(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エンジンからのトルクが伝達される回転要素の回転中心の周りに該回転要素と一体に回転する支持部材と、連結軸を介して前記支持部材に連結されると共に該支持部材の回転に伴って前記連結軸の周りに揺動可能な復元力発生部材と、前記復元力発生部材を介して前記支持部材に連結されると共に該支持部材の回転に伴って該復元力発生部材に連動して前記回転中心の周りに揺動する慣性質量体とを含み、前記回転要素の振動を減衰する振動減衰装置において、
前記支持部材が回転する際に、前記復元力発生部材には、該支持部材の回転に伴って該復元力発生部材に作用する遠心力の前記連結軸の中心から前記復元力発生部材の重心に向かう方向と直交する方向の分力が前記慣性質量体を揺動範囲の中央に戻すための復元力として常時作用し、前記分力は、前記慣性質量体が前記揺動範囲の前記中央に位置するときに最大となる振動減衰装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、図面を参照しながら、本開示の発明を実施するための形態について説明する。
【0010】
図1は、本開示の振動減衰装置20を含む発進装置1の概略構成図である。同図に示す発進装置1は、例えば駆動装置(原動機)としてのエンジン(内燃機関)EGを備えた車両に搭載されるものであり、振動減衰装置(4節リンク式吸振装置)20に加えて、エンジンEGのクランクシャフトに連結される入力部材としてのフロントカバー3や、フロントカバー3に固定されて当該フロントカバー3と一体に回転するポンプインペラ(入力側流体伝動要素)4、ポンプインペラ4と同軸に回転可能なタービンランナ(出力側流体伝動要素)5、自動変速機(AT)、無段変速機(CVT)、デュアルクラッチトランスミッション(DCT)、ハイブリッドトランスミッションあるいは減速機である変速機(動力伝達装置)TMの入力軸ISに固定される出力部材としてのダンパハブ7、例えば単板油圧式クラッチであるロックアップクラッチ8、ダンパ装置10等を含む。
【0011】
なお、以下の説明において、「軸方向」は、特に明記するものを除いて、基本的に、発進装置1やダンパ装置10(振動減衰装置20)の中心軸(軸心)の延在方向を示す。また、「径方向」は、特に明記するものを除いて、基本的に、発進装置1やダンパ装置10、当該ダンパ装置10等の回転要素の径方向、すなわち発進装置1やダンパ装置10の中心軸から当該中心軸と直交する方向(半径方向)に延びる直線の延在方向を示す。更に、「周方向」は、特に明記するものを除いて、基本的に、発進装置1やダンパ装置10、当該ダンパ装置10等の回転要素の周方向、すなわち当該回転要素の回転方向に沿った方向を示す。
【0012】
ポンプインペラ4は、フロントカバー3に密に固定される図示しないポンプシェルと、ポンプシェルの内面に配設された複数のポンプブレード(図示省略)とを有する。タービンランナ5は、図示しないタービンシェルと、タービンシェルの内面に配設された複数のタービンブレード(図示省略)とを有する。タービンシェルの内周部は、複数のリベットを介してダンパハブ7に固定される。
【0013】
ポンプインペラ4とタービンランナ5とは、互いに対向し合い、両者の間には、タービンランナ5からポンプインペラ4への作動油(作動流体)の流れを整流するステータ6が同軸に配置される。ステータ6は、図示しない複数のステータブレードを有し、ステータ6の回転方向は、ワンウェイクラッチ61により一方向のみに設定される。これらのポンプインペラ4、タービンランナ5およびステータ6は、作動油を循環させるトーラス(環状流路)を形成し、トルク増幅機能をもったトルクコンバータ(流体伝動装置)として機能する。ただし、発進装置1において、ステータ6やワンウェイクラッチ61を省略し、ポンプインペラ4およびタービンランナ5を流体継手として機能させてもよい。
【0014】
ロックアップクラッチ8は、ダンパ装置10を介してフロントカバー3とダンパハブ7とを連結するロックアップを実行すると共に当該ロックアップを解除するものである。本実施形態において、ロックアップクラッチ8は、単板油圧式クラッチとして構成されており、フロントカバー3の内部かつ当該フロントカバー3のエンジンEG側の内壁面近傍に配置されると共にダンパハブ7に対して軸方向に移動自在に嵌合される図示しないロックアップピストン80を有する。ロックアップピストン80の外周側かつフロントカバー3側の面には、摩擦材が貼着され、ロックアップピストン80とフロントカバー3との間には、作動油供給路や入力軸ISに形成された油路を介して図示しない油圧制御装置に接続されるロックアップ室(図示省略)が画成される。
【0015】
ロックアップクラッチ8のロックアップ室内には、入力軸ISに形成された油路等を介してポンプインペラ4およびタービンランナ5の軸心側(ワンウェイクラッチ61の周辺)から径方向外側に向けてポンプインペラ4およびタービンランナ5(トーラス)へと供給される油圧制御装置からの作動油が流入可能である。従って、フロントカバー3とポンプインペラ4のポンプシェルとにより画成される流体伝動室9内とロックアップ室内とが等圧に保たれれば、ロックアップピストン80は、フロントカバー3側に移動せず、ロックアップピストン80がフロントカバー3と摩擦係合することはない。これに対して、図示しない油圧制御装置によりロックアップ室内を減圧すれば、ロックアップピストン80は、圧力差によりフロントカバー3に向けて移動してフロントカバー3と摩擦係合する。これにより、フロントカバー3(エンジンEG)は、ダンパ装置10を介してダンパハブ7に連結される。なお、ロックアップクラッチ8として、少なくとも1枚の摩擦係合プレート(複数の摩擦材)を含む多板油圧式クラッチが採用されてもよい。
【0016】
ダンパ装置10は、
図1に示すように、回転要素として、ロックアップクラッチ8のロックアップピストン80に一体に回転するように連結される環状のドライブ部材(入力要素)11と、変速機TMの入力軸ISに連結される環状のドリブン部材(出力要素)15とを含む。また、ダンパ装置10は、トルク伝達要素として、同一円周上に周方向に間隔をおいて配置される複数(本実施形態では、例えば4個)のスプリング(弾性体)SPを含む。スプリングSPとしては、荷重が加えられてないときに円弧状に延びる軸心を有するように巻かれた金属材からなるアークコイルスプリングや、荷重が加えられてないときに真っ直ぐに延びる軸心を有するように螺旋状に巻かれた金属材からなるストレートコイルスプリングが採用される。また、スプリングSPとしては、いわゆる二重バネが採用されてもよい。
【0017】
ダンパ装置10の入力要素であるドライブ部材11は、ロックアップピストン80(フロントカバー3)に近接するように配置される環状の第1入力プレート部材と、第1入力プレート部材よりもロックアップピストン80から離間するようにポンプインペラ4およびタービンランナ5側に配置されると共に複数のリベットを介して第1入力プレート部材に連結される環状の第2入力プレート部材とを含む(何れも図示省略)。
【0018】
第1入力プレート部材は、ダンパハブ7により回転自在に支持されると共に、ロックアップピストン80に一体に回転するように連結される。また、第1入力プレート部材は、それぞれ対応するスプリングSPの外周部をフロントカバー3(エンジンEG)側から支持(ガイド)する複数(本実施形態では、例えば4個)の外側スプリング支持部と、それぞれ対応するスプリングSPの内周部をフロントカバー3側から支持(ガイド)する複数(本実施形態では、例えば4個)の内側スプリング支持部と、複数(本実施形態では、例えば4個)のスプリング当接部とを有する(何れも図示省略)。第2入力プレート部材は、それぞれ対応するスプリングSPの外周部をタービンランナ5(変速機TM)側から支持(ガイド)する複数(本実施形態では、例えば4個)の外側スプリング支持部と、それぞれ対応するスプリングSPの内周部をタービンランナ5側から支持(ガイド)する複数(本実施形態では、例えば4個)の内側スプリング支持部と、複数(本実施形態では、例えば4個)のスプリング当接部とを有する(何れも図示省略)。
【0019】
第1および第2入力プレート部材が互いに連結された際、第1入力プレート部材の各外側スプリング支持部は、第2入力プレート部材の対応する外側スプリング支持部と対向し、第1入力プレート部材の各内側スプリング支持部は、第2入力プレート部材の対応する内側スプリング支持部と対向する。そして、各スプリングSPは、ドライブ部材11を構成する第1および第2入力プレート部材により支持され、例えばタービンシェルの内周部の近傍で周方向に間隔をおいて(等間隔に)並ぶ。また、ダンパ装置10の取付状態において、第1および第2入力プレート部材の各スプリング当接部は、互いに隣り合うスプリングSPの間で両者の端部と当接する。
【0020】
ドリブン部材15は、ドライブ部材11の第1入力プレート部材と第2入力プレート部材との間に配置されると共に、複数のリベットを介して、あるいは溶接によりタービンランナ5のタービンシェルと共にダンパハブ7に固定される。これにより、ドリブン部材15は、ダンパハブ7を介して変速機TMの入力軸ISに連結される。また、ドリブン部材15は、それぞれ対応するスプリングSPの端部と当接可能な複数(本実施形態では、例えば4個)のスプリング当接部(図示省略)を有する。ダンパ装置10の取付状態において、ドリブン部材15の各スプリング当接部は、互いに隣り合うスプリングSPの間で両者の端部と当接する。これにより、ドリブン部材15は、並列に作用する複数のスプリングSPを介してドライブ部材11に連結される。
【0021】
振動減衰装置20は、ダンパ装置10のドリブン部材15に連結され、作動油で満たされる流体伝動室9の内部に配置される。
図2から
図4に示すように、振動減衰装置20は、支持部材(第1リンク)としてのドリブン部材15と、復元力発生部材(第2リンク)としての複数(本実施形態では、例えば4個)のクランク部材22と、連接部材(第3リンク)としての複数(本実施形態では、例えば合計8個)の連接ロッド23と、1体の環状の慣性質量体(第4リンク)24とを含む。
【0022】
ドリブン部材15には、その外周から周方向に間隔をおいて(等間隔に)径方向外側に突出するように複数(本実施形態では、例えば4個)の突出支持部151が形成されている。各クランク部材22の一方の端部は、対応するドリブン部材15の突出支持部151に回転自在に連結される。本実施形態において、各クランク部材22は、
図3に示すように、2枚のプレート部材220を有する。各プレート部材220は、円弧状の平面形状を有するように金属板により形成されており、プレート部材220の外周縁の曲率半径は、慣性質量体24の外周縁の曲率半径と同一に定められている。
【0023】
2枚のプレート部材220は、対応する突出支持部151および慣性質量体24を介してダンパ装置10の軸方向に対向し合うと共に第1連結軸A1を介して互いに連結される。本実施形態において、第1連結軸A1は、ドリブン部材15の突出支持部151に形成された連結孔(円穴)に挿通され、第1連結軸A1の両端部は、対応するプレート部材220の一方の端部により支持される。これにより、各クランク部材22(2枚のプレート部材220)は、ドリブン部材15に対して第1連結軸A1の周りに回転自在すなわち揺動自在に連結(ピン結合)される。なお、プレート部材220と第1連結軸A1との間および突出支持部151と第1連結軸A1との間の少なくとも何れか一方に、ボールベアリング等の軸受が配置されてもよい。
【0024】
各連接ロッド23は、金属板により細幅に形成されており、
図4に示すように、各クランク部材22に対して2個ずつ設けられる。すなわち、連接ロッド23は、クランク部材22を構成する一方のプレート部材220と慣性質量体24との軸方向における間、およびクランク部材22を構成する他方のプレート部材220と慣性質量体24との軸方向における間に1個ずつ介設される。各連接ロッド23の一端(径方向外側の端部)は、第2連結軸A2を介して対応するプレート部材220に回転自在に連結(ピン結合)される。
【0025】
本実施形態において、第2連結軸A2は、その中心がクランク部材22の重心G(プレート部材220の長手方向における中央部付近)を通る直線と同軸に延在するように配置される。これにより、ドリブン部材15(突出支持部151)とクランク部材22とを連結する第1連結軸A1の中心からクランク部材22の重心Gまでの長さは、第1連結軸A1の中心からクランク部材22と連接ロッド23とを連結する第2連結軸A2の中心までの長さ(軸間距離)に一致する。また、クランク部材22(プレート部材220)の他方の端部は、第2連結軸A2に関して第1連結軸A1とは反対側に位置する。なお、プレート部材220と第2連結軸A2との間および連接ロッド23と第2連結軸A2との間の少なくとも何れか一方に、ボールベアリング等の軸受が配置されてもよい。
【0026】
慣性質量体24は、金属板により形成された環状部材であり、
図2から
図4に示すように、短尺円筒状(円環状)の本体240と、本体240の内周面から周方向に間隔をおいて(等間隔に)径方向内側に突出する複数(本実施形態では、例えば4個)の突出部241とを有する。慣性質量体24の重量は、1個のクランク部材22の重量よりも十分に重く、1個の連接ロッド23の重量よりも十分に重く定められる。
図2に示すように、慣性質量体24の各突出部241は、ドリブン部材15の突出支持部151から周方向に離間するように配置されると共に、2個の連接ロッド23により軸方向における両側から挟み込まれる。また、各突出部241は、連結孔(円穴)を有し、当該連結孔に挿通される第3連結軸A3を介して両側の2個の連接ロッド23の他端(径方向内側の端部)に回転自在に連結(ピン結合)される。これにより、慣性質量体24は、それぞれ複数の連接ロッド23およびクランク部材22を介して支持部材としてのドリブン部材15に連結される。なお、連接ロッド23と第3連結軸A3との間および突出部241と第3連結軸A3との間の少なくとも何れか一方に、ボールベアリング等の軸受が配置されてもよい。
【0027】
更に、本実施形態において、慣性質量体24の本体240の内周面は、ドリブン部材15の各突出支持部151の外周面に摺接し、慣性質量体24の各突出部241の内周面は、互いに隣り合う突出支持部151間におけるドリブン部材15の外周面152に摺接する。これにより、環状の慣性質量体24は、その中心がダンパハブ7に固定されるドリブン部材15の回転中心RCと一致するように当該ドリブン部材15により支持(調心)され、回転中心RCの周りに回転自在となる。このように、慣性質量体24をドリブン部材15(支持部材)により回転自在に支持することで、振動減衰装置20のコンパクト化を図ることが可能となる。なお、ドリブン部材15により慣性質量体24を回転自在に支持するためには、本体240の内周面および突出部241の内周面のうちの少なくとも何れか一方をドリブン部材15に対して摺接させればよい。
【0028】
振動減衰装置20では、エンジンEGからの動力により回転する第1リンク(回転要素)としてのドリブン部材15と、当該ドリブン部材15に回転自在に連結される各クランク部材22とが互いに回り対偶をなす。また、クランク部材22と、当該クランク部材22に回転自在に連結される連接ロッド23とが互いに回り対偶をなす。更に、慣性質量体24は、連接ロッド23に回転自在に連結されることで当該連接ロッド23と回り対偶をなし、ドリブン部材15により回転自在に支持されることで、当該ドリブン部材15と回り対偶をなす。すなわち、ドリブン部材15、クランク部材22、連接ロッド23および慣性質量体24は、ドリブン部材15を固定節とする4節回転連鎖機構を構成する。
【0029】
また、
図2に示すように、ドリブン部材15の回転中心RCからドリブン部材15とクランク部材22(プレート部材220)とを連結する第1連結軸A1の中心までの長さ(回転中心RCと第1連結軸A1との軸間距離)を“L1”とし、第1連結軸A1の中心からクランク部材22(プレート部材220)と連接ロッド23とを連結する第2連結軸A2の中心までの長さ(第1連結軸A1と第2連結軸A2との軸間距離)を“L2”とし、第2連結軸A2の中心から連接ロッド23と慣性質量体24とを連結する第3連結軸A3の中心までの長さ(第2連結軸A2と第3連結軸A3との軸間距離)を“L3”とし、第3連結軸A3の中心から回転中心RCまでの長さ(第3連結軸A3と回転中心RCとの軸間距離)を“L4”としたときに、ドリブン部材15、クランク部材22、連接ロッド23および慣性質量体24は、L1+L2>L3+L4という関係を満たすように構成される。
【0030】
更に、連接ロッド23は、第2連結軸A2と第3連結軸A3との軸間距離L3が、軸間距離L1,L2およびL4よりも短く、かつクランク部材22、連接ロッド23および慣性質量体24の動作に支障のない範囲で、できるだけ短くなるように構成される。また、第1リンクとしてのドリブン部材15は、回転中心RCと第1連結軸A1との軸間距離L1が、軸間距離L2,L3およびL4よりも長くなるように構成される。これにより、本実施形態の振動減衰装置20では、L1>L4>L2>L3という関係が成立し、ドリブン部材15、各クランク部材22、各連接ロッド23および慣性質量体24は、最短リンクである連接ロッド23と対向するドリブン部材15を固定節とする両てこ機構を構成する。加えて、本実施形態の振動減衰装置20では、ドリブン部材15とクランク部材22とを連結する第1連結軸A1の中心からクランク部材22の重心Gまでの長さを“Lg”としたときに、Lg=L2という関係が成立する。
【0031】
また、振動減衰装置20の「平衡状態(釣り合い状態)」は、振動減衰装置20の構成要素に作用する遠心力の総和と、振動減衰装置20の各節点(連結軸A1,A2およびA3の中心並びに回転中心RC)に作用する力との合力がゼロになる状態である。振動減衰装置20の平衡状態では、
図2に示すように、クランク部材22と連接ロッド23とを連結する第2連結軸A2の中心と、当該連接ロッド23と慣性質量体24とを連結する第3連結軸A3の中心と、ドリブン部材15の回転中心RCとが一直線上に位置し、慣性質量体24が、その揺動範囲の中央に位置する。更に、本実施形態の振動減衰装置20は、第2連結軸A2の中心、第3連結軸A3の中心および回転中心RCが一直線上に位置する平衡状態で、第1連結軸A1の中心から第2連結軸A2の中心に向かう方向と、第2連結軸A2の中心から回転中心RCに向かう方向とがなす角度を“α”としたときに(
図2参照)、60°≦α≦120°、より好ましくは70°≦α≦90°を満たすように構成される。
【0032】
上記ダンパ装置10および振動減衰装置20を含む発進装置1では、ロックアップクラッチ8によりロックアップが解除されている際、
図1からわかるように、原動機としてのエンジンEGからのトルク(動力)が、フロントカバー3、ポンプインペラ4、タービンランナ5、ダンパハブ7という経路を介して変速機TMの入力軸ISへと伝達される。また、ロックアップクラッチ8によりロックアップが実行される際には、
図1からわかるように、エンジンEGからのトルク(動力)が、フロントカバー3、ロックアップクラッチ8(ロックアップピストン80)、ドライブ部材11、スプリングSP、ドリブン部材15、ダンパハブ7という経路を介して変速機TMの入力軸ISへと伝達される。
【0033】
ロックアップクラッチ8によりロックアップが実行されている際、エンジンEGの回転に伴ってロックアップクラッチ8によりフロントカバー3に連結されたドライブ部材11が回転すると、ドライブ部材11のスプリング当接部が対応するスプリングSPの一端を押圧し、各スプリングSPの他端が対応するドリブン部材15のスプリング当接部を押圧する。これにより、フロントカバー3に伝達されるエンジンEGからのトルクが変速機TMの入力軸ISへと伝達されると共に、当該エンジンEGからのトルクの変動が主にダンパ装置10のスプリングSPにより減衰(吸収)される。
【0034】
更に、発進装置1では、ロックアップの実行に伴ってロックアップクラッチ8によりフロントカバー3に連結されたダンパ装置10がフロントカバー3と共に回転すると、ダンパ装置10のドリブン部材15も発進装置1の軸心周りにフロントカバー3と同方向に回転する。そして、ドリブン部材15の回転に伴い、振動減衰装置20を構成する各クランク部材22、各連接ロッド23および慣性質量体24がドリブン部材15に対して揺動し、それにより、振動減衰装置20によってもエンジンEGからドリブン部材15に伝達される振動が減衰されることになる。すなわち、振動減衰装置20は、各クランク部材22や慣性質量体24の揺動の次数(振動次数q)がエンジンEGからドリブン部材15に伝達される振動の次数(エンジンEGが例えば3気筒エンジンである場合、1.5次、エンジンEGが例えば4気筒エンジンである場合、2次)に一致するように構成され、エンジンEG(ドリブン部材15)の回転数に拘わらず、エンジンEGからドリブン部材15に伝達される振動を減衰する。これにより、ダンパ装置10の重量増加を抑制しつつ、当該ダンパ装置10と振動減衰装置20との双方により振動を極めて良好に減衰することが可能となる。
【0035】
次に、振動減衰装置20の動作について詳細に説明する。
【0036】
上述のように、振動減衰装置20を構成するドリブン部材15、各クランク部材22、各連接ロッド23および慣性質量体24は、L1+L2>L3+L4という関係を満たす4節回転連鎖機構すなわち両てこ機構を構成する。従って、
図5に示すように、ドリブン部材15が回転中心RCの周りの一方向(例えば、
図5における反時計方向)に回転すると、各クランク部材22は、
図5および
図6(a)に示すように、慣性質量体24の慣性モーメント(回りにくさ)により、平衡状態での位置(
図6(a)における一点鎖線参照)から第1連結軸A1の周りにドリブン部材15とは逆方向(例えば、
図5および
図6(a)における時計方向)に回転する。更に、各クランク部材22の運動が第2連結軸A2や連接ロッド23を介して慣性質量体24に伝達されることで、当該慣性質量体24は、平衡状態での位置すなわち揺動範囲の中央から回転中心RCの周りにドリブン部材15とは逆方向(クランク部材22と同方向すなわち図中時計方向)に回転する。
【0037】
また、ドリブン部材15が回転することで、各クランク部材22(重心G)には、
図7に示すように、遠心力Fcが作用する。当該遠心力Fcの第1連結軸A1の中心からクランク部材22の重心Gに向かう方向と直交する方向の分力(=Fc・sinφ)は、クランク部材22(振動減衰装置20)を平衡状態での位置に戻そうとする復元力Frとなり、各クランク部材22に作用する復元力Frは、第2連結軸A2や連接ロッド23を介して慣性質量体24に伝達される。ただし、“φ”は、クランク部材22に作用する遠心力Fcの方向と、第1連結軸A1の中心からクランク部材22の重心G(第2連結軸A2の中心)に向かう方向とがなす角度である。また、
図7において、“m”は、クランク部材22の重量を示し、“ω”は、ドリブン部材15の回転角速度を示す(
図9においても同様)。
【0038】
各クランク部材22に作用する復元力Frは、平衡状態での位置から第1連結軸A1の周りの一方向(
図6(a)における時計方向)に回転した折り返し位置(
図6(a)における実線参照)、すなわちエンジンEGからドリブン部材15に伝達される振動の振幅(振動レベル)に応じて定まる折り返し位置で、各クランク部材22および慣性質量体24をそれまでの回転方向に回転させようとする力(慣性モーメント)に打ち勝つようになる。これにより、各クランク部材22は、第1連結軸A1の周りにそれまでとは逆方向に回転し、折り返し位置から
図6(b)に示す平衡状態での位置へと戻る。また、慣性質量体24は、各クランク部材22に連動して回転中心RCの周りにそれまでとは逆方向に回転し、クランク部材22の振れ角(揺動範囲)に応じて定まる揺動範囲の一端から
図6(b)に示す平衡状態での位置(揺動範囲の中央)へと戻る。
【0039】
更に、
図8に示すように、ドライブ部材11等を介して伝達されるエンジンEGからの振動によりドリブン部材15が回転中心RCの周りの他方向(例えば、
図8における時計方向)に回転すると、各クランク部材22は、
図6(c)および
図8に示すように、慣性質量体24の慣性モーメント(回りにくさ)により、平衡状態での位置(
図6(c)における一点鎖線参照)から第1連結軸A1の周りにドリブン部材15と同方向(例えば、
図6(c)および
図8における時計方向)に回転する。この際、振動減衰装置20がL1+L2>L3+L4という関係を満たすように構成されていることから、各クランク部材22の運動が連接ロッド23を介して慣性質量体24に伝達されることで、当該慣性質量体24は、
図6(c)および
図8に示すように、平衡状態での位置(揺動範囲の中央)からドリブン部材15の回転中心RCの周りにドリブン部材15およびクランク部材22とは逆方向(例えば、
図6(c)および
図8における反時計方向)に回転する。
【0040】
この場合も、各クランク部材22(重心G)には、遠心力Fcが作用し、各クランク部材22に作用する遠心力Fcの分力すなわち復元力Frは、第2連結軸A2や連接ロッド23を介して慣性質量体24に伝達される。そして、各クランク部材22に作用する復元力Frは、平衡状態での位置から第1連結軸A1の周りの上記一方向(
図6(c)における時計方向)に回転した折り返し位置(
図6(c)における実線参照)、すなわちエンジンEGからドリブン部材15に伝達される振動の振幅(振動レベル)に応じて定まる折り返し位置で、各クランク部材22および慣性質量体24をそれまでの回転方向に回転させようとする力(慣性モーメント)に打ち勝つようになる。これにより、各クランク部材22は、第1連結軸A1の周りにそれまでとは逆方向に回転し、折り返し位置から
図6(b)に示す平衡状態での位置へと戻る。また、慣性質量体24は、各クランク部材22に連動して回転中心RCの周りにそれまでとは逆方向に回転し、クランク部材22の振れ角(揺動範囲)に応じて定まる揺動範囲の他端から
図6(b)に示す平衡状態での位置(揺動範囲の中央)へと戻る。
【0041】
このように、ドリブン部材15が一方向に回転する際、振動減衰装置20の復元力発生部材としての各クランク部材22は、平衡状態での位置と、エンジンEGからドリブン部材15に伝達される振動の振幅(振動レベル)に応じて定まる折り返し位置との間で第1連結軸A1の周りに揺動(往復回転運動)し、慣性質量体24は、クランク部材22の振れ角(揺動範囲)に応じて定まる平衡状態での位置を中心とした揺動範囲内で回転中心RCの周りにドリブン部材15と逆方向に揺動(往復回転運動)する。すなわち、各クランク部材22が平衡状態での位置から折り返し位置まで移動すると共に当該折り返し位置から平衡状態での位置に戻る動作を2回行う間に、慣性質量体24は、平衡状態での位置から揺動範囲の一端まで移動した後、平衡状態での位置に戻り、更に揺動範囲の他端まで移動した後、平衡状態での位置に戻る。これにより、揺動する慣性質量体24から、エンジンEGからドライブ部材11に伝達される振動とは逆位相の振動を各連接ロッド23および各クランク部材22を介してドリブン部材15に付与し、当該ドリブン部材15の振動を減衰することが可能となる。
【0042】
ここで、L1+L2>L3+L4という関係を満たさない振動減衰装置、すなわち上記特許文献1に記載されたダンパ装置のようにL1+L2<L3+L4という関係を満たす比較例の振動減衰装置(
図9参照)において、クランク部材22は、
図10(a),(b)および(c)に示すように、慣性質量体24と同様に、平衡状態での位置を中心とする揺動範囲内で第1連結軸A1の周りにドリブン部材15とは常に逆方向に揺動(往復回転運動)する。更に、比較例の振動減衰装置では、
図10(b)に示す平衡状態において、クランク部材22に作用する遠心力の第1連結軸A1の中心から当該クランク部材22の重心Gに向かう方向と直交する方向の分力がゼロになる。すなわち、比較例の振動減衰装置において、平衡状態での位置を中心とした揺動範囲内で揺動するクランク部材22に作用する復元力Frは、
図11において破線で示すように、平衡状態での位置(
図11における振れ角θ=0°)でゼロ(最小)になり、振れ角θが大きくなるにつれて(揺動範囲の端部に近づくにつれて)遠心力Fcに対する復元力Frの比(Fr/Fc)が増加していく。
【0043】
これに対して、L1+L2>L3+L4という関係を満たす振動減衰装置20では、
図6(b)に示す平衡状態において、クランク部材22に作用する遠心力の第1連結軸A1の中心から当該クランク部材22の重心Gに向かう方向と直交する方向の分力がゼロよりも大きくなる。すなわち、振動減衰装置20において、平衡状態での位置と上記折り返し位置との間で揺動するクランク部材22に作用する復元力Frは、
図11において実線で示すように、平衡状態での位置(
図11における振れ角θ=0°)で最大となり、振れ角θが大きくなるにつれて低下していく。言い換えれば、比較例の振動減衰装置では、各クランク部材22や慣性質量体24がそれぞれの揺動範囲内で揺動する間に平衡状態になると、各クランク部材22に復元力が一瞬作用しなくなるのに対し、振動減衰装置20では、各クランク部材22や慣性質量体24がそれぞれの揺動範囲内で揺動する間、各クランク部材22に対し、慣性質量体24を平衡状態での位置すなわち揺動範囲の中央に戻すための復元力が常時作用する。
【0044】
また、振動減衰装置20では、上述のように、各クランク部材22が平衡状態での位置から折り返し位置まで移動すると共に当該折り返し位置から平衡状態での位置に戻る動作を2回行う間、慣性質量体24は、平衡状態での位置から揺動範囲の一端まで移動した後、平衡状態での位置に戻り、更に揺動範囲の他端まで移動した後、平衡状態での位置に戻る。従って、ドリブン部材15に伝達される振動に応じたクランク部材22の第1連結軸A1周りの振れ角θすなわち揺動範囲は、慣性質量体24に比べてより小さくなる。すなわち、振動減衰装置20において、連接ロッド23および慣性質量体24の運動はトグル機構を構成する2つのリンクの運動と同様のものとなり、それにより、
図6からわかるように、慣性質量体24に比べてクランク部材22の揺動が大幅に制限される。
【0045】
この結果、振動減衰装置20では、
図11に示すように、クランク部材22の揺動範囲が平衡状態での位置(θ=0°)から比較的小さい角度だけ振れた位置までの狭い範囲となり、遠心力Fcの分力すなわち復元力Frは、慣性質量体24が揺動範囲の中央に位置する平衡状態で最大となる。従って、平衡状態でクランク部材22に作用する遠心力Fcの第1連結軸A1の中心から当該クランク部材22の重心Gに向かう方向と直交する方向の分力がゼロになる場合(比較例の振動減衰装置)に比べて、クランク部材22の揺動範囲の全体で、当該クランク部材22に作用する遠心力Fcが同一であるときの復元力Fr(比Fr/Fc)をより大きくすることが可能となる。具体的には、振動減衰装置20では、
図7に示す角度φを90°により近づけて、クランク部材22の重心Gに作用する復元力Fr(=Fc・sinφ)の方向を遠心力Fcの方向により近づけることができる。特に、
図7に示すような平衡状態に近い状態では、復元力Frの方向が遠心力Fcの方向に非常に近くなる(角度φが90°により近くなる)。そして、クランク部材22(および慣性質量体24)に対して、より大きな復元力Frを付与し得るということは、振動減衰装置20が高い捩り剛性を有しているということを意味する。従って、振動減衰装置20では、クランク部材22の重量の増加を抑制しつつ、等価剛性Kをより大きくすることが可能となる。
【0046】
また、慣性質量体24が平衡状態での位置を中心とする揺動範囲内で回転中心RCの周りに揺動するのに対して、クランク部材22は、平衡状態での位置と、当該平衡状態での位置から第1連結軸A1の周りの一方向に回転した折り返し位置との間で第1連結軸A1の周りに揺動する。すなわち、振動減衰装置20では、
図6(a),(b)および(c)に示すように、慣性質量体24が回転中心RCの周りに常にドリブン部材15と逆方向に(逆位相で)回転するのに対し、クランク部材22は、第1連結軸A1の周りにドリブン部材15と逆方向に(逆位相で)回転するだけではなく、ドリブン部材15と同方向にも(同位相で)回転することになる。これにより、振動減衰装置20の等価質量Mに対するクランク部材22の重量の影響を非常に小さくすることができる。
【0047】
従って、振動減衰装置20では、等価剛性Kおよび等価質量Mすなわち振動次数q=√(K/M)の設定の自由度をより向上させることが可能となり、クランク部材22ひいては装置全体の重量の増加や大型化を抑制しつつ、振動減衰性能を極めて良好に向上させることができる。なお、上記特許文献1に記載されたダンパ装置のようにL1+L2<L3+L4という関係を満たす振動減衰装置では、
図10(a),(b)および(c)に示すように、クランク部材22が慣性質量体24と同様に第1連結軸A1の周りにドリブン部材15とは常に逆方向に回転する。従って、上記特許文献1に記載されたダンパ装置では、クランク部材22の重量が等価剛性Kおよび等価質量Mの双方に大きく影響することから、本実施形態の振動減衰装置20のように振動次数qの設定の自由度を向上させることが容易ではない。
【0048】
また、本発明者らの解析によれば、振動減衰装置20の等価剛性Kは、軸間距離L3およびL4の和に対する軸間距離L3の比率ρ=L3/(L3+L4)の二乗値に反比例することが判明している。従って、上述のように、第2連結軸A2と第3連結軸A3との軸間距離L3を、回転中心RCと第1連結軸A1との軸間距離L1、第1連結軸A1と第2連結軸A2との軸間距離L2、第3連結軸A3と回転中心RCとの軸間距離L4よりも短くすることで、クランク部材22の重量の増加を抑制しつつ、等価剛性Kをより大きくすることが可能となる。加えて、軸間距離L3をより短くすることで、クランク部材22の第1連結軸A1周りの振れ角をより小さくすることができる。これにより、等価質量Mに対するクランク部材22の重量の影響をより一層小さくすると共に、クランク部材22の第1連結軸A1とは反対側の端部が回転中心RCに向けて移動するようにして(あるいは径方向外側への突出量をできるだけ減らして)装置全体のコンパクト化を図ることが可能となる。
【0049】
更に、振動減衰装置20では、回転中心RCと第1連結軸A1との軸間距離L1が軸間距離L2,L3およびL4よりも長く定められている。これにより、クランク部材22をドリブン部材15の回転中心RCから離間させて当該クランク部材22の重心G(第2連結軸A2)をより径方向外側に位置させることができるので、ダンパ装置10のスプリングSPの配置スペースを充分に確保すると共に、クランク部材22の重量を増加させることなく当該クランク部材22に作用する遠心力Fcの分力すなわち復元力Frをより大きくすることが可能となる。
【0050】
また、L1+L2>L3+L4という関係を満たしつつ、軸間距離L1を最長にすることで、第1連結軸A1の中心を通ると共に回転中心RCを中心とする円周に沿うようにクランク部材22を配置すると共に、クランク部材22の第1連結軸A1周りの振れ角を小さくすることができる。これにより、
図12からわかるように、上記特許文献1に記載されたダンパ装置のようにL1+L2<L3+L4という関係を満たす振動減衰装置(
図13参照)に比べて、作動油で満たされる流体伝動室9内でクランク部材22に作用する遠心油圧による力の上記復元力Frに対する影響を小さくすると共に、クランク部材22が揺動する際の遠心油圧による力の変動を小さくすることが可能となる。加えて、上記実施形態のように、クランク部材22を円弧状の平面形状を有する2枚のプレート部材220により構成することで、当該クランク部材22に作用する遠心油圧による力の復元力Frに対する影響を良好に小さくすることが可能となる。
【0051】
そして、L1>L4>L2>L3を満たすように振動減衰装置20を構成することで、等価剛性Kを実用上良好に確保すると共に、等価質量Mに対するクランク部材22の重量の影響を実用上無視し得る程度まで小さくすることができる。この結果、振動減衰装置20の振動次数qを減衰すべき振動の次数に容易に一致させて(より近づけて)、当該振動を極めて良好に減衰することが可能となる。なお、各クランク部材22の最大振れ角(揺動限界)や慣性質量体24の最大揺動範囲は、軸間距離L1,L2,L3,L4から定まることから、振動減衰装置20の軸間距離L1,L2,L3,L4は、ドリブン部材15に伝達される振動を減衰不能にならないように、当該ドリブン部材15に伝達される振動の振幅(振動レベル)を考慮して定められるとよい。
【0052】
また、振動減衰装置20は、第2連結軸A2の中心、第3連結軸A3の中心およびドライブ部材15の回転中心RCが一直線上に位置する平衡状態で、第1連結軸A1の中心から第2連結軸A2の中心に向かう方向と、第2連結軸A2の中心から回転中心RCに向かう方向とがなす角度を“α”としたときに、60°≦α≦120°、より好ましくは70°≦α≦90°を満たすように構成される。これにより、ドリブン部材15の回転数が低いときに、慣性質量体24が揺動範囲の一側に大きく振れて当該一側の揺動限界(死点)に達する一方で他側に小さく振れるのを抑制することができる。この結果、ドリブン部材15の回転数が比較的低いうちから、慣性質量体24を平衡状態での位置(
図6(b)参照)に関して対称に揺動させて振動減衰装置20の振動減衰性能をより向上させることが可能となる。
【0053】
更に、上記実施形態のように、環状の慣性質量体24をドリブン部材15により回転自在により支持(調心)することで、振動減衰装置20のコンパクト化を図ると共に、クランク部材22が揺動する際に、慣性質量体24をドリブン部材15(回転要素)の回転中心RC周りにスムースに揺動させることが可能となる。また、慣性質量体24を環状に形成することで、当該慣性質量体24に作用する遠心力および遠心液圧の慣性質量体24の揺動に対する影響を無くすことができる。加えて、環状の慣性質量体24をドリブン部材15の径方向外側に配置することで、慣性質量体24の重量の増加を抑制しつつ当該慣性質量体24の慣性モーメントを大きくすると共に、振動減衰装置20の軸長の増加を抑制することが可能となる。
【0054】
ところで、上述のような振動減衰装置20では、慣性質量体24の振れ角(揺動範囲)が大きくなると、振動減衰装置20によって本来減衰されるべき振動の次数(以下、「目標次数」という)qtagと、当該振動減衰装置20により実際に減衰される振動の次数(以下、「有効次数」という)との間にズレを生じることが判明している。また、振動減衰装置20では、平衡状態での位置から慣性質量体24を回転中心周りにある初期角度(慣性質量体24の回転中心周りの振れ角に相当)だけ回転させた状態を初期状態として、ドリブン部材15に振動成分を含まないトルクを付与して当該ドリブン部材15を一定の回転数で回転させた場合、慣性質量体24等は、初期角度に応じた周波数で揺動する。
【0055】
これらを踏まえて、本発明者らは、軸間距離L3およびL4の和に対する軸間距離L3の比率ρ=L3/(L3+L4)の調整により上述のような次数ズレを抑制すべく、互いに異なる比率ρを有する複数の振動減衰装置20のモデルを用意し、各モデルについて、複数の初期角度(振れ角)ごとにドリブン部材15に振動成分を含まないトルクを付与し当該ドリブン部材15を一定の回転数(例えば、1000rpm)で回転させるシミュレーションを行った。シミュレーションに用いられた複数のモデルは、何れも4気筒エンジンにおける目標次数qtag=2の振動を減衰するように作成されたLg=L2という関係を満たすものである。このようなシミュレーションを行い、本発明者らは、各モデル(比率ρ)について、慣性質量体24の揺動の周波数と理論値(目標次数qtag=2かつ回転数が1000rpmである場合、33.3Hz)との差分(ズレ量)に基づいて、慣性質量体24の振れ角(初期角度)ごとの有効次数を求めた。
【0056】
図14に、複数の振動減衰装置20のモデル(比率ρ)における慣性質量体24の回転中心RC周りの振れ角と有効次数との関係についての解析結果を示す。同図に示すように、比率ρ=0.05のモデルでは、慣性質量体24の回転中心RC周りの振れ角が極小さい段階から次数ズレを生じ、有効次数の目標次数qtagからのズレ量は、振れ角が最大振れ角に達する前に許容範囲から外れてしまった。同様に、比率ρ=0.25のモデルにおいても、慣性質量体24の回転中心RC周りの振れ角が比較的小さい段階から次数ズレを生じ、有効次数の目標次数qtagからのズレ量は、振れ角が最大振れ角に達する前に許容範囲から外れてしまった。
【0057】
一方、比率ρ=0.20のモデルでは、慣性質量体24の回転中心RC周りの振れ角が大きくなると次数ズレを生じるものの、揺動範囲(最大振れ角間)の比較的広い範囲で有効次数の目標次数qtagからのズレ量が許容範囲内に含まれた。また、比率ρ=0.10および0.15のモデルでは、振れ角の全範囲内で有効次数の目標次数qtagからのズレ量が許容範囲内に含まれた。更に、比率ρ=0.12のモデルでは、振れ角の全範囲内で有効次数が目標次数qtagに概ね一致した。従って、振動減衰装置20を0.1≦ρ=L3/(L3+L4)≦0.2という関係、より好ましくは0.1≦ρ≦0.15という関係を満たすように構成すれば、慣性質量体24の回転中心RC周りの振れ角が大きくなったときの有効次数の変化(次数ズレ)をより小さくして、振動減衰装置20の振動減衰性能をより良好に向上させ得ることが理解されよう。
【0058】
なお、上記振動減衰装置20のように、第1連結軸A1の中心からクランク部材22の重心Gまでの長さLgを第1連結軸A1と第2連結軸A2との軸間距離L2に一致させることで、第1連結軸A1の支持部(軸受部)に作用する荷重(負荷)をより小さくすることが可能となる。ただし、長さLgと軸間距離L2とは必ずしも一致している必要はない。すなわち、振動減衰装置20は、
図15に示すように、Lg>L2という関係を満たすように構成されてもよい。これにより、Lg=L2という関係を満たす場合に比べて第1連結軸A1の支持部(軸受部)に作用する荷重(負荷)が増加することになるが、てこの作用によってクランク部材22に作用する復元力Frをより一層大きくすることが可能となる。また、
図15に示す例では、クランク部材22の重心Gが第1および第2連結軸A1,A2の中心を通る直線上に位置しているが、必ずしも重心Gが第1および第2連結軸A1,A2の中心を通る直線上に位置している必要はない。このように第2連結軸A2の中心とクランク部材22の重心Gとが同軸に延在しない場合であっても、平衡状態でクランク部材22の重心Gに作用する復元力Frがゼロよりも大きくなれば、クランク部材22に作用する遠心力の第1連結軸A1の中心から第2連結軸A2の中心に向かう方向と直交する方向の分力もゼロよりも大きくなることはいうまでもない。
【0059】
また、上記振動減衰装置20において、環状の慣性質量体24は、互いに同一の諸元(寸法、重量等)を有する複数(例えば4個)の質量体で置き換えられてもよい。この場合、各質量体は、平衡状態で周方向に間隔をおいて(等間隔に)並ぶと共に回転中心RCの周りに揺動するようにクランク部材22(2枚のプレート部材220)および2本の連接ロッド23を介してドリブン部材15に連結される例えば円弧状の平面形状を有する金属板により構成されてもよい。更に、ドリブン部材15の外周部には、各質量体に作用する遠心力(遠心油圧)を受けながら各質量体を回転中心RC周りに揺動するようにガイドするガイド部が設けられてもよい。このような複数の質量体を含む振動減衰装置20においても、振動次数qの設定の自由度を向上させることが可能となり、クランク部材22ひいては装置全体の重量の増加や大型化を抑制しつつ、振動減衰性能をより向上させることができる。
【0060】
更に、振動減衰装置20は、上記ダンパ装置10のドライブ部材(入力要素)11に連結されてもよい。また、振動減衰装置20は、クランク部材22を揺動自在に支持して当該クランク部材22と回り対偶をなすと共に慣性質量体24と回り待遇をなす専用の支持部材(第1リンク)を含むものであってもよい。すなわち、クランク部材22は、第1リンクとしての専用の支持部材を介して間接的に回転要素に連結されてもよく、この場合、振動減衰装置20の支持部材は、振動の減衰対象となる例えばダンパ装置10のドライブ部材11あるいはドリブン部材15といった回転要素に同軸かつ一体に回転するように連結されればよい。このように構成される振動減衰装置20によっても、回転要素の振動を良好に減衰することが可能となる。
【0061】
また、振動減衰装置20は、
図16に示すダンパ装置10Bに適用されてもよい。
図16のダンパ装置10Bは、回転要素としてドライブ部材(入力要素)11、中間部材12(中間要素)およびドリブン部材15(出力要素)を含むと共に、トルク伝達要素としてドライブ部材11と中間部材12との間に配置される第1スプリングSP1および中間部材12とドリブン部材15との間に配置される第2スプリングSP2を含むものである。この場合、振動減衰装置20は、図示するようにダンパ装置10Bの中間部材12に連結されてもよく、ドライブ部材11あるいはドリブン部材15に連結されてもよい。
【0062】
更に、振動減衰装置20は、
図17に示すダンパ装置10Cに適用されてもよい。
図17のダンパ装置10Cは、回転要素としてドライブ部材(入力要素)11、第1中間部材(第1中間要素)121、第2中間部材(第2中間要素)122、およびドリブン部材(出力要素)15を含むと共に、トルク伝達要素としてドライブ部材11と第1中間部材121との間に配置される第1スプリングSP1、第1中間部材121と第2中間部材122との間に配置される第2スプリングSP2および第2中間部材122とドリブン部材15との間に配置される第3スプリングSP3を含む。この場合、振動減衰装置20は、図示するようにダンパ装置10Cの第1中間部材121に連結されてもよく、ドライブ部材11、第2中間部材122あるいはドリブン部材15に連結されてもよい。何れにしても、ダンパ装置10,10B,10Cの回転要素に振動減衰装置20を連結することで、ダンパ装置10〜10Cの重量増加を抑制しつつ、当該ダンパ装置10〜10Cと振動減衰装置20との双方により振動を極めて良好に減衰することが可能となる。
【0063】
以上説明したように、本開示の振動減衰装置は、エンジンからのトルクが伝達される回転要素(15)の回転中心(RC)の周りに該回転要素(15)と一体に回転する支持部材(15)と、連結軸(A1)を介して前記支持部材(15)に連結されると共に該支持部材(15)の回転に伴って前記連結軸(A1)の周りに揺動可能な復元力発生部材(22)と、前記復元力発生部材(22)を介して前記支持部材(15)に連結されると共に該支持部材(15)の回転に伴って該復元力発生部材(22)に連動して前記回転中心(RC)の周りに揺動する慣性質量体(24)とを含み、前記回転要素(15)の振動を減衰する振動減衰装置(20)において、前記支持部材が回転する際に、前記復元力発生部材(22)には、該支持部材(15)の回転に伴って該復元力発生部材(22)に作用する遠心力の前記連結軸(A1)の中心から前記復元力発生部材(22)の重心(G)に向かう方向と直交する方向の分力が前記慣性質量体(24)を揺動範囲の中央に戻すための復元力として常時作用し、前記分力は、前記慣性質量体(24)が前記揺動範囲の前記中央に位置するときに最大となるものである。
【0064】
この振動減衰装置では、支持部材の回転に伴って復元力発生部材に作用する遠心力の連結軸の中心から当該復元力発生部材の重心に向かう方向と直交する方向の分力が、慣性質量体を揺動範囲の中央に戻すための復元力(モーメント)として作用する。そして、当該分力は、慣性質量体が揺動範囲の中央に位置するときに最大となる。これにより、慣性質量体が揺動範囲の中央に位置するときに復元力発生部材に作用する遠心力の連結軸の中心から当該復元力発生部材の重心に向かう方向と直交する方向の分力がゼロになる場合に比べて、復元力発生部材の揺動範囲の全体で、当該復元力発生部材に作用する遠心力が同一であるときの復元力をより大きくすることができる。従って、この振動減衰装置では、復元力発生部材の重量の増加を抑制しつつ、振動減衰装置の等価剛性をより大きくすることが可能となり、等価剛性および等価質量すなわち振動次数の設定の自由度を向上させることができる。この結果、復元力発生部材ひいては装置全体の重量の増加や大型化を抑制しつつ、振動減衰性能をより向上させることが可能となる。
【0065】
また、前記復元力発生部材(22)は、前記慣性質量体(24)が前記揺動範囲の前記中央に位置する平衡状態での位置と、該平衡状態での位置から前記連結軸(A1)の周りの一方向に回転した折り返し位置との間で該連結軸(A1)の周りに揺動してもよい。すなわち、かかる振動減衰装置では、慣性質量体が回転中心の周りに常に回転要素(支持部材)と逆方向に(逆位相で)回転するのに対し、復元力発生部材は、連結軸の周りに回転要素等と逆方向に(逆位相で)回転するだけではなく、当該回転要素等と同方向にも(同位相で)回転することになる。これにより、振動減衰装置の等価質量に対する復元力発生部材の重量の影響をより小さくすることが可能となる。
【0066】
更に、前記復元力発生部材(22)が、前記平衡状態での位置から前記折り返し位置に移動すると共に該折り返し位置から前記平衡状態での位置に戻る動作を2回行う間に、前記慣性質量体(24)は、前記平衡状態での位置から前記揺動範囲の一端まで移動した後、前記平衡状態での位置に戻り、更に前記揺動範囲の他端まで移動した後、前記平衡状態での位置に戻ってもよい。これにより、復元力発生部材の連結軸周りの振れ角(揺動範囲)をより小さくし、揺動する復元力発生部材(および慣性質量体)に作用する復元力をより大きくすることが可能となる。
【0067】
また、前記振動減衰装置(20)は、第2連結軸(A2)を介して前記復元力発生部材(22)に回転自在に連結されると共に、第3連結軸(A3)を介して前記慣性質量体(24)に回転自在に連結される連接部材(23)を更に備えてもよく、前記回転要素(15)の前記回転中心(RC)と前記連結軸(A1)との軸間距離を“L1”とし、前記連結軸(A1)と前記第2連結軸(A2)との軸間距離を“L2”とし、前記第2連結軸(A2)と前記第3連結軸(A3)との軸間距離を“L3”とし、前記第3連結軸(A3)と前記回転中心(RC)との軸間距離を“L4”としたときに、L1+L2>L3+L4を満たしてもよい。
【0068】
かかる振動減衰装置において、支持部材、復元力発生部材、連接部材および慣性質量体は、支持部材(回転要素)を固定節とする4節回転連鎖機構を構成し、支持部材に対して揺動する復元力発生部材には、慣性質量体を揺動範囲の中央(平衡状態での位置)に戻すための復元力(モーメント)として作用する。そして、L1+L2>L3+L4という関係を満たすように振動減衰装置を構成することで、復元力発生部材に作用する遠心力の方向と、支持部材と復元力発生部材とを連結する連結軸の中心から復元力発生部材の重心に向かう方向とのなす角度を90°に近づけることができる。すなわち、この振動減衰装置では、復元力発生部材に作用する復元力(遠心力の分力)の方向を遠心力の方向により近づけることが可能となる。これにより、L1+L2>L3+L4という関係を満たさない場合に比べて、復元力発生部材に作用する遠心力が同一であるときの復元力をより大きくすることができるので、復元力発生部材の重量の増加を抑制しつつ、振動減衰装置の等価剛性をより大きくすることが可能となる。更に、L1+L2>L3+L4という関係が成立する場合、慣性質量体に比べて復元力発生部材の揺動が制限され(振れ角が小さくなり)、慣性質量体が回転中心の周りに常に回転要素(支持部材)と逆方向に(逆位相で)回転するのに対し、復元力発生部材は、第1連結軸の周りに回転要素と逆方向に(逆位相で)回転するだけではなく、当該回転要素と同方向にも(同位相で)回転することになる。これにより、振動減衰装置の等価質量に対する復元力発生部材の重量の影響を非常に小さくして、等価剛性および等価質量すなわち振動次数の設定の自由度をより向上させることができる。この結果、復元力発生部材ひいては装置全体の重量の増加や大型化を抑制しつつ、振動減衰性能を極めて良好に向上させることが可能となる。なお、本開示の振動減衰装置は、慣性質量体が揺動範囲の中央に位置する平衡状態で、支持部材の回転に伴って復元力発生部材に作用する遠心力の連結軸の中心から第2連結軸の中心に向かう方向と直交する方向の分力がゼロよりも大きくなるように構成されてもよい。
【0069】
また、前記軸間距離L3は、前記軸間距離L1、L2およびL4よりも短くてもよい。すなわち、上述のような振動減衰装置の等価剛性は、軸間距離L3およびL4の和に対する当該軸間距離L3の比(L3/(L3+L4))の二乗値に反比例する。従って、軸間距離L3を軸間距離L1,L2およびL4よりも短くすることで、復元力発生部材の重量の増加を抑制しつつ、等価剛性をより大きくすることが可能となる。加えて、軸間距離L3をより短くすることで、復元力発生部材の振れ角をより小さくすることができるので、等価質量に対する復元力発生部材の重量の影響をより一層小さくすると共に、装置全体のコンパクト化を図ることが可能となる。
【0070】
更に、前記軸間距離L1は、前記軸間距離L2、L3およびL4よりも長くてもよい。これにより、復元力発生部材を回転要素の回転中心から離間させて当該復元力発生部材の重心をより径方向外側に位置させることができるので、復元力発生部材に作用する遠心力の分力すなわち復元力をより大きくすることが可能となる。加えて、L1+L2>L3+L4という関係を満たしつつ軸間距離L1を最長にすることで、上記連結軸の中心を通ると共に回転要素の回転中心を中心とする円周に沿うように復元力発生部材を配置すると共に、復元力発生部材の振れ角を小さくすることができる。これにより、振動減衰装置が油中に配置される場合に、復元力発生部材に作用する遠心油圧による力の上記復元力に対する影響を小さくすると共に、復元力発生部材が揺動する際の遠心油圧による力の変動を小さくすることが可能となる。
【0071】
また、前記振動減衰装置(20)は、L1>L4>L2>L3を満たすように構成されてもよい。これにより、振動減衰装置の等価剛性を実用上良好に確保すると共に、振動減衰装置の等価質量に対する復元力発生部材の重量の影響を実用上無視し得る程度まで小さくすることが可能となる。
【0072】
更に、前記第2連結軸(A2)の中心、前記第3連結軸(A3)の中心および前記回転中心(RC)が一直線上に位置する状態で、前記第1連結軸(A1)の中心から前記第2連結軸(A2)の中心に向かう方向と、前記第2連結軸(A2)の中心から前記回転中心(RC)に向かう方向とがなす角度を“α”としたときに、前記振動減衰装置(20)は、60°≦α≦120°を満たすように構成されてもよい。これにより、回転要素の回転数が低いときに、慣性質量体が揺動範囲の一側に大きく振れて当該一側の揺動限界(死点)に達する一方で他側に小さく振れるのを抑制することができる。この結果、回転要素の回転数が比較的低いうちから、慣性質量体を揺動範囲の中央(平衡状態での位置)に関して対称に揺動させて振動減衰性能をより向上させることが可能となる。
【0073】
また、前記第1連結軸(A1)の中心から前記復元力発生部材(22)の重心(G)までの長さを“Lg”としたときに、前記振動減衰装置(20)は、Lg≧L2を満たすように構成されてもよい。これにより、てこの作用によって、復元力発生部材に作用する復元力をより一層大きくすることが可能となる。
【0074】
更に、前記振動減衰装置(20)は、Lg=L2かつ0.1≦L3/(L3+L4)≦0.2を満たすように構成されてもよい。これにより、慣性質量体の振れ角が大きくなるのに伴って振動減衰装置により減衰される振動の次数が変動するのを抑制し、当該振動減衰装置の振動減衰性能をより向上させることが可能となる。
【0075】
また、前記復元力発生部材(22)は、円弧状の平面形状を有する少なくとも1つのプレート部材(220)を含んでもよい。これにより、振動減衰装置が油中に配置される場合に、復元力発生部材に作用する遠心油圧による力の上記復元力に対する影響を良好に小さくすることが可能となる。
【0076】
更に、前記慣性質量体(24)は、前記支持部材(15)を包囲するように配置される環状部材であってもよく、前記支持部材(15)により回転自在に支持されてもよい。このように、慣性質量体を支持部材により回転自在に支持することで、振動減衰装置のコンパクト化を図ると共に、復元力発生部材が揺動する際に、慣性質量体を回転要素(支持部材)の回転中心周りにスムースに揺動させることが可能となる。また、慣性質量体を環状に形成することで、当該慣性質量体に作用する遠心力(および遠心液圧)の慣性質量体の揺動に対する影響を無くすことができる。加えて、環状の慣性質量体を支持部材の径方向外側に配置することで、慣性質量体の重量の増加を抑制しつつ当該慣性質量体の慣性モーメントを大きくすると共に、振動減衰装置の軸長の増加を抑制することが可能となる。
【0077】
また、前記支持部材(15)は、少なくとも入力要素(11)および出力要素(15)を含む複数の回転要素(11,12,121,122,15)と、前記入力要素(11)と前記出力要素(15)との間でトルクを伝達する弾性体(SP,SP1,SP2,SP3)とを有するダンパ装置(10,10B,10C)の何れかの回転要素と同軸かつ一体に回転してもよい。このようにダンパ装置の回転要素に振動減衰装置を連結することで、ダンパ装置の重量増加を抑制しつつ、当該ダンパ装置と振動減衰装置との双方により振動を極めて良好に減衰することが可能となる。
【0078】
更に、前記ダンパ装置(10,10B,10C)の前記入力要素(11)は、原動機(EG)の出力軸に作用的(直接的または間接的)に連結されてもよく、前記ダンパ装置(10,10B,10C)の前記出力要素(15)は、変速機(TM)の入力軸(Is)に作用的(直接的または間接的)に連結されてもよい。
【0079】
そして、本開示の発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。更に、上記発明を実施するための形態は、あくまで発明の概要の欄に記載された発明の具体的な一形態に過ぎず、発明の概要の欄に記載された発明の要素を限定するものではない。