(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記洗浄用ボール投入装置及び前記洗浄用ボール回収装置は、前記回収部で回収した洗浄用ボールを前記投入部に循環するボール循環ラインと、前記ボール循環ラインに設けられるボール循環ポンプとを有し、前記制御装置は、前記回収部の開放時に、前記ボール循環ポンプを停止することを特徴とする請求項1に記載の熱交換器の細管洗浄装置。
前記制御装置は、前記回収部を閉止後、回収部閉止確認信号が入力されると、前記洗浄用ボール投入装置を作動することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の熱交換器の細管洗浄装置。
前記回収部における上流側と下流側の差圧を検出する差圧計が設けられ、前記制御装置は、前記洗浄用ボール回収装置の作動時、前記差圧が予め設定された規定差圧を超えると、警報を発することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の熱交換器の細管洗浄装置。
前記回収部を開閉する開閉スイッチが設けられ、前記制御装置は、前記差圧が前記規定差圧を超えた後、前記開閉スイッチから回収部開放信号が入力されると、前記回収部を開放することを特徴とする請求項5に記載の熱交換器の細管洗浄装置。
前記制御装置は、予め設定された所定の時間になると前記洗浄用ボール投入装置及び前記洗浄用ボール回収装置を作動する自動洗浄モードと、洗浄開始信号が入力されると前記洗浄用ボール投入装置及び前記洗浄用ボール回収装置を作動する手動洗浄モードとを有することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の熱交換器の細管洗浄装置。
【背景技術】
【0002】
例えば、原子力発電プラントとして、加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)がある。この加圧水型原子炉は、軽水を原子炉冷却材及び中性子減速材として使用し、一次系全体にわたって沸騰しない高温高圧水とし、この高温高圧水を蒸気発生器に送って熱交換により蒸気を発生させ、この蒸気をタービン発電機へ送って発電するものである。このとき、タービン発電機の発電に使用した蒸気は、復水器で冷却されて復水となり、再び蒸気発生器に戻される。
【0003】
この復水器は、中空形状をなすハウジングの上部に蒸気の流入口が設けられ、下部に水(復水)の排出口が設けられると共に、ハウジングの一側部に入口水室が設けられ、他側部に出口水室が設けられ、この入口水室と出口水室を連結するように冷却水が流れる多数の細管が配置されて構成されている。従って、冷却水が多数の細管内に常時流動しており、流入口からハウジングの内部に流入した蒸気は、この冷却水との間で熱交換(冷却)が行われて復水となり、排出口から排出される。
【0004】
このような復水器では、冷却水として海水が使用されることが一般的であり、この海水が入口水室から多数の細管内に流入し、出口水室に排出される。この海水は、貝類や藻類などの微生物が生息しており、多数の細管に微生物を含む海水が流れ込むと、この微生物が細管の内壁面に付着し、貝類や藻類に生育することで細管を閉塞させてしまうおそれがある。
【0005】
このような問題を解決するものとして、例えば、下記特許文献1に記載されたものがある。この特許文献1に記載された復水器細管洗浄運転装置は、発電プラントの通常運転中に、復水器の細管に洗浄用ボールを投入し、この洗浄用ボールにより復水器細管に付着した水垢や海水生成物を除去するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の復水器の細管洗浄装置は、洗浄用ボールによる細管の洗浄作業を定期的に(例えば、1日に1回)実施している。即ち、復水器の上流側に洗浄用ボールを投入し、復水器の下流側でこの洗浄用ボールを回収している。この場合、洗浄用ボールは、復水器の下流側に設けられたストレーナにより回収している。このストレーナは、海水に含まれるゴミなどが付着することから、従来、細管の洗浄作業を実施する前にこのストレーナを開放することで、付着しているごみなどを除去している。ところが、前回の細管の洗浄作業時に、全ての洗浄用ボールを回収しきれずに、一部の洗浄用ボールがストレーナに残留していると、ストレーナを開放したとき、洗浄用ボールが海に流出してしまう。
【0008】
本発明は上述した課題を解決するものであり、外部への洗浄用ボールの流出を抑制する熱交換器の細管洗浄装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための本発明の熱交換器の細管洗浄装置は、蒸気の流入口と復水の排出口が設けられるハウジングと、前記ハウジングにおける各端部に設けられる入口水室及び出口水室と、前記ハウジングの内部で前記入口水室と前記出口水室を連通して内部に冷却水が流れる多数の細管と、前記入口水室及び前記出口水室にそれぞれ連結される取水管及び排水管と、を有する熱交換器において、前記取水管に洗浄用ボールを投入する投入部を有する洗浄用ボール投入装置と、前記排水管から洗浄用ボールを回収する回収部を有する洗浄用ボール回収装置と、前記洗浄用ボール投入装置及び前記洗浄用ボール回収装置を作動制御する制御装置と、を有し、前記制御装置は、前記洗浄用ボール回収装置による洗浄用ボール回収作業を実施後、所定期間だけ前記回収部を開放し、前記回収部を閉止してから前記洗浄用ボール投入装置による洗浄用ボール投入作業を開始する、ことを特徴とするものである。
【0010】
従って、洗浄用ボール回収作業を実施した後に回収部を開放して付着した異物を除去することで、回収部に洗浄用ボールが残存しても、この残存していた洗浄用ボールを確実に回収した後、回収部を開放することとなり、外部への洗浄用ボールの流出を抑制することができる。
【0011】
本発明の熱交換器の細管洗浄装置では、前記洗浄用ボール投入装置及び前記洗浄用ボール回収装置は、前記回収部で回収した洗浄用ボールを前記投入部に循環するボール循環ラインと、前記ボール循環ラインに設けられるボール循環ポンプとを有し、前記制御装置は、前記回収部の開放時に、前記ボール循環ポンプを停止することを特徴としている。
【0012】
従って、回収部の開放時に、ボール循環ポンプを停止することから、回収部を開放したときに、洗浄用ボールが循環されることはなく、外部への洗浄用ボールの流出を抑制することができる。
【0013】
本発明の熱交換器の細管洗浄装置では、前記制御装置は、前記回収部を閉止後、回収部閉止確認信号が入力されると、前記洗浄用ボール投入装置を作動することを特徴としている。
【0014】
従って、回収部を閉止後、回収部閉止確認信号が入力されるまで洗浄用ボール投入装置が作動することはなく、外部への洗浄用ボールの流出を確実に抑制することができる。
【0015】
本発明の熱交換器の細管洗浄装置では、前記回収部閉止確認信号は、回収部閉止確認スイッチの操作により出力される信号であることを特徴としている。
【0016】
従って、作業者が回収部の閉止状態を確認した後、回収部閉止確認スイッチの操作により回収部閉止確認信号を出力することで、外部への洗浄用ボールの流出を確実に抑制することができる。
【0017】
本発明の熱交換器の細管洗浄装置では、前記回収部における上流側と下流側の差圧を検出する差圧計が設けられ、前記制御装置は、前記洗浄用ボール回収装置の作動時、前記差圧が予め設定された規定差圧を超えると、警報を発することを特徴としている。
【0018】
従って、回収部に異物が付着すると、回収部における上流側と下流側の差圧が規定差圧を超えると警報が発せられることで、回収部への異物の付着による破損を抑制することができる。
【0019】
本発明の熱交換器の細管洗浄装置では、前記回収部を開閉する開閉スイッチが設けられ、前記制御装置は、前記差圧が前記規定差圧を超えた後、前記開閉スイッチから回収部開放信号が入力されると、前記回収部を開放することを特徴としている。
【0020】
従って、回収部における上流側と下流側の差圧が規定差圧を超えて警報が発せられたとき、作業者が開閉スイッチを操作することで、回収部開放信号を出力して回収部を開放することができ、回収部への異物の付着による破損を抑制することができる。
【0021】
本発明の熱交換器の細管洗浄装置では、前記制御装置は、予め設定された所定の時間になると前記洗浄用ボール投入装置及び前記洗浄用ボール回収装置を作動する自動洗浄モードと、洗浄開始信号が入力されると前記洗浄用ボール投入装置及び前記洗浄用ボール回収装置を作動する手動洗浄モードとを有することを特徴としている。
【0022】
従って、制御装置は、自動洗浄モードと手動洗浄モードを有することで、作業者がこのモードを自由に選択することができ、汎用性を向上することができる。
【0023】
本発明の熱交換器の細管洗浄方法は、蒸気の流入口と復水の排出口が設けられるハウジングと、前記ハウジングにおける各端部に設けられる入口水室及び出口水室と、前記ハウジングの内部で前記入口水室と前記出口水室を連通して内部に冷却水が流れる多数の細管と、前記入口水室及び前記出口水室にそれぞれ連結される取水管及び排水管と、を有する熱交換器において、回収部を閉止して前記排水管から洗浄用ボールを回収する工程と、洗浄用ボール回収作業が終了すると所定期間だけ前記回収部を開放する工程と、所定時間の経過後に前記回収部を閉止して投入部から前記取水管に洗浄用ボールを投入する工程と、を有することを特徴とするものである。
【0024】
従って、洗浄用ボール回収作業を実施した後に回収部を開放して付着した異物を除去することで、回収部に洗浄用ボールが残存しても、この残存していた洗浄用ボールを確実に回収した後、回収部を開放することとなり、外部への洗浄用ボールの流出を抑制することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の熱交換器の細管洗浄装置及び方法によれば、洗浄用ボール回収作業を実施後に前記回収部を開放するので、残存していた洗浄用ボールを回収し、外部への洗浄用ボールの流出を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る熱交換器の細管洗浄装置及び方法の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。
【0028】
本実施形態の熱交換器は、例えば、復水器であって、原子力発電プラントに適用されたものであり、原子力発電プラントは、原子炉格納容器内に格納された加圧水型原子炉及び蒸気発生器、蒸気タービン、発電機、復水器などにより構成されている。なお、加圧水型原子炉は、軽水を原子炉冷却材及び中性子減速材として使用し、炉心全体にわたって沸騰しない高温高圧水とし、この高温高圧水を蒸気発生器に送って熱交換により蒸気を発生させるものである。
【0029】
蒸気発生器は、冷却水配管を介して蒸気タービンに連結されており、蒸気タービンは、復水器が連結されている。復水器は、冷却水(例えば、海水)を循環する取水管及び排水管が設けられると共に冷却水配管を介して蒸気発生器に連結されている。そのため、蒸気発生器で生成された蒸気は、冷却水配管を通して蒸気タービンに送られ、この蒸気により蒸気タービンを駆動して発電機により発電を行う。蒸気タービンを駆動した蒸気は、復水器で海水を用いて冷却されて復水となり、冷却水配管を通して蒸気発生器に戻される。
【0030】
ここで、本実施形態の復水器について説明する。
図3は、復水器の全体構成を表す一部切欠斜視図である。
【0031】
図3に示すように、復水器10は、ハウジング11と、入口水室12,13と、出口水室14,15と、伝熱管群16,17とから構成されている。
【0032】
ハウジング11は、箱型で上部が四角錐台の中空形状をなしており、上部に使用済の蒸気が流入する蒸気流入口21が形成される一方、下部にこの蒸気が凝縮して生成された水(復水)を排出する復水排水口22が形成されている。
【0033】
ハウジング11は、その長手方向(水平方向)における各端部に管板23,24が固定されている。入口水室12と出口水室15は、一方の管板24に水平方向に隣接して固定され、出口水室14と入口水室13は、他方の管板23に隣接して固定されている。ここで、入口水室12と出口水室14は、ハウジング11を介して水平方向に対向した位置に配置され、入口水室13と出口水室15は、ハウジング11を介して水平方向に対向した位置に配置されている。そして、入口水室12,13は、下部に入口ノズル25,26が設けられ、出口水室14,15は、下部に出口ノズル27,28(
図3参照)が設けられている。
【0034】
入口水室12と出口水室14は、ハウジング11内で伝熱管群16により連結され、入口水室13と出口水室15は、ハウジング11内で伝熱管群17により連結されている。伝熱管群16は、複数の伝熱管(細管)31により構成され、ハウジング11の内部に配置され、一端部が管板23に貫通するように支持され、他端部が管板24に貫通するように支持されている。そのため、入口水室12と出口水室14は、複数の伝熱管31により連通している。また、伝熱管群17は、複数の伝熱管32により構成され、ハウジング11の内部に配置され、一端部が管板23に貫通するように支持され、他端部が管板24に貫通するように支持されている。そのため、入口水室13と出口水室15は、複数の伝熱管32により連通している。
【0035】
また、ハウジング11は、内部に各伝熱管31,32の長手方向に所定間隔で複数の管支持板33,34が配置されている。管支持板33は、下部が支持部材35によりハウジング11の底部に支持され、管支持板34は、下部が支持部材(図示略)によりハウジング11の底部及び側部に支持されている。伝熱管31は、中間部が各管支持板33を貫通して支持され、伝熱管32は、中間部が各管支持板34を貫通して支持されている。
【0036】
そのため、蒸気Sは、蒸気流入口21からハウジング11内に入り、このハウジング11内を鉛直方向における下方へ流れ、復水排水口22から復水Wとなって排出される。一方、冷却水としての海水Cは、各入口ノズル25,26から各入口水室12,13に導入され、各伝熱管31,32を水平方向に沿って流れて出口水室14,15へ流れ込み、各出口ノズル27,28から排出される。ここで、蒸気Sは、ハウジング11内を鉛直方向に流れ、海水Cは、伝熱管31,32内を水平に流れることから、蒸気Sの流れと海水Cの流れが混合せずに交差するものとなり、熱交換が行われる。即ち、蒸気Sは、伝熱管31,32内を流れる海水Cにより冷却され、復水Wとなってハウジング11内に落下する。
【0037】
ここで、本実施形態の復水器の細管洗浄装置及び方法について詳細に説明する。
図1は、本実施形態の復水器の細管洗浄装置を表す概略構成図、
図2は、復水器の細管洗浄方法を表すタイムチャートである。
【0038】
本実施形態において、
図1に示すように、復水器の細管洗浄装置40は、洗浄用ボール投入装置41と、洗浄用ボール回収装置42と、制御装置43とを有している。復水器10は、前述したように、ハウジング11の両側に入口水室12(13)と出口水室14(15)が設けられ、と、入口水室12と出口水室14は、ハウジング11内で伝熱管群16(伝熱管31)により連結されている。そして、入口ノズル25に取水管44が連結され、出口ノズル27に排水管45が連結されている。なお、入口水室13と出口水室15に対しても、取水管及び排水管が連結され、細管洗浄装置40が連結されている。
【0039】
洗浄用ボール投入装置41は、復水器10の取水管44に洗浄用ボールを投入する投入部51を有している。洗浄用ボール回収装置42は、復水器10の排水管45から洗浄用ボールを回収する回収部52を有している。制御装置43は、この洗浄用ボール投入装置41及び洗浄用ボール回収装置42を作動制御することができる。
【0040】
洗浄用ボール投入装置41の投入部51は、取水管44における水平方向の左右両側にこの取水管44を貫通して取付けられた投入管53を有している。ボール投入ライン54は、基端部がボール投入回収器55に連結され、先端部が分岐ライン56を介して各投入管53に連結されており、分岐ライン56にボール投入元弁57が設けられている。
【0041】
一方、洗浄用ボール回収装置42の回収部52は、排水管45における水平方向の左右両側に対向して設けられるストレーナ58を有しており、ストレーナ58は、駆動装置59により閉止位置(
図1の実線位置)と開放位置(
図1の二点鎖線位置)に移動可能(開閉可能)となっている。また、回収部52は、排水管45における水平方向の左右両側であって、ストレーナ58の下流側にこの排水管45を貫通して取付けられた回収管60を有している。ボール回収ライン61は、基端部が分岐ライン62を介して各回収管60に連結され、分岐ライン62にボール回収元弁63が設けられており、先端部がボール投入回収器55に連結されている。
【0042】
なお、本実施形態にて、洗浄用ボール投入装置41及び洗浄用ボール回収装置42は、回収部52で回収した洗浄用ボールを投入部51に循環するボール循環ラインを有しており、このボール循環ラインは、ボール投入ライン54(分岐ライン56)と、ボール回収ライン61(分岐ライン62)により構成される。
【0043】
ボール投入回収器55は、回収容器71に対してボール排出部72とボール流入部73が設けられている。ボール排出部72は、ボール投入回収器切換弁74が設けられ、ボール投入ライン54の基端部が連結されており、ボール投入ライン54にボール投入回収器出口弁75が設けられている。
【0044】
ボール回収ライン61は、中途部にボール循環ポンプ76が設けられている。ボール回収ライン61は、先端部がボール循環ポンプ76より下流側でボールセパレータ77に連結されており、ボールセパレータ77より上流側にボール循環ポンプ出口弁78が設けられている。そして、ボールセパレータ77から延出される第1回収ライン79がボール流入部73に連結され、第2回収ライン80がボール投入ライン54におけるボール排出部72(ボール投入回収器切換弁74)とボール投入回収器出口弁75との間に連結されている。
【0045】
ボール循環ポンプ76は、ボール回収ライン61上で洗浄用ボールを循環させるものであり、回収部52で回収した洗浄用ボールをボール投入回収器55側へ送給する。ボール循環ポンプ76は、シール水を供給するシール水供給ライン81が設けられ、シール水供給ライン81にボール循環ポンプシール水元弁82が設けられている。
【0046】
制御装置43は、駆動装置59を制御することで、回収部52のストレーナ58を開閉可能である。また、ボール投入回収器切換弁74とボール投入回収器出口弁75とボール循環ポンプ76とボール循環ポンプ出口弁78とボール循環ポンプシール水元弁82は、電磁弁であり、制御装置43は、各弁74,75,76,78,82を開閉制御可能である。更に、制御装置43は、ボールセパレータ77を切換制御することで、ボール回収ライン61の連通先を第1回収ライン79と第2回収ライン80との間で切換可能である。
【0047】
このように構成された復水器の細管洗浄装置は、洗浄用ボールによる伝熱管31(32)の洗浄作業を定期的に(例えば、1日に1回)実施する。このとき、回収部52のストレーナ58は、投入部51から投入されて伝熱管31を洗浄した洗浄用ボールを回収する。このストレーナ58は、メッシュ状をなすものであることから、海水に含まれるゴミなどの異物が付着する。そのため、洗浄用ボールによる伝熱管31(32)の洗浄作業の合間に、このストレーナ58を開放することで、付着している異物を除去している。ところが、前回の伝熱管31の洗浄作業時に、洗浄用ボールを回収しきれずに一部がストレーナ58に残留していると、ストレーナ58を開放したとき、この洗浄用ボールが海に流出してしまう。
【0048】
そのため、本実施形態にて、制御装置43は、洗浄用ボール回収装置42による洗浄用ボール回収作業を実施後、所定期間だけ回収部52のストレーナ58を開放し、このストレーナ58を閉止してから洗浄用ボール投入装置41による洗浄用ボール投入作業を開始する。制御装置43は、回収部52のストレーナ58を開放しているとき、ボール循環ポンプ76を停止する。
【0049】
また、制御装置43は、回収部52のストレーナ58を所定時間だけ開放した後、このストレーナ58を閉止するが、このとき、回収部閉止確認信号が入力されると、洗浄用ボール投入装置41を作動する。作業者により操作可能な回収部閉止確認スイッチ91が設けられており、回収部閉止確認信号は、作業者がこの回収部閉止確認スイッチ91を操作(ON)すると、制御装置43に出力される信号である。
【0050】
回収部52は、ストレーナ58の上流側と下流側に圧力計92,93が設けられると共に、圧力92,93の計測値から上流側と下流側の差圧を検出する差圧計94が設けられ、検出結果(差圧)が制御装置43に出力される。制御装置43は、警報機95が接続されており、洗浄用ボール回収装置42の作動時、ストレーナ58の上流側と下流側の差圧が予め設定された規定差圧を超えると、この警報器95により警報を発する。
【0051】
回収部52のストレーナ58を開閉する手動の開閉スイッチ96が設けられ、制御装置43が警報機95により警報を発した後、作業者がこの開閉スイッチ96を操作(ON)すると、開閉スイッチ96から制御装置43に回収部開放信号が入力され、制御装置43は、回収部開放信号に基づいてストレーナ58を開放する。
【0052】
制御装置43は、洗浄モード切替スイッチ97が接続されている。予め設定された所定の時間(時刻)になると洗浄用ボール投入装置41及び洗浄用ボール回収装置42を作動する自動洗浄モードと、洗浄開始信号が入力されると洗浄用ボール投入装置41及び洗浄用ボール回収装置42を作動する手動洗浄モードとを有している。作業者が洗浄モード切替スイッチ97を操作することで、自動洗浄モードと手動洗浄モードに切換えることができる。
【0053】
ここで、本実施形態の復水器の細管洗浄装置による細管洗浄作業について詳細に説明する。
【0054】
本実施形態の復水器の細管洗浄方法は、回収部52を閉止して排水管45から洗浄用ボールを回収する工程と、洗浄用ボール回収作業が終了すると所定期間だけ回収部52を開放する工程と、所定時間の経過後に回収部52を閉止して投入部51から取水管44に洗浄用ボールを投入する工程とを有する。
【0055】
復水器10にて、入口水室12、伝熱管16、出口水室14などの内面が貝類などの付着や水垢などで汚れた場合には、洗浄用ボールを用いてこの付着物を除去する洗浄作業を行う。即ち、
図1及び
図2に示すように、時間t1にて、制御装置43は、自動洗浄モードにおける洗浄開始信号S1、または、手動洗浄モードでの作業者の操作による洗浄開始信号S2が入力されると、復水器10の洗浄作業が開始される。
【0056】
制御装置43は、時間t2にて、ボールセパレータ77を操作し、ボール回収ライン61を第1回収ライン79に切り替え、時間t3にて、ボール循環ポンプシール水元弁82を開放する。続いて、制御装置43は、時間t4にて、ボール循環ポンプ76を作動(ON)し、時間t5にて、ボール循環ポンプ出口弁78を開放する。すると、ボール循環ポンプ76の作動によりボール回収ライン61に対して回収部52側からボール投入回収器55側への流れが発生する。そのため、回収部52にストレーナ58に洗浄用ボールが残留していると、この洗浄用ボールが海水と共に分岐ライン62、ボール回収ライン61、第1回収ライン79を通ってボール投入回収器55の回収容器71に回収される。このとき、ボール投入回収器55のボール投入回収器切換弁74が閉止していることから、回収容器71から洗浄用ボールがボール投入ライン54に送り出されることはない。
【0057】
そして、制御装置43は、所定時間が経過すると、時間t6にて、ボール循環ポンプ出口弁78を閉止し、時間t7にて、ボール循環ポンプシール水元弁82を閉止すると共に、ボール循環ポンプ76の作動を停止(OFF)する。その後、制御装置43は、時間t8にて、ボールセパレータ77を操作し、ボール回収ライン61を第2回収ライン80に切り替える。この場合、所定時間とは、回収部52にストレーナ58に残留していた洗浄用ボールが回収容器71まで搬送されて回収されるまでの時間であり、ボール循環ポンプ出口弁78の開放時間である。この所定時間は、予め実験などにより設定しておく。
【0058】
時間t9にて、ボール回収ライン61が第2回収ライン80に完全に切り替わると、制御装置43は、時間t10にて、回収部52のストレーナ58を開放し、所定時間が経過した時間t12にて、ストレーナ58を閉止する。すると、ストレーナ58は、時間t11から時間t12までの間、完全に開放状態となり、付着していた異物が海水の流れにより除去される。
【0059】
時間t13にて、ストレーナ58が閉止すると、作業者は、目視によりストレーナ58の閉止を確認する。そして、作業者がストレーナ58の閉止を確認すると、この作業者は、回収部閉止確認スイッチ91を操作(ON)し、制御装置43に回収部閉止確認信号S3を出力する。制御装置43は、時間t14にて、この回収部閉止確認信号S3が入力されると、ボール循環ポンプシール水元弁82を開放し、時間t15にて、ボール循環ポンプ76を作動(ON)すると共に、ボール循環ポンプ出口弁78を開放する。また、制御装置43は、時間t16にて、ボールセパレータ77を操作し、ボール回収ライン61を第1回収ライン79に切り替え、時間t17にて、ボール投入回収器切換弁74を開放する。
【0060】
すると、ボール循環ポンプ76の作動により、ボール回収ライン61からボール投入回収器55を通してボール投入ライン54に対して回収部52側から投入部51側への流れが発生する。そのため、回収容器71の洗浄用ボールがボール投入ライン54を通して投入部51へ送給され、各投入管53から復水器10の取水管44へ投入される。そして、取水管44に投入された洗浄用ボールは、取水管44から入口水室12を通して各伝熱管31に導入され、洗浄用ボールが各伝熱管31内を通過することで、内面に付着している異物が除去される。
【0061】
各伝熱管31内を通過した洗浄用ボールは、出口水室14から排水管45に排出される。回収部52は、ストレーナ58により取水管45を流れる洗浄用ボールを回収し、各回収管60から洗浄用ボールが分岐ライン62からボール回収ライン61に流入する。そして、ボール回収ライン61の洗浄用ボールは、第1回収ライン79を通ってボール投入回収器55の回収容器71に回収される。
【0062】
制御装置43は、時間t19にて、ボールセパレータ77を操作し、ボール回収ライン61を第2回収ライン80に切り替える。そして、制御装置43は、時間t21にて、洗浄時間のタイマ信号S4または作業者による強制停止スイッチのON信号S5または洗浄用ボールのカウント信号S6のいずれかが入力されると、ボール投入回収器切換弁74を閉止し、時間t22にて、ボールセパレータ77を操作し、ボール回収ライン61を第1回収ライン79に切り替える。
【0063】
その後、制御装置43は、時間t24にて、洗浄時間終了のタイマ信号S7または洗浄用ボールの最終カウント信号S8のいずれかが入力されると、ボール投入回収器出口弁75を含水状態とし、時間t27にて、ボールセパレータ77を操作し、ボール回収ライン61を第2回収ライン80に切り替える。その後、制御装置43は、時間t23にて、ボール循環ポンプ出口弁78を閉止し、時間t29にて、ボール循環ポンプシール水元弁82を閉止すると共に、ボール循環ポンプ76の作動を停止(OFF)し、時間t30にて、復水器10の洗浄作業が終了する。
【0064】
このように本実施形態の復水器の細管洗浄装置にあっては、取水管44に洗浄用ボールを投入する投入部51を有する洗浄用ボール投入装置41と、排水管45から洗浄用ボールを回収する回収部52を有する洗浄用ボール回収装置42と、洗浄用ボール投入装置41及び洗浄用ボール回収装置42を作動制御する制御装置43とを設け、制御装置43は、洗浄用ボール回収装置42による洗浄用ボール回収作業を実施後、所定期間だけ回収部52を開放し、回収部52を閉止してから洗浄用ボール投入装置41による洗浄用ボール投入作業を開始する。
【0065】
従って、洗浄用ボール回収作業を実施した後、回収部52を開放して付着した異物を除去することができる。そのため、回収部52に洗浄用ボールが残存しても、この残存していた洗浄用ボールを確実に回収してから、回収部52を開放することとなり、外部への洗浄用ボールの流出を抑制することができる。
【0066】
本実施形態の復水器の細管洗浄装置では、洗浄用ボール投入装置41及び洗浄用ボール回収装置42は、回収部52で回収した洗浄用ボールを投入部51に循環するボール循環ラインとしてのボール投入ライン54及びボール回収ライン61(分岐ライン62)と、ボール回収ライン61に設けられるボール循環ポンプ76とを有し、制御装置43は、回収部52の開放時に、ボール循環ポンプ76を停止する。従って、回収部52の開放時に、ボール循環ポンプ76を停止することから、回収部52を開放したときに、洗浄用ボールが循環されることはなく、外部への洗浄用ボールの流出を抑制することができる。
【0067】
本実施形態の復水器の細管洗浄装置では、制御装置43は、回収部52を閉止後、回収部閉止確認信号が入力されると、洗浄用ボール投入装置41を作動する。従って、回収部52を閉止後、回収部閉止確認信号が入力されるまで洗浄用ボール投入装置41が作動することはなく、外部への洗浄用ボールの流出を確実に抑制することができる。
【0068】
本実施形態の復水器の細管洗浄装置では、回収部閉止確認信号は、回収部閉止確認スイッチ91の操作により出力される信号である。従って、作業者が回収部52の閉止状態を確認した後、回収部閉止確認スイッチ91の操作により回収部閉止確認信号を出力することで、外部への洗浄用ボールの流出を確実に抑制することができる。
【0069】
本実施形態の復水器の細管洗浄装置では、回収部52における上流側と下流側の差圧を検出する差圧計94が設けられ、制御装置43は、洗浄用ボール回収装置42の作動時、差圧が規定差圧を超えると警報を発する。従って、回収部52に異物が付着すると、回収部52における上流側と下流側の差圧が規定差圧を超えると警報が発せられることで、回収部52への異物の付着による破損を抑制することができる。
【0070】
本実施形態の復水器の細管洗浄装置では、回収部52を開閉する開閉スイッチ96が設けられ、制御装置43は、差圧が規定差圧を超えた後、開閉スイッチ96から回収部開放信号が入力されると、回収部52を開放する。従って、回収部52における上流側と下流側の差圧が規定差圧を超えて警報が発せられたとき、作業者が開閉スイッチ96を操作することで、回収部開放信号を出力して回収部52を開放することができ、回収部52への異物の付着による破損を抑制することができる。
【0071】
本実施形態の復水器の細管洗浄装置では、制御装置43は、自動洗浄モードと手動洗浄モードとを有し、洗浄モード切替スイッチ97により切替え可能としている。従って、作業者がこのモードを自由に選択することができ、汎用性を向上することができる。
【0072】
また、本実施形態の復水器の細管洗浄方法にあっては、回収部52を閉止して排水管45から洗浄用ボールを回収する工程と、洗浄用ボール回収作業が終了すると所定期間だけ回収部52を開放する工程と、所定時間の経過後に回収部52を閉止して投入部51から取水管44に洗浄用ボールを投入する工程とを設けている。
【0073】
従って、洗浄用ボール回収作業を実施した後に回収部52を開放して付着した異物を除去することで、回収部52に洗浄用ボールが残存しても、この残存していた洗浄用ボールを確実に回収した後、回収部52を開放することとなり、外部への洗浄用ボールの流出を抑制することができる。
【0074】
なお、上述した実施形態では、本発明の熱交換器を、加圧水型原子炉を有する原子力発電プラントの復水器として適用して説明したが、他の形式の原子炉における復水器に適用することもできる。また、原力発電プラントに限らず、火力発電プラントや地熱発電プラントなどの復水器として適用してもよい。更に、本発明の熱交換器を、復水器だけでなく燃料電池やコージェネレーションプラントなどで、胴体内に複数の細管を有する熱交換器に適用してもよい。