(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
iv. 前立腺癌患者から採取された血液サンプルから、該標的癌抗原に対して反応性の抗体の基準抗体レベルを、および該癌抗原特異的能動免疫療法による処置後の前立腺癌患者の血液サンプルから、該標的癌抗原に対して反応性の抗体の処置後抗体レベルを得る段階;ならびに
v. 該標的癌抗原に対して反応性の抗体の該基準抗体レベルと該処置後抗体レベルとの差を測定する段階、
をさらに含み、それらの基準抗体レベルを上回る、該標的癌抗原に対して反応性の抗体の該処置後抗体レベルの増加および該1つまたは複数の非標的既定バイオマーカー抗原に対して反応性の抗体の該処置後抗体レベルの増加により、陽性の治療応答が予測される、請求項1記載の方法。
それらの基準抗体レベルを上回る、該標的癌抗原に対して反応性の抗体の該処置後抗体レベルの増加および該1つまたは複数の非標的既定バイオマーカー抗原に対して反応性の抗体の該処置後抗体レベルの増加により、該標的癌抗原に対して反応性の抗体の該処置後抗体レベルの増加単独と比較して、陽性の治療応答がより予測される、請求項2記載の方法。
少なくとも2つの非標的既定バイオマーカー抗原に対して反応性の抗体の該基準抗体レベルおよび該処置後の反応性抗体レベルが決定される、請求項1乃至3のいずれか一項記載の方法。
IL-12、IL-12p70、IL-10、IL-35、TGFβまたはIDOの阻害剤が、それぞれIL-12、IL-12p70、IL-10、IL-35、TGFβまたはIDOに結合する抗体である、請求項11記載の方法。
1つまたは複数の非標的既定バイオマーカー抗原が、PSAと、1つまたは複数の他の非標的既定バイオマーカー抗原である、請求項1乃至13のいずれか一項記載の方法。
1つまたは複数の非標的既定バイオマーカー抗原が、PSAと、KLK2、KRAS、ERAS、LGALS8またはLGALS3のうち1つまたは複数である、請求項14記載の方法。
非標的既定バイオマーカー抗原が、ERASに加え、KLK2、KRAS、LGALS8、LGALS3およびPSAからなる群より選択される任意の4つのマーカーを含む、請求項1乃至13のいずれか一項記載の方法。
非標的既定バイオマーカー抗原が、KRASに加え、KLK2、ERAS、LGALS8、LGALS3およびPSAからなる群より選択される任意の4つのマーカーを含む、請求項1乃至13のいずれか一項記載の方法。
iv. 該前立腺癌患者から採取された血液サンプルから、該標的癌抗原に対して反応性の抗体の基準抗体レベルを、およびシプリューセル(sipuleucel)-Tによる処置後の前立腺癌患者の血液サンプルから、該標的癌抗原に対して反応性の抗体の処置後抗体レベルを得る段階;ならびに
v. 該標的癌抗原に対して反応性の抗体の該基準抗体レベルと該処置後抗体レベルとの差を測定する段階、
をさらに含み、それらの基準抗体レベルを上回る、該標的癌抗原に対して反応性の抗体の該処置後抗体レベルの増加および該1つまたは複数の非標的既定バイオマーカー抗原に対して反応性の抗体の該処置後抗体レベルの増加により、陽性の治療応答が予測される、請求項21記載の方法。
それらの基準抗体レベルを上回る、該標的癌抗原に対して反応性の抗体の該処置後抗体レベルの増加および該1つまたは複数の非標的既定バイオマーカー抗原に対して反応性の抗体の該処置後抗体レベルの増加により、該標的癌抗原に対して反応性の抗体の該処置後抗体レベルの増加単独と比較して、陽性の治療応答がより予測される、請求項22記載の方法。
iii. コミュニケーションインターフェースが、処置前および処置後相互関係値を表す電子データ信号のセットを受信するようさらに適合されており、処置前値が、該癌抗原特異的能動免疫療法による処置前の、該標的癌抗原に対して反応性の抗体の、基準抗体レベルを示し、処置後値が、該癌抗原特異的能動免疫療法による処置後の、該標的癌抗原に対して反応性の抗体の処置後抗体レベルを示し;
iv. 比較エンジンが、該標的癌抗原に対して反応性の抗体の抗体レベルの処置前値と処置後値のセットを比較し、該標的癌抗原に対して反応性の抗体の抗体レベルの処置後値が処置前値から変化したかどうかを決定するようさらに構成されており;
v. 出力モジュールが、該標的癌抗原に対して反応性の抗体の抗体レベルの処置後値が処置前値から変化したかどうかを表す出力データ信号を提供するようさらに構成されており、ここで:
それらの基準抗体レベルを上回る、該1つまたは複数の非標的既定バイオマーカー抗原に対して反応性の抗体の、該処置後抗体レベルの増加
により、陽性の治療応答が予測される、請求項25記載のシステム。
【発明を実施するための形態】
【0044】
発明の詳細な説明
I. 導入
癌免疫療法による腫瘍組織の破壊は、標的でない腫瘍関連抗原に対する免疫応答を誘導し得、これは抗原拡散、決定基拡散またはエピトープ拡散と呼ばれる現象である(Vanderlugt et al., 2002)。癌免疫療法のための方法および組成物が、以下でさらに詳細に説明されている。
【0045】
少数の患者による研究の報告は、抗原拡散の規模が癌免疫療法処置後の生存的恩恵を示し得ることを示唆している(Santegoets, 2011; Butterfield, et al., 2003; T.C. Harding MN, et al., 2008; Mittendorf, et al., 2006)。抗原拡散の規模を測定することは:(i)インビボでの免疫応答および作用メカニズムを理解するため、(ii)有効な臨床応答の早期・処置後バイオマーカーを同定するため、および(iii)将来の製品開発のためにそれ自体が治療標的となり得る抗原を同定するために重要であり得る。
【0046】
癌免疫療法に対する初期応答の間の腫瘍細胞死または組織損傷は、同療法によって直接的に標的化されていない抗原に特異的な自己反応性Tおよび/またはBリンパ球の放出および刺激を誘導し得ることが示唆されている(Vanderlugt et al., 2002)。広範囲化した免疫応答はその後、同免疫療法によって標的化されている腫瘍抗原を発現しないかもしれないものを含む(Santegoets, 2011)腫瘍細胞のより効率的な殺傷を促進し得る(Hardwick, et al., 2011; Corbiere, et al., 2011)。この分野の初期の研究は、癌免疫療法に対する広範囲化した抗体応答が、非応答体と比較して臨床応答体においてより高頻度で観察され得ることを示唆している(Santegoets, 2011; Butterfield, et al., 2003; T.C. Harding MN, et al., 2008; Mittendorf, et al., 2006)。抗原拡散(すなわち、免疫療法に含まれない抗原に対する抗体応答)は、標的特異的癌ワクチンおよび免疫療法処置、例えば、前立腺癌に対するPSA免疫療法(Nesslinger, et al., 2010)および乳癌に対するHer2/neuワクチン接種(Disis, et al., 2004)およびMAGE-A3ワクチン接種(Hardwick, et al., 2011; Corbiere, et al., 2011)に応じて観察された。抗原拡散はまた、非標的特異的免疫調節物質を用いる免疫療法処置に応じて観察された。例えば、免疫系チェックポイントを抑制する免疫調節物質である抗CTLA4(イピリムマブ)を用いる前立腺癌の処置が、広範囲化された免疫応答をもたらし得る(Kwek, et al., 2012)。
【0047】
したがって、免疫療法、例えばCASAI、癌細胞もしくはそれ由来の抗原の混合物を用いた処置、または免疫調節物質を用いた処置を受けている患者における抗原拡散の規模を測定するための方法および組成物が本明細書に提供される。処置に対する陽性の治療応答を予測するための方法および組成物もまた提供される。そのような方法および組成物は、抗原拡散の測定の利用を含み得る。そのような方法および組成物はまた、1つまたは複数の既定バイオマーカー抗原、例えば本明細書に提供されるバイオマーカー抗原に対して反応性の抗体のレベルの測定を含み得る。そのような方法および組成物は、免疫調節物質を用いた癌処置、癌細胞もしくはそれ由来の抗原の混合物を用いた処置、またはCASAIに応じた、1つまたは複数の既定バイオマーカー抗原、例えば本明細書に提供されるバイオマーカー抗原に対して反応性の抗体のレベルの変化の測定をさらに含み得る。さらに、さらなるCASAI療法の開発のための新規の癌抗原を同定するための方法および組成物が、本明細書に提供される。
【0048】
II. 定義
本明細書で使用される略語は、化学および生物分野におけるそれらの従来的な意味を有する。
【0049】
本明細書で使用される場合、治療応答を決定する文脈の下での「決定」という用語は、癌抗原特異的免疫療法(例えば、CASAI)に対する患者の治療応答を予測する、特定する、見積もる、定量する、算出する、またはそれ以外の方法で導き出すことを表す。いくつかの例において、決定は、(例えば、1つまたは複数の既定バイオマーカー抗原に対する反応性抗体の増加に基づき)陽性の治療応答の可能性に関する予後、見積もりまたは予測の提供を表す。いくつかの例において、陽性の治療応答の可能性は、相対的なものである。例えば、その可能性は、同一または類似の免疫療法を受けている患者の一般集団に対して増加または減少し得る。いくつかの例において、その可能性は、対応する集団、例えば、1つまたは複数の類似の危険因子(例えば、グリソンスコア、PSAレベル、LDH、骨病変またはビスリン酸利用)を有する患者集団に対して増加または減少する。いくつかの例において、その可能性は、絶対的なものである。
【0050】
本明細書で使用される場合、「抗原」という用語は、免疫応答を誘起する分子、例えばタンパク質、ハプテン、炭水化物、脂質等を表す。例えば、抗原は、T細胞の活性化、B細胞の活性化またはTおよびB細胞の活性化を誘起し得る。一般に抗原またはその一部は、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)に結合し、そして抗原提示細胞によってT細胞受容体に提示される。抗原は、抗体によって認識され、かつ抗体に結合し得る。
【0051】
本明細書で使用される場合、「癌抗原」という用語は、癌細胞において異常に発現される、癌細胞において変異する、または癌細胞に特異的な抗原を表す。例示的な癌抗原は、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)、アルファ-フェトプロテイン(AFP)、癌胎児性抗原(CEA)、CA-125、MUC-1、上皮腫瘍抗原(ETA)、チロシナーゼ、黒色腫関連抗原(MAGE)、炭酸脱水酵素IX、HER-2/neu、細胞傷害性Tリンパ球抗原4、前立腺特異的抗原(PSA)、B型肝炎表面抗原、テロメラーゼ逆転写酵素(TERT)、サバイビン、EGFRvIII、メラニン細胞由来ペプチド、多発性黒色腫関連ペプチド(multiple melanoma-associated peptides)および子宮頸癌抗原HPV-16-E7を含むがこれらに限定されない。癌抗原はまた、細胞免疫療法後または細胞免疫療法中の抗原拡散に起因する免疫応答の上昇を誘発することが本明細書で同定された抗原(例えば、PSA、KLK2、KRAS、ERAS、LGALS8またはLGALS3)を含み得る。癌抗原は、同種または自己腫瘍細胞から得られるかまたはそれらを含む組成物を含み得る。いくつかの例において、癌抗原は、ウイルス、ウイルス様粒子または脂質膜にパッケージングされる。いくつかの例において、癌抗原は、1つまたは複数の組換え発現カセットにコードされる。
【0052】
本明細書で使用される場合、「免疫調節物質」という用語は、免疫系を調節する組成物または配合物を表す。免疫調節物質は、免疫系を活性化する(例えば、アジュバントもしくは活性化物質)または免疫系を下方制御する組成物または配合物を含み得る。アジュバントは、アルミニウムベースの組成物および細菌またはマイコバクテリア細胞壁成分を含む組成物を含み得る。活性化物質は、抗原提示細胞を活性化し細胞免疫応答を刺激する分子を含み得る。活性化物質は、toll様受容体TLR-2、3、4、6、7、8もしくは9のアゴニスト、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF);TNF;CD40L;CD28;FLT-3リガンド;またはサイトカイン、例えばIL-1、IL-2、IL-4、IL-7、IL-12、IL-15もしくはIL-21を含み得るがこれらに限定されない。活性化物質はまた、免疫抑制物質、例えば免疫抑制物質IL-10、IL-35、TGFβ、IDOもしくはシクロホスファミドの阻害物質の活性を阻害する、または免疫チェックポイントの活性を阻害する化合物、例えばCTLA4、PD-1またはPD-L1に対する抗体、を含み得る。活性化物質はまた、共刺激分子、例えばCD40、CD80またはCD86を含み得る。免疫調節物質はまた、免疫系を下方制御する剤、例えばIL-12p70に対する抗体、toll様受容体TLR-2、3、4、5、6、8もしくは9のアンタゴニストまたは免疫機能の一般的抑制物質、例えばシクロホスファミド、シクロスポリンAもしくはFK506を含み得る。これらの剤(例えば、アジュバント、活性化物質または下方制御物質)は、最適な免疫応答を形成するよう組み合わされ得る。
【0053】
免疫調節物質は、1つまたは複数の癌抗原に物理的に連結された融合ペプチドとして提供され得る。いくつかの例において、癌抗原および免疫調節物質は、患者または患者由来の細胞に導入するために、例えば癌抗原・免疫調節物質融合タンパク質の発現を誘導するよう、1つまたは複数の発現カセット上に存在する。他の例において、免疫調節物質は、エクスビボで癌抗原に時間的に近いときおよび/または癌抗原と空間的に近い場所で発現されるか、または患者に提供されるか、または患者細胞に接触する。
【0054】
本明細書で使用される場合、「癌免疫療法」という用語は、患者において癌細胞に対する免疫応答を誘発するかまたは強化するよう設計された任意の療法を表す。例えば、癌免疫療法は、癌抗原特異的能動免疫療法、免疫調節物質(例えば、活性化物質または免疫抑制物質の阻害剤またはチェックポイント阻害物質の阻害剤)を用いる処置または癌細胞もしくはそれ由来の抗原の混合物を用いる処置(例えば、癌細胞株由来の抗原を用いる処置)を含むがこれらに限定されない。
【0055】
本明細書で使用される場合、「癌抗原特異的能動免疫療法」(CASAI)という用語は、1つまたは複数の標的癌抗原に対する患者の免疫刺激を表す。CASAIは、末梢血単核細胞、例えばT細胞、B細胞、NK細胞および/または抗原提示細胞を患者から取り出しそして1つまたは複数の標的癌抗原と接触させるエクスビボ処置を表し得る。細胞はその後、患者に再導入され得る。CASAIはまた、標的癌抗原を患者に導入しそして体内で免疫応答を発生させるインビボCASAIを表し得る。いくつかの例において、CASAIは、免疫調節物質、例えばアジュバントまたは活性化物質に融合されたまたはその存在下で1つまたは複数の標的癌抗原を利用する。例示的なCASAI法は、1つまたは複数の免疫調節物質、例えばGM-CSF、TNF;CD40L;CD28;またはFLT-3リガンド;toll様受容体TLR-2、3、4、5、6、8もしくは9のアゴニスト;チェックポイント阻害剤、例えばCTLA4、PD-1もしくはPD-L1に対する抗体;サイトカイン、例えば、IL-1、IL-4、IL-7、IL-12、IL-15もしくはIL-21;またはIL-10、IL-35、TGFβもしくはIDOの阻害剤の存在下、インビボまたはエクスビボのいずれかで、患者の抗原提示細胞を1つまたは複数の標的癌抗原と接触させる段階を含む。例示的なCASAI法はまた、患者の抗原提示細胞を、インビボまたはエクスビボのいずれかで、免疫調節物質、例えばGM-CSF、TNF;CD40L;CTLA4;CD28;FLT-3リガンド;toll様受容体TLR-2、3、4、5、6、8もしくは9のアゴニスト;チェックポイント阻害剤、例えばCTLA4、PD-1もしくはPD-L1に対する抗体;サイトカイン、例えば、IL-1、IL-4、IL-7、IL-12、IL-15もしくはIL-21;または免疫抑制物質、例えばシクロホスファミド、IL-10、IL-35、TGFβもしくはIDOの阻害剤に融合された1つまたは複数の癌抗原と接触させる段階を含む。例示的なCASAI法はまた、患者の抗原提示細胞を、インビボまたはエクスビボのいずれかで、共刺激分子、例えばCD40、CD80またはCD86に融合された1つまたは複数の癌抗原と接触させる段階を含む。
【0056】
本明細書で使用される場合、「細胞特異的能動免疫療法」という用語は、癌細胞に存在する1つまたは複数の癌抗原に対する免疫応答を誘導し、患者自身の腫瘍細胞の免疫監視を活性化または向上させるための、同系もしくは同種癌細胞またはそれら由来の抗原を用いた患者の免疫刺激(例えば、癌細胞株、例えばLnCAPまたはPC-3細胞由来の抗原を用いた処置)を表す。
【0057】
本明細書で使用される場合、「免疫チェックポイント阻害剤」、「チェックポイント阻害剤」等の用語は、免疫系の制御メカニズムの活動を阻害する化合物を表す。免疫系チェックポイントまたは免疫チェックポイントは、一般に、巻き添え組織損傷を最小限に抑えるために自己寛容を維持するかまたは生理学的免疫応答の長さおよび大きさを調節するよう作用する免疫系における阻害経路である。チェックポイント阻害剤は、この経路のタンパク質の活性を阻害することによって免疫系チェックポイントを阻害し得る。免疫系チェックポイントタンパク質は、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA4)、プログラム細胞死1タンパク質(PD1)およびプログラム細胞死1リガンド1(PD-L1)を含むがこれらに限定されない。したがって、チェックポイント阻害剤は、CTLA4、PD1またはPD-L1のアンタゴニストを含む。例えば、CTLA4、PD-1またはPD-L1に結合しそれらの機能をアンタゴナイズする抗体が、チェックポイント阻害剤である。さらに、免疫系チェックポイントの阻害機能を阻害する任意の分子(例えば、ペプチド、核酸、低分子等)が、チェックポイント阻害剤である。
【0058】
本明細書で使用される場合、「バイオマーカー」という用語は、生物の生物学的状態の指標を表す。バイオマーカーのレベルは、生物の生物学的状態を決定するために測定され得る。例示的なバイオマーカーは、代謝産物および高分子、例えばタンパク質、炭水化物および脂質を含む。バイオマーカーは、疾患、例えば癌の存在または疾患もしくは状態の重篤度を示し得る。例えば、バイオマーカーの存在または非存在は、悪性腫瘍、転移またはその欠如を示し得る。いくつかの例において、1つもしくは複数のバイオマーカーのレベルまたはその組み合わせにより、疾患の予後、治療応答が示され得る、または治療結果が予測され得る。他の例において、バイオマーカーは抗原であり、1つまたは複数のバイオマーカー抗原に対して反応性の抗体(例えば、IgA、IgD、IgE、IgG、IgMもしくはそれらのサブクラス、例えばIgG
1、IgG
2、IgG
3もしくはIgG
4)のレベルまたはそれらの組み合わせにより、疾患の予後、治療応答が示され得るか、または治療結果が予測され得る。
【0059】
本明細書で使用される場合、「既定バイオマーカー抗原」という用語は、特定の生物学的状態の既知の指標である1つもしくは複数のバイオマーカー抗原またはそれらの組み合わせを表す。例えば、1つまたは複数の既定バイオマーカー抗原は、疾患の予後を得るためまたは治療応答を決定するために検出および/または測定され得る。あるいは、または加えて、1つもしくは複数の既定バイオマーカー抗原に対して反応性の抗体のレベルまたはそれらの組み合わせが、特定の生物学的状態を示し得る。例えば、1つもしくは複数の既定バイオマーカー抗原に結合する反応性抗体(例えば、IgA、IgD、IgE、IgG、IgMもしくはそれらのサブクラス、例えばIgG
1、IgG
2、IgG
3もしくはIgG
4)のレベルまたはそれらの組み合わせが、疾患の予後を得るためまたは治療応答を決定するために検出および/または測定され得る。
【0060】
既定バイオマーカー抗原は、個別または任意の組み合わせの、PSA、LGALS3、KRAS、ERAS、KLK2、LGALS8/PCTA-1、PAPまたはPAP-GM-CSFを含むがこれらに限定されない。いくつかの例において、既定バイオマーカー抗原は、ERAS、KRAS、KLK2、PSA、LGALS3、LGALS8および標的癌抗原からなる群より選択される。その結果、いくつかの態様において、個別または任意の組み合わせの、PSA、LGALS3、KRAS、ERAS、KLK2、LGALS8、PAPまたはPAP-GM-CSFの1つまたは複数に対して反応性の抗体のレベルが、疾患の予後を得るためまたは治療応答を決定するために検出および/または測定され得る。いくつかの例において、既定バイオマーカー抗原に対して反応性の抗体のレベルは、処置前対照に対して決定され得る。
【0061】
いくつかの態様において、既定バイオマーカー抗原に対して反応性の抗体のレベルは、標的癌抗原ではない1つまたは複数の抗原に対して反応性の抗体を含む。同様に、いくつかの態様において、既定バイオマーカー抗原に対して反応性の抗体のレベルは、標的癌抗原に対して反応性の抗体を含まない。したがって、本明細書において既定バイオマーカー抗原は、非標的既定バイオマーカー抗原を含む。
【0062】
本明細書で使用される「非標的既定バイオマーカー抗原」は、個々の対象ごとに、その対象に投与されたCASAI処置において使用される標的癌抗原ではない既定バイオマーカー抗原を表す。したがって、標的癌抗原は、例えば採用されるCASAI処置に依存して変化し得るので、非標的既定バイオマーカー抗原の数および実体も変化し得る。いくつかの例において、非標的既定バイオマーカー抗原は、ERAS、KRAS、KLK2、PSA、LGALS3およびLGALS8からなる群より選択される1つまたは複数の抗原の任意の組み合わせである。その結果、いくつかの態様において、個別または任意の組み合わせの、ERAS、KRAS、KLK2、PSA、LGALS3およびLGALS8の1つまたは複数に対して反応性の抗体のレベルが、疾患の予後を得るためまたは治療応答を決定するために検出および/または測定され得る。例えば、いくつかの例において、CASAI処置が標的癌抗原を用いて実施され、そして治療結果または治療応答が1つまたは複数の非標的既定バイオマーカー抗原に対して反応性の抗体のレベルを測定することによって決定される。
【0063】
いくつかの例において、疾患の予後を得るためまたは治療応答を決定するために、標的癌抗原に対して反応性の抗体のレベルと組み合わせて1つまたは複数の非標的既定バイオマーカー抗原に対して反応性の抗体のレベルが検出および/または測定され得る。例えば、いくつかの態様において、CASAI処置が標的癌抗原を用いて実施され、そして治療結果または治療応答が標的癌抗原および1つまたは複数の他のバイオマーカー抗原を含む1つまたは複数の既定バイオマーカー抗原に対して反応性の抗体のレベルを測定することによって決定される。
【0064】
本明細書で使用される場合、「反応性抗体」という用語は、標的癌抗原またはバイオマーカー抗原に結合する抗体を表す。例えば、PAP反応性抗体は、PAPに結合する抗体を表す。さらに、「〜に対して反応性の抗体レベル」、「反応性抗体レベル」、「〜に対して反応性の抗体のレベル」等は、特定の抗原と反応するかまたは特定の抗原に結合する抗体のレベル、例えば血清濃度を表す。例えば、「LGALS8に対して反応性の抗体レベル」は、LGALS8に結合する抗体の血清濃度を表す。別の例として、LGALS8またはKRASの1つまたは複数に対して反応性の抗体レベルの決定は、LGALS8に結合する抗体の血清濃度の決定、KRASに結合する抗体の血清濃度の決定またはLGALS8に結合する抗体の血清濃度およびKRASに結合する抗体の血清濃度の両方の決定を表す。抗体レベルは、絶対値ベースまたは相対値ベースで決定され得る。
【0065】
本明細書で使用される場合、「基準抗体レベル」という用語は、癌免疫療法処置のラウンドの開始前に測定される、または癌免疫療法処置のラウンドの開始前に得られたサンプルから測定される1つまたは複数の既定バイオマーカー抗原に特異的な抗体のレベルまたは濃度を表す。基準抗体レベルは、基準IgA、IgD、IgE、IgGまたはIgM、1つまたは複数の免疫グロブリンサブクラス、例えばIgG
1、IgG
2、IgG
3またはIgG
4のレベルまたは基準レベルを含み得る。例えば、癌療法を必要とする患者が特定され、そして1つまたは複数の既定バイオマーカー抗原に対して反応性のIgGの基準レベルが処置開始前にその患者において決定されるかまたは処置開始前に得られたサンプルから決定される。加えて、またはあるいは、患者は、過去に癌免疫療法処置(例えば、免疫調節剤を用いた処置、細胞特異的能動免疫療法を用いた処置またはCASAI処置)を受けた者であり得、そして基準抗体レベルは、追加処置の開始前に決定され得るかまたは処置開始前に得られたサンプルから決定され得る。
【0066】
あるいは、「基準抗体レベル」は、腫瘍細胞を攻撃するよう免疫系が活性化されていないまたは最近活性化されていない患者において予想される一般的に受け入れられるレベルまたは範囲を表し得る。例えば、基準抗体レベルは、強固な抗癌免疫応答を示さないまたは強固な抗癌免疫応答の欠如を示す1つまたは複数の既定バイオマーカー抗原に対して反応性の抗体の濃度であり得る。別の例として、基準抗体レベルは、癌に罹患していない個体において通常見られる1つまたは複数の既定バイオマーカー抗原に対して反応性の抗体の濃度であり得る。その結果、そのような基準抗体レベルは、参照元、例えば書籍、刊行物、学術文献、データベース、チャート、スプレッドシートからまたはワールドワイドウェブから入手され得る。いくつかの例において、基準抗体レベルは、癌に罹患していない個体の集団から決定され得る。
【0067】
1つまたは複数の既定抗原に対して反応性の基準抗体レベルは、絶対値ベースまたは相対値ベースで決定され得る。例えば、1つまたは複数の既定抗原に対して反応性の基準抗体レベルは、標準と比較され得る。いくつかの例において、1つまたは複数の既定抗原に対して反応性の基準抗体レベルは、標準を下回る、標準を上回る、または標準を有意に下回るもしくは上回るよう決定され得る。いくつかの態様において、1つまたは複数の既定バイオマーカー抗原に対して反応性の基準抗体レベルは、既定バイオマーカー抗原が自己抗原である場合、低いことが予想される。
【0068】
本明細書で使用される場合、「処置後抗体レベル」という用語は、癌免疫療法処置のラウンドの開始後に決定される1つまたは複数のバイオマーカー抗原に特異的な抗体のレベルまたは濃度を表す。1つまたは複数の既定抗原に対して反応性の処置後抗体レベルは、絶対値ベースまたは相対値ベースで決定され得る。処置後抗体レベルは、処置後IgA、IgD、IgE、IgGまたはIgM、1つまたは複数の免疫グロブリンサブクラス、例えばIgG
1、IgG
2、IgG
3またはIgG
4のレベルまたは処置後レベルを含む。例えば、癌療法が患者に対して実施され得、そして処置開始後にその患者において1つまたは複数の既定バイオマーカー抗原に対して反応性のIgGの処置後レベルが決定され得る。
【0069】
1つまたは複数の既定バイオマーカー抗原に対して反応性の処置後抗体レベルは、癌免疫療法の開始後の任意の時点で入手され得る。例えば、既定バイオマーカー抗原に対して反応性の抗体の1つまたは複数の処置後レベルが、癌免疫療法処置の開始後約2日の後に決定され得る。別の例として、処置後抗体レベルは、癌免疫療法処置の開始後約1週間の後に決定され得る。別の例として、処置後抗体レベルは、癌免疫療法処置の開始後少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25もしくは26週間またはそれ以上の後に決定され得る。いくつかの例において、処置後抗体レベルを決定するためにサンプルが保存され、そして後で分析され得る。
【0070】
本明細書で使用される場合、「標的癌抗原」という用語は、癌患者に対して治療的に投与される抗原を表し得る。いくつかの例において、標的癌抗原は、その抗原を認識する、その抗原に結合する、その抗原を攻撃する、その抗原をオプソニン化する、その抗原を貪食するかまたはその抗原を中和するよう、免疫系またはその構成要素を活性化する。例えば、患者は、処置に応じて、標的癌抗原に結合する抗体を生成し得る。あるいは、「標的癌抗原」は、癌患者に対して治療的に投与される抗体に結合する抗原を表し得る。
【0071】
III. 方法
いくつかの態様において、本発明は、CASAI処置に対する癌患者の治療応答を決定する方法を提供する。CASAI処置は:
i. 1つまたは複数の既定バイオマーカー抗原(例えば、非標的既定バイオマーカー抗原)に対して反応性の基準抗体レベルを得る段階;
ii. 標的癌抗原を用いたCASAIにより癌患者を処置する段階;
iii. CASAI処置後の患者の血液サンプルから1つまたは複数の既定バイオマーカー抗原(例えば、非標的既定バイオマーカー抗原)に対して反応性の処置後抗体レベルを得る段階;ならびに
iv. 1つまたは複数の既定バイオマーカー抗原(例えば、非標的既定バイオマーカー抗原)に対して反応性の基準レベルと処置後抗体レベルとの差を測定する段階であって、それらの基準レベルを上回る1つまたは複数の既定バイオマーカー抗原(例えば、非標的既定バイオマーカー抗原)の抗体レベルの増加により、陽性の治療応答が予測される、段階
を含む。
【0072】
いくつかの例において、1つまたは複数の既定バイオマーカー抗原は、a)標的癌抗原および1つまたは複数の他の既定バイオマーカー抗原を含むバイオマーカー抗原;ならびにb)標的癌抗原を含まない1つまたは複数のバイオマーカー抗原からなる群より選択される。
【0073】
A. 基準抗体レベルの取得
基準抗体レベルは、当技術分野で公知の任意の方法で取得され得る。例えば、抗体の基準レベルは、酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)によって測定され得る。いくつかの例において、1つまたは複数の既定バイオマーカー抗原は、固体支持体表面上に固定され得、そして血液、血清またはそれら由来の組成物を、固定されたバイオマーカー抗原と接触させ、反応性抗体、例えばIgA、IgD、IgE、IgG、IgMまたはそれらのサブクラス、例えばIgG
1、IgG
2、IgG
3もしくはIgG
4を結合させ得る。その後、フルオロフォアまたは酵素、例えばセイヨウワサビペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼで標識された2次抗体を表面と接触させることによって、酵素標識2次抗体が反応性抗体に結合され得る。その後、表面に結合したフルオロフォアまたは酵素の量を測定することによって、反応性抗体のレベルが検出または測定され得る。
【0074】
反応性抗体を検出するためのELISA形式のバリエーションは当業者に明らかであろう。例えば、酵素以外の検出可能な標識、例えばフルオロフォア、放射性核種またはクロモフォアが、2次抗体に連結され得る。同様に、代替の2次検出試薬が使用され得る。例えば、プロテインA、プロテインG、またはIgGに結合する任意の他の薬剤が、バイオマーカー抗原が固定された固体支持体表面に結合した反応性IgGを検出するために使用され得る。別の例として、反応性抗体は、無標識様式で検出および測定され得る。例えば、バイオマーカー抗原が固体支持体表面に結合され、そして血液、血清またはそれら由来の組成物のサンプルが固定されたバイオマーカー抗原上を通され得る。バイオマーカー抗原に対する反応性抗体の結合は、その後、干渉を検出することによりまたは表面プラズモン共鳴による屈折の変化を測定することにより検出され得る。
【0075】
バイオマーカー抗原は、単一のバイオマーカーの検出のために、単一のウェルに、例えば24、48、96または384ウェルプレートに固定され得る。あるいは、バイオマーカー抗原は、例えばLuminex xMAP技術(www.luminexcorp.com/TechnologiesScience/xMAPTechnology/)におけるように、ビーズ、例えば蛍光ビーズ上に、または、例えばProtoArrayプラットフォーム(www.invitrogen.com/protoarray)におけるように、マイクロアレイとして、固定され得る。いくつかの例において、蛍光ビーズはスペクトル識別可能であり、これにより血清中の複数のバイオマーカー抗原に対して反応性の抗体のレベルの高スループット並行モニタリングのための多抗原結合ビーズの使用が可能となる。バイオマーカー抗原は、支持体表面への非特異的吸着によって、表面との化学反応(例えば、バイオマーカー抗原のリシンもしくはN末端1級アミンとの反応)によって、または捕捉試薬、例えば捕捉抗体の使用によって固定され得る。
【0076】
他の態様において、基準の反応性抗体レベルは、バイオマーカー抗原を表面に固定せずに決定され得る。例えば、血清中の抗体を表面に固定し、そして1つまたは複数のバイオマーカー抗原を固定された抗体と接触させることができる。反応性抗体を通じて表面に結合したバイオマーカー抗原は、バイオマーカー抗原または2次検出試薬(例えば、2次抗体)に連結された標識を通じて検出され得る。あるいは、反応性抗体を通じて表面に結合されたバイオマーカー抗原は、無標識様式で、例えば干渉を通じてまたは屈折率の変化として検出され得る。表面に結合したバイオマーカー抗原のレベルは、反応性抗体のレベルに比例する。
【0077】
さらに他の態様において、基準の反応性抗体レベルは、反応性抗体がバイオマーカー抗原に結合する際のサイズの変化を観察することによって決定され得る。例えば、標識されたバイオマーカー抗原のサイズは、蛍光異方性によってまたはサイズ排除カラムを用いて測定され得る。バイオマーカー抗原は血液、血清またはそれら由来の組成物と接触させられ得、そして標識されたバイオマーカー抗原のサイズの増加が反応性抗体の存在を示し得る。
【0078】
いくつかの態様において、以下の既定バイオマーカー抗原の1つまたは複数に対して反応性の抗体の基準レベルが決定される:個別または任意の組み合わせのいずれかの、PSA、KLK2、KRAS、ERAS、LGALS8、LGALS3、PAPまたはPAP-GM-CSF。いくつかの例において、既定バイオマーカーは、PSA、LGALS3、KRAS、ERAS、KLK2、LGALS8、PAPおよびPAP-GM-CSFからなる群より選択される1つもしくは複数、2つもしくはそれ以上、3つもしくはそれ以上、4つもしくはそれ以上、5つもしくはそれ以上、6つもしくはそれ以上、7つもしくはそれ以上、任意の1つ、任意の2つ、任意の3つ、任意の4つ、任意の5つ、任意の6つ、任意の7つまたは8つのバイオマーカー抗原である。
【0079】
いくつかの例において、既定バイオマーカー抗原は、ERASに加え、PSA、LGALS3、KRAS、KLK2、LGALS8、PAPおよびPAP-GM-CSFからなる群より選択される任意の1つ、任意の2つ、任意の3つ、任意の4つ、任意の5つ、任意の6つまたは7つのバイオマーカー抗原である。他の例において、既定バイオマーカー抗原は、KRASに加え、PSA、LGALS3、ERAS、KLK2、LGALS8、PAPおよびPAP-GM-CSFからなる群より選択される任意の1つ、任意の2つ、任意の3つ、任意の4つ、任意の5つ、任意の6つまたは7つのバイオマーカー抗原である。他の例において、既定バイオマーカー抗原は、PSAに加え、LGALS3、KRAS、ERAS、KLK2、LGALS8、PAPおよびPAP-GM-CSFからなる群より選択される任意の1つ、任意の2つ、任意の3つ、任意の4つ、任意の5つ、任意の6つまたは7つのバイオマーカー抗原である。
【0080】
いくつかの例において、既定バイオマーカー抗原は、KLK2に加え、PSA、LGALS3、KRAS、ERAS、LGALS8、PAPおよびPAP-GM-CSFからなる群より選択される任意の1つ、任意の2つ、任意の3つ、任意の4つ、任意の5つ、任意の6つまたは7つのバイオマーカー抗原である。いくつかの例において、既定バイオマーカー抗原は、LGALS8に加え、PSA、LGALS3、KRAS、ERAS、KLK2、PAPおよびPAP-GM-CSFからなる群より選択される任意の1つ、任意の2つ、任意の3つ、任意の4つ、任意の5つ、任意の6つまたは7つのバイオマーカー抗原である。さらに他の例において、既定バイオマーカー抗原は、LGALS3に加え、PSA、LGALS8、KRAS、ERAS、KLK2、PAPおよびPAP-GM-CSFからなる群より選択される任意の1つ、任意の2つ、任意の3つ、任意の4つ、任意の5つ、任意の6つまたは7つのバイオマーカー抗原である。いくつかの例において、既定バイオマーカー抗原は、PAPまたはPAP-GM-CSFに加え、PSA、KLK2、KRAS、ERAS、LGALS8およびLGALS3のうち任意の1つ、任意の2つ、任意の3つ、任意の4つ、任意の5つまたはすべてを含む。いくつかの例において、既定バイオマーカー抗原は、PSA、LGALS3、KRAS、ERAS、KLK2またはLGALS8のうち任意の1つまたは複数を含むが、PAP、PAPを含む融合タンパク質またはPAP-GM-CSFを含まない。
【0081】
いくつかの態様において、標的癌抗原は、PSAであり、またはPSAを含み、既定バイオマーカー抗原は、標的癌抗原(PSA)および以下の非標的既定バイオマーカー抗原の1つまたは複数である:LGALS3、KRAS、ERAS、KLK2またはLGALS8。いくつかの例において、標的癌抗原はPSAではなく、非標的既定バイオマーカー抗原はPSAおよびLGALS3、KRAS、ERAS、KLK2またはLGALS8のうち1つまたは複数を含む。いくつかの例において、既定バイオマーカー抗原は、対象のCASAI処置において使用される標的癌抗原および以下の非標的既定バイオマーカー抗原の1つまたは複数を含む:PSA、LGALS3、KRAS、ERAS、KLK2またはLGALS8。
【0082】
いくつかの例において、以下の非標的既定バイオマーカー抗原の1つまたは複数に対して反応性の抗体の基準レベルが決定される:個別または任意の組み合わせのいずれかの、PSA、KLK2、KRAS、ERAS、LGALS8またはLGALS3。いくつかの例において、非標的既定バイオマーカー抗原は、PSA、KLK2、KRAS、ERAS、LGALS8およびLGALS3からなる群より選択される非標的既定バイオマーカー抗原のうち1つもしくは複数、2つもしくはそれ以上、3つもしくはそれ以上、4つもしくはそれ以上、5つもしくはそれ以上、6つまたは任意の1つ、任意の2つ、任意の3つ、任意の4つもしくは任意の5つである。
【0083】
いくつかの例において、非標的既定バイオマーカー抗原は、ERASに加え、PSA、KLK2、KRAS、LGALS8およびLGALS3からなる群より選択されるバイオマーカー抗原のうち任意の1つ、任意の2つ、任意の3つ、任意の4つまたは任意の5つである。他の例において、非標的既定バイオマーカー抗原は、KRASに加え、PSA、KLK2、ERAS、LGALS8およびLGALS3からなる群より選択されるバイオマーカー抗原のうち任意の1つ、任意の2つ、任意の3つ、任意の4つまたは任意の5つである。いくつかの例において、非標的既定バイオマーカー抗原は、KLK2に加え、PSA、ERAS、KRAS、LGALS8およびLGALS3からなる群より選択されるバイオマーカー抗原のうち任意の1つ、任意の2つ、任意の3つ、任意の4つまたは任意の5つである。いくつかの例において、非標的既定バイオマーカー抗原は、LGALS3に加え、PSA、KLK2、KRAS、LGALS8およびERASからなる群より選択されるバイオマーカー抗原のうち任意の1つ、任意の2つ、任意の3つ、任意の4つまたは任意の5つである。いくつかの例において、非標的既定バイオマーカー抗原は、LGALS8に加え、PSA、KLK2、KRAS、ERASおよびLGALS3からなる群より選択されるバイオマーカー抗原のうち任意の1つ、任意の2つ、任意の3つ、任意の4つまたは任意の5つである。いくつかの例において、非標的既定バイオマーカー抗原は、PSAに加え、KLK2、KRAS、ERAS、LGALS8およびLGALS3からなる群より選択されるバイオマーカー抗原のうち任意の1つ、任意の2つ、任意の3つ、任意の4つまたは任意の5つである。
【0084】
いくつかの例において、陽性の治療結果の予測は、CASAI処置において使用される癌抗原に対する応答を測定するのではなく抗原拡散を測定することによって決定される。そのような例において、癌処置に使用される癌抗原は、基準の反応性抗体レベルを決定するためのバイオマーカー抗原として使用されない。例えば、いくつかの例において、標的癌抗原(例えば、PAPまたはPAP-GM-CSF)に対して反応性の抗体の基準レベルは、予想される治療応答を得るために測定されず、使用されず、または必要とされない。
【0085】
B. CASAI、細胞特異的能動免疫療法または免疫調節物質を用いた癌患者の処置
癌免疫療法を用いて癌患者を処置する方法が本明細書に提供される。処置は、インビボまたはエクスビボで行われ得る。一般に、CASAIは、患者を1つまたは複数の癌抗原に対して免疫刺激することによって行われる。この免疫刺激は、その抗原を保持する腫瘍細胞を攻撃するよう免疫系を誘導する。本発明の方法は、任意の癌タイプの処置、任意の癌タイプの処置結果の予想または癌ワクチン抗原として使用するのに適したさらなる標的の同定に有用である。例えば、本発明は、前立腺癌、黒色腫、神経膠腫、膀胱癌、尿路上皮癌、肺癌、乳癌または結腸直腸癌に罹患した患者に有用であり得る。
【0086】
インビボCASAIは、1つまたは複数の標的癌抗原を使用して患者体内で免疫応答を刺激する方法を含む。例えば、1つまたは複数の標的癌抗原が、免疫応答を刺激するために患者に注射され得る。いくつかの例において、標的癌抗原は、精製されたポリペプチドである。例えば、1つまたは複数の精製された標的癌抗原は、薬学的賦形剤と混合され、そして患者に注射され得る。いくつかの例において、ポリペプチドは、免疫調節物質、例えばGM-CSF、TNF;CD40L;CTLA4;CD28;FLT-3リガンド;toll様受容体TLR-2、3、4、5、6、8もしくは9のアゴニスト;チェックポイント阻害剤、例えばCTLA4、PD-1もしくはPD-L1に対する抗体;サイトカイン、例えばIL-1、IL-4、IL-7、IL-12、IL-15もしくはIL-21;または免疫抑制物質、例えばIL-10、IL-35、TGFβもしくはIDOの阻害剤に融合され;または免疫原性キャリアタンパク質、例えばキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)に連結される。いくつかの例において、ポリペプチドは、共刺激分子、例えばCD40、CD80またはCD86に融合される。いくつかの例において、癌抗原は、免疫反応を増強するために、アジュバントまたは他の免疫調節物質と混合され、そして患者に注射される。いくつかの態様において、ポリペプチド癌抗原は、PAPまたはPAP融合タンパク質である。いくつかの例において、ポリペプチド癌抗原は、GM-CSFに融合されたPAPからなるPAP融合タンパク質である。
【0087】
あるいは、いくつかの例において、標的癌抗原は、精製されたポリペプチドではない。例えば、癌抗原は、1つまたは複数の発現カセットによってコードされ得る。発現カセットは、その後、免疫応答を刺激するために体内に導入され得る。いくつかの例において、発現カセットは、十分なトランスフェクションおよび発現を確保するために、ベクター、例えばウイルスベクターにパッケージングされる。いくつかの例において、ベクター自体が、癌抗原である。例えば、ウイルス(例えば、HEV、HPV、HBV、HCVまたはそれら由来のカプシドタンパク質から作製されたウイルス様粒子(VLP))が、患者に導入され得る。いくつかの例において、ウイルスまたはVLPは、腫瘍細胞を標的化する(例えば、それは腫瘍細胞上またはその付近で見出される細胞表面タンパク質に結合する)。ベクターは、そのベクターを取り込んだ細胞に対する免疫応答を誘発し得る。いくつかの例において、VLPは、カプシドタンパク質またはその一部および標的抗原またはその一部を含むカプシド融合タンパク質を含み得る。いくつかの例において、ウイルスまたは他のパッケージ体は、免疫調節物質をコードする追加の発現カセットを有し得る。いくつかの態様において、発現カセットは、GM-CSF、例えばPAP-GM-CSFに融合された標的癌抗原からなる融合タンパク質をコードする。
【0088】
いくつかの例において、CASAI処置は、エクスビボ条件下で行われる。エクスビボCASAIは、抗原提示細胞(APC)を患者から抽出し、インビトロで抗原と接触させて活性化されたAPCを生成し、その後に活性化されたAPCを患者に再導入する方法を含む。いくつかの例において、抗原提示細胞は、強固な免疫応答を誘導するのに十分な数の細胞を提供するよう、インビトロで拡張される。いくつかの例において、活性化されたAPCは、インビトロでT細胞、B細胞またはNK細胞を活性化するために使用され、その後に活性化されたAPC、T細胞、B細胞および/またはNK細胞が患者に再導入される。
【0089】
1つの態様において、本発明は、ヒト対象において細胞傷害性細胞媒介免疫応答を誘導する方法であって、(a)対象からAPCを単離する段階;(b)APCを活性化させるのに効果的な条件下、インビトロでPAPに共有結合により連結されたGM-CSFを含むタンパク質コンジュゲートにAPCを曝露する段階;(c)活性化されたAPCを対象に投与する段階;および(d)段階(a)〜(c)を少なくとも1回繰り返し、各サイクルは段階(c)の実施から少なくとも10日後に開始する段階を含む方法を提供する。別の態様において、段階(a)〜(c)は1回繰り返され、段階(a)が段階(c)の14日後に行われる。
【0090】
別の態様において、患者は、細胞特異的能動免疫療法を用いて処置され得る。例えば、患者は、患者自身の腫瘍細胞または同種腫瘍細胞由来の抗原の混合物である標的癌抗原で処置され得る。例えば、腫瘍細胞株、例えば前立腺腫瘍LnCAPまたはPC-3細胞株の1つまたは複数が殺傷され得、そして抗原(例えば、タンパク質)の混合物がそれらから抽出され得る。この混合物は、薬学的賦形剤と混合され、そして患者に導入され得る。いくつかの例において、混合物はまた、アジュバントまたは免疫調節物質と組み合わされる。いくつかの例において、同系または同種腫瘍細胞による処置は、患者の癌細胞に対する(例えば、認識する、結合する、攻撃する、オプソニン化する、アポトーシスまたはネクローシスを誘導する、貪食する等の)免疫応答を刺激し得る。いくつかの態様において、患者自身の腫瘍細胞または同種腫瘍細胞由来の抗原の混合物による処置の結果としての1つまたは複数の既定バイオマーカー抗原の増加により、陽性の治療結果が予測され得る。
【0091】
さらに別の態様において、患者は、免疫調節物質、例えば本明細書に記載される1つまたは複数の免疫調節物質で処置され得る。いくつかの例において、免疫系を活性化する、または免疫系の抑制物質(例えば、チェックポイント)を阻害する免疫調節物質による処置は、患者の癌細胞に対する免疫監視または活性(例えば、認識、結合、オプソニン化、アポトーシスまたはネクローシスの誘導、貪食等)を向上させ得る。いくつかの例において、免疫調節物質による処置の結果としての1つまたは複数の既定バイオマーカー抗原の増加により、陽性の治療結果が予測され得る。
【0092】
さらに別の態様において、癌に罹患した患者または患者集団の自己抗原反応性抗体レベルが測定され、そして全生存と相関付けられ得る。改善された全生存と相関する特定のバイオマーカー抗原またはバイオマーカー抗原群に対して反応性の抗体のレベルは、その後、その抗原または抗原群を、癌免疫療法の標的抗原として同定し得る。いくつかの例において、改善された全生存と相関する1つまたは複数のバイオマーカー抗原に対して反応性の抗体のレベルの増加は、これらの1つまたは複数のバイオマーカー抗原を、癌免疫療法の標的抗原として同定し得る。いくつかの例において、1つまたは複数のバイオマーカー抗原に対して反応性の抗体のレベルの増加は、処置前レベルから処置後レベルへの増加である。いくつかの例において、バイオマーカー抗原は、個別または任意の組み合わせのPSA、KLK2、KRAS、ERAS、LGALS8、LGALS3、PAPまたはPAP-GM-CSFの任意の1つもしくは複数、例えば本明細書に記載される上記の組み合わせのいずれか、を含むまたはである。いくつかの例において、非標的既定バイオマーカー抗原が測定され、そしてそれが反応性抗体の増加の存在、非存在または大きさを決定するために比較される。いくつかの例において、非標的既定バイオマーカー抗原は、個別または任意の組み合わせのKLK2、KRAS、ERAS、LGALS8、LGALS3またはPSAの任意の1つもしくは複数、例えば本明細書に記載される上記の組み合わせのいずれかを含むか、またはいずれかである。
【0093】
C. 基準抗体レベルと、CASAI処置、細胞特異的能動免疫療法または免疫調節物質処置によって誘導される抗体レベルとの差の測定
基準抗体レベルと、1つまたは複数の既定バイオマーカー抗原に対して反応性の癌免疫療法処置によって誘導される抗体のレベルとの差は、処置に応答する患者を特定するため、標的癌抗原として使用するのに適したさらなる抗原を同定するため、または治療結果を予測するために使用され得る。例えば、CASAI処置、細胞特異的能動免疫療法または免疫調節物質処置に応じて特定の既定バイオマーカー抗原(例えば、非標的既定バイオマーカー抗原)に対する反応性抗体が増加する患者は、反応性抗体レベルが処置により増加しないまたは実質的に増加しない患者と比較して、全生存の延長、再発の減少、腫瘍量のより大きな減少または疾患進行の欠如を示し得る。したがって、処置に応じて1つまたは複数の既定バイオマーカー抗原(例えば、非標的既定バイオマーカー抗原)に対して反応性の抗体のレベルが増加する患者を特定することが望ましい場合がある。
【0094】
既定バイオマーカー抗原に対して反応性の抗体の処置前および処置後レベルは、当技術分野で公知の任意の方法を用いて決定され得る。処置前抗体レベル(すなわち、基準抗体レベル)の検出および測定は、上記の通りである。癌免疫療法処置(例えば、CASAI、細胞特異的能動免疫療法または免疫調節物質処置)により誘導される抗体レベルを検出および測定するための組成物および方法は、処置を完了した後または1ラウンドの処置を完了した後を含む、処置を開始した後に血液、血清またはそれら由来の組成物から抗体を得ることを除いて同一である。いくつかの例において、血液または血清は、処置中に収集され、そして治療結果を予測するための基準抗体レベルとの比較のために使用される。血液または血清は、処置開始後の任意の時点で収集されそして反応性抗体に関して分析され得る。例えば、血液または血清は、処置レジメンへの1週間または処置開始後2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、22、24もしくは26週間もしくはそれ以上収集され得る。
【0095】
例えば、1つまたは複数の既定バイオマーカー抗原(例えばPSA、KLK2、KRAS、ERAS、LGALS8、LGALS3、PAPまたはPAP-GM-CSFのうち1つまたは複数)に対して反応性の抗体の基準レベルは、処置開始前の患者から得られた血清を用いるELISAによって決定され得る。別の例として、1つまたは複数の非標的既定バイオマーカー抗原(例えばPSA、KLK2、KRAS、ERAS、LGALS8またはLGALS3のうち1つまたは複数)に対して反応性の抗体の基準レベルが、処置開始前の患者から得られた血清を用いるELISAによって決定され得る。さらに別の例として、標的癌抗原および1つまたは複数の非標的既定バイオマーカー抗原(例えばPSA、KLK2、KRAS、ERAS、LGALS8またはLGALS3のうち1つまたは複数)に対して反応性の抗体の基準レベルが、処置開始前の患者から得られた血清を用いるELISAによって決定され得る。いくつかの例において、基準レベルは、処置前反応性抗体レベルに関する既定の参照またはしきい値であり得る。
【0096】
患者はその後、癌免疫療法処置(例えば、CASAI処置、例えば、シプリューセル-T処置、細胞特異的能動免疫療法または免疫調節物質処置)を受け、そして処置レジメン開始後に血液または血清が取得され得る。その後、そのようにして得られた処置後サンプルにおける1つまたは複数の既定バイオマーカー抗原(例えば、非標的既定バイオマーカー抗原)に対して反応性の抗体の血清濃度が決定され、基準レベルと比較され得る。いくつかの例において、しきい値を上回る1つまたは複数の既定バイオマーカー抗原に対して反応性の抗体の処置後レベルを示す患者が、その後、処置に対して応答するおよび/または陽性の治療結果を示す可能性がある者として特定され得る。
【0097】
いくつかの例において、1つまたは複数の既定バイオマーカー抗原(例えば、非標的既定バイオマーカー抗原)に対して反応性の抗体の基準レベルを上回る処置後増加を示す患者が、処置に応答するおよび/または陽性の治療結果を示す可能性がある者として特定され得る。いくつかの例において、反応性抗体レベルの増加は、全生存の延長、再発の減少、腫瘍量のより大きな減少または疾患進行の欠如の可能性を示し得る。いくつかの例において、患者は、基準値を上回る1つまたは複数の既定バイオマーカー抗原に対して反応性の抗体のレベルの増加の測定に基づき、非応答体および応答体に分類され得る。いくつかの例において、応答体は、非応答体と比較してより良好な治療結果(例えば、寛解または非進行のより高い可能性)を有すると予測される。
【0098】
いくつかの態様において、この方法は、癌免疫療法処置により誘導された、以下の既定バイオマーカー抗原の1つまたは複数に対して反応性の抗体のレベルの(例えば、基準レベルと比較しての)上昇の測定を提供する:PSA、KLK2、KRAS、ERAS、LGALS8、LGALS3、PAPおよびPAP-GM-CSF。いくつかの例において、既定バイオマーカー抗原は、以下のバイオマーカー抗原の1つもしくは複数、2つもしくはそれ以上、3つもしくはそれ以上、4つもしくはそれ以上、5つもしくはそれ以上、任意の2つ、任意の3つ、任意の4つ、任意の5つ、任意の6つ、任意の7つまたは8つである:PSA、LGALS3、KRAS、ERAS、KLK2、LGALS8、PAPおよびPAP-GM-CSF。いくつかの例において、既定バイオマーカー抗原は、以下の非標的バイオマーカー抗原の1つもしくは複数、2つもしくはそれ以上、3つもしくはそれ以上、4つもしくはそれ以上、5つもしくはそれ以上、任意の2つ、任意の3つ、任意の4つ、任意の5つまたは6つを含む:PSA、LGALS3、KRAS、ERAS、KLK2およびLGALS8。いくつかの例において、この方法は、癌免疫療法処置により誘導された、標的癌抗原および以下の非標的既定バイオマーカー抗原の1つまたは複数に対して反応性の抗体のレベルの(例えば、基準レベルと比較しての)上昇の測定を提供する:PSA、KLK2、KRAS、ERAS、LGALS8およびLGALS3。いくつかの例において、既定バイオマーカー抗原は、標的癌抗原ならびに以下の非標的バイオマーカー抗原の1つもしくは複数、2つもしくはそれ以上、3つもしくはそれ以上、4つもしくはそれ以上、5つもしくはそれ以上、任意の2つ、任意の3つ、任意の4つ、任意の5つまたは6つを含む:PSA、LGALS3、KRAS、ERAS、KLK2およびLGALS8。
【0099】
いくつかの例において、既定バイオマーカー抗原は、ERASに加え、以下のバイオマーカー抗原の任意の1つ、任意の2つ、任意の3つ、任意の4つ、任意の5つ、任意の6つまたは7つである:PSA、LGALS3、KRAS、KLK2、LGALS8、PAPまたはPAP-GM-CSF。他の例において、既定バイオマーカー抗原は、KRASに加え、以下のバイオマーカー抗原の任意の1つ、任意の2つ、任意の3つ、任意の4つ、任意の5つ、任意の6つまたは7つである:PSA、LGALS3、ERAS、KLK2、LGALS8、PAPまたはPAP-GM-CSF。他の例において、既定バイオマーカー抗原は、KLK2に加え、以下のバイオマーカー抗原の任意の1つ、任意の2つ、任意の3つ、任意の4つ、任意の5つ、任意の6つまたは7つである:PSA、LGALS3、ERAS、KRAS、LGALS8、PAPまたはPAP-GM-CSF。他の例において、既定バイオマーカー抗原は、PSAに加え、以下のバイオマーカー抗原の任意の1つ、任意の2つ、任意の3つ、任意の4つ、任意の5つ、任意の6つまたは7つである:KRAS、LGALS3、ERAS、KLK2、LGALS8、PAPまたはPAP-GM-CSF。他の例において、既定バイオマーカー抗原は、LGALS3に加え、以下のバイオマーカー抗原の任意の1つ、任意の2つ、任意の3つ、任意の4つ、任意の5つ、任意の6つまたは7つである:PSA、KRAS、ERAS、KLK2、LGALS8、PAPまたはPAP-GM-CSF。他の例において、既定バイオマーカー抗原は、LGALS8に加え、以下のバイオマーカー抗原の任意の1つ、任意の2つ、任意の3つ、任意の4つ、任意の5つ、任意の6つまたは7つである:PSA、LGALS3、ERAS、KLK2、KRAS、PAPまたはPAP-GM-CSF。
【0100】
いくつかの例において、既定バイオマーカー抗原はPSAである。いくつかの例において、標的癌抗原はPSAではなく、既定バイオマーカー抗原がPSAであるかまたはPSAを含む。いくつかの例において、標的癌抗原はPSAであり、既定バイオマーカー抗原はPSAに加え、LGALS3、KRAS、ERAS、KLK2、LGALS8、PAPおよびPAP-GM-CSFのうち1つまたは複数である。いくつかの例において、標的癌抗原はPSAであり、非標的既定バイオマーカー抗原はLGALS3、KRAS、ERAS、KLK2、LGALS8、PAPおよびPAP-GM-CSFのうち1つまたは複数である。いくつかの例において、標的癌抗原はPAPまたはPAP-GM-CSFであり、非標的既定バイオマーカー抗原はPSA、LGALS3、KRAS、ERAS、KLK2およびLGALS8のうち1つまたは複数である。
【0101】
いくつかの態様において、この方法は、癌免疫療法処置により誘導された、以下の非標的既定バイオマーカー抗原の1つまたは複数に対して反応性の抗体のレベルの(基準レベルと比較しての)上昇の測定を提供する:PSA、KLK2、KRAS、ERAS、LGALS8またはLGALS3。いくつかの例において、非標的既定バイオマーカー抗原は、以下の非標的既定バイオマーカー抗原の1つもしくは複数、2つもしくはそれ以上、3つもしくはそれ以上、4つもしくはそれ以上、5つもしくはそれ以上、6つ、任意の2つ、任意の3つ、任意の4つまたは任意の5つである:PSA、LGALS3、KRAS、ERAS、KLK2またはLGALS8。
【0102】
いくつかの例において、陽性の治療結果の予測は、CASAI処置において使用された標的癌抗原に対する応答の測定ではなく抗原拡散を測定することによって決定される。いくつかの例において、癌処置で使用される標的癌抗原は、したがって、基準抗体レベルを決定するためのバイオマーカーとして使用されず、治療結果を予測するためのバイオマーカーとして使用されず、または他のバイオマーカーと組み合わせて治療応答を予測するためのバイオマーカーとしてのみ使用される。例えば、いくつかの例において、シプリューセル-T処置により誘導されたPAPまたはPAP-GM-CSFに対して反応性の抗体のレベルは、測定されず、基準IgGレベルと比較されず、または予測される治療結果を得るために使用されない。例えば、いくつかの例において、既定バイオマーカー抗原は、PSA、LGALS3、ERAS、KRAS、KLK2またはLGALS8のうち任意の1つまたは複数であるかまたはそれらを含むが、標的癌抗原を含まない、例えばPAP、PAPを含む融合タンパク質またはPAP-GM-CSFを含まない。別の例として、いくつかの例において、既定バイオマーカー抗原は、PSA、LGALS3、ERAS、KRAS、KLK2、LGALS8のうち任意の1つまたは複数であるかまたはそれらを含むが、標的癌抗原を含まない、例えばPAP、PAPを含む融合タンパク質またはPAP-GM-CSFを含まない。
【0103】
あるいは、いくつかの例において、標的癌抗原に対する免疫応答は、1つまたは複数のさらなる既定バイオマーカー抗原と組み合わせて測定される。例えば、既定バイオマーカー抗原は、標的癌抗原、例えばPAPまたはPAP-GM-CSFおよび任意の1つまたは複数の非標的癌抗原、例えばPSA、KLK2、KRAS、ERAS、LGALS8またはLGALS3であり得るかまたはそれらを含み得る。
【0104】
処置に応じた、1つまたは複数のバイオマーカーに対して反応性のIgGのレベルの、基準の反応性抗体レベルから少なくとも約1.2〜200倍の増加は、陽性の治療結果を示し得る。例えば、基準値を少なくとも約1.2倍、1.5倍、1.75倍、2倍、2.5倍、3倍、4倍、5倍、7.5倍、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、40倍、50倍またはそれ以上上回る反応性抗体レベルの増加は、陽性の治療結果を示し得る。当業者は、異なる抗体レベル検出技術が異なる感度およびダイナミックレンジを示すこと、したがって増加を同定するためのしきい値が抗体測定に使用される方法に依存し得ることを理解するであろう。
【0105】
同様に、陽性の治療結果が予測される癌免疫療法処置に応じた増加を同定するためのしきい値は、バイオマーカー抗原に依存し得る。例にすぎないが、1つのバイオマーカー抗原に対して反応性の抗体のレベルの少なくとも1.5倍の増加により、陽性の治療結果が予測され得る。しかし、この例において、異なるバイオマーカー抗原に対して反応性のIgGのレベルの増加は、陽性の治療結果に関して予測的であるために少なくとも2倍でなければならない。同様に、陽性の治療結果が予測される癌免疫療法処置に応じた増加を同定するためのしきい値は、測定される抗体のアイソタイプに依存し得る。
【0106】
いくつかの例において、2つ以上のバイオマーカーに関する反応性抗体レベルの増加の測定が、この方法の予測力を向上させ得る。例えば、2つまたはそれ以上の既定バイオマーカー反応性抗体レベルが処置に応じて上昇する患者は、1つの既定バイオマーカー反応性抗体レベルのみが上昇する患者または応答を示さない患者と比較して、より高度の抗原拡散または陽性の治療結果が得られる可能性の増加を示唆し得る。例えば、ERASおよびKLK2の両方に対して反応性の抗体が処置に応じて上昇する患者は、陽性の治療結果の可能性が高い者として特定され得る。同様に、さらなるバイオマーカー(例えば、2つより多いバイオマーカー、3つより多いバイオマーカー、4つより多いバイオマーカー、5つより多いバイオマーカー等)に関する反応性抗体レベルが、この方法の予測力をさらに向上させるために測定され得る。例えば、ERAS、KLK2およびKRASに対して反応性の抗体が基準値に対して増加する患者は、陽性の治療結果の可能性が高い者として特定され得る。別の例として、PSAおよび1つまたは複数のさらなる既定バイオマーカー抗原に対して反応性の抗体が基準値に対して増加する患者は、陽性の治療結果の可能性が高い者として特定され得る。
【0107】
いくつかの例において、既定バイオマーカー抗原群の任意の1つに対して反応性の抗体レベルの処置後増加が、陽性の治療結果を示し得る。例えば、2、3、4、5、6、7、8、9または10個の異なる既定バイオマーカー抗原の任意の1つに対して反応性の抗体レベルの基準レベルに対する実質的な(例えば1.2、1.3、1.4、1.5、2、2.5、3、4、5、6、7.5、10、15、20、25、30、40もしくは50倍またはそれ以上の)増加を示す患者は、陽性の治療結果を示す可能性がある者として特定され得る。例えば、患者は、PSA、KLK2、ERAS、KRAS、LGALS8またはLGALS3の任意の1つに対して反応性の抗体の基準レベルからの増加を示す場合、陽性の治療結果を示す可能性がある者として特定され得る。
【0108】
さらに別の例として、患者は、PSAおよびKLK2、KRAS、ERAS、LGALS8またはLGALS3のうち任意の1つに対して反応性の抗体の基準レベルからの増加を示す場合、陽性の治療結果を示す可能性がある者として特定され得る。さらに別の例として、患者は、KLK2およびPSA、KRAS、ERAS、LGALS8またはLGALS3のうち任意の1つまたは複数に対して反応性の抗体の基準レベルからの増加を示す場合、陽性の治療結果を示す可能性がある者として特定され得る。さらに別の例として、患者は、KRASおよびPSA、KLK2、ERAS、LGALS8またはLGALS3のうち任意の1つまたは複数に対して反応性の抗体の基準レベルからの増加を示す場合、陽性の治療結果を示す可能性がある者として特定され得る。さらに別の例として、患者は、LGALS3およびPSA、KRAS、ERAS、LGALS8またはKLK2のうち任意の1つまたは複数に対して反応性の抗体の基準レベルからの増加を示す場合、陽性の治療結果を示す可能性がある者として特定され得る。さらに別の例として、患者は、LGALS8およびPSA、KRAS、ERAS、KLK2またはLGALS3のうち任意の1つまたは複数に対して反応性の抗体の基準レベルからの増加を示す場合、陽性の治療結果を示す可能性がある者として特定され得る。さらなるもう一つの例として、患者は、標的癌抗原および任意の1つまたは複数の非標的既定バイオマーカー抗原、例えばPSA、KLK2、KRAS、ERAS、LGALS8またはLGALS3に対して反応性の抗体の基準レベルからの増加を示す場合、陽性の治療結果を示す可能性がある者として特定され得る。
【0109】
同様に、改善された予測力は、癌免疫療法処置に応じて3つ、4つ、5つ、6つまたはそれ以上の異なる既定バイオマーカー抗原の少なくとも任意の2つに対して反応性の抗体のレベルの増加を示す患者を特定することによって得ることができる。例えば、患者は、ERAS、KRAS、LGALS8、LGALS3、PSAまたはKLK2の少なくとも2つに対して反応性の抗体の基準レベルからの増加を示す場合、陽性の治療結果を示す可能性がある者として特定され得る。別の例として、患者は、ERAS、KRAS、LGALS8、LGALS3、PSAまたはKLK2の少なくとも2つに対して反応性のIgGにおいて基準レベルからの増加を示す場合、陽性の治療結果を有する可能性がある者として特定され得る。同様に、患者は、ERAS、KRAS、LGALS8、LGALS3、PSAまたはKLK2の少なくとも3つに対して反応性のIgGにおいて基準レベルからの増加を示す場合、陽性の治療結果を有する可能性がある者として特定され得る。
【0110】
さらに別の例として、患者は、ERAS、KRAS、LGALS8、LGALS3、PSAまたはKLK2の少なくとも4つに対して反応性の抗体の基準レベルからの増加を示す場合、陽性の治療結果を有する可能性がある者として特定され得る。さらに別の例として、患者は、PSA、ERAS、KRAS、LGALS8、KLK2またはLGALS3の少なくとも5つに対して反応性の抗体の基準レベルからの増加を示す場合、陽性の治療結果を有する可能性がある者として特定され得る。さらに別の例として、患者は、以下の既定バイオマーカー抗原PSA、ERAS、KRAS、LGALS8、KLK2およびLGALS3に対して反応性の抗体の基準レベルからの増加を示す場合、陽性の治療結果を有する可能性がある者として特定され得る。さらに別の例として、患者は、標的癌抗原および以下の非標的既定バイオマーカー抗原:PSA、ERAS、KRAS、LGALS8、KLK2またはLGALS3の少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは全6つに対して反応性の抗体の基準レベルからの増加を示す場合、陽性の治療結果を有する可能性がある者として特定され得る。
【0111】
いくつかの例において、標的癌抗原に対して反応性の抗体のレベルは、治療結果を予測するために使用されないまたは1つまたは複数の他の既定バイオマーカー抗原に対して反応性の抗体のレベルと組み合わせてのみ使用される。例えば、いくつかの例において、PAP、PAP-GM-CSFまたはPAPおよびPAP-GM-CSFの両方に対して反応性の抗体のレベルは、測定されないまたは治療結果を予測するために使用されない。他の例において、PAP、PAP-GM-CSFまたはPAPおよびPAP-GM-CSFの両方に対して反応性の抗体のレベルは、測定されそして基準レベルと比較され、かつ1つまたは複数の非標的既定バイオマーカー抗原に対して反応性の抗体のレベルもまた測定されそして治療結果を予測するために基準と比較される。
【0112】
いくつかの態様においては、1つまたは複数のバイオマーカー抗原またはその組み合わせに対して反応性の抗体の基準レベルおよび処置によって誘導されたレベルを測定し、そしてその情報を、患者の健康または応答の予測因子として特定された他のパラメータと組み合わせて治療結果の最終予測に到達することによって、治療結果または患者の応答を予測するための方法が提供される。さらなるパラメータは、患者の全般的健康、腫瘍サイズ、腫瘍ステージまたは等級(例えば、グリソンスコア、AJCC TNMステージ、ウィットモア・ジュエットステージ、ノッティンガムグレード等級体系);PSAレベル、骨病巣の存在、ビスリン酸利用、乳酸デヒドロゲナーゼレベル、ヘマトクリットレベル、年齢、栄養状態、運動、強靭さ、エネルギー、身体的活動、心的状態、認知または特定患者における併存疾患の存在を含むがこれらに限定されない。さらなるパラメータはまた、CASAIまたは細胞特異的能動免疫療法処置において使用される標的癌抗原に対する免疫応答の測定を含み得る。例えば、CD54の上方制御または処置において使用される標的癌抗原に対して反応性の抗体のレベル、例えばPAP-GM-CSF反応性IgGレベルまたはPAP反応性IgGレベル。
【0113】
当業者は、本明細書に明示的に教示されているこれら以外の反応性抗体レベルおよび/またはさらなるパラメータのさらなる組み合わせが患者の治療結果の予測、処置に応答する患者の特定または癌ワクチン抗原として使用するのに適した抗原の同定に有用であり得ることを理解するであろう。さらに、本発明は、明示的に教示されている組み合わせに限定されないことが理解される。
【0114】
IV. バイオマーカー抗原
患者における癌免疫療法処置の治療結果を予測するバイオマーカー抗原が、本明細書に提供される。例えば、CASAI処置により内在腫瘍細胞に対する強固な免疫応答を発生させる患者は、抗原拡散を示し得る。そのような患者は、CASAI療法において使用された特定の抗原(例えば、PAP-GM-CSF)および他の決定因子、例えば腫瘍に存在する他の抗原の両方に対して反応性であるそれらの血清中の抗体のレベルの増加を示し得る。CASAI療法において使用された抗原および/または腫瘍に存在する他の抗原に対して反応性の抗体のレベルの増加の検出は、陽性の治療応答を示し得る。同様に、そのようなバイオマーカー抗原に対して反応性の抗体の、基準に対して高いレベルまたは増加したレベルにより、免疫調節物質によって処置された患者における、陽性の治療結果が予測され得る。さらに、癌免疫療法に応じて増加しかつ陽性の治療応答と相関する反応性抗体レベルは、そのような反応性抗体によって結合されるバイオマーカー抗原が同一または異なる患者における癌免疫療法、例えばCASAIの良い標的癌抗原であることを示し得る。
【0115】
バイオマーカー抗原は、患者が癌免疫療法処置に応じて反応性IgGを発生させる任意の抗原を含む。バイオマーカー抗原はさらに、癌免疫療法処置に応じた反応性抗体レベルの変化により、治療結果が予測される抗原を含む。例えば、バイオマーカー抗原は、任意の内因性もしくは外来タンパク質または他の抗原に対して反応性の抗体の基準レベルを得;患者を当技術分野で公知の任意の癌免疫療法によって処置し、処置に応じた試験される抗原に対して反応性の抗体レベルの変化を測定し;患者の治療結果を記録し;そして特定のバイオマーカー抗原またはバイオマーカー抗原の組み合わせに対して反応性の抗体レベルの何らかの変化により、治療結果が予測されるかどうかを決定することによって同定され得る。いくつかの例において、候補バイオマーカーは、高スループット様式で、例えばタンパク質マイクロアレイまたは蛍光ビーズ技術を用いて決定され得、そして低スループットアッセイ、例えばELISAを用いて検証され得る。検証は、本明細書に記載されるものを含む、当技術分野で公知の標準的な統計学的方法の使用を含む。
【0116】
いくつかの例において、既定バイオマーカー抗原は、確立されている癌経路マップを参照することによって選択される。例えば、Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes(KEGG)は、結腸直腸癌、膵癌、神経膠腫、甲状腺癌、急性骨髄性白血病、基底細胞癌、膀胱癌、前立腺癌、子宮内膜癌、小細胞肺癌および非小細胞肺癌に関係する遺伝子のリソースを提供する。同様に、Ingenuityは、様々なタイプの癌の発生において重要な遺伝子産物を特定する癌シグナル伝達経路のデータベースを提供する。これらのマップまたは経路において特定の癌経路に関連するものとして特定されている1つまたは複数の遺伝子産物またはそれらの組み合わせは、その癌タイプに対する癌免疫療法処置に対する治療応答をモニタリングするためまたは癌免疫療法処置からの治療結果を予測するためのバイオマーカー抗原として使用され得る。
【0117】
あるいは、候補バイオマーカー抗原は、癌細胞のmRNA発現の高スループット測定を用いて同定され得る。例えば、Taylor et al., 2010は、前立腺癌細胞において過剰発現される遺伝子を報告している。対応する遺伝子産物は、これらの候補の1つもしくは複数またはそれらの組み合わせに対して反応性の基準抗体レベルと前立腺癌に対する癌免疫療法処置に応じた抗体レベルを比較するための候補標的として使用され得る。
【0118】
本明細書に提供されるように、予測的な非標的バイオマーカー抗原は、以下の非標的既定バイオマーカーの1つまたは複数を含む:個別または任意の組み合わせのいずれか、例えば本明細書に記載される上記組み合わせの、PSA、KLK2、KRAS、ERAS、LGALS8またはLGALS3。そのような抗原は、いくつかの例において、1つまたは複数の候補抗原の反応性抗体レベルの増加の測定により、能動免疫療法に対する陽性の応答が予測されることができるかどうかを決定するために候補抗原セットを試験することによって同定される。例示的な候補抗原LGALS3、KRAS、ERAS、KLK2およびLGALS8の簡単な説明および癌におけるそれらの報告されている役割をここで提供する。
【0119】
LGALS3:レクチン、ガラクトシド結合、可溶性、3(ガレクチン-3):多様な発現を示す多機能性レクチンであるLGALS3(Newlaczyl, et al., 2011; Perillo, et al., 1998)は、細胞接着、遊走(San, et al., 2000)および前立腺癌の進行(Newlaczyl, et al., 2011; Califice, et al., 2004)において役割を果たすことが知られている。それは前立腺腫瘍において高度に発現され、ホルモン耐性腫瘍において発現が減少する(Laderach, et al., 2013)。LGALS3の細胞質/核発現パターンの変化は、前立腺癌の進行と相関する(van den Brule, et al., 2000)。LGALS3のノックダウンは、ヌードマウスの前立腺において細胞遊走、浸潤、細胞増殖および腫瘍成長を減少させる(Wang, et al., 2009)。それは、血管新生促進分子ならびに血管内皮成長因子(VEGF)および塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)媒介血管新生応答のメディエーターであることが報告されている(Markowska, et al., 2010)。LGALS3は、K-Rasの結合パートナーであり、K-Ras媒介シグナル伝達を活性化させる(Elad, et al., 2004; Shalom-Feuerstein, et al., 2005)。それはcAblによってリン酸化され、これはPTENによって調節されるプロセスであり(Balan, et al., 2012);ネイティブのLGALS3はPSAによって切断されるがリン酸化形態ではそうならず(Balan, et al., 2012)、それによって受容体媒介シグナル伝達を潜在的に変化させる。
【0120】
KRAS:v-Ki-ras2カーステンラット肉腫ウイルス癌遺伝子ホモログ:K-Rasは、哺乳動物Rasタンパク質ファミリーのメンバーである。K-Rasにおける発癌性活性化変異またはK-Rasの異常発現は、前立腺癌を含む様々な悪性腫瘍に関与する。転移性前立腺腫瘍のうち32%はK-Ras変異または過剰発現を示し(Taylor, et al., 2010)、そして90%はRas/Rafシグナル伝達経路の活性化を示す(Taylor, et al., 2010)。
【0121】
ERAS:胚性幹細胞発現Ras:E-Rasは、低分子量GTPase Rasタンパク質ファミリーのメンバーである。当初は胚性幹(ES)細胞でのみ見出されたE-Rasは、移植されたES細胞が奇形腫へと変化する際に重要な役割を果たす(Takahashi, et al., 2003)。胃癌において、それは(免疫組織化学による決定で)腫瘍の約40%で発現され;発現が肝臓(p<0.0001)およびリンパ節(p<0.05)への転移と有意に関連することが見出された(Kubota, et al., 2010)。E-Rasは、前立腺癌との関係では未だ特徴づけらていない。
【0122】
KLK2/hK2:カリクレイン関連ペプチダーゼ2:KLK2は、主として前立腺組織で発現され(Darson, et al., 1999)、前立腺特異的抗原(prostate-specific antigen; PSA)の前駆体がその酵素的に活性な形態になるよう切断する役割を担っている(Williams, et al., 2010)。それは前立腺腫瘍細胞において高度に発現され、前立腺癌の危険および検出のマーカーとなり得る(Nam, et al., 2006; Nam, et al., 2003; Magklara, et al., 2000; Helo, et al., 2009; Raaijmakers, et al., 2007)。PSAおよびKLK2は両方とも、前立腺内の同じ分泌上皮細胞によって産生され、そしてKLK2は低分化癌細胞において高度に発現される(Rittenhouse, et al., 1998)。
【0123】
1.1.9 LGALS8(ガレクチン-8):レクチン、ガラクトシド結合、可溶性、8(ガレクチン-8、前立腺癌腫瘍抗原1[PCTA-1]):LGALS8は、当初、表面エピトープマッピングおよび発現クローニングにより前立腺癌腫瘍抗原として同定された(Su, et al., 1996)。それは、前立腺腫瘍の全TNM(腫瘍-結節-転移)ステージを含めて、腫瘍組織で幅広く発現される(Laderach, et al., 2013)。LGALS8に対する抗体応答は、GVAX療法(GM-CSFを分泌するよう改変された2つの同種前立腺癌細胞株LNCaPおよびPC-3から構成される総細胞前立腺癌ワクチン)による処置後の転移性前立腺癌患者において観察された(Nguyen, et al., 2010)。
【0124】
いくつかの例において、既定バイオマーカー抗原は、PSA、KLK2、KRAS、ERAS、LGALS8、LGALS3、PAPまたはPAP-GM-CSFのうち任意の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つまたは8つを含み得る。いくつかの例において、既定バイオマーカー抗原は、PSAおよびKLK2、KRAS、ERAS、LGALS8、LGALS3、PAPまたはPAP-GM-CSFのうち任意の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つまたは7つを含み得る。いくつかの例において、既定バイオマーカー抗原は、ERASおよびPSA、KLK2、KRAS、LGALS8、LGALS3、PAP、PAP-GM-CSFのうち任意の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つまたは7つを含み得る。いくつかの例において、既定バイオマーカー抗原は、KRASおよびPSA、KLK2、ERAS、LGALS8、LGALS3、PAPまたはPAP-GM-CSFのうち任意の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つまたは7つを含み得る。いくつかの例において、既定バイオマーカー抗原は、PSA、ERAS、KRAS、LGALS8、LGALS3、PSA、PAPまたはPAP-GM-CSFの少なくとも2つを含み得る。
【0125】
いくつかの態様において、既定バイオマーカー抗原は、非標的既定バイオマーカー抗原である。いくつかの例において、既定バイオマーカー抗原は、標的癌抗原および1つまたは複数の非標的既定バイオマーカー抗原の組み合わせである。いくつかの例において、非標的既定バイオマーカー抗原は、KLK2、KRAS、ERAS、PSA、LGALS3およびLGALS8からなる群より選択される。いくつかの例において、非標的既定バイオマーカー抗原は、以下の非標的既定バイオマーカー抗原の1つもしくは複数、2つもしくはそれ以上、3つもしくはそれ以上、4つもしくはそれ以上、5つもしくはそれ以上、6つ、任意の2つ、任意の3つ、任意の4つまたは任意の5つである:PSA、LGALS3、KRAS、ERAS、KLK2またはLGALS8。
【0126】
V. 統計学的方法
本明細書には、(i)CASAI処置に応答する患者の特定、(ii)陽性の治療結果の予測および(iii)さらなるCASAI処置法において有用なバイオマーカーを同定および検証するための統計学的方法が提供される。本明細書には、予測される治療結果を得るために反応性IgGレベルの測定された変化を使用する統計学的方法もまた提供される。
【0127】
A. バイオマーカーを同定および検証するためならびに治療結果を予測するための統計学的方法
癌免疫療法処置に応じてタンパク質マイクロアレイ(例えば、ProtoArray)またはLuminex xMAPプラットフォームから測定された反応性抗体レベルは、測定された変化が有意であることの統計学的信頼性を示すt統計量およびp値を得るために、対応のあるt検定(パラメトリックもしくはノンパラメトリック)または(Smyth, et al., 2004; Smyth GK, 2005)に記載されるそれらのバリエーション(例えば、'Limma'R/Bioconductorに実装されている調整された対応のあるt検定)を用いて基準抗体レベルと比較され得る。いくつかの例において、そのような検定の結果は、特定のしきい値または経験則を適用することによって、例えばしきいバックグランドレベルを超えないもしくは統計学的信頼性のしきい値を満たさない(例えば、0.05もしくはそれ未満のp値を有さない)測定されたIgGレベルを除外することによって選別され得る。同様に、アノテーションがほとんどない(すなわち、そのタンパク質産物またはその遺伝子の機能に関する情報がほとんどまたは全くない)バイオマーカー抗原は、さらなるフォローアップから除外され得る。いくつかの例において、ベンジャミーニ・ホッホベルク法が、p値の多検定調整および推定偽発見率(FDR、特定のp値の下で推定されるパーセント偽発見率)を得るために、統計学的信頼性測定値に対して実行され得る(Benjamini, 1995)。
【0128】
いくつかの態様において、1つまたは複数のバイオマーカー抗原に関する処置前および処置後の反応性IgGレベルのシグナル強度(例えば、log
2)がLuminex xMAPによって取得され得、そして片側、対応のあるウィルコクソン符号順位検定を用いて比較され得る。いくつかの例において、処置後の反応性IgGレベルの変化倍率が、片側ウィルコクソン符号順位検定を用いて比較され得る。いくつかの例において、抗原応答は、統計学的に有意でないまたは統計学的に有意でない可能性が高い変化を除外するアドホックしきい値を用いて定義され得る。例えば、いくつかの例において、抗原に対する「IgG応答」は、少なくとも約1.2倍、1.5倍、2倍、2.5倍、3倍またはそれより高い処置前から処置後への反応性抗体レベルの増加と定義され得る。
【0129】
バイオマーカーと、治療結果、例えば全生存(OS)との関連性は、カプラン・マイヤー分析の使用を通じて観察され得る。カプラン・マイヤー分析は、患者が脱落する、または異なる期間研究される場合でさえも、経時的な生存率の概算を行うことができる。カプラン・マイヤー分析においては、所定の時点までの生存確率が、それ以前の期間の各々の累積生存確率から概算される。いくつかの例において、その後、任意の特定グループ(例えば、バイオマーカー反応性IgGレベルにおいて特定の変化を示すグループ)が(例えば、より長い全生存と関連する)より良好な陽性の治療結果と関連するかどうかを特定するために、カプラン・マイヤー分析を通じて示される累積生存確率に影響する変数がクラスター化され得る。
【0130】
あるいは、または加えて、十分数のデータ点がある場合、反応性抗体レベルまたは反応性抗体レベルの組み合わせと陽性の治療結果との関連性は、コックス比例ハザードモデルを用いて試験され得る。いくつかの例において、コックス比例ハザードモデル分析は、すべての既知の変数を用いて、例えば「フルモデル」(例えば、反応性抗体の応答(例えば、高い応答、低い応答または応答なし)、PSAレベル、乳酸デヒドロゲナーゼレベル、骨病巣、グリソンスコア、ビスリン酸利用等)を用いて実行され得る。このフルモデルは、帰無仮説を却下するためのp値(例えば、抗体応答が全生存の増加と関連しない仮説を却下するためのp値)を提供し得る。このフルモデルはまた、ハザード比の概算値を提供し得る。1より低いハザード比は、説明変数(例えば、処置に対する反応性抗体の応答)がより長い全生存と関連することを示す。
【0131】
コックス比例ハザードモデル分析はまた、抗体応答ステータスを用いずに、すなわち、抗体応答を示す変数を含まず、予後および臨床因子(例えば、PSAレベル、乳酸デヒドロゲナーゼレベル、グリソンスコア等)を含む「ベースモデル」を用いて実行され得る。このベースモデルは、自由度が1のカイ二乗統計量を用いる尤度比検定によって、フルモデルと比較され得る。これは、説明変数(例えば、処置に対する反応性抗体応答)が予測される結果において統計学的に有意な向上を提供するかどうかを示すp値を提供し得る。
【0132】
いくつかの態様において、IgGレベルまたはIgG応答の処置前および処置後間の変化と全生存(OS)の関連性は、コックス比例ハザードモデルに基づく両側ワルド検定を用いて分析され得る。関連性は、例えば、基準危険因子、例えばPSAおよび乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)レベルに関して調整された単変量または多変量モデルを用いて、(i)処置前から処置後への血清IgGレベルの変化倍率(log
2);および(ii)IgG応答ステータス(あり/なし)を用いて評価され得る。基準PSA(log
10)およびLDS(log
10)値は、癌抗原特異的能動免疫療法(CASAI)の他の分析において使用されるモデリングアプローチにしたがう多変量モデルにおいて使用するために選択され得る(Kantoff, et al., 2010; Sheikh, et al., 2013)。
【0133】
VI. システム
以下に、上記のシステムおよび方法において使用され得るいくつかのデバイス(およびそれらのデバイスのコンポーネント)の説明が提供される。これらのデバイスは、例えば、上記の機能のいずれかに関連するデータをやり取りする、処理するおよび/または保存するために使用され得る。当業者に理解されているように、以下に記載されるデバイスは、以下に記載されるコンポーネントの一部のみを有し得るかまたは追加のコンポーネントを有し得る。
【0134】
図6Aは、1つの態様にしたがい、癌免疫療法、例えば標的癌抗原を用いる癌抗原特異的能動免疫療法(CASAI)処置に対する癌患者の治療応答を決定するよう構成された管理システムのブロック図の例を示している。例示されている態様において、システム900は、ネットワーク910上で複数のデータソース905に接続されたコンピュータシステム915を含む。本明細書に記載される技術は、任意の特定タイプのコンピュータシステムまたはコンピュータネットワークに限定されない。例えば、ネットワーク915は、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、無線ネットワーク、バス接続、相互接続または1つもしくは複数の伝送線もしくは電子システムの配線を通じてデータまたは制御情報をやり取りする任意の他の手段であり得る。例えば、データソースは、コンピュータシステム915に直接接続されたユーザーインターフェースにおいて手動で受信され得る。他の態様も可能である。
【0135】
コンピュータシステム915は、相互接続バス908を通じて接続されたプロセッサ901およびシステムメモリ904を含む。他の態様において、プロセッサ901およびシステムメモリ904は、直接的に相互接続され得るかまたは1つもしくは複数の中間コンポーネントもしくはユニットを通じて間接的に接続され得る。プロセッサ901およびシステムメモリ904は、当技術分野で公知の任意の汎用目的用または特定目的用のコンポーネントであり得、任意の特定タイプのプロセッサまたはメモリシステムに限定されない。システムメモリは、本明細書に記載される態様において使用するためのシステムおよび制御データを保存するよう構成され得る。コンピュータシステム915はまた、データを受信するようデータベース935(内部または外部)と接続され得る。
【0136】
コンピュータシステム915は、コミュニケーションインターフェース920において様々なソースから入力データ903を受信する。コンピュータシステム915は受信したデータを処理し、得られたデータを出力モジュール925を通じてその出力に提供する。好ましい態様において、コンピュータシステムは、基準抗体レベルを表すデータ値の第1セットを受信し、それらの値を比較エンジン930に提供する。コンピュータシステムは、処置後抗体レベルを表すデータ値の第2セットを受信し、それらの値を比較エンジン930に提供することができる。比較エンジン930は、処置前抗体レベルと処置後レベルを比較し、処置に起因する抗体レベルの変化が存在するかどうかを決定するよう構成され得る。
【0137】
詳細に、比較エンジン930は、データ値の第1セットにおいて受信した基準抗体レベルの各値とデータ値の第2セットの処置後抗体レベルの対応する値を比較し、それらが等しいかまたは異なるかを決定するよう構成され得る。1つの態様において、比較エンジン930により2つの値の間で差が決定される場合、それを示す信号が比較エンジンによってアサートされ得る。同様に、代替の態様において、2つの値が等しいと決定される場合、それを示す信号が比較エンジンによってアサートされ得る。別の態様において、既定抗原に対して反応性の処置後抗体レベルが基準抗体レベルよりも高いまたは有意に高いと決定される場合、その信号が比較エンジンによってアサートされる。さらに別の態様において、既定抗原に対して反応性の処置後抗体レベルが基準抗体レベルよりも高くないと決定されるかまたは有意に高くないと決定される場合、その信号が比較エンジンによりアサートされる。いくつかの例において、有意性のしきい値は統計値であり得る、例えば、測定された値が統計学的カットオフ、例えば指定のt値またはp値、例えばp≦0.05を満たす場合、抗体レベルは有意に高い。他の例において、有意性のしきい値は、経験的に決定される値に基づき得る。例えば、いくつかの例において、比較エンジンは、約1.1、1.2、1.5、2、2.5、3、5、7、10倍またはそれ以上相違する場合に、基準および処置後抗体レベルが相違すると判定する。
【0138】
比較エンジン930は、特別設計されたコンピュータハードウェアもしくは回路または特別設計されたソフトウェアモジュールもしくはコンポーネントによりプログラムされた汎用目的演算ハードウェア;またはハードウェアおよびソフトウェアの任意の組み合わせを用いて実現され得る。本明細書に記載される技術は、ハードウェア回路またはソフトウェアの任意の特定の組み合わせに限定されない。例えば、比較エンジン930は、既製の比較回路コンポーネントまたはカスタム設計された比較回路を含み得る。比較回路は、当業者に十分理解されるように、2つまたはそれ以上の値を比較し、その2つの値が等しいか等しくないかを示す結果を出力するよう構成される。あるいは、比較機能は、メモリ904に保存されプロセッサ901によって実行されるソフトウェアにおいて実行され得る。
【0139】
図6Bは、1つの態様にしたがい、癌免疫療法、例えば細胞特異的能動免疫療法、免疫調節物質を用いる処置または標的癌抗原を用いる(CASAI)処置に対する癌患者の治療応答を決定するためのプロセスのフローチャートの例を示している。例示されている態様において、プロセス900は、コンピュータシステムのコミュニケーションインターフェースにおいて電子データ信号の第1セットを受信するオペレーション950から開始する。電子データ信号の第1セットは、各々の処置前値が処置前の1つまたは複数の既定バイオマーカー抗原に対して反応性の基準抗体レベルを示す相互関係処置前値のセットを表す。1つの態様において、処置は、標的癌抗原を用いるCASAIであり、既定バイオマーカー抗原は、(1)標的癌抗原および1つもしくは複数の他の既定バイオマーカー抗原を含むバイオマーカー抗原または(2)標的癌抗原を含まないバイオマーカー抗原から選択される。
【0140】
プロセス900は、CASAI処置前の1つまたは複数の既定バイオマーカー抗原に対して反応性の基準抗体レベルを示す処置前値のセットから抗体レベル値の参照セットを定義することができるオペレーション951に続く。抗体レベル値の参照セットは、個々の患者の基準抗体レベルとして利用され得る。1つの態様において、コンピュータシステムは、参照値セットを処置前から自動的に決定する。他の態様において、参照値セットは、システムに手動で(例えば、医療専門家により)入力され得る。例えば、コンピュータシステムの初期化後、システムは、例えばシステムメモリ904からまたはデータベース935に対するクエリーを用いて処置前値セットを回収し、そしてそれらの値を分析のために比較エンジン930に提供するよう指示され得る。他の態様において、コンピュータシステムは、処置前値セットから参照値セットを決定するためにさらなる入力を受信する。システムは次いで、処置後値セットのうちどれが処置前値セットから変化したかを表す出力データ信号のセットを提供し得る。例えば、システムは、どの処置前値が増加したかを決定し得る。少なくとも特定の態様において、それらの基準レベルを上回る既定バイオマーカー抗原の1つまたは複数に対して反応性の抗体レベルの増加により、処置に対する陽性の治療応答が予測され得る。他の態様において、それらの基準レベルを上回る既定バイオマーカー抗原の1つまたは複数に対して反応性の抗体レベルの増加は、CASAI処置において使用されるのに適した標的癌抗原を提供し得る。
【0141】
プロセス900は、コミュニケーションインターフェースにおいて、処置後値の各々が癌免疫療法処置後の患者の血液サンプル由来の既定のバイオマーカー抗原の1つまたは複数に対して反応性の抗体レベルを示す、処置前値のセットに対応する処置後値のセットを表す電子データ信号の第2セットを受信することによって継続される。処置前値は、その後、処置後値セットのうちどれが処置前値セットから変化したかを決定するために処置後値と比較され得る(オペレーション953)。あるいは、参照値セットがオペレーション951で決定される場合、参照セットが処置後セットと比較され得る。システムはその後、処置後値セットのうちどれが処置前値セットから変化したかを表す出力データ信号のセットを提供し得る。例えば、システムは、どの処置前値が増加したかを決定し得る。別の例において、システムは、どの処置前値が有意に増加したかを、例えば統計学的カットオフを用いて決定し得る。少なくとも特定の態様において、それらの基準レベルを上回る既定バイオマーカー抗原の1つまたは複数に対して反応性の抗体レベルの増加により、処置に対する陽性の治療結果が予測され得る。いくつかの態様において、既定バイオマーカー抗原の1つまたは複数に対して反応性の抗体レベルのそれらの基準レベルからの増加により、治療結果を予測するためまたは治療応答の尺度を提供するため、ハザードモデル、例えば本明細書の等式(1)に記載されるコックス比例ハザードモデルに代入され得る。いくつかの例において、比例ハザードの演算は、基準の反応性抗体レベルと処置後の反応性抗体レベルとの比較と同じシステム上で実行される。これは、1つの例示的な態様にしたがうプロセス900を完了させる。
【0142】
図6Bに例示されている個々のオペレーションは、IT環境でイベントを監視するためのプロセスの具体的態様を示していることが理解されるべきである。代替の態様では他のオペレーションシークエンスも実行され得る。例えば、代替の態様は、上記のオペレーションを異なる順で実行し得る。さらに、個々のオペレーションは、適切なように様々な順序で実行され得る複数のサブ段階を含み得、そして個々の実施に応じて追加のオペレーションが追加または除外され得る。当業者は、多くの可能性のあるバリエーション、改変および代替を理解するであろう。
【0143】
図7は、開示される態様が実装され得るデータ処理システムのブロック図の例を示している。本発明の態様は、様々なコンピュータシステムの構成、例えば携帯型デバイス、マイクロプロセッサシステム、マイクロプロセッサベースまたはプログラム可能個人用電子機器、ミニコンピュータ、メインフレームコンピュータ等を用いて実施され得る。これらの態様はまた、有線ベースまたは無線ネットワークを通じてリンクされた遠隔処理デバイスによってタスクが実行される分散型コンピューティング環境において実施され得る。
【0144】
図7は、本明細書に記載される態様において使用され得るデータ処理システムの1つの例、例えばデータ処理システム1000を示している。
図7はデータ処理システムの様々なコンポーネントを示しているが、これは、それらのコンポーネントを相互接続する任意の特定のアーキテクチャまたは様式を表すことを意図したものでなく、そのような詳細は本明細書に記載される技術と密接に関係しないことに留意されたい。ネットワークコンピュータならびにより少ないコンポーネントまたはおそらくより多いコンポーネントを有する他のデータ処理システムも使用され得ることも理解されるであろう。
図7のデータ処理システムは、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)、ワークステーション、タブレット、スマートフォンもしくは他の携帯型無線デバイス、または類似機能を有する任意のデバイスであり得る。
【0145】
示されているように、データ処理システム1001は、マイクロプロセッサ1003、読み出し専用メモリ(ROM)1007、揮発性ランダムアクセスメモリ(RAM)1005および他の不揮発性メモリ1006に接続されたシステムバス1002を含む。例示されている態様において、マイクロプロセッサ1003は、キャッシュメモリ1004に接続されている。システムバス1002は、これらの様々なコンポーネントをひとつに相互接続するよう適合され得、かつコンポーネント1003、1007、1005および1006を表示コントローラおよび表示デバイス1008ならびに末端デバイス、例えば入/出力(「I/O」)デバイス1010に相互接続するようにも適合され得る。I/Oデバイスのタイプは、キーボード、モデム、ネットワークインターフェース、プリンタ、スキャナ、ビデオカメラまたは当技術分野で周知の他のデバイスを含み得る。典型的に、I/Oデバイス1010は、I/Oコントローラ1009を通じてシステムバス1002に接続される。1つの態様において、I/Oコントローラ1009は、USB端末を制御するためのユニバーサルシリアルバス(「USB」)アダプタまたは他のタイプのバスアダプタを含む。
【0146】
RAM 1005は、メモリ内のデータをリフレッシュまたは維持するために継続的に電力を必要とするダイナミックRAM(「DRAM」)として実装され得る。他の不揮発性メモリ1006は、磁気ハードドライブ、磁気光学ドライブ、光学ドライブ、DVD RAMまたはシステムから電力が除かれた後もデータを維持する他のタイプのメモリシステムであり得る。
図7は不揮発性メモリ1006をデータ処理システムのその他のコンポーネントと接続されたローカルデバイスとして示しているが、記載される技術はシステムから遠隔にある不揮発性メモリ、例えばネットワークインターフェース、例えばモデムまたはイーサーネットインターフェースを通じてデータ処理システムに接続されたネットワーク記憶デバイスを使用し得ることが当業者に理解されるであろう(示さず)。
【0147】
これらの態様を念頭に置いて、記載される技術の局面が少なくとも部分的にソフトウェア、ハードウェア、ファームウェアまたはそれらの任意の組み合わせで実現され得ることが本明細書から明らかとなろう。態様は、データ処理システムに保存されたデータに関連する様々なコンピュータにより実行される機能を採用し得ることも理解されるべきである。すなわち、この技術は、メモリに保存された指令のシークエンスの実行に応じてコンピュータまたは他のデータ処理システムにおいて実行され得る。様々な態様において、配線接続回路は、独立してまたはソフトウェアの指令と組み合わせて、これらの技術を実行するために使用され得る。例えば、記載される機能は、オペレーションを実行するための配線接続ロジックを含む特定のハードウェアコンポーネントによってまたはカスタムハードウェアコンポーネントおよびプログラムされたコンピュータコンポーネントの任意の組み合わせによって実行され得る。本明細書に記載される技術は、ハードウェア回路およびソフトウェアの任意の特定の組み合わせに限定されない。
【0148】
本明細書の態様はまた、コンピュータハードウェアまたはコンピュータプログラム製品において具現化されるコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に保存されたコンピュータコードの形態であり得る。コンピュータ読み取り可能な媒体は、コンピュータまたは他のデータ処理システム、例えばデータ処理システム1000によって実行される場合に本明細書に記載される技術に従うオペレーションをシステムに実行させるよう適合されたコンピュータプログラムコードを保存するよう適合され得る。コンピュータ読み取り可能媒体は、データ処理デバイス、例えばコンピュータ、ネットワークデバイス、タブレット、スマートフォンまたは類似機能を有する任意のデバイスによってアクセス可能な形態で情報を保存する任意の機構を含み得る。コンピュータ読み取り可能媒体の例は、情報を保存することができる任意のタイプの有形の製造物、例えばハードドライブ、フロッピーディスク、DVD、CD-ROM、磁気光学ディスク、ROM、RAM、EPROM、EEPROM、フラッシュメモリおよびそれらの等価物、磁気もしくは光学カードまたは電子データの保存に適した任意のタイプの媒体を含む。コンピュータ読み取り可能媒体はまた、ネットワーク接続されたコンピュータシステム間に分散され得、これらは分散様式で保存または実行され得る。
【0149】
本明細書で引用されているすべての刊行物および特許出願は、各々個々の刊行物または特許出願が具体的におよび個別に参照により組み入れられることが示されているものとして、参照により本明細書に組み入れられる。
【0150】
上記の発明は明確な理解のために実例および実施例によってある程度詳細に記載されているが、本発明の教示に照らして、一定の変更および改変が添付の特許請求の範囲の精神および範囲から逸脱することなくなされ得ることが当業者に直ちに明らかであろう。
【実施例】
【0151】
以下の実施例は、例示を目的として提供されるにすぎず、限定を目的としたものではない。当業者は、本質的に同様の結果が得られるよう変更または改変され得る様々な非決定的なパラメータを直ちに認識するであろう。
【0152】
実施例1:患者のシプリューセル-T処置
PA2024は、細胞免疫療法シプリューセル-Tの調査ためにDendreon Corporation(Seattle, Wash.)によって製造されたPAPおよびGM-CSF配列を含む独自の組換え融合タンパク質である。PA2024は、バキュロウイルス/Sf21系で発現される。
【0153】
すべての対象および健常ドナー試料は、適切なInvestigational Review Boardによる承認を受けた調査者の支援を受けたプロトコルに従い収集した。インフォームドコンセントを受け取った後に、白血球をアフェレーシスにより収集し、移送および/または処理の準備を行った。対象のアフェレーシス細胞を遠心分離して自己血漿を除去し、次いでそれらを0.9%塩化ナトリウムUSP溶液中に再懸濁し、比重1.077 g/mlの浮遊密度溶液(BDS)に通す。界面の細胞を収集し、0.9%塩化ナトリウムUSP溶液で洗浄した後、次いでそれらを比重1.065 g/mlのBDS分離溶液に通した。次いで、この密度溶液を通過した細胞を収集し、0.9%塩化ナトリウムUSP溶液で洗浄した。BDS65細胞と呼ばれるこれらの細胞を、ヒトGM-CSFに融合されたヒト前立腺酸性ホスファターゼを含む融合タンパク質であるPA2024と共に最大44時間、AIM-V(登録商標)培養培地中で培養した。次いで、培養された細胞から培養培地を洗い流し、乳酸加リンガー溶液に再懸濁し、対象に再注入した。アフェレーシスおよび培養の各サイクルを2週間間隔で行い、このプロセスを3回行った。
【0154】
実施例2:タンパク質マイクロアレイを用いたシプリューセル-T療法に対する液性応答のプロファイリング
A. ProtoArrayを用いたシプリューセル-T処置後のIgG応答の発見のためのサンプル
処置前および処置後血清サンプルを、同意を提供したIMPACT(Kantoff et al., 2010; Sheikh et al., 2013)の計224名の患者から入手することができ;155名をシプリューセル-Tアームに、69名を対照アームに割り当てた。血清サンプルを、対象の疾患進行の時点までのみ患者から収集し(Kantoff et al., 2010);その結果、後の時点よりも先の時点でより多くの患者からサンプルを入手することができた。IMPACTにおいて、血清サンプルの組を以下の通り評価することができた:(i)処置前および第2週、n=204(142名のシプリューセル-Tおよび62名の対照患者);(ii)処置前および第10週、n=132(93名のシプリューセル-T、39名の対照);ならびに(iii)処置前および第22週、n=76(60名のシプリューセル-T、16名の対照)。
【0155】
ProtoArray分析の時点で、処置前および全3つの処置後時点の血清サンプルを、IMPACTのシプリューセル-Tアームで47名の患者からおよび対照アームで13名から入手することができた。ProtoArray分析を、対照アームの全13名の患者および(各時点でおおよそ25個のサンプルの分析が成功するよう)シプリューセル-Tアームにおいて無作為に選択された28名の患者の部分集団由来のサンプルに対して実施した。失敗したアッセイおよびアレイの品質管理対照を除外した後、以下の患者の分析のためにProtoArrayデータを入手することができた:(i)処置前および2週、25名のシプリューセル-Tおよび12名の対照、(ii)処置前および10週、24名のシプリューセル-Tおよび11名の対照、(iii)処置前および第22週、24名のシプリューセル-Tおよび13名の対照。
【0156】
B. タンパク質マイクロアレイプロファイリング、アレイデータQCおよび正規化
ProtoArray v5.0(Life Technologies Corporation)(Wolchock et al., 2009; Madan et al., 2010; Kantoff et al., 2010; Hodi et al., 2010;およびHoos et al., 2010)は、InvitrogenのUltimate(商標)ORF(オープンリーディングフレーム)コレクションまたはProtometrixによって開発されたキナーゼクローンのGateway(登録商標)コレクションからのバキュロウイルス/Sf9発現を用いて発現されたタンパク質を使用した。すべてのProtoArrayアッセイが、製造元の推奨プロトコルを用いてLife Technologies Corporationによって実施された。マイクロアレイスライドを、ブロッキング緩衝液(50 mM HEPES、200 mM NaCl、0.01% Triton X-100、25%グリセロール、20 mM 還元型グルタチオン、1.0 mM DTT、1X Synthetic Block)中、4℃で1時間ブロックした。ブロック後、新たに調製したPBST緩衝液(1X PBS、0.1% Tween 20および1X Synthetic Block)を用いてアレイを1回リンスした。次いでアレイを、5 mLのPBST緩衝液に希釈された各血清サンプルの1:500希釈物を用いて調査した。アレイを、穏やかに撹拌しながら、QuadriPERM 4ウェルトレイ(Greiner)において4℃で90分間インキュベートした。インキュベート後、スライドを、4ウェルトレイにおいて、5 ml PBST緩衝液中で5回洗浄した(1回の洗浄につき5分間)。5 ml PBST緩衝液で1.0μg/mlの終濃度に希釈されたAlexa Fluor(登録商標)647結合ヤギ抗ヒトIgG抗体を各アレイに添加し、4℃で90分間穏やかに撹拌しながらインキュベートした。インキュベート後、二次抗体を除去し、そしてアレイを上記のようにして洗浄した。200x重力で2分間、プレート回転装置を備えた卓上遠心分離機において回転させることによってアレイを乾燥させ、その後に蛍光マイクロアレイTecan PowerScannerを用いてスキャンした。
【0157】
GenePix 6.0ソフトウェアを使用して、130μm(直径)の固定フィーチャーサイズで、アレイリストファイルのヒトタンパク質を各アレイ画像にマッピングした。各サブアレイに転写されたAlexaFluor結合およびマウス抗体のスポットを用いてアレイを整列させた後、GenePixソフトウェアによってフィーチャーをリサイズし、フィーチャーを最適化した。アレイ上の各スポットのピクセル強度をソフトウェアから決定し、ファイルに保存した。すべての定量されたスポットのファイルをLifeTechnology ProtoArray Prospectorソフトウェアを用いて処理し、どのタンパク質がサンプルと相互作用したかを決定した。このソフトウェアで、マイクロアレイ上の適切な対照スポットを用いてバックグラウンド補正およびロバスト線形モデル正規化(
Robust
Linear
Model normalization; RLM)(Hoos et al., 2012)を行った。
【0158】
分析の前に、全サンプルで、強度の低いマイクロアレイ上のシグナルおよび既知のGenBank識別子を有さない標的抗原由来のそれら(すなわち、その標的タンパク質にほとんどアノテーションが付けられていないまたは全くアノテーションが付けられていない)を除外した。これにより、6,255個の特有の標的抗原に対応するProtoArray上の7,221個のタンパク質アイソフォームに対するIgG測定が残り、それらを用いてその後のすべての分析を行った。
【0159】
C. 統計学的分析
統計学的分析は、「R」演算環境で行った(cran.us.r-project.org/)。統計学的検定は、そうでないことが示されていない限り、両側とした。血清IgGレベルの変化は、処置前に対するものが報告される(例えば、「第10週のIgGレベルの変化倍率」は第10週のIgGレベルの処置前におけるそれに対する比を表す)。
【0160】
IgGレベルにおける処置前 対 処置後の変化の統計学的有意性を評価するために、ProtoArrayアッセイからの正規化されたシグナル強度(log
2)を、調整された対応のあるt検定(limma, R/Bioconductor)(Smyth GK, 2005)を用いて試験した。ベンジャミーニ・ホッホベルク手順を使用してp値の多試験調整を行い、推定偽発見率(FDR、特定のp値の下で推定されるパーセント偽発見率)を得た(Benjamini YH, 1995)。
【0161】
処置後のIgGレベルの増加を評価するため、Luminex xMAPからの処置前および処置後シグナル強度(log
2)を、片側、対応のあるウィルコクソン符号順位検定を用いて比較した。処置後のIgGレベルの変化倍率が対照群よりもシプリューセル-T群で高いかどうかを評価するため、この2群の値を、片側ウィルコクソン符号順位検定を用いて比較した。抗原に対する「IgG応答」は、処置前との比較での処置後のシグナル強度の≧2倍増加と定義した(アドホックしきい値)。
【0162】
D. シプリューセル-Tにより誘導された液性応答を決定するための対応のある処置前/処置後比較
処置に応じて誘導されたIgG抗体を同定するため、タンパク質マイクロアレイを用いて処置前および処置後血清サンプルを、マイクロアレイデータと共に頻繁に使用される調整された対応のあるt検定(Limma)を用いて比較した(Smyth GK, 2004)。対応のある分析の前に、(i)3つの処置後時点にまたがるシプリューセル-Tアームサンプルの少なくとも5%において、0.05のp値でアレイのバックグラウンドシグナルを超えて発現されなかった;および(ii)マイクロアレイ上の標的に関して既知のRefseqのアノテーションを有していなかった(すなわち、その標的タンパク質はほとんど注記されていない)抗体を除外した。これにより7,221個の抗体が残り、これらすべてを用いて後続の分析を行った。
【0163】
シプリューセル-T処置後群において処置前群に対して(ベンジャミーニ・ホッホベルク推定FDR≦10%で)2倍に上方制御された抗体の数は、6、14および26週でそれぞれ56、162および23であった。シプリューセル-T処置後群において処置前群に対して(ベンジャミーニ・ホッホベルク推定FDR≦10%で)3倍に上方制御された抗体の数は、6、14および26週でそれぞれ4、7および4であった。プラセボ処置後では(推定FDR≦10%で)いかなる抗体も上方制御されなかった。各処置後時点における(推定FDR≦10%で処置前に対する処置後の上方制御倍率が最も高い)上位30の抗体標的が、表1に示されている。PAP(またはACPP)は、すべての処置後時点において上位30の抗体標的の1つである。いくつかの上位の標的は、前立腺癌の疾患進行において直接的な役割を有することが実証されている(例えば、LGALS3またはガレクチン-3(Wang, et al., 2009; Merseburger, et al., 2008; van den Brule, et al., 2000)、ECE1またはエンドセリン変換酵素1(Whyteside, et al., 2010; Lambert, et al., 2008; Dawson, et al., 2006; Kopetz, et al., 2002)、ANPEPまたはアミノペプチドN(Guzman-Rojas, et al., 2012; Larkin, et al., 2012; Pasqualini, et al., 2000))。
【0164】
(表1A)上位30の第6週上方制御抗体標的(ACPPは太字で示されている)
示されているカラムは:protoArrayスポットの位置識別子;遺伝子記号;遺伝子名;調整された対応のあるt検定におけるBASIMに対する処置後の全変化倍率;対応のあるt検定からのt統計量;対応のあるt検定におけるp値および調整された(多試験補正された)p値(ベンジャミーニ・ホッホベルク);ならびに抗体が少なくとも1000の強度差で2倍またはそれ以上上方制御される個体の数。
【0165】
(表1B)上位30の第10週上方制御抗体標的(ACPPは太字で示されている)
カラムの定義については表1Aを参照のこと。
【0166】
(表1C)上位30の第22週上方制御抗体標的(ACPPは太字で示されている)
カラムの定義については表1Aを参照のこと。
【0167】
上位の標的は、公知の癌/精巣抗原ファミリー(Scanlan, et al., 2004)(例えば、NY-ESO-1またはMAGE、GAGE、PAGE LAGEファミリー)の中になかった。この観察の理由はいくつかあると考えられる。先に述べたように、標準(ホルモンおよび放射線療法(Nesslinger, et al., 2007))および免疫療法(Nesslinger, et al., 2010; Kwek, et al., 2012; Nguyen, et al., 2010)により誘導される自己抗体応答の研究は、治療後に誘導される免疫応答が以前に文献において癌抗原として特徴づけられていない標的に対するものであり得ることを示している。加えて、周知の癌/精巣抗原の大部分は、cDNAライブラリおよび癌患者由来の血清サンプルを用いて発見されたものであり、処置後状況ではない。治療の状況下では、癌患者のスクリーニングによって一般に同定されていない新規の抗原に対する免疫応答が発展すると考えられる。治療後の応答は、典型的には自己として認識される自己抗原に対する応答を誘導する、その処置によって誘導された高められた炎症状態の下で腫瘍細胞死が増加する点で発展し得る。
【0168】
3つの最も広く参照されている前立腺抗原、名を挙げるとPSA、PSMAおよびPSCAの中で、PSMAおよびPSAは、ProtoArray上に存在しなかった。PSCAは存在したが、PSCAに対する抗体はシプリューセル-T処置後に有意に上方制御されなかった。
【0169】
E. 癌シグナル伝達経路におけるシプリューセル-T処置後抗体標的のエンリッチメント
シプリューセル-T処置後の癌関連シグナル伝達経路における標的に対して生成された抗体のエンリッチメントを検出した。そのようなエンリッチメントは、処置後の腫瘍組織の破壊および癌抗原に対する免疫応答の刺激という仮説を支持する。KEGG(Kanehisa, et al., 2012)およびIngenuity(IPA)ナレッジベース(www.ingenuity.com/products/pathways_analysis.html; www.ingenuity.com/science/knowledge_base.html)を使用し、処置後に上方制御される抗体標的の上位10%(変化倍率で約720個の標的、FDR≦10%)の中での癌関連経路の遺伝子または標的のエンリッチメントを試験した。エンリッチメントは、経験的に(KEGG経路の場合、10,000のブートストラップサンプリング)またはフィッシャー正確確率検定を用いて(Ingenuityナレッジベースにおける経路の場合)決定した。フィッシャー正確確率検定において、バックグラウンドセット(または「ユニバース」のサンプリング)は、ProtoArrayプラットフォーム上に示される標的セットと共通するIPAナレッジベースの全遺伝子とした。
【0170】
第10週抗体標的を、KEGG前立腺癌経路(ProtoArrayの上位10%のリストと類似のサイズ、すなわち約720個のランダム標的リストの10,000サンプリングに基づく経験的p値0.003)、KEGG VEGFシグナル伝達経路(経験的p値0.005)およびKEGG mTORシグナル伝達経路(経験的p値0.006)経路における遺伝子に関してエンリッチさせた。VEGF活性は、前立腺癌の成長および骨芽性骨転移に関連することが公知である(Aragon-Ching JB, et al. 2010; Dai J, et al. 2004)。PI3K/Akt/mTORシグナル伝達は、しばしばPTENの喪失を通じて、前立腺癌の30〜50%で上方制御され、腫瘍ステージ、等級グレードおよび生化学的再発の危険の増加に関係する(Morgan, et al., 2009)。
【0171】
F. シプリューセル-Tにより誘導される抗体の標的は前立腺腫瘍で過剰発現される遺伝子に対するエンリッチメントを示す
最も大きな報告されている前立腺腫瘍および正常組織における遺伝子発現の研究(Ribas et al., 2009; Fox et al., 2011)において前立腺腫瘍で過剰発現されると報告されている遺伝子を試験し、そのような遺伝子によってコードされる抗原に対する反応性IgGが第10週でエンリッチされるかどうかを決定した。正常前立腺組織との比較で前立腺腫瘍(原発性および転移性を合わせたもの)の少なくとも33%において過剰発現された遺伝子を検討し、678個の遺伝子のリストを得た。これらの678個の遺伝子の中で、152個を、ProtoArray上のタンパク質産物として提示した。IMPACTの第10週で血清IgGレベルが処置前レベルから増加した抗原とこれら152個のタンパク質との重複を評価した。100および50個の最も高度に誘導されたIgGの標的は、これら152個の産物と有意に重複し;上位100の中の6つの標的(p=0.012、超幾何学的検定)および上位50の中の4つの標的(p=0.013)が、前立腺腫瘍において過剰発現された遺伝子の152個の産物と重複した。
【0172】
実施例3:シプリューセル-T処置後に観察される自己抗原に対する抗体応答の検証
A. 背景
実施例2において、ProtoArrayプラットフォームを使用して
図2に示されるシプリューセル-T処置後の自己抗原に対するIgGレベルの上昇を幅広く評価した。この結果は、処置後の抗体応答が前立腺癌シグナル伝達経路に関係するタンパク質を標的化し得ることを示した。この実施例は、ProtoArrayプラットフォームを用いて同定された抗体標的のいくつかを独立したプラットフォームを用いて評価する。
【0173】
B. Luminex xMAPを用いた2次抗原に対する血清IgG応答の確認
ProtoArrayを用いて同定された2次抗原のサブセットに対するIgG応答を、独立した分析プラットフォームであるLuminex xMAPを用いて確認した(Pickering, et al., 2002)。我々は、その低いサンプル量要件、高い報告されている感度、広い線形範囲および複数のIgGの検出の能力の点からLuminex xMAPを選択した。ProtoArrayにおいて第10週でIgG応答が観察された162個の2次抗原から、10個を確認のために選択した(表2)。
【0174】
(表2)ProtoArrayを用いてIMPACTの患者において同定された非標的抗原候補
FDR、偽発見率。
【0175】
これら10個の抗原の中で、5個は処置後レベルの増加倍率が最も高いIgGに対応し(LGALS3、ANPEP、ECE1、FBXO6およびCACNG1);LGALS3(Newlaczyl, et al., 2011; Califice, et al., 2004; Laderach, et al., 2013)、ANPEP(Fukusawa, et al., 2006; Larkin, et al., 2012; Sorensen, et al., 2013)、ECE1(Lambert, et al., 2008; Herrmann, et al., 2006; Nelson, et al., 1995; Nelson, et al., 2005)は前立腺腫瘍において高レベルで発現されることまたは前立腺癌の発展において機能的役割を有することが知られている。我々は、癌における報告されている機能的関連性および/または前立腺腫瘍における発現増加に基づき残りの5個の抗原;すなわち、KLK2(Darson, et al., 1999; Williams, et al., 2010; Rittenhouse, et al., 1998)、ERAS(Kubota, et al., 2010)、KRAS(Taylor, et al., 2010)、TSPAN13(Arencibia, et al., 2009)およびLGALS8(Laderach, et al., 2013; Su, et al., 1996)を選択した。ProtoArrayデータは、これら10個の候補2次抗原の大部分に対するIgGのレベルがまた、より早い(第2週)およびより遅い(第22週)時点で上昇したことを示した(表3)。
【0176】
(表3)ProtoArrayを用いて測定されたIMPACTの第2および22週における候補抗原に対するIgGのレベルの増加
変化倍率、その時点と処置前における血清IgGレベルの比;FDR、偽発見率。
【0177】
以下の基準に基づき、ProtoArrayデータ(実施例2)から抗原を選択した:
i. シプリューセル-Tと対照アームの患者の比較において、対照(n=39)よりもシプリューセル-T(n=93)で処置後IgGレベル変化倍率がより高く、その比較に関してp≦0.01であること。
ii.シプリューセル-T処置患者(n=93)において、処置前と比較して処置後にIgGレベルの有意な増加があること(p≦0.01)および患者の≧10%が(処置前との比較で処置後のIgGレベルの≧2倍増加と定義される)IgG応答を示すこと。
【0178】
以下の抗原に対するIgGのレベルのシプリューセル-Tにより誘導された増加をLuminex xMAPによって確認した:PSA、KLK2、KRAS、ERAS、LGALS8およびLGALS3(表4および
図3)。
【0179】
(表4)Luminex xMAPを用いた、IMPACTにおける第10週の候補2次抗原に対する血清IgG応答の確認
PCa、前立腺癌。
【0180】
予想された通り、PAPおよびPA2024に対するIgGのレベルの増加も確認された。いくつかの抗原、例えばPSA、KLK2、KRAS、ERASおよびLGALS3に対するIgG応答が、IMPACTのシプリューセル-T処置患者の≧25%(範囲:28〜44%)で観察された。抗PSA、抗KRASまたは抗ERAS IgGレベルの5倍増加が、シプリューセル-T処置患者の≧10%(範囲:12〜15%)で観察された。これらの抗原に対するIgGのレベルは、対照患者において処置後に有意に上昇しなかった(p>0.01、表4)。
【0181】
IMPACTの第10週時点で観察された2次抗原に対するIgG応答が他の時点でも起こったかどうかを決定するため、IMPACTの他の入手可能な処置後時点(第2および22週)からの血清サンプルを試験した(表5Aおよび5Bを参照のこと)。
【0182】
(表5A)Luminex xMAPを用いたIMPACTにおける第2週の候補抗原に対するIgG応答の評価
PCa、前立腺癌。
【0183】
(表5B)Luminex xMAPを用いたIMPACTにおける第22週の候補抗原に対するIgG応答の評価
PCa、前立腺癌。
【0184】
IMPACTにおいて、PSA、KLK2、KRAS、ERAS、LGALS8およびLGALS3に対するIgGのレベルの有意な(p≦0.01)増加が、第2週(n=142)および第22週(n=60)のシプリューセル-T群において観察された。
【0185】
C. 検証アッセイのための抗原の調達および調製
検証のための抗原は、Origene Technologies, InvitrogenおよびSino Biological Incから入手した。各供給元から調達した抗原のリストを、タンパク質生成に使用したクローンおよび発現細胞株についての情報と共に、表6に提供する。タンパク質発現系または精製タグに対するアッセイの依存性を評価する目的で、いくつかのタンパク質を、複数の発現系および精製タグを用いて調製した(すなわち、PAP、KRAS、ERAS、KLK2;表6)。
【0186】
(表6)Luminex xMAPアッセイにおいて使用したタンパク質試薬
【0187】
D. 血清サンプルの評価
Luminex xMAPアッセイのために、IMPACT臨床研究由来の血清サンプルの対を、以下の患者から入手可能であった:(i)処置前および第2週、n=204(142名のシプリューセル-Tおよび62名の対照患者);(ii)処置前および第10週、n=132(93名のシプリューセル-T、39名の対照);ならびに(iii)処置前および第22週、n=76(60名のシプリューセル-T、16名の対照)。
【0188】
E. Luminex xMAP(登録商標)を用いた処置後の血清IgG応答の評価
候補抗原に対するIgGレベルは、多重抗原連結性、スペクトル識別可能な蛍光(Pickering, et al., 2002)を使用するLuminex xMAPを用いてLife Technologies Corporationによって評価された。すべての入手可能なIMPACT患者由来の処置前および処置後血清サンプル対を評価した。GSTタグ付加タンパク質は、ビーズに結合された抗GST抗体を用いてビーズに連結し、GSTタグ付加されていないタンパク質は、ビーズに直接的に(共有結合により)連結させた。血清サンプル(30 mL)は、1:200希釈でプロファイルした。タンパク質シグナルアッセイおよび対照アッセイ(陰性および陽性)を、捕捉された抗原および実験サンプルを用いて並行して実施した。ビーズに直接的に捕捉されたBSAおよび抗GST連結ビーズに捕捉されたGSTを、陰性対照として使用した。評価したサンプル全体で、BSAに対するIgGの蛍光強度の中央値は<100であり、GSTに対しては<500であり、これにより低いバックグラウンドシグナルが示された。陽性対照は、抗ヒトIgG(アッセイされたサンプルにおける血清の存在を示すため)およびヒトIgG(2次抗体の存在を示すため)を含めた。
【0189】
分析前に、Luminex xMAPのすべてのシグナルをlog
2変換した。このプラットフォームの技術的再現性を評価するため、患者の血清サンプルのサブセット(n=120)を最初に3つ組でアッセイした。バッチ内で、3つ組のサンプルの変動係数(CV)の中央値は、すべての評価された抗原で低かった(<5%)。したがって、残りの血清サンプルを、対照と共に、1回実施でアッセイした。バッチ効果を避けるため、患者由来の処置前および処置後血清サンプルを、同一ロットの抗原連結ビーズを用いて実施した。
【0190】
F. IMPACTのシプリューセル-Tアームにおける血清IgG応答体間の重複
シプリューセル-T処置患者が同一の2次抗原に対するIgG応答を共有しているかどうかを決定するため、我々は、IgG応答体間の重複を評価した(代表例については
図3Bのベン図を、詳細については表7を参照のこと)。2次抗原に対するIgG応答を示したシプリューセル-T処置患者の大部分は、PAPに対するIgG応答を示した患者と重複した(
図2B、左)。多くの異なる2次抗原(例えば、ERASおよびKLK2、またはLGALS3およびKRAS、p≦0.01、超幾何学的検定)に対するIgG応答体間でも有意な重複が観察された。例えば(
図2B、右において)、PSA、ERAS、LGALS8およびLGALS3に対するIgG応答を考慮すると、シプリューセル-T処置患者の25%(23/93)が同抗原の3つまたはそれ以上に対する応答を示し、9%がこれらの抗原の4つすべてに対する応答を示した。この例では、抗原に依存して、IgG応答の少数(≦30%)が特有であった(すなわち、他の抗原に対するIgG応答と重複しなかった)。
【0191】
(表7)IMPACTのシプリューセル-Tアームにおける第10週の異なる抗原に対するIgG応答体であった患者の数の重複
【0192】
シプリューセル-Tにより誘導されたIgG応答は、処置後時点の全体で概ね一貫していた。第10週で抗原に対してIgG応答を示したIMPACTのシプリューセル-Tアームの患者は、高頻度で、より早い(第2週)およびより遅い(第22週)時点でも同じ抗原に対してIgG応答を示した(p≦0.01、超幾何学的検定、表8および9)。
【0193】
(表8)処置後第2および10週時点におけるIgG応答の重複
【0194】
(表9)第10および22週時点におけるIgG応答の重複
【0195】
G. IMPACTにおけるシプリューセル-Tにより誘導された血清IgGレベルの変化とOSの関連性
第10週のシプリューセル-Tにより誘導されたIgGレベルの変化とOSの関連性を、IMPACTにおいて、基準PSAおよびLDHレベルに対して調整された多変量コックスモデルを用いて評価した。シプリューセル-Tにより誘導された抗PSA IgG(ハザード比[HR]=0.63、95% CI 0.46、0.86;p<0.01)および抗LGALS3 IgG(HR=0.60、95% CI 0.38、0.96;p=0.04)のレベルの変化は、改善されたOSと有意に関連した(
図4、表10)。シプリューセル-Tにより誘導された抗KLK2 IgGおよび抗ERAS IgGのレベルの変化は、改善されたOSと関連する傾向を示した(0.05<p<0.1)。
【0196】
(表10)血清IgGレベルの変化倍率のlog
2とOSの関連性
【0197】
シプリューセル-Tアームにおいて、PSA(応答体n=36、非応答体n=57;HR=0.38、95% CI 0.19、0.80;p=0.01)およびLGALS3(応答体n=26、非応答体n=67;HR=0.25、95% CI 0.09、0.72;p=0.01)に対するIgG応答(第10週で≧2倍増加)もまた、改善されたOSと有意に関連した(表11)。対照アームの患者との比較で、抗PSA IgG応答体であったシプリューセル-Tアームの患者は有意に改善されたOSを示し(HR=0.27、95% CI 0.12、0.58;p<0.01;
図4、表12)、抗PSA IgG非応答体であったシプリューセル-Tアームの患者のOSは、対照アームの患者のそれと有意に相違しなかった(HR=0.71、95% CI 0.41、1.23;p=0.23)。同様に、抗LGALS3 IgG応答体であったシプリューセル-Tアームの患者は、対照アームの患者との比較で有意に改善されたOSを示し(HR=0.16、95% CI 0.06、0.49;p<0.01;
図4)、抗LGALS3 IgG非応答体であったシプリューセル-Tアームの患者のOSは、対照アームの患者と有意に相違しなかった(HR=0.66、95% CI 0.38、1.12;p=0.12)。これらの結果は、2次抗原に対するIgGのレベルの比較的穏やかな増加(≧2倍)が、これらのIgGの増加を示さない患者よりもシプリューセル-T処置後に有意な生存的利益を有する可能性が高い患者を特定し得ることを示している。
【0198】
(表11)IgG応答(処置後血清IgGレベルの≧2倍増加)とOSの関連性
【0199】
(表12)IMPACTにおける第10週のシプリューセル-T処置IgG応答体およびIgG非応答体のOSと対照患者におけるそれの比較
【0200】
IMPACTのシプリューセル-Tアームの患者の中で、抗PA2024および抗PAP IgG応答体は、対照患者との比較で改善されたOSを示したが、抗PA2024および抗PAP IgG非応答体は示さなかった(表12)。しかし、抗PA2024および抗PAP IgG応答体において観察されたOSの向上は、抗PSAまたは抗LGALS3 IgG応答体におけるそれらほど有意ではなかった。異なる方法を用いたIMPACTからのデータの以前の分析は、PAPまたはPA2024に対する液性(IgGおよびIgMを合わせて)ならびに細胞性免疫応答が全体で改善されたOSと関連することを示した(Sheikh, et al., 2013)。
【0201】
IMPACTのシプリューセル-T処置患者において、第2週のPSAに対するIgG応答は、改善されたOSと有意に関連し(応答体n=35、非応答体n=107;HR=0.42、95% CI 0.22、0.79;p<0.01;
図5;表13)、第2週のLGALS3に対するIgG応答は、改善されたOSの傾向を示した(応答体n=41、非応答体n=101;HR=0.57、95% CI 0.31、1.02;p=0.06)。第2週で抗PSAまたは抗LGALS3 IgG応答体であったシプリューセル-Tアームの患者は、対照アームの患者との比較で有意に改善されたOS(p<0.01)を示した(が対応する非応答体は示さなかった)(
図5;表14)。第2週で1次抗原(PAPまたはPA2024)に対するIgG応答を示したシプリューセル-Tアームの患者もまた、対照アームの患者との比較で改善されたOSを示した(p<0.05、表14)が、このIgG応答を示さなかった患者のOSは、対照アームの患者と有意に相違しなかった。第22週のIgG応答は、OSと有意に関連しなかったが;シプリューセル-Tアームにおいて、抗PSA IgG応答を示した患者は、非応答体との比較で改善されたOSの傾向を示した(応答体n=18、非応答体n=42;HR=0.35、95% CI 0.12、1.05;p=0.06;表13)。
【0202】
(表13)IgG応答(処置後の血清IgGレベルの≧2倍増加)とOSの関連性
【0203】
(表14)IMPACTにおける第2および22週のシプリューセル-T処置IgG応答体およびIgG非応答体のOSと対照患者のそれの比較
NA、適用可能でない。
【0204】
H. 結論
シプリューセル-T処置対象における、候補抗原PSA、KRAS、ERAS、LGALS3、LGALS8およびKLK2に対するIgGの上昇は、処置前時点で測定されたレベルとの比較で、IgGレベルの有意な処置後上昇を示した。評価可能なプラセボ処置対象においては、上昇は観察されなかった。この結果は、シプリューセル-T処置後の2次抗原に対する抗原拡散の証拠を提供する。IgG応答が観察されたいくつかの抗原は、前立腺腫瘍において発現または体細胞変異の増加を示し(KRAS、KLK2、LGALS8およびLGALS3)、前立腺特異的発現を示し(KLK2)または前立腺腫瘍抗原であることが既知のものである(LGALS8)。したがって、この結果は、シプリューセル-T治療後の前立腺腫瘍に対するインビボ活性を示している。さらに、KRAS、ERAS、KLK2、LGALS3、LGALS8およびPSAは、例えば、前立腺癌に対するさらなる免疫療法の見込みのある標的となる。
【0205】
個々の抗原に対するIgG応答を示した対象は有意に重複しており、このことはいくつかの対象で複数の抗原に対するIgG応答が同時に生じたことを示している。シプリューセル-T処置対象において、いくつかの抗原(例えば、PSAおよびLGALS3)に対するIgG応答は、OSと関連した。上記の抗原に対するIgG応答は、したがって、シプリューセル-Tに対する臨床応答体の予測のために使用され得る。多数の抗原に対するIgG応答がOSとの関連性を向上させ得るので、多数の抗原に対するIgGが、シプリューセル-T処置対象における臨床結果を評価するための効果的、多変量、処置後の薬力学的バイオマーカーを提供し得る。
【0206】
参考文献