(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記送風機は、吸気口と排気口とを有し、前記吸気口及び前記排気口の向きを、前記扉が閉じた状態でとる第1方向と、前記扉が開いた状態でとる第2方向とに切り替え可能であり、
前記第1方向は、前記培養室内の気体を循環させることができる方向であり、
前記第2方向は、前記滅菌空間内の気体を前記培養室内に導入することができる方向である請求項1乃至5のいずれか1項に記載の培養装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組合せは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0011】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る培養装置の概略構造を示す斜視図である。
図2は、実施の形態1に係る培養装置における外扉が開いた状態を示す斜視図である。
図3は、
図1のA−A線に沿った断面斜視図である。
図4は、
図1のB−B線に沿った断面図である。
図5(A)及び
図5(B)は、実施の形態1に係る培養装置における外扉及び内扉が開いた状態を示す斜視図である。
図5(A)は、送風機30の吸気口36及び排気口38が第1方向を向いた状態を示している。
図5(B)は、送風機30の吸気口36及び排気口38が第2方向を向いた状態を示している。本明細書では、便宜上、扉4側を培養装置1の正面とする。
【0012】
本実施の形態に係る培養装置1(1A)は、アイソレータに連結される培養装置であり、例えばCO
2インキュベータとして用いられる。
図1〜
図5(B)に示すように、培養装置1は、前面に開口2aを有する断熱箱本体2と、この開口2aを開閉自在に閉塞する扉4とを備える。断熱箱本体2は、外箱2bと内箱2cとを含む。内箱2cに開口2aが設けられる。外箱2bと内箱2cとの間の空間には、培養室6内を加熱するヒータ28等が配置される。また、外箱2bと内箱2cとの間の空間には、断熱材が配置される。断熱箱本体2における培養装置1の背面側、すなわち扉4とは反対側には、機械室3が設けられる。機械室3には、制御部18や、培養室6内にCO
2やN
2を供給するガス供給部(図示せず)が配置される。
【0013】
扉4は、外扉4aと内扉4bとを含む。内箱2cと内扉4bとで囲まれる空間により培養室6が形成されている。したがって、培養装置1は、開口2aを有する培養室6と、開口2aを塞ぐ扉4(内扉4b)とを備える。培養室6内は、複数の棚(図示せず)により上下に区画され、培養物が収容される。
【0014】
内扉4bは、一端側(本実施の形態では培養装置1の正面から見て右側の端部)がヒンジ8に接続され、これにより断熱箱本体2に対して開閉自在に取り付けられる。したがって、ヒンジ8が内扉4bの回動軸となる。内扉4bは、周縁部にシール部材としてのガスケット10を有する。内扉4bと開口2aとの間にガスケット10が配置されることで、開口2aが気密に閉塞される。また、内扉4bは、ガラス等の透明部材が嵌め込まれた確認窓12を有する。内扉4bには、ガス濃度調節用のガス抜き穴(図示せず)が設けられてもよい。
【0015】
外扉4aは、断熱扉である。外扉4aは、一端側(本実施の形態では培養装置1の正面から見て右側の端部)がヒンジ14に接続され、これにより断熱箱本体2に対して開閉自在に取り付けられる。
【0016】
断熱箱本体2の側面には、操作部16が設けられる。操作部16は、培養装置1の使用者によって操作される操作ボタンや、表示パネル等を有する。培養装置1の使用者は、操作部16を介して培養装置1に各種動作を指示することができる。操作部16は、培養装置1の使用者の指示に応じた信号を制御部18に送信する。
【0017】
制御部18は、ハードウェア構成としてはコンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や回路で実現され、ソフトウェア構成としてはコンピュータプログラム等によって実現される。制御部18は、操作部16から受信した信号に応じて、培養装置1の各部の動作を制御する。また、培養装置1は、温度センサ20やCO
2濃度センサ22等の、培養室6内の状態を検知するセンサを備える。制御部18は、これらのセンサから各センサの検知結果を示す信号を受信し、得られた検知結果に基づいてヒータ28やガス供給部等の動作を制御する。なお、培養装置1は、培養室6内の状態を検知するセンサとして、O
2濃度センサや湿度センサ等を備えてもよい。
【0018】
培養室6の底面には、下側通風路24が設けられる。下側通風路24は、培養室6内の気体が流れる通路である。下側通風路24は、培養室6において培養装置1の背面側から内扉4b側に向かって延在する。培養室6の底面で且つ下側通風路24内には、加湿用の水を貯溜する加湿皿26が配置される。加湿皿26は、金属製、例えばステンレス製の内箱2cの底面外側に配置されたヒータ28によって加熱される。これにより、加湿皿26内の水が蒸発する。また、ヒータ28の加熱により、培養室6内は所定温度(例えば37℃)に維持される。
【0019】
また、培養装置1は、送風機30と、前側通風路40と、微粒子捕集フィルタ42と、殺菌灯44とを、培養室6内に備える。送風機30は、培養室6内の気体を循環させる装置である。送風機30は、筐体32と、ファン34と、吸気口36と、排気口38とを有する。筐体32は、扁平な円筒状であり、その中心軸が培養装置1の前後方向を向くように配置される。筐体32の装置前方側を向く面、すなわち内扉4b側を向く面には、内扉4b側に突出する回動軸32aが設けられる。
【0020】
回動軸32aは、内扉4bに設けられる軸受46によって、回動自在に内扉4bに支持される。したがって、送風機30は、扉4(具体的には内扉4b)に設けられる。回動軸32aと軸受46との接続部は、気密に封止される。回動軸32aの一部は、内扉4bを貫通して培養室6の外側に至り、その先端に回動摘み32bが設けられる。また、回動軸32aには、ファン34への給電用の配線等が挿通される。
【0021】
筐体32の内部空間には、ファン34が収容される。ファン34は、従来公知の一般的なファンであればよく、本実施の形態ではシロッコファンで構成される。ファン34は、その回転軸(回転中心)と筐体32の回動軸32a(回動中心)とが同一直線上に位置するように配置される。吸気口36及び排気口38は、筐体32の内部と外部とを連通する開口である。ファン34の駆動により、吸気口36を介して培養室6内の気体が筐体32内に引き込まれ、筐体32内の気体が排気口38を介して培養室6内に吐き出される。吸気口36と排気口38とは、筐体32の回動中心を挟んで並ぶように配置される。すなわち、吸気口36と排気口38とは、筐体32の回動中心を通る直線上に配置される。
【0022】
送風機30は、吸気口36及び排気口38の向きを第1方向Z(
図5(A)において矢印Zで示す方向)と第2方向Y(
図5(B)中の矢印Yで示す方向)とに切り替え可能である。第1方向Z及び第2方向Yは、互いに交わる方向である。本実施の形態では、第1方向Zと第2方向Yとは略直交している。吸気口36及び排気口38の向きは、培養装置1の使用者が回動摘み32bを操作して筐体32を回動軸32a周りに回動させることで、第1方向及び第2方向の間で切り替えることができる。
【0023】
図4及び
図5(A)に示すように、吸気口36及び排気口38が鉛直方向に並んだ状態が、吸気口36及び排気口38が第1方向Zを向いた状態である。吸気口36及び排気口38が第1方向Zを向いた状態では、吸気口36が前側通風路40側を向き、排気口38が鉛直方向上方を向く。
【0024】
また、
図5(B)に示すように、吸気口36及び排気口38が水平方向に並んだ状態が、吸気口36及び排気口38が第2方向Yを向いた状態である。吸気口36及び排気口38が第2方向Yを向いた状態では、内扉4bが開いた際に吸気口36が培養装置1の外部側を向き、排気口38が培養室6側を向く。培養装置1がアイソレータに連結された状態では、吸気口36はアイソレータ100側を向く。第1方向Zと第2方向Yとを比較すると、吸気口36及び排気口38が第1方向Zを向いた状態では、送風機30の送風方向が相対的に鉛直方向に近く、吸気口36及び排気口38が第2方向Yを向いた状態では、送風機30の送風方向が相対的に水平方向に近い。
【0025】
前側通風路40は、培養室6内の気体が流れる通路である。前側通風路40は、扉4に設けられる。本実施の形態では、前側通風路40は内扉4bに設けられる。そして、前側通風路40の一端側は、下側通風路24の内扉4b側の端部に接続される。前側通風路40の他端側は、吸気口36及び排気口38が第1方向Zを向く状態で、送風機30の吸気口36に接続される。したがって、培養室6内には、下側通風路24の装置背面側端部の開口から、下側通風路24、前側通風路40、吸気口36、ファン34及び排気口38の順に並ぶ循環用通風路が形成される。培養室6内に循環用通風路が設けることで、培養室6内に循環気流(
図4において白矢印で示す気流)を形成することができる。
【0026】
この循環気流は、吸気口36及び排気口38が第1方向Zを向いている状態でファン34が駆動されることで形成される。循環気流において、培養室6内の気体は、排気口38から鉛直方向上方に吐出されると、培養室6の天面に沿って装置背面側に進む。そして、気体は、培養室6の背面に沿って鉛直方向上方から下方に進み、下側通風路24の背面側開口から循環用通風路に入る。
【0027】
循環用通風路に進入した気体は、下側通風路24を通過し、前側通風路40を経て吸気口36に至る。吸気口36に至った気体は、ファン34により筐体32内に吸引され、ファン34を通過して排気口38から再び鉛直方向上方に吐出される。下側通風路24を通過する際、気体は加湿皿26の上方を通過する。これにより、気体は加湿される。加湿された気体が循環することで、培養室6内は均一に所定湿度(例えば95%RH)に維持される。
【0028】
微粒子捕集フィルタ42は、扉4に設けられる。本実施の形態では、微粒子捕集フィルタ42は内扉4bに設けられる。より具体的には、微粒子捕集フィルタ42は、筐体32内であって循環用通風路におけるファン34と排気口38との間に配置される。すなわち、微粒子捕集フィルタ42は、循環気流の経路上に配置される。したがって、培養室6内の気体は、培養室6内を循環する過程で微粒子捕集フィルタ42を通過する。これにより、気体内に含まれる細菌やウイルス、塵等の微粒子を捕集することができる。その結果、培養室6内の清浄環境を維持することができる。
【0029】
また、微粒子捕集フィルタ42は、循環用通風路におけるファン34と排気口38との間に配置されているため、可動部品であるファン34の回転によって生じ得る微粒子を、循環用通風路から漏出させることなく即座に捕集することができる。微粒子捕集フィルタ42としては、HEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタや、ULPA(Ultra Low Penetration Air)フィルタ等を挙げることができる。
【0030】
殺菌灯44は、扉4に設けられる。本実施の形態では、殺菌灯44は内扉4bに設けられる。より具体的には、殺菌灯44は、前側通風路40の内壁に固定される。殺菌灯44としては、紫外光を照射する蛍光灯やLED等の公知の光源を用いることができる。殺菌灯44は、加湿皿26に貯溜される水に紫外光が照射されるように配置される。好ましくは、殺菌灯44は加湿皿26の直上に配置される。これにより、加湿皿26内での雑菌の繁殖を抑制して、培養室6内の清浄環境を維持することができる。また、殺菌灯44は、循環気流の経路上に配置される。したがって、培養室6内の気体は、培養室6内を循環する過程で殺菌灯44から紫外光が照射される。これにより、培養室6内の気体を殺菌することができ、培養室6内の清浄環境を維持することができる。
【0031】
アイソレータ100,200と培養室6の滅菌処理、又は培養室6単体の滅菌処理において過酸化水素が用いられる場合、無害化工程において殺菌灯44を点灯させることで、過酸化水素の分解を促進させることができる。この分解反応は、H
2O
2→OHラジカル→H
2Oで表され、過酸化水素は最終的に水になって無害化される。また、殺菌灯44の点灯とともにファン34を駆動させることで、培養室6内の過酸化水素が循環して、殺菌灯44に順次照射される。
【0032】
また、
図4に示すように、内扉4bが閉まっている状態では、殺菌灯44が固定される前側通風路40の一端側は、下側通風路24の内扉4b側の端部に潜りこむようにして、下側通風路24に接続される。このため、殺菌灯44が照射する紫外線は、前側通風路40の内壁面及び下側通風路24の内壁面で複数回反射されてエネルギーを失った後に、前側通風路40及び下側通風路24の接続部の隙間等から培養室6に漏出する。したがって、殺菌灯44から照射される紫外線が培養室6内の培養物に影響を与えることを、回避することができる。なお、前側通風路40及び下側通風路24を構成する材料として、紫外線の反射率が低い材料、例えばステンレスや、アルマイト処理を施したアルミニウム等を採用してもよい。
【0033】
培養室6内の状態を検知するセンサもまた、扉4に設けられる。本実施の形態では、温度センサ20及び濃度センサ22が内扉4bに設けられている。また、温度センサ20及び濃度センサ22は、内扉4bの上部に設けられる。これにより、殺菌灯44から温度センサ20及び濃度センサ22に紫外光が照射されることを回避して、センサの劣化を抑制することができる。また、温度センサ20及び濃度センサ22は、内扉4bの回動半径方向で内扉4bの中心よりもヒンジ8側に設けられる。これにより、内扉4bの開閉によるセンサへの影響を抑制することができる。
【0034】
また、
図5(A)
図5(B)に示すように、送風機30の筐体32の外周部には、筐体32の半径方向外側に突出する突起39a及び突起39bが設けられる。突起39aは、吸気口36及び排気口38が第1方向Zを向いた状態で、前側通風路40の端部と接触あるいは嵌合する。これにより、筐体32の位置決め、あるいは姿勢保持がなされる。突起39bは、吸気口36及び排気口38が第2方向Yを向いた状態で、前側通風路40の端部と接触あるいは嵌合する。これにより、筐体32の位置決め、あるいは姿勢保持がなされる。
【0035】
また、
図5(A)
図5(B)に示すように、吸気口36及び排気口38は、開口幅8mmのストライプ形状、あるいは格子形状を有する。本形状により、吸気口36及び排気口38の方向を変更する際に、前側通風路40と筐体32との間に異物が挟まれることを回避できる。よって、使用者は、吸気口36及び排気口38の方向を簡単且つ安全に変更することができる。
【0036】
培養装置1は、アイソレータに連結される。これにより、培養室6内に収容されている培養物を、アイソレータ内に直接搬入することができる。また、アイソレータから培養室6内に培養物を直接搬入することができる。
図6は、実施の形態1に係る培養装置がアイソレータの作業室に接続された状態を模式的に示す図である。
【0037】
アイソレータ100は、滅菌装置(図示せず)と、作業室102とをその内部に有する。滅菌装置は、過酸化水素等の滅菌物質を作業室102に供給することができる。作業室102は、滅菌装置により滅菌処理される滅菌空間であり、また、気密性を有する閉鎖空間を形成可能である。作業室102において、無菌環境であることが要求される作業を行うことができる。無菌環境が要求される作業としては、例えば細胞培養等の生体由来材料を対象とする作業を挙げることができる。アイソレータ100は、作業室102内と外部とを連通する開口104を有する。培養装置1は、扉4側がアイソレータ100の開口104に接続される。
【0038】
培養装置1の扉4、すなわち外扉4a及び内扉4bは、培養装置1がアイソレータ100に連結された状態で、アイソレータ100が備える滅菌空間としての作業室102側に開くように構成されている。このため、内扉4bに設けられる送風機30、前側通風路40、微粒子捕集フィルタ42、殺菌灯44、温度センサ20及び濃度センサ22は、培養装置1がアイソレータ100に連結された状態で内扉4bが開いたときに、アイソレータ100の滅菌空間内に位置する。これにより、送風機30、前側通風路40、微粒子捕集フィルタ42、殺菌灯44、温度センサ20及び濃度センサ22の清掃や交換、補修といった培養装置1のメンテナンスを、作業室102内の清浄な環境下で実施することができる。よって、培養室6内の清浄な環境を維持したまま、培養装置1のメンテナンスを実施することができる。
【0039】
また、アイソレータ100の作業室102には、作業室102内で作業を行なう際に用いられるグローブ106が設けられている。グローブ106は、作業室102の前面に設けられる開口部に接続される。作業者は、開口部からグローブ106に手を挿入して、作業室102内で作業を行なうことができる。本実施の形態では、培養装置1の扉4が開いたときに、アイソレータ100の正面から見てグローブ106と重なる位置まで、送風機30等が突出する。これにより、培養装置1のメンテナンスの際にグローブ106を利用することができる。
【0040】
また、アイソレータは、作業室と連結されたパスボックスを備える場合がある。パスボックスは、接続室あるいはジョイントボックスとも呼ばれ、作業室に搬入する物品を滅菌するための部屋である。アイソレータがパスボックスを備える場合、培養装置1の扉4は、滅菌空間としてのパスボックス内に開くように構成されてもよい。
図7は、実施の形態1に係る培養装置がアイソレータのパスボックスに接続された状態を模式的に示す図である。
【0041】
アイソレータ200は、無菌環境であることが要求される作業を行うための作業室202を有する。また、アイソレータ200は、作業室202と扉(図示せず)を介して連結されたパスボックス208を有する。パスボックス208は、パスボックス208内と外部とを連通する開口204を有する。培養装置1は、扉4側がアイソレータ200の開口204に接続される。
【0042】
培養装置1の扉4、すなわち外扉4a及び内扉4bは、アイソレータ200が備える滅菌空間としてのパスボックス208側に開くように構成されている。このため、内扉4bに設けられる送風機30、前側通風路40、微粒子捕集フィルタ42、殺菌灯44、温度センサ20及び濃度センサ22は、培養装置1がアイソレータ200に連結された状態で内扉4bが開いたときに、アイソレータ200の滅菌空間内に位置する。これにより、培養装置1のメンテナンスをパスボックス208内の清浄な環境下で実施することができる。よって、培養室6内の清浄な環境を維持したまま、培養装置1のメンテナンスを実施することができる。
【0043】
また、アイソレータ200のパスボックス208には、パスボックス208内で作業を行なう際に用いられるグローブ206が設けられている。作業者は、グローブ206に手を挿入して、パスボックス208内で作業を行なうことができる。本実施の形態では、培養装置1の扉4が開いたときに、アイソレータ200の正面から見てグローブ206と重なる位置まで、送風機30等が突出する。これにより、培養装置1のメンテナンスの際にグローブ206を利用することができる。
【0044】
培養装置1は、扉4が閉じた状態で吸気口36及び排気口38が第1方向Zを向き、扉4が開いた状態で吸気口36及び排気口38が第2方向Yを向くように構成される。本実施の形態では、内扉4bが閉じた状態で吸気口36及び排気口38が第1方向Zを向き、内扉4bが開いた状態で吸気口36及び排気口38が第2方向Yを向く。
図4に示すように、内扉4bが閉じた状態で吸気口36及び排気口38が第1方向Zを向くことで、培養室6内に上述した循環気流を形成することができる。すなわち、第1方向Zは、培養室6内の気体を循環させることができる方向である。
【0045】
また、
図5(B)に示すように、内扉4bが開いた状態で吸気口36及び排気口38が第2方向Yを向くことで、アイソレータ100,200側から培養室6内に向かう気流(
図5(B)において白矢印で示す気流)を形成することができる。すなわち、第2方向Yは、アイソレータ100,200の滅菌空間内の気体を培養室6内に導入することができる方向である。これにより、培養装置1が接続される作業室102あるいはパスボックス208内の気体を、培養室6内に導入することができる。例えば、アイソレータ100,200の滅菌処理において、培養装置1の外扉4a及び内扉4bを開き、吸気口36及び排気口38を第2方向Yに向け、ファン34を駆動させることで、作業室102内やパスボックス208内の滅菌ガスを培養室6内に導入することができる。これにより、培養室6内を簡単に、また確実に滅菌することができる。
【0046】
なお、
図5(A)では、第1方向Zと第2方向Yとの切り替えを説明する便宜上、外扉4a及び内扉4bは開いているが吸気口36及び排気口38は第1方向Zを向いた状態を図示している。
【0047】
本実施の形態では、第2方向Yは略水平方向であるが、特にこれに限定されない。第2方向Yは、吸気口36及び排気口38が第2方向Yを向いた状態で形成される気流の少なくとも一部が、培養室6内に進入できる限りにおいて、上下方向の傾きを適宜設定することができる。例えば、第2方向Yは、排気口38の吐出方向の延長上に開口2aの上端が位置する角度から、排気口38の吐出方向の延長上に開口2aの下端が位置する角度までの範囲で傾いていてもよい。例えば、第2方向Yの傾きは、好ましくは水平方向に対して±45°の範囲であり、より好ましくは水平方向に対して±30°の範囲であり、さらに好ましくは水平方向に対して±10°の範囲である。
【0048】
また、
図4では、筐体32の回動摘み32bが培養室6の外側に設けられた構造が図示されているが、特にこの構成に限定されない。例えば、回動摘み32bは、筐体32の培養室6側に露出する面に設けられてもよい。これにより、内扉4bが開いた状態で、吸気口36及び排気口38の向きを変更することができる。この結果、アイソレータ100,200の正面側から、吸気口36及び排気口38の向きを容易に変更することができる。
【0049】
続いて、培養装置1及びアイソレータ100,200の滅菌処理について説明する。
図8は、実施の形態1に係る培養装置で実行される制御フローチャートである。このフローは、例えば作業者が操作部16から滅菌処理の実行を指示した場合に、制御部18により実行される。培養装置1の滅菌処理は、アイソレータ100,200の滅菌処理に付随して実行される。例えば、作業者は、培養装置1の操作部16と、アイソレータ100,200の操作部(図示せず)とに、滅菌処理の実行を指示する信号を入力する。
【0050】
アイソレータ100,200側では、滅菌処理が開始されると、噴霧工程、曝露工程及び無害化工程の各工程が実行される。噴霧工程では、過酸化水素等の滅菌物質がアイソレータ100,200の作業室102,202内に供給される。噴霧工程に続いて、曝露工程が進行する。曝露工程では、作業室102,202の内壁、各室内に収容されている物品等が滅菌物質に曝されて、滅菌される。曝露工程に続いて、無害化工程が進行する。無害化工程では、作業室102,202内の気体が排気されて、滅菌物質が除去される。パスボックス208を備えるアイソレータ200では、パスボックス208についても作業室202と同様に滅菌処理が施される。
【0051】
また、アイソレータ100,200の滅菌処理では、培養装置1の滅菌処理工程の進行に合わせて、噴霧、曝露及び無害化の各工程が実行される。例えば、噴霧工程の開始に先立って、アイソレータ100,200の制御部は、培養装置1において後述する風向切り替え作業が済んで送風機30の駆動が開始されたか否かを確認する。そして、送風機30の駆動が確認された後に、噴霧工程が開始される。
【0052】
培養装置1側では、滅菌処理が開始されると、制御部18が培養室6内の温度制御、ガス濃度制御、及び送風機30(ファン34)の駆動をそれぞれ停止する(S101)。そして、制御部18は、風向切り替えを促す表示、すなわち吸気口36及び排気口38の向きを第1方向Zから第2方向Yに切り替えることを促す表示を、操作部16の表示パネルに表示させる(S102)。その後、制御部18は、風向切り替えが完了したか否かを確認する(S103)。
【0053】
例えば、作業者が回動摘み32bを操作することで、第1方向Zを第2方向Yに切り替えることができる。作業者は、風向を切り替えた後、操作部16に風向の切り替えが完了したことを示す信号を入力する。制御部18は、この信号を受信することで、風向切り替えの完了を認識することができる。なお、回動摘み32b等に筐体32の回動を検知するセンサを組み込み、このセンサからの信号を制御部18が受信することで、風向切り替えの完了が認識されてもよい。
【0054】
風向切り替えの完了が確認されない場合(S103のN)、制御部18は、風向切り替え完了の確認を繰り返す(S103)。風向切り替えの完了が確認された場合(S103のY)、制御部18は、送風機30を駆動する(S104)。これにより、アイソレータ100の滅菌処理において作業室102やパスボックス208に噴霧された滅菌物質が、培養室6内に引き込まれる。
【0055】
なお、制御部18は、送風機30の駆動とともに、ヒータ28を駆動させて培養室6内の温度を制御してもよい。例えば、制御部18は、培養室6内の温度が作業室102,202内やパスボックス208内の温度と一致するようにヒータ28を駆動させる。これにより、滅菌物質が培養室6内で凝集することを抑制することができる。
【0056】
また、制御部18は無害化工程において、送風機30の駆動と殺菌灯44の点灯とを組み合わせてもよい。これにより、過酸化水素の分解を促進させることができる。制御部18は、アイソレータ100,200の滅菌処理が無害化工程へ移行したことを、予め定められた時間の経過等に基づいて認識することができる。なお、制御部18は、アイソレータ100,200から信号を受信することで、滅菌処理が無害化工程へ移行したことを認識してもよい。
【0057】
続いて、制御部18は、滅菌処理が完了したか否かを確認する(S105)。例えば、作業者は、アイソレータ100,200側から滅菌処理の完了が報知されると、操作部16に滅菌処理が完了したことを示す信号を入力する。制御部18は、この信号を受信することで、滅菌処理の完了を認識することができる。なお、制御部18は、予め定められた時間の経過等に基づいて、滅菌処理の完了を認識してもよい。
【0058】
滅菌処理の完了が確認されない場合(S105のN)、制御部18は、滅菌処理完了の確認を繰り返す(S105)。滅菌処理の完了が確認された場合(S105のY)、制御部18は、送風機30を停止する(S106)。培養室6内の温度制御を実行している場合には、ヒータ28の駆動も停止する。そして、制御部18は、風向切り替えを促す表示、すなわち吸気口36及び排気口38の向きを第2方向Yから第1方向Zに切り替えることを促す表示を、操作部16の表示パネルに表示させる(S107)。その後、制御部18は、風向切り替えが完了したか否かを確認する(S108)。
【0059】
風向切り替えの完了が確認されない場合(S108のN)、制御部18は、風向切り替え完了の確認を繰り返す(S108)。風向切り替えの完了が確認された場合(S108のY)、制御部18は、培養室6内の温度制御、ガス濃度制御、及び送風機30の駆動をそれぞれ再開し(S109)、本フローを終了する。なお、制御部18は、ステップS102において風向切り替えを促す表示とともに扉4の開放を促す表示を出し、ステップS103において風向切り替えの完了とともに扉4の開放も確認してもよい。また、制御部18は、ステップS107において風向切り替えを促す表示とともに扉4の閉鎖を促す表示を出し、ステップS103において風向切り替えの完了とともに扉4の閉鎖も確認してもよい。
【0060】
以上説明したように、本実施の形態に係る培養装置1は、アイソレータ100,200に連結された状態で、アイソレータ100,200が備える滅菌空間側に内扉4bが開くように構成されている。そして、内扉4bに送風機30が設けられている。これにより、送風機30の清掃、補修、交換等の作業を、作業室102内あるいはパスボックス208内の清浄な環境下で実施することができる。したがって、培養室6内の清浄環境を保ちながら培養装置1のメンテナンスを実施することができる。
【0061】
また、内扉4bには、前側通風路40、微粒子捕集フィルタ42、殺菌灯44、温度センサ20及び濃度センサ22も設けられている。よって、これらの交換作業等も清浄環境下で実施することができる。したがって、培養室6内の清浄環境を保ちながら培養装置1のメンテナンスを実施することができる。
【0062】
また、送風機30は、吸気口36及び排気口38の向きを、内扉4bが閉じた状態でとる第1方向Zと、内扉4bが開いた状態でとる第2方向Yとに切り替え可能である。そして、内扉4bが閉じた状態で、吸気口36及び排気口38を第1方向Zとすることで、培養室6内に循環気流を形成することができる。また、内扉4bが開いた状態で吸気口36及び排気口38を第2方向Yとすることで、アイソレータ100,200の滅菌空間内の気体を培養室6内に導入することができる。これにより、培養に適した環境の維持と、培養室6内の簡単、確実な滅菌との両立を図ることができる。
【0063】
(実施の形態2)
実施の形態2に係る培養装置は、扉の開閉に連動して送風機30の向きを切り替える切り替え機構を備える点を除き、実施の形態1に係る培養装置1と共通の構成を有する。本実施の形態の説明では、実施の形態1と同様の構成については、その説明を適宜省略する。
図9(A)及び
図9(B)は、実施の形態2に係る培養装置における外扉が開いた状態を示す斜視図である。
図9(A)は、切り替え機構48のカバー48bが取り付けられた状態を、
図9(B)は、カバー48bが取り外された状態を、それぞれ示している。
【0064】
実施の形態2に係る培養装置1(1B)は、内扉4bの開閉に連動して、第1方向Zと第2方向Yとを切り替える切り替え機構48を備える。切り替え機構48は、シャフト48aと、カバー48bとを有する。シャフト48aは、両端部にベベルギア48cを有する。また、送風機30は、回動軸32a(
図4参照)の先端に、回動摘み32bに代えてベベルギア32cを有する。また、ヒンジ8は、所定位置にベベルギア8aを有する。
【0065】
シャフト48aは、一方のベベルギア48cが送風機30のベベルギア32cと噛み合い、他方のベベルギア48cがヒンジ8のベベルギア8aと噛み合うように設置される。この状態で、シャフト48a、ベベルギア32c及びベベルギア8aを覆うように、カバー48bが設けられる。内扉4bが開くと、ヒンジ8の回動にともなってシャフト48aが軸周り方向に回転する。そして、シャフト48aの回転がベベルギア32cを介して筐体32に伝わり、送風機30が回動する。これにより、吸気口36及び排気口38の向きを、内扉4bの開閉に連動して第1方向Zから第2方向Yに、あるいは第2方向Yから第1方向Zに切り替えることができる。
【0066】
このように、切り替え機構48を設けることで、培養装置1の滅菌処理をより簡単に実施することができる。なお、切り替え機構48の構成は上述したものに限定されず、例えば扉4の開閉に連動して駆動するモータを回動軸32aに設け、このモータにより送風機30を回動させてもよい。
【0067】
内扉4bの回動角度と送風機30の回動角度との関係は、例えば、内扉4bが90°開いたときに、送風機30の吸気口36及び排気口38が第2方向Yを向くように設定される。具体的には、内扉4bが90°開いたときに、送風機30が90°回動するように設定される。あるいは、内扉4bが90°以上の所定角度まで開いたときに、送風機30の吸気口36及び排気口38が第2方向Yを向くように設定されてもよい。この場合、培養室6の対角線方向への送風を実現することができる。例えば、内扉4bが120°開いた時に送風機30が90°回動するように設定される。
【0068】
(実施の形態3)
実施の形態3に係る培養装置は、送風機及び微粒子捕集フィルタの配置が異なる点を除き、実施の形態1に係る培養装置1と共通の構成を有する。本実施の形態の説明では、実施の形態1と同様の構成については、その説明を適宜省略する。
図10(A)及び
図10(B)は、実施の形態3に係る培養装置における外扉及び内扉が開いた状態を示す斜視図である。
【0069】
図10(A)は、送風機330の吸気口336及び排気口338が第1方向を向いた状態を示している。
図10(B)は、送風機330の吸気口336及び排気口338が第2方向を向いた状態を示している。なお、
図10(A)では、第1方向Zと第2方向Yとの切り替えを説明する便宜上、扉4は開いているが吸気口336及び排気口338は第1方向Zを向いた状態を図示している。また、
図10(B)では、微粒子捕集フィルタ342の図示を省略している。
【0070】
実施の形態3に係る培養装置1(1C)は、実施の形態1に係る培養装置1が備える送風機30よりも径の小さい円筒状の送風機330を備える。送風機330は、筐体内に配置されたファン(図示せず)と、吸気口336と、排気口338とを有する。送風機330は、回動自在に内扉4bに支持される。また、送風機330は、内扉4bの回動半径方向R(
図10(A)において矢印Rで示す方向)において、内扉4bの中心Cよりも外側に設けられる。例えば、送風機330の回動中心は、水平方向あるいは回動半径方向Rにおいて、内扉4bの中心Cよりもヒンジ8から離間している。
【0071】
第1方向Zを向いた状態の吸気口336と、下側通風路24とは、第1前側通風路340を介して接続される。第1前側通風路340は、内扉4bに設けられる。第1方向Zを向いた状態の排気口338には、第2前側通風路350が接続される。第2前側通風路350は、内扉4bに設けられる。
【0072】
第2前側通風路350は、鉛直流路350aと水平流路350bとを有する。鉛直流路350aは、一端が排気口338に接続され、他端が排気口338の鉛直方向上方に配置される。水平流路350bは、一端が鉛直流路350aの鉛直方向上方側の端部に接続され、他端がヒンジ8の近傍に配置される。水平流路350bには、微粒子捕集フィルタ342が収容されている。微粒子捕集フィルタ342は、水平流路350bの延在方向に沿って、すなわち水平方向に延在する。
【0073】
送風機330が駆動されると、培養室6内の気体は、下側通風路24から第1前側通風路340を抜け、吸気口336、ファン、排気口338、鉛直流路350a及び水平流路350bを経て、微粒子捕集フィルタ342を通過して培養室6内に吐出される。また、
図10(A)及び
図10(B)に示すように、送風機330は、吸気口336及び排気口338の向きを第1方向Zと第2方向Yとに切り替え可能である。
【0074】
本実施の形態に係る培養装置1では、送風機330が内扉4bの回動半径方向Rの外側に配置される。これにより、送風機330が回動半径方向Rの内側に配置される場合に比べて、送風機330を作業室102あるいはパスボックス208側により突出させることができる。このため、培養装置1のメンテナンスをより簡単に実施することができる。また、滅菌処理において、作業室102あるいはパスボックス208内の滅菌物質を、より確実に培養室6内に引き込むことができる。
【0075】
(実施の形態4)
実施の形態4に係る培養装置は、扉4として外扉4aのみを備える点を除き、実施の形態1に係る培養装置1と共通の構成を有する。本実施の形態の説明では、実施の形態1と同様の構成については、その説明を適宜省略する。
図11は、実施の形態4に係る培養装置における外扉が開いた状態を示す斜視図である。
【0076】
本実施の形態に係る培養装置1(1D)は、扉4として外扉4aのみを備える。すなわち、内扉4bを有しない。送風機30、前側通風路40、微粒子捕集フィルタ42、殺菌灯44、温度センサ20及び濃度センサ22は、外扉4aに設けられる。外扉4aは、培養装置1がアイソレータ100,200に連結された状態で、アイソレータ100,200が備える滅菌空間としての作業室102やパスボックス208側に開くように構成されている。このため、送風機30、前側通風路40、微粒子捕集フィルタ42、殺菌灯44、温度センサ20及び濃度センサ22は、培養装置1がアイソレータ100に連結された状態で外扉4aが開いたときに、アイソレータ100の滅菌空間内に位置する。これにより、培養室6内の清浄な環境を維持したまま、培養装置1のメンテナンスを実施することができる。
【0077】
本発明は、上述した各実施の形態に限定されるものではなく、各実施の形態を組み合わせたり、当業者の知識に基づいて各種の設計変更などのさらなる変形を加えることも可能であり、そのように組み合わせられ、もしくはさらなる変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれる。上述した各実施の形態同士の組み合わせ、及び上述した各実施の形態への変形の追加によって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態、及び変形それぞれの効果をあわせもつ。
【0078】
例えば、実施の形態4に係る培養装置1に、切り替え機構48が設けられてもよい。また、実施の形態4に係る培養装置1において、送風機30は、外扉4aの回動半径方向で外扉4aの中心よりも外側に設けられてもよい。
【0079】
上述した各実施の形態において、吸気口36,336と排気口38,338との配置は逆であってもよい。すなわち、吸気口36,336及び排気口38,228が第1方向Zを向いている状態で、吸気口36,336が鉛直方向上方に配置され、排気口38,338が鉛直方向下方に配置されてもよい。この場合、扉4を開いた際の送風機30,330の回動方向は、上述した各実施の形態とは逆方向であることが好ましい。また、培養室6内には、上述した各実施の形態とは逆方向の循環気流が形成される。なお、殺菌灯44は、微粒子捕集フィルタ42,342よりも循環気流の風上側に配置されることが好ましい。これにより、微粒子捕集フィルタ42,342に生きた細菌が捕捉され、フィルタ上で細菌が増殖する事態を抑制することができる。