(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
マンションの集合住宅等、複数階の建物においては、上階の床構造体と下階の天井板とが吊りボルトや天井下地などを介して連結されている。
【0003】
このような天井構造においては、床衝撃音が床構造体から天井板に伝搬しやすくなる。床衝撃音は、衝撃加振するものの重さと柔らかさに応じて、広い周波数成分の振動が発生し、これが伝搬して下階室にて観測される音である。
【0004】
そのうち、人の飛び跳ね、走り回り、歩行など重くて柔らかい物の衝撃によるものを重量床衝撃音と称し、椅子のひきずりやスプーンの落下など軽くて硬い物の衝撃によるものを軽量床衝撃音という。
【0005】
多くの場合、重量床衝撃音は63Hz帯域が、軽量床衝撃音は125Hz又は250Hz帯域が性能決定周波数となる。
【0006】
このような床衝撃音、特に重量床衝撃音は、下階の居住者にとっては不快な騒音であるため、従来、床衝撃音を低減する多数の対策が提案されている。
【0007】
例えば、特許文献1には、野縁を跨いで配置された制振体を有する天井構造が開示されている。制振体は、袋と袋に収容される粒状体とを有している。粒状体としては、パーライト、砂、若しくは天然ガラス発砲体又はこれらの少なくとも二つを選択した混合体が用いられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
床衝撃音は、主に、床構造体から連結部材を介して天井板に伝搬する固体伝搬音が原因となっている。固体伝搬音を吸収するためには、制振材の比重を高め、制振体全体の重量を上げることが、一方では重要である。他方、天井板の強度や施工上の実用的な観点等に鑑みると、重量床衝撃音を低減するのに必要な制振体の重量の下限を見極めることが、むしろ実用上の要請は高い。
【0010】
しかるに従来は、専ら固体伝搬音の吸収のため、制振材の材質について研究が進められており、効果的に遮音等級を向上させることのできる下限の重量については、充分な研究がなされてこなかった。そのため、従来の研究結果に基づくと、過度に重い制振体を採用する傾向が高まり、天井板に大きな荷重をかける必要が生じ、実用性が乏しい内容となっていた。
【0011】
本発明は上記観点に鑑み、可及的に軽量な制振体を用いて、重量床衝撃音を低減することのできる実用的な天井構造を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は、床構造体と、前記床構造体と連結される天井板と、前記天井板の上に載置される
複数の制振体と、を備え、
前記複数の制振体は、天井板1m
2当たりの
前記制振体の重量が、1m
2当たりの天井板の重量の
92%以上154%未満になるように配置され
、前記各制振体は、所定範囲の粒子径をもった多数の粒状体を含む制振材と、前記制振材を収容する袋体と、を備え、前記制振材は、塩化ビニール樹脂と炭酸カルシウムとを混成した混成物を含むことを特徴とする天井構造である。
この態様では、
天井板1m2当たりの制振体の重量が、1m2当たりの天井板の重量の92%以上154%未満に設定されるので、床構造体から天井板に伝搬し得る固体伝搬音を吸収するために制振体を載置するに当たり、必要最低限の重量の制振体で重量床衝撃音の低減を図ることができる。よって、可及的に軽量な制振体を用いて、重量床衝撃音を低減することが可能となり、天井板に過度な荷重をかけることなく実用的な制振効果を奏することができる。
また、前記制振体として、粒状の制振材とこれを収容する袋体とを備えたものが用いられるので、制振体の設置が容易になるばかりでなく、制振体の搬送や保存が容易になる。これにより、制振体の取扱いが便利になり、より実用的な天井構造を得ることができる。
さらに、制振材は、塩化ビニール樹脂と炭酸カルシウムとを混成した混成物を含むので、重量床衝撃音を比較的効果的に低減することのできる材料で制振材を構成することができる。
【0013】
好ましい態様の天井構造において、
前記制振材に含まれる塩化ビニール樹脂と炭酸カルシウムとの混成物は、塩化ビニール樹脂と炭酸カルシウムとを100重量部に対し300重量部で混成したものである。この態様では、上記混成物は、樹脂成分よりも高い比率で炭酸カルシウムを含んでいるので、重量床衝撃音を低減することのできる比重の制振材を提供することができる。
【0014】
好ましい態様の天井構造において、
互いに平行に延びる状態で前記天井板の上面に取り付けられた複数の野縁をさらに備え、前記複数の制振体は、前記野縁の延設方向と直交する方向に延びる互いに独立した複数の制振体の列が形成されるように、各野縁を挟んで隣接しかつ野縁の延設方向に間隔を空けて配置される。
【0015】
好ましい態様の天井構造において、
前記袋体は、前記制振材を収容するトレイ部と、トレイ部の上面を閉じるシート状のカバー部とを備え、前記制振材は、前記カバー部との間に隙間ができる状態で前記トレイ部に収容される。
【0016】
好ましい態様の天井構造において、前記制振材は、樹脂廃材の粉砕物である。この態様では、樹脂廃材の粉砕物を再生樹脂材料として利用することができるので、例えば、建築物の壁紙として使用された樹脂廃材を粉砕することにより、容易に制振材を構成することができる。そのため、費用の低減に寄与し、廃材のリサイクルも促進される。
【0017】
好ましい態様の天井構造において、前記
複数の制振体は、
天井板1m
2当たりの
前記制振体の重量が、1m
2当たりの天井板の重量の100%未満になるように配置される。この態様では、より軽量化を図りつつ、実用的な制振効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明では、床構造体から天井板に伝搬し得る固体伝搬音を吸収するために制振体を載置するに当たり、可及的に軽量な制振体を用いて、重量床衝撃音を低減することが可能となり、天井板に過度な荷重をかけることなく実用的な制振効果を奏することができる。
【0019】
本発明のさらなる特徴、目的、構成、並びに作用効果は、添付図面と併せて読むべき以下の詳細な説明から容易に理解できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。
【0022】
図1〜
図3を参照して、本実施形態の天井構造は、床構造体1と、床構造体1の下方に配置される格子状の天井下地2と、天井下地2と床構造体1とを連結する連結部材としての吊りボルト3と、天井下地2の下面に固定される天井板4とを備え、床構造体1と天井板4の間に隙間(ふところ)を形成する二重天井(吊り天井)を構成している。そして、本実施形態の天井構造は、天井下地2に支持されて天井板4の上に載置される制振体10を備えている。
【0023】
床構造体1は、建物の躯体部分である。本実施形態の床構造体1は、鉄筋コンクリート造材である。もっとも、床構造体1は、鉄筋コンクリート造材に限定されるものではない。
【0024】
天井下地2は、水平方向に沿って平行に配置される複数の野縁21と、野縁21の上面に配設され、野縁21と直交する水平方向に沿って平行に延びる複数の野縁受け22とを備えている。なお、以下の説明では、野縁受け22の長手方向を仮にX方向とし、野縁21の長手方向を仮にY方向とする。
【0025】
野縁21は、X方向に一定の間隔Px(例えば、Px=303mm)隔ててY方向に平行に配置されている鋼材であり、例えば、JISA6517建築用鋼製下地材(壁・天井)に規定された鋼製下地材や、一般に使用されている角型スタッド等の鋼製下地材である。無論、野縁21を構成する材料の形状は限定されるものではなく、例えば、リップ形鋼、軽溝形鋼、L字形鋼等を使用することができる。図示の例における野縁21は、その断面形状が
図5に示すように一対の側板部21aと、両側板部の下端と水平に連続する底板部21bと、底板部21bと平行に各側板部21aの上端から突出して対をなし、互いに水平方向に隙間21dを隔てて対向する上板部21cとを有するリップ溝形鋼である。また、野縁21の材質も限定されるものではなく、例えばアルミニウム合金やステンレス鋼、木材等であってもよい。
【0026】
野縁受け22は、Y方向に一定の間隔Py(例えば、Py=900mm〜1200mm)隔ててX方向に平行に配置されている鋼材であり、例えば、JISA6517建築用鋼製下地材(壁・天井)に規定された鋼製下地材や、一般に使用されている角型スタッド等の鋼製下地材である。無論、野縁受け22を構成する材料の形状は限定されるものではなく、例えば、L字鋼、矩形断面の形材の鋼材、又は軽溝鋼若しくはリップ溝形鋼を使用することができる。また、野縁受け22の材質も限定されるものではなく、例えばアルミニウム合金やステンレス鋼や木材等であってもよい。この野縁受け22に野縁21が固定されることにより、野縁21と野縁受け22とは、クロス状の天井下地2を構成する。野縁21と野縁受け22との固定方法は限定されるものではなく、例えば、直接、ビスなどの締結用部品により固定してもよいし、溶接により固定してもよい。天井下地2は、この野縁受け22に連結される吊りボルト3を介して水平に保持されている。
【0027】
吊りボルト3は、その上端が床構造体1の下部に固定され、下端がハンガ5を介して野縁受け22に固定され、全体的に垂直に床構造体1の下方に延びている。ハンガ5は、上下方向に長く配置される板金部材である。ハンガ5の上端部は、直角に屈曲しており、その平板部分に吊りボルト3の下端を挿通させている。一方、吊りボルト3の下端には、一対のナット6が螺合している。吊りボルト3は、これらのナット6によって、前記平板部分を挟圧することによりハンガ5と連結されている。また、ハンガ5の下端は、フック状(U字状)に屈曲して野縁受け22の下部を受けている。具体的には図示していないが、野縁受け22とハンガ5とを固定金具で連結し、ボルトで固定するようにしてもよい。
【0028】
なお、野縁受け22、野縁21、吊りボルト3の本数や配置は、限定的なものではなく、天井板4の重量等に応じて適宜設定することができる。
【0029】
天井板4は、野縁21の下面に固定され、天井下地2の下面を覆っている。天井板4の材質は限定されるものではないが、軽量で、遮音性に優れたものが望ましい。そのような材質としては、プラスタボード(PB)が例示される。本実施形態における天井板4の1m
2当たりの重量は、6.5kgである。天井板4の上部には、天井下地2に取り付けられた制振体10が配置されている。
【0030】
制振体10は、制振材11と、制振材11を収容する袋体12とを有している。
【0031】
本実施形態の制振材11は、その形状、寸法、1個あたりの体積、比重、1個あたりの重量、天井板4の上に載置する個数、材質等は特に限定されず、種々の材料で構成することができる。また、制振材11の比重は、1.0〜2.5が好ましい。また、平均粒子径は、0.5mm〜5mmが好ましい。そのような材料としては、樹脂、木片、ペレット、パーライト、天然ガラス発泡体、砂、炭、又はこれらのうちの少なくとも2つを混合したもの等を採用することができる。樹脂としては、中実樹脂成型品、中空樹脂成型品、発泡樹脂成型品、又はこれら樹脂成型品の粉砕物が好適である。
【0032】
本実施形態では、特に、樹脂材料の廃材をリサイクルしたものが採用されている。樹脂材料としては、塩化ビニール樹脂と炭酸カルシウムとを1:3の割合で混成したものが好ましい。また、そのような樹脂材料の廃材としては、壁の化粧材として利用されるクロス材の粉砕物が例示される。
【0033】
制振材11の形状は、上記粉砕物の他、ブロック状、球状、円筒状、角柱状、ペレット状、シート状、フレーク状、粒状、粉状等、種々の態様を採用することができる。制振材11の寸法も特に限定されない。ただし、取り扱いの観点及び袋体12からの漏れ出しの観点から、制振材11が過度に微細にならないようにする。例えば平均径が1mm以上、さらには2mm以上が好ましい。上限も特に限定されないが、取り扱いの観点からは、例えば100mm以下等である。
【0034】
袋体12は、フィルム包装材等の軟体の収容物である。袋体12を構成する材料は限定されるものではないが、振動した際に内部の粒状体が移動することを阻害することない材料であって、不燃性・耐火性の材質が望ましい。そのような材質としては、例えば、ガラスクロス又はポリエチレン樹脂が例示される。袋体12の平面寸法は、間口W×奥行Dが、例えば330mm×180mmの長方形の平面形状に設定されており、その長手方向がX方向に沿って配置されている。
【0035】
図4及び
図5を参照して、袋体12は、制振材11を収容するトレイ部14と、トレイ部14の上面を閉じるカバー部15と、カバー部15に固着された、係止手段としてのフック部16とを有しているフィルム包装材である。
【0036】
トレイ部14は、平面視長方形に開く上面14a(
図5参照)を有する深皿状に形成された容器である。このトレイ部14の内部に制振材11が充填される。トレイ部14の容積は、制振材11の種類や、天井板4の上に配置される個数によって適宜変更されるが、制振体10全体の重量が、例えば、1kg又は2kgになる程度の容積に設定される。
【0037】
カバー部15は、シート状であり、制振材11が充填されたトレイ部14の上面14a全体を閉じて、トレイ部14を封緘する部材として機能する。このカバー部15の長手方向両側は、平面でみて、トレイ部14の長手方向両外側に突出するように延設された延設部15a(
図5参照)を有している。次に説明するフック部16は、この延設部15aを介してカバー部15に取り付けられている。延設部15aは、可撓性を有し、Y方向に沿う軸回りにフック部16が回動したり、上下に昇降したりするのを許容する。これらの動作によりフック部16は、トレイ部14の両側部で野縁21に係脱できるようになっている。
【0038】
フック部16は、カバー部15の幅方向全長にわたって延びる板状部材である。フック部16の幅方向一端側は、カバー部15の長手方向の端部上面に固着されている。フック部16の幅方向他端側は、カバー部15の内側に潜り込むように下向きに湾曲する略J字形断面形状の鉤状部位を有している。そして、フック部16は、制振体10の設置時に延設部15aを変形させることによりトレイ部14の下方に近接し、さらに野縁21の上板部21c、21c間に無理嵌めされることにより、
図5に示すように、当該上板部21cの下面に着脱可能に係止可能な剛性を備えている。そのような材質としては、例えばポリエチレンテレフタレートが例示される。
【0039】
なお、フック部16は、野縁21がリップ溝形鋼を用いた場合に特化した一例であり、本発明の係止手段は、フック部16に限定されない。例えば、係止手段としては、紐状、又はチェーン状の巻回物であってもよい。或いは、係止手段としては、面テープであってもよい。また、カバー部15の両端に金属製の板材を固定し、この板材をビス止め等で固定してもよい。
【0040】
図1、
図3に示すように、制振体10は、天井下地2を1m
2ごとの領域に分割した場合、各領域に例えば、6個配置されている。制振体10は、長手方向をX方向に沿わせて複数列(図示の例では、2列)に配置されており、それぞれのフック部16をX方向に隣接する野縁21に係止させている。Y方向において、1列目の制振体10と2列目の制振体10の間隔Dyは、例えば、455mmである。これにより、1m
2ごとに6Kgの制振体10が配置されることになる。1m
2当たりの天井板4の重量は、PBの場合、6.5Kgであるから、1m
2当たりの制振体10の重量は、1m
2当たりの天井板4の重量の約92%に設定されることになる。
【0041】
本実施形態のように、上階の床構造体1と下階の天井板4とが複数の吊りボルト3で連結されている天井構造において、上階の床構造体1で発生した重量床衝撃音(例えば子供が飛び跳ねる音等)は、床構造体1から吊りボルト3及び天井下地2を伝わって下階の天井板4に伝搬し、天井板4を振動させる。このような重量床衝撃音は、上階の床構造体1から、吊りボルト3、及び天井下地2を介して天井板4に伝搬する固体伝搬音と、空気を伝搬して下階の天井板4に到達し、天井板4を震わせる空気伝搬音とを伴う。
【0042】
一方、本実施形態のような制振体10を天井下地2に設けることにより、これら、固体伝搬音及び空気伝搬音による振動エネルギーは、天井下地2の上に載置された制振材11を振動させるために消費される。そのため、上階からの振動エネルギーが分散し、天井板4に伝わる振動エネルギーが減少し、天井板4が震える程度が低減する。これにより、上階から下階へ伝搬する重量床衝撃音が抑制される。
【0043】
特に本実施形態では、1m
2当たりの制振体10の重量が天井板4の重量の
92%以上に設定されるので、天井板4に伝わる振動エネルギーが確実に減少し、上階から下階への重量床衝撃音の伝搬が効率よく抑制される。これにより、微細な制振材を用いることなく、重量床衝撃音を良好に抑制し得る天井構造が提供される。また、床構造体から天井板に伝搬し得る固体伝搬音を吸収するために制振体を載置するに当たり、1m
2当たりの制振体10の重量を天井板4の重量の
92%以上に設定することにより、必要最低限の重量の制振体10で重量床衝撃音の低減を図ることができる。よって、可及的に軽量な制振体10を用いて、重量床衝撃音を低減することが可能となり、天井板4に過度な荷重をかけることなく実用的な制振効果を奏することができる。
【0044】
本実施形態の天井構造を施工する際には、床構造体1の造成後に、常法により天井下地2を取り付ける。次いで、天井板4を固定する前に、制振体10を設置する。制振体10は、設置前は、
図4に示すように、長手方向両端側のフック部16の自由端に形成された鉤状部を野縁21の上板部21c、21c間の隙間21d内に押し込むことにより、フック部16の弾性復元力で鉤状部が上板部21cの下面に係止し、容易には抜けなくなる。そして、一つの野縁21に対し、その両側に配置された制振体10の各フック部16を上記の通り係止させることにより、個々のフック部16の係止力は、高くなる。このようにして、一つの制振体10の両側のフック部16を当該フック部16に隣接する野縁21に係止させることにより、各制振体10は、野縁21間に吊された状態で保持される。
【0045】
以上のような構成によれば、床構造体から天井板に伝搬し得る固体伝搬音を吸収するために制振体を載置するに当たり、1m
2当たりの制振体10の重量を天井板4の重量の
92%以上に設定することにより、必要最低限の重量の制振体10で重量床衝撃音の低減を図ることができる。よって、可及的に軽量な制振体10を用いて、重量床衝撃音を低減することが可能となり、天井板4に過度な荷重をかけることなく実用的な制振効果を奏することができる。
【0046】
また本実施形態の制振体10において、制振材11は、塩化ビニール樹脂と炭酸カルシウムとを100重量部に対し300重量部で混成した混成物又は炭の粉砕物である。このため本実施形態では、重量床衝撃音を比較的効果的に低減することのできる材料で制振材11を構成することができる。特に、上記混成物は、樹脂成分よりも高い比率で炭酸カルシウムを含んでいるので、重量床衝撃音を低減することのできる比重の制振材11を提供することができる。
【0047】
また本実施形態の制振体10において、制振材11は、樹脂廃材の粉砕物を含む。このため本実施形態では、樹脂廃材の粉砕物を再生樹脂材料としてリサイクルすることができるので、例えば、建築物の壁紙として使用された樹脂廃材を粉砕することにより、容易に制振材11を構成することができる。そのため、制振材11のコストを格段に低減することができ、しかも、廃材のリサイクルも促進される。
【0048】
(その他の実施形態)
本発明の別の実施形態として、
図6に示す制振体10を採用することも可能である。
【0049】
図6を参照して、同図に示す制振体10は、土嚢状の袋で袋体12が構成されている。袋体12の材質は、例えば、ポリエチレン等の樹脂が好ましいが、ポリエチレンに限らず、他の樹脂又は他の素材で作製されたものでも構わない。また、袋体12は、土嚢状の袋に限らず、さらに別の形態の袋状物を使用することもできる。
【0050】
図6の実施形態における制振材11については、
図1の制振体10に用いられた制振材11と同様のものを採用することができる。そして、この
図6の例においても、1m
2当たりの制振体10の重量が天井板4の重量の
92%以上に設定される。制振体10を設置する際には、天井下地2に仕切られる空間の中央側に袋体12が配置されることが好ましい。
【0051】
図6の袋体12を採用した場合、制振体10を設置する際には、部分的に天井板4を天井下地2に固定し、固定された天井板4の上に制振体10を載置する作業を繰り返すだけでよい。本実施形態においても、1m
2当たりの制振体10の重量が天井板4の重量の
92%以上に設定されることから、特に重量床衝撃音に対し、効果的な制振効果を奏することができる。
【0052】
なお、上述した各実施形態
では、制振体10の1m
2当たりの重量の下限について
特に言及しなかったが、制振体10の1m2当たりの重量は、1m
2当たりの天井板の重量の
154%未満、好ましくは100%未満
に設定される。これにより、より軽量化を図りつつ、実用的な制振効果を奏することができる。加えて、天井板4や天井下地2に対する負担も小さくなるという利点もある。
【0053】
(床衝撃音測定試験)
図1及び
図2に示す天井構造において、以下の実施例1、2を試作し、それぞれについて後述のような床衝撃音測定試験を実施した。なお、実施例1、2の効果を確認するため、以下の比較例1〜3についても、併せて床衝撃音測定試験を実施した。比較例のうち、比較例1は、制振未対策の状態であり、この比較例1の値を基準にして、比較例2、3及び実施例1、2の床衝撃音低減効果を検証した。
【0054】
[比較例1]
天井板:プラスタボード1枚(6.5kg/m
2)
制振材:載置せず
[比較例2]
天井板:プラスタボード2枚(13.0kg/m
2)
制振材:載置せず
[比較例3]
天井板:プラスタボード1枚(6.5kg/m
2)
吸音材:グラスウール
天井板上の載置重量:1.5kg/m
2(比重が小さいためこれ以上ふところに載置できず)
載置形態:カットして敷設
[実施例1]
天井板:プラスタボード1枚(6.5kg/m
2)
制振材:樹脂製粒剤(塩化ビニール樹脂と炭酸カルシウムの混成物、比重2.1の粉砕物。平均粒子径4mm、1個あたりの平均重量2g)
天井板上の載置重量:6.0kg/m
2
載置形態:1kg/個に制振材が充填された袋体6個を敷設
袋体:ポリエチレン製容器(330mm×180mm)
充填量:1.0kg
[実施例2]
天井板:プラスタボード1枚(6.5kg/m
2)
制振材:樹脂製粒剤(実施例1と同様。)
天井板上の載置重量:10.0kg/m
2
載置形態:2kg/個に制振材が充填された袋体5個を敷設
袋体:ポリエチレン製容器(330mm×180mm)
充填量:2.0kg
(床衝撃音測定試験の結果)
JIS A 1418に規定される試験方法に準拠して床衝撃音測定試験を行った。床構造体1の上から重量床衝撃音発生装置(バングマシン)を用いて打撃を行い、この打撃に伴って発生した床衝撃音を天井板4の下方において受音し、受音した床衝撃音の音圧レベルを周波数帯域毎に測定した。測定結果を表1に示す。
【0056】
[効果の検証]
比較例1では、床衝撃音について、何等対策が取られていない。その場合の一般的な重量床衝撃音決定周波数である63Hzでの測定値は、89.1dBであった。この89.1dBに対する制振体の床衝撃音低減効果について各態様を検証した。なお、床衝撃音低減効果は、床衝撃音レベルが5dBごとに遮音等級が向上する。そこで、63Hzで5dB以上の床衝撃音低減効果を奏するものが望まれる。
【0057】
まず、比較例2は、単純に天井板4を2枚のプラスタボードで構成した態様である。この比較例2では、天井板4の重量が2倍に増えているにも拘わらず、床衝撃音レベルの低減量は、1.8dBに過ぎなかった。
【0058】
また、比較例3は、グラスウールを採用した態様である。このグラスウールを採用した場合では、重量の割には床衝撃音低減効果が高いものの、依然、床衝撃音レベルの低減量は、1.2dBに過ぎなかった。
【0059】
これに対し、実施例1、2では、いずれも7.0dB以上の床衝撃音レベルの低減量を得ることができた。よって、天井板4の上に、粉砕物を封緘した袋状の制振体10を載置することにより、大きな床衝撃音低減効果を奏することが確認された。
【0060】
一方、1m
2当たりの重量について、6Kg/m
2(天井板4の92%の重量)の制振体10を用いた実施例1においては、7.0dBの低減効果が得られた。また、1m
2当たりの重量について、10Kg/m
2(天井板4の約153.8%の重量)の制振体10を用いた実施例2においては、9.0dBの低減効果が得られた。これらの結果から、1m
2当たりの制振体10の重量が天井板4の
92%以上154%未満であれば、遮音等級を少なくとも1ランク向上可能な床衝撃音レベルの低減量を得ることができ
る。