特許第6505370号(P6505370)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6505370積層体およびインデックスマッチング層形成用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6505370
(24)【登録日】2019年4月5日
(45)【発行日】2019年4月24日
(54)【発明の名称】積層体およびインデックスマッチング層形成用組成物
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20190415BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20190415BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20190415BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20190415BHJP
【FI】
   G06F3/041 490
   G06F3/041 495
   B32B7/02 103
   C08F2/44 A
   H01B5/14 A
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-56012(P2014-56012)
(22)【出願日】2014年3月19日
(65)【公開番号】特開2014-209333(P2014-209333A)
(43)【公開日】2014年11月6日
【審査請求日】2016年7月26日
【審判番号】不服2018-6482(P2018-6482/J1)
【審判請求日】2018年5月11日
(31)【優先権主張番号】特願2013-65188(P2013-65188)
(32)【優先日】2013年3月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000168414
【氏名又は名称】荒川化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(72)【発明者】
【氏名】前田 幸勇
(72)【発明者】
【氏名】井上 明久
(72)【発明者】
【氏名】金森 太郎
【合議体】
【審判長】 ▲吉▼田 耕一
【審判官】 稲葉 和生
【審判官】 山田 正文
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/114056(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/32217(WO,A1)
【文献】 特開2009−132763(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F3/03-3/047
B32B7/02
H01B5/14
C08F2/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板、インデックスマッチング層および透明電極層がこの順に積層されてなり、インデックスマッチング層の屈折率が1.59〜1.80であり、かつ(A)屈折率1.7以上の金属酸化物粒子、(B)シリカ粒子および(C)樹脂成分を含んでなり、
前記(C)成分がジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートおよびペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種を含み、
前記(A)成分、(B)成分および(C)成分の合計量を100重量%とした場合、(A)成分40.8重量%超70重量%以下、成分(B)5.1重量%超25重量%以下および(C)成分22〜38重量%を含む組成物からなることを特徴とする積層体。
【請求項2】
前記金属酸化物粒子(A)が、酸化ジルコニウム粒子または酸化チタン粒子を含む、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
(A)屈折率1.7以上の金属酸化物粒子、(B)シリカ粒子、(C)重合性基を有する硬化性化合物を含んでなり、
前記(C)成分がジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートおよびペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種を含み、
前記(A)成分、(B)成分および(C)成分の合計量を100重量%とした場合、(A)成分40.8重量%超70重量%以下、成分(B)5.1重量%超25重量%以下および(C)成分22〜38重量%を含み、かつその硬化物の屈折率が1.59〜1.80であることを特徴とするインデックスマッチング層形成用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学用積層体およびインデックスマッチング層形成用組成物に関するもので
ある。
【背景技術】
【0002】
タッチパネル等の表示装置には、ガラス基板やポリエチレンテレフタレート(PET)
フィルム等の透明樹脂製基板上に、パターン状の透明導電体層が設けられた積層体が用い
られている。
【0003】
この積層体では、基板上の透明導電体層を有する部分(図1A)と透明導電体層を有さ
ない部分(図1B)との光学特性の差が大きいため、タッチパネル等の表示装置の前面に
前記積層体を配置すると、表示装置の視認性が低下するという問題があった。
【0004】
この問題を解決するために、基板と透明導電体層の間に屈折率の異なる層を設ける事で
、基板上の透明導電体層を有する部分(図1A)と透明導電体層を有さない部分(図1B
)との光学特性の差を小さくし、視認性を向上させることが行われている。特許文献1に
は、基板上に少なくとも1層のアンダーコート層を設け、このアンダーコート層の上に透
明導電体層を設けた積層体が開示されており、特許文献2には、基板上に高屈折率層、低
屈折率層および透明導電性薄膜層をこの順に積層した積層体が開示されている。また、特
許文献3は、骨見え抑制するために、透明基板と透明電極層の間に硬化樹脂層を設けた積
層体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−76432号公報
【特許文献2】特開2010−15861号公報
【特許文献3】WO2010/114056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、既存の硬化樹脂からなる中〜高屈折率層は、光学特性の調節による視認性
向上効果は得られるものの、硬化樹脂層の硬度が低いため透明導電体層積層後に残留する
内部応力によって変形が発生するという問題があった。これは、透明導電体層を積層する
際に生じる内部応力が、透明導電体層のパターン形成時に、透明導電体層を有する部分(
図1A)ではそのまま応力残留し、一方、透明導電体層を有さない部分(図1B)では応
力が解放される事で、積層体の面内に応力分布が生じる事による。そしてこの積層体の変
形は、表示装置の視認性低下に繋がっていた。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、光学特性に優れ、透明導電体層
積層後の変形が小さい積層体を形成可能な硬化性組成物および積層体を提供することを目
的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、屈折率1.7以上の金属酸
化物粒子と、シリカ粒子を一定割合以上含有する層を、インデックスマッチング層として
用いれば前記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0009】
本発明の硬化性組成物によれば、PETフィルム等の透明基板との密着性に優れ、高光
透過性であり、ヘイズが小さい中〜高屈折率(例えば、1.59〜1.80)の硬化体及
び透明導電体層積層後の変形が小さい積層体を形成することができる。
【0010】
また、本発明によれば、視認性に優れるタッチパネル等の表示装置を容易に、安価に製
造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、基板と透明導電体層とを有する従来の積層体を示す概略模式図である。
図2図2は、本発明の積層体の一例を示す概略模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、透明基板、インデックスマッチング層および透明電極層がこの順に積層されて
なり、インデックスマッチング層の屈折率が1.59〜1.80であり、かつ(A)屈折
率1.7以上の金属酸化物粒子、(B)シリカ粒子および(C)樹脂成分を含んでなり、
前記( A )成分 、( B )成分 および(C)成分の合計量を100重量%とした場合
、(A)成分35 〜75 重量%、成分(B)3〜35重量%および(C)成分22〜3
8重量%を含む組成物からなることを特徴とする積層体、
ならびに、(A)屈折率1.7以上の金属酸化物粒子、(B)シリカ粒子、(C)重合性
基を有する硬化性化合物を含んでなり、前記( A )成分 、( B )成分および(C)
成分の合計量を100重量%とした場合、(A)成分35 〜75 重量%、成分(B)3
〜35重量%および(C)成分22〜38重量%を含み、かつその硬化物の屈折率が1.
59〜1.80であることを特徴とするインデックスマッチング層形成用組成物を提供す
るものである。
【0013】
本発明の積層体は、図2に示すように、基板1と、少なくとも1層のインデックスマッ
チング層3と、透明導電体層2とをこの順に積層してなる。
【0014】
前記インデックスマッチング層は、中〜高屈折率を有し、高光透過性であり、特定範囲
内の金属酸化物粒子を含有するため、応力による変形が小さい。このため、得られる積層
体は、基板上の透明導電体層を有する部分(図1A)と透明導電体層を有さない部分(図
1B)との残留応力差によって生じる変形が小さく、光学特性に優れ、表示装置の視認性
に優れる積層体となる。
透明基板
発明で使用される透明基板としては、PETフィルム、TACフィルム、シクロオレフィ
ン系フィルム、アクリル系フィルム等などが挙げられる。
【0015】
前記基板の厚みは、所望の用途に応じて適宜選択すればよいが、好ましくは20μm〜
300μmであり、より好ましくは20μm〜200μmである。
【0016】
また、前記基板の屈折率は、前記インデックスマッチング層を設けることが得られる表
示装置の視認性に大きく寄与する点から、好ましくは1.45〜1.75であり、より好
ましくは1.45〜1.70である。
【0017】
また、透明基板には、インデックスマッチング層との密着性向上や傷つき防止のために
、必要に応じて、密着材、ハードコート材を適用してもよい。密着材およびハードコート
材の屈折率は、好ましくは1.45〜1.75であり、より好ましくは1.45〜1.7
0である。
インデックスマッチング層
本発明において、「インデックスマッチング層」とは、タッチパネル等の表示装置に用い
られる積層体を形成する層であって、PETフィルム等の透明基板と透明導電体層との間
に、基板上の透明導電体層を有する部分と透明導電体層を有さない部分との光学特性の差
を小さくする事を目的として設けられる層のことをいう。
【0018】
本発明において、インデックスマッチング層は、(A)屈折率1.7以上の金属酸化物
粒子、(B)シリカ粒子および(C)樹脂成分を含んでなり、前記( A )成分 、( B
)成分 および(C)成分の合計量を100重量%とした場合、(A)成分35 〜75
重量%、成分(B)3〜35重量%および(C)成分22〜38重量%を含む組成物から
なるものである。
(A)屈折率1.7以上の金属酸化物粒子
本発明に用いられる成分(A)は、特に限定されるものではないが、得られる硬化性組
成物の硬化膜の透明性、屈折率の観点から、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ
、チタン酸バリウム及び酸化亜鉛を主成分とする粒子であり、好ましくは酸化チタン、酸
化ジルコニウムである。これらは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることが
できる。
本発明に用いる金属酸化物粒子の形状は、特に限定されるものではないが、例えば、球状
、中空状、多孔質状、棒状、板状、繊維状、又は不定形状であり、好ましくは、球状であ
る。
【0019】
金属酸化物粒子の一次粒径は、通常、10nm〜100nmのものを使用できる。好ま
しくは10〜50nmである。本発明では、特定の1次平均粒子径を有する金属酸化物粒
子を1種単独で用いてもよく、1次平均粒子径の異なる2種以上の金属酸化物粒子を混合
して用いてもよい。
成分(A)として用いられる酸化物粒子は、紛体又は溶媒に分散した状態で用いることが
できるが、均一分散性が得易いことから、溶媒中に分散した粒子分散液の状態で用いるこ
とが好ましい。
前記粒子分散液は、分散溶媒に、金属酸化物粒子を分散させて製造することができ、溶媒
への分散性を向上させるために、各種の分散剤、分散助剤を用いてもよい。
分散溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール等
のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキ
サノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン、プロ
ピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエー
テルアセテート等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレング
リコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類
;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;ジメチルフォ
ルムアミド、N,N−ジメチルアセトアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類
を用いることができる。中でも、メタノール、イソプロパノール、ブタノール、メチルエ
チルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコール
モノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、トルエン、
キシレン、エチルベンゼンが好ましく、メチルエチルケトン、ブタノール、プロピレング
リコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、キ
シレン、エチルベンゼン、トルエンがより好ましい。分散媒は一種又は二種以上を混合し
て用いることができる。
分散剤としては、ノニオン型分散剤、カチオン型分散剤、アニオン型分散剤を用いる事が
できる。
【0020】
ノニオン型分散剤としては、ポリオキシエチレンアルキル構造を有するリン酸エステル
系ノニオン型分散剤が挙げられる。下記式(1)からなる分散剤が好ましく用いられる。
【0021】
【化1】
【0022】
(式中、Rは、同一でも異なってもよく、CnH2n+1−CH2O−(CH2CH2O
)m−CH2CH2O−を示す。mは8〜10、nは12〜16、xは1〜3である。)
3つのRは、同一でも異なってもよいが、通常は同一である。
【0023】
分散助剤としては、アセト酢酸メチル、アセチルアセトン、N,N−ジメチルアセトア
セトアミドから選択される一以上のものを好適に使用できる。アセト酢酸メチルは、変異
原性物質であるので、特にアセチルアセトン、N,N−ジメチルアセトアセトアミドが好
ましい。
【0024】
また、その他にも、例えば、アルミニウム化合物を用いることができる。アルミニウム
化合物の例としては、アルミニウムアルコキシド、アルミニウムβ−ジケトナート錯体な
どを挙げることができる。具体的には、トリエトキシアルミニウム、トリ(n−プロポキ
シ)アルミニウム、トリ(i−プロポキシ)アルミニウム、トリ(n−ブトキシ)アルミ
ニウム、トリ(sec−ブトキシ)アルミニウム等のアルコキシド化合物、アルミニウム
トリス(メチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、
トリス(アセトアセトナト)アルミニウム、アルミニウムモノアセチルアセトナトビス(
メチルアセテート)、アルミニウムモノアセチルアセトナトビス(エチルアセテート)等
のβ−ジケトナート錯体を挙げることができる。
【0025】
アルミニウム化合物の市販品としては、AIPD、PADM、AMD、ASBD、アル
ミニウムエトキサイド、ALCH、ALCH−50F、ALCH−75、ALCH−TR
、ALCH−TR−20、アルミキレートM、アルミキレートD、アルミキレートA(W
)、表面処理剤OL−1000、アルゴマー、アルゴマー800AF、アルゴマー100
0SF(以上、川研ファインケミカル社製)等を使用することができる。
分散液における各成分の配合量は、用途に応じて適宜設定できるが、通常、ジルコニア粒
子1〜50重量%、分散剤0.5〜10重量%、分散媒50〜90重量%であり、好まし
くは、ジルコニア粒子1〜40重量%、分散剤1〜5重量%、分散媒60〜90重量%で
ある。 分散剤の量が少ないと、粒径分布の大粒径側のテーリングが生じる場合がある。
【0026】
分散に先立ち、プレ分散をしてもよい。プレ分散では、分散媒、分散剤、分散助剤を容
器に入れて、ホモジナイザー等を用いて通常8000〜10000rpmで撹拌しながら
、ジルコニア粒子を加える。その後、さらに粒子の塊が目視で見られなくなるまで撹拌す
る。
【0027】
分散は、分散媒、分散剤、分散助剤および金属酸化物粒子をSCミル、アニュラー型ミ
ル、ピン型ミル等に入れ、通常周速5〜15m/sで、粒径の低下が観察されなくなるま
で継続する。通常数時間である。分散の際に、ガラスビーズ、ジルコニアビーズ等の分散
ビーズを用いることが好ましい。ビーズ径は特に限定されないが、通常0.05〜1mm
程度である。ビーズ径は、好ましくは0.05〜0.5mm、より好ましくは0.08〜
0.5mm、特に好ましくは0.08〜0.2mmである。
分散に先立ち、プレ分散をしてもよい。プレ分散では、ホモジナイザー等を用いて通常8
000〜10000rpmで粒子の塊が目視で見られなくなるまで撹拌する。
[市販品]
また成分( A ) として用いられる酸化物粒子を溶媒に分散した市販品としては、例え
ば、日産化学( 株) 製 商品名: OZ−S30K( メチルエチルケトン分散の酸化ジ
ルコニウム) 、OZ−S30−AC( メチルエチルケトン分散の酸化ジルコニウム)
、堺化学( 株) 製 商品名: SZR−K(メチルエチルケトン分散の酸化ジルコニウム
) 、( 株)日本触媒 製 商品名: AX−ZP(メチルエチルケトン分散の酸化ジルコ
ニウム )等を挙げることができる。
【0028】
これら粒子分散液中の金属酸化物粒子の体積基準の粒度分布における、累積分布50%
の値(D50)は、好ましくは5〜100nmであり、より好ましくは5〜80nmであ
る。累積分布90%の値(D90)は、好ましくは20〜130nmであり、より好まし
くは20〜100nmである。
【0029】
なお、粒度分布は、LB−550、株式会社堀場製作所製を用いて粒度分布測定を行う
ことで得られる。
【0030】
前記粒子分散液中の酸化ジルコニウム粒子のD50およびD90が前記範囲にあると、
表面凹凸の少ない、透明性の高い硬化膜が得られるため好ましい。
【0031】
成分( A ) として用いられる金属酸化物粒子は、以下の表面変性を加えてもよい。
表面変性を行うことにより、金属酸化物粒子を含有する硬化性組成物の硬化物の光学特性
や保存安定性を改善することができる。
表面変性は、公知の方法で用いることができる(例えば、特開2003−105034号
公報参照)。
ここで、表面処理剤としては、例えば、アルコキシシラン化合物、テトラブトキシチタ
ン、テトラブトキシジルコニウム、テトライソプロポキシアルミニウム等を挙げることが
できる。これらは、一種単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
アルコキシシラン化合物の具体例としては、γ − メタクリロキシプロピルトリメトキシ
シラン、γ − アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等
の分子内に不飽和二重結合を有する化合物群、γ − グリシドキシプロピルトリエトキシ
シラン、γ − グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等の分子内にエポキシ基を有す
る化合物群、γ − アミノプロピルトリエトキシシラン、γ − アミノプロピルトリメト
キシシラン等の分子内にアミノ基を有する化合物群、γ − メルカプトプロピルトリメト
キシシラン、γ − メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ − メルカプトプロピル
トリメトキシシラン等の分子内にメルカプト基を有する化合物群、メチルトリメトキシシ
ラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン等のアルキルシラン類等
を挙げることができる。これらの表面処理剤の中では、γ − メルカプトプロピルトリメ
トキシシラン、γ −グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシ
ラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン等が、表面処理された酸
化物粒子の分散安定性の点で好ましい。
また、表面処理剤としては、有機樹脂と共重合又は架橋反応する官能基を有するもの(反
応性表面処理剤) も好ましい。このような表面処理剤としては、上述した分子内に不飽
和二重結合を有する化合物群や、2 以上の重合性不飽和基、下記式( 2 ) に示す基、
及びシラノール基又は加水分解によってシラノール基を生成する基を有する化合物が好ま
しい。
− X − C ( = Y ) − N H − 式( 2 )
[ 式中、X は、N H 、O ( 酸素原子) 又はS ( イオウ原子) を示し、Y は、
O 又はS を示す。]
上記式( 1 ) に示す基は、好ましくは、ウレタン結合[ − O − C ( = O ) −
N H − ] 、− O − C ( = S ) − N H − 及びチオウレタン結合[ − S
− C ( = O ) − N H − ] からなる群から選択される少なくとも1 種類の基で
ある。
このような表面処理剤としては、例えば、分子内にウレタン結合[ − O − C ( =
O ) NH − ] 及び/ 又はチオウレタン結合[ − S − C ( = O ) N H −
] 並びに2 以上の重合性不飽和基を有するアルコキシシラン化合物を挙げることができ
る。
成分(A)への粒子変性剤の結合量は、成分( A ) 及び粒子変性剤の合計を1 0 0
重量% として、好ましくは、0 .0 1 〜 4 0 重量% であり、さらに好ましくは、
0 . 1 〜 3 0 重量% 、特に好ましくは、1〜 2 0 重量% である。成分( A
) に反応させる粒子変性剤の量を上記範囲とすることで、組成物中における成分( A
) の分散性を向上させることができ、得られる硬化物の透明性、耐擦傷性を高める効果
が期待できる。
成分( A ) の配合量は、成分( A ) 、成分( B ) および成分(C)の合計量1
00 重量%とした場合、好ましくは35 〜75 重量%、より好ましくは50 〜 70
重量%である。成分( A ) が表面処理されている場合も同じである。配合量が35 重
量部未満では、所望の屈折率が得られない場合があり、75 重量部を越えると、インデ
ックスマッチング層の透明性や強度が劣る場合がある。
〔B〕シリカ粒子
シリカ粒子は、粉体状又は溶剤分散ゾルとして用いるのが好ましい。溶剤分散ゾルとして
用いる場合、他の成分との相溶性、分散性の観点から、分散媒は、有機溶剤が好ましい。
このような有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブ
タノール、オクタノール等のアルコール類; アセトン、メチルエチルケトン、メチルイ
ソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類; 酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチ
ル、γ− ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロ
ピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル類; エチレングリコール
モノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル類; ベン
ゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類; ジメチルホルムアミド、ジメチルア
セトアミド、N− メチルピロリドン等のアミド類を挙げることができる。中でも、メタ
ノール、イソプロパノール、ブタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン
、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリ
コールモノメチルエーテルアセテートが好ましい。
シリカ粒子の数平均粒子径は、得られる硬化膜の用途に応じて適宜選択すればよいが、1
n m 〜 200n m が好ましく、5n m 〜 150 n m がさらに好ましく、10
n m 〜 100n m が特に好ましい。数平均粒子径が200 n m を超えると、硬化
物としたときの透明性が低下したり、硬化膜としたときの表面状態が悪化する傾向がある
。シリカ粒子の数平均粒子径は、透過型電子顕微鏡による観察で測定した2 0 個の粒子
径の平均値をいう。また、粒子の分散性を改良するために各種の界面活性剤やアミン類を
添加してもよい。
シリカ粒子として市販されている商品としては、例えば、頃いダルシリカとして、日産化
学工業( 株) 製メタノ− ルシリカゾル、I P A − S T、M E K − S T 、N
B A − S T 、X B A − S T 、D M A C − S T 、S T − U P 、S
T − OU P 、S T − 2 0 、S T − 4 0 、S T − C 、S T − N 、
S T − O 、S T − 5 0 、S T − OL 等を挙げることができる。また粉体シ
リカとしては、日本アエロジル( 株) 製アエロジル1 3 0 、アエロジル3 0 0 、
アエロジル3 8 0 、アエロジルT T 6 0 0 、アエロジルOX 5 0 、旭硝子(
株) 製シルデックスH 3 1 、H 3 2 、H 5 1 、H 5 2 、H 1 2 1 、H
12 2 、日本シリカ工業( 株) 製E 2 2 0 A 、E 2 2 0 、( 株) アデカ
製 アデライトA T2 0、A T -3 0 、A T − 4 0 、富士シリシア( 株) 製
S Y L Y S I A 4 7 0 、日本板硝子(株) 製S G フレ− ク等を挙げること
ができる。
シリカ粒子の形状は球状、中空状、多孔質状、棒状、板状、繊維状、又は不定形状であり
、好ましくは、球状である。これらシリカ粒子の使用形態は、乾燥状態の粉末、又は水も
しくは有機溶剤で分散した状態で用いることができる。例えば、シリカ粒子の溶剤分散ゾ
ルとして当業界に知られている微粒子状のシリカ粒子の分散液を直接用いることができる
。特に、硬化物に優れた透明性を要求する用途においては酸化物の有機溶剤分散ゾルの利
用が好ましい。
成分( B ) として用いられるシリカ粒子は、成分(A)と同様の方法で表面変性を加
えてもよい。表面変性を行うことにより、シリカ粒子を含有する硬化性組成物の硬化物の
光学特性や保存安定性を改善することができる。
成分( B ) の配合量は特に制限されないが、成分( A ) 、成分( B ) 、成分(
C)の合計量1 0 0 重量部中、好ましくは3 〜 35 重量部、より好ましくは4 〜
25重量部である。成分( B ) が表面処理されている場合も同じである。配合量が3
重量部未満では、十分な機械強度が得られない場合や積層体とした際に残留応力による変
形を十分に抑制できない場合があり、35 重量部を越えると、所望の屈折率が得られな
い場合がある。
〔C〕樹脂成分
本発明の積層体において、樹脂成分とは、重合性基を有する硬化性化合物の硬化体であ
る。
【0032】
前記硬化性化合物としては、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン系化合物、多官能(
メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、硬化性の点から、多官能(メタ)
アクリレートがより好ましい。
【0033】
前記(メタ)アクリル酸エステルとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メ
タ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペン
チル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アク
リレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレ
ート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコ
ール(メタ)アクリレート、イソオクチルオキシジエチレングリコール(メタ)アクリレ
ート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、o−フェニルフ
ェノールグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、4−(1−メチル−1−フェニルエ
チル)フェノキシエチルアクリレート、フェノキシトリエチレングリコール(メタ)アク
リレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレ
ングリコール(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エ
トキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−
エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0034】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレー
トの両者または一方を示す。
【0035】
前記多官能アクリレートとしては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレ
ート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メ
タ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリ
コールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイドまたはプロピレ
ンオキサイドの付加体であるジオールのジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールA
のエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドの付加体であるジオールのジ(メタ)
アクリレート、ポリウレタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メ
タ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロール
プロパンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプ
ロピレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メ
タ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アク
リレート、ポリウレタンポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。市販品としては、日
本化薬(株)製の商品名DPHA、TMPTA、PETA、東亞合成(株)製の商品名ア
ロニックスM405、M315、新中村化学工業(株)製の商品名U−15HA、大阪有
機化学工業(株)製のビスコート295等が挙げられる。
【0036】
これらの硬化性化合物は、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0037】
これらの中でも、硬化性の点から、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレー
ト、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0038】
(C)樹脂成分の含有量は、成分( A ) 、成分( B ) および成分(C)の合計量
1 0 0 重量部中、好ましくは20〜40重量%であり、より好ましくは22〜38重
量%であり、さらに好ましくは22〜35重量%である。
【0039】
本発明において、インデックスマッチング層を形成するためには、上記(A)〜(C)
成分に加えて、(D)重合開始剤および必要に応じて、さらに、増感剤、溶媒、レベリン
グ剤等を含むインデックスマッチング層形成用組成物を用いる。
【0040】
前記重合開始剤としては、特に制限されず、公知の重合開始剤を用いることができる

前記重合開始剤としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエ
ーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾイン・ベンゾインアルキルエーテ
ル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジ
エトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェ
ニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、1,1−ジクロロアセ
トフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プ
ロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニ
ル)−ブタン−1−オンなどのアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−エチ
ルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン
、2−アミルアントラキノンなどのアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン
、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−イソプロピル
チオキサントンなどのチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジ
メチルケタールなどのケタール類;ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類;キサントン
類;1,7−ビス(9−アクリジニル)ヘプタン等の光ラジカル重合開始剤が挙げられる
【0041】
これらの光ラジカル重合開始剤は、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いても
よい。
【0042】
前記光ラジカル重合開始剤の市販品としては、商品名イルガキュア184、イルガキュ
ア127、イルガキュア907(いずれも、BASFジャパン(株)製)等が挙げられる
【0043】
前記重合開始剤の使用量は、特に制限されないが、インデックスマッチング層形成用脂
組成物の固形分の全量を100重量%として、好ましくは0.1〜10重量%、より好ま
しくは0.2〜7重量%、さらに好ましくは0.5〜5重量%である。上記配合割合が0
.1重量%未満では、硬化が十分に進行せず、十分な信頼性を有する硬化物が得られない
ことがある。また、上記配合割合が10重量%を超えると、重合開始剤が、硬化物の長期
の特性に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0044】
インデックスマッチング層形成用組成物に、必要に応じて使用される有機溶剤としては
、(A)成分の金属酸化物粒子の分散に用いられる有機溶媒と同様の溶媒が挙げられる。
【0045】
前記溶媒の使用量は、特に制限されず、所望の用途に応じて適宜調整すればよいが、硬
化性樹脂組成物の全量を100重量%として、前記溶媒と分散媒との総重量が、好ましく
は40〜99重量%であり、より好ましくは45〜99重量%である。
【0046】
インデックスマッチング層は、前記インデックスマッチング層形成用組成物を、基板上
に塗工し、乾燥工程により有機溶媒を除去することで塗膜を形成した後、活性エネルギー
線を照射することで塗膜を硬化させることにより、形成することが好ましい。
【0047】
本発明において、インデックスマッチング層は、中〜高屈折率を有し、高光透過性であ
り、ヘイズが小さい。
【0048】
インデックスマッチング層形成用組成物を基板上に塗工する方法としては、特に制限さ
れないが、ロールコート法、グラビアコート法、スピンコート法およびドクターブレード
を用いる方法等が挙げられる。
【0049】
前記乾燥工程は、有機溶媒を除去できれば特に制限されないが、好ましくは50〜15
0℃、より好ましくは60〜120℃で、好ましくは1〜5分、より好ましくは1〜2分
間加熱する方法が挙げられる。また、乾燥工程は、常圧下で行ってもよいし、減圧下で行
ってもよい。
【0050】
前記活性エネルギー線の照射光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超
高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプなどが挙げられる。また、レーザー
光線なども露光用活性光源として利用できる。その他、電子線、α線、β線、γ線、X線
中性子線なども利用可能である。
【0051】
照射量は、用いるインデックスマッチング層形成用組成物に応じて適宜調節すればよい
が、UV−351、株式会社オーク製作所製で測定した値で、好ましくは100〜200
0mJ/cm2程度であり、より好ましくは100〜1000mJ/cm2程度ある。
【0052】
照射雰囲気は、窒素等の不活性ガス中が、硬化性の観点から好ましい。
【0053】
本発明において、インデックスマッチング層の厚みは、所望の用途に応じて適宜選択す
ればよいが、好ましくは0.01〜5μmであり、より好ましくは0.01〜4μmであ
る。
【0054】
本発明において、インデックスマッチング層は、アッベ屈折率計((株)アタゴ製)で
測定した屈折率が、1.59〜1.80の範囲にあることが好ましく、1.60〜1.7
5の範囲にあることがより好ましい。
【0055】
前記インデックスマッチング層の厚み2μmにおけるJIS K7105透明度試験法
における全光線透過率は、85%以上であることが好ましく、88%以上であることがよ
り好ましい。全光線透過率は、カラーヘーズメーター(スガ試験機(株)製)を用いて測
定することができる。
【0056】
前記インデックスマッチング層の全光線透過率が前記範囲にあることで、インデックス
マッチング層は高光透過性が求められる用途においても好適に使用することができ、高光
透過性の表示装置を得ることができる。
【0057】
前記インデックスマッチング層は、カラーヘーズメーター(スガ試験機(株)製)で測
定したヘイズが、1.0%以下であることが好ましく、0.7%以下であることがより好
ましい。
【0058】
前記インデックスマッチング層のヘイズが前記範囲にあることで、透明性が求められる
用途においても好適に使用することができる。
【0059】
<透明導電体層>
前記透明導電体層は、前記インデックスマッチング層上に形成される。
【0060】
前記透明導電体層としては、透明であって、導電性を示す層であれば特に制限されない
が、酸化スズ、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛、酸化カドミウム、酸化イン
ジウムスズ(ITO)および酸化インジウム亜鉛(IZO)などの金属酸化物からなる層
や、これらの金属酸化物を主体とする複合層、金、銀、銅、錫、ニッケル、アルミ
ニウム
およびパラジウムなどの金属からなる層が挙げられる。
【0061】
前記透明導電体層として、酸化インジウムスズ(ITO)からなる層を用いる場合には
、機械強度を高めるため、得られる層を結晶化させるため、層を低抵抗にする等のために
、透明導電体層形成用材料として、好ましくは酸化インジウムおよび2〜18重量%の酸
化スズを含む材料、より好ましくは82〜98重量%の酸化インジウムおよび2〜18重
量%の酸化スズを含む材料、さらに好ましくは85〜96重量%の酸化インジウムおよび
4〜15重量%の酸化スズを含む材料を用いることが望ましい。但し、透明導電体層形成
用材料全体を100重量%とする。
【0062】
前記透明導電体層の形成方法としては、特に制限されないが真空蒸着法、スパッタリン
グ法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法、化学蒸着(CVD)法などの公知の方法
を挙げることができるが、得られる層の均一性や前記インデックスマッチング層への薄膜
の密着性の観点から、スパッタリング法で透明導電体層を形成することが好ましい。
【0063】
また、ポリチオフェン系やポリアニリン系の導電性ポリマーを前記インデックスマッチ
ング層上に塗布し、成膜することで透明導電体層を形成してもよい。
【0064】
前記透明導電体層は1層でもよいし、多層からなっていてもよい。多層の場合には、合
計膜厚が前記範囲となるように調整することが好ましい。前記透明導電体層が多層からな
る場合には、同一の材料からなる多層であってもよいし、異なる材料からなる多層であっ
てもよい。
【0065】
前記透明導電体層を形成する際には、本発明の効果を損なわない限り、予め前記インデ
ックスマッチング層の表面に周知の種々の添加剤や安定剤、例えば紫外線防止剤、可塑剤
、滑剤、易接着剤などを塗布しておいてもよい。また、前記インデックスマッチング層と
透明導電体層との密着性を向上させるため、本発明の効果を損なわない限り、前記インデ
ックスマッチング層表面を予めコロナ処理、プラズマ処理、イオンボンバード処理、薬品
処理などしてもよい。
【0066】
本発明の積層体を静電容量方式のタッチパネルに用いる場合には、透明導電体層をパタ
ーニングすることができる。
【0067】
パターニングする方法としては、透明導電体層上にレジストを塗布し、パターンを露光
・現像により形成した後に透明導電体層を化学的に溶解させる方法、真空中で化学反応に
より気化させる方法、レーザーにより透明導電体層を昇華させる方法などが挙げられるが
、パターンの形状、精度等により、適宜選択できる。
【0068】
透明導電体層の厚みは、好ましくは1〜300nmであり、より好ましくは1〜200
nmである。透明導電体層の厚みが、前記範囲にあることで、低抵抗と高い透明性とのバ
ランス等に優れる積層体を得ることができる。
【0069】
また、透明導電体層の屈折率は、前記インデックスマッチング層を設けることが得られ
る表示装置の視認性に大きく寄与する点から、好ましくは1.7〜2.5であり、より好
ましくは1.8〜2.2である。
【0070】
本発明の積層体は、本発明の効果を損なわない範囲において、その少なくとも一方の面
に、偏光板、反射防止膜、ハードコート膜、帯電防止膜、防汚膜などを有していてもよい
。さらに、アンチニュートンリング処理を行ってもよい。
【0071】
本発明において、インデックスマッチング層と透明導電体層との間に、表示装置の視認
性をより向上させる目的で、低屈折率層を設けてもよい。低屈折率層の屈折率は、好まし
くは1.33〜1.52であり、より好ましくは1.33〜1.50である。
【0072】
本発明においてインデックスマッチング層は、中〜高屈折率を有するため、該インデッ
クスマッチング層を基板とパターン状の透明導電体層との間に設けることで、基板上の透
明導電体層を有する部分と、基板上の透明導電体層を有しない部分との光学特性の差を低
減することができる。このため、前記積層体を用いることで、透明導電体層がパターン状
であっても視認性に優れる表示装置を得ることができる。従って、前記インデックスマッ
チング層は、インデックスマッチング層としての役割を果たす。
【0073】
≪表示装置≫
本発明の表示装置は、前記積層体を含む。このため、前記表示装置は、視認性に優れる
【0074】
前記表示装置としては、タッチパネルが挙げられ、携帯電話、スマートフォン、携帯情
報端末、カーナビ、タブレットPC、販売機器、ATM、FA機器等のタッチパネルを有
する電子機器に制限なく使用することができる。
【0075】
本発明によれば、抵抗膜方式、表面弾性波方式、赤外線方式、電磁誘導方式、静電容量
方式等、何れの方式のタッチパネルも製造することができる。
【0076】
前記タッチパネルとしては、抵抗膜方式や静電容量方式のタッチパネルが好ましく、静
電容量方式のタッチパネルがより好ましい。
【実施例】
【0077】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、この実施例により何ら限定される
ものではない。なお、合成例、製造例、実施例および比較例中の「部」は、「重量部」を
示し、合成例および製造例中の「%」は、「重量%」を示す。
インデックスマッチング層形成用組成物
[成分A]
A−1;堀場製作所株式会社製LB−550を用いて測定した体積基準の粒度分布におけ
る、累積分布50%の値(D50)が30nmである酸化ジルコニウム粒子を固形分33
%でメチルエチルケトンに分散した分散液。
[成分B]
B−1;透過型電子顕微鏡により測定した平均粒子径が80nmのシリカ粒子を固形分濃
度70%でメチルエチルケトンへ分散した分散液。
[成分C]
C−1;ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサア
クリレートとの混合物
C−2;ペンタエリスリトールトリアクリレート
[成分D]
D−1;1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチ
ル−1−プロパン−1−オン
実施例1〜7
表1に示す配合割合で、上述の成分(A)〜(D)を混合して、インデックスマッチング
層形成用組成物F−1〜F−7を得た。なお、表1において、成分(A)〜成分(C)の
割合は分散媒を除く成分(A)〜成分(C)の合計を100重量%とした場合の成分(A
)〜成分(C)の含有割合である。
【0078】
得られた組成物「F−1」〜「F−7」の各々について、以下のように評価した。
バーコーターを用いて、易接着層付きPETフィルム上にインデックスマッチング層形成
用組成物「F−1」〜「F−17」を塗工した。80℃で2分乾燥した後、高圧水銀灯を
用いて空気下で照射量300mJ/cmの紫外線を照射して膜厚2μmのインデックス
マッチング層を作製した。
【0079】
得られたインデックスマッチング層について、下記特性を測定し評価した。結果を表1
および表2に示す。
【0080】

(1)ヘイズ 硬化膜のヘイズ(%)を、カラーヘーズメーター(スガ試験機(株)製
)を用いて、JIS K7105に準拠して測定した。
【0081】

(2)全光線透過率 硬化膜の全光線透過率(%)を、カラーヘーズメーター(スガ試
験機(株)製)を用いて、JIS K7105に準拠して測定した。
【0082】
(3)屈折率
硬化膜の屈折率を、アッベ屈折率計((株)アタゴ製)を用いて、JIS 7142に
準拠して測定した。
<積層体の作成>
バーコーターを用いて、易接着層付きPETフィルム上にインデックスマッチング層形成
用組成物「F−1」〜「F−17」を塗工した。80℃で2分乾燥した後、高圧水銀灯を
用いて空気下で照射量300mJ/cmの紫外線を照射して膜厚2μmのインデックス
マッチング層を作製した。
次いで前記インデックスマッチング層の表面にインジウムスズ酸化物からなる透明導電膜
層をスパッタリング法で20nmの厚みで形成した。
さらに、透明導電体層上に幅3mmのポリイミド粘着テープを3mm間隔で平行に5本貼
り付けた後、30%の塩酸水溶液に室温下で2分浸漬し、透明導電体層のエッチングを行
った。その後、超純水で洗浄し、ポリイミド粘着テープを剥離する事で、幅3mmの透明
導電体層パターンを形成した。
<積層体の特性評価>
上記のようにして作製した積層体について、下記特性を測定し評価した。結果を表1お
よび表2に示す。
・積層体の変形
透明導電体層上に幅3mmのポリイミドテープを3mm間隔で平行に5本貼り付け、ポ
リイミドテープをマスクとして透明導電体層をエッチング処理した後、ポリイミドテープ
を剥がす事で、3mm幅の透明導電体層ラインパターンを形成した。パターン形成後の積
層体について、目視にて外観を確認し、変形がほぼ見えない場合を「○」、変形がやや見
える場合を「△」、変形が見える場合を「×」とした。
【0083】
【表1】
【0084】
比較例1〜16
表2、表3に示す配合割合で、上述の成分(A)〜(D)を混合して、インデックスマッチング層形成用組成物F−1〜F−23を得た。なお、表2、表3において、成分(A)〜成分(C)の割合は分散媒を除く成分(A)〜成分(C)の合計を100重量%とした場合の成分(A)〜成分(C)の含有割合である。
【0085】
得られた組成物「F−8」〜「F−23」の各々について、実施例1と同様にして評価
した。
【0086】
また、組成物「F−1」〜「F−7」の代わりに「F−8」〜「F−23」を用いた以
外は実施例1と同様にして積層体を製造し、評価した。結果を表2、表3に示す。
【0087】
【表2】
【0088】
【表3】
【符号の説明】
【0089】
1:基板
2:透明導電体層
3:インデックスマッチング層
A:基板上の導電体層を有する部分
B:基板上の導電体層を有さない部分
図1
図2