(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6505095
(24)【登録日】2019年4月5日
(45)【発行日】2019年4月24日
(54)【発明の名称】TCR−NCK相互作用の阻害剤としての、アルコキシドによって置換されたクロメン誘導体
(51)【国際特許分類】
C07D 311/58 20060101AFI20190415BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20190415BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20190415BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20190415BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20190415BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20190415BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20190415BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20190415BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20190415BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20190415BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20190415BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20190415BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20190415BHJP
A61K 31/352 20060101ALI20190415BHJP
A61K 31/4025 20060101ALI20190415BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20190415BHJP
A61K 31/5377 20060101ALI20190415BHJP
【FI】
C07D311/58CSP
A61P37/06
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P17/06
A61P3/10
A61P25/00
A61P37/02
A61P37/08
A61P17/02
A61P35/02
A61P35/00
A61P9/10
A61K31/352
A61K31/4025
A61K31/496
A61K31/5377
【請求項の数】23
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2016-522733(P2016-522733)
(86)(22)【出願日】2014年10月20日
(65)【公表番号】特表2017-506209(P2017-506209A)
(43)【公表日】2017年3月2日
(86)【国際出願番号】IB2014002171
(87)【国際公開番号】WO2015056085
(87)【国際公開日】20150423
【審査請求日】2017年7月20日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516108454
【氏名又は名称】アルタックス バイオファーマ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】ガゲテ メテオス アンドレス
(72)【発明者】
【氏名】カストロ パロミノ フリオ
(72)【発明者】
【氏名】マルティ クラウゼル ルーク
(72)【発明者】
【氏名】トルモ カルラ ダミア
【審査官】
水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特表2013−537899(JP,A)
【文献】
特表2011−526607(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物
【化1】
またはその薬学的に許容できる塩または溶媒和化合物であって、式中、
R
1は置換C1〜C4アルキルであり、
R1における置換はC3〜C6シクロアルキルおよびフッ素から選択され、
R
2およびR
3は水素または置換もしくは未置換C
1〜C
6アルキルより独立に選択されるか、
またはR
2およびR
3は、それらが結合する窒素原子とともに、置換もしくは未置換複素環を形成し、
R
4はハロゲンで
ある化合物。
【請求項2】
R1はC3〜C6シクロアルキルによって置換されたC1〜C4アルキルである、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容できる塩または溶媒和化合物。
【請求項3】
R1は−CH2−シクロプロピル基である、請求項2に記載の化合物またはその薬学的に許容できる塩または溶媒和化合物。
【請求項4】
R1は少なくとも1つのフッ素によって置換されたC1〜C4アルキルである、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容できる塩または溶媒和化合物。
【請求項5】
R1は−CHF2または−CF3基より選択される、請求項4に記載の化合物またはその薬学的に許容できる塩または溶媒和化合物。
【請求項6】
R2はHである、請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容できる塩または溶媒和化合物。
【請求項7】
R3は置換または未置換C1〜C4アルキルである、請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容できる塩または溶媒和化合物。
【請求項8】
R3は−CH2CH3基である、請求項7に記載の化合物またはその薬学的に許容できる塩または溶媒和化合物。
【請求項9】
R3は−NR’R’’基によって置換されたC1〜C4アルキル基であり、式中、R’およびR’’は、HまたはC1〜C4アルキルより独立に選択される、請求項7に記載の化合物またはその薬学的に許容できる塩または溶媒和化合物。
【請求項10】
R3は−CH2−CH2−N(CH3)2基である、請求項9に記載の化合物またはその薬学的に許容できる塩または溶媒和化合物。
【請求項11】
R2およびR3は、置換または未置換飽和5員複素環を形成する、請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容できる塩または溶媒和化合物。
【請求項12】
R2およびR3は、任意に置換される飽和6員複素環を形成する、請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容できる塩または溶媒和化合物。
【請求項13】
前記飽和複素環は、その少なくとも1つの位置においてC1〜C4アルキルによって置換される、請求項11または12に記載の化合物またはその薬学的に許容できる塩または溶媒和化合物。
【請求項14】
前記6員飽和複素環は、挿入された付加的なNまたはO原子を含有する、請求項12に記載の化合物またはその薬学的に許容できる塩または溶媒和化合物。
【請求項15】
前記NはC1〜C4アルキルによって置換されている、請求項14に記載の化合物またはその薬学的に許容できる塩または溶媒和化合物。
【請求項16】
R4はフッ素である、請求項1から15のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容できる塩または溶媒和化合物。
【請求項17】
− 1−((6−(ジフルオロメトキシ)−4−(4−フルオロフェニル)−2H−クロメン−3−イル)メチル)ピロリジン
− 1−((4−(4−フルオロフェニル)−6−(トリフルオロメトキシ)−2H−クロメン−3−イル)メチル)ピロリジン
− 1−((6−(シクロプロピルメトキシ)−4−(4−フルオロフェニル)−2H−クロメン−3−イル)メチル)ピロリジン
− 1−((6−(ジフルオロメトキシ)−4−(4−フルオロフェニル)−2H−クロメン−3−イル)メチル)−4−メチルピペラジン
− N1−((6−(ジフルオロメトキシ)−4−(4−フルオロフェニル)−2H−クロメン−3−イル)メチル)−N2,N2−ジメチルエタン−1,2−ジアミン
− N1−((4−(4−フルオロフェニル)−6−(トリフルオロメトキシ)−2H−クロメン−3−イル)メチル)−N2,N2−ジメチルエタン−1,2−ジアミン
− 4−((4−(4−フルオロフェニル)−6−(トリフルオロメトキシ)−2H−クロメン−3−イル)メチル)モルホリン
− N−((4−(4−フルオロフェニル)−6−(トリフルオロメトキシ)−2H−クロメン−3−イル)メチル)エタンアミン
− 1−((6−(シクロプロピルメトキシ)−4−(4−フルオロフェニル)−2H−クロメン−3−イル)メチル)−4−メチルピペラジン
− N1−((6−(シクロプロピルメトキシ)−4−(4−フルオロフェニル)−2H−クロメン−3−イル)メチル)−N2,N2−ジメチルエタン−1,2−ジアミン
− 4−((6−(シクロプロピルメトキシ)−4−(4−フルオロフェニル)−2H−クロメン−3−イル)メチル)モルホリン
− N−((6−(シクロプロピルメトキシ)−4−(4−フルオロフェニル)−2H−クロメン−3−イル)メチル)エタンアミンより選択される、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容できる塩または溶媒和化合物。
【請求項18】
− 1−((6−(シクロプロピルメトキシ)−4−(4−フルオロフェニル)−2H−クロメン−3−イル)メチル)−4−メチルピペラジン
− 4−((4−(4−フルオロフェニル)−6−(トリフルオロメトキシ)−2H−クロメン−3−イル)メチル)モルホリン
− 4−((6−(シクロプロピルメトキシ)−4−(4−フルオロフェニル)−2H−クロメン−3−イル)メチル)モルホリン
− N−((6−(シクロプロピルメトキシ)−4−(4−フルオロフェニル)−2H−クロメン−3−イル)メチル)エタンアミンより選択される、請求項17に記載の化合物またはその薬学的に許容できる塩または溶媒和化合物。
【請求項19】
薬物の製造のための、請求項1から18のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容できる塩または溶媒和化合物の使用。
【請求項20】
Tリンパ球におけるTCR−Nck相互作用の介在する疾患または障害を処置するための薬物の製造のための、請求項1から18のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容できる塩または溶媒和化合物の使用。
【請求項21】
Tリンパ球におけるTCR−Nck相互作用の介在する前記疾患または障害は、移植片拒絶、免疫性、自己免疫性および炎症性の疾患、神経変性疾患、血液病、ならびに増殖性疾患より選択される、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
Tリンパ球におけるTCR−Nck相互作用の介在する前記疾患または障害は、移植片拒絶、関節リウマチ、乾癬性関節炎、乾癬、I型糖尿病、糖尿病による合併症、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、アトピー性皮膚炎、肥満細胞の介在するアレルギー反応、白血病、リンパ腫、ならびに白血病およびリンパ腫に関連する血栓閉塞性およびアレルギー性の合併症より選択される、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
請求項1から18のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容できる塩または溶媒和化合物と、1つまたはそれ以上の薬学的に許容できる賦形剤とを含む、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロメンコアを含有し、かつTCRとNckとの相互作用を妨げることによってリンパ球増殖を阻害する能力を有する化合物のグループに関し、したがってこうした化合物は、こうした相互作用がたとえば移植片拒絶反応、免疫もしくは自己免疫疾患、炎症性疾患または増殖性疾患などの合併症を引き起こすような疾患または状態を処置するために有用である。
【背景技術】
【0002】
たとえば喘息、多発性硬化症、アレルギー、関節リウマチ、クローン病または乾癬などの自己免疫疾患および炎症性疾患は多様な疾患群であり、この疾患においては適応免疫系が特にTリンパ球を介して体内の自身の抗原を攻撃する。T細胞がすべての免疫機構の中心にあることは、一般的に認められている。T細胞は外来抗原および自己抗原の両方を認識して、それらに対する免疫応答を活性化できる。T細胞は、細胞質へのシグナル伝達を行うT細胞受容体(T cell receptor:TCR)を介して抗原を認識する。実際に、主要組織適合複合体(major histocompatibility complex:MHC)のハプロタイプがヒト自己免疫疾患に対する最も重要な遺伝的危険因子であるという事実が、すべての免疫病理学的事象の中心にT細胞を配置する。
【0003】
T細胞は、T細胞抗原受容体(TCR)を介してMHCに関連する抗原ペプチド(pMHC)を認識し、pMHCの化学組成のわずかな相違を異なる定量的および定性的結果に変換できる。自己ペプチドの入ったMHCに対する顕著な親和性を有するTCRを有するT細胞の活性化を防ぐためのさまざまな制御機構が存在し、その中には胸腺の成熟の際の潜在的自己反応性T細胞の抑制も含まれるが、自己免疫疾患にかかって自己反応性T細胞が活性化および拡大し、恒常性制御に打ち勝っている患者において、これらの機構は幾分不十分である。
【0004】
TCRは刺激の際に活性化されて立体構造変化を起こし、その結果として、シグナル伝達および細胞活性化を行う「TCRシグナロソーム」を形成する異なるタンパク質の補充をもたらす。この複合体は、T細胞受容体のCD3εサブユニットに存在するPRSモチーフ(プロリンリッチ配列(proline−rich sequence))に結合するサイトゾルタンパク質Nckを含む。その結果として、TCR立体構造変化が安定化し、活性化シグナルが効率的に伝達される。
【0005】
免疫疾患に対する現在の治療法は、免疫寛容誘発/免疫調節性のアプローチではなく、免疫抑制的な戦略にみえる。アザチオプリン、メトトレキセート、ミコフェノレート、およびクラドリビンは細胞増殖抑制性である。他の治療法は、T細胞の欠乏(アレムツズマブ、抗CD52)、またはリンパ節におけるT細胞の保持(フィンゴリモド)を強制するものである。代替的に、免疫系の間接的な調節も強力な戦略として用いられる(BG−12)。したがって、自己免疫疾患においてT細胞を活性化するためにTCRシグナルが中心的役割を有するにもかかわらず、T細胞の活性化を調節するための近年の努力は、同時刺激シグナル、サイトカイン受容体などを調節することに焦点を合わせており、結果として特異性の欠如および多数の関連副作用が伴っている。
【0006】
特定の免疫調節性の治療法を開発するために、多くの異なる研究グループによってT細胞活性化におけるNckの役割の特徴付けに焦点を合わせて多くの努力がなされてきた。すべての組織においてNck1を欠き、T細胞においてのみ条件的にNck2を欠くノックアウトマウスの研究を通じて、Nckは成熟T細胞の機能に重要な役割を有するとされてきた。これらのモデルにおいては、自己抗原に対する低い結合力を有するTCRを発現する末梢T細胞の数が急激に減少し、弱い抗原による刺激によるT細胞の活性化の全身的悪化が観察された。さらに、骨髄キメラを生成して、強いアゴニストではなく弱いアゴニストによる成熟T細胞の活性化のためにPRS輸送性(TCRにおけるNck結合部位)が重要であることを示すことによっても、Nckの重要性が示された。同様に、PRS配列の突然変異は、マウスがインビボで適応免疫応答を活性化する能力を変えた。さらに、NckのSH3.1ドメインに対する高親和性を有する阻害ペプチドは、TCRシグナロソームのアセンブリを変えることから、Nckの補充はTCRシグナリングの重要な初期段階であることが示唆され、これは免疫応答の調節に対するターゲットを表すものである。
【0007】
特許文献1は、スフィンゴシン−1−リン酸受容体(sphingosine−1−phosphate receptor:S1P1)が介在する望ましくないリンパ球浸潤によって誘発される疾患の予防または処置のための、2H−クロメンに由来する一連の化合物を記載している。
【0008】
加えて特許文献2は、T細胞におけるTCR−Nck相互作用の阻害能力を有するクロメン誘導体、および自己免疫疾患、炎症性疾患または移植片拒絶の処置のためのそれらの使用を記載している。
【0009】
したがって、Tリンパ球におけるTCR−Nck相互作用を阻害でき、かつ良好な薬物候補である新規化合物を提供することが望ましいだろう。その化合物は、インビボ薬理学試験における良好な活性および経口投与時の良好な経口吸収を示すべきであり、かつ代謝的に安定であり、好都合な薬物動態プロファイルを有するべきである。さらに、化合物は毒性であってはならず、最小限の副作用を示すべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2010/064707号公報
【特許文献2】国際公開第2012/042078号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下に記載される化合物は、TCR−Nck間の相互作用を阻害する高い能力を有するため、Tリンパ球の過剰増殖が起こる疾患または障害を処置するために有用である。さらに、本発明の化合物は、構造的に類似の公知の化合物よりも良好な生物学的利用率を示し、かつTCR−Nckの同じ阻害能力を有し、これは本発明の化合物の薬物としての使用における明確な利点である。
【0012】
本発明の第1の局面は、式(I)の化合物
【化1】
またはその薬学的に許容できる塩、異性体、もしくは溶媒和化合物に関し、式中、
R
1は水素、置換もしくは未置換C
1〜C
6アルキル、置換もしくは未置換C
3〜C
6シクロアルキル、置換もしくは未置換アリールまたは置換もしくは未置換ヘテロアリール、−COR
5、−C(O)OR
5、−C(O)NR
5R
6、−CNR
5より選択され、
R
2およびR
3は水素、置換もしくは未置換C
1〜C
6アルキル、置換もしくは未置換C
3〜C
6シクロアルキル、置換もしくは未置換アリール、置換もしくは未置換ヘテロアリール、−COR
7、−C(O)OR
7、−C(O)NR
7R
8、−CNR
7、−OR
7、−NR
7R
8、および−NR
7C(O)R
8より独立に選択されるか、
またはR
2およびR
3は、それらが結合する窒素原子とともに、置換もしくは未置換複素環を形成し、
R
4はハロゲンであり、
R
5、R
6、R
7およびR
8は水素、C
1〜C
4アルキル、C
3〜C
6シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびハロゲンより独立に選択される。
式(I)の化合物は、1−((4−(4−フルオロフェニル)−6−メトキシ−2H−クロメン−3−イル)メチル)ピロリジンではないという条件を有する。
【0013】
本発明における「アルキル」という用語は、直鎖または分岐鎖の、1から6の炭素原子、好ましくは1から4の炭素原子を有し、かつ残りの分子に単結合で結合した炭化水素鎖のラジカル、たとえばメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、tert−ブチル、sec−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシルなどを示す。アルキル基は、たとえばハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシル、カルボキシル、カルボニル、シアノ、アシル、アルコキシカルボニル、アミノ、ニトロ、メルカプト、およびアルキルチオなどの1つまたはそれ以上の置換基によって任意に置換されてもよい。
【0014】
本発明における「シクロアルキル」という用語は、安定な3員から6員の単環式ラジカルであって、好ましくは3員であり、飽和または部分的に不飽和であり、かつ炭素および水素原子のみからなるもの、たとえばシクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなど、ならびにたとえばアルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシル、カルボキシル、シアノ、カルボニル、アシル、アルコキシカルボニル、アミノ、ニトロ、メルカプト、およびアルキルチオなどの1つまたはそれ以上の基によって任意に置換され得るものを示す。
【0015】
本発明における「アリール」という用語は、6から18の炭素原子、好ましくは6から14の炭素原子、より好ましくは6から8の炭素原子を有し、かつ単一または複数の環でできていてもよく、後者の場合には分離および/または融合した環を有する、芳香族炭素環鎖を示す。アリール基の非限定的な例は、フェニル、ナフチル、インデニルなどである。好ましくは、アリール基はフェニルまたはナフチルである。アリール基は、たとえばアルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシル、カルボキシル、カルボニル、シアノ、アシル、アルコキシカルボニル、アミノ、ニトロ、メルカプト、およびアルキルチオなどの1つまたはそれ以上の5置換基によって任意に置換されてもよい。
【0016】
「ヘテロアリール」という用語は、次の群、すなわち窒素、酸素または硫黄より選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含有するアリール基を示す。
【0017】
本発明における「複素環」という用語は、不飽和、飽和または部分的飽和であり、かつ炭素原子と、次の群、すなわち窒素、酸素または硫黄より選択される少なくとも1つのヘテロ原子とからなる、3員から15員の安定な単環式または二環式のラジカルを示す。複素環は、好ましくは1つまたはそれ以上のヘテロ原子を伴う4員から8員、より好ましくは1つまたはそれ以上のヘテロ原子を伴う5員から6員を有する。ヘテロアリールの例は、アゼピン、インドール、イミダゾール、イソチアゾール、チアジアゾール、フラン、テトラヒドロフラン、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、ピペリジン、ピロリジン、ピペラジン、プリン、キノリンであってもよく、それらに限定されない。好ましくは、複素環基はピロリジンまたはピペラジンである。複素環基は、その任意の位置において、たとえばアルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシル、カルボキシル、カルボニル、シアノ、アシル、アルコキシカルボニル、アミノ、ニトロ、メルカプト、およびアルキルチオなどの1つまたはそれ以上の置換基によって任意に置換されてもよい。
【0018】
「ハロゲン」とは、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を示す。
【0019】
好ましい実施形態において、R
1は置換または未置換C
1〜C
4アルキルである。より好ましい実施形態において、R
1は−CH
3である。
【0020】
別のより好ましい実施形態において、R
1はC
3〜C
6シクロアルキルによって置換されたC
1−C
4アルキルである。さらにより好ましい実施形態において、R
1は−CH
2−シクロプロピル基である。
【0021】
別の好ましい実施形態において、R
1は少なくとも1つのフッ素によって置換されたC
1〜C
4アルキルである。より好ましい実施形態において、R
1は−CHF
2または−CF
3基より選択される。
【0022】
別の好ましい実施形態において、R
1は水素である。
【0023】
別の好ましい実施形態において、R
2はHである。
【0024】
別の好ましい実施形態において、R
3は置換または未置換C
1〜C
4アルキルである。より好ましい実施形態において、R
3は−CH
2CH
3基である。
【0025】
別のより好ましい実施形態において、R
3は−NR’R’’基によって置換されたC
1〜C
4アルキルであり、式中、R’およびR’’は、HまたはC
1〜C
4アルキルより独立に選択される。より好ましい実施形態において、R
3は−CH
2−CH
2−N(CH
3)
2基である。
【0026】
別の好ましい実施形態において、R
2およびR
3は、置換または未置換飽和5員複素環を形成する。
【0027】
別の好ましい実施形態において、R
2およびR
3は、任意に置換される飽和6員複素環を形成する。
【0028】
より好ましい実施形態において、飽和複素環は、その少なくとも1つの位置においてC
1〜C
4アルキルによって置換される。
【0029】
別のより好ましい実施形態において、飽和6員複素環は、挿入された付加的なNまたはO原子を含有する。さらにより好ましい実施形態において、NはC
1〜C
4アルキルによって置換されている。
【0030】
別の好ましい実施形態において、R
3は、未置換であるか、またはC
1〜C
4アルキルによって置換された付加的な挿入N原子を含有する飽和6員複素環である。
【0031】
別の好ましい実施形態において、R
4はフッ素である。
【0032】
好ましい実施形態において、式(I)の化合物は、次のリストより選択される。
− 4−(4−フルオロフェニル)−3−(ピロリジン−1−イルメチル)−2H−クロメン−6−オール(AX−01)
− 1−((6−(ジフルオロメトキシ)−4−(4−フルオロフェニル)−2H−クロメン−3−イル)メチル)ピロリジン(AX−02)
− 1−((4−(4−フルオロフェニル)−6−(トリフルオロメトキシ)−2H−クロメン−3−イル)メチル)ピロリジン(AX−03)
− 1−((6−(シクロプロピルメトキシ)−4−(4−フルオロフェニル)−2H−クロメン−3−イル)メチル)ピロリジン(AX−04)
− 1−((4−(4−フルオロフェニル)−6−メトキシ−2H−クロメン−3−イル)メチル)−4−メチルピペラジン(AX−9)
− N
1−((4−(4−フルオロフェニル)−6−メトキシ−2H−クロメン−3−イル)メチル)−N
2,N
2−ジメチルエタン−1,2−ジアミン(AX−10)
− 4−((4−(4−フルオロフェニル)−6−メトキシ−2H−クロメン−3−イル)メチル)モルホリン(AX−11)
− N−((4−(4−フルオロフェニル)−6−メトキシ−2H−クロメン−3−イル)メチル)−エタンアミン(AX−12)
− 1−((6−(ジフルオロメトキシ)−4−(4−フルオロフェニル)−2H−クロメン−3−イル)メチル)−4−メチルピペラジン(AX−17)
− N
1−((6−(ジフルオロメトキシ)−4−(4−フルオロフェニル)−2H−クロメン−3−イル)メチル)−N
2,N
2−ジメチルエタン−1,2−ジアミン(AX−18)
− N
1−((4−(4−フルオロフェニル)−6−(トリフルオロメトキシ)−2H−クロメン−3−イル)メチル)−N
2,N
2−ジメチルエタン−1,2−ジアミン(AX−26)
− 4−((4−(4−フルオロフェニル)−6−(トリフルオロメトキシ)−2H−クロメン−3−イル)メチル)モルホリン(AX−27)
− N−((4−(4−フルオロフェニル)−6−(トリフルオロメトキシ)−2H−クロメン−3−イル)メチル)エタンアミン(AX−28)
− 1−((6−(シクロプロピルメトキシ)−4−(4−フルオロフェニル)−2H−クロメン−3−イル)メチル)−4−メチルピペラジン(AX−33)
− N
1−((6−(シクロプロピルメトキシ)−4−(4−フルオロフェニル)−2H−クロメン−3−イル)メチル)−N
2,N
2−ジメチルエタン−1,2−ジアミン(AX−34)
− 4−((6−(シクロプロピルメトキシ)−4−(4−フルオロフェニル)−2H−クロメン−3−イル)メチル)モルホリン(AX−35)
− N−((6−(シクロプロピルメトキシ)−4−(4−フルオロフェニル)−2H−クロメン−3−イル)メチル)エタンアミン(AX−36)。
【0033】
別の好ましい実施形態において、式(I)の化合物は、次のリストより選択される。
− 1−((4−(4−フルオロフェニル)−6−メトキシ−2H−クロメン−3−イル)メチル)−4−メチルピペラジン(AX−9)
− N
1−((4−(4−フルオロフェニル)−6−メトキシ−2H−クロメン−3−イル)メチル)−N
2,N
2−ジメチルエタン−1,2−ジアミン(AX−10)
− 1−((6−(シクロプロピルメトキシ)−4−(4−フルオロフェニル)−2H−クロメン−3−イル)メチル)−4−メチルピペラジン(AX−33)
− 4−((4−(4−フルオロフェニル)−6−(トリフルオロメトキシ)−2H−クロメン−3−イル)メチル)モルホリン(AX−27)
− 4−((6−(シクロプロピルメトキシ)−4−(4−フルオロフェニル)−2H−クロメン−3−イル)メチル)モルホリン(AX−35)
− N−((6−(シクロプロピルメトキシ)−4−(4−フルオロフェニル)−2H−クロメン−3−イル)メチル)エタンアミン(AX−36)。
【0034】
本発明の別の局面は、薬物の製造のための、上述の式(I)の化合物の使用に関する。
【0035】
本発明の別の局面は、Tリンパ球におけるTCR−Nck相互作用の介在する疾患または障害を処置するための薬物の製造のための、上述の式(I)の化合物の使用に関する。
【0036】
この記載全体にわたり、疾患の「処置」、疾患を「処置する」という用語、またはその他の文法的に関連する表現は、こうした疾患の根治的治療および対症療法または予防的処置を示す。
【0037】
好ましい実施形態において、Tリンパ球におけるTCR−Nck相互作用の介在する疾患または障害は、移植片拒絶、免疫性、自己免疫性および炎症性の疾患、神経変性疾患、血液病、ならびに増殖性疾患の中から選択される。
【0038】
より好ましい実施形態において、Tリンパ球におけるTCR−Nck相互作用の介在する疾患または障害は、移植片拒絶、関節リウマチ、乾癬性関節炎、乾癬、I型糖尿病、糖尿病に関連する合併症、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、アトピー性皮膚炎、肥満細胞の介在するアレルギー反応、白血病、リンパ腫、ならびに白血病およびリンパ腫に関連する血栓閉塞性およびアレルギー性の合併症より選択される。
【0039】
本発明の別の局面は、Tリンパ球におけるTCR−Nck相互作用の介在する疾患または障害の処置におけるその使用に対して式(I)の化合物に言及する。
【0040】
本発明の別の局面は、上述の式(I)の化合物と、1つまたはそれ以上の薬学的に許容できる賦形剤とを含む医薬組成物に関する。
【0041】
本発明に記載される化合物、その薬学的に許容できる塩、および/またはそれらを含有する医薬組成物などの溶媒和化合物を、併用療法を提供するために他の付加的な薬物とともに用いることもできる。前記付加的な薬物は、同じ医薬組成物の一部であってもよいし、代替的には同時投与のための別個の組成物の形で提供されるか、あるいは式(I)の化合物またはその異性体、溶媒和化合物、もしくは薬学的に許容できる塩を含む医薬組成物に提供されなくてもよい。
【0042】
別様に示されない限り、本発明の化合物は、1つまたはそれ以上の同位体濃縮された原子の存在のみが異なる化合物をも含む。たとえば、水素の重水素またはトリチウムによる置換、あるいは炭素の
13Cもしくは
14C濃縮炭素または
15N濃縮窒素による置換以外は前記構造を有する化合物は、本発明の範囲内である。
【0043】
治療用途に対する式(I)の化合物は、固体形状または薬学的に許容できる希釈剤中の水性懸濁物として調製される。これらの調製物は任意の好適な投与経路によって投与されてもよく、前記調製物は選択された投与経路に対する薬学的に適切な方法で調合される。特定の実施形態において、本発明によって提供される式(I)の化合物の投与は、経口、局所、直腸、または非経口(皮下、腹腔内、皮内、筋肉内、静脈内などを含む)経路によって行われる。薬物投与の異なる医薬形状、およびそれらを得るために必要な賦形剤の概説は、たとえば「生薬学の約定(Treaty of Galenic Pharmacy)」C.ファウリ・イ・トリリョ(Fauli i Trillo)、1993、ルサン(Luzan)5、SA エディシオネス(Ediciones)、マドリード(Madrid)、またはその他のスペイン、欧州もしくは米国薬局方に共通もしくは類似のものなどに見出すことができる。
【0044】
治療における適用に対して、式(I)の化合物、それらの異性体、塩または溶媒和化合物は、好ましくは許容できるかまたは実質的に純粋な医薬形状であること、すなわちたとえば希釈剤および担体などの通常の医薬添加剤を除いて、薬学的に許容できるレベルの純度を有し、かつ通常の用量レベルにおいて毒性であると考えられる材料を含まないことが見出される。活性物質に対する純度レベルは、好ましくは50%より高く、より好ましくは70%より高く、より好ましくは90%より大きい。好ましい実施形態において、純度レベルは式(I)の化合物またはその異性体、塩もしくは溶媒和化合物に対して95%より高い。
【0045】
本発明の化合物は、遊離化合物または溶媒和化合物として結晶形状になっていてもよく、両方の形状が本発明の範囲内にあることが意図される。ここで、本明細書において用いられる「溶媒和化合物」という用語は、薬学的に許容できる溶媒和化合物、すなわち薬物の製造に用いられ得る式(I)の化合物の溶媒和化合物と、薬学的に許容できる塩または溶媒和化合物の調製に有用であり得る、薬学的に許容できない溶媒和化合物との両方を含む。薬学的に許容できる溶媒和化合物の性質は、薬学的に許容できるものであれば重大ではない。特定の実施形態において、溶媒和化合物は水和物である。溶媒和化合物は、この主題の技術者に周知の従来の溶媒和法によって得られてもよい。
【0046】
式(I)によって表される本発明の化合物、特に前述のこの一般式に属する特定の化合物は、キラル中心の存在によって、光学異性体またはエナンチオマーを含む、複数の結合の存在に依存する(例、Z、E)異性体を含み得る。異性体、エナンチオマーまたは個々のジアステレオ異性体、およびそれらの混合物は本発明の範囲内にある。個々のエナンチオマーまたはジアステレオ異性体、たとえばそれらの混合物などは、従来の技術によって分離されてもよい。
【0047】
本発明の別の局面は、T細胞におけるTCR−Nck相互作用の介在する疾患または障害を処置する方法であり、この方法は、投与を必要とする患者に治療上有効な量の式(I)の化合物を投与するステップを含む。
【0048】
本明細書において使用される「治療上有効な量」という用語は、疾患の症状を低減する所望の効果を生じさせるために十分な活性化合物の量を示す。用量は、臨床評価によって有害とされて治療上処置不能とされるような望ましくない副作用をもたらす量で使用されるべきではない。一般的に、用量は患者の年齢、状態、性別、および疾患の程度、ならびに投与の経路および頻度によって変動し、場合ごとに定められる。
【0049】
本発明の別の局面は、以下のステップを含む、上述の式(I)の化合物を得る方法に関する。
a)式(II)の化合物を、式(III)の化合物および式(IV)の化合物と反応させるステップであって、
【化2】
式中、R
1、R
2、R
3、およびR
4は請求項1と同じ意味を有する、ステップ、および
b)1つまたはそれ以上のステップにおいて、式(II)の化合物を式(I)の化合物に変換するステップ。
【0050】
本記載および請求項の全体にわたって、「含む(comprise)」という言葉およびその変形は、他の技術的特徴、添加剤、構成要素またはステップを除外することを意図するものではない。この主題の専門家には、本発明の記載および実施の部分から、本発明の他の目的、利点および特徴が明らかになるだろう。以下の実施例および図面は例示のために提供されるものであって、本発明を限定することは意図されない。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】本発明のテスト化合物の各々に対して、Tリンパ球の増殖を阻害する能力を表す図である。
【
図2】プラセボを受けた対象および化合物AX−104を受けた対象の間の、研究中の神経細胞損傷のレベルの推定を表す図である。
【
図3】プラセボを受けた対象および化合物AX−104を受けた対象の間の、研究中の体重の推移(weitgh pogression)を表す図である。
【実施例】
【0052】
本発明の化合物の有効性を示す、本発明者らの行ったテストによって本発明を示す。
【0053】
実施例1:本発明の化合物の合成
AX−101の合成スキーム
【化3】
AX−101(遊離塩基)の合成:AX−24.HCl(1g、1eq.)の無水DCM(10ml)溶液に、BBr
3(0.79g、1.2eq.)を−78℃にて滴下して加え、RTにて一晩撹拌した。TLCによって反応をモニタした。完了後に、反応混合物を飽和重炭酸ナトリウムの冷溶液に注ぎ入れ、DCM(2x20ml)で抽出した。混合有機層を水(20ml)、生理食塩水(10ml)で洗浄し、Na
2SO
4上で乾燥させた。カラムクロマトグラフィー(100%酢酸エチル)による粗生成物の精製によって、HPLCによる97.8%の純度を有する0.5gの所望の生成物(薄茶色の固体)を得た。
1H NMR(400 MHz,DMSO−d
6):δ 8.80(s,1H),7.31−7.27(m,2H),7.20−7.17(m,2H),6.68−6.66(d,2H),6.51−6.28,(dd,1H),5.93(s,1H),4.73(s,1H),2.96(s,2H),2.29(b,4H),1.61(b,4H)。C
20H
20FNO
2に対する理論上のMS:325.4;実際のM
++1,326.1.
【0054】
AX−104の合成スキーム
【化4】
AX−104の合成:AX−101(0.7g、1eq.)、K
2CO
3(1g、3eq.)、臭化シクロプロピルメチル(1.16g、4eq.)のDMF(10ml)およびアセトン(20ml)溶液の混合物に、臭化テトラメチルアンモニウム(0.1g、触媒)を加えた。得られた反応混合物を80℃にて一晩加熱した。TLCによって反応を制御した。完了後に、反応混合物を冷水(40ml)に注ぎ入れ、酢酸エチル(3×20ml)で抽出した。混合有機層を水(2×15ml)、生理食塩水(10ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。カラムクロマトグラフィー(20%酢酸エチルのヘキサン溶液)による粗生成物の精製によって、HPLCによる96%の純度を有する0.1gの所望の生成物を得た。
1H NMR(400 MHz,DMSO−d
6):δ 7.31−7.27(m,2H),7.21−7.19(m,2H),6.78−6.76(d,2H),6.70−6.67(dd,1H),5.97−5.96(d,1H),3.58−3.56(d,2H),2.97(s,2H),2.3(b,4H),1.61(b,4H),1.8−1.2(m,4H),0.49−0.44(m,2H),0.21−0.18(m,2H)。C
24H
26FNO
2に対する理論上のMS:379.5;実際のM
++1,380.1。
【0055】
AX−133からAX−136に対する合成スキーム
【化5】
化合物Bの合成:化合物A(10g、1eq.)の無水DCM(150ml)溶液に、BBr
3(11.4g、1.3eq.)を0℃にて滴下して加え、RTにて一晩撹拌した。TLCによって反応を制御した。完了後に、反応混合物を冷水に注ぎ入れ、DCM(2x150ml)で抽出した。混合有機層を水(2×70ml)、生理食塩水(20ml)で洗浄し、Na
2SO
4上で乾燥させた。カラムクロマトグラフィー(40%酢酸エチルのヘキサン溶液)による粗生成物の精製によって、4.7gの所望の生成物を得た。C
16H
11FO
3に対する理論上のMS:324.12,実際のM
++1,325.2
【0056】
化合物Cの合成:化合物B(5.5g、1eq.)、K
2CO
3(11.2g、4eq.)、臭化シクロプロピルメチル(5.5g、2eq.)のDMF(50ml)溶液の混合物に、臭化テトラメチルアンモニウム(0.1g、触媒)を加えた。得られた反応混合物を75℃にて一晩加熱した。TLCによって反応を制御した。完了後に、混合物を冷水(100ml)に注ぎ入れ、酢酸エチル(3×70ml)で抽出した。混合有機層を水(2×40ml)、生理食塩水(20ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。カラムクロマトグラフィー(10%酢酸エチルのヘキサン溶液)による粗生成物の精製によって、1.7gの所望の生成物を得た。C
20H
17FO
3に対する理論上のMS:324.12,実際のM
++1,325.2
【0057】
化合物Dの合成:化合物C(3g、1eq.)の混合物に、水素化ホウ素ナトリウム(0.17g、0.5eq.)をトルエン(20ml)、メタノール(2ml)中でRTにて滴下して加え、この温度で2h撹拌した。TLCによって反応をモニタした。完了後に、混合物を冷水(100ml)に注ぎ入れ、酢酸エチル(2×30ml)で抽出した。混合有機層を水(20ml)、生理食塩水(10ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。減圧下での有機層の蒸発によって、2.7gの所望の生成物を得た。この材料を、精製および分析なしに次のステップに直接用いた。
【0058】
化合物Eの合成:化合物D(3.5g、1eq.)の混合物に、水素化ホウ素ナトリウムをトルエン(30ml)、塩化チオニル(1.78g、1.4eq.)中で0℃にて滴下して加え、RTにて2h撹拌した。TLCによって反応をモニタした。完了後に、混合物を氷冷水(25ml)に注ぎ入れ、酢酸エチル(2×25ml)で抽出した。混合有機層を水(30ml)、生理食塩水(10ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。減圧下での有機層の蒸発(真空蒸発)によって、3.4gの原料生成物を得た。この材料を、精製および分析なしに次のステップに直接用いた。
【0059】
AX−133の合成:化合物E(0.3g、1eq.)、K
2CO
3(0.36gの3eq.)、N−メチルピペラジン(0.13g、1.5eq.)のジイソプロピルエーテル(15ml)溶液の混合物を、RTにて一晩撹拌した。TLCによって反応をモニタした。完了後に、混合物を冷水(20ml)に注ぎ入れ、酢酸エチル(2×30ml)で抽出した。混合有機層を水(20ml)、生理食塩水(10ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。カラムクロマトグラフィー(10%メタノールのDCM溶液)による粗生成物の精製によって、HPLCによる92.9%の純度を有する40mgの所望の生成物を得た。
1H NMR(400 MHz,CDCl
3):δ 7.11−7.2(m,4H),6.78−6.75(d,1H),6.65−6.63(dd,1H),6.15−6.14(d,1H),4.78(s,2H),3.57−3.55(d,2H),2.97(s,2H),2.52(b,8H),1.23(s,3H),1.14−1.8(m,1H),0.56−0.52(m,2H),0.24−0.020(m,2H)。C
25H
29FN
2O
2に対する理論上のMS:408.51;実際のM
++1,409.2。
【0060】
AX−134の合成:化合物E(0.3g、1eq.)、K
2CO
3(0.55g、5eq.)、N,N−ジメチルエチレンジアミン(0.28g、4eq.)のジイソプロピルエーテル(15ml)溶液の混合物を、2h還流した。TLCによって反応をモニタした。完了後に、混合物を冷水(20ml)に注ぎ入れ、酢酸エチル(2×30ml)で抽出した。混合有機層を水(20ml)、生理食塩水(10ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。カラムクロマトグラフィー(12%メタノールのDCM溶液)による粗生成物の精製によって、HPLCによる93.2%の純度を有する80mgの所望の生成物を得た。
1H NMR(CDCl
3):δ 7.16−7.8(m,4H),6.80−6.77(d,1H),6.68−6.63(dd,1H),6.18−6.17(d,1H),4.85(s,2H),3.60−3.58(d,2H),3.19(s,2H),2.55−2.52(t,2H),2.34−2.31(t,2H),2.18(b,5H),1.14−1.12(m,1H),0.57−0.55(m,2H),0.25−0.24(m,2H)。C
24H
29FN
2O
2に対する理論上のMS:396.5;実際のM
++1,397.2。
【0061】
AX−135の合成:化合物E(0.2g、1eq.)、K
2CO
3(0.24gの3eq.)、モルホリン(0.1g、2eq.)のジイソプロピルエーテル(15ml)溶液の混合物を、2h還流した。TLCによって反応をモニタした。完了後に、混合物を冷水(20ml)に注ぎ入れ、酢酸エチル(2×20ml)で抽出した。混合有機層を水(20ml)、生理食塩水(10ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。カラムクロマトグラフィー(30%酢酸エチルのヘキサン溶液)による粗生成物の精製によって、HPLCによる95.8%の純度を有する45mgの所望の生成物を得た。
1H NMR(DMSO−d
6):δ 7.37−7.26(t,2H),7.21−7.16(m,2H),6.78−6.76(d,1H),6.71−6.68(dd,1H),5.97−5.96(d,1H),4.75(s,2H),3.58−3.56(d,2H),3.52−3.50(m,2H),2.87(s,2H),2.21(b,4H),1.8−1.3(m,1H),0.49〜0.44(m,2H),0.21〜0.17(m,2H)。C
24H
26FNO
3に対する理論上のMS:395.47;実際のM
++1,396.1。
【0062】
AX−136の合成:化合物E(0.3g、1eq.)、K
2CO
3(0.36gの3eq.)、エチルアミン塩酸塩(0.22g、3eq.)のDMF(10ml)溶液の混合物を、RTにて一晩撹拌した。TLCによって反応をモニタした。完了後に、混合物を冷水(20ml)に注ぎ入れ、酢酸エチル(3×20ml)で抽出した。混合有機層を水(2×15ml)、生理食塩水(10ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。カラムクロマトグラフィー(5%メタノールのDCM溶液)による粗生成物の精製によって、HPLCによる92.2%の純度を有する50mgの所望の生成物を得た。
1H NMR(CDCl
3):δ 7.16−7.9(m,4H),6.80−6.78(d,1H),6.68−6 63(dd,1H),6.19−6.17(s,1H),4.83(s,2H),3.60−3.58(d,2H),3.2(s,2H),2.54−2.49(q,2H),1.16−1.12(m,1H),1.02−0.98(t,3H),0.59 to 0.54(m,2H),0.27−0.23(m,2H)。C
24H
26FNO
3に対する理論上のMS:353.43;実際のM−44.3,309.1(エチルアミン基は質量を分割する)。
【0063】
AX−102、AX−117およびAX−118に対する合成スキーム
【化6】
化合物Bの合成:化合物A(3g、1eq.)、K
2CO
3(3.06g、2eq.)、エチルクロロジフルオロアセテート(2.2g、1.3eq.)のDMF(20ml)溶液の混合物を、75℃にて一晩加熱した。TLCによって反応をモニタした。完了後に、混合物を冷水(50ml)に注ぎ入れ、酢酸エチル(3×50ml)で抽出した。混合有機層を水(2×30ml)、生理食塩水(20ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。カラムクロマトグラフィー(10%酢酸エチルのヘキサン溶液)による粗生成物の精製によって、1gの所望の生成物を得た。
1H NMR(DMSO−d
6) C
17H
11F
3NO
3に対する理論上のMS:320.26;実際のM
++1,321.1
【0064】
化合物Cの合成:化合物B(1g、1eq.)、水素化ホウ素ナトリウム(0.05g、0.5eq.)のトルエン(10ml)溶液の混合物に、メタノール(2ml)をRTにて滴下して加え、この温度で2h撹拌した。TLCによって反応をモニタした。完了後に、混合物を冷水(30ml)に注ぎ入れ、酢酸エチル(2×30ml)で抽出した。混合有機層を水(15ml)、生理食塩水(10ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。減圧下での有機層の蒸発(真空蒸発)によって、0.9gの所望の生成物を得た。この材料を、精製および分析なしに次のステップに直接用いた。
【0065】
化合物Dの合成:化合物C(0.9g、1eq.)のトルエン(20ml)溶液の混合物に、塩化チオニル(0.43g、1.3eq.)を0℃にて滴下して加え、RTにて2h撹拌した。TLCによって反応をモニタした。完了後に、混合物を冷水(20ml)に注ぎ入れ、酢酸エチル(2×30ml)で抽出した。混合有機層を水(20ml)、生理食塩水(10ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。減圧下での有機層の蒸発(真空蒸発)によって、0.9gの原料生成物を得た。この材料を、精製および分析なしに次のステップに直接用いた。
【0066】
AX−102の合成:化合物D(0.25g、1eq.)、K
2CO
3(0.5g、5eq.)、およびピロリジン(0.15g、3eq.)のジイソプロピルエーテル(15ml)溶液の混合物を、60℃にて2h加熱した。TLCによって反応をモニタした。完了後に、混合物を冷水(20ml)に注ぎ入れ、酢酸エチル(2×25ml)で抽出した。混合有機層を水(20ml)、生理食塩水(10ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。カラムクロマトグラフィー(40%酢酸エチルのヘキサン溶液)による粗生成物の精製によって、94.4%HPLC純度30を有する50mgの所望の生成物を与えた。
1H NMR(DMSO−d
6)
1H NMR(CDCl
3)δ 7.12−7.11(d,4H),6.88−6.81(m,2H),6.47−6.10(q,1H),4.9(s,2H),3.0(s,2H),2.38(b,2H),1.70(b,4H)。C
21H
20F
3NO
2に対する理論上のMS:375.4;実際のM
++1,376.1。
【0067】
AX−117の合成:化合物D(0.25g、1eq.)、K
2CO
3(0.3g、3eq.)、およびN−メチルピペラジン(0.11g、1.5eq.)のジイソプロピルエーテル(15ml)溶液の混合物を、60℃にて2h加熱した。TLCによって反応をモニタした。完了後に、混合物を冷水(20ml)に注ぎ入れ、酢酸エチル(2×30ml)で抽出した。混合有機層を水(20ml)、生理食塩水(10ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。カラムクロマトグラフィー(8%メタノールのDCM溶液)による粗生成物の精製によって、HPLCによる96.3%の純度を有する40mgの所望の生成物を得た。
1H NMR(DMSO−d
6)δ 7.32−7.30(b,2H),7.22(b,2H),7.13−6.76(1H),6.98− 9.89(2H),6.2(s,1H),4.88(s,2H),2.91(s,3H),2.67)b,4H),2.41(b,8H)。C
22H
23F
3N
2O
2に対する理論上のMS:404.43;実際のM
++1,405.1。
【0068】
AX−118.HClの合成:化合物D(0.2g、1eq.)、K
2CO
3(0.32g、4eq.)、およびN,N−ジメチルエチレンジアミン(0.15g、3eq.)のジイソプロピルエーテル(10mL)溶液の混合物を、60℃にて2h加熱した。TLCによって反応をモニタした。完了後に、混合物を冷水(20ml)に注ぎ入れ、酢酸エチル(2×25ml)で抽出した。混合有機層を水(20ml)、生理食塩水(10ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。カラムクロマトグラフィー(7%メタノールのDCM溶液)による粗生成物の精製によって、HPLCによる92%の純度を有する50mgの所望の生成物を得た。前の生成物をジオキサン(4ml)に溶解し、0.5mlの4M HClを加えてRTにて撹拌した。2h後に得られた固体をろ過し、10mlのn−ペンタンで洗浄し、真空乾燥して、HPLCによる93%の純度を有する40mgの純生成物を得た。
1H NMR(DMSO−d
6)δ 10.7(b,1H),9.76(b,2H),7.42−7.34(m,4H),7.17−6.98(m,3H),6.26(s,1H),5.04(s,2H),3.6(b,2H),3.3(b,2H),2.79(b,6H)。C
21H
24ClF
3N
2O
2に対する理論上のMS:428.88;実際のM
++1,393.1(−HCl)。
【0069】
AX−109からAX−112に対する合成スキーム
【化7】
化合物Bの合成:化合物A(3g、1eq.)、水素化ホウ素ナトリウム(0.17g、0.5eq.)のトルエン(20ml)溶液の混合物に、メタノール(2ml)をRTにて滴下して加え、この温度で2h撹拌した。TLCによって反応をモニタした。完了後に、混合物を冷水(100ml)に注ぎ入れ、酢酸エチル(2×30ml)で抽出した。混合有機層を水(20ml)、生理食塩水(10ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。減圧下での有機層の蒸発によって、2.7gの所望の生成物を得た。この材料を、精製および分析なしに次のステップに直接用いた。
【0070】
化合物Cの合成:化合物B(3.5g、1eq.)のトルエン(30ml)溶液の混合物に、塩化チオニル(1.78g、1.4eq.)を0℃にて滴下して加え、RT15にて2h撹拌した。TLCによって反応をモニタした。完了後に、混合物を氷冷水(25ml)に注ぎ入れ、酢酸エチル(2×25ml)で抽出した。混合有機層を水(30ml)、生理食塩水(10ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。減圧下での有機層の蒸発(真空蒸発)によって、3.4gの粗生成物を得た。この材料を、精製および分析なしに次のステップに直接用いた。
【0071】
AX−109の合成:化合物C(0.4g、1eq.)、K
2CO
3(0.5g、3eq.)、およびN−メチルピペラジン(0.15g、1.2eq.)のジイソプロピルエーテル(4ml)溶液の混合物を、RTにて15h撹拌した。TLCによって反応をモニタした。次いで冷水(20ml)に注ぎ入れ、酢酸エチル(2×30ml)で抽出した。混合有機層を水(20ml)、生理食塩水(10ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。カラムクロマトグラフィー(5%メタノールのDCM溶液)による粗生成物の精製によって、HPLCによる94.5%の純度を有する170mgの所望の生成物を得た。
1H NMR(CDCl
3)δ 7.10−7.09(d,4H),6.82−6.79(d,1H),6.68−6.65(dd,1H),6.13(d,1H),4.79(s,2H),3.61(s,3H),2.95(s,2H),2.51−2.44(b,8H),2.08(s,2H)。C
22H
25FN
2O
2に対する理論上のMS:368.4;実際のM
++1,369.2。
【0072】
AX−110の合成:化合物C(0.4g、1eq.)、K
2CO
3(0.5g、3eq.)、および10N,N−ジメチルエチレンジアミン(0.13g、1.2eq.)のジイソプロピルエーテル(4ml)溶液の混合物を、RTにて15h撹拌した。TLCによって反応をモニタした。完了後に、混合物を冷水(20ml)に注ぎ入れ、酢酸エチル(2×30ml)で抽出した。混合有機層を水(20ml)、生理食塩水(10ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。HCl塩の形成後に、飽和重炭酸ナトリウムを用いて中和することによって行われた粗生成物の精製によって、HPLCによる94%の純度を有する130mgの所望の生成物を得た。
1H NMR(CDCl
3)δ 7.17−7.08(m,4H),6.82−6.80(d,1H),6.67−6.65(dd,1H),6.15−6.14(d,1H),4.82(s,2H),3.62(s,3H),3.21(s,2H),2.55−2.53(t,2H),2.35−2.32(t,2H),2.19(s,6H)。C
21H
25FN
2O
2に対する理論上のMS:356.4;実際のM
++1,357.1。
【0073】
AX−111の合成:化合物C(0.4g、1eq.)、K
2CO
3(0.5g、3eq.)、およびモルホリン(0.13g、1.2eq.)のジイソプロピルエーテル(4ml)溶液の混合物を、RTにて15h撹拌した。TLCによって反応をモニタした。完了後に、混合物を冷水(20ml)に注ぎ入れ、酢酸エチル(2×30ml)で抽出した。混合有機層を水(20ml)、生理食塩水(10ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。ジエチルエーテルを用いた結晶化によって行われた粗生成物の精製によって、HPLCによる96.5%の純度を有する160mgの所望の生成物を得た。
1H NMR(CDCl
3)δ 7.12−7.10(d,4H),6.82−6.80(d,1H),6.68−6.65(dd,1H),6.13(d,1H),4.82(s,2H),3.65−3.63(m,4H),3.62(s,3H),2.91(s,2H),2.31(b,4H)。C
21H
22FNO
3に対する理論上のMS:355.4;実際のM
++1,356.1。
【0074】
AX−112の合成:化合物C(0.4g、1eq.)、K
2CO
3(0.5g、3eq.)、およびエチルアミン.HCl(0.12g、1.2eq.)のジイソプロピルエーテル(4ml)溶液の混合物を、RTにて15h撹拌した。TLCによって反応をモニタした。完了後に、混合物を冷水(20ml)に注ぎ入れ、酢酸エチル(2×30ml)で抽出した。混合有機層を水(20ml)、生理食塩水(10ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。カラムクロマトグラフィー(6%メタノールのDCM溶液)による粗生成物の精製によって、HPLCによる95.0%の純度を有する120mgの所望の生成物を得た。
1H NMR(CDCl
3)δ 7.26−7.09(m,4H),6.82−6.80(d,1H),6.68−6.65(dd,1H),6.14(d,1H),4.86(s,2H),3.62(s,3H),3.25(s,2H),2.58−2.53(m,2H),1.05−1.01(t,3H)。C
19H
20FNO
2に対する理論上のMS:313.4;実際のM
++1,269.2(−NHEt)。
【0075】
AX−103およびAX−126からAX−128に対する合成スキーム
【化8】
化合物Bの合成:化合物A(3.5g、1eq.)のトルエン(30ml)溶液の混合物に、塩化チオニル(1.78g、1.4eq.)塩化物を0℃にて滴下して加え、RTにて2h撹拌した。TLCによって反応をモニタした。完了後に、混合物を氷冷水(25ml)に注ぎ入れ、酢酸エチル(2×25ml)で抽出した。混合有機層を水(30ml)、生理食塩水(10ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。減圧下での有機層の蒸発によって、2.4gの粗生成物を得た。この材料を、精製および分析なしに次のステップに直接用いた。
【0076】
AX−103.HClの合成:化合物B(0.2g、1eq.)、K
2CO
3(0.2g、3eq.)、およびピロリジン(0.05g、1.2eq.)のジイソプロピルエーテル(4ml)溶液の混合物を、RTにて15h撹拌した。TLCによって反応をモニタした。完了後に、混合物を冷水(20ml)に注ぎ入れ、酢酸エチル(2×30ml)で抽出した。混合有機層を水(20ml)、生理食塩水(10ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。粗生成物を、HPLCによる98.2%の純度を有する45mgのスケールで、そのHCl塩に転換した。
1H NMR(CDCl
3)δ 7.26−7.20(m,2H),7.17−7.14(m,2H),7.14− 7.06(d,1H),6.95−6.93(d,1H),6.41−6.40(d,1H),5.29(s,2H),3.72−3.66(m,4H)。C
21H
23ClF
4N
2O
2に対する理論上のMS:429.84;実際のM
++1,394.1(−HCl)。
【0077】
AX−126.HClの合成:化合物B(0.4g、1eq.)、K
2CO
3(0.5g、3eq.)、およびN,N−ジメチルエチレンジアミン(0.13g、1.2eq.)のジイソプロピルエーテル(4ml)溶液の混合物を、RTにて15h撹拌した。TLCによって反応をモニタした。完了後に、混合物を冷水(20ml)に注ぎ入れ、酢酸エチル(2×30ml)で抽出した。混合有機層を水(20ml)、生理食塩水(10ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。HCl塩の形成によって行われた粗生成物の精製によって、HPLCによる93.7%の純度を有する60mgの所望の生成物を得た。
1H NMR(DMSO−d
6)δ 10.8(b,1H),9.70(b,1H),7.93−7.92(b,2H),7.30−7.24(m,2H),7.19−7.11(m,2H),7.01− 6.96(m,2H),6.87−6.85(d,1H),6.3(s,1H),5.0(s,2H),3.55(s,2H),3.40(b,2H),2.78(b,6H)。C
21H
23ClF
4N
2O
2に対する理論上のMS:446.87;実際のM
++1,411.1(−HCl)。
【0078】
AX−127の合成:化合物B(0.4g、1eq.)、K
2CO
3(0.5g、3eq.)、およびモルホリン(0.13g、1.2eq.)のジイソプロピルエーテル(4ml)溶液の混合物を、RTにて15h撹拌した。TLCによって反応をモニタした。完了後に、混合物を冷水(20ml)に注ぎ入れ、酢酸エチル(2×30ml)で抽出した。混合有機層を水(20ml)、生理食塩水(10ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。それを減圧下で蒸発(真空蒸発)させて、HPLCによる96%の純度を有する110mgの所望の生成物を得た。
1H NMR(CDCl
3)δ 7.16−7.08(m,4H),6.97−6.95(d,1H),6.85−6.83(d,1H),6.40−6.39(b,1H),4.90(s,2H),3.66− 3.64(t,4H),2.92(s,2H),2.31(b,4H)。C
21H
19F
4NO
3に対する理論上のMS:409.3;実際のM
++1,410.1。
【0079】
AX−128.HClの合成:化合物B(0.4g、1eq.)、K
2CO
3(0.5g、3eq.)、およびエチルアミン.HCl(0.12g、1.2eq.)のジイソプロピルエーテル(4ml)溶液の混合物を、RTにて1h撹拌した。TLCによって反応をモニタした。完了後に、混合物を冷水(20ml)に注ぎ入れ、酢酸エチル(2×30ml)で抽出した。混合有機層を水(20ml)、生理食塩水(10ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。HCl塩の形成によって行われた粗生成物の精製によって、HPLCによる98.2%の純度を有する65mgの所望の生成物を得た。
1H NMR(CDCl
3)δ 7.27−7.24(m,2H),7.21−7.16(m,2H),7.04−7.01(m,1H),6.86−6.84(d,1H),6.44−6.43(b,1H),5.13(s,2H),3.58−3.55(t,2H),2.91−2.87(m,2H)。C
19H
18ClF
4NO
2に対する理論上のMS:405.8;実際のM
++1,368.1(HCl)。
【0080】
実施例2:TCR刺激によって誘導されるT細胞増殖の阻害。
TCRがTリンパ球の増殖を誘導する能力に対する化合物AX−101、AX−103HCl、AX−104、AX−109、AX−110、AX−111、AX−127、AX−133、AX−135、およびAX−136の効果を、健康なヒトドナーの血液から得た初代Tリンパ球(PBMC、末梢血単核細胞(peripheral blood mononuclear cells))において評価した。フィコール−パック・プラス(Ficoll−Paque Plus)密度勾配における遠心分離によって、静脈血からボランティアのPBMCを単離した。精製した細胞(NWT;ナイロン・ウッドT細胞(Nylon Wood T cells))を、96ウェルプレート(0.5×10
5/ウェル)で200ulの完全培地にて3つ組で培養し、1uMおよび10uMという異なる濃度の化合物の存在下または不在下で、OKT3(10ug/ml)またはOKT3(10ug/ml)およびCD28によって刺激した。培養物を3日間インキュベートし、培養の最後の12hに0.5uCi[3H]TdR/ウェルを加えた後に分析した。液体シンチレーション測定によって、DNAに取り込まれた放射活性を定めた。細胞分裂の際に放射活性は娘細胞に取り込まれるため、これが細胞増殖の程度であると考えられる。テスト化合物の阻害能力を
図1に示す。
【0081】
実施例3:げっ歯動物における経口投与後の化合物AX−104の生物学的利用率の改善
化合物AX−104の薬物動態特性を、(国際公開第2012/042078号に記載される)化合物ECRA−24に対して観察される薬物動態特性に関して分析した。このために、ラットにおいて化合物の静脈内投与(ボーラス)と、化合物の溶液の経口経管栄養とを別々に行った(平均±SD;n=3)。表1および表2に示したデータにみられるとおり、経口投与後の化合物AX−104の合計生物学的利用率は24%であり、これに対してECRA−24の合計生物学的利用率は2%であった。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
実施例4:EAE(実験的自己免疫性脳脊髄炎(experimental autoimmune encephalomyelitis))のモデルに対するインビボテスト。
フロイント完全アジュバント(Freund’s Complete Adjuvant)(CFA、シグマアルドリッチ(Sigma−Aldrich))に乳化し、5mg/mlの結核菌(Mycobacterium tuberculosis)(ディフコ(Difco)のH37Ra株)を補充した合計150μgのペプチドMOG(ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(Myelin Oligodendrocyte Glycoprotein);MOG35−55、エスピケム(Espikem)、ドイツ)を両大腿領域において皮下注射することによって、処置グループ当たり10匹のC57BL/6メスマウス(6〜8週齢、体重20g)において慢性EAEのモデルを誘導した。マウスに直ちに150ngの百日咳毒素(シグマアルドリッチ)を腹腔内注射し、免疫化の48h後にもう一度腹腔内注射した。示された化合物(AX−104)を食塩水緩衝液にて調製し、免疫化と同じ日から始めて最初の10日間にわたって経口投与した。プラセボグループの対象は、食塩水緩衝液のみを含有する同等の経口用量を受けた。動物を計量し、以下のスケールに基づく症状の視覚的分析によって、プロセス外の外部観察者によって疾患の臨床的兆候を分析した。0=正常;1=尾が少し不自由であるか、後肢をわずかに引きずる;2=中程度の後肢脱力または軽度の運動失調;3=幾分重度の後肢脱力;4=重度の後肢脱力または軽度の前肢脱力または中程度の運動失調;5=明らかな中程度の前肢脱力を伴う対麻痺;および6=重度の前肢脱力または重度の運動失調を伴う対麻痺、瀕死状態または死亡。
図2は、化合物AX−104を受けた動物がプラセボグループと比較して低減したスコアを示す様子を示す。
【0085】
並行して、動物の一般的福祉および疾患の進行を示す測定値として、動物の体重もモニタした。
図3は、処置された動物がプラセボグループの動物と比較して顕著に低減した体重減少を示すことを示す。
【0086】
研究の最後に、動物に麻酔をして、4%パラホルムアルデヒドの0.1Mリン酸緩衝液(pH7.6)溶液によって心臓内灌流を行った。マウスの脳および脊髄を解剖して固定した。
【0087】
全体の結果は、化合物AX−104がこのモデルに関連する症状の影響を顕著に低減できることを示すものである。
【0088】
実施例5:血液細胞に対するインビトロテスト。
フィコール−パック・プラス(Ficoll−Paque Plus)密度勾配における遠心分離によって、静脈血から健康な成人ボランティアドナーのヒト末梢血単核細胞(PBMC)を単離した。精製したT細胞(NWT−0.5×10
5/ウェル)を、96ウェルプレートで200ulの完全培地にて3つ組で培養し、所望の濃度のテスト化合物の存在下または不在下で、OKT3(10ug/ml)またはOKT3(10ug/ml)およびCD28によって刺激する。培養物を3日間生育し、培養の最後の12hに0.5uCiの[
3H]TdR/ウェルのパルスを投与する。液体シンチレーション測定によって、DNAに取り込まれた放射活性を評価した。