れ方向に隣接する太陽電池パネル1,1の配設間隔である。
【0028】
この第1実施例において、開放部(離間部分)15の風上側には、起立部2を設けている。
より詳しくは、開放部15の水下側に配設した太陽電池パネル1の上側枠11に起立片(部)2の下端を嵌合して一体的に固定している。
また、起立片(部)2は、下端を略鉛直状に、その上方を水上側へ傾斜状に形成している。
そして、上側枠11には、側面部112の外側に水上側へ略L字状に突出して上方が開放する取付溝113が設けられ、起立片(部)2の下端には、略楔状の係止端を設けたので、上方から弾性的に嵌合させて固定することができる。
【0029】
なお、前述のように太陽電池パネル1は、側方枠12,13に設けた着底部123,133を持出金具4の受フランジ41上に受支させた状態で敷設するが、その固定は、側方枠12,13を押さえる押さえ材5Aにて上方から押さえ保持した。
前記押さえ材5Aは、断面が逆ハット状のピース金具であって、左右のフランジ状の横片が側方枠13,12の上端を押さえる保持部(押さえ部)であり、中央の横片に形成した孔から前記持出金具4の縦ボルト4Cの先端を突出させてナット4Dを締め付けて固定する。なお、押さえ材5Aの中央の横片と持出金具4の受フランジ41間には、断面が逆U字状の台状部材5Bや略筒状の台状部材5Cが介在されて一体的に固定されている。
【0030】
この第1実施例の太陽電池パネル1を施工するには、まず前記折板屋根30に対し、所定位置に持出金具4を取り付ける。この所定位置とは、太陽電池パネル1の長辺を3箇所で支持する場合に力学的に最も安定される位置を選択した。
この状態で太陽電池パネル1を配設するが、この時点では図示するように起立片2を一体的に取り付けていない状態で配設する。詳しくは、太陽電池パネル1の側方枠12,13に設けた着底部123,133を、持出金具4の受フランジ41上に受支させるように配設する。
次に、左右に隣接する太陽電池パネル1,1の側方枠13,12の上端を押さえ材5Aにて押さえ保持する。
その後、前述のように上側枠11の取付溝113に、起立片2の下端(取付部22)を嵌合させて取り付ける。
【0031】
このように、本発明の太陽電池パネル1は、上側枠11の側面部112を、他辺(側方枠12,13)の側面部122,132より低く形成したものであり、この太陽電池パネル1を下地30上に敷設した敷設構造では、風の流れを
図2(d)の拡大断面図に矢印にて示すように、太陽電池モジュール10の裏面側の空気(熱量)を他辺12,13より低い側面部112の枠体11の下側(開口部110)から排出することができ、裏面側16の空気を容易に排出することができるために、太陽電池10の温度上昇を抑制し、発電効率の低下を防ぐことができる。なお、裏面空間16は、太陽電池モジュール10の裏面側に位置する空間全てを指すものであって、モジュール10自体の裏面側ばかりでなく、枠体11〜14の裏面をも含むものである。
【0032】
また、この第1実施例では、隣接する太陽電池パネル1,1は、離間状に配設されると共に、離間部分15の風上側に低側面部112を位置させて敷設したので、太陽電池パネル1の表面を流れる風に対し、低側面部112が形成された枠体11の風下に減圧空間が形成され、裏面側16の空気を吸い出すように排出することができる。
【0033】
さらに、前記低側面部112には、上方へ突出する起立部2を設けたので、起立部2に当たった風が上方に乱流を起こし、起立部2の上端を減圧状態とするため、太陽電池パネル1の裏面空間16の空気が前記開口部110から表面側へ吸い出す作用が果たされ、裏面空間16の空気の流れを著しく速め、太陽電池セル10自体が発生する温度を抑えることで発電効率の低下を防ぐことができる。
【0034】
なお、この第1実施例では、太陽電池パネル1の上側枠11の低側面部112の下方に形成される開口部110を空気の排出用として用いることを説明したが、この場合、高側面部122,132が形成される左右の側方枠12,13を、太陽電池モジュール10を支持する強度を担う枠体として用いることができる。また、下側枠11の低側面部142の下方に形成される開口部140は、空気の導入用として用いられる。
【0035】
さらに、この第1実施例では、低側面部112,132の下方に形成される開口部110,140が、配設状態において、下地30との間に形成されるため、この開口部110,140が裏面空気の流れをせき止める(滞留させる)ことがない。
【0036】
図3に示す第2実施例は、より簡易な形状の押さえ部材5Dを用いて側方枠12',13'の上端を押さえ保持したものである。また、起立片(部)2'は、略鉛直状に形成されている。それ以外の構成、例えば太陽電池モジュール10や下側枠14等については前記第1実施例と全く同様であるから、図面に同一符号を付して説明を省略する。
この第2実施例における側方枠12',13'は、着底部123',133'の形状が浅受皿状でなく略L字状であって、押さえ部材5Dが下地への固定部を保持部とを備え、台状部材(5B,5C)を必要としない略Z字状のピース金具である。
そして、この第2実施例でも前記第1実施例と同様の効果が果たされる。
【0037】
図4には、上側枠11に起立部2を設けるバリエーションを示すものであり、前記第1実施例における態様は、拡大して
図4(d)に示すように略コ字状の支持部111と低側面部112と取付溝113と横片114とを有する上側枠11に、起立片(部)2の下端を嵌合して一体的に固定する態様であって、起立状部を21とし、取付溝113に嵌合させる下端を取付部22とした。
図4(a)に示す態様は、上側枠11A自体に一体的に起立部115を形成する態様であって、取付溝113を有しない以外は、前記
図4(d)、即ち第1実施例と全く同様であり、図面に同一符号を付して説明を省略する。
図4(b)に示す態様は、上側枠11Bに形成する支持部111bが逆L字状であり、図示しない太陽電池パネル1の端縁を載置状に支持させ、起立片2Bに形成した押さえ部22にて太陽電池パネル1の端縁を上方から押さえ、挟持状に保持する。それ以外の構成は、前記
図4(d)と同様であるから、図面に同一符号を付して説明を省略する。
図4(c)に示す態様は、上側枠11Cに形成する横片114を有しない以外は、前記
図4(d)と同様であるから、図面に同一符号を付して説明を省略する。
【0038】
図5に示す第3実施例は、下地として、流れ方向に沿うハゼ組み式の折板屋根30のハゼ部35,35'に取り付けられた持出金具4に、前記構成の太陽電池パネル1を敷設する概略構成では前記第1、第2実施例と共通するが、
図5(b)に示すように持出金具4の受けフランジ41上に受け金具6を積層状に配設し、更にその上面側に太陽電池パネル1の端縁を押さえる押さえ部71,71と起立片2Dを取付可能な取付部73とを有する押さえ材兼取付材7を積層状に配設した構成である。
【0039】
この第3実施例における受け金具6は、
図5(c)に拡大して示すように前後の下方へ折曲された端縁が持出金具4の受けフランジ41に沿わせる受支部61,61であり、太陽電池パネル1の端縁を受支する部分である。この左右の受支部61,61間には、隆状の固定受部62が形成され、該固定受部62の略中央には、前記持出金具4の縦ボルト4Cが挿通する孔621が形成されている。また、前記受支部61と固定受部62との境の段差63は、太陽電池パネル1を配設する際の位置規制作用を果たし、配設後のズレを防ぐ役割をも果たす。
【0040】
また、この第3実施例における押さえ材兼取付材7は、
図5(d)に拡大して示すように前後の上方へ折曲されたフランジ状の端縁が太陽電池パネル1の端縁を上方から押さえる押さえ部71,71であり、その間に略平坦状の平板部72が形成され、該平板部72の略中央には、前記持出金具4の縦ボルト4Cが挿通する孔721が形成されている。さらに、この平板部72の左右の側縁を下方へ折曲し、下端が前記受け金具6の固定受部62に着座する受片部722,722が形成されている。また、一方(図面手前側)の押さえ部71の左右に、傾斜状の起立片である取付部73,73が設けられている。
【0041】
また、隣接する押さえ材兼取付材7,7の取付部73,73に架け渡して配設される起立片2Dは、
図5(e)に拡大して示すように湾曲状の起立状部23を有し、裏面側に下方が開放する取付溝24が長さ方向に亘って形成された構成である。この取付溝24は、前記押さえ部材7の取付部73の上端を係合させることができ、左右に隣接する押さえ材兼取付材7,7の取付部73,73に架け渡して起立片2Dを取り付ける。
【0042】
この第3実施例の太陽電池パネル1を施工するには、まず前記折板屋根30に対し、所定位置に持出金具4を取り付け、続いて前記構成の受け金具6を積層状に固定する。なお、この所定位置とは、敷設する太陽電池パネル1の四角部分を指す。また、持出金具4の縦ボルト4Cを受け金具6の孔621に挿通させればよいので、極めて容易に受け金具6を適正位置に配設することができる。
この状態で太陽電池パネル1を配設するが、太陽電池パネル1の端縁が受け金具6の段差63に当接するように配設すればよく、容易に太陽電池パネル1を配設することができる。
次に、前記構成の押さえ材兼取付材7を、前記受け金具6上に重ねて固定するが、前記受け金具6の配設時と同様に、持出金具4の縦ボルト4Cを押さえ材兼取付材7の孔721に挿通させればよいので、極めて容易に押さえ材兼取付材6を適正位置に配設することができる。なお、説明するまでもなく、押さえ材兼取付材7の配設に際しては、押さえ部71が、太陽電池パネル1の四角の端縁を押さえるように配設する。
その後、前述のように左右に隣接する押さえ材兼取付材7,7の取付部73,73に起立片2Dの取付溝24が係合するように架け渡して配設する。
【0043】
この第3実施例でも、前記第1,第2実施例と全く同様の効果を奏することができる。
また、前述の施工手順にて説明したように配設する太陽電池パネル1の四角に持出金具4を配し、次に受け金具6、次に太陽電池パネル1、そして押さえ材兼取付材7という順で、各部材がそれぞれ位置規制されているため、容易に取付作業を実施することができる。
さらに、
図5(b)に示すように一枚の太陽電池パネル1の四角に、持出金具4と受け金具6と押さえ材兼取付材7とからなるユニットをそれぞれ配し、そのうちの二つのユニットの押さえ材兼取付材7,7(の取付部73,73)に、前記起立片2Dを架け渡して構成され、一つのユニットは流れ方向及び左右方向(桁行き方向)に隣接する4つの太陽電池パネル1に跨って配設されるものであるから、部材点数はむしろ少ない、即ち少ない点数にて取り付けられた構造とも言える。
【0044】
図6(a)〜(c)は、本発明における太陽電池パネル1の典型的な配列例を示すものであって、図面の右側が水上側、左側が水下側であり、左から右に向かって専ら風が吹くものと想定した場合を示し、空気の流れを太白矢印にて示している。
図6(a)は各太陽電池パネル1は略平行状に配設された例であり、前記第1実施例がその一例に相当するが、起立部2にて太陽電池パネル1の表面を流れる空気の流れに乱流を形成することにより、裏面側の空気16は、起立部2に近接する開放部15から排出される。
図6(b)は各太陽電池パネル1は流れ方向の上側を高くする傾斜状に配設された例であり、前記第3実施例がその一例に相当するが、裏面側の空間16では、太陽電池パネル1の裏面を傾斜状に流れ、開放部15から排出される。
図6(c)は前記
図6(a)と同様に各太陽電池パネル1が略平行状であるが、起立部2を備える太陽電池パネル1の水下側に、起立部2を備えない太陽電池パネル1を近接状に配設した例であり、恰も太陽電池パネル1の長さが2倍になったかのように空気の流れは流れ、前記
図6(a)と同様に裏面側の空気16は、起立部2に近接する開放部15から排出される。このように起立部2は、全ての開放部16に設けるものであっても、部分的に設けるものであってもよい。