【実施例1】
【0013】
図1は、本発明の一実施例によるマンホール蓋用アンテナを用いたマンホール内遠隔監視装置の概略構成図である。
【0014】
マンホール1の下部にはガス管などの配管2が付設され、配管2の途中には混入した水などが溜まるようにした溜部2Aが形成されている。マンホール蓋3には詳細を後述する基板型ダイポールアンテナであるマンホール蓋用アンテナ4が固定されている。マンホール蓋用アンテナ4には接続用ケーブル5の一端部が接続され、接続用ケーブル5の他端部には通信端末機6、例えば携帯電話用通信端末機が接続されている。通信端末機6にはバッテリ7とセンサ8が接続されている。センサ8は、配管2の溜部2A内に溜まった水量を検出する光学式水位センサであるが、配管2としてガス管以外の配水管であれば水面の異常上昇を検出したりする光学式水位センサであり、その他の用途の配管では内部異常を検出する他のセンサであっても良い。
【0015】
このような構成のマンホール内遠隔監視装置は、センサ8によって配管2内の異常監視を行っており、センサ8が異常を検出すると、通信端末機6からマンホール蓋用アンテナ4を通して外部へ発報し、既存の通信網9における外部通信用アンテナ10を通して監視センタ端末装置11で異常信号を受信するように構成されている。また監視センタ端末装置11から既存通信網9の外部通信用アンテナ10、マンホール蓋用アンテナ4を通して通信端末機6へ要求信号を送信し、センサ8による検出信号を監視センタ端末装置11で受信することもできる。
【0016】
図2および
図3は、上述したマンホール蓋用アンテナ4の主要な構成要素である基板の一方側面および他方側面をそれぞれ示す平面図である。
【0017】
誘電体からなるほぼ円形状の基板12の一方側基板面12Aには、
図2に示すようにギャップ13によって一箇所を分断したループ状の第一結合パターン部14がほぼ同心的に三重に形成されている。第一結合パターン部14のギャップ13を挟んだ右側に位置した端部には、三重のスパイラルアンテナ素子15がそれぞれ接続されて形成され、また第一結合パターン部14のギャップ13を挟んだ左側に位置した端部には、三重のスパイラルアンテナ素子16がそれぞれ接続されて形成されている。
【0018】
スパイラルアンテナ素子15は、第一結合パターン部14に結合された後、ギャップ13から遠ざかる右方向に延び、ギャップ13の上側を所定距離を隔てながら包囲するように反時計回りのほぼスパイラル状に形成されている。またスパイラルアンテナ素子16は、第一結合パターン部14に結合された後、ギャップ13から遠ざかる左方向に延び、ギャップ13および第一結合パターン部14を所定距離を隔てながら包囲して同じく反時計回りのほぼスパイラル状に形成されている。
【0019】
基板12がほぼ円形であるのに対して、ここでのスパイラルアンテナ素子15は全体的にはほぼ四角形であり、その仮想四角形の角部ではアルキメデス螺旋部とされ、その他の部分ではほぼ直線的な形状に成されている。このスパイラルアンテナ素子15の外周部端15Aは、仮想四角形のほぼ左上隅に位置するまで延ばされている。
【0020】
またスパイラルアンテナ素子16も全体的にはほぼ同じ四角形であり、その仮想四角形の角部ではアルキメデス螺旋部とされ、その他の部分ではほぼ直線的な形状に成されている。このスパイラルアンテナ素子16の外周部端16Aは、仮想四角形のほぼ右下隅に位置するまで延ばされている。
【0021】
こうしてスパイラルアンテナ素子15とスパイラルアンテナ素子16とは、ほぼ同形状とされており、全体としてギャップ13をほぼ中心にしてギャップ13を包囲する同方向のスパイラル状である。この形状は、基板12の形状に良く合致している。
【0022】
しかしながら、他の実施例では、第一結合パターン部14および両スパイラルアンテナ素子15,16は、それぞれ三重に配置した構成に限らず二重など他の構成とすることもできる。また、スパイラルアンテナ素子15,16の形状も上述したものに限定するものではない。
【0023】
一方側基板面12Aの裏面側である他方側基板面12Bには、
図3に示すようにギャップ17によって一箇所を分断したループ状の第二結合パターン部18が形成されている。この第二結合パターン部18は、
図2に示した第一結合パターン部14と表裏でほぼ重なり合う位置に配置され、かつ三重の第一結合パターン部14の全体と同程度または多少幅広に形成されている。ただしギャップ17の位置は、ギャップ13とはループの周方向にほぼ180度ずれている。
【0024】
またギャップ17によって分断された第二結合パターン部18の端部には、給電点19A,19Bがそれぞれ形成されている。この給電点19A,19Bには、
図1に示した通信端末機6と接続するためのSMAコネクタ付き同軸ケーブルなどの接続用ケーブル5の一端部がそれぞれ接続されている。基盤面12Bの第二結合パターン部18に形成されたギャップ17と上側には、第二結合パターン部18からは分断され、かつ、スパイラルアンテナ素子15の裏面側に対応してベタパターン部部20が形成されている。
【0025】
詳細については後述するが、特に、このようなアンテナ構成としてマンホール蓋3に取り付けると、高感度、広帯域および高利得のマンホール蓋用アンテナ4とすることができ、実質的に運用可能なマンホール内遠隔監視装置を得ることができる。
【0026】
このようにマンホール蓋用アンテナ4は、誘電体からなる一枚の薄型円板状の基板12を使用し、その一方側基板面12Aに第一結合パターン部14を形成し、その他方側基板面12Bに第二結合パターン部18を形成した簡単な構成である。両基板面12A,12Bの各結合部パターン部14,18は、円板状基板12の静電容量を介して静電容量結合されると共に、磁気誘導結合されている。
【0027】
従って、アンテナ素子の合成が比較的容易な基板型ダイポールアンテナとしてマンホール蓋用アンテナ4を得ることができ、第二結合パターン部18の端部に形成した給電点19A,19Bから、所定の周波数帯域、例えば、800MHz帯域または2GHz帯域にマッチングした望ましい感度の送受信が可能となり、携帯端末装置で使用されている既存の通信網9、外部通信用アンテナ10および通信端末機6などをそのまま利用してマンホール内遠隔監視装置を構成することができる。
【0028】
また、このようなマンホール蓋用アンテナ4は、上述した周波数帯域で使用する場合、水平に配置した円形状の基板12を使用して、全体としても30mm程度の円板状に構成することができる。2GHz帯域では、全体としても27mm程度の円板状に構成することができる。
【0029】
図4および
図5は、2GHz帯域、具体的には1942.8MHzの共振周波数特性としたマンホール蓋用アンテナ4と、既存の通信網9における外部通信用アンテナ10との対応関係を示す概略配置構成図である。
【0030】
マンホール蓋用アンテナ4をほぼ水平に配置してマンホール蓋3の地表側表面に組み込んでおり、既存の通信網9における外部通信用アンテナ10あるいはそれに見立てて仮設したアンテナが
図4では大地に対してほぼ水平に配置され、
図5では外部通信用アンテナ10あるいはそれに見立てて仮設したアンテナが大地に対してほぼ垂直に配置された場合を示している。また
図4におけるマンホール蓋用アンテナ4と水平配置された外部通信用アンテナ10との仰角を10〜20度とした場合、
図5におけるマンホール蓋用アンテナ4と垂直配置された外部通信用アンテナ10との仰角を10〜20度とした場合を示している。
【0031】
これらの状態で、回転軸21を中心にしてマンホール蓋用アンテナ4のみをそれぞれ360度回転させたときの放射特性を
図6に示している。
【0032】
図6に示した放射特性図のうちh−r特性線22は
図4に対応しており、v−r特性線23は
図5に対応している。どちらの特性線22,23も、極端な歪みが改善されて放射特性に優れていることを示している。
【0033】
しかし、v−rの特性線における最大値と最小値を比較すると、最大利得値は−0.71dBiであり、最小利得値は−19.99dBiであり、外部通信用アンテナ10の設置方向により最大約19dBiの差が生じている。従って、マンホール蓋用アンテナ4をマンホール蓋3に組み込む場合、詳細を後述するように取り付けることによって、マンホール蓋用アンテナ4のみを同一水平面上で回転して、外部通信用アンテナ10に対してマンホール蓋用アンテナ4の感度が一番良い方向となるように向きを調整するのが望ましい。一方、マンホールに対してマンホール蓋3をある程度自由に変えられる場合、水平配置のマンホール蓋用アンテナ4を組み込んだマンホール蓋3を同一水平面上で回転して、外部通信用アンテナ10に対してマンホール蓋用アンテナ4の感度が一番良い方向となるように向きを調整するのが望ましい。
【0034】
図7は、2GHz帯域でのマッチング状況を示す周波数特性図である。
【0035】
同図では縦軸にVSWR値を、横軸に周波数を示している。周波数特性曲線24は、改善前の従来のアンテナを使用した場合を示し、周波数特性曲線25は、
図2および
図3で説明したマンホール蓋用アンテナ4を使用した場合を示している。共振周波数2GHz帯域、詳細には1900〜2200MHzでのVSWR値は、望ましい値である2.50以下に保持することができ、しかも、2.00以下で安定させることができる。
【0036】
同図から分かるように、マンホール蓋用アンテナ4によって広帯域化が可能になり、従来に比べて2GHz帯域でのマッチングが容易になっている。
図2および
図3に示したように、アンテナ素子15,16をスパイラル形状にすると帯域が狭くなり、携帯電話で必要とする上述の周波数帯域を確保することができない。しかし、スパイラルアンテナ素子15,16を形成した一方側基板面12Aとは異なる他方側基板面12Bに一方のスパイラルアンテナ素子15に対応させてベタパターン部20を配置すると、スパイラルアンテナ素子15,16は周波数特性において非対称になる。このベタパターン部20による非対称化により、携帯電話通信で必要とする1900〜2200MHzでVSWR値を2.00以下とした広帯域化が実現できた。
【0037】
これによって、
図1に示した通信端末機6からマンホール蓋用アンテナ4および外部通信用アンテナ10を通して監視センタ端末装置11へ通報する場合に使用する周波数と、監視センタ端末装置11から外部通信用アンテナ10およびマンホール蓋用アンテナ4を通して通信端末機6へ要求信号を送る場合に使用する周波数とを分けて使用することも容易になる。
【0038】
図8は、2GHz帯域にマッチングしたときの利得特性図である。
同図では縦軸に利得を、横軸に周波数を示している。利得特性曲線26は、
図4に示したh−r方向、利得特性曲線27は、
図5に示したv−r方向の場合を示しており、利得特性曲線28は平均値を示している。共振周波数2GHz帯域、詳細には1900〜2200MHzでの利得は、いずれも安定して高利得とすることができる。
【0039】
図9、
図10および
図11は、マンホール蓋用アンテナ4をマンホール蓋3に組み込んだ状態を示す裏面図、断面図および分解図である。
【0040】
マンホール蓋3の中央部には、厚み方向に貫通した30mm程度の貫通孔29が形成され、この貫通孔29の外周部にはマンホール蓋3を貫通しない複数の取り付け用ねじ孔30A,30Bが形成されている。
【0041】
貫通孔29内には、裏面側からポリカ樹脂などからなる30mm程度の径で円板状に構成した保護樹脂板31と、上述したマンホール蓋用アンテナ4と、クッション材としてのスペーサ板32が嵌め込まれている。これらの積層体は分離されていても、一体的に接着されていても良い。スペーサ板32はマンホール蓋3の貫通孔29内に挿入された径小部32Aと、マンホール蓋3の裏面側に位置して貫通孔29および径小部32Aよりも径の大きな径大部32Bを有している。従って、マンホール蓋3の裏面側からスペーサ板32の径小部32Aを挿入すると、径大部32Bによって挿入長さが規制される。
【0042】
この状態におけるスペーサ板32の径大部32B側に固定板33を配置し、固定板33に予め形成された貫通孔33A,33Bが取り付け用ねじ孔30A,30Bに合致するように位置決めする。その後、固定板33の裏面側から貫通孔33A,33B内にねじ34A,34Bを挿入し、ねじ34A,34Bを取り付け用ねじ孔30A,30Bに螺合させている。
【0043】
上述したようにマンホール蓋用アンテナ4には、
図3の給電点に接続用ケーブル5の一端部が接続されており、この接続用ケーブル5は組み立てに支障がでないように導かれている。例えば、スペーサ板32に形成した貫通孔や側部に形成したスリット内に接続用ケーブル5が位置されている。この接続用ケーブル5の他端部には
図1に示した通信端末機6が接続されている。
上述したようにマンホール蓋用アンテナ4は、従来のダイポールアンテナよりも小型に構成されている。これに対して従来のダイポールアンテナを取り付けようとすると、貫通孔29は大きくしなければならず、このような貫通孔を形成するとマンホール蓋3の強度を低下させてしまう。そのため、従来では、マンホール蓋3にダイポールアンテナを実際に取り付ける場合は、角形に構成したダイポールアンテナの短辺側をマンホール蓋から地表側に露出するように配置せざるを得なかった。このような取り付け方によれば、上述したように短辺部の利得は対応する放射特性図の90度又は270度となり、短辺側の感度が一番弱い場所となってしまい通信が困難になり、現実的なマンホール内遠隔監視装置を構成することができなかった。
【0044】
しかも、従来のダイポールアンテナでは、鉛直方向に長辺が位置するためにマンホール蓋3の裏面側に大きく突出した構成となってしまい、マンホール蓋単体のように取り扱うのが難しくなってしまう。
【0045】
しかしながら、上述したようにマンホール蓋用アンテナ4は径が30mm程度の小型に構成することができるので、マンホール蓋3に30mm程度の貫通孔29を形成するだけで、マンホール蓋用アンテナ4をマンホール蓋3の地表側にほぼ水平に配置することができる。またマンホール蓋用アンテナ4は、薄型基板12の一方側基板面12Aと他方側基板面12Bにスパイラルアンテナ素子15,16や第一結合パターン部14や第二結合部パターン8をそれぞれ形成することができるので薄型にすることができる。
【0046】
このような小型で薄型のマンホール蓋用アンテナ4は、マンホール蓋3の強度を低下させることもない。仮に、マンホール蓋3の地表側にマンホール蓋用アンテナ4をほぼ水平に配置したとき、その上を人や車が通過したとしても、マンホール蓋用アンテナ4が極めて小型であるため貫通孔29の周辺のマンホール構成部材でそれらの荷重を受けることになり、マンホール蓋用アンテナ4が破損することもない。しかも、マンホール蓋用アンテナ4は薄型であり、マンホール蓋3の裏面側に殆ど突出することのない構成となり、まるでマンホール蓋3単体のように取り扱うことができる。
【0047】
また、ほぼ水平に配置したマンホール蓋用アンテナ4を貫通孔29内に配置しているため、マンホール蓋用アンテナ4のスパイラルアンテナ素子15,16の上方部、つまり
図1、
図4および
図5に示した外部通信用アンテナ10側が開放されており、マンホール蓋3の金属部とスパイラルアンテナ素子15,16との対向する面積が小さくなり、また金属の影響が小さくなり、良好な通信感度を得ることができる。
【0048】
さらに、マンホール蓋用アンテナ4を円形状に構成しているので、
図4および
図5で説明したように既存の通信網9における外部通信用アンテナ10の位置を考慮しながら、単にマンホール蓋用アンテナ4をマンホール蓋3の貫通孔29内に取り付けるときに同一水平面上で回転しても、マンホール蓋用アンテナ4のスパイラルアンテナ素子15,16の上方部を開放状態に保持させることができる。このため、マンホール蓋用アンテナ4を感度の一番良い向きに容易に設置することができる。
【0049】
また、マンホール蓋用アンテナ4の地表面側にポリカ樹脂などの保護樹脂板31を配置しているため、自動車などで保護樹脂板31が摩耗しても容易に交換することができる。保護樹脂板31の摩耗を容易に目視することができるように、マンホール蓋用アンテナ4の表面側色と異なる色の保護樹脂板31とすると良い。いずれの場合も、この保護樹脂板31は、金属製ではなく樹脂製であるため、上述したマンホール蓋用アンテナ4の効果を損なうことがない。
【0050】
本実施例では、マンホール蓋3に円柱状の貫通孔29を形成し、この貫通孔29内に円形のマンホール蓋用アンテナ4を配置したため、貫通孔29の内径および円形のマンホール蓋用アンテナ4の外径を小さくして、上述の効果を達成することができるが、本発明はこの構成に限定するものではない。例えば、スパイラルアンテナ素子15,16の上方部を開放するように種々の形状の収納部を形成し、この収納部にスパイラルアンテナ素子15,16側が上側となるようにマンホール蓋用アンテナ4をほぼ水平に配置し、かつ、マンホール蓋3に対してマンホール蓋用アンテナ4を仮想配置水平面上で回転できるようにマンホール蓋3に配置することができる。また、上述したようにマンホールに対してほぼ水平に配置されるマンホール蓋3をその仮想配置水平面上である程度自由に回転して取り付けられる場合、マンホール蓋用アンテナ4の上方部を開放状態にしてマンホール蓋3に組み込み、マンホール蓋3を仮想配置水平面上で回転して、外部通信用アンテナ10に対するマンホール蓋用アンテナ4の感度が一番良い方向となるように向きを調整することも可能である。
【0051】
図12および
図13は、本発明の他の実施の形態によるマンホール蓋用アンテナ4の主要な構成要素である基板の一方側面および他方側面をそれぞれ示す平面図である。
【0052】
このマンホール蓋用アンテナ4は、800MHzの周波数帯域用として構成したものである。2GHz帯域の場合と同様に、誘電体からなるほぼ円形状の基板12の一方側基板面12Aには、
図12に示すようにギャップ13によって一箇所を分断したループ状の第一結合パターン部14がほぼ同心的に三重に形成されている。第一結合パターン部14のギャップ13を挟んだ右側に位置した端部には、三重のスパイラルアンテナ素子35がそれぞれ接続されて形成され、また第一結合パターン部14のギャップ13を挟んだ左側に位置した端部には、三重のスパイラルアンテナ素子36がそれぞれ接続されて形成されている。
【0053】
スパイラルアンテナ素子35は、第一結合パターン部14に結合された後、ギャップ13から遠ざかる右方向に延び、ギャップ13の上側を所定距離を隔てながら反時計回りに約一周したほぼスパイラル状に形成されている。またスパイラルアンテナ素子36は、第一結合パターン部14に結合された後、ギャップ13から遠ざかる左方向に延び、ギャップ13および第一結合パターン部14を所定距離を隔てながら反時計回りに約一周包囲したほぼスパイラル状に形成されている。
【0054】
基板12がほぼ円形であるのに対して、ここでもスパイラルアンテナ素子35,36は全体的にはほぼ四角形に形成され、その仮想四角形の角部ではアルキメデス螺旋部とされ、その他の部分ではほぼ直線的な形状に成されている。
【0055】
スパイラルアンテナ素子35の外周部端35Aは、仮想四角形のほぼ右下隅から右上隅にかけての領域まで延ばされている。スパイラルアンテナ素子36の外周部端36Aは、仮想四角形の左上隅から左下隅にかけての領域まで延ばされている。
【0056】
こうしてスパイラルアンテナ素子35とスパイラルアンテナ素子36とは、ほぼ同形状とされており、全体としてギャップ13をほぼ中心にしてギャップ13を包囲する同方向のスパイラル状である。この形状は、基板12の形状に良く合致している。
【0057】
一方側基板面12Aの裏面側である他方側基板面12Bには、
図13に示すようにギャップ17によって一箇所を分断したループ状の第二結合パターン部18が形成されている。この第二結合パターン部18は、
図12に示した第一結合パターン部14と表裏でほぼ重なり合う位置に配置され、かつ三重の第一結合パターン部14の全体と同程度または多少幅広に形成されている。ただしギャップ17の位置は、ギャップ13とはループの周方向にほぼ180度ずれている。
【0058】
またギャップ17によって分断された第二結合パターン部18の端部には、給電点19A,19Bがそれぞれ形成されている。この給電点19A,19Bには、
図1に示した通信端末機6と接続するためのSMAコネクタ付き同軸ケーブルなどの接続用ケーブル5の一端部がそれぞれ接続されている。基盤面12B上の第二結合パターン部18に形成されたギャップ17と上側には、第二結合パターン部18からは分断され、かつ、スパイラルアンテナ素子35の裏面側に対応してベタパターン部部37が形成されている。
【0059】
このような構成でも、先の実施例の場合と同様に高感度、広帯域および高利得のマンホール蓋用アンテナ4とすることができ、その外径も30mmとすることができる。
【0060】
尚、上述した実施例でマンホール蓋用アンテナ4は、一枚の基板12を使用し、その一方側基板面12Aに第一結合パターン部14とスパイラルアンテナ素子15または35とスパイラルアンテナ素子16または36とを形成し、他方側基板面12Bには第二結合パターン部18とベタパターン部部20または37を形成したが、これに限定するものではない。例えば、基板12とは別の第二の基板を準備し、この第二の基板の一方側基板面に
図2または
図12とほぼ同様の形状とした第一結合パターン部14とスパイラルアンテナ素子15または35とスパイラルアンテナ素子16または36とを形成し、第二の基板の他方側基板面を基板12の他方側基板面12Bに接着しても良い。
【0061】
このような構成によれば、基板12の一方側基板面12Aに形成したスパイラルアンテナ構成を使用して、外部通信用アンテナ10からの通信信号を受信し、第二の基板の一方側基板面に形成したスパイラルアンテナ構成を使用して、通信端末機6から外部通信用アンテナ10へ信号を送信するようにと使い分けることもできる。また基板12の一方側基板面12Aに
図2に示した第一結合パターン部14とスパイラルアンテナ素子15,16とを形成し、第二の基板の一方側基板面に
図12に示した第一結合パターン部14とスパイラルアンテナ素子35,36とを形成し、見かけ上は一枚の基板型アンテナで、800MHzと2GHzに対応できるように広帯域化を図ることもできる。
【0062】
以上説明したように本発明のマンホール蓋用アンテナ4は、基板12の一方側基板面12Aに、ギャップ13によって分断した第一結合パターン部14と、分断された第一結合パターン部14の両側にそれぞれ接続した一対のアンテナ素子とを形成し、基板12の他方側基板面12Bに、他のギャップ17によって分断した第二結合パターン部18を形成した基板型ダイポールアンテナを使用し、両アンテナ素子は、第一結合パターン部14のギャップ13をそれぞれ包囲する螺旋状に形成した多重のスパイラルアンテナ素子15,16とし、基板12の他方側基板面12Bに、一方のスパイラルアンテナ素子15と対向する位置にベタパターン部20を形成したことを特徴とする。
【0063】
このようなマンホール蓋用アンテナ4によれば、従来のダイポールアンテナよりも小型に構成することができ、マンホール蓋3の強度を低下させることなくマンホール蓋3に取り付けることができるようになり、高感度、広帯域および高利得となり実質的に運用可能なマンホール内遠隔監視装置を構成することができる。
【0064】
本発明は上述の構成に加えて、基板12として円形の基板を使用し、マンホール蓋3の上面側でスパイラルアンテナ素子15,16の上方部を開放するように形成した収納部に、スパイラルアンテナ素子15,16側が上側となるように基板12をほぼ水平に配置したことを特徴とする。
【0065】
このようなマンホール蓋用アンテナ4によれば、マンホール蓋3に組み込んだ場合、マンホールの鉄部分の影響を受けることなく、円形基板12を仮想配置水平面上で回転させて既存の通信網9における外部通信用アンテナ10と感度良く対向するように容易に調整することができる。