特許第6505512号(P6505512)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6505512
(24)【登録日】2019年4月5日
(45)【発行日】2019年4月24日
(54)【発明の名称】光学識別装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 7/12 20160101AFI20190415BHJP
   G07D 7/20 20160101ALI20190415BHJP
【FI】
   G07D7/12
   G07D7/20
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-116773(P2015-116773)
(22)【出願日】2015年6月9日
(65)【公開番号】特開2017-4215(P2017-4215A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2017年11月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】504373093
【氏名又は名称】日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093861
【弁理士】
【氏名又は名称】大賀 眞司
(74)【代理人】
【識別番号】100129218
【弁理士】
【氏名又は名称】百本 宏之
(72)【発明者】
【氏名】丸山 晃司
(72)【発明者】
【氏名】林 靖智
【審査官】 井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−011230(JP,A)
【文献】 特開平10−185690(JP,A)
【文献】 特開2013−088847(JP,A)
【文献】 特開2013−089167(JP,A)
【文献】 特開2000−293665(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 7/00 − G07D 7/207
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象体に検出光を投光し、当該対象体からの反射光に基づいて当該対象体を識別可能な光学識別装置であって、
第1の光源と、
当該第1の光源から出力される第1の検出光を所定方向に偏光して前記対象体に投光する第1の偏光部と、
第2の光源と、
当該第2の光源から出力される第2の検出光を前記第1の偏光部の偏光方向とは異なる方向に偏光して前記対象体に投光する第2の偏光部と、
前記第1の検出光に基づく前記対象体からの反射光と、前記第2の検出光に基づく前記対象体からの反射光とを共通して受光する一つの受光部と、
前記受光部に受光される前の反射光を、前記第1の偏光部と同方向に偏光する第3の偏光部と、
前記受光部で受光された反射光の情報に基づいて、前記対象体の検出情報を形成するコントローラと、
を備え、
前記第1の検出光と、前記第2の検出光とは、互いに異なる側から同一の入射角で、前記対象体に対して投光されるように前記第1の光源と第2の光源が設けられ、
前記第1の光源、及び、前記第2の光源との間に、前記受光部が配置され、
前記対象体からの反射光が前記受光部に対して直角に受光され、
前記コントローラは、前記第1の検出光に基づく前記受光部に到達した第1の反射光の強度と、前記第2の検出光に基いて前記受光部に到達した第2の反射光の強度との差分に応じて、前記検出情報を生成する、
光学識別装置。
【請求項2】
前記第1の反射光は、前記対象体の領域で正反射された正反射光を含んで、前記第3の偏光部を通過して前記受光部に至るため、当該受光部において、前記対象体の領域はその外側よりも反射光の強度が大きく、
前記第2の反射光は、前記対象体の領域で正反射されても、前記第3の偏光部を通過できないため、前記受光部において、前記対象体の領域はその外側よりも反射光の強度が小さく、前記コントローラは、前記差分によって、前記対象体の領域とその外での反射光の強度差を増加させるようにした、
請求項1記載の光学識別装置。
【請求項3】
前記差分と前記対象体の固有情報とを対応させたテーブルに基いて、前記対象体の真偽を識別する、
請求項2記載の光学識別装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学識別装置であって、例えば、紙葉類に付された識別標識を判別して紙葉類の識別を行うことに好適な紙葉類識別装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紙幣等の紙葉類には、偽造防止の対策として、特殊インクの印刷やホログラム等からなる識別標識が施されている。紙葉類識別装置が紙葉類の識別を行う際に、識別標識に検出光を投光すると、検出光は識別標識によって正反射され、紙葉類識別装置はこの正反射光を利用して、紙葉類の識別を行う。この種の識別技術の一例として、例えば、特開2000−11230号公報に記載されたものが存在する。この従来例は、光源と識別標識との間に偏光フィルタを配置して光源からの光を偏光させて識別標識に投光し、識別標識からの反射光を二つの受光部で夫々受光する、ことを開示している。
【0003】
各受光部と識別標識との間には、偏光フィルタが存在し、一方の受光部に対する偏光フィルタは光源に対して配置された偏光フィルタと同方向に偏光するように配置され、他方の受光部に対する偏光フィルタは光源に対して配置された偏光フィルタと異なる方向に偏光するように配置されている。前者の偏光フィルタを通過した反射光の強度は大きく、後者の偏光フィルタを通過した反射光の強度は小さいために、二つの受光部で夫々得られた識別標識の検出強度の差分に基づいて、識別標識の真偽等の判別が可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−11230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、複数の受光部間で識別標識に対する角度等の相対位置が異なるために、複数の受光部の夫々で検出された識別標識の情報について、位置の補正が必要となり、また、補正の精度によっては、識別標識の検出精度が低下するという課題があった。そこで、本発明は、対象体からの反射光の情報に対して位置補正を要することなく、対象体を精度よく識別可能な光学識別装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本願発明は、対象体に検出光を投光し、当該対象体からの反射光に基づいて当該対象体を識別可能な光学識別装置であって、第1の光源と、当該第1の光源から出力される第1の検出光を所定方向に偏光して前記対象体に投光する第1の偏光部と、第2の光源と、当該第2の光源から出力される第2の検出光を前記第1の偏光部の偏光方向とは異なる方向に偏光して前記対象体に投光する第2の偏光部と、前記第1の検出光に基づく前記対象体からの反射光と、前記第2の検出光に基づく前記対象体からの反射光とを共通して受光する一つの受光部と、前記受光部に受光される前の反射光を、前記第1の偏光部と同方向に偏光する第3の偏光部と、前記受光部で受光された反射光の情報に基づいて、前記対象体の検出情報を形成するコントローラと、を備え、前記第1の検出光と、前記第2の検出光とは、互いに異なる側から同一の入射角で、前記対象体に対して投光されるように前記第1の光源と第2の光源が設けられ、前記第1の光源、及び、前記第2の光源との間に、前記受光部が配置され、前記対象体からの反射光が前記受光部に対して直角に受光され、前記コントローラは、前記第1の検出光に基づく前記受光部に到達した第1の反射光の強度と、前記第2の検出光に基いて前記受光部に到達した第2の反射光の強度との差分に応じて、前記検出情報を生成する、というものである。
【発明の効果】
【0007】
以上説明したように、本発明によれば、一つの受光部が、第1の光源からの検出光に基づく第1の反射光と、第2の光源からの検出光に基づく第2の反射光とを共通して検出しているために、従来のように複数の受光部が存在する構成に於ける検出情報に対して必要、受光部の相対位置の相違に基づく補正を必要せず、よって、対象体を精度よく、かつ、迅速に識別可能な光学識別装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る紙葉類識別装置のブロック図である。
図2】紙葉類識別装置の偏光フィルタにおける偏光動作を示すための、当該偏光フィルタの斜視図である。
図3】紙葉類識別装置のコントローラのハードウェアブロック図である。
図4】紙葉類識別装置の受光部で受光された反射光の特性図である。
図5】紙葉類識別装置の受光動作を示す紙葉類識別装置のブロックである。
図6】コントローラの動作を説明するフローチャートである。
図7】紙葉類識別装置の投受光部の平面図(A)とその右側面図(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態を、紙葉類識別装置を例として、図1に基づいて説明する。紙葉類識別装置100は、投受光部102と投受光部102を制御するコントローラ104とを備える。投受光部102は、紙葉類の一例である紙幣106に向けて検出光(主として可視光)を投光する、第1の光源108と第2の光源110とを備える。
【0010】
紙葉類106には、検出対象体としての識別標識106Mが付されている。第1の光源108からの出力光と、第2の光源110からの出力光とは、互いに異なる側から同一の入射角で、紙葉類106の識別標識106Mに対して投光される。紙葉類106は、識別標識106Mが紙葉類識別装置100に対して特定の位置になるように位置決めされる。
【0011】
第1の光源108、及び、第2の光源110との間には、受光部112が配置されている。受光部112は、識別標識106Mからの反射光を電気信号に変換して検出する。受光部112に対する反射光の光軸は、前記第1の光源108からの出力光の光軸と第2の光源110からの出力光の光軸とに対して対称になるように調整され(受光部112は第1の光源108と第2の光源110とに対称の位置になる)、即ち、受光部112への識別標識106Mからの反射光の光軸は紙葉類106に対して直角にされる。識別標識106Mは、光源からの出力光の波長や偏光方向を変えることなく出力光を正反射できるような、特殊インクやホログラムによって形成される。光源からの出力光は、識別標識106Mの部分では乱反射されて、受光部112で受光される。
【0012】
第1の光源108と識別標識106Mとの間には、第1の偏光フィルタ114が配置されている。第2の光源110と識別標識106Mとの間には第2の偏光フィルタ116が配置されている。受光部112と識別標識106Mとの間には第3の偏光フィルタ118が配置されている。第1の偏光フィルタ114と第3の偏光フィルタ118は同一方向への偏光特性を有し、第2の偏光フィルタ116は異なる方向(直交方向)への偏光特性を有している。
【0013】
例えば、第1の偏光フィルタ114、及び、第3の偏光フィルタ118は、縦方向に振動する光を透過させ(図2(A)の実線)し、横方向に振動する光を透過させない(図2(A)の点線)。第2の偏光フィルタ116は、横方向に振動する光を透過させ(図2(B)の点線)、縦方向に振動する波を透過させない(図2(B)の実線)。
【0014】
図3に示すように、コントローラ104は、CPU120、RAM122、ROM124、入出力部(I/O)126、及び、これらを接続するデータバスやコントローラバス等からなるバス128から構成されている。I/O126には、第1の光源108、第2の光源110、受光部112、そして、紙葉類106の搬送を制御する搬送制御部130が接続されている。搬送制御部130は、図示しないモータ等の駆動系を制御して、紙葉類106を所定の搬送路に沿って搬送すると共に、投受光部102において、識別標識106Mを受光部112への反射光の光軸に臨むように位置決めする。なお、搬送制御部130は、紙葉類106を特定位置に停止させて、受光部112が識別標識106Mからの反射光を検出するようにしても、あるいは、紙葉類106を搬送させながら特定位置で反射光を検出するようにしてもよい。
【0015】
図5(1)に示すように、第1の光源108が発光した場合、第1の偏光フィルタ114と受光用の第3の偏光フィルタ118との偏光方向は同一であるために、第1の偏光フィルタ114を通過した検出光は、識別標識106Mで反射されて、第3の偏光フィルタ118を通過して受光部112に到達する。反射光は、識別標識106Mの領域で正反射された正反射光と、識別標識106Mの領域外で乱反射された乱反射光を含む。従って、受光部112において、識別標識106Mの領域での反射光の強度は周囲の領域よりも大きく、識別標識106Mの領域での検出信号の強度が大きくなる(図4の(A))。
【0016】
一方、図5(2)に示すように、第2の光源110を発光させた場合、第2の偏光フィルタ116と第3の偏光フィルタ118との偏光方向が異なるため、第2の偏光フィルタ116を通過した検出光は、識別標識106Mで正反射されても、第3の偏光フィルタ118を通過できず、乱反射光の一部が第3の偏光フィルタ118を通過して受光部112に到達する。したがって、受光部112において、識別標識106Mの領域での反射光の強度は周囲の領域よりも小さく、識別標識106Mの領域での検出信号の強度は、図4(A)よりも遥かに小さくなる(図4の(B))。
【0017】
両検出信号の差分(識別標識106Mの領域での明暗の出力差)である図4(C)に示す特性は、識別標識106Mの領域以外の情報を含まないため、識別標識106Mの固有情報と1:1に対応し、この差分情報を、例えば、比較テーブルの情報を利用して、評価することによって、識別標識の真偽等の判別が可能となる。
【0018】
次に、識別標識の判別処理を、コントローラ104の動作として、フローチャート(図6)に基づいて説明する。ステップ160では、コントローラ104は、紙葉類搬送制御によって、紙葉類106を、識別標識106Mが受光部112への反射光の光軸に臨むように位置決めする。
【0019】
ステップ162では、コントローラ104は、紙葉類106が所定位置で位置決めされたか否かを判断し、これを否定すると、ステップ160へ戻り紙葉類106の搬送制御を継続する。ステップ162を肯定判定すると、ステップ164へ移行して、第1の光源108を発光する。
【0020】
ステップ166では、コントローラ104は、受光部112で紙幣106からの反射光を検出する。検出された反射光は光電変換され、検出信号(電気信号)としてRAM122の第1格納部に格納して(ステップ168)、第1の光源108を消灯させる(ステップ170)。
【0021】
ステップ172では、コントローラ104は、第2の光源110を発光させ、ステップ174では、受光部112によって、識別標識106Mからの反射光を受光する。受光した光は光電変換され、検出信号(電気信号)として、RAM122の第2格納部へ格納し(ステップ176)、第2の光源110を消灯させる(ステップ178)。
【0022】
ステップ180では、コントローラ104は、第1格納部及び第2格納部1から検出信号を読み出し、ステップ182へ移行して、検出信号の差分を演算し、差分情報に基づき、識別標識を判別し(ステップ184)、次いで、その結果を出力する(ステップ186)。
【0023】
図7は投受光部102の一例であり、(A)はその平面図であり、(B)はその右側面図である。第1の微小光源108と、第2の微小光源110と、微小受光部112とが、互いの相対位置を保持しながら、一つのユニットを形成し、複数のユニットが紙葉類の長さ方向にベース102L上に均等に配列されている。コントローラ104は、複数のユニットに対して、第1の微小光源108を点灯させ、次いで、第2の微小光源110を点灯させて、複数のユニットの微小受光部112から検出信号を、順番に取得する。複数のユニットが配列されているために、コントローラ104は、各ユニットからの検出情報を合成することにより、紙葉類106の全面を把握しながら、紙葉類の所定位置に存在する識別標識106Mの形状の範囲で当該識別標識の固有情報を取得することができる。なお、1ユニットに対して紙葉類106を移動させるようにしてもよい。
【0024】
既述の実施形態によれば、第1の光源108及び第2の光源110に対称に受光部112が配置され、受光部112は、第1の光源108から検出光に基づく第1の反射光と、第の光源110から検出光に基づく第2の反射光とを共通して検出しているために、従来のように、検出情報に対して、受光部の相対位置の相違に基づく補正を必要としない。したがって、既述の識別装置は、識別標識の画像情報を精度良く、かつ、迅速に取得することができる。さらに、複数の投光部に対して一つの受光部を対応させればよく、複数の受光部を要しないため、コストの点においても有利である。
【0025】
なお、既述の実施形態では、第1の光源108と、第2の光源110とを順番に点灯させたが、両光源を同時に発光させてもよい。この態様では、受光部112での反射光の強度が増加されるために、図1に示す装置を、紙葉類に付された特殊識別標識に限らず、パッケージやシール等の対象物に含まれるマークやイメージを識別可能なイメージセンサとして利用することができる。既述の紙葉類識別装置は、現金自動預払機に搭載される紙幣取扱装置の鑑別部に適用される。
【符号の説明】
【0026】
100・・・紙葉類識別装置、102…投受光部、104…コントローラ、106…紙葉類、108…第1の光源、110…第2の光源、106M…識別標識、112…受光部、114…第1の偏光フィルタ、116…第2の偏光フィルタ、118…第3の偏光フィルタ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7