(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6505011
(24)【登録日】2019年4月5日
(45)【発行日】2019年4月24日
(54)【発明の名称】耐火性製品およびその製品の使用
(51)【国際特許分類】
C04B 35/043 20060101AFI20190415BHJP
C04B 35/66 20060101ALI20190415BHJP
C04B 35/63 20060101ALI20190415BHJP
F27D 1/00 20060101ALI20190415BHJP
【FI】
C04B35/043
C04B35/66
C04B35/63
F27D1/00 N
【請求項の数】37
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-523454(P2015-523454)
(86)(22)【出願日】2013年5月23日
(65)【公表番号】特表2015-528790(P2015-528790A)
(43)【公表日】2015年10月1日
(86)【国際出願番号】EP2013060572
(87)【国際公開番号】WO2014016010
(87)【国際公開日】20140130
【審査請求日】2016年3月3日
(31)【優先権主張番号】102012015026.1
(32)【優先日】2012年7月27日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500261042
【氏名又は名称】レフラテクニック ホルディング ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】REFRATECHNIK Holding GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100173532
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 彰文
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】ヤンセン, ヘルゲ ドクトル
【審査官】
吉川 潤
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭49−005407(JP,A)
【文献】
特開昭58−125659(JP,A)
【文献】
特開平09−048675(JP,A)
【文献】
特開2008−074701(JP,A)
【文献】
特開昭48−005637(JP,A)
【文献】
特開平06−316466(JP,A)
【文献】
特開昭60−016874(JP,A)
【文献】
特開平02−044069(JP,A)
【文献】
特開平04−130066(JP,A)
【文献】
特開2011−148643(JP,A)
【文献】
米国特許第04497901(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0076838(US,A1)
【文献】
中国特許出願公開第101328070(CN,A)
【文献】
中国特許出願公開第101607826(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/04 − 35/043
C04B 35/20
C04B 35/626 − 35/66
F27D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重非鉄金属製錬システムを内張りするための耐火性バッチ用の乾燥物質混合物であって、
−少なくとも70質量%のフォルステライト成分を含有し、0.1mm超が100質量%に相当する粒子サイズを有する、30〜60質量%の粗粒状の粗オリビン物質と、
−1mm以下が100質量%に相当する粒子サイズを有し、90質量%超のMgO含有量を有する、粉末の形態での、35〜50質量%のマグネシアと、
−1mm以下が100質量%に相当する粒子サイズを有し、90質量%超のSiCの純度を有する、粉末の形態での、5〜20質量%のシリコンカーバイドと、
−0〜10質量%の乾燥粉砕されたシリカと、
−0〜10質量%の少なくとも1つの耐火性製品用の更なる添加物と、
−それぞれ残り100質量%までの少なくとも1つの他の固形物とを含有する乾燥物質混合物。
【請求項2】
次の混合比で、以下の前記固形物を含有する請求項1に記載の乾燥物質混合物。
粗オリビン物質:40〜50質量%
マグネシア :40〜45質量%
シリコンカーバイド :10〜15質量%
シリカ :0〜5質量%
耐火性添加物 :0〜5質量%
【請求項3】
前記乾燥物質混合物は、40〜60質量%の前記粗粒状の粗オリビン物質を含有する請求項1に記載の乾燥物質混合物。
【請求項4】
前記乾燥物質混合物は、前記粉末の形態での、40〜50質量%の前記マグネシアを含有する請求項1に記載の乾燥物質混合物。
【請求項5】
前記乾燥物質混合物は、前記粉末の形態での、10〜20質量%の前記シリコンカーバイドを含有する請求項1に記載の乾燥物質混合物。
【請求項6】
前記乾燥物質混合物は、0〜5質量%の前記乾燥粉砕されたシリカを含有する請求項1に記載の乾燥物質混合物。
【請求項7】
前記乾燥物質混合物は、0〜5質量%の前記更なる添加物を含有する請求項1に記載の乾燥物質混合物。
【請求項8】
前記添加物は、酸化防止剤である請求項1ないし7のいずれかに記載の乾燥物質混合物。
【請求項9】
前記乾燥粉砕されたシリカは、マイクロシリカ、発熱性シリカまたは沈降性シリカの少なくとも一つの形態である請求項1ないし8のいずれかに記載の乾燥物質混合物。
【請求項10】
前記粗オリビン物質は、天然の粗オリビン物質または合成的に製造されたフォルステライト材料またはその混合物であり、前記粗オリビン物質の前記粒子サイズは、0.1〜6mmのサイズ範囲に存在することを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の乾燥物質混合物。
【請求項11】
前記粗オリビン物質の前記粒子サイズは、0.1〜6mmに存在する請求項1ないし9のいずれかに記載の乾燥物質混合物。
【請求項12】
前記粗オリビン物質の前記粒子サイズは、1〜6mmに存在する請求項11に記載の乾燥物質混合物。
【請求項13】
前記粗オリビン物質の前記粒子サイズは、ガウスの粒子サイズ分布を有する請求項11または12に記載の乾燥物質混合物。
【請求項14】
前記マグネシアの粉末の粒子サイズ分布は、ガウスの粒子サイズ分布に一致することを特徴とする請求項1ないし13のいずれかに記載の乾燥物質混合物。
【請求項15】
前記マグネシアの前記MgO含有量は、95質量%超である請求項14に記載の乾燥物質混合物。
【請求項16】
前記乾燥物質混合物は、銅精錬転炉を内張りするための耐火性バッチの使用に適している請求項1ないし15のいずれかに記載の乾燥物質混合物。
【請求項17】
前記シリコンカーバイド粉末は、94質量%超のSiCの純度を有することを特徴とする請求項1ないし16のいずれかに記載の乾燥物質混合物。
【請求項18】
請求項1ないし17のいずれかに記載の乾燥物質混合物を含有する耐火性バッチであって、
当該バッチは、前記乾燥物質混合物に加えて、低アルカリのシリカゾルの形態での、乾燥固形物に換算して2〜10質量%の液状バインダーを含有することを特徴とするバッチ。
【請求項19】
前記バッチは、前記乾燥物質混合物から、90質量%超で形成されている請求項18に記載のバッチ。
【請求項20】
前記シリカゾルは、アモルファス二酸化シリコン粒子の水コロイド分散液であり、15〜50質量%のSiO2濃度を有し、前記二酸化シリコン粒子の比表面積が100〜400m2/gに存在することを特徴とする請求項18または19に記載のバッチ。
【請求項21】
前記シリカゾルは、前記乾燥固形物に換算して、3〜6質量%の割合で存在する請求項18ないし20のいずれかに記載のバッチ。
【請求項22】
前記バッチは、少なくとも2つの容器のパッケージ内に分割されて提供され、乾燥固形物が一方の前記容器に収容され、前記シリカゾルが他方の前記容器に収容されることを特徴とする請求項18ないし21のいずれかに記載のバッチ。
【請求項23】
前記バッチは、重非鉄金属製錬システムを内張りするための使用に適している請求項18ないし22のいずれかに記載のバッチ。
【請求項24】
前記バッチは、銅精錬転炉を内張りするための使用に適している請求項23に記載のバッチ。
【請求項25】
請求項18ないし24のいずれかに記載のバッチの使用であって、
前記バッチの成分は、水性化合物に混合された後、その混合物は、成形圧縮で成形レンガに圧縮され、その後、前記成形レンガは、乾燥されることを特徴とする使用。
【請求項26】
前記成形レンガは、2質量%の最大残存水分含有量に乾燥される請求項25に記載の使用。
【請求項27】
前記成形レンガは、2.6〜2.7kg/m3の見掛け密度を有する請求項25または26に記載の使用。
【請求項28】
前記成形レンガは、25〜50MPaの圧縮強度を有する請求項27に記載の使用。
【請求項29】
前記乾燥された成形レンガは、セラミック炉内で、酸化性雰囲気中セラミック様に焼成されることを特徴とする請求項25または26に記載の使用。
【請求項30】
前記乾燥された成形レンガは、1000〜1300℃の温度で焼成される請求項29に記載の使用。
【請求項31】
前記乾燥された成形レンガは、1150〜1250℃の温度で焼成される請求項30に記載の使用。
【請求項32】
前記乾燥された成形レンガは、4〜8時間の焼成持続時間で焼成される請求項29ないし31のいずれかに記載の使用。
【請求項33】
前記バッチの乾燥および乾燥された成分が、焼成時に、互いに全く反応しないか、あるいは僅かに反応するように、焼成条件が選択される請求項29ないし32のいずれかに記載の使用。
【請求項34】
前記焼成されたレンガは、2.55〜2.65kg/m3の見掛け密度を有する請求項29ないし33のいずれかに記載の使用。
【請求項35】
前記焼成されたレンガは、30〜55MPaの圧縮強度を有する請求項34に記載の使用。
【請求項36】
前記焼成されたレンガは、40〜50MPaの圧縮強度を有する請求項35に記載の使用。
【請求項37】
耐火性鋳造混合物または耐火性振動混合物を製造するための請求項18ないし24のいずれかに記載のバッチの使用であって、前記混合物の延性は、前記シリカゾルの水分がその目的のために十分でない場合、追加の水によって好適に調整される使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、そのままでファイヤライトスラグ(鉄ケイ酸塩スラグ)および硫酸塩による腐食に対して高い耐性を示し、かつ、溶融された重非鉄金属、特に銅溶融物に対して耐性を示す、未成形または成形バッチの形態での、ISO/R836、DIN51060に準ずる耐火性製品に関する。加えて、本発明は、特にバッチの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ファイヤライトスラグは、例えば黄銅鉱(CuFeS
2)から銅を製造する際に形成される。黄銅鉱は、焼成されることにより、硫化第一銅(Cu
2S)および鉄化合物(例えばFeSおよびFe
2O
3)を含有する、いわゆる銅マットを生成する。空気の供給と、例えば石英の形態でのSiO
2の添加とにより、溶融された銅マットを転炉内で処理する過程で、銅マットは、さらに粗銅に加工される。この過程において、主に、鉱物ファイヤライト(2FeO・SiO
2)および粗酸化第一銅(Cu
2O)を含有するファイヤライトスラグが生成される。
【0003】
現在、粗銅を製造するための転炉、例えばピアース−スミス転炉の焼成側は、主に、焼成されたマグネシア−クロマイト製品で内張りされている(例えばDE1471231A1)。しかしながら、これらの耐火性製品は、硫化物の酸化から生じる硫酸塩(例えば硫酸マグネシウムの形態)による腐食に対して十分な耐性を有していない。さらに、マグネシア−クロマイトレンガは、限定的なあるいは不十分な高温耐濡れ性しか有しておらず、高温重非鉄金属溶融物、特に銅溶融物による侵食に対して十分な耐性を有していない。
【0004】
また、マグネシア−クロマイトレンガは、他の非鉄金属(Ni、Pb、Sn、Znのような重非鉄金属)を生産するための溶融システムにおいても使用されるが、そこでも同様の種類の問題に悩まされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、重非鉄金属溶融物、特に銅溶融物に対して良好な耐濡れ性を有し、ファイヤライトスラグによる侵食に対する優れた耐性を示し、この耐火性の分野で従来から使用される耐火性製品よりも使用温度で、好適に硫酸塩の腐食に抵抗する耐火性製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この本発明の目的は、粗オリビン物質、マグネシア(MgO)およびシリコンカーバイド(SiC)の乾燥物質混合物と、シリカゾル(SiO
2)の形態での液状バインダーとから、主に(90
質量%超で)形成された耐火性バッチによって達成される。
【0007】
本発明によれば、市販されている天然の粗オリビン物質は、粒子として使用され、本発明によれば、可能な限り100
質量%、少なくとも70
質量%の割合で、鉱物フォルステライトを含有すべきである。残部は、鉱物ファイヤライトおよび/またはエンスタタイトおよび/またはモンティセライトおよび/またはメルウィナイトのようなその他の既知の不純物であってもよい。合成的に製造された純フォルステライト材料の単独、または、粗オリビン物質との組み合わせでの使用は、本発明の目的の範囲内である。以下、粗オリビン物質なる用語が使用される場合、それは合成フォルステライト材料とも関連する。
【0008】
使用される粗オリビン粒子の粒子サイズは、例えば0.1〜6mm、特に1〜6mmの中程度〜粗いサイズ範囲に存在し、粒子は、例えばガウスの粒子サイズ分布を有する。
【0009】
本発明に係る混合物中において、粗オリビン物質は、30〜60
質量%、特に40〜50
質量%の割合で使用される。
【0010】
マグネシア(MgO)は、例えば1mm以下が100
質量%に相当する粒子サイズを有する粉末の形態または粉体の形態で使用される。例として、溶融されたマグネシアおよび/または焼成されたマグネシア、および/または、合成的に重焼されたまたは腐食性のマグネシアは、マグネシアとして使用される。(本発明の文脈中において、「粉末」および「粉体」なる用語は、同一の意味を有する同義語として理解される)。
【0011】
マグネシアのMgO含有量は、好ましくは90
質量%超、特に95
質量%超であるべきである。残部は、ケイ酸塩および/または酸化鉄のような一般的な不純物である。
【0012】
また、MgO粉末も、例えばガウスの粒子サイズ分布を示す。
【0013】
MgO粉末は、35〜50
質量%、特に40〜45
質量%の割合で、乾燥混合物中において使用される。
【0014】
シリコンカーバイド(SiC)は、高純度の合成製品として、様々な粒子サイズおよび粒粒子サイズ分布において市販されており、本発明によれば、粉体の形態または粉末の形態で使用され、本発明によれば、例えば1mm以下が100
質量%に相当する粒子サイズを有するものが使用される。粒子サイズ分布は、好ましくはガウスの粒子サイズ分布と一致する。
【0015】
SiC粉体は、例えば90
質量%超、特に94
質量%超のSiCの純度を有するものが使用される。乾燥混合物中で使用される割合は、5〜20
質量%、特に10〜15
質量%である。
【0016】
さらに、最高100
質量%で構成される乾燥混合物は、必要に応じて、少なくとも1つの粉末状または微粉砕された乾燥シリカ成分(SiO
2)を、前記混合物中に最高10
質量%、特に最高5
質量%で含有してもよい。SiO
2に関連する高純度のこのSiO
2成分は、例えば、市販されているマイクロシリカ、および/または、発熱性および/または沈降性シリカであってもよい。さらに、乾燥混合物は、最高10
質量%、特に最高5
質量%の酸化防止剤、および/または、耐火性製品用の他の一般的な添加物を含有してもよいが、オリビン、MgOおよびSiCについての上記割合に由来する量比は、維持されなければならない。これは、乾燥シリカの選択的な添加にも当てはまる。
【0017】
本発明によれば、可能な限り無アルカリ、または、実質的に無アルカリであるシリカゾルの形態での液状バインダーは、本発明に係る上述の100
質量%と計算される乾燥混合物に混合されてもよい。シリカゾルのアルカリ含有量は、例えば1
質量%未満、特に0.5
質量%未満であるべきである。固形物および液状バインダーのみを含有する耐火性乾燥混合物の湿潤配合物は、重非鉄金属用の製錬転炉のような製錬システムを内張りするための未成形の耐火性製品として使用することができる耐火性バッチであり、また、これから成形された未焼成および焼成された耐火性製品は、圧縮により製造され、上記製錬システムを内張りするのに使用することができる。
【0018】
シリカゾルは、シリカの水コロイド分散液の形態でのシリカハイドロゾルとして知られている。高分子量ポリケイ酸のコロイド分散液と、ナノメートル範囲(nm範囲)の粒子サイズを有するアモルファス二酸化シリコン粒子のコロイド分散液とに区別される。本発明によれば、15〜50
質量%、例えば特に20〜40
質量%のSiO
2濃度を有するアモルファス二酸化シリコン粒子のコロイド分散液の形態でのシリカゾルは、好適に使用される。これらの水コロイド分散液中において、アモルファス二酸化シリコン粒子は、互いに架橋せず、かつ、表面で水酸化された球形の個別粒子の形態で存在する。粒子のサイズは、コロイド範囲に存在する。平均粒子サイズは、通常、5〜75nmである。
【0019】
これらの無アルカリまたは低アルカリのシリカゾルは、相分離を受けない低粘度液体の形態で取り扱われる。
【0020】
SiO
2粒子の比表面積が100〜400m
2/g、特に200〜300m
2/gであり、SiO
2固形分濃度が15〜20
質量%、特に20〜40
質量%である、これらのシリカゾルは、本発明の目的のためのバインダーとして特に好適である。
【0021】
本発明によれば、シリカゾルは、2〜10
質量%、特に3〜6
質量%の割合で乾燥混合物に添加される。これらの条件下において、シリカゾルの水分は、主に、加工性の目的のために、バッチ混合物に所定の可塑性または延性を付与するように機能する。シリカゾルの二酸化シリコン粒子は、バッチ中におけるゲル生成の強化を通して、および続くバッチの乾燥により混合成分の結合を確実にする役割を主に果たす。そのまま高温に曝すことで、この結合は、混合物の基本成分と結合層の反応によって補強される。
【0022】
本発明に係る製品は、粗オリビン物質、マグネシア粉末、SiC、および必要に応じて乾燥シリカを含有する乾燥物質と、液状シリカゾルバインダーとを適切なミキサー内で混合して、所定の加工性を有する均質なバッチ混合物を生成することによって製造される。この耐火性バッチの延性混合物は、製錬転炉を内張りするために使用されてもよい。しかしながら、このバッチを圧縮して、成形レンガを生産することもでき、順次乾燥後、未焼成でまたはセラミック様に焼成して、製錬転炉を内張りするために使用してもよい。本発明に係るバッチを振動混合物、鋳造混合物等に加工して、同様に使用することもできる。
【0023】
よって、本発明は、例えば、オリビン粒子、MgO粉末およびSiC粉末と、必要に応じてマイクロシリカのような微粉砕された乾燥SiO
2成分とのみ、または、これらを主に(90
質量%超で)含有する乾燥混合物を発端とする。
【0024】
また、本発明は、所定の割合の乾燥混合物と、混合物の割合に適合させた所定の割合のシリカゾルとで構成される耐火性バッチにも関連する。かかるバッチは、一方の容器が乾燥物質の混合物を含み、他方の容器が液状シリカゾルを含む2つの容器を備えるパッケージの形態で、好適には市場に提供される。意図された方法でパッケージを使用するため、容器の内容物は、単純に混合される。これに代えて、湿潤バッチは、密閉容器内で予め混合してから取り扱ってもよい。
【0025】
上述のシリカゾルを含む水分含有バッチ混合物から、レンガ圧縮を用いて圧縮することにより圧縮された成形形状を製造し、好ましくは0.1〜2
質量%の残留水分含有量に形成形状を乾燥すること、あるいは、本発明の更なる実施形態によれば、成形形状を乾燥し、酸化性雰囲気中において好ましくは1000〜1300℃、特に1150〜1250℃の温度で、好ましくは4〜8時間、特に5〜6時間の期間、セラミックス炉内でセラミックス様に焼成することも、本発明の目的の範囲内である。本発明によれば、焼成時に、バッチの乾燥および乾燥された成分が、互いに可能であれば全く反応しないか、あるいは僅かに反応するように、焼成条件が選択される。そのため、本発明によれば、溶融物および/またはスラグによる腐食の存在下、乾燥および乾燥された混合物成分をそのまま転炉内で使用して、特に抗濡れ効果およびスラグ成分との化学的相互作用による耐火特性を保証することができる。
【0026】
本発明に係る未焼成および焼成された混合物および成形形状によって、耐火特性および耐性の観点から、従来の内張りよりも優れた内張りおよび重非鉄金属精錬転炉を構成することができる。特に、本発明に係る耐火性製品の優位性は、銅精錬転炉、例えばピアース−スミス転炉(PS転炉)において明白である。
【0027】
未焼成の圧縮および乾燥された成形形状は、例えば、以下の特徴を有する。
見掛け密度:2.6〜2.7kg/m
3
圧縮強度 :25〜50MPa、特に、35〜45MPa
【0028】
本発明に係る焼成された成形形状は、例えば、以下の特徴を有する。
見掛け密度:2.55〜2.65kg/m
3
圧縮強度 :30〜55MPa、特に、40〜50MPa
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、以下
に特定された処方から製造された、本発明に係る圧縮された未焼成の耐火性レンガ(FSMレンガ)を斜めに切断した正面図を示す。
【
図2】
図2は、同一のバッチから製造され、焼成されたFSMレンガを斜めに切断して示す。
【
図3】
図3は、
FSMレンガで形成され、斜めに切断された
るつぼを示す。
これは、粉末状のスラグで充填され、1350℃に加熱され、6時間この温度で維持され、そして、斜めに切断される前に冷却された。
【
図4】
図4は、75gの銅線で充填された未焼成のFSMレンガで形成されたるつぼを示す。
【
図5】
図5は、1350℃に6時間加熱し、冷却した後の、図4の斜めに切断されたるつぼを示す。
【
図6】
図6は、75gの銅線で充填された直接結合されたMg−Crレンガで形成されたるつぼを示す。
【
図7】
図7は、1350℃に6時間加熱し、冷却した後の、図6の斜めに切断されたるつぼを示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を、
図1〜
図7に基づいて説明する。
【0031】
上述したように、図1は、以下の処方から製造された、本発明に係る圧縮された未焼成の耐火性レンガ(FSMレンガ)を斜めに切断した正面図を示す。
【0033】
FSMレンガは、1
質量%の残留水分含有量に150℃で乾燥された。
【0034】
FSMレンガのマトリクスは、比較的粗いオリビン粒子1(暗い粒子)と、より小さいMgO粒子2(白)との支持フレームを示す。MgOの微細および最微細粒子は、観察することができない。灰色がかったマトリクス材料3は、実質的にSiCの微細粒子とシリカゾルのシリカ粒子とを示す。
【0035】
図2は、同一のバッチから製造され、焼成されたFSMレンガを斜めに切断して示す。
図1に係るマトリクスと比較して、マトリクスは、実質的に変化していないため、同様の符号は、同様の成分を示すために使用される。上で既に示したように、本発明によれば、焼成時に、バッチの混合成分が互いに僅かにのみ反応するように、焼成条件が選択された。
【0036】
同一の目的で従来から使用されるマグネシア−クロマイトレンガと比較して、本発明に係る耐火性製品の優位性は、DIN51069に基づく以下のるつぼ試験から明白である。
【0037】
以下の組成の鉱物相を有する銅製錬PS転炉から得られたファイヤライトスラグが使用された。
ファイヤライト Fe
2SiO
4
ヘデンバージャイト CaFe(Si
2O
6)
マグネタイト Fe
3O
4
混合スピネル
【0038】
スラグの化学組成は、以下の通りであった。
【0039】
スラグは、るつぼ試験用に用意された未焼成のFSMレンガ10の凹部、または、るつぼ4内に、粉体として導入され、1350℃に加熱され、その温度に6時間保持された。冷却後、るつぼは、斜めに切断された。
図3は、斜めに切断されたレンガの結果を示す。溶融されたスラグ6は、レンガにほとんど侵入しなかった。るつぼ4の未だに鋭い輪郭5が明確であるので、FSMレンガの腐食もわずかである。
【0040】
更なる試験では、銅溶融物に関する挙動が調査された。この目的のために、75gの銅線7が未焼成のFSMレンガ10から作成されたるつぼ4に充填され(
図4)、1350℃に6時間加熱された。比較(
図6)として、直接結合されたMg−Crレンガ11(28%:Cr
2O
3、主成分:溶融マグネシア)は、厳密に同一の方法で処理された。
【0041】
るつぼ4を冷却および斜めに切断した後、銅溶融物がMg−Crレンガのるつぼ4に既に存在しないことが確認された(
図7)。この挙動は、周知であり、実際には、Mg−Crレンガが損傷して、浸潤部分の熱機械的特性の変化により比較的急速に消失することを意味する。これに対して、完全に固化した銅溶融物8は、未だ、FSMレンガ10のるつぼ4中に確認することができる。ほとんど何も、レンガに浸潤していなかった(
図5)。
【0042】
したがって、Mg−Crレンガと比較して、FSMレンガは、PS転炉内で特に以下の利点を示す。
【0043】
−製造関連:レンガを処理して、取り付け可能にするためには、焼成する必要はなく、単に乾燥すればよい。したがって、レンガは、より安価かつ低環境汚染の方法で製造することができる。
【0044】
−用途関連:FSMレンガは、銅溶融物によって浸潤されず、ファイヤライトスラグによって極僅かに浸潤されるのみであるので、その高い熱機械的耐性によって、Mg−Crレンガより緩徐に消失する。
【0045】
本発明に係る製品は、特に銅生成用のPS転炉における使用に適するが、上述の利点を有する全重非鉄金属産業の場合と事実上同様に。ファイヤライトスラグおよび高流動性の重非鉄金属溶融物が存在する他の用途における通常の耐火性製品と比較しても有利に使用することができる。
【0046】
本発明のコンセプトは、微細な粒状のSiCおよびMgO、および粗い粒状のオリビンにより、レンガからの反応物質とスラグとの間におけるレンガ内での平衡が、例えば1200〜1350℃の処理温度でのみ確立されるという事実に基づく。これらの温度において、SiCは、酸化処理条件に係らず、未だ、耐濡れ性効果の点において完全に活性を有する。MgOは、フォルステライトを形成する可能性があるSiCの酸化生成物とだけでなく、Siゲル(シリカゾルのゲル化したバインダー成分)(ナノ結合)との結合成分とも反応する。本発明によれば、MgOは、耐火性ではないエンスタタイトの形成を防止するために、反応に利用可能なSiO
2に対して化学量論的過剰量で選択される。これらの反応は、そのまま焼成側で直接的にレンガを封止し、かつ、高い流動性の金属溶融物、例えば銅溶融物による浸潤を防止する。SiCは、さらにスラグブレーキとして機能する。通常存在するファイヤライトスラグとの接触では、フォルステライトとともに過剰のMgOは、オリビン固溶体とも反応する。液相温度は、結果として上昇する。すなわち、スラグとレンガとの間での反応生成物は、動きを止めるか、またはスラグの硬化を引き起こして、腐食反応が停止するか、少なくとも大きく減退する。
【0047】
したがって、本発明に係るバッチは、少なくとも以下の組成を示す。
−例えば少なくとも70
質量%、特に少なくとも90
質量%、好ましくは少なくとも100
質量%のフォルステライト成分を含有し、例えば0.1mm超が100
質量%、特に80
質量%、好ましくは50
質量%に相当する粒子サイズを有する、少なくとも30
質量%、特に少なくとも40
質量%の粗い粒状の粗オリビン物質、
−例えば1mm以下が100
質量%、特に80
質量%、好ましくは50
質量%に相当する粒子サイズを有する粉末の形態での、少なくとも35
質量%、特に少なくとも40
質量%のマグネシア(MgO)、
−例えば1mm以下が100
質量%、特に80
質量%、好ましくは50
質量%に相当する粒子サイズを有する粉末の形態での、少なくとも5
質量%、特に少なくとも10
質量%のシリコンカーバイド(SiC)、
−必要に応じて、好ましくはマイクロシリカ、および/または、発熱性および/または沈降性シリカの形態での、多くとも10
質量%、特に多くとも5
質量%の乾燥微粉砕されたシリカ(SiO
2)、
−必要に応じて、多くとも10
質量%、特に多くとも5
質量%の少なくとも1つの酸化防止剤のような耐火性製品用の更なる添加物、
−それぞれ残り100
質量%までの少なくとも1つの他の固形物、加えて、
−低アルカリ、好ましくは無アルカリのシリカゾルの形態での、乾燥固形物に換算して少なくとも2
質量%の液状バインダー。