特許第6505554号(P6505554)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6505554
(24)【登録日】2019年4月5日
(45)【発行日】2019年4月24日
(54)【発明の名称】乗物用シートのスライド位置検出装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/07 20060101AFI20190415BHJP
【FI】
   B60N2/07
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-175498(P2015-175498)
(22)【出願日】2015年9月7日
(65)【公開番号】特開2017-52310(P2017-52310A)
(43)【公開日】2017年3月16日
【審査請求日】2018年4月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】590001164
【氏名又は名称】シロキ工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 秀和
(72)【発明者】
【氏名】大野 達也
【審査官】 渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−049800(JP,A)
【文献】 特開2008−201299(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0062467(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00− 2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物用シートのスライド位置検出装置であって、
乗物本体に固定されるロアレールと、乗物用シートに固定され前記ロアレールに対し前後方向に摺動可能に組みつけられたアッパレールとのうち、一方のレール側に配設された磁気式検出器と、他方のレール側に配設された被検出部とを備え、
前記アッパレールは、1つの上面部と一対の側面部とが組み合わされて左右方向の基本断面形状が下方に開口した逆U字状に形成され、前記上面部の上面には、底壁部と側壁部とが組み合わされたシート側部材の前記底壁部が、前記側壁部を前記上面部の左右方向一端部側において上方に延びるように配置した状態で取付けられ、
前記磁気式検出器又は前記被検出部は、底板部と側板部とが組み合わされた取付用ブラケットを介して前記上面部の左右方向他端部側に配置されて前記シート側部材の前記側壁部に取付けられており、
前記取付用ブラケットの前記底板部と前記側板部のなす角度は、前記シート側部材の前記底壁部と前記側壁部のなす角度が製造バラツキにより変動する最大の角度に設定されており、前記取付用ブラケットの前記底板部と前記側板部のなす角度を維持する剛性は、前記シート側部材の前記底壁部と前記側壁部のなす角度を維持する剛性より弱く設定されており、
前記取付用ブラケットの前記側板部が前記シート側部材の前記側壁部に対して締結固定されたとき、前記取付用ブラケットの前記底板部は前記シート側部材の前記底壁部又は前記アッパレールの前記上面部に密着するとともに前記取付用ブラケットの前記側板部とのなす角度を前記シート側部材の前記底壁部と前記側壁部のなす角度に一致させた状態で固定されている乗物用シートのスライド位置検出装置。
【請求項2】
請求項1において、前記取付用ブラケットの前記底板部と前記側板部の連結部に近接する前記底板部又は前記側板部には、前記底板部と前記側板部のなす角度を維持する剛性を弱めるための弱体化部が設けられている乗物用シートのスライド位置検出装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、前記取付用ブラケットの前記底板部の前記側板部と反対側端部には、前記側板部に対向して上方向に延びて磁気式検出器又は被検出部が取付けられる取付座部が設けられている乗物用シートのスライド位置検出装置。
【請求項4】
請求項3において、前記取付用ブラケットの前記底板部と前記取付座部との間には連続して延びる凸状のリブが前記取付用ブラケットの内側に設けられている乗物用シートのスライド位置検出装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、前記側板部を前記シート側部材の前記側壁部に対してボルト締結する部位は、前記取付用ブラケットの前記底板部の前端部と後端部の間に配設されている乗物用シートのスライド位置検出装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、前記シート側部材は前記底壁部と前記側壁部とが組み合わされて左右方向断面がL字状に形成され、前記取付用ブラケットは前記底板部と前記側板部とが組み合わされて左右方向の基本断面形状が略L字状に形成されている乗物用シートのスライド位置検出装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、飛行機、船、電車等の乗物に搭載される乗物用シートのスライド位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
乗物用シートのスライド位置検出装置においては、例えば、特許文献1に開示されているものがある。これは、可動レールに取付けられた磁気式検出器と、固定レールの磁気式検出器に対向する位置に取付けられた被検出部とを備えている。そして、固定レール上を可動レールが摺動したとき、被検出部が磁気式検出器の対向位置に有るか否かを検知することによりスライド位置を検出している。特許文献1に記載の技術においては、図10に示すように、固定レール1に対して摺動可能に組みつけられた可動レール2の上面にサイドパネル3の下端部と横断面L字状のブラケット4の基板部4aが取付けられている。サイドパネル3の本体部とブラケット4の側板部4bとは、可動レール2の上面の幅方向(長手方向に垂直な方向)両側に対向して配置されている。側板部4bのサイドパネル3と反対側の面には、磁気式検出器5が取付けられている。固定レール1には、磁気式検出器5に対向する位置に被検出体6が取付けられている。被検出体6は、鉄板製の部品で固定レール1に取付けられる横断面L字状の取付部6aと、取付部6aの上端から水平状に折り曲げ形成された被検出部6bと、を有する。固定レール1に対して可動レール2が摺動して、磁気式検出器5が被検出部6bに対向する位置に来たとき磁気式検出器5が被検出部6bを検出できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−71713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術においては、横断面L字状のブラケット4の基板部4aが可動レール2の上面に取付けられており、基板部4aと側板部4bとで形成されるコーナ部が被検出体6に近接した位置にある。したがって、基板部4aと側板部4bとで形成される角度が製造上のバラツキで変化しても磁気式検出器5と被検出部6bとの間隔が大きく変化することはない。一方、製造工程上の制約からブラケット4を横断面U字状に形成してサイドパネル3の本体部に対して取付けなければならない場合がある。すなわち、基板部4aの側板部4bとは反対側の端部から側板部4bと平行に側板部4cを立設して、側板部4cをサイドパネル3の本体部に対して固定しなければならない場合である。かかる場合には、側板部4cと基板部4aとで形成されるコーナ部4dは被検出体6から離隔した位置にある。したがって、側板部4cと基板部4aとで形成される角度が製造上のバラツキで変化すると磁気式検出器5と被検出部6bとの間隔が大きく変化するおそれがあった。
【0005】
このような問題に鑑み本発明の課題は、磁気式検出器をアッパレールに固定するブラケットのアッパレールに対する固定点が、被検出体から離れた位置にある場合でも磁気式検出器と被検出体との間隔が大きく変動して許容範囲内から外れることを抑制した乗物用シートのスライド位置検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1発明は、乗物用シートのスライド位置検出装置であって、乗物本体に固定されるロアレールと、乗物用シートに固定され前記ロアレールに対し前後方向に摺動可能に組みつけられたアッパレールとのうち、一方のレール側に配設された磁気式検出器と、他方のレール側に配設された被検出部とを備え、前記アッパレールは、1つの上面部と一対の側面部とが組み合わされて左右方向の基本断面形状が下方に開口した逆U字状に形成され、前記上面部の上面には、底壁部と側壁部とが組み合わされたシート側部材の前記底壁部が、前記側壁部を前記上面部の左右方向一端部側において上方に延びるように配置した状態で取付けられ、前記磁気式検出器又は前記被検出部は、底板部と側板部とが組み合わされた取付用ブラケットを介して前記上面部の左右方向他端部側に配置されて前記シート側部材の前記側壁部に取付けられており、前記取付用ブラケットの前記底板部と前記側板部のなす角度は、前記シート側部材の前記底壁部と前記側壁部のなす角度が製造バラツキにより変動する最大の角度に設定されており、前記取付用ブラケットの前記底板部と前記側板部のなす角度を維持する剛性は、前記シート側部材の前記底壁部と前記側壁部のなす角度を維持する剛性より弱く設定されており、前記取付用ブラケットの前記側板部が前記シート側部材の前記側壁部に対して締結固定されたとき、前記取付用ブラケットの前記底板部は前記シート側部材の前記底壁部又は前記アッパレールの前記上面部に密着するとともに前記取付用ブラケットの前記側板部とのなす角度を前記シート側部材の前記底壁部と前記側壁部のなす角度に一致させた状態で固定されていることを特徴とする。
【0007】
第1発明によれば、アッパレール上面部の左右方向一端部側に配設されたシート側部材の側壁部に対して、取付用ブラケットを介してアッパレール上面部の左右方向他端部側に磁気式検出器又は被検出部が配設されている。このとき、取付用ブラケットは、底板部と側板部のなす角度がシート側部材の底壁部と側壁部のなす角度の製造バラツキにより変動する最大の角度に設定されているとともに、取付用ブラケットの底板部と側板部のなす角度を維持する剛性は、シート側部材の底壁部と側壁部のなす角度を維持する剛性より弱く設定されている。これによって、シート側部材の側壁部に対して取付用ブラケットの側板部を締結固定すると、取付用ブラケットは底板部下面をシート側部材の底壁部上面又はアッパレールの上面部に当接させた状態で底板部と側板部のなす角度をシート側部材の底壁部と側壁部のなす角度に一致させる。すなわち、シート側部材の底壁部と側壁部のなす角度が製造バラツキにより変動しても取付用ブラケットの底板部のアッパレール上面部に対する角度は変わらない。これによって、取付用ブラケットの底板部の側板部とは反対側に取付けられている磁気式検出器又は被検出部の上下方向の位置は変化することが抑制され、シート側部材の底壁部と側壁部のなす角度のバラツキを吸収して安定した位置に配設することができる。
【0008】
本発明の第2発明は、上記第1発明において、前記取付用ブラケットの前記底板部と前記側板部の連結部に近接する前記底板部又は前記側板部には、前記底板部と前記側板部のなす角度を維持する剛性を弱めるための弱体化部が設けられていることを特徴とする。
【0009】
第2発明によれば、シート側部材の側壁部に対して取付用ブラケットの側板部を締結固定したとき、取付用ブラケットの底板部は弱体化部を起点にシート取付用ブラケットの底壁部又はアッパレールの上面部に密着した状態を保って底板部に対する側板部のなす角度を変えやすくなる。
【0010】
本発明の第3発明は、上記第1発明又は上記第2発明において、前記取付用ブラケットの前記底板部の前記側板部と反対側端部には、前記側板部に対向して上方向に延びて磁気式検出器又は被検出部が取付けられる取付座部が設けられていることを特徴とする。
【0011】
第3発明によれば、磁気式検出器又は被検出部を取付座部に当接させて所望の上下方向位置で固定できるので、磁気式検出器又は被検出部をアッパレールに取付ける高さ方向の位置設定に関する自由度が拡大する。
【0012】
本発明の第4発明は、上記第3発明において、前記取付用ブラケットの前記底板部と前記取付座部との間には連続して延びる凸状のリブが前記取付用ブラケットの内側に設けられていることを特徴とする。
【0013】
第4発明によれば、取付用ブラケットの底板部に対して磁気式検出器又は被検出部が取付けられた取付座部のなす角度を維持する剛性が高まり、より安定して磁気式検出器と被検出部の間の上下方向の間隔の変動を抑制できる。
【0014】
本発明の第5発明は、上記第1発明から上記第4発明のいずれかにおいて、前記側板部を前記シート側部材の前記側壁部に対してボルト締結する部位は、前記取付用ブラケットの前記底板部の前端部と後端部の間に配設されていることを特徴とする。
【0015】
第5発明によれば、シート側部材の側壁部に対して取付用ブラケットの側板部をボルト締結する場合、取付用ブラケットの底板部はボルト締結部位の前後ともシート側部材の底壁部上面又はアッパレールの上面部に当接するのでシート側部材又はアッパレールに対して取付用ブラケットが回転しにくく、取付作業が容易となる。
【0016】
本発明の第6発明は、上記第1発明から上記第5発明のいずれかにおいて、前記シート側部材は前記底壁部と前記側壁部とが組み合わされて左右方向断面がL字状に形成され、前記取付用ブラケットは前記底板部と前記側板部とが組み合わされて左右方向の基本断面形状が略L字状に形成されていることを特徴とする。
【0017】
第6発明によれば、左右方向断面がL字状のシート側部材の底壁部と側壁部のなす角度のバラツキを吸収して磁気式検出器又は被検出部を上下方向の安定した位置に配設することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態であるスライド位置検出装置を乗物用シートに適用した状態を示す斜視図である。
図2図1におけるスライド位置検出装置の分解斜視図である。
図3】上記実施形態において、スライドレールにスライド位置検出装置が取付けられた状態を示す側面図である。
図4】上記実施形態において、スライドレールにスライド位置検出装置が取付けられた状態を示す平面図である。
図5図4のV−V矢視線断面図である。
図6】上記実施形態において、取付用ブラケットの斜視図である。
図7】上記実施形態において、取付用ブラケットの下から見た平面図である。
図8】上記実施形態において、取付用ブラケットの正面図である。
図9図7のIX−IX矢視線断面図である。
図10】従来のスライド位置検出装置を乗物用シートに適用した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1図9は、本発明の一実施形態を示す。この実施形態は、自動車用シートに本発明を適用した例を示す。各図中、矢印により自動車用シートを自動車に取付けたときの自動車の各方向を示している。以下の説明において、方向に関する記述は、この方向を基準として行うものとする。自動車用シートのスライドレールは、フロアに対する自動車用シートの前後位置を調整するためのものであり、自動車用シートの左右両側部の下方に対をなして配置される。以下では、一方のスライドレールについて説明し、他方については異なる箇所のみ指摘するにとどめ説明を省略する。
【0020】
図1及び図2に示すように、スライドレール10は、自動車用シートの左側側部の下方に配置されて前後方向に延びフロアFに固定されるロアレール11と、前後方向に延びロアレール11に対し前後方向に摺動自在に組みつけられるアッパレール12とを備えている。ロアレール11は、図5に示すように、底面部11aと、両側面部11bと、両下方折り曲げ部11cと、を有する一定断面の部材である。底面部11aの前端部にあけられたボルト孔11dと、同様に後端部にあけられたボルト孔(図示せず)にボルトを通してフロアFに締め付け固定されている。アッパレール12は、図5に示すように、上面部12a、両側面部12b、両上方折り曲げ部12cとを有する一定断面の部材である。アッパレール12は、その基本断面形状が上面部12aと両側面部12bによって下方に開口した逆U字状に形成され、その両側面部12b、両上方折り曲げ部12cが、ロアレール11の両側面部11bと、両下方折り曲げ部11cに嵌り合うように組み付けられる。また、アッパレール12とロアレール11の間には、ボール、ローラ等の転動部材(図示せず)が挿入されて摺動抵抗を低下させている。
【0021】
アッパレール12の上面部12aには、その前端部にフロントブラケット13が、その後端部にリアブラケット14が取付けられている。フロントブラケット13は、図2に示すように、前後方向に延びる底壁部13aと、底壁部13aの前端部から左側側端部にかけて上方向に立設された側壁部13bと、底壁部13aの右側側端部に立設されたハーネス取付け部13cとを有する板状部材である。ここで、フロントブラケット13が、特許請求の範囲の「シート側部材」に相当する。
【0022】
図4に示すように、底壁部13aは上面視で略矩形状をしており長尺方向が前後方向に延びるとともに、短尺方向が左右方向に略アッパレール12の上面部12aの左右方向長さと同程度延びて形成されている。底壁部13aの前方左のコーナ部には半径が略アッパレール12の上面部12aの左右方向長さと同程度のR形状が施されている。また、底壁部13aの前側と後側にはアッパレール12の上面部12aに対してボルト締結するためのボルト孔が1つずつ設けられている。
【0023】
図1図4に示すように、底壁部13aの左側側部のR形状が施されていない部分に対して側壁部13bは略垂直に上方に向かって延びて形成されている。この底壁部13aに対して側壁部13bのなす角度は、プレス加工の精度上のバラツキから最大で93度まで変動する可能性がある。側壁部13bのR形状が施されていない部分の左側側部の前方よりには、リフタ機構20を構成する板状の部材である、フロントリンク21の下端部が上下方向に回動自在に軸支されている。側壁部13bの左側側部の後端部近傍には、取付用ブラケット42を取付けるためのボルト孔13b1が設けられている。
【0024】
図1に示すように、フロントリンク21の上端部と、他のスライドレール(スライドレール10の右側に存在)に取付けられたフロントリンクの上端部との間が、フロントパイプ22によって連結され、2つのフロントリンクが一体でフロントブラケット13に対して回動するように構成されている。リアブラケット14は、前後方向に延びる底壁部14aと、底壁部14aの左側側端部から上方に向けて湾曲して立ち上がる湾曲側壁部14bと、底壁部14aの右側側端部に立設された側壁部14cとを有する板状部材である。側壁部14cの前後方向中央部近傍には、リフタ機構20を構成する板状の部材である、リアリンク23の下端部が上下方向に回動自在に軸支されている。リアリンク23の上端部と、他のスライドレール(スライドレール10の右側に存在)に取付けられたリアリンクの上端部との間が、リアパイプ(図示せず)によって連結され、2つのリアリンクが一体でリアブラケット14に対して回動するように構成されている。
【0025】
フロントパイプ22は、クッションフレームを構成するサイドフレーム30の前端部近傍に回動自在に取付けられている。リアパイプは、サイドフレーム30の後端部近傍に回動自在に取付けられている。サイドフレーム30は、板状部材で、概略、前後方向に延びる板材の上下の端部にシート外側方向に延びるフランジを設けた形状をしている。他のサイドフレームとの間が、フロントパイプ22とリアパイプで連結されるとともに、前端部同士がフロントパネル(図示せず)で連結されることによってクッションフレームを構成している。フロントリンク21もしくはリアリンク23を、リンク作動機構(図示せず)によってクッションフレームに対して回動させることにより、スライドレールに対してクッションフレームを上下動させることができるリフタ機構20が構成される。
【0026】
図2に示すように、スライド位置検出装置40は、主として磁気式検出器41と、取付用ブラケット42と、被検出体43と、を有しており、スライドレール10にのみ取付けられている。すなわち、他のスライドレールには設けられておらず自動車用シート1脚に付き1つが設けられている。磁気式検出器41は、樹脂で一体成形されており、磁力検出部41aと、配線コネクタを取付けるコネクタ取付け部41bと、磁気式検出器41を取付用ブラケット42に取付ける為の検出器取付け部41cと、を備えている。検出器取付け部41cには、ボルト孔41c1が設けられている。
【0027】
図6図9に示すように、取付用ブラケット42は、概略、2枚の離隔して対向する板材の下端部同士を結合して正面視略U字状に一体化した形状の部材である。取付用ブラケット42は、プレス成形により形成されその肉厚はフロントブラケット13の肉厚の略1/2程度であり、フロントブラケット取付け部42aと、磁気式検出器取付け部42cと、両者をつなぐ連結部42fと、を備えている。ここで、フロントブラケット取付け部42aと連結部42fが、それぞれ、特許請求の範囲の「側板部」と「底板部」に相当する。
【0028】
連結部42fは、水平に配置されて左右方向に延びるとともにその左右方向両端部の前後長を左右方向中央部に対して短くしたくびれ形状を有する板状をしている。図7に示すように、左側のくびれ部分42f1と右側のくびれ部分42f2とは前後長がほぼ同程度で、中央部分の前後長のほぼ半分程度とされている。また、左側のくびれ部分42f1の方が右側のくびれ部分42f2より後方に配置されている。連結部42fの左右方向中央部分には後側と前側にそれぞれ孔42f4と孔42f5が設けられている。この孔42f4と孔42f5は、取付用ブラケット42を加工するときの位置決め用のものである。ここで、左側のくびれ部分42f1が、特許請求の範囲の「弱体化部」に相当する。
【0029】
フロントブラケット取付け部42aは、側面視が略矩形状の板状部分でありその長尺方向を前後方向にその短尺方向を上下方向にほぼ一致させて連結部42fに対して略垂直に配置されて連結部42fに連結されている。すなわち、取付用ブラケット42の基本断面形状が、フロントブラケット取付け部42aと連結部42fによって略L字状に形成されている。詳しくは、フロントブラケット取付け部42aの後端部下側が連結部42fの左側のくびれ部分42f1に連結されている。このとき、連結部42fとフロントブラケット取付け部42aの連結される部分がコーナ部42a1であり、連結部42fとフロントブラケット取付け部42aのなす角度は93度に設定されている。すなわち、フロントブラケット13の底壁部13aと側壁部13bのなす角度において、プレス加工の精度上のバラツキから最大となる角度に設定されている。フロントブラケット取付け部42aの前後方向略中央部には、フロントブラケット13の側壁部13bに対してボルト締結固定するための孔が設けられその孔と同軸に連結部42f側の面にナット42bが固定されている。図4及び図5に示すように、ナット42bの固定位置は、ナット42bの軸線が、アッパレール12の上面部12aに取付用ブラケット42の連結部42fの下面を当接させたとき、フロントブラケット13の側壁部13bに設けられたボルト孔13b1の軸線と一致する位置になるよう決められている。また、ナット42bの軸線は連結部42fの左右方向中央部の最前部と最後部の間に位置している。これは、フロントブラケット13に対して取付用ブラケット42をボルト締結するとき、取付用ブラケット42の連結部42fをアッパレール12の上面部12aに当接状態に保持して取付用ブラケット42が回転しないようにするためである。これによって、フロントブラケット13に対して取付用ブラケット42をボルト締結する際の作業性が向上する。
【0030】
磁気式検出器取付け部42cは、側面視が略矩形状の板状部分でありその長尺方向を前後方向にその短尺方向を上下方向にほぼ一致させて連結部42fに対して略垂直に配置されて連結部42fに連結されている。詳しくは、磁気式検出器取付け部42cの前後方向中央部下側が連結部42fの右側のくびれ部分42f2に連結されている。このとき、連結部42fと磁気式検出器取付け部42cのなす角度は90度に設定されている。磁気式検出器取付け部42cの後端部側には、スライド位置検出装置40の検出器取付け部41cをボルト締結固定するための孔が設けられその孔と同軸に連結部42f側の面にナット42dが固定されている。連結部42fと磁気式検出器取付け部42cの下端部との間には、リブ42f3が設けられている。詳しくは、リブ42f3は連結部42fの左右方向略中央部から磁気式検出器取付け部42cの連結部にわたって上方向に凸の溝状に形成されている。これによって、連結部42fと磁気式検出器取付け部42cのなす角度は90度から変化しにくくされている。
【0031】
図2に示すように、被検出体43は、断面略L字状の鉄製の部材である。前後方向に延びる長尺矩形の検出面部43aと、検出面部43aの左右方向一端部から垂下して設けられた立ち壁部43bと、立ち壁部43bの下端から検出面部43aと平行に、検出面部43aと反対の方向に延びて設けられたロアレール取付け部43cを備えている。検出面部43aは、磁気式検出器41に対向して検出される機能を果たす部分である。図5に示すように、立ち壁部43bは、被検出体43をロアレール11に取付けた際、検出面部43aがロアレール11の立ち壁部11b上端と同一高さとなるように設定されている。被検出体43は、ロアレール11の前端部近傍に取付けられる。取付けは、ロアレール11の底面部11aの下面にロアレール取付け部43cの上面を当てて、ロアレール11の立ち壁部11bの外側面に立ち壁部43bを近接させた状態で、ロアレール取付け部43cをロアレール11の底面部11aにビス締めして行う。ビス締めの代わりに溶接により固定してもよい。
【0032】
取付用ブラケット42と磁気式検出器41とをアッパレール12に取付けられたフロントブラケット13に取付ける手順とともに本実施形態の作用効果について説明する。図2示すように、取付用ブラケット42の磁気式検出器取付け部42cに設けられたナット42dに対して、ナット42dの反対側から磁気式検出器41の検出器取付け部41cに設けられたボルト孔41c1に通したボルト50を締めつける。これによって、取付用ブラケット42に磁気式検出器41が取付けられる。次に、アッパレール12に取付けられたフロントブラケット13の底壁部13a後方に位置するアッパレール12の上面部12a
上面に取付用ブラケット42の連結部42f下面を当接させてフロントブラケット13の側壁部13bに設けられたボルト孔13b1と取付用ブラケット42のフロントブラケット取付け部42aに設けられたナット42bとを一致させる。この状態でナット42bに対してボルト孔13b1に通したボルト51を締めつける。このとき、取付用ブラケット42の連結部42fとフロントブラケット取付け部42aは、フロントブラケット13の底壁部13aと側壁部13bのなす角度において、プレス加工の精度上のバラツキから最大となる角度である93度に設定されている。また、取付用ブラケット42はフロントブラケット13に対して薄肉であるとともに、連結部42fのフロントブラケット取付け部42aとの連結部にはくびれ部分42f1が設けられているのでフロントブラケット13より変形しやすい。したがって、ボルト51を締めつけるにしたがって取付用ブラケット42は連結部42f下面をアッパレール12の上面部12a上面に当接させながらフロントブラケット取付け部42aがフロントブラケット13の側壁部13bに密着していく。すなわち、取付用ブラケット42は、フロントブラケット13の底壁部13aと側壁部13bのなす角度のバラツキを吸収してフロントブラケット13に取付けられ、連結部42fのアッパレール12の上面部12aに対する角度は一定となる。これによって、被検出体43の検出面部43aと磁気式検出器41の磁力検出部41aとの間隔に大きく影響するアッパレール12の上面部12aに対する連結部42fのなす角度の変動が抑制される。このあと、磁気式検出器41のコネクタ取付け部41bに配線コネクタを取付ける。
【0033】
取付用ブラケット42の連結部42fと検出器取付け部41cとのなす角度のバラツキは、検出面部43a及び磁力検出部41aに近接しているため、検出面部43aと磁力検出部41aとの間隔の変動に対する影響は小さい。さらに、取付用ブラケット42の連結部42fと検出器取付け部41cの下端部との間にはリブ42f3が設けられているためプレス成形時のスプリングバックが低減されてより角度変動の抑制が図られている。
【0034】
図5に示すように、被検出体43が取付けられたロアレール11の前端部近傍においては、磁気式検出器41の磁力検出部41aの下面(磁界の強い面)が、被検出体43の検出面部43a上面に近接して対向し、磁気式検出器41による検出が可能となる。この状態が、磁力検出部41aの検出面部43aに対する最近接位置である。このとき、アッパレール12の磁気式検出器41を取付けた位置が、被検出体43が取付けられたロアレール11の前端部近傍にあることを検知できる。この検知信号を利用してアッパレール12がロアレール11に対して前方位置にある場合、すなわち体格の小さな乗員が着座している場合に、乗物に搭載されたエアバッグの展開する大きさを小さくする等の制御が可能となる。
【0035】
以上、特定の実施形態について説明したが、本発明は、それらの外観、構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、次のようなものが挙げられる。
【0036】
1.上記実施形態においては、取付用ブラケット42の連結部42f下面がアッパレール12の上面部12a上面に当接するようにフロントブラケット13と取付用ブラケット42を構成した。これに限らず、フロントブラケット13を大型化してフロントブラケット13の底壁部13a上面に取付用ブラケット42の連結部42f下面が当接するようにしてもよい。
【0037】
2.上記実施形態においては、取付用ブラケット42に磁気式検出器41を取付けるための磁気式検出器取付け部42cを連結部42fに対して垂直に上方に向かって延びるように形成した。しかし、これに限らず連結部42fをフロントブラケット取付け部42aの反対方向に延長してその延長部分に磁気式検出器41を取付けてもよい。
【0038】
3.上記実施形態においては、アッパレール12に磁気式検出器41を取付けロアレール11に被検出体43を取付けたが、これに限らずこの逆であってもよい。ただし、その場合、ロアレール11がフロアFに対して空間を隔てて配設されてロアレール11を左右方向に横断して取付用ブラケットが配設されることが可能である等の条件が必要となる可能性がある。
【0039】
4.上記実施形態においては、取付用ブラケット42の弱体化部として連結部42fのフロントブラケット取付け部42a側端部にくびれ部分42f1を設けたが、これに限らず、連結部42fの前後方向端部に切り欠きを設けてもよいし前後方向に延びる薄肉部や孔を設けてもよい。さらには、取付用ブラケット42のフロントブラケット取付け部42a側にこれらの切り欠き、薄肉部、孔等を設けてもよい。
【符号の説明】
【0040】
10 スライドレール
11 ロアレール
12 アッパレール
12a 上面部
12b 側面部
13 フロントブラケット(シート側部材)
13a 底壁部
13b 側壁部
40 スライド位置検出装置
41 磁気式検出器
41a 磁力検出部
42 取付用ブラケット
42a フロントブラケット取付け部(側板部)
42c 磁気式検出器取付け部(取付座部)
42f 連結部(底板部)
42f1 くびれ部分
42f3 リブ
43 被検出体
43a 検出面部(被検出部)
F フロア


図1
図2
図3
図4
図5
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図10