(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記誘電体材料が、エポキシ樹脂、ポリイミド、シアン酸エステル、ポリエステル、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー、ポリカーボネート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン−ポリカーボネートコンポジット、ポリアミド及びポリシクロオレフィンから成る群から選択される熱可塑性ポリマーを含有する、請求項1記載の誘電体材料における陥凹構造のスミア除去のための処理方法。
ステップ(ii)において適用される前記水溶液中での前記硫酸の濃度範囲が65〜75重量%である、請求項1から3までのいずれか1項記載の誘電体材料における陥凹構造のスミア除去のための処理方法。
ステップ(ii)において適用される前記水溶液中での前記ペルオキソ二硫酸イオンの濃度範囲が0.12〜0.44モル/lである、請求項1から4までのいずれか1項記載の誘電体材料における陥凹構造のスミア除去のための処理方法。
前記安定添加剤が、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチルグリコール、グリセリン及びポリビニルアルコールから成る群から選択される、請求項1から5までのいずれか1項記載の誘電体材料における陥凹構造のスミア除去のための処理方法。
前記安定添加剤が、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル及びジエチレングリコールモノイソプロピルエーテルから成る群から選択される、請求項1から6までのいずれか1項記載の誘電体材料における陥凹構造のスミア除去のための処理方法。
前記安定添加剤が、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレングリコール−ran−プロピレングリコール)、ポリ(エチレングリコール)−block−ポリ(プロピレングリコール)−block−ポリ(エチレングリコール)及びポリ(プロピレングリコール)−block−ポリ(エチレングリコール)−block−ポリ(プロピレングリコール)から成る群から選択される、請求項1から7までのいずれか1項記載の誘電体材料における陥凹構造のスミア除去のための処理方法。
前記安定添加剤の濃度範囲が0.5〜300ミリモル/lである、請求項1から8までのいずれか1項記載の誘電体材料における陥凹構造のスミア除去のための処理方法。
前記水溶液の温度が、ステップ(ii)の間にわたり10〜80℃の範囲の温度に保たれる、請求項1から9までのいずれか1項記載の誘電体材料における陥凹構造のスミア除去のための処理方法。
誘電体材料における陥凹構造のスミア除去のための処理用水溶液であって、硫酸60〜80重量%及びペルオキソ二硫酸イオン0.04〜0.66モル/l並びにアルコール、エーテル分子及び高分子量エーテルから成る群から選択される少なくとも1種の安定添加剤を含有する、前記処理用水溶液。
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント回路基板、IC基板などの製造中での誘電体材料における陥凹構造のスミア除去のための処理方法に関する。
【0002】
本発明の背景技術
多層プリント回路基板、IC基板及び関連デバイスの個々の層間の電気的接触を提供するために、陥凹構造、例えば貫通孔(TH)及びブラインドマイクロビア(BMV)が、誘電体材料において形成され、そして後で銅によりめっきされる必要がある。前記陥凹構造は、例えばメカニカルドリリング、レーザードリリング又はプラズマエロージョンによって形成される。前記陥凹構造の形成中に生じたスミア(誘電体材料からの残留物)は、陥凹構造の誘電体壁が電解めっきによる銅での共形的な連続めっき又はフィリングのために、活性化される前に、誘電体材料、銅構造及び/又は銅層から除去される必要がある。除去されなかったスミアは、陥凹構造の誘電体壁上に後で堆積させられた銅の不十分な付着を招く。
【0003】
陥凹構造が形成される誘電体材料は、熱可塑性ポリマー、例えばエポキシ樹脂、ポリイミド、シアン酸エステル及びポリエステルを含有する。かかる誘電体材料は、たいてい第二の補強用材料、例えばガラス繊維及び/又はガラスボール並びにほかに銅構造及び/銅層も有する。
【0004】
スミアを除去するための最新の標準的な方法は3つのステップを含む:
1.誘電体材料を、有機溶媒を含有するアルカリ水溶液で膨潤させるステップ、
2.誘電体材料を、過マンガン酸イオンを含有するアルカリ溶液でエッチングするステップ及び
3.エッチング中に形成されたMnO
2を還元するステップ。
【0005】
エッチング用の高酸性媒体、例えば濃硫酸中での過マンガン酸イオン又はクロム酸を用いた代替的な方法も当該技術分野において周知であるが、実際には有意性を持たない。過マンガン酸イオンもクロム酸も、それらの毒性ゆえに置き換えられる必要がある。スミアを除去するための公知の酸性法の技術上の欠点は、誘電体材料におけるガラス補強材と熱可塑性ポリマーとの間のシロキサン−エーテルリンカーが切断され、かつプロセスケミカル(process chemicals)が誘電体材料に浸透して“ウィッキング”として知られている破損を招く可能性があることである。
【0006】
濃硫酸(少なくとも92重量%)中での酸化剤を用いてスミアを除去するための方法がEP0216513に開示されている。強酸性溶液は、不所望の“ウィッキング”を招き、かつ更にスミアの除去中に銅の望ましくない高いエッチング速度を生む。この高い銅エッチング速度は、殊に、新しいプリント回路基板、IC基板などにおいて微細な銅構造及び/又は銅薄層が存在する場合には許容され得ない。
【0007】
レーザードリリングが原因の金属バリを除去するためのペルオキソ二硫酸アンモニウム200g/lの水溶液がUS4,023,998に開示されている。この方法は、誘電体材料からスミアを除去するのに適していない(例2(比較))。
【0008】
本発明の課題
本発明の課題は、有毒化学物質、例えば過マンガン酸イオン及びクロム酸を回避し、かつ不所望の現象、例えば誘電体材料へのプロセスケミカルの浸透(“ウィッキング”)並びに銅構造及び/又は銅層の強すぎるエッチングを阻止する、プリント回路基板、IC基板などの製造中に誘電体材料における陥凹構造の形成後のスミアを除去するための信頼できる方法を提供することである。更にプロセスステップの数は、公知の方法、例えば過マンガン酸イオンによるアルカリ法と比べて減少させられるべきである。スミアを除去するための方法において用いられる水溶液の保管寿命は、プリント回路基板、IC基板などの製造における使用の最中に、かかる水溶液中で富化される銅イオンが存在していても十分なものでなければならない。
【0009】
本発明の概要
これらの課題は、下記ステップ(i)、(ii)の順で、誘電体材料における陥凹構造のスミア除去のための処理方法であって、
(i)少なくとも1つの陥凹構造を有する誘電体基板を準備するステップであって、前記陥凹構造が、当該陥凹構造の製造中に形成された前記誘電体材料の残留物を含むステップと、
(ii)前記誘電体基板を、硫酸60〜80重量%及びペルオキソ二硫酸イオン0.04〜0.66モル/lを含有する水溶液と接触させ、かつ当該接触によって誘電体基板から前記誘電体材料の残留物を除去するステップ
とを有し、ここで、前記水溶液が更に、アルコール、エーテル分子(molecular ethers)及び高分子量エーテル(polymeric ethers)から成る群から選択される少なくとも1種の安定添加剤を含有する方法によって解決される。
【0010】
本発明に従った誘電体材料における陥凹構造の処理方法は、毒性物質、例えば過マンガン酸イオン及びクロム酸を用いない。本発明に従った方法を適用すると、銅のエッチングは所望される通りに低く、かつ誘電体材料からのスミア除去は、誘電体材料の重量損失によって確かめられるように十分に高い。さらに、誘電体材料へのプロセスケミカルの不所望の浸透(ウィッキング)が阻止される。なぜなら、誘電体材料におけるガラス強化材と熱可塑性ポリマーとの間のシロキサン−エーテルリンカーは切断されないからである。プロセスステップの数も減少させられる。なぜなら、過マンガン酸イオンを用いたときに必要な還元ステップが、本発明に従った方法においては必要でないからである。更に銅エッチング速度は十分に低い。水溶液中に存在する安定添加剤は、使用の最中に銅イオンが存在していてさえ前記水溶液の十分な保管寿命を提供する。
【0011】
本発明の好ましい実施態様においては、有機溶媒を含有する水溶液での膨潤ステップも必要ではない。
【0012】
それゆえに、本発明に従った方法は、誘電体材料の陥凹構造の汚れを前記陥凹構造の形成後に落とすのに良く適しており、かつ連続的なプロセスステップにおいて陥凹構造内に電解めっきされた銅と誘電体材料との間の望ましい高い付着を生む。
【0013】
本発明の詳細な説明
陥凹構造(TH、BMVなど)は、たいていメカニカルドリリング、レーザードリリング又はプラズマエロージョンによって形成される。他の構造、例えばトレンチも、エンボス加工技術によって形成されることができる。それら全ての場合において、誘電体材料における熱可塑性ポリマーの残留物から成るスミアが形成され、これは、銅の連続的な電解めっきのために、陥凹構造の誘電体壁の活性化前に完全に除去されなければならない。前記スミアの正確な化学的性質は、陥凹構造の製造のために適用される方法に依存して様々に変わり得る。本発明に従った方法は、スミアの正確な化学的性質に依存せずに、全ての標準的なドリリング法によって形成されるスミアを除去することができる。
【0014】
本発明に従った方法により処理されるべき誘電体材料は、熱可塑性ポリマー、例えばエポキシ樹脂、ポリイミド、シアン酸エステル、ポリエステル、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー(ABS)、ポリカーボネート(PC)、ABS−PCコンポジット(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン−ポリカーボネートコンポジット、ABS−PCブレンドとも示される)、ポリアミド(PA)及びポリシクロオレフィンをベースとする。誘電体材料は、好ましくは、ガラス補強材、例えばガラス繊維及び/又はガラスボールも含有する。熱可塑性ポリマーとガラス補強材とは、安定したコンポジット材料を形成するためにシロキサン−エーテルリンカーによって化学的に結合される。
【0015】
好ましくは、誘電体材料は更に、銅構造及び/又は1つ以上の銅層を有する。
【0016】
陥凹構造を有する誘電体材料は、それらの陥凹構造が形成された後に本発明に従った方法のステップ(i)において準備される。
【0017】
それから誘電体基板は、本発明に従った方法のステップ(ii)において、硫酸60〜80重量%、好ましくは硫酸65〜75重量%を含有する水溶液と接触させられる。
【0018】
前記水溶液は更に、ペルオキソ二硫酸イオン0.04〜0.66モル/l、好ましくはペルオキソ二硫酸イオン0.12〜0.44モル/l、を含有する。
【0019】
水溶性ペルオキソ二硫酸塩を、前記水溶液中で必要とされる量のペルオキソ二硫酸イオンを提供するために用いてよい。適した水溶性ペルオキソ二硫酸塩は、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸カリウム、ペルオキソ二硫酸アンモニウム及び前述のものの混合物である。ペルオキソ二硫酸も、ペルオキソ二硫酸イオン供給源として単独で又は前述の水溶性ペルオキソ二硫酸塩とともに混合物で用いられることができる。
【0020】
ペルオキソ二硫酸アンモニウムが最も好ましいペルオキソ二硫酸イオン供給源である。なぜなら、それは本発明に従った水溶液中での最も安定したペルオキソ二硫酸イオン供給源だからである。
【0021】
本発明に従った方法のステップ(ii)において適用される水溶液中での硫酸の濃度範囲は必須である。なぜなら、硫酸濃度が低すぎると、陥凹構造の形成後に誘電体材料の残留物が除去されないからである。硫酸濃度が高すぎると、誘電体材料へのプロセスケミカルの不所望の浸透(“ウィッキング”)が生じる。なぜなら、誘電体材料の熱可塑性ポリマーとガラス強化材との間のシロキサン−エーテルリンカーが切断されるからである。
【0022】
ペルオキソ二硫酸イオンの濃度は、上述の範囲内で保持されなければならない。なぜなら、濃度が低すぎると、陥凹構造の形成後に誘電体材料のスミアが十分には除去されず、かつ濃度が高すぎると、水溶液中での固形物の不所望の沈殿が生じるからである。
【0023】
硫酸60〜80重量%及びペルオキソ二硫酸イオン0.04〜0.66モル/lを含有する水溶液の安定性は、特に銅イオンが存在していると低下する。前記水溶液の安定性は、酸化剤のペルオキソ二硫酸イオンの濃度によって決定される。したがって、かかる水溶液の液滴の使用の最中での所望のスミア除去能力及びスミアの除去法は、銅イオンがそのような水溶液中で富化されるプリント回路基板などの製造において実際に使用した場合には十分に信頼できない。
【0024】
それゆえ、本発明に従った方法のステップ(ii)において適用される水溶液は更に、アルコール、エーテル分子及び高分子量エーテルから成る群から選択される少なくとも1種の安定添加剤を含有する。
【0025】
適したアルコールは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチルグリコール、グリセリン及びポリビニルアルコールから成る群から選択される。
【0026】
適したエーテル分子は、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル及びジエチレングリコールモノイソプロピルエーテルから成る群から選択される。
【0027】
適した高分子量エーテルは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレングリコール−ran−プロピレングリコール)、ポリ(エチレングリコール)−block−ポリ(プロピレングリコール)−block−ポリ(エチレングリコール)及びポリ(プロピレングリコール)−block−ポリ(エチレングリコール)−block−ポリ(プロピレングリコール)から成る群から選択される。
【0028】
最も好ましくは、安定添加剤は、高分子量エーテルである。
【0029】
アルコール、エーテル分子及び高分子量エーテルから成る群から選択される安定添加剤の濃度範囲は、好ましくは0.5〜300ミリモル/l、より好ましくは1〜150ミリモル/lである。
【0030】
前記少なくとも1種の安定添加剤の存在は、誘電体材料の重量損失及びエッチング速度(すなわち、プリント回路基板などの製造におけるスミア除去のための所望の特性)に悪影響を及ぼさずに、本発明に従った方法のステップ(ii)において用いられる前記水溶液の保管寿命を強く改善する。したがって、この方法は、プリント回路基板、IC基板などの製造にとって信頼できかつ有用であるとみなされる。
【0031】
ステップ(ii)において用いられる水溶液は更に、任意に銅イオンの錯化剤を含有する。銅イオンの適した錯化剤は、好ましくは、アミノカルボン酸、ホスホネート及び前述のものの塩から成る群から選択される。前述の銅イオンの錯化剤の適した塩は、例えばナトリウム及びカリウム塩である。
【0032】
適したアミノカルボン酸は、例えばエチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミンモノコハク酸、ジエチレントリアミンモノコハク酸、トリエチレンテトラアミンモノコハク酸、1,6−ヘキサメチレンジアミンモノコハク酸、テトラエチレンペンタミンモノコハク酸、2−ヒドロキシプロピレン−1,3−ジアミンモノコハク酸、1,2−プロピレンジアミンモノコハク酸、1,3−プロピレンジアミンモノコハク酸、cis−シクロヘキサンジアミンモノコハク酸、trans−シクロヘキサンジアミンモノコハク酸、エチレンビス(オキシエチレンニトリロ)モノコハク酸、エチレンジアミン−N,N'−ジコハク酸、ジエチレントリアミン−N,N''−ジコハク酸、トリエチレンテトラアミン−N,N'''−ジコハク酸、1,6−ヘキサメチレンジアミン−N,N'−ジコハク酸、テトラエチレンペンタミン−N,N''''−ジコハク酸、2−ヒドロキシプロピレン−1,3−ジアミン−N,N'−ジコハク酸、1,2−プロピレンジアミン−N,N'−ジコハク酸、1,3−プロピレンジアミン−N,N''−ジコハク酸、cis−シクロヘキサンジアミン−N,N'−ジコハク酸、trans−シクロヘキサンジアミン−N,N'−ジコハク酸、及びエチレンビス−(オキシエチレンニトリロ)−N,N'−ジコハク酸である。
【0033】
適したホスホネートは、例えばニトリロトリス−(メチレンホスホン酸)、エタン−1,2−ビス−(イミノビス−(メチレンホスホン酸))、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、ヒドロキシエチルアミノジ(メチレンホスホン酸)、カルボキシメチルアミノジ(メチレンホスホン酸)、アミノトリス(メチレンホスホン酸)、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ヘキサメチレンジアミノテトラ(メチレンホスホン酸)、N−(ホスホノメチル)イミドジ酢酸、ジエチレントリアミン−N,N,N',N'',N''−ペンタ(メチルホスホン酸)、2−ブタンホスホネート−1,2,4−トリカルボン酸、及び2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸である。
【0034】
任意の銅イオンの錯化剤の濃度範囲は、好ましくは0.5〜500ミリモル/l、より好ましくは1〜300ミリモル/lである。
【0035】
本発明に従った方法のステップ(ii)において用いられる水溶液中での銅イオンの錯化剤の存在が更に、使用の最中での、特に銅イオンが前記水溶液中で富化されるときの前記水溶液の保管寿命を改善する。
【0036】
水溶液は更に、任意に、銅の腐食抑制剤、例えばトリアゾール化合物(例えばベンゾトリアゾール)を含有する。かかる腐食抑制剤は、当該技術分野において周知である。任意の銅の腐食抑制剤の濃度範囲は、好ましくは0.1〜1000mg/l、より好ましくは1〜500mg/lである。
【0037】
誘電体材料は、本発明に従った方法のステップ(ii)において水溶液と1〜60分間、より好ましくは5分間〜40分間、最も好ましくは10分間〜30分間接触させられる。
【0038】
水溶液の温度は、本発明に従った方法のステップ(ii)において、好ましくは10〜80℃、より好ましくは20〜60℃、最も好ましくは20〜40℃の範囲で保たれる。
【0039】
本発明に従った誘電体材料における陥凹構造のスミア除去のための処理方法は、様々な種類の機器、例えば横型機器、縦型機器及び縦型コンベア式機器に適用されることができる。
【0040】
誘電体基板は、任意に、ステップ(ii)に先立って、有機溶媒を含有する水溶液と接触させられる。この有機溶媒は、例えばブチルジグリコールといったグリコール又はN−メチルピロリドン及びN−エチルピロリドンといったN−アルキルピロリドンである。有機溶媒の濃度範囲は、好ましくは20〜80重量%である。溶媒の混合物も用いてよい。誘電体基板は、任意に、前記水溶液と30〜90℃の範囲の温度で1〜20分間接触させられる。この誘電体基板を前記水溶液と接触させると、誘電体基板の熱可塑性ポリマーは膨潤し、それによってステップ(ii)におけるスミア除去が促進され得る。
【0041】
本発明の1つの実施態様においては、誘電体基板は、ステップ(ii)の後に、アルカリ性物質、例えばアルカリ金属水酸化物(例示的に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム及びそれらの混合物)を含有する水で洗浄される。アルカリ性洗浄液のpH値の範囲は、好ましくは7〜14である。このアルカリ性洗浄液は、誘電体基板の酸化から生じる有機残留物の除去のために必要である。
【0042】
本発明の1つの実施態様においては、プロセスステップ(ii)は超音波によって促進される。ステップ(ii)において適用される水溶液は、この実施態様においては超音波機器によって揺動させられる。
【0043】
本発明に従った方法のステップ(ii)の間の超音波による促進を、ステップ(ii)の後のアルカリ性物質を含有する水での洗浄と組み合わせてよい。
【0044】
そのとき陥凹構造を有する誘電体基板は、活性化及び連続的な銅めっきに適しており、かつ誘電体基板とめっきされた銅層との間の十分に高い付着が達成される。さらに、本発明に従った方法の適用後の連続したステップにおけるプロセスケミカルの不所望な浸透が阻止される。なぜなら、熱可塑性ポリマーとガラス強化材とは依然として付着し合うからである。
【0045】
スミアを除去するために用いられる他の酸性溶液と比べて本発明に従った方法の更なる技術的な利点が、ステップ(ii)の間の低い銅エッチング速度である。これは、誘電体基板を酸性溶液とステップ(ii)において接触させると、非常に少量の銅のみがエッチング除去されることを意味する。低い銅エッチング速度は、ステップ(ii)において適用される酸性処理溶液によって腐食させられるべきでない非常に微細な銅構造及び/又は銅薄層を誘電体基板が含有するときに特に所望される。ステップ(ii)の間の銅エッチング速度は0.2μm/分を超えるべきでない。
【0046】
スミア除去後の誘電体基板の活性化(ステップ(iii))は、好ましくは、前記誘電体基板を、無電解銅めっきを開始させる触媒金属のイオン及び/又はコロイドを含有する溶液と接触させることによって達成される。かかる触媒活性金属は、例えばパラジウム、銀及び銅である。この触媒金属をイオン型又はコロイド型で提供する適用可能な活性化剤組成物が、例えばASM Handbook,Vol.5 Surface Engineering,1194,p.317−318に開示されている。
【0047】
次に、活性化された誘電体基板は、本発明に従った方法のステップ(iv)において無電解銅めっき浴組成物と接触させられ、それによって第一の銅層が活性化された誘電体基板上に堆積する。
【0048】
無電解銅めっき電解質は、例えば、銅イオン供給源、pH調節剤、錯化剤、例えばEDTA、アルカノールアミン又は酒石酸塩、促進剤、安定添加剤及び還元剤を含有する。たいていの場合、ホルムアルデヒドが還元剤として用いられ、他の慣用の還元剤は、次亜リン酸塩、グリオキシル酸、ジメチルアミンボラン及び水素化ホウ素ナトリウムである。無電解銅めっき電解質用の典型的な安定添加剤は、化合物、例えばメルカプトベンゾチアゾール、チオ尿素、他の様々な硫黄化合物、シアン化物及び/又はフェロシアン化物及び/又はコバルトシアン化物塩、ポリエチレングリコール誘導体、複素環式窒素化合物、メチルブチノール、及びプロピオニトリルである(ASM Handbook,Vol.5 Surface Engineering,pp.311−312)。前記第一の銅層は、銅(第二の銅層)の連続的な電解めっき用のめっき浴の役割を果たす。
【0049】
例
これから本発明を、次の非制限的な例を引いて更に説明することにする。
【0050】
一般的な手順
2つの異なる種類の試験基板を、すべての例を通して用いた:
試験クーポン1型は、剥き出しの誘電体材料(Matsushita MC 100 EX:ガラス強化材を有するが、銅張なしのエポキシ樹脂)のみから構成されており、そしてこれを、それぞれの例において示される通りスミア除去のための特定の方法の適用後に前記サンプルの“重量損失”を調べることによって誘電体材料からの所望のスミア除去を確かめるために用いた。
【0051】
試験クーポン2型は、基板材料1と同じ誘電体材料から構成されているが、更に銅層を両側に有していた。
【0052】
いずれの試験クーポン型も5×5cm
2の大きさを有していた。
【0053】
スミア除去のための異なる酸性溶液の能力を、調べられる様々の酸性溶液との接触前及び接触後に、乾燥された試験クーポン1型を化学天秤で量ることによって確かめた。重量損失は、試験クーポン1型表面(加えられる前面及び裏面の表面)dm
2当たりのmg量で示される。かかる試験において30〜80mg/dm
2の範囲の誘電体材料の重量損失が所望される。その範囲を下回る重量損失は、スミアが誘電体材料から十分には除去されていないことを示す。前記範囲を上回る重量損失は、スミアだけでなく許容されていない量の誘電体材料そのものが除去されていることを示す。
【0054】
酸性溶液の銅エッチング速度は、試験クーポン2型の重量損失によって確かめた。この基板を、それぞれの例の前とその後に量った。結果生じる重量損失Δは、
Δ=[(重量(処理前)−重量(処理後)]/(基板表面)
として計算した。
【0055】
0〜0.2μm/分の範囲の銅エッチング速度が所望される。その範囲を上回る銅エッチング速度は許容され得ない。なぜなら、あまりに多くの銅がスミア除去中に除去されるからである。
【0056】
硫酸60〜80重量%及びペルオキソ二硫酸イオン0.04〜0.66モル/lを含有する水溶液の保管寿命は、ペルオキソ二硫酸イオンの濃度を硫酸セリウム(IV)による2時間にわたった30分毎の滴定によって測定することによって確かめた。かかる水溶液のプリント回路基板、IC基板などの製造における実際の使用の条件をシミュレートするために、銅イオン3.4ミリモル/lを前記水溶液に加えた。加えられた銅イオンの濃度は、1dm
2の大きさのクーポン及び0.08μm/分の標準的な銅エッチング速度に基づき前記溶液中に放出されることになる銅イオンの濃度から計算した。水溶液の温度は、前記試験中35〜45℃に保持した。
【0057】
例1(比較)
1型及び2型の試験クーポンを、濃H
2SO
4(水中97重量%のH
2SO
4)及びペルオキソ二硫酸アンモニウム0.25モル/l(5.7重量%)を含有する酸性水溶液と接触させた(EP0216513A2に従った例)。
【0058】
第一の試験のために、この処理溶液の温度を30℃に調節し、かつ処理時間は3分間であった。前記溶液による処理後の試験クーポン1型の重量損失は708.8mg/dm
2であった。したがって、あまりに多くの誘電体材料が、かかる処理溶液によって除去される。
【0059】
銅エッチング速度は0.031μm/分であった。
【0060】
第二の試験のために、この処理溶液の温度を35℃に調節し、かつ処理時間は15分間であった。前記溶液による処理後の試験クーポンの重量損失は2315mg/dm
2であった。したがって、あまりに多くの誘電体材料が、かかる処理によって基板から除去される。
【0061】
試験クーポン2型を用いて確かめられた銅エッチング速度は0.12μm/分であった。したがって、銅エッチング速度は許容され得る。
【0062】
前記第二の試験の間、発熱反応により、15分間で水溶液の温度が20K上昇する。これは、プリント回路基板、IC基板などの製造における安全上の理由で許容され得ない。
【0063】
例2(比較)
1型及び2型の試験クーポンを、ペルオキソ二硫酸アンモニウム200g/lの水溶液と接触させた(US4,023,998に従った例)。この処理溶液の温度を25℃に調節し、かつ処理時間は1.5分間であった。
【0064】
重量損失の代わりに、重量増加が見られた。前記溶液による処理後の試験クーポン1型の重量増加は10.3mg/dm
2であった。この重量増加は、スミアが誘電体材料から除去されていないことを示す。この誘電体材料は、かかる処理溶液による処理中に膨潤し、そのとき当該溶液は、膨潤した誘電体材料中に特に含まれているものと推測される。
【0065】
試験クーポン2型を用いて確かめられた銅エッチング速度は0.077μm/分であった。
【0066】
追加的に、試験を35℃の処理溶液温度及び15分間の処理時間で行った。
【0067】
重量損失の代わりに、重量増加が見られた。前記溶液による処理後の試験クーポンの重量増加は10.5mg/dm
2であった。
【0068】
試験クーポン2型を用いて確かめられた銅エッチング速度は0.792μm/分であった。この銅エッチング速度は、スミア除去プロセスにとって高すぎる。
【0069】
例3(比較)
1型及び2型の試験クーポンを、硫酸75重量%及びペルオキソ二硫酸アンモニウム0.22モル/lを含有する酸性水溶液と接触させた。この処理溶液の温度を35℃に調節し、かつ処理時間は30分間であった。
【0070】
有機溶媒を含有する溶液中でのいかなる膨潤ステップも、ステップ(ii)に先立って適用しなかった。
【0071】
前記溶液での処理後の試験クーポンの重量損失は80mg/dm
2であった。したがって、試験クーポン1型の誘電体材料のエッチングが許容され得る。
【0072】
試験クーポン2型を用いて確かめられた銅エッチング速度は0.08μm/分であり、これは所望の低い銅エッチング速度である。
【0073】
90分後に銅イオン3.4ミリモル/lの存在下でペルオキソ二硫酸イオンはもはや検出されなかった。したがって、前記水溶液の保管寿命は、誘電体材料における陥凹構造のスミア除去のための信頼できる処理方法にとって低すぎる。
【0074】
例4
同じ水溶液(硫酸75重量%及びペルオキソ二硫酸アンモニウム0.22モル/l)を、銅イオン3.4ミリモル/lを加える前にポリエチレングリコール6.8ミリモル/l(M
w=600g/モル)を前記水溶液に加えた後に再び調べた(保管寿命試験においてt=0分)。ペルオキソ二硫酸イオンの濃度は90分後に僅か15.8%だけ下がった。
【0075】
したがって、この水溶液の保管寿命は、所望の低い銅エッチング速度及び試験クーポン1型の誘電体材料の必要なエッチングを維持しながら、ポリエチレングリコールの存在下では十分であると考えられる。
【0076】
例5
同じ水溶液(硫酸75重量%及びペルオキソ二硫酸アンモニウム0.22モル/l)を、銅イオン3.4ミリモル/lを加える前にポリエチレングリコール13.6ミリモル/l(M
w=600g/モル)を前記水溶液に加えた後に再び調べた(保管寿命試験においてt=0分)。ペルオキソ二硫酸イオンの濃度は90分後に僅か9.5%だけ下がった。
【0077】
したがって、この水溶液の保管寿命は、所望の低い銅エッチング速度及び誘電体材料の必要なエッチングを維持しながら、ポリエチレングリコールの存在下では十分であると考えられる。
【0078】
例6
同じ水溶液(硫酸75重量%及びペルオキソ二硫酸アンモニウム0.22モル/l)を、銅イオン3.4ミリモル/lを加える前にポリエチレングリコール13.6ミリモル/l(M
w=1500g/モル)を前記水溶液に加えた後に再び調べた(保管寿命試験においてt=0分)。ペルオキソ二硫酸イオンの濃度は90分後に僅か12.3%だけ下がった。
【0079】
したがって、この水溶液の保管寿命は、所望の低い銅エッチング速度及び誘電体材料の必要なエッチングを維持しながら、ポリエチレングリコールの存在下では十分であると考えられる。