(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記バランス状態判断部は、前記充放電制御部が前記インバータに出力する充電指令値と放電指令値との差が第2基準値以下の場合、前記バランス状態と判断する請求項1に記載の蓄電装置の暖機システム。
前記暖機制御部は、前記蓄電装置の充電状態がバランス状態より放電側に設定された状態であることを示す第4基準値に到達するまで、前記蓄電装置に放電のみを行わせる請求項5に記載の蓄電装置の暖機システム。
前記暖機制御部は、前記蓄電装置の充電状態がバランス状態より充電側に設定された状態であることを示す第5基準値に到達するまで、前記蓄電装置に充電のみを行わせる請求項5に記載の蓄電装置の暖機システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、蓄電装置の充放電を繰り返し実施して暖機を行う際、早く暖機を行うためには、充放電させる電流が多いほど効果的である。
【0007】
一方で、蓄電装置の充放電許容電流は、蓄電装置の温度と充電量とによって制限される。そのため、蓄電装置の充電状態を検出し、検出した充電状態において充放電できる最大限の電流で充放電を行うことが望ましい。
【0008】
しかしながら、この状態で周期的に充放電を繰り返していると、次第に充電量と放電量とがバランスしたバランス状態に移行する。
【0009】
ここで、ジュール熱は電流の二乗に比例するため、バランス状態での発熱量は極小値を取り、バランス状態ではない場合に比べ、すなわち充電量もしくは放電量のいずれかが大きい場合に比べ、蓄電装置の暖機効率が悪化する。以下、この理由を説明する。
【0010】
図8はバランス状態に移行する際の充電状態(SOC:State of Charge)に対する電力の推移を示すグラフであり、縦軸は電力、横軸はSOCを示している。
図9はバランス状態に移行する際の充電状態に対する放電可能な最大放電電流と最大充電電流との推移を示すグラフであり、縦軸は電流、横軸はSOCを示している。
【0011】
図9の例では、SOCがx%の任意の点Pxでの最大放電電流がidx、最大充電電流がicx(<idx)で表されている。そして、点Pxにおいて、暖機制御が開始されたとする。この場合、点Pxでは、icx<idxであり、放電過多なので、icxの割合がidxよりも徐々に多くされていき、点PxはSOCが減少する方向に移動する。点PxがSOCの減少方向に移動するにつれて、icxの割合がidxよりも徐々に多くされていくので、やがて、icxとidxとは同じ割合になる。icxとidxとの割合が同じになるバランス点PBでは充電量と放電量とがバランス状態になるので、点Pxは移動を停止して安定する。以後、バランス点PBにおいて充電量と放電量とが同じ割合で充放電が繰り返されて暖機制御が行われる。
【0012】
点Pxの電力Pは、P=icx^2*r+idx^2で表される。rは蓄電装置の内部抵抗である。このように、電力Pはicx及びidxの2乗に比例するので、電力PのSOCに対する推移は、
図8で示されるようにバランス点PBで極小値を持つ下に凸の曲線のグラフで表される。そのため、バランス点PBでの暖機制御は、バランス点PB以外の点での暖機制御に比べて、暖機効率が悪化するのである。
【0013】
本発明の目的は、暖機効率を向上することができる蓄電装置の暖機システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様に係る蓄電装置の暖機システムは、エンジンと、
蓄電装置と、
前記エンジンからの動力により発電機として作動するとともに、前記蓄電装置からの電力により電動機として作動する発電電動機と、
前記蓄電装置と前記発電電動機との電力の変換を行うインバータと、
前記インバータを制御して前記発電電動機を動作させ、前記蓄電装置の充放電を制御する充放電制御部と、
前記蓄電装置の温度を検出する温度検出部と、
前記温度検出部により検出された前記蓄電装置の温度が予め設定された基準温度よりも低い低温条件下にあると判断した場合、前記充放電制御部を制御して、前記蓄電装置の充放電を周期的に繰り返す暖機制御を実行する暖機制御部と、
前記暖機制御における充放電がバランスしたバランス状態であるか否かを判断するバランス状態判断部とを備え、
前記暖機制御部は、前記バランス状態判断部によって前記バランス状態であると判断された場合、前記充放電制御部を制御して、前記バランス状態が崩れるように充電及び放電の少なくともいずれか一方を前記蓄電装置に行わせる。
【0015】
この構成によれば、バランス状態判断部によってバランス状態であると判断された場合、暖機制御部により、バランス状態が崩されるので、バランス状態での充放電の継続が防止され、暖機効率を向上させることができる。
【0016】
また、上記一態様において、前記蓄電装置の充電電流と放電電流とを計測する電流検出部をさらに備え、
前記バランス状態判断部は、前記電流検出部によって計測された充電電流と放電電流とを用いて、前記暖機制御における充放電の1周期の充電量と放電量とを算出し、前記算出した充電量と放電量との差が第1基準値以下の場合、前記バランス状態と判断してもよい。
【0017】
この構成によれば、電流検出部によって計測された充電電流と放電電流とを用いて、蓄電装置の充電量と放電量とが算出され、算出された充電量と放電量との差が第1基準値以下の場合、バランス状態と判断されるので、バランス状態を正確に検出できる。
【0018】
また、上記一態様において、前記バランス状態判断部は、前記充放電制御部が前記インバータに出力する充電指令値と放電指令値との差が第2基準値以下の場合、前記バランス状態と判断してもよい。
【0019】
この構成によれば、充放電制御部がインバータに出力する充電指令値と放電指令値との差が第2基準値以下の場合、バランス状態と判断されるので、蓄電装置の充電状態を検出せずにバランス状態の有無を判断できる。
【0020】
また、上記一態様において、前記蓄電装置の充電状態を検出する充電状態検出部を更に備え、
前記バランス状態判断部は、前記充電状態検出部によって検出された充電状態の変化量が第3基準値以下の場合、前記バランス状態と判断してもよい。
【0021】
この構成によれば、充電状態検出部によって検出された充電状態の変化量が第3基準値以下の場合、バランス状態と判断されるので、バランス状態を正確に判断できる。
【0022】
また、上記一態様において、前記蓄電装置の充電状態を検出する充電状態検出部を更に備え、
前記暖機制御部は、前記検出された充電状態に基づいて、充電電力及び放電電力のうちの一方が他方よりも多くなるように前記暖機制御を実行してもよい。
【0023】
この構成によれば、充電電力及び放電電力のうちの一方が他方よりも多くなるように暖機制御が実行されるので、バランス状態を崩して暖機効率を高めることができる。また、充電状態を監視することでバランス状態の崩れが不必要に充電側又は放電側に寄ることを防止できる。
【0024】
また、上記一態様において、前記暖機制御部は、前記蓄電装置の充電状態がバランス状態より放電側に設定された状態であることを示す第4基準値に到達するまで、前記蓄電装置に放電のみを行わせてもよい。
【0025】
この構成によれば、放電のみが行われるので、SOCが満充電側に推移しない。そのため、50%よりも大きいSOCでバランス状態が設定されている暖機システムにおいて有用である。また、蓄電装置の充電状態が第4基準値に到達すると放電が停止されるので、バランス状態の崩れが不必要に放電側に寄ることを防止できる。
【0026】
また、上記一態様において、前記暖機制御部は、前記蓄電装置の充電状態がバランス状態より放電側に設定された状態であることを示す第4基準値に到達するまで、前記充電制御部が前記インバータに出力する充電指令値を所定の割合で減少させてもよい。
【0027】
この構成によれば、充電制御部がインバータに出力する充電指令値が所定の割合で減少されるので、充電量よりも放電量を多くしてバランス状態を崩すことができる。そのため、50%よりも大きいSOCでバランス状態が設定されている暖機システムにおいて有用である。また、蓄電装置の充電状態が第4基準値に到達するとバランス状態を崩す制御が停止されるので、バランス状態の崩れが不必要に放電側に寄ることを防止できる。
【0028】
また、上記一態様において、前記暖機制御部は、前記蓄電装置の充電状態がバランス状態より充電側に設定された状態であることを示す第5基準値に到達するまで、前記蓄電装置に充電のみを行わせてもよい。
【0029】
この構成によれば、充電のみが行われるので、SOCが放電側に推移しない。そのため、50%よりも小さいSOCでバランス状態が設定されている暖機システムにおいて有用である。また、蓄電装置の充電状態が第5基準値に到達すると充電が停止されるので、バランス状態の崩れが不必要に充電側に寄ることを防止できる。
【0030】
また、上記一態様において、前記暖機制御部は、前記蓄電装置の充電状態がバランス状態より充電側に設定された状態であることを示す第5基準値に到達するまで前記充電制御部が前記インバータに出力する放電指令値を所定の割合で減少させてもよい。
【0031】
この構成によれば、充電制御部がインバータに出力する放電指令値が所定の割合で減少されるので、放電量よりも充電量を多くしてバランス状態を崩すことができる。そのため、50%よりも小さいSOCでバランス状態が設定されている暖機システムにおいて有用である。また、蓄電装置の充電状態が第5基準値に到達するとバランス状態を崩す制御が停止されるので、バランス状態の崩れが不必要に充電側に寄ることを防止できる。
【0032】
また、上記一態様において、前記蓄電装置の充電状態を検出する充電状態検出部を更に備え、
前記暖機制御部は、前記検出された充電状態が前記バランス状態から充電側に向かうにつれて前記最大充電電力に対する前記最大放電電力の割合が多くなり、且つ、前記検出された充電状態が前記バランス状態から放電側に向かうにつれて前記最大放電電力に対する前記最大充電電力の割合が多くなるように前記暖機制御を行ってもよい。
【0033】
この構成によれば、充電状態がバランス状態から充電側に向かうにつれて最大充電電力に対する最大放電電力の割合が多くなり、且つ、充電状態がバランス状態から放電側に向かうにつれて最大放電電力に対する最大充電電力の割合が多くなるように暖機制御が行われる。そのため、暖機制御が進行するにつれて、最大充電電力と最大放電電力との割合は等しくなっていき、やがて、バランス状態に到達する。このとき、バランス状態を崩す制御が行われ、暖機効率が高められる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、蓄電装置の発熱が極小値となるバランス状態になった際に、意図的にバランス状態を崩し、発熱量を増加させることができる。そのため、暖機効率を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0037】
図1は、本発明の実施の形態に係る暖機制御システムをハイブリッドショベル1に適用した場合のハイブリッドショベル1の全体構成を示す左側面図である。ハイブリッドショベル1は、クローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に設けられた上部旋回体3と、上部旋回体3に取り付けられた作業アタッチメント4とを備えている。
【0038】
作業アタッチメント4は、上部旋回体3に対して起伏可能に取り付けられたブーム15と、ブーム15の先端部に対して揺動可能に取り付けられたアーム16と、アーム16の先端部に対して揺動可能に取り付けられたバケット17とを備えている。
【0039】
また、作業アタッチメント4は、上部旋回体3に対してブーム15を起伏させるブームシリンダ18と、ブーム15に対してアーム16を揺動させるアームシリンダ19と、アーム16に対してバケット17を揺動させるバケットシリンダ20とを備えている。
【0040】
ハイブリッドショベル1は、エンジン5と、エンジン5の出力軸に連結された油圧ポンプ6及び発電電動機8と、油圧ポンプ6から前記各シリンダ18〜20に対する作動油の給排を制御するコントロールバルブ7と、発電電動機8により発電された電力を充電可能な蓄電装置9と、蓄電装置9と発電電動機8との電力の変換を行うインバータ10と、蓄電装置9の温度を検出する温度検出部11と、蓄電装置9の端子に流れる充電電流及び放電電流を検出する電流検出部12と、蓄電装置9の充電状態(SOC)を検出する充電状態検出部13と、インバータ10を制御する制御部14とを備えている。
【0041】
図2は、
図1に示すハイブリッドショベル1の駆動系を示す概略図である。なお、
図2において、エンジン5、発電電動機8、蓄電装置9、インバータ10、温度検出部11、電流検出部12、充電状態検出部13、及び制御部14は、暖機システムの一例を構成する。
【0042】
油圧ポンプ6は、エンジン5の動力により作動して、作動油を吐出する。油圧ポンプ6から吐出された作動油は、コントロールバルブ7によって流量制御された状態で、各シリンダ18〜20に導かれる。
【0043】
発電電動機8は、エンジン5からの動力により発電機として作動するとともに、蓄電装置9からの電力により電動機として作動する。
図2の例では、発電電動機8は例えば三相モータで構成されているが、これは一例であり、単相モータで構成されていてもよい。
【0044】
蓄電装置9は、例えば、リチウムイオンバッテリ、ニッケル水素バッテリ、電気二重層キャパシタ、及び鉛バッテリといった種々の二次電池で構成される。
【0045】
インバータ10は、制御部14の制御の下、発電電動機8の発電機としての作動と、発電電動機8の電動機としての作動との切り換えを制御する。また、インバータ10は、制御部14の制御の下、発電電動機8に対する電流及び発電電動機8のトルクを制御する。
図2の例では、インバータ10は例えば、3相インバータで構成されているが、これは一例であり単相インバータで構成されていてもよい。
【0046】
温度検出部11は、例えば、蓄電装置9に取り付けられた温度センサで構成される。
【0047】
電流検出部12は、例えば、蓄電装置9の端子に接続された電流センサで構成され、放電電流及び充電電流を検出する。ここで、電流検出部12は、例えば、放電電流をマイナスの電流値、充電電流をプラスの電流値で表せばよい。
【0048】
充電状態検出部13は、例えば、マイクロコントローラ等のプロセッサ及びプログラム等を記憶する記憶装置で構成され、蓄電装置9の残容量の指標となるSOCを検出する。ここで、充電状態検出部13は、例えば、電流積算法等の公知の手法でSOCを算出すればよい。電流積算法を採用する場合、充電状態検出部13は、電流検出部12が検出した充電電流及び放電電流を用いてSOCを算出すればよい。
【0049】
制御部14は、例えば、マイクロコントローラ等のプロセッサ及びプログラム等を記憶する記憶装置で構成されている。そして、制御部14は、充放電制御部141、暖機制御部142、及びバランス状態判断部143を備えている。
【0050】
充放電制御部141は、インバータ10を制御して発電電動機8を動作させ、蓄電装置9の充放電を制御する。
【0051】
暖機制御部142は、温度検出部11により検出された蓄電装置9の温度が予め設定された基準温度よりも低い低温条件下にあると判断した場合、充放電制御部141を制御して、蓄電装置9の充放電を繰り返す暖機制御を実行する。
【0052】
バランス状態判断部143は、暖機制御における充放電がバランスしたバランス状態であるか否かを判断する。
【0053】
バランス状態判断部143によってバランス状態であると判断された場合、暖機制御部142は、充放電制御部141を制御して、バランス状態が崩れるように充電及び放電の少なくともいずれか一方を蓄電装置9に行わせる。
【0054】
具体的には、バランス状態判断部143は、以下に示す4つ判断手法のうちいのいずれかを用いてバランス状態を判断する。
【0055】
一つ目の判断手法では、バランス状態判断部143は、電流検出部12によって計測された充電電流と放電電流とを用いて、暖機制御における充放電の1周期の充電量と放電量とを算出する。そして、バランス状態判断部143は、算出した充電量と放電量との差が第1基準値以下の場合、バランス状態と判断する。
【0056】
第1基準値としては、例えば、電流検出部12の計測精度及びハイブリッドショベル1の性能を考慮して予め定められた値であって、充電量と放電量とが実質的に同じとみなせる値が採用されればよい。なお、バランス状態判断部143は、充放電の1周期において、充電電流に充電時間を乗じて充電量を算出し、放電電流に放電時間を乗じて放電量を算出すればよい。
【0057】
二つ目の判断手法では、バランス状態判断部143は、充放電制御部141がインバータ10に出力する充電指令値と放電指令値との差が第2基準値以下の場合、バランス状態と判断する。ここで、第2基準値としては、例えば、インバータ10、蓄電装置9、及び発電電動機8等の性能を考慮して予め定められた値であって、充電指令値による充電量と放電指令値による放電量とが実質的に同じとみなせる値が採用されればよい。
【0058】
三つ目の例では、バランス状態判断部143は、充電状態検出部13によって検出された充電状態の変化量が第3基準値以下の場合、バランス状態と判断する。暖機制御中では、SOCがバランス状態に近づくにつれて充電量と放電量とが近づいていくので、SOCの変化量が小さくなる。そのため、SOCの変化量からバランス状態の有無が判断できる。具体的には、バランス状態判断部143は、充電状態検出部13が検出したSOCを履歴として記録する。そして、バランス状態判断部143は、記録した履歴からSOCの変化量を算出すればよい。ここで、第3基準値としては、例えば、電流検出部12の検出精度及びハイブリッドショベル1の性能を考慮して予め定められた値であって、SOCの変化量がバランス状態であるとみなせるほど小さくなったことを示す値が採用されればよい。
【0059】
以下、
図3を参照して、制御部14により実行される暖機制御について説明する。
【0060】
まず、暖機制御部142は、充電状態検出部13にSOCを検出させ、温度検出部11に蓄電装置9の温度を検出させる(S301)。
【0061】
次に、暖機制御部142は、温度検出部11の検出温度が基準温度よりも小さいか否かを判定する(S302)。基準温度としては、例えば、蓄電装置9等の性能を考慮して予め定められた値であって、内部抵抗の増加により充放電性能を大きく劣化させることが見込まれる温度が採用できる。
【0062】
検出温度が基準温度よりも低い場合(S302でYES)、暖機制御部142は、S301で検出された検出温度及びSOCを用いて、現状放電することができる最大放電電力を決定し、充放電制御部141は、決定された最大放電電力で発電電動機8を動作させる放電指令値を設定する(S303)。
【0063】
ここで、暖機制御部142は、例えば、温度とSOCとに応じた最大放電電力が予め設定された放電マップを用いて、最大放電電力を決定すればよい。なお、放電マップでは、温度が増大するにつれて最大放電電力が増大し、且つ、SOCが増大するにつれて最大放電電力が増大するように温度とSOCとに対する最大放電電力の関係が規定されている。
【0064】
次に、バランス状態判断部143は、蓄電装置9がバランス状態にあるか否かを判断する(S304)。バランス状態でない場合(S304でNO)、充放電制御部141は、S302で設定した放電指令値をインバータ10に出力し、一定期間、蓄電装置9に最大放電電力で放電させる(S305)。
【0065】
次に、暖機制御部142は、蓄電装置9の温度及びSOCを温度検出部11及び充電状態検出部13に検出させる(S306)。検出温度が基準温度よりも低い場合(S308でYES)、暖機制御部142は、S306で検出された検出温度及びSOCを用いて、現状充電することができる最大充電電力を決定し、充放電制御部141は、決定された最大充電電力で発電電動機8を動作させる充電指令値を設定する(S309)。
【0066】
ここで、暖機制御部142は、例えば、温度とSOCとに応じた最大充電電力が予め設定された充電マップを用いて、最大充電電力を決定すればよい。なお、充電マップでは、温度が増大するにつれて最大充電電力が増大し、且つ、SOCが減少するにつれて最大充電電力が増大するように温度とSOCとに対する最大充電電力の関係が規定されている。
【0067】
なお、放電マップ及び充電マップにおいて、最大放電電力及び最大充電電力は、一定の温度条件下では、充電状態がバランス状態から充電側に向かうにつれて最大充電電力に対する最大放電電力の割合が多くなり、且つ、充電状態がバランス状態から放電側に向かうにつれて最大放電電力に対する最大充電電力の割合が多くなるように規定されている。
【0068】
そのため、暖機制御が進行するにつれて、最大充電電力と最大放電電力との割合は等しくなっていく。したがって、
図9で示すように、SOCは、やがて、バランス状態に到達し、最大充電電流と最大放電電流とは等しくなる。
【0069】
次に、バランス状態判断部143は、蓄電装置9がバランス状態であるか否かを判断する(S310)。蓄電装置9がバランス状態でなければ(S310でNO)、充放電制御部141は、S309で設定した充電指令値をインバータ10に出力し、一定期間、最大充電電力で蓄電装置9を充電させる(S311)。ここで、一定期間としては、例えば、充電及び放電とも同じ値が採用される。これにより、蓄電装置9は一定期間ずつ充放電を交互に繰り返す。
【0070】
次に、暖機制御部142は、蓄電装置9の温度及びSOCを温度検出部11及び充電状態検出部13に検出させる(S313)。検出温度が基準温度よりも低い場合(S314でYES)、処理はS303に戻り、検出温度が基準温度以上になるまでS303〜S314の処理が繰り返される。
【0071】
なお、S302、S308、S314にて検出温度が基準温度以上と判断されると(S302でNO、S308でNO、S314でNO)、暖機制御の必要がないため、処理は終了する。
【0072】
また、S304、S310においてバランス状態である場合(S304でYES、S310でYES)、暖機制御部142はバランス状態解除処理を実行する(S307、S312)。
【0073】
次に、バランス状態解除処理の詳細が説明される。
【0074】
暖機制御部142は、4パターンあるバランス状態解除処理(1)〜(4)のうちいずれかのバランス状態解除処理を採用する。
【0075】
図4はバランス状態解除処理(1)のフローチャートである。
【0076】
まず、暖機制御部142は、
図3のS303で設定した放電指令値に所定の係数を乗じる(S401)。ここで、係数としては、0より大きく、1.0未満の値が採用できる。係数を乗じると現状放電できる最大放電電力が低下するので、蓄電装置9の端子電圧が直ぐに下限電圧以下になって放電が停止される事態を回避でき、連続放電の時間を確保できる。係数としては、想定される連続放電時間内に蓄電装置9の端子電圧が下限電圧を下回わらない値が採用されればよい。また、係数は、連続放電が進行するにつれて徐々に下げられても良い。これにより、連続放電が進行するにつれて、放電電力が低下していき、蓄電装置9の端子電圧が下限電圧以下になり難くなり、連続放電の時間をより確保できる。
【0077】
なお、ここでは、放電指令値に対して係数が乗じられたが、係数は乗じられなくてもよい。
【0078】
次に、充放電制御部141は、S401で設定された放電電力で発電電動機8を動作させる放電指令値をインバータ10に出力する。これにより、蓄電装置9は連続放電を開始する(S402)。
【0079】
次に、充電状態検出部13はSOCを検出する(S403)。次に、暖機制御部142は、S403で検出されたSOCが第1SOC基準値(第4基準値の一例)になったか否かを判定する(S404)。S403で検出したSOCが第1SOC基準値になっていれば(S404でYES)、暖機制御部142は、バランス状態を崩す制御が過度に進行されるのを防止するために、バランス状態解除処理を終了する。これにより、蓄電装置9の例えば、過放電が防止できる。なお、S404でYESの場合、処理は
図3のS301に戻される。一方、S403で検出したSOCが第1SOC基準値になっていなければ(S404でNO)、暖機制御部142は処理をS402に戻し、連続放電を継続する。
【0080】
なお、第1SOC基準値としては、蓄電装置9の充電状態がバランス状態より放電側に設定された状態であることを示す値が採用でき、例えば、これ以上放電が継続されると蓄電装置9が過放電状態になることが想定される値などが採用できる。
【0081】
バランス状態解除処理(1)では放電のみが行われるので、SOCが満充電側に推移しない。そのため、50%よりも大きいSOCでバランス状態が設定されている暖機システムにおいて有用である。
【0082】
図5はバランス状態解除処理(2)のフローチャートである。
【0083】
まず、暖機制御部142は、S303と同様にして、現状放電することができる最大放電電力を決定し、充放電制御部141は、決定された最大放電電力で発電電動機8を動作させる放電指令値を設定する(S501)。
【0084】
次に、充放電制御部141は、S305と同様、S501で設定した放電指令値をインバータ10に出力し、一定期間、蓄電装置9に最大放電電力で放電させる(S502)。
【0085】
次に、暖機制御部142は、S306と同様、蓄電装置9の温度及びSOCを温度検出部11及び電流検出部12に検出させる(S503)。
【0086】
次に、暖機制御部142は、S308と同様、S503で検出された検出温度が基準温度よりも低ければ(S504でYES)、処理をS505に進め、検出温度が基準温度以上であれば(S504でNO)、暖機制御の必要がないので、暖機制御を終了させる。
【0087】
次に、暖機制御部142は、S309と同様、現状充電することができる最大充電電力を決定し、充放電制御部141は、決定された最大充電電力で発電電動機8を動作させる充電指令値を設定する(S505)。次に、暖機制御部142は、S505で設定された充電指令値に係数を乗じる(S506)。ここで、係数としては0より大きく1.0未満の値が採用できる。そのため、実際の充電電力は最大充電電力よりも低く設定される。
【0088】
次に、充放電制御部141は、S311と同様、S506で算出された充電指令値をインバータ10に出力し、一定期間、蓄電装置9を充電させる(S507)。
【0089】
次に、暖機制御部142は、S313と同様、蓄電装置9の温度及びSOCを温度検出部11及び充電状態検出部13に検出させる(S508)。
【0090】
次に、暖機制御部142は、S508で検出された検出温度が基準温度よりも低ければ(S509でYES)、処理をS510に進め、検出温度が基準温度以上であれば(S509でNO)、暖機制御の必要がないので、暖機制御を終了させる。
【0091】
次に、暖機制御部142は、S509で検出したSOCが第1SOC基準値になったか否かを判定する(S510)。S509で検出したSOCが第1SOC基準値になっていれば(S510でYES)、暖機制御部142は、バランス状態を崩す制御が過度に進行されるのを防止するために、バランス状態解除処理を終了する。これにより、蓄電装置9の充電状態が不必要に充電側に寄ることが防止される。S510でYESの場合、処理は
図3のS301に戻る。一方、S509で検出したSOCが第1SOC基準値になっていなければ(S510でNO)、暖機制御部142は処理をS502に戻し、S502〜S510の処理を繰り返す。
【0092】
バランス状態解除処理(2)では、最大充電電力が係数(0より大きく1.0未満)が示す割合分低下された状態で、周期的な充放電が繰り返されるので、放電量が充電量よりも大きくなって、バランス状態を崩すことができる。
【0093】
図6はバランス状態解除処理(3)のフローチャートである。なお、
図6では
図4と同じ処理には同じ符号が付されている。
【0094】
バランス状態解除処理(1)では放電のみ行われていたが、バランス状態解除処理(3)では充電のみが行われている。したがって、バランス状態解除処理(3)では、S401、S402、S404に代えて、S601、S602、S603が設けられている。
【0095】
S601では、
図3のS309で設定した充電指令値に所定の係数が乗じられる。ここで、係数としては、0より大きく、1.0未満の値が採用できる。充電指令値に係数を乗じると最大充電電力が低下するので、蓄電装置9の端子電圧が直ぐに上限電圧以上になって充電が停止される事態を回避でき、連続充電の時間を確保できる。係数としては、想定される連続充電時間内に蓄電装置9の端子電圧が上限電圧を上回わらない値が採用されればよい。また、係数は、連続充電が進行するにつれて徐々に下げられても良い。これにより、連続充電が進行するにつれて、充電電力が低下していき、蓄電装置9の端子電圧が上限電圧以上になり難くなり、連続充電の時間をより確保できる。
【0096】
S602では、S601で算出された充電指令値で蓄電装置9が連続充電される。S603では、暖機制御部142は、S403で検出したSOCが第2SOC基準値(第5基準値の一例)になったか否かを判定する(S603)。S403で検出したSOCが第2SOC基準値になっていれば(S603でYES)、暖機制御部142は、バランス状態を崩す制御が過度に進行されるのを防止するために、バランス状態解除処理を終了する。これにより、例えば、蓄電装置9の過充電が防止できる。一方、S403で検出したSOCが第2SOC基準値になっていなければ(S603でNO)、暖機制御部142は処理をS602に戻し、連続充電を継続する。
【0097】
なお、第2SOC基準値としては、蓄電装置9の充電状態がバランス状態より充電側に設定された状態であることを示す値が採用でき、例えば、これ以上充電が継続されると蓄電装置9が過充電状態になることが想定される値などが採用できる。
【0098】
図7はバランス状態解除処理(4)のフローチャートである。なお、
図7では
図5と同じ処理には同じ符号が付されている。
【0099】
バランス状態解除処理(2)では充電指令値に係数が乗じられていたが、バランス状態解除処理(4)では放電指令値に係数が乗じられている。したがって、S501に続くS701にて、S501で設定された放電指令値に係数が乗じられて最大放電電力が低下されている。そして、この放電電力で一定期間、放電が行われる(S502)。また、バランス状態解除処理(4)では、最大充電電力はそのまま用いられるので、
図5に示すS506が省かれている。また、S702では、バランス状態の崩れが不必要に充電側に寄ることを防止するために第1SOC基準値に代えて第2SOC基準値を用いてYES、NOが判断されている。これら以外は、バランス状態解除処理(4)はバランス状態解除処理(2)と同じである。
【0100】
バランス状態解除処理(4)では、最大放電電力が係数(0より大きく1.0未満)が示す割合分低下された状態で、周期的な充放電が繰り返されるので、充電量が放電量よりも大きくなって、バランス状態を崩すことができる。
【0101】
なお、
図3のフローチャートでは、一定期間の放電(S305)が一定期間の充電(S311)よりも先に実行されているが、この順番は逆であってもよい。
【0102】
このように、本実施の形態では、バランス状態判断部143によってバランス状態であると判断された場合、暖機制御部142により、バランス状態が崩されるので、バランス状態での充放電の継続が防止され、暖機効率を向上させることができる。