特許第6504916号(P6504916)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6504916
(24)【登録日】2019年4月5日
(45)【発行日】2019年4月24日
(54)【発明の名称】加工装置および間詰材除去装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/36 20140101AFI20190415BHJP
   E04G 23/02 20060101ALI20190415BHJP
   G21C 19/02 20060101ALN20190415BHJP
【FI】
   B23K26/36
   E04G23/02 Z
   !G21C19/02 200
【請求項の数】11
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-106774(P2015-106774)
(22)【出願日】2015年5月26日
(65)【公開番号】特開2016-215271(P2016-215271A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2018年5月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】西辻 豊
(72)【発明者】
【氏名】坂下 英司
(72)【発明者】
【氏名】赤羽 崇
(72)【発明者】
【氏名】鴨 和彦
(72)【発明者】
【氏名】小松 直隆
【審査官】 奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−25331(JP,A)
【文献】 実開平6−67590(JP,U)
【文献】 特開2016−137554(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00−26/70
E04G 23/02
G21C 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
狭隘部に充填された間詰材を除去する加工装置であって、
回転可能に支持される支持軸と、
前記支持軸の先端に固定されて前記狭隘部の両壁面に沿って前記狭隘部に挿入可能な外径を有する切削部材と、
前記支持軸と軸心を一致して前記支持軸の延在方向に沿って延在し前記切削部材から突出して設けられた切削芯と、
を備えることを特徴とする加工装置。
【請求項2】
前記切削部材が複数の切削ワイヤが束ねられたワイヤブラシにより形成されることを特徴とする請求項1に記載の加工装置。
【請求項3】
狭隘部に充填された間詰材を除去する加工装置であって、
前記間詰材を溶融し得るレーザ光を照射し、当該レーザ光を、燃焼を伴わず前記間詰材を溶融させる範囲のレーザエネルギー密度とすることを特徴とする加工装置。
【請求項4】
レーザ光を前記狭隘部の間隔全域に拡散して照射することを特徴とする請求項3に記載の加工装置。
【請求項5】
レーザ光を前記狭隘部の間隔全域に拡散して照射すると共に、当該レーザ光の拡散角度を可変することを特徴とする請求項3に記載の加工装置。
【請求項6】
レーザ光を平行に照射すると共に、当該レーザ光を前記狭隘部の間隔の範囲で揺動させることを特徴とする請求項3に記載の加工装置。
【請求項7】
狭隘部に充填された間詰材を除去するように前記狭隘部の間隔に挿入可能に形成される間詰材除去装置であって、
駆動車を駆動する駆動部と、
前記駆動部に連結されて前記狭隘部をなす一方の壁面側に対して押圧作動した反力で他方の壁面側に前記駆動車を押圧させる押動部と、
前記駆動部に連結されて前記間詰材の除去加工が可能な加工装置と、
を備えることを特徴とする間詰材除去装置。
【請求項8】
前記駆動部および前記加工装置の駆動源をケーシング内に収容し、かつ各前記ケーシング内を加圧することを特徴とする請求項7に記載の間詰材除去装置。
【請求項9】
前記駆動部は、前記駆動車が無限軌道からなることを特徴とする請求項7または8に記載の間詰材除去装置。
【請求項10】
狭隘部に充填された間詰材を除去するように前記狭隘部の間隔に挿入可能に形成される間詰材除去装置であって、
固定側と移動側とが相対的に伸縮駆動される駆動部と、
前記駆動部の固定側と移動側とにそれぞれ設けられて膨張収縮可能に構成されて膨張時に前記狭隘部をなす両壁面に押圧される一方で収縮時に前記狭隘部の両壁面から離脱される膨縮部と、
前記駆動部の固定側または移動側に連結されて前記間詰材の除去加工が可能な加工装置と、
を備えることを特徴とする間詰材除去装置。
【請求項11】
請求項1から6のいずれか1つに記載の加工装置が適用されることを特徴とする請求項7から10のいずれか1つに記載の間詰材除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、建屋同士の隙間となる狭隘部に充填される間詰材を除去する加工装置および間詰材除去装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、原子炉容器とガードベッセルとの間が150mmとなる極狭隘壁間を走行する走行検査装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この走行検査装置は、一方の壁面に接触する従動輪と、他方の壁面に接触する駆動輪と、従動輪および駆動輪を両壁面に押し付けるガスシリンダと、を備えている。走行検査装置は、ガスシリンダにより従動輪および駆動輪を両壁面に押し付けながら、駆動輪を駆動させることで、極狭隘壁間を走行可能となっている。
【0003】
また、基礎杭などの構造物の空孔内に、ウォータジェットを備えた切断装置を設置して、空孔の内部から、この構造物をウォータジェットを利用して切断する構造物切断破砕方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−273400号公報
【特許文献2】特開平8−187664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、建屋同士の隙間となる狭隘部としては、特許文献1に記載の狭隘部よりも、さらに狭い狭隘部があり、この狭隘部には、地震発生時に建物同士の接触、損傷を防ぐ緩衝や、保温性能を確保するための断熱を目的とした間詰材が充填されている場合がある。この狭隘部には、建屋間を貫通する配管が設けられており、この配管の老朽化あるいは損傷などによって、配管内の流体が周囲へ漏えいしたり、これとは逆に、配管周囲に溜まった雨水や地下水が配管内へ漏えいしたりすることが想定される。この場合、止水のため、狭隘部に充填された間詰材を除去する必要があることから、狭隘部には、間詰材を除去する間詰材除去装置が設置される。
【0006】
このような狭隘部において間詰材を除去するために切削工具を用いる場合、切削工具が間詰材を削る際に発生する反力を受けなければならない。特許文献2に参照するようにウォータジェットを用いる場合でも同様である。しかしながら、反力を受けようとすると、例えば、特許文献1の走行検査装置のように、ガスシリンダおよび駆動輪などの多数の動力源を搭載した除去装置では、装置が大型化してしまい狭隘部に設置することが困難となる。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するものであり、狭隘部において間詰材を好適に除去することのできる加工装置および間詰材除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための本発明の加工装置は、狭隘部に充填された間詰材を除去する加工装置であって、回転可能に支持される支持軸と、前記支持軸の先端に固定されて前記狭隘部の両壁面に沿って前記狭隘部に挿入可能な外径を有する切削部材と、前記支持軸と軸心を一致して前記支持軸の延在方向に沿って延在し前記切削部材から突出して設けられた切削芯と、を備えることを特徴とする。
【0009】
この加工装置によれば、切削芯が間詰材に突き刺さることで、支持軸の回転により切削部材が振れる事態を防止できる。この結果、狭隘部において切削部材の振れを抑制する大きな反力を受ける必要がなく、狭隘部において間詰材を好適に除去することができる。
【0010】
本発明の加工装置では、前記切削部材が複数の切削ワイヤが束ねられたワイヤブラシにより形成されることを特徴とする。
【0011】
この加工装置によれば、切削部材をワイヤブラシとしたことで、狭隘部の間隔が異なる場合であっても切削部材を狭隘部の壁面に沿って配置することができる。この結果、間詰材の除去を確実に効率よく行うことができる。
【0012】
本発明の加工装置では、狭隘部に充填された間詰材を除去する加工装置であって、前記間詰材を溶融し得るレーザ光を照射し、当該レーザ光を、燃焼を伴わず前記間詰材を溶融させる範囲のレーザエネルギー密度とすることを特徴とする。
【0013】
この加工装置によれば、レーザエネルギー密度が設定されたレーザ光により間詰材を燃焼させることなく溶融させる。この結果、切削のように反力を受ける必要がなく狭隘部において間詰材を好適に除去することができる。
【0014】
本発明の加工装置では、レーザ光を前記狭隘部の間隔全域に拡散して照射することを特徴とする。
【0015】
この加工装置によれば、狭隘部において間詰材を連続して好適に除去することができる。
【0016】
本発明の加工装置では、レーザ光を前記狭隘部の間隔全域に拡散して照射すると共に、当該レーザ光の拡散角度を可変することを特徴とする。
【0017】
この加工装置によれば、間詰材の溶融に伴ってレーザ光の拡散角度を徐々に小さくすることで、レーザヘッドの移動を伴わず、狭隘部において間詰材を連続して好適に除去することができる。
【0018】
本発明の加工装置では、レーザ光を平行に照射すると共に、当該レーザ光を前記狭隘部の間隔の範囲で揺動させることを特徴とする。
【0019】
この加工装置によれば、平行に照射されたレーザ光を狭隘部の間隔の範囲で揺動させることで、レーザヘッドの移動を伴わず、狭隘部において間詰材を連続して好適に除去することができる。
【0020】
上記の目的を達成するための本発明の間詰材除去装置は、狭隘部に充填された間詰材を除去するように前記狭隘部の間隔に挿入可能に形成される間詰材除去装置であって、駆動車を駆動する駆動部と、前記駆動部に連結されて前記狭隘部をなす一方の壁面側に対して押圧作動した反力で他方の壁面側に前記駆動車を押圧させる押動部と、前記駆動部に連結されて前記間詰材の除去加工が可能な加工装置と、を備えることを特徴とする。
【0021】
この間詰材除去装置によれば、押動部で駆動車を狭隘部の壁面側に押圧させることで、狭隘部の間隔において駆動車による移動を円滑に行うことができる。この結果、狭隘部において間詰材を好適に除去することができる。
【0022】
本発明の間詰材除去装置では、前記駆動部および前記加工装置の駆動源をケーシング内に収容し、かつ各前記ケーシング内を加圧することを特徴とする。
【0023】
この間詰材除去装置によれば、ケーシング内を加圧することで、狭隘部に水が存在していてもケーシング内への水の浸入を防ぎ、収容した駆動源を保護することができる。この結果、狭隘部に水が存在していても加工装置を移動させ、この加工装置により間詰材の除去を行うことができる。
【0024】
本発明の間詰材除去装置では、前記駆動部は、前記駆動車が無限軌道からなることを特徴とする。
【0025】
この間詰材除去装置によれば、駆動車が無限軌道であることで、凹凸部分があっても移動を行うことができる。
【0026】
本発明の間詰材除去装置では、狭隘部に充填された間詰材を除去するように前記狭隘部の間隔に挿入可能に形成される間詰材除去装置であって、固定側と移動側とが相対的に伸縮駆動される駆動部と、前記駆動部の固定側と移動側とにそれぞれ設けられて膨張収縮可能に構成されて膨張時に前記狭隘部をなす両壁面に押圧される一方で収縮時に前記狭隘部の両壁面から離脱される膨縮部と、前記駆動部の固定側または移動側に連結されて前記間詰材の除去加工が可能な加工装置と、を備えることを特徴とする。
【0027】
この間詰材除去装置によれば、膨縮部の膨張収縮と駆動部の伸縮により、狭隘部の間隔において移動を円滑に行うことができる。この結果、狭隘部において間詰材を好適に除去することができる。
【0028】
本発明の間詰材除去装置では、上述した1つに記載の加工装置が適用されることを特徴とする。
【0029】
この間詰材除去装置によれば、状況に応じて好適な加工装置を適用することで、狭隘部において間詰材を好適に除去することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、狭隘部において間詰材を好適に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、狭隘部および間詰材を表す平面図である。
図2図2は、狭隘部および間詰材を表す一部を切り欠いた正面図である。
図3図3は、狭隘部および間詰材を表す拡大断面図である。
図4図4は、本発明に係る実施形態1の間詰材除去装置を表す平断面図である。
図5図5は、本発明に係る実施形態1の間詰材除去装置を表す側面図である。
図6図6は、図5における縦断面複合図である。
図7図7は、本発明に係る実施形態1の加工装置を表す斜視図である。
図8図8は、本発明に係る実施形態1の間詰材除去装置を用いた間詰材の除去工程を表す平面図である。
図9図9は、図8における正面図である。
図10図10は、本発明に係る実施形態1の間詰材除去装置を用いた間詰材の除去工程を表す平面図である。
図11図11は、図10における正面図である。
図12図12は、本発明に係る実施形態1の間詰材除去装置を用いた間詰材の除去工程を表す平面図である。
図13図13は、図12における正面図である。
図14図14は、本発明に係る実施形態1の間詰材除去装置を用いた間詰材の除去工程を表す平面図である。
図15図15は、図14における正面図である。
図16図16は、本発明に係る実施形態2の加工装置を表す概略構成図である。
図17図17は、本発明に係る実施形態2の加工装置における間詰材の除去性能を表す図である。
図18図18は、本発明に係る実施形態2の加工装置における使用状態を表す側断面図である。
図19図19は、図18における平面図である。
図20図20は、本発明に係る実施形態2の加工装置における別の使用状態を表す側断面図である。
図21図21は、図20における平面図である。
図22図22は、本発明に係る実施形態2の加工装置における別の使用状態を表す側断面図である。
図23図23は、図22における動作図である。
図24図24は、本発明に係る実施形態2の加工装置の付加構造を表す概略構成図である。
図25図25は、本発明に係る実施形態2の加工装置の他の付加構造を表す概略構成図である。
図26図26は、本発明に係る実施形態3の間詰材除去装置を表す平面図である。
図27図27は、本発明に係る実施形態3の間詰材除去装置の動作を表す平面図である。
図28図28は、本発明に係る実施形態3の間詰材除去装置の動作を表す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。
【0033】
図1は、狭隘部および間詰材を表す平面図である。図2は、狭隘部および間詰材を表す一部を切り欠いた正面図である。図3は、狭隘部および間詰材を表す拡大断面図である。
【0034】
図1から図3に示す狭隘部101は、例えば、原子力施設に設けられるコンクリート製の建屋100同士の隙間に形成される。そして、この狭隘部101に間詰材102が充填されている。
【0035】
狭隘部101は、一方の建屋100の壁面100aと他方の建屋100の壁面100aとが対向することで形成される空間である。各建屋100は、一部が地面P1よりも下側となる地下に没して設けられている。このため、狭隘部101は、地面P1を挟んで下方側と上方側とに形成される。また、各建屋100は、配管103が一方の建屋100と他方の建屋100とを貫通して設置されている。従って、配管103は、狭隘部101を貫通して設けられている。配管103は、複数設けられており、一例として地面P1よりも下方側に設置されている。ここで、地面P1よりも下方側の地中は、地下水が存在しており、配管103が地面P1よりも下方側に設置される場合、地下水の水位L1が配管103よりも上方側に位置することがある。なお、配管103は、必ずしも地面P1よりも下方側に設置されているものではなく、地面P1よりも上方側に設置された場合であっても、配管103が設けられた狭隘部101に水が溜まる可能性がある。このように水に浸される環境にある配管103は、図3に示すように、各建屋100および狭隘部101を貫通する部分がスリーブ104によって覆われ、各建屋100の内部に水が漏洩する事態が防止されている。
【0036】
狭隘部101において、一方の建屋100の壁面100aと他方の建屋100の壁面100aとが対向して狭隘部101の隙間となる壁面幅を表す方向を幅方向とする。また、建屋100の壁面100aが鉛直方向および水平方向に連続していることから、狭隘部101は、幅方向に直交する鉛直方向および水平方向に連続して設けられている。そして、狭隘部101の壁面幅は、一般的に、50mm以上100mm以下程度の隙間が想定され、人の進入が物理的に不可能な狭さであり、既存の機材の配置が物理的に不可能な狭さとなっている。一例として、狭隘部101は、壁面幅が50mm程度で、水平方向における寸法が30m程度、鉛直方向における寸法が15m程度である。このように、狭隘部101は、水平方向および鉛直方向における寸法に比して、幅方向における寸法が非常に狭いものとなっている。つまり、狭隘部101は、水平方向および鉛直方向における寸法がメートルオーダーとなる一方で、幅方向における寸法がミリメートルオーダーとなっている。
【0037】
狭隘部101は、間詰材102が充填されている。間詰材102は、例えば、発泡材であり、例えば、発泡ポリエチレンからなるエサフォーム(登録商標)が適用されている。間詰材102は、狭隘部101の全域に亘って設けられることから、その一部が、地面P1よりも下方側に設けられ、また、地下水の水位L1よりも下方側に設けられる。また、間詰材102は、複数の配管103(スリーブ104)の周囲を覆って設けられる。
【0038】
このように、間詰材102が充填される狭隘部101において、配管103は、地下水の水位L1よりも下方側に配置されると、その周面(スリーブ104の周面や内部)を伝って建屋100内に地下水が浸入する可能性がある。このため、建屋100内への地下水の浸入を抑制すべく、図2に示すように、配管103の周囲に、U字状にシール材105を配置することが検討されている。このシール材105は、狭隘部101の幅方向に亘って水密に設けられ、U字状の延在方向の中央部が、地下水の水位L1よりも下方側に位置する一方で、延在方向の両端が、地下水の水位L1よりも上方側に位置するように、配管103を囲んで配置される。
【0039】
このシール材105を配置する作業を行うにあたって、間詰材102をU字状に除去する必要があり、本実施形態では、加工装置および間詰材除去装置を用いて間詰材102を除去している。以下に、加工装置および間詰材除去装置の実施形態について説明する。
【0040】
[実施形態1]
図4は、本実施形態の間詰材除去装置を表す平断面図である。図5は、本実施形態の間詰材除去装置を表す側面図である。図6は、図5における縦断面複合図である。図7は、本実施形態の加工装置を表す斜視図である。
【0041】
本実施形態における間詰材除去装置10は、上述した狭隘部101に充填された間詰材102を除去するように狭隘部101の間隔に挿入可能に形成されるものであって、フレーム1と、駆動部2と、押動部3と、加工装置4と、を備える。
【0042】
フレーム1は、図4および図5に示すように、駆動部2、押動部3、および加工装置4を支持するものである。フレーム1は、狭隘部101に挿入される大きさであって、壁面幅よりも小さい寸法に形成されている。本実施形態において、フレーム1は、箱状のケーシングとして形成されており、その内部が水密性を保つように継目にシール材が設けられている。
【0043】
駆動部2は、駆動源2Aと、駆動伝達部2Bと、駆動車2C、を備える。
【0044】
駆動部2の駆動源2Aは、本実施形態では、1対のモータが適用されている。駆動源2Aである一対のモータは、フレーム1における第一ケーシング1Aの内部に収容されている。
【0045】
駆動部2の駆動伝達部2Bは、駆動源2Aの駆動力を駆動車2Cに伝達するものである。駆動伝達部2Bは、駆動源2Aである一対のモータにそれぞれ対応して一対設けられている。駆動伝達部2Bは、フレーム1における第二ケーシング1Bの内部に収容されている。第二ケーシング1Bは、第一ケーシング1Aに一体に連結されている。駆動伝達部2Bは、駆動源2Aである一方のモータの出力軸2Aaに軸心を一致して連結されて第一ケーシング1Aに対して回転可能に支持された出力伝達軸2Baを有している。出力伝達軸2Baは、先端が第二ケーシング1B内に延在し、第二ケーシング1B内において第一傘歯車2Bbが設けられている。また、駆動伝達部2Bは、駆動源2Aである一方のモータの出力軸2Aaに直交して配置されて第二ケーシング1Bに対して回転可能に支持された駆動伝達軸2Bcを有している。駆動伝達軸2Bcは、第二ケーシング1B内において第二傘歯車2Bdが設けられている。第二傘歯車2Bdは、第一傘歯車2Bbに噛み合っている。従って、駆動源2Aである一方のモータの出力軸2Aaの回転は出力伝達軸2Baに直接伝達され、第一傘歯車2Bbから第二傘歯車2Bdへ回転軸心の向きを90度変更されて駆動伝達軸2Bcに伝達される。駆動伝達軸2Bcの一端部は、第二ケーシング1Bの外部に延在され、一方の駆動車2Cに連結されている。また、駆動伝達部2Bは、駆動源2Aである他方のモータが一方のモータに対して出力軸2Aaを平行にして配置され、この他方のモータの出力軸2Aaに対しても、同様に、出力伝達軸2Baが連結されており、駆動源2Aである他方のモータの出力軸2Aaの回転は出力伝達軸2Baに直接伝達され、第一傘歯車2Bbから第二傘歯車2Bdへ回転軸心の向きを90度変更されて駆動伝達軸2Bcに伝達される。駆動伝達軸2Bcの一端部は、第二ケーシング1Bの外部に延在され、他方の駆動車2Cに連結されている。すなわち、駆動源2Aである一方のモータは、一方の駆動伝達部2Bを介して回転が一方の駆動車2Cに伝達され、他方のモータは、他方の駆動伝達部2Bを介して回転が他方の駆動車2Cに伝達される。
【0046】
駆動部2の駆動車2Cは、一方と他方とが設けられている。一方の駆動車2Cは、フレーム1における第一ケーシング1Aおよび第二ケーシング1Bの左右一方の側部に設けられ、他方の駆動車2Cは、フレーム1における第一ケーシング1Aおよび第二ケーシング1Bの左右他方の側部に設けられている。すなわち、本実施形態の駆動部2は、フレーム1の左右で独立してそれぞれ駆動車2Cを駆動する。駆動車2Cは、第二ケーシング1B外の側部に延在した駆動伝達軸2Bcの一端部に駆動輪2Caが設けられている。また、駆動車2Cは、第一ケーシング1A外の側部に、モータの出力軸2Aaの延在方向に複数(本実施形態では2つ)の従動輪2Cbが駆動伝達軸2Bcと平行する回転軸心の廻りに回転可能に設けられている。そして、フレーム1の各側部において、駆動輪2Caと各従動輪2Cbは、駆動ベルト2Ccが巻き付けられている。すなわち、駆動車2Cは、駆動輪2Caの回転により駆動輪2Caおよび従動輪2Cbの周囲を駆動ベルト2Ccが輪転する無限軌道からなる。そして、本実施形態の駆動部2は、フレーム1の左右で独立してそれぞれ駆動される無限軌道からなる駆動車2Cを有する。
【0047】
押動部3は、フレーム1における第二ケーシング1Bに設けられている。押動部3は、いわゆるエアジャッキであって、図6に示すように、駆動部2に連結するように第二ケーシング1Bに設けられたシリンダ3aに対して没入するように押動子3bがバネ3cにより付勢され、シリンダ3aに圧縮空気が供給されることで押動子3bはバネ3cの不勢力に抗して第二ケーシング1Bの外側に突出する。そして、押動部3は、第二ケーシング1Bの外側に突出した押動子3bが、狭隘部101の一方の壁面100a側に対して接触して押圧作動する。この押動子3bの押圧作動した反力により駆動車2Cの駆動ベルト2Ccが狭隘部101の他方の壁面100a側に押圧される。従って、この状態で駆動車2Cが駆動輪2Caの回転により駆動輪2Caおよび従動輪2Cbの周囲を駆動ベルト2Ccが輪転することで間詰材除去装置10は狭隘部101内を移動することができる。移動方向は、駆動源2Aであるモータを正逆回転駆動させることで前進(加工装置4を先端とした移動)または後退(加工装置4を後端とした移動)が可能である。
【0048】
加工装置4は、間詰材102の除去加工が可能に設けられている。加工装置4は、図4および図5に示すように、駆動部2(第二ケーシング1B)に連結するフレーム1における第三ケーシング1Cに設けられている。そして、加工装置4は、第三ケーシング1C内に駆動源4Aとしてのモータが収容され、この駆動源4Aにより回転駆動することで間詰材102の除去加工を行う。駆動源4Aとしてのモータは、間詰材除去装置10の左右方向に複数(本実施形態では4つ)並んで設けられている。すなわち、加工装置4は、本実施形態では間詰材除去装置10の左右方向に4つ並んで設けられている。
【0049】
加工装置4は、図7に示すように、支持軸4Bと、切削部材4Cと、切削芯4Dと、を備える。支持軸4Bは、回転可能に支持されるもので、本実施形態では、図4に示すように、駆動源4Aとしてのモータの出力軸4Aaに軸心を一致して連結されて第三ケーシング1Cに対して回転可能に支持されている。切削部材4Cは、支持軸4Bの先端に固定されており、狭隘部101の両壁面100aに沿って狭隘部101に挿入可能な外径を有する。従って、切削部材4Cは、駆動源4Aによる支持軸4Bの回転により、狭隘部101の両壁面100aに沿って回転することで、図6に示すように間詰材102を円形状に切削除去する。本実施形態では、加工装置4は、間詰材除去装置10の左右方向に4つ並んで設けられており、支持軸4Bの延在方向で互い違いに支持軸4Bの長さが異なって切削する円形状が重複するように設けられている。なお、切削部材4Cは、間詰材102を切削する先端面4Caを有するように、複数の切削ワイヤが先端面4Caの反対側の端部で束ねられたワイヤブラシとして構成されていることが狭隘部101の両壁面100aに沿って回転して両壁面100a間の間詰材102を適宜切削するうえで好ましいが、その他、例えば、砥石であっても、ペーパーバフであってもよい。また、切削芯4Dは、支持軸4Bと軸心を一致して当該支持軸4Bの延在方向に沿って延在し、切削部材4Cの先端面4Caから突出して設けられている。この切削芯4Dは、支持軸4Bの回転に伴って回転し、切削部材4Cの先端面4Caにより切削除去される間詰材102に対して突き刺さる。このため、切削芯4Dは、尖った先端を有する、砥石やドリルにより形成されることが好ましい。従って、支持軸4Bの回転に伴って間詰材102に対して切削芯4Dが突き刺さることで、支持軸4Bの先端に設けられた加工装置4が振れる事態を防ぎ、当該切削部材4Cの先端面4Caにより間詰材102を適宜切削除去することができる。なお、加工装置4により間詰材102を除去する場合、押動部3において、第二ケーシング1Bの外側に突出した押動子3bが、狭隘部101の一方の壁面100a側に対して接触して押圧作動し、この押動子3bの押圧作動した反力により駆動車2Cの駆動ベルト2Ccが狭隘部101の他方の壁面100a側に押圧されることで、切削時の反力を受けることができる。
【0050】
このように、本実施形態の間詰材除去装置10は、駆動部2および押動部3により狭隘部101内を移動し、加工装置4により間詰材102を切削除去することで、狭隘部101に充填された間詰材102を除去する。
【0051】
ところで、本実施形態の間詰材除去装置10では、図4および図5において、第一ケーシング1Aは、その外側に配索部5が設けられている。また、第三ケーシング1Cは、その外側に配索部6が設けられている。配索部5は、第一ケーシング1A内に収容された駆動源2Aである各モータに電源を供給するためのケーブル5Aを案内する。配索部6は、第三ケーシング1Cに収容された駆動源4Aである各モータに電源を供給するためのケーブル6Aを案内する。
【0052】
また、本実施形態の間詰材除去装置10では、図4において、モータが収容されている第一ケーシング1Aおよび第三ケーシング1Cは、その内部に圧縮空気が供給される。この圧縮空気は、エアジャッキである押動部3に圧縮空気を供給する圧縮空気供給管7とは別の、圧縮空気供給管8を介して供給される。このため、第一ケーシング1Aおよび第三ケーシング1Cは、その内部が外部よりも気圧が高くなり、第一ケーシング1Aおよび第三ケーシング1Cの内部に水の浸入が防止できる。
【0053】
ここで、図8から図15は、本実施形態の間詰材除去装置を用いた間詰材の除去工程を表している。
【0054】
まず、図8および図9に示すように、一方の建屋100の内側から壁面100aを貫通する開口穴106を2箇所に設ける。各開口穴106の位置は、間詰材102を除去するU字状の各端部の位置に相当する(図15参照)。また、開口穴106の開口は、間詰材除去装置10の移動方向を鉛直方向とした場合に加工装置4を下方に向けた状態の間詰材除去装置10を挿入できる上下寸法であって、間詰材除去装置10の移動方向を水平方向とした場合に加工装置4を横方に向けた状態の間詰材除去装置10を挿入できる左右寸法である。本実施形態の間詰材除去装置10は、移動方向の寸法が側方の寸法よりも長いため、開口穴106の開口は、間詰材除去装置10の移動方向を鉛直方向とした場合、複数の間詰材除去装置10を水平方向に並べることのできる左右寸法となる。本実施形態では説明の便宜上2つの間詰材除去装置10を水平方向に並べる左右寸法として示す(図10から図13参照)。
【0055】
開口穴106を設けた後、当該開口穴106の部分にあらわれている間詰材102を除去する。この間詰材102の除去は、人手が届く範囲であるため間詰材除去装置10を用いる必要はない。そして、開口穴106の部分の間詰材102を除去した後、図10から図13に示すように、各開口穴106から加工装置4を下方に向けた状態の間詰材除去装置10を挿入し、当該間詰材除去装置10を鉛直方向に移動させて間詰材102を鉛直方向に除去した立坑107を形成する。立坑107は、開口穴106の左右寸法に合わせて形成する。立抗107の底位置は、配管103の位置よりも下方とする。
【0056】
各開口穴106から各立坑107を形成した後、少なくとも一方の立坑107の底に加工装置4を横方に向けた状態の間詰材除去装置10を配置し、当該間詰材除去装置10を水平方向に移動させて間詰材102を水平方向に除去した横坑108を形成する。横抗108は、各立抗107の底を連結するように形成する。
【0057】
このようにして配管103を囲むように間詰材102をU字状に除去する。そして、間詰材102を除去したU字状の坑道107,108にシール材105(図2参照)を充填する。なお、上述した間詰材102の除去工程において、一方の立抗107を形成した後(図10および図11参照)、他方の立抗107を形成する前に、一方の立抗107から横坑108を先に形成してもよい。
【0058】
なお、立抗107や横坑108を形成する場合、加工装置4により切削屑が発生するが、本実施形態の間詰材除去装置10の後に続いて切削屑を吸引する吸引装置(図示せず)を用いればよい。吸引装置は、例えば、間詰材除去装置10と同様に駆動部2および押動部3を備えて移動可能に設けられ、加工装置4に換えて吸引ノズルを有し、当該吸引ノズルに狭隘部101外部に配置の吸引ポンプが接続される吸引ホースを接続する。なお、吸引ノズルを間詰材除去装置10に設けてもよい。また、吸引装置は、間詰材102を除去する場所に水がある場合に、この水を吸引することもできる。
【0059】
従って、本実施形態の加工装置4は、狭隘部101に充填された間詰材102を除去するものであって、回転可能に支持される支持軸4Bと、支持軸4Bの先端に固定されて狭隘部101の両壁面100aに沿って狭隘部101に挿入可能な外径を有する切削部材4Cと、支持軸4Bを中心として支持軸4Bに沿って延在し切削部材4Cから突出して設けられた切削芯4Dと、を備える。
【0060】
この加工装置4によれば、切削芯4Dが間詰材102に突き刺さることで、支持軸4Bの回転により切削部材4Cが振れる事態を防止できる。この結果、狭隘部101において切削部材4Cの振れを抑制する大きな反力を受ける必要がなく、狭隘部101において間詰材102を好適に除去することができる。
【0061】
また、本実施形態の加工装置4では、切削部材4Cが複数の切削ワイヤが束ねられたワイヤブラシにより形成されることが好ましい。
【0062】
この加工装置4によれば、切削部材4Cをワイヤブラシとしたことで、狭隘部101の間隔が異なる場合であっても切削部材4Cを狭隘部101の壁面100aに沿って配置することができる。この結果、間詰材102の除去を確実に効率よく行うことができる。
【0063】
本実施形態の間詰材除去装置10は、狭隘部101に充填された間詰材102を除去するように狭隘部101の間隔に挿入可能に形成されるものであって、駆動車2Cを駆動する駆動部2と、駆動部2に連結されて狭隘部101をなす一方の壁面100a側に対して押圧作動した反力で他方の壁面100a側に駆動車2Cを押圧させる押動部3と、駆動部2に連結されて間詰材102の除去加工が可能な加工装置4と、を備える。
【0064】
この間詰材除去装置10によれば、押動部3で駆動車2Cを狭隘部101の壁面100a側に押圧させることで、狭隘部101の間隔において駆動車2Cによる移動を円滑に行うことができる。この結果、狭隘部101において間詰材102を好適に除去することができる。
【0065】
また、本実施形態の間詰材除去装置10では、駆動部2および加工装置4の駆動源2A,4Aをケーシング(第一ケーシング1A、第三ケーシング1C)内に収容し、かつ各ケーシング内を圧縮空気で加圧することが好ましい。
【0066】
この間詰材除去装置10によれば、第一ケーシング1Aおよび第三ケーシング1C内を加圧することで、狭隘部101に水が存在していても第一ケーシング1Aおよび第三ケーシング1C内への水の浸入を防ぎ、収容した駆動源2A,4Aを保護することができる。この結果、狭隘部101に水が存在していても加工装置4を移動させ、この加工装置4により間詰材102の除去を行うことができる。
【0067】
また、本実施形態の間詰材除去装置10では、駆動部2は、駆動車2Cが無限軌道からなることが好ましい。
【0068】
この間詰材除去装置10によれば、駆動車2Cが無限軌道であることで、凹凸部分があっても移動を行うことができる。
【0069】
[実施形態2]
図16は、本実施形態の加工装置を表す概略構成図である。図17は、本実施形態の加工装置における間詰材の除去性能を表す図である。
【0070】
本実施形態の加工装置14は、上述した実施形態1の加工装置4に代えて用いられる。すなわち、加工装置14は、上述した実施形態1の間詰材除去装置10に適用することができる。
【0071】
加工装置14は、図16に示すように、間詰材102を溶融し得るレーザ光LBを照射するもので、レーザ発振器14Aと、伝送ファイバ14Bと、レーザヘッド14Cと、を備える。
【0072】
レーザ発振器14Aは、レーザ光LBを発振する。レーザ発振器14Aは、狭隘部101の外部に設置される。伝送ファイバ14Bは、レーザ発振器14Aとレーザヘッド14Cとを接続し、レーザ発振器14Aにより発振されたレーザ光LBをレーザヘッド14Cに伝送する。レーザヘッド14Cは、伝送ファイバ14Bにより伝送されたレーザ光LBを間詰材102に照射する。レーザヘッド14Cは、上述した実施形態1の間詰材除去装置10に取り付けられる。
【0073】
レーザヘッド14Cから間詰材102に照射されるレーザ光LBは、上述した発泡材(発泡ポリエチレン)からなる間詰材102を燃焼させることなく溶融させる範囲のレーザエネルギー密度となるようにレーザ発振器14Aにて設定される。レーザエネルギー密度は、下記式[1]に基づき設定される。
レーザエネルギー密度(W/mm)=レーザ出力(W)÷ビーム断面積(mm)…[1]
【0074】
式[1]において、ビーム断面積は、図16に示すように、間詰材102の表面にレーザ光LBが到達する位置での面積Hである。
【0075】
そして、間詰材102が上述した発泡材(発泡ポリエチレン)からなる場合に、図17に示すように、レーザエネルギー密度とレーザ光LBの照射時間との関係から、除去可能範囲においてレーザ光LBを間詰材102に照射する。
【0076】
このように、本実施形態の加工装置14は、狭隘部101に充填された間詰材102を除去するものであって、間詰材102を溶融し得るレーザ光LBを照射し、当該レーザ光LBを、燃焼を伴わず間詰材102を溶融させる範囲のレーザエネルギー密度とする。
【0077】
この加工装置14によれば、レーザエネルギー密度が設定されたレーザ光LBにより間詰材102を燃焼させることなく溶融させる。この結果、切削のように反力を受ける必要がなく狭隘部101において間詰材102を好適に除去することができる。
【0078】
図18は、本実施形態の加工装置における使用状態を表す側断面図である。図19は、図18における平面図である。
【0079】
図18および図19に示すように、レーザヘッド14Cを狭隘部101に挿入可能な大きさ形状とし、上述したレーザエネルギー密度に設定されたレーザ光LBを、狭隘部101の間隔全域に拡散して照射する。そして、このレーザ光LBを、上述した間詰材除去装置10の駆動部2および押動部3により移動させる。レーザ光LBは、上述した面積Hの範囲に拡散され、この面積Hが狭隘部101の間隔全域であって両壁面100aに達するように調整する。この調整は、レーザヘッド14Cに組み込まれた光学系により予め行われる。
【0080】
この加工装置14によれば、狭隘部101において間詰材102を連続して好適に除去することができる。
【0081】
図20は、本実施形態の加工装置における別の使用状態を表す側断面図である。図21は、図20における平面図である。
【0082】
図20および図21に示すように、レーザヘッド14Cを狭隘部101に挿入可能な大きさ形状とし、上述したレーザエネルギー密度に設定されたレーザ光LBを、狭隘部101の間隔全域に拡散して照射する。そして、このレーザ光LBの拡散角度を可変する。具体的には、図20から図21に示すように、間詰材102の溶融に伴ってレーザ光LBの拡散角度をθ1からθ2のように徐々に小さくする。レーザ光LBは、上述した面積Hの範囲に拡散され、この面積Hが狭隘部101の間隔全域であって両壁面100aに達するように調整する。この調整は、レーザヘッド14Cに組み込まれた光学系により予め行われる。そして、間詰材102の溶融に伴ってレーザ光LBの拡散角度を徐々に小さくして常に間詰材102に達するレーザ光LBを面積Hとする。この拡散角度の可変は、レーザヘッド14Cに組み込まれた光学系の制御により行われる。そして、間詰材102の溶融に伴ってレーザ光LBの照射距離が長くなるため、レーザ発振器14Aによりレーザ出力を調整してレーザエネルギー密度を維持する。
【0083】
この加工装置14によれば、間詰材102の溶融に伴ってレーザ光LBの拡散角度を徐々に小さくすることで、レーザヘッド14Cの移動を伴わず、狭隘部101において間詰材102を連続して好適に除去することができる。
【0084】
図22は、本実施形態の加工装置における別の使用状態を表す側断面図である。図23は、図22における動作図である。
【0085】
図22および図23に示すように、レーザヘッド14Cを狭隘部101に挿入可能な大きさ形状とし、上述したレーザエネルギー密度に設定されたレーザ光LBを、狭隘部101の間隔全域に平行に照射する。そして、図22から図23に示すように、このレーザ光LBを狭隘部101の間隔の範囲(両壁面100a間)で揺動させる。揺動させる機構は、図には明示しないが、レーザヘッド14Cを揺動中心となる軸で支持し、カムやリンクによりモータなどの駆動源の回転動作を往復動作に変換してレーザヘッド14Cに伝達することで構成できる。レーザ光LBは、上述した面積Hの範囲で平行に照射され、この面積Hが狭隘部101の間隔よりも小さくなるように調整する。この調整は、レーザヘッド14Cに組み込まれた光学系により予め行われる。そして、間詰材102の溶融に伴ってレーザ光LBの照射距離が長くなるため、レーザ発振器14Aによりレーザ出力を調整してレーザエネルギー密度を維持する。
【0086】
この加工装置14によれば、平行に照射されたレーザ光LBを狭隘部101の間隔の範囲で揺動させることで、レーザヘッド14Cの移動を伴わず、狭隘部101において間詰材102を連続して好適に除去することができる。
【0087】
図24および図25は、本実施形態の加工装置の付加構造を表す概略構成図である。
【0088】
図24および図25は、レーザ光LBにより間詰材102を除去する場合に、レーザ光LBを照射する雰囲気中に水が存在する場合の付加構造を示している。
【0089】
図24に示す付加構造は、レーザヘッド14Cのレーザ光LBを照射する部分に遮蔽部14Dが設けられている。遮蔽部14Dは、中央にレーザ光LBを通過させるレーザ光案内穴14Daが形成されている。さらに、レーザ光案内穴14Daを囲むようにガス噴射穴14Dbが形成されている。ガス噴射穴14Dbは、ガスGを供給するガス供給部14Dcが接続されている。ガス供給部14Dcは狭隘部101の外に設置される。そして、レーザヘッド14Cからレーザ光LBを照射する際、ガス噴射穴14DbからガスGを噴射させる。すると、レーザ光案内穴14Daを通過するレーザ光LBの周囲にガスGが噴射されてエアカーテンとなり、レーザ光LBの周囲にガスGが満たされた領域となる。これにより、水がレーザ光LBに干渉することを防ぐ。この結果、レーザ光LBを照射する雰囲気中に水が存在してもレーザ光LBにより間詰材102を除去することができる。
【0090】
図25に示す付加構造は、レーザヘッド14Cのレーザ光LBを照射する部分に遮蔽部14Eが設けられている。遮蔽部14Eは、中央にレーザ光LBを通過させるレーザ光案内穴14Eaが形成されている。さらに、レーザ光案内穴14Eaを囲むようにガス噴射穴14Ebが形成されている。ガス噴射穴14Ebは、ガスGを供給するガス供給部14Ecが接続されている。ガス供給部14Ecは狭隘部101の外に設置される。また、ガス噴射穴14Ebを囲むように水噴射穴14Edが形成されている。水噴射穴14Edは、水Wを供給する水供給部14Eeが接続されている。水供給部14Eeは狭隘部101の外に設置される。そして、レーザヘッド14Cからレーザ光LBを照射する際、ガス噴射穴14EbからガスGを噴射させる。さらに、水噴射穴14Edから水Wを噴射させる。すると、レーザ光案内穴14Eaを通過するレーザ光LBの周囲にガスGが噴射されてエアカーテンとなり、レーザ光LBの周囲にガスGが満たされた領域となる。さらに、ガスGが満たされた領域の周囲に水Wが噴射されて水カーテンとなり、ガスGが満たされた領域を噴射された水Wで覆う。これにより、水がレーザ光LBに干渉することを防ぐ。この結果、レーザ光LBを照射する雰囲気中に水が存在してもレーザ光LBにより間詰材102を除去することができる。
【0091】
[実施形態3]
図26は、本実施形態の間詰材除去装置を表す平面図である。図27および図28は、本実施形態の間詰材除去装置の動作を表す平面図である。
【0092】
本実施形態の間詰材除去装置20は、上述した狭隘部101に充填された間詰材102を除去するように狭隘部101の間隔に挿入可能に形成されるものであって、駆動部22と、膨縮部23と、加工装置24と、を備える。
【0093】
駆動部22は、固定側と移動側とが相対的に伸縮駆動される。本実施形態では、駆動部22は、いわゆるエアシリンダであり、固定側は、シリンダ部22Aで構成され、移動側は、ピストン22Baおよびピストンロッド22Bbで構成されている。本実施形態において、ピストンロッド22Bbは1つのピストン22Baに一対設けられている。シリンダ部22Aは、エアを供給したりエアを排出したりするためのエア管22Cが接続されている。エアの供給源は、図には明示しないが、狭隘部101の外部に設置される。従って、駆動部22は、エア管22Cを介してシリンダ部22Aのピストン22Baの一側にエアが供給されてピストン22Baの他側からエアが排出されることでピストン22Baが移動しピストンロッド22Bbをピストン22Baから伸長させたり縮小させたりする。
【0094】
膨縮部23は、駆動部22の固定側と移動側とにそれぞれ設けられている。本実施形態において、膨縮部23は、固定側として駆動部22のシリンダ部22Aの後部(ピストンロッド22Bbが伸縮する方向であってピストンロッド22Bbの反対側の部分)に2つの後方膨縮部23Aとして設けられている。また、膨縮部23は、移動側として駆動部22の一対のピストンロッド22Bbの先端を連結するフレーム21の前部(ピストンロッド22Bbが伸縮する方向であってピストンロッド22Bbの先端側の部分)に2つの前方膨縮部23Bとして設けられている。各膨縮部23A,23Bは、それぞれにエアを供給したりエアを排出したりするエア管23Cが接続されている。エアの供給源は、図には明示しないが、狭隘部101の外部に設置される。
【0095】
加工装置24は、間詰材102の除去加工が可能に設けられている。加工装置24は、ウォータジェットノズル24Aと、水供給管24Bと、水供給源(図示せず)と、を備える。ウォータジェットノズル24Aは、フレーム21の前部において前方に噴射口を向けて設けられている。本実施形態においてウォータジェットノズル24Aは、2つ設けられている。水供給管24Bは、ウォータジェットノズル24Aに対して水供給源から高圧水を供給するためウォータジェットノズル24Aに接続されている。従って、水供給源から水供給管24Bを介してウォータジェットノズル24Aに供給された高圧水は、ウォータジェットノズル24AからウォータジェットWJとして前方に噴射される。噴射されたウォータジェットWJは、間詰材102に衝突することで間詰材102を粉砕除去する。
【0096】
このように構成された間詰材除去装置20は、図26に示すように、ウォータジェットノズル24AからウォータジェットWJを噴射する場合、膨縮部23の各膨縮部23A,23Bにエアを供給して膨張させることで、膨らんだ各膨縮部23A,23Bの外面が狭隘部101の両壁面100a側に押圧されるため、狭隘部101内に固定されてウォータジェットWJを噴射した反力を受ける。なお、駆動部22の前後を逆にし、ウォータジェットノズル24Aを駆動部22のシリンダ部22Aに設けてもよい。
【0097】
また、間詰材除去装置20は、移動する場合、駆動部22のピストンロッド22Bbを縮小した状態から、膨縮部23の後方膨縮部23Aを膨張させる一方で前方膨縮部23Bを収縮させ、図27に示すように、駆動部22のピストンロッド22Bbを伸長させる。これにより、駆動部22のシリンダ部22Aが後方膨縮部23Aにより固定され、ピストンロッド22Bbと共に前方膨縮部23Bが前方に移動する。その後、逆に、駆動部22のピストンロッド22Bbを伸長した状態から、膨縮部23の後方膨縮部23Aを収縮させる一方で前方膨縮部23Bを膨張させ、図28に示すように、駆動部22のピストンロッド22Bbを縮小させる。これにより、駆動部22のピストンロッド22Bbが前方膨縮部23Bにより固定され、シリンダ部22Aが狭隘部101の両壁面100a側から離脱した後方膨縮部23Aと共に前方に移動する。この図27および図28の動作を繰り返し行うことで、間詰材除去装置20は、前方に移動する。また、逆の動作を繰り返し行うことで、間詰材除去装置20は、後方に移動する。
【0098】
なお、本実施形態の間詰材除去装置20を用いた間詰材102の除去工程は、上述した実施形態1において図8から図15に示す上述した工程と同様である。
【0099】
従って、本実施形態の間詰材除去装置20は、狭隘部101に充填された間詰材102を除去するように狭隘部101の間隔に挿入可能に形成されるものであって、固定側であるシリンダ部22Aと、移動側であるピストン22Baおよびピストンロッド22Bbとが相対的に伸縮駆動される駆動部22と、駆動部22の固定側と移動側とにそれぞれ設けられて膨張収縮可能に構成されて膨張時に狭隘部をなす両壁面100aに押圧される一方で収縮時に前記狭隘部の両壁面から離脱される膨縮部23と、駆動部22の固定側または移動側に連結されて間詰材102の除去加工が可能な加工装置24と、を備える。
【0100】
この間詰材除去装置20によれば、膨縮部23の膨張収縮と駆動部22の伸縮により、狭隘部101の間隔において移動を円滑に行うことができる。この結果、狭隘部101において間詰材102を好適に除去することができる。
【0101】
なお、本実施形態の間詰材除去装置20は、上述した実施形態1における吸引装置(図示せず)を同様に用いることが可能である。また、本実施形態の間詰材除去装置20に対し、上述した実施形態1,2における加工装置4,14を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0102】
1 フレーム
1A,1B,1C ケーシング
2 駆動部
2A 駆動源
2B 駆動伝達部
2C 駆動車
3 押動部
4 加工装置
4A 駆動源
4B 支持軸
4C 切削部材
4D 切削芯
10 間詰材除去装置
14 加工装置
14A レーザ発振器
14B 伝送ファイバ
14C レーザヘッド
14D,14E 遮蔽部
20 間詰材除去装置
21 フレーム
22 駆動部
23 膨縮部
24 加工装置
100a 壁面
101 狭隘部
102 間詰材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28