(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に、実施例によるハイブリッド建設機械としてのショベル(掘削機)の側面図を示す。下部走行体1に、旋回機構2を介して上部旋回体3が旋回可能に搭載されている。上部旋回体3にブーム4、アーム5、及びバケット6からなる作動部品が、上下方向にスイング可能に取り付けられている。作動部品は、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9からなるアクチュエータにより油圧駆動され、上下方向にスイングする。
【0010】
ブーム4、アーム5、及びバケット6により、掘削用のアタッチメントが構成される。なお、掘削用のアタッチメントの他に、破砕用のアタッチメント、リフティングマグネット用のアタッチメント等を連結することも可能である。
【0011】
図2に、
図1に示したショベルのブロック図を示す。
図2において、機械的動力系を二重線で表し、高圧油圧ラインを太い実線で表し、パイロットラインを破線で表す。
【0012】
エンジン11の駆動軸がトルク伝達機構13の入力軸に連結されている。エンジン11には、ディーゼルエンジン等の内燃機関が用いられる。電動発電機12の駆動軸が、トルク伝達機構13の他の入力軸に連結されている。電動発電機12は、アシスト運転と、発電運転との双方の運転動作を実行できる。トルク伝達機構13の出力軸に、メインポンプ(油圧ポンプ)14の駆動軸が連結されている。メインポンプ14は、エンジン11が発生する動力、及び電動発電機12が発生する動力によって駆動される。
【0013】
電動発電機12がアシスト運転を行う場合には、電動発電機12で発生する動力がトルク伝達機構13を介してメインポンプ14に伝達される。これにより、エンジン11に加わる負荷が軽減される。電動発電機12が発電運転を行う場合には、エンジン11で発生する動力がトルク伝達機構13を介して電動発電機12に伝達される。
【0014】
メインポンプ14は、高圧油圧ライン16を介して、コントロールバルブ17に油圧を供給する。コントロールバルブ17は、運転者からの指令により、種々のアクチュエータ、例えば左走行用油圧モータ1A、右走行用油圧モータ1B、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9に油圧を分配する。左走行用油圧モータ1A及び右走行用油圧モータ1Bは、それぞれ下部走行体1に備えられた左右の2本のクローラを駆動する。
【0015】
電動発電機12がアシスト運転されている期間は、必要な電力が、蓄電回路120から駆動制御部としてのインバータ18を通して電動発電機12に供給される。電動発電機12が発電運転されている期間は、電動発電機12によって発電された電力が、インバータ18を通して蓄電回路120に供給される。これにより、蓄電回路120内の蓄電装置19が充電される。
【0016】
電動負荷駆動要素としての旋回用の電動モータ21が、駆動制御部としてのインバータ20によって駆動され、力行動作及び回生動作の双方の運転を実行できる。電動モータ21の力行動作中は、蓄電装置19からインバータ20を介して電動モータ21に電力が供給される。電動モータ21が、減速機24を介して旋回機構2を駆動する。回生動作時には、上部旋回体3の回転運動が、減速機24を介して電動モータ21に伝達されることにより、電動モータ21が回生電力を発生する。発生した回生電力は、インバータ20を介して蓄電回路120に供給される。この電力により、蓄電回路120内の蓄電装置19が充電される。
図2の例では、上部旋回体3は電動モータ21のみによって旋回駆動されるが、電動モータ21と旋回用油圧モータとの組み合わせによって旋回駆動されてもよい。
【0017】
レゾルバ22が、電動モータ21の回転軸の回転方向の位置を検出する。レゾルバ223の検出結果が、制御装置30に入力される。レゾルバ22からの信号により、電動モータ21の回転速度を検出できる。レゾルバ22は、電動モータ21の回転速度を検出する速度検出器としての機能を有する。
【0018】
メカニカルブレーキ23が、電動モータ21の回転軸に連結されており、機械的な制動力を発生する。メカニカルブレーキ23の制動状態と解除状態とは、制御装置30からの制御を受け、電磁的スイッチにより切り替えられる。
【0019】
パイロットポンプ15が、油圧操作系に必要なパイロット圧を発生する。発生したパイロット圧は、パイロットライン25を介して操作装置26に供給される。操作装置26は、レバーやペダルを含み、運転者によって操作される。操作装置26は、パイロットライン25から供給される1次側の油圧を、運転者の操作に応じて、2次側の油圧に変換する。2次側の油圧は、油圧ライン27を介してコントロールバルブ17に伝達されると共に、他の油圧ライン28を介して圧力センサ29に伝達される。
【0020】
圧力センサ29で検出された圧力情報が、制御装置30に入力される。この圧力情報により、制御装置30は、下部走行体1、電動モータ21、ブーム4、アーム5、及びバケット6の操作の状況を検知できる。エンジン11、インバータ18、インバータ20、及び蓄電回路120は、制御装置30により制御される。
【0021】
還元剤貯蔵タンク31に、エンジン11の排ガス中の窒素酸化物を還元するための液状の還元剤が貯蔵されている。還元剤には、例えば尿素水が用いられる。還元剤は、還元剤貯蔵タンク31からエンジン11の排気路に供給される。残量検出器32が、還元剤貯蔵タンク31内の還元剤の残量を検出する。検出結果が制御装置30に入力される。
【0022】
充電率検出回路44が、蓄電装置19の充電率SOCを算出するための物理量、例えば開放電圧を検出する。検出結果が制御装置30に入力される。開放電圧をVocで表し、蓄電装置19の最小電圧及び最大電圧の定格値を、それぞれVmin、Vmaxで表したとき、充電率SOCは、以下の式で表される。
SOC=(Vc
2−Vmin
2)/(Vmax
2−Vmin
2)
強制アシストスイッチ38のオンオフ状態SWCAが、制御装置30に入力される。リカバリスイッチ39の押下状態SWRが制御装置30に入力される。強制アシストスイッチ38及びリカバリスイッチ39は、運転者または保守点検者によって操作される。
【0023】
次に
図3を参照し、
図1のショベルに搭載される選択還元触媒システム100について説明する。なお、
図3は、選択還元触媒システム100の構成例を示す概略図である。選択還元触媒システム100は、排ガス浄化システムの一例であり、エンジン11から排出される排ガスを浄化する。
【0024】
エンジン11には、燃料タンクから高圧ポンプにより燃料が供給される。この高圧燃料は燃焼室内に直接噴射されて燃焼する。エンジン11及び高圧ポンプ等は、エンジン制御装置74により制御される。
【0025】
エンジン11からの排ガスは、ターボチャージャ80を経た後にその下流の排気管81に流され、選択還元触媒システム100により浄化処理が行われた後、大気中に排出される。
【0026】
一方、エアクリーナ82から吸気管83内に導入された吸入空気は、ターボチャージャ80及びインタークーラ84等を通過してエンジン11に供給される。
【0027】
排気管81には、排ガス中の粒子状物質を捕集するディーゼルパティキュレートフィルタ85と、排ガス中の窒素酸化物(以下、「NOx」とする場合もある。)を還元除去するための選択還元触媒86とが直列に設けられている。
【0028】
選択還元触媒86は、液体還元剤(例えば、尿素又はアンモニア等)の供給を受けて排ガス中のNOxを連続的に還元除去する。本実施例では取扱いの容易さから液体還元剤として尿素水(尿素水溶液)が用いられる。
【0029】
排気管81における選択還元触媒86の上流側には、選択還元触媒86に尿素水を供給するための尿素水噴射装置87が設けられている。尿素水噴射装置87は、尿素水供給ライン88を介して還元剤貯蔵タンク31に接続されている。
【0030】
また、尿素水供給ライン88には尿素水供給ポンプ89が設けられ、還元剤貯蔵タンク31と尿素水供給ポンプ89との間にはフィルタ90が設けられている。還元剤貯蔵タンク31内に貯蔵された尿素水は、尿素水供給ポンプ89により尿素水噴射装置87に供給され、尿素水噴射装置87から排気管81における選択還元触媒86の上流位置に噴射される。
【0031】
尿素水噴射装置87から噴射された尿素水は、選択還元触媒86に供給される。供給された尿素水は、選択還元触媒86内において加水分解されてアンモニアを生成する。このアンモニアが選択還元触媒86内で排ガスに含まれるNOxを還元し、このNOxの還元反応により排ガスの浄化が行われる。
【0032】
第1のNOxセンサ91は、尿素水噴射装置87の上流側に配設されている。また、第2のNOxセンサ92は、選択還元触媒86の下流側に配設されている。NOxセンサ91、92は、各々の配設位置における排ガス内のNOx濃度を検出する。
【0033】
還元剤貯蔵タンク31には残量検出器32が配設されている。残量検出器32は、還元剤貯蔵タンク31内の尿素水残量を検出する。
【0034】
NOxセンサ91、92、残量検出器32、尿素水噴射装置87、及び尿素水供給ポンプ89は、選択還元触媒システムコントローラ93に接続されている。選択還元触媒システムコントローラ93は、NOxセンサ91、92で検出されるNOx濃度に基づき、尿素水噴射装置87及び尿素水供給ポンプ89により適正量の尿素水が排気管81内に噴射されるよう噴射量制御を行う。
【0035】
選択還元触媒システムコントローラ93は、残量検出器32から出力される尿素水残量に基づき、還元剤貯蔵タンク31の全容積に対する尿素水残量の割合(以下、「尿素水残量比」とする。)を算出する。例えば、尿素水残量比50%は、還元剤貯蔵タンク31の容量の半分の尿素水が還元剤貯蔵タンク31内に残存していることを示す。
【0036】
選択還元触媒システムコントローラ93は、選択還元触媒システム100の異常を検出する異常検出部としても機能する。例えば、選択還元触媒システムコントローラ93は、NOxセンサ91、92の出力に基づいて選択還元触媒システム100の異常を検出してもよい。例えば、選択還元触媒システムコントローラ93は、NOxセンサ92が出力する選択還元触媒86の下流側のNOx濃度が所定値以上である状態を選択還元触媒システム100の異常として検出してもよい。或いは、選択還元触媒システムコントローラ93は、NOxセンサ91が出力する選択還元触媒86の上流側のNOx濃度とNOxセンサ92が出力するNOx濃度との差が所定値未満である状態を選択還元触媒システム100の異常として検出してもよい。また、選択還元触媒システムコントローラ93は、尿素水残量に基づいて選択還元触媒システム100の異常を検出してもよい。例えば、選択還元触媒システムコントローラ93は、尿素水残量が所定値未満の状態を選択還元触媒システム100の異常として検出してもよい。
【0037】
選択還元触媒システムコントローラ93は、通信手段によりエンジン制御装置74と接続されている。また、エンジン制御装置74は通信手段により制御装置30に接続されている。なお、本実施例では、選択還元触媒システムコントローラ93、エンジン制御装置74、及び制御装置30は別体として構成されるが、それらの少なくとも2つは一体的に構成されてもよい。例えば、選択還元触媒システムコントローラ93は、エンジン制御装置74に統合されてもよい。
【0038】
選択還元触媒システムコントローラ93が有している選択還元触媒システム100の各種情報は、制御装置30及びエンジン制御装置74が共有し得る構成となっている。エンジン制御装置74、選択還元触媒システムコントローラ93は、制御装置30と同様に、それぞれCPU、RAM、ROM、入出力ポート、記憶装置等を含む。エンジン制御装置74は、収集したデータに応じて尿素水の噴射量を決定する。そして、エンジン制御装置74は、選択還元触媒システムコントローラ93を通じて尿素水噴射装置87に対して制御信号を送信し、エンジン11からの排ガスに対する尿素水の噴射量を制御する。
【0039】
選択還元触媒システム100の異常を検出した場合、選択還元触媒システムコントローラ93は、その検出結果を制御装置30に対して出力する。制御装置30は、その検出結果に基づいて選択還元触媒システム100の異常の有無を判定する。
【0040】
制御装置30は、異常判定の前後で電動負荷駆動要素としての旋回用の電動モータ21の制御を継続させる。すなわち、選択還元触媒システム100の異常を検出した場合であっても旋回動作が継続中であれば、制御装置30は、インバータ20と電動モータ21との間の通電制御が可能な状態を維持できるように、旋回動作が終了するまでインバータ20の制御を継続させる。また、制御装置30は、異常判定の前後で電動発電機12の制御を継続させてもよい。すなわち、インバータ18と電動発電機12との間の通電制御が可能な状態を維持できるように、インバータ18の制御を継続させてもよい。更に、インバータ18とインバータ20と蓄電回路120とを結ぶ直流母線(バスライン)の電圧を一定に維持するために、直流母線と(キャパシタ、リチウムイオン二次電池等である)蓄電装置19との間にコンバータが設置されてもよい。この場合、制御装置30は、異常判定の前後で蓄電装置19の制御を継続させてもよい。すなわち、蓄電装置19の充放電が可能な状態を維持できるように、コンバータの制御を継続させてもよい。
【0041】
ここで
図4を参照し、旋回動作の継続中に選択還元触媒システム100の異常を検出した場合に制御装置30が電動モータ21の制御を継続させる処理について説明する。
図4は、レバー操作量、旋回速度、エンジン回転数のそれぞれの時間的推移を示すタイムチャートである。実線は、選択還元触媒システム100の異常を検出した場合にエンジン11及び電動モータ21の駆動を停止せずに電動モータ21の制御を継続する場合の時間的推移を示す。すなわち、異常検出後においても異常検出前と変わることなく旋回操作レバーのレバー操作に応じて電動モータ21の制御が継続される例を示す。破線は、選択還元触媒システム100の異常を検出した場合にエンジン11及び電動モータ21の駆動を停止し且つ電動モータ21の制御を継続する場合の時間的推移を示す。すなわち、異常検出後に旋回操作レバーのレバー操作とは無関係に上部旋回体3の旋回を制動させるように電動モータ21の制御が継続される例を示す。一点鎖線は、選択還元触媒システム100の異常を検出した場合にエンジン11及び電動モータ21の駆動を停止し且つ電動モータ21の制御を停止した場合の時間的推移を示す。
【0042】
図4(A)は旋回操作レバーのレバー操作量の時間的推移を示す。本実施例では、旋回操作レバーは既に最大操作量まで操作されており、時刻t1を経て時刻t2に至るまで最大操作量が維持される。そして、時刻t2において中立位置に戻す操作が行われる。
【0043】
図4(B)は旋回速度の時間的推移を示し、
図4(C)はエンジン回転数の時間的推移を示す。
【0044】
時刻t1において選択還元触媒システム100の異常を検出した場合、制御装置30は、エンジン11及び電動モータ21の駆動を停止せずに電動モータ21の制御を継続する。すなわち旋回速度及びエンジン回転数を維持しながら電動モータ21の制御を継続する。したがって、旋回速度は、
図4(B)の実線で示すように時刻t2において旋回操作レバーを中立位置に戻す操作が行われるまで、現在の速度が維持される。また、エンジン回転数は、
図4(C)の実線で示すように旋回操作レバーが中立位置に戻された後も現在の回転数が維持される。そのため、制御装置30は、例えば旋回動作の継続中に尿素水残量が所定値を下回った場合であっても、その旋回動作が終了するまではエンジン11及び電動モータ21を何らの制限なく動作させることができ、旋回速度が急変してしまうのを防止できる。
【0045】
或いは、制御装置30は、時刻t1において選択還元触媒システム100の異常を検出した場合、エンジン11及び電動モータ21の駆動を停止し且つ電動モータ21の制御を継続してもよい。すなわちエンジン11を停止した上で電動モータ21の制御を継続して上部旋回体3の旋回を制動停止させてもよい。この場合、電動モータ21は、時刻t1において旋回操作レバーの操作状態とは無関係に回生動作を開始して回生電力を発生させながら上部旋回体3を制動停止させる。したがって、
図4(B)の破線で示すように旋回速度は急減してゼロに至る。また、
図4(C)の破線で示すようにエンジン回転数も急減してゼロに至る。そのため、制御装置30は、例えば旋回動作の継続中に尿素水残量が所定値を下回った場合、エンジン11及び電動モータ21を速やかに停止でき、NOx濃度が高い排ガスが排気されてしまうのを防止できる。或いは、制御装置30は減速パターンを予め設定しておき、その減速パターンに従って電動モータ21を緩やかに停止させてもよい。
【0046】
一方、時刻t1において選択還元触媒システム100の異常が検出された場合に電動モータ21の制御が停止されてしまうと、加速トルク及び減速(制動)トルクを含む旋回トルクが消失し、上部旋回体3は惰性で旋回し続ける。旋回速度は、
図4(B)の一点鎖線で示すように、旋回機構2に作用する摩擦力によって徐々に低下してゼロに至る。
【0047】
制御装置30は、選択還元触媒システム100の異常が検出された場合であっても電動モータ21の制御を継続することで、すなわちインバータ20の制御を継続させることで、このような上部旋回体3の惰性旋回の発生を防止できる。具体的には、電動モータ21の駆動を停止せずに電動モータ21の制御を継続することで、異常が検出されていない場合と同様の旋回動作を実現できる。或いは、電動モータ21の駆動を停止して電動モータ21の制御を継続することで、電動モータ21を迅速に停止させることができる。また、インバータ18の制御を継続させることで、制御装置30は、電動モータ21の減速時に回生電力を発生させたときにその回生電力を電動発電機12に供給できる。また、コンバータの制御を継続させることで、制御装置30は、電動モータ21の減速時に回生電力を発生させたときにその回生電力を蓄電装置19に供給できる。
【0048】
次に、
図5を参照し、制御装置30の詳細について説明する。
図5は、制御装置30の機能ブロック図を示す。制御装置30は、旋回動作中に異常を検出した場合、旋回動作が停止するまで通常の制御を継続し、旋回動作が停止した後も通常の制御を継続する。そのため、強制アシストスイッチ38等に対する操作入力に応じた旋回動作を可能にする。
制御装置30の各機能は、例えば、中央処理ユニット(CPU)がコンピュータプログラムを実行することにより実現される。このコンピュータプログラムは、制御装置30内の記憶装置に格納されている。
【0049】
圧力センサ29で検出された圧力情報が、エンジン速度指令値生成部507及び電動モータ速度指令値生成部508に入力される。この圧力情報には、操作装置26の操作情報、例えば上部旋回体3の旋回操作、前進後退操作、ブーム4、アーム5、及びバケット6からなる作動部品のスイング操作等が含まれる。
【0050】
エンジン速度指令値生成部507は、圧力センサ29からの圧力情報に基づいて、エンジン11の回転速度指令値NCEを生成する。例えば、メインポンプ14で油圧駆動される複数のアクチュエータに対する操作情報に基づいて、メインポンプ14に供給すべき動力が求められる。この動力に基づいて、エンジン11の回転速度指令値NCEが求められる。
【0051】
電動モータ速度指令値生成部508は、圧力センサ29からの圧力情報に基づいて、電動モータ21の回転速度指令値NCMを生成する。例えば、上部旋回体3の旋回動作に対する操作情報に基づいて、電動モータ21の回転速度指令値NCMが求められる。
【0052】
残量検出器32の出力信号が還元剤残量検出部501に入力される。還元剤残量検出部501は、残量検出器32からの出力信号に基づいて、還元剤貯蔵タンク31内の還元剤の残量QRを算出する。レゾルバ22の出力信号が電動モータ速度検出部502に入力される。電動モータ速度検出部502は、レゾルバ22の出力信号に基づいて、電動モータ21の回転速度測定値NMを算出する。充電率検出回路44の出力信号が充電率検出部503に入力される。充電率検出部503は、充電率検出回路44の出力信号に基づいて、蓄電装置19の充電率SOCを算出する。
【0053】
制御モード管理部504が、還元剤の残量QR、電動モータ21の回転速度測定値NM、蓄電装置19の充電率SOC、強制アシストスイッチ38のオンオフ状態SWCA、及びリカバリスイッチ39の押下状態SWRに基づいて、エンジン11、電動発電機12、及び電動モータ21の制御モードMCを決定する。具体的には、複数の制御モードMCから1つの制御モードを選択する。
【0054】
図6に、制御モードMCの状態遷移図を示す。制御モードMCには、通常モードMC1、出力制限モードMC2、アイドリングモードMC3、第1強制アシストモードMC4、第2強制アシストモードMC5、第1アシスト禁止モードMC6、及び第2アシスト禁止モードMC7が含まれる。
図6では、制御モードMC間の主な遷移が示されており、全ての遷移が示されているわけではない。
【0055】
通常モードMC1では、エンジン11、電動発電機12、及び旋回用の電動モータ21の出力が、通常の出力上限値を超えない範囲で制御される。出力制限モードMC2では、エンジン11、電動発電機12、及び旋回用の電動モータ21の出力が、通常の出力上限値よりも低い制限上限値を超えない範囲に制限される。アイドリングモードMC3では、エンジン11がアイドリング状態で運転され、電動発電機12及び旋回用の電動モータ21の出力が0になる。
【0056】
第1強制アシストモードMC4では、エンジン11の出力が制限上限値以下に制限され、電動発電機12及び旋回用の電動モータ21の出力は、通常の出力上限値を超えないように制御される。第2強制アシストモードMC5では、エンジン11がアイドリング状態で運転され、電動発電機12及び旋回用の電動モータ21の出力が、通常の出力上限値を超えないように制御される。
【0057】
第1アシスト禁止モードMC6では、エンジン11の出力が制限上限値以下に制限され、電動発電機12及び旋回用の電動モータ21の出力が0になる。第2アシスト禁止モードMC7では、エンジン11がアイドリング状態で運転され、電動発電機12及び旋回用の電動モータ21の出力が0になる。
【0058】
次に、各制御モードMC間の遷移条件について説明する。制御モードMCが通常モードMC1のときに、還元剤の残量QRが減少し、かつ上部旋回体3が旋回動作中ではない場合、制御モードMCが通常モードMC1から出力制限モードMC2に遷移する。例えば、還元剤の残量QRが判定閾値THQ未満になると、還元剤の残量QRが減少していると判定される。電動モータ21の回転速度測定値NMが判定閾値THV未満である場合に、旋回動作中ではないと判定される。還元剤の残量QRが減少しても、旋回動作が継続中であれば、旋回動作が終了するまで、通常モードMC1から出力制限モードMC2への遷移を待機する。
【0059】
制御モードMCが出力制限モードMC2のときに、運転者が還元剤を補充し、リカバリスイッチ39を押下すると、制御モードMCが出力制限モードMC2から通常モードMC1に復帰する。
図6のSWRは還元剤が補充され且つリカバリスイッチ39が押下されたことを表す。
【0060】
制御モードMCが出力制限モードMC2のときに、還元剤の残量QRが実質的にゼロになり、かつ上部旋回体3が旋回動作中ではない場合、制御モードMCが出力制限モードMC2からアイドリングモードMC3に遷移する。制御モードMCがアイドリングモードMC3のときに、運転者が還元剤を補充し、リカバリスイッチ39を押下すると、制御モードMCがアイドリングモードMC3から通常モードMC1に復帰する。
【0061】
制御モードMCが出力制限モードMC2のときに、強制アシストスイッチ38がオンにされると、制御モードMCが出力制限モードMC2から第1強制アシストモードMC4に遷移する。制御モードMCが第1強制アシストモードMC4のときに、強制アシストスイッチ38がオフにされると、制御モードMCが第1強制アシストモードMC4から出力制限モードMC2に遷移する。
【0062】
制御モードMCがアイドリングモードMC3のときに、強制アシストスイッチ38がオンにされると、制御モードMCがアイドリングモードMC3から第2強制アシストモードMC5に遷移する。制御モードMCが第2強制アシストモードMC5のときに、強制アシストスイッチ38がオフにされると、制御モードMCが第2強制アシストモードMC5からアイドリングモードMC3に遷移する。
【0063】
制御モードMCが出力制限モードMC2または第1強制アシストモードMC4のときに、充電率SOCがアシスト可能閾値THS0より低くなると、制御モードMCが第1アシスト禁止モードMC6に遷移する。制御モードMCがアイドリングモードMC3または第2強制アシストモードMC5のときに、充電率SOCがアシスト可能閾値THS0より低くなると、制御モードMCが第2アシスト禁止モードMC7に遷移する。
【0064】
制御モードMCが第1アシスト禁止モードMC6のときに充電率SOCが回復すると、制御モードMCが第1アシスト禁止モードMC6から出力制限モードMC2に遷移する。制御モードMCが第2アシスト禁止モードMC7のときに充電率SOCが回復すると、制御モードMCが第2アシスト禁止モードMC7からアイドリングモードMC3に遷移する。例えば、充電率SOCが回復判定閾値THS1を超えると、充電率SOCが回復したと判定される。回復判定閾値THS1は、アシスト可能閾値THS0よりも高い。
【0065】
制御モードMCが第1強制アシストモードMC4のときに、還元剤の残量QRが実質的にゼロになり、かつ上部旋回体3が旋回動作中ではない場合、制御モードMCが第1強制アシストモードMC4から第2強制アシストモードMC5に遷移する。制御モードMCが第1アシスト禁止モードMC6のときに、還元剤の残量QRが実質的にゼロになると、制御モードMCが第1アシスト禁止モードMC6から第2アシスト禁止モードMC7に遷移する。
【0066】
図5に戻って、制御装置30の機能についての説明を続ける。
【0067】
エンジン出力上限値生成部505が、現在の制御モードMCに基づいて、エンジン出力上限値を生成する。エンジン出力上限値には、回転速度上限値NUE及びトルク上限値TUEが含まれる。制御モードMCが通常モードMC1のとき、回転速度上限値NUEとして、通常の回転速度上限値NUE0が生成され、トルク上限値TUEとして、通常のトルク上限値TUE0が生成される。制御モードMCが出力制限モードMC2、第1強制アシストモードMC4、または第1アシスト禁止モードMC6のとき、回転速度上限値NUEとして、回転速度上限値NUE1が生成され、トルク上限値TUEとして、トルク上限値TUE1が生成される。回転速度上限値NUE1は通常の回転速度上限値NUE0より小さく、トルク上限値TUE1は通常のトルク上限値TUE0より小さい。制御モードMCがアイドリングモードMC3、第2強制アシストモードMC5、または第2アシスト禁止モードMC7のとき、回転速度上限値NUEとして、アイドリング回転速度NUE2が生成され、トルク上限値TUEとして、トルク上限値TUE2が生成される。アイドリング回転速度NUE2は回転速度上限値NUE1より小さく、トルク上限値TUE2はトルク上限値TUE1より小さい。
【0068】
電動モータ出力上限値生成部506が、現在の制御モードMCに基づいて、電動モータ出力上限値を生成する。エンジン出力上限値には、回転速度上限値NUM及びトルク上限値TUMが含まれる。制御モードMCが通常モードMC1、第1強制アシストモードMC4、または第2強制アシストモードMC5のとき、回転速度上限値NUMとして、通常の回転速度上限値NUM0が生成され、トルク上限値TUMとして、通常のトルク上限値TUM0が生成される。制御モードMCが出力制限モードMC2のとき、回転速度上限値NUMとして、回転速度上限値NUM1が生成され、トルク上限値TUMとして、トルク上限値TUM1が生成される。回転速度上限値NUM1は、通常の回転速度上限値NUM0より小さく、トルク上限値TUM1は、通常のトルク上限値TUM0より小さい。
【0069】
エンジン制御部509が、エンジンの回転速度指令値NCE、エンジンの回転速度上限値NUE及びトルク上限値TUEに基づいて、燃料噴射量SEを算出する。具体的には、エンジン11の回転速度測定値NEが回転速度上限値NUEを超えず、エンジン11が発生するトルクがトルク上限値TUEを超えない条件の下で、エンジン11の回転速度測定値が回転速度指令値NCEに近づくように、燃料噴射量SEが算出される。
【0070】
電動モータ制御部510が、電動モータの回転速度指令値NCM、電動モータの回転速度上限値NUM及びトルク上限値TUMに基づいて、インバータ20を制御するためのパルス幅変調信号PWMを生成する。具体的には、電動モータ21の回転速度測定値NMが回転速度上限値NUMを超えず、電動モータ21が発生するトルクTMがトルク上限値TUMを超えない条件の下で、電動モータ21の回転速度測定値NMが回転速度指令値NCMに近づくように、インバータ20が制御される。
【0071】
図7Aに、エンジン出力上限値生成部505の機能ブロック図を示す。エンジン出力上限値生成部505は、速度制限部5051、PI制御部5052、噴射量算出部5053、及び回転速度検出部5054を含む。
【0072】
速度制限部5051は、エンジンの回転速度指令値NCE及び回転速度上限値NUEに基づいて、回転速度指令値NCE1を出力する。具体的には、入力される回転速度指令値NCEが回転速度上限値NUE以下の領域では、出力される回転速度指令値NCE1が入力される回転速度指令値NCEに等しい。入力される回転速度指令値NCEが回転速度上限値NUEを超えている場合は、出力される回転速度指令値NCE1は、回転速度上限値NUEに等しい。
【0073】
図8Aに、速度制限部5051に入力される回転速度指令値NCEと、出力される回転速度指令値NCE1との関係を示す。
【0074】
制御モードMCが通常モードMC1であるとき、回転速度上限値NUEに通常の回転速度上限値NUE0が設定されている。このため、出力される回転速度指令値NCE1は、0から通常の回転速度上限値NUE0までの範囲で、実線mc1で示したように変化する。制御モードMCが出力制限モードMC2であるとき、回転速度上限値NUEに、通常の回転速度上限値NUE0よりも小さい回転速度上限値NUE1が設定されている。このため、回転速度指令値NCE1は、実線mc2で示したように、回転速度上限値NUE1を超えない。
【0075】
速度センサ33が、エンジン11の回転速度を検出する。検出結果が回転速度検出部5054に入力される。回転速度検出部5054は、速度センサ33の出力信号に基づいて、エンジン11の回転速度測定値NEを生成する。PI制御部5052が、回転速度指令値NCE1と回転速度測定値NEとの差分に基づいてPI制御を行い、トルク指令値TCEを出力する。
【0076】
噴射量算出部5053が、トルク指令値TCEとトルク上限値TUEとに基づいて、燃料噴射量SEを算出する。具体的には、トルク指令値TCEがトルク上限値TUE以下の場合には、トルク指令値TCEに等しいトルクが発生するように、燃料噴射量SEが決定される。トルク指令値TCEがトルク上限値TUEを超えると、トルク上限値TUEに等しいトルクが発生するように、燃料噴射量SEが決定される。すなわち、エンジン11の発生するトルクが、トルク上限値TUEを超えない範囲に制限される。
【0077】
図8Bに、トルク指令値TCEと燃料噴射量SEとの関係を示す。制御モードMCが通常モードMC1のときには、トルク指令値TCEが通常のトルク上限値TUE0以下の場合には、エンジン11がトルク指令値TCEに等しいトルクを発生するように、燃料噴射量SEが決定される。トルク指令値TCEが通常のトルク上限値TUE0を超えると、エンジン11が発生するトルクがトルク上限値TUE0と等しくなるように、燃料噴射量SEが決定される。すなわち、エンジン11が発生するトルクが、通常のトルク上限値TUE0を超えないように、燃料噴射量SE(実線mc1)が決定される。
【0078】
制御モードMCが出力制限モードMC2のときには、エンジン11の発生するトルクが、トルク上限値TUE1を超えないように、燃料噴射量SE(実線mc2)が決定される。すなわち、エンジン11が発生するトルク上限値TUE1に制限される。
【0079】
図7Bに、電動モータ出力上限値生成部506の機能ブロック図の一例を示す。電流検出部5066が、電動モータ21の駆動電流を検出し、駆動電流測定値IMを出力する。回転速度検出部5067が電動モータ21の回転速度を検出し、回転速度測定値NMを出力する。上部旋回体3が時計回りに旋回している時の回転速度を正と定義し、反時計回りに旋回している時の回転速度を負と定義する。上部旋回体3を時計回りに旋回させるトルクを正と定義し、反時計回りに旋回させるトルクを負と定義する。
【0080】
速度制限部5061が、電動モータ21の回転速度指令値NCM及び回転速度上限値NUMに基づいて、回転速度指令値NCM1を出力する。入力される回転速度指令値NCMの絶対値が回転速度上限値NUMの絶対値以下の領域では、出力される回転速度指令値NCM1が、回転速度指令値NCMに等しい。入力される回転速度指令値NCMの絶対値が回転速度上限値NUMの絶対値を超えている場合は、出力される回転速度指令値NCM1の絶対値は、回転速度上限値NUMの絶対値に等しい。出力される回転速度指令値NCM1の符号は、回転速度指令値NCMの符号と同一である。
【0081】
図8Cに、速度制限部5061に入力される回転速度指令値NCMと、出力される回転速度指令値NCM1との関係を示す。
【0082】
制御モードMCが通常モードMC1であるとき、回転速度上限値NUMに通常の回転速度上限値NUM0が設定されている。このため、出力される回転速度指令値NCM1の絶対値は、実線mc1で示すように、通常の回転速度上限値NUM0以下の範囲で変化する。制御モードMCが出力制限モードMC2であるとき、回転速度上限値NUMに回転速度上限値NUM1が設定されている。このため、出力される回転速度指令値NCM1の絶対値は、実線mc2で示すように、回転速度上限値NUM1を超えない範囲で変化する。
【0083】
PI制御部5062が、回転速度指令値NCM1と回転速度測定値NMとの差分に基づいてPI制御を行い、トルク指令値TCMを出力する。トルク制限部5063が、トルク指令値TCM及びトルク上限値TUMに基づいて、駆動電流指令値IC0を出力する。トルク指令値TCMの絶対値がトルク上限値TUM以下の場合には、トルク指令値TCMに等しいトルクが発生するように、駆動電流指令値IC0が決定される。トルク指令値TCMの絶対値がトルク上限値TUMを超えると、トルク上限値TUMに等しいトルクが発生するように、駆動電流指令値IC0が決定される。
【0084】
図8Dに、トルク指令値TCMと駆動電流指令値IC0との関係を示す。
【0085】
制御モードMCが通常モードMC1のときには、電動モータ21の発生するトルクの絶対値が、通常のトルク上限値TUM0を超えないように、駆動電流指令値IC0(実線mc1)が決定される。制御モードMCが出力制限モードMC2のときには、電動モータ21の発生するトルクの絶対値が、トルク上限値TUM1を超えないように、駆動電流指令値IC0(実線mc2)が決定される。すなわち、電動モータ21が発生するトルクの絶対値がトルク上限値TUM1以下に制限される。
【0086】
PI制御部5064が、駆動電流指令値IC0と駆動電流測定値IMとの差分に基づいてPI制御を行い、駆動電流指令値IC1を出力する。PWM信号生成部5065が、駆動電流指令値IC1に基づいて、パルス幅変調信号PWMを生成する。パルス幅変調信号
PWMによって、インバータ20が制御される。
【0087】
次に、制御モードMCが通常モードMC1から出力制限モードMC2に遷移する効果について説明する。出力制限モードMC2では、エンジン11の回転数及びトルクの上限値が、それぞれ回転速度上限値NUE1及びトルク上限値TUE1に制限される。このため、エンジン11の排ガス中の窒素酸化物を還元する還元剤の使用量を低減できる。
【0088】
エンジン11の出力の上限値が低く制限されると、ブーム4等の作動部品のスイング動作が、運転者の操作に応じた速さよりも遅くなる。このとき、電動モータ21が通常モードMC1における速度で動作すると、上部旋回体3は、運転者の操作に応じた速度で旋回する。このため、上下方向のスイング動作と、旋回動作とが整合しなくなり、運転者に違和感が生じる。さらに、作動部品の上下方向のスイング動作が、運転者の操作通りに実行されず、上部旋回体3のみが操作通りに旋回すると、作業に、予期できない不都合が発生する場合がある。
【0089】
上部旋回体3が旋回中に、運転者の操作に反してエンジン11の出力が制限されると、ブーム4等の作動部品の移動軌跡が、運転者の予測する軌跡から大きく外れてしまう場合がある。実施例においては、旋回動作が継続中である場合には、制御モードMCが通常モードMC1から出力制限モードMC2に遷移せず、旋回動作が終了した後に遷移する。このため、作動部品の移動軌跡が運転者の予測する軌跡から大きく外れてしまうことはない。
【0090】
実施例においては、エンジン11の回転数及びトルクの上限値が低く制限されると同時に、電動モータ21の回転数及びトルクの上限値も、それぞれ回転速度上限値NUM1及びトルク上限値TUM1に制限される。これにより、上下方向のスイング動作と、旋回動作との整合性が保たれるため、運転者に与える違和感を軽減できる。
【0091】
次に、制御モードMCが出力制限モードMC2からアイドリングモードMC3に遷移する効果について説明する。アイドリングモードMC3では、エンジンがアイドリング状態に保たれる。このため、還元剤の残量QRがゼロであっても、排ガス中の窒素酸化物の濃度が低く抑えられる。
【0092】
次に、制御モードMCが出力制限モードMC2から第1強制アシストモードMC4に遷移する効果について説明する。出力制限モードMC2では、エンジン11及び電動発電機12の両方の出力が制限される。第1強制アシストモードMC4では、エンジン11の出力は制限されるが、電動発電機12は通常の出力上限値までの動力を出力することができる。電動発電機12からの出力を高くすることにより、一時的に、メインポンプ14から送出される油量を高めることができる。例えば、一時的にクローラの駆動力を高めることにより、悪路からの脱出を容易にすることが可能である。電動発電機12の出力を通常の出力上限値の近傍で運転すると、蓄電装置19の充電率SOCの低下が速くなる。このため、電動発電機12を、通常の出力上限値の近傍で動作させることができる時間は短く、例えば数十秒程度である。
【0093】
次に、制御モードMCがアイドリングモードMC3から第2強制アシストモードMC5に遷移する効果について説明する。アイドリングモードMC3では、エンジン11がアイドリング状態であるため、極低速でしか走行することができない。また、坂を上ることは困難である。第2強制アシストモードMC5では、電動発電機12でメインポンプ14を駆動することにより、走行能力を高めることができる。これにより、例えば還元剤補給地点までの走行を確保できる。
【0094】
次に、制御モードMCが第1アシスト禁止モードMC6または第2アシスト禁止モードMC7に遷移する効果について説明する。第1アシスト禁止モードMC6及び第2アシスト禁止モードMC7では、強制アシストスイッチ38がオンにされている状態であっても、電動発電機12及び電動モータ21に電力が供給されない。このため、蓄電装置19の過度の放電を回避できる。
【0095】
上記実施例では、還元剤の残量QRがゼロになると、制御モードMCをアイドリングモードMC3に遷移させることにより、エンジン11をアイドリング状態にした。還元剤の残量QRがゼロになったときに、エンジン11を強制的に停止させてもよい。この場合でも、第2強制アシストモードMC5において、必要最小限の走行、作動部品の姿勢変更を行うことが可能である。
【0096】
また、上記実施例では、
図7Aに示したように、エンジン11の回転速度及びトルクの両方に回転速度上限値NUE1、トルク上限値TUE1を設けて、エンジン11の出力を制限した。エンジン11の回転速度及びトルクの一方にのみ制限上限値を設けて、エンジン11の出力を制限してもよい。同様に、電動モータ21の回転速度及びトルクの一方にのみ制限上限値を設けて、電動モータ21の出力を制限してもよい。
【0097】
また、上記実施例では、制御モードMCは、出力制限モードMC2又はアイドリングモードMC3のときに運転者がリカバリスイッチ39を押下すると通常モードMC1に復帰する。しかしながら、制御モードMCは、第1強制アシストモードMC4、第2強制アシストモードMC5、第1アシスト禁止モードMC6、又は第2アシスト禁止モードMC7のときであっても、運転者がリカバリスイッチ39を押下したときに通常モードMC1に復帰してもよい。リカバリスイッチ39は省略されてもよい。制御装置30が還元剤の残量QRを検出できるためである。
【0098】
次に
図9を参照し、制御モードMCの状態遷移図の別の例を示す。
図9は、異常が検出された後にエンジン11の出力が制限されると共に電動モータ21の出力も制限される例を示す。
図9の制御モードMCには、通常モードMC1A、注意喚起モードMC2A、及びアイドリングモードMC3Aが含まれる。
図9では、制御モードMC間の主な遷移が示されており、全ての遷移が示されているわけではない。
【0099】
通常モードMC1Aでは、エンジン11、電動発電機12、電動モータ21、及びメインポンプ14の出力が、通常の出力上限値を超えない範囲で制御される。注意喚起モードMC2Aでは、エンジン11、電動発電機12、電動モータ21、及びメインポンプ14の出力が、通常の出力上限値よりも低い第1制限上限値を超えない範囲に制限される(出力制限(弱))。アイドリングモードMC3Aでは、エンジン11、電動発電機12、電動モータ21、及びメインポンプ14の出力が第1制限上限値よりも更に低い第2制限上限値を超えない範囲に制限される(出力制限(強))。
【0100】
次に、各制御モードMC間の遷移条件について説明する。制御モードMCが通常モードMC1Aのときに、還元剤の残量QRが判定閾値THQ1未満になると、制御モードMCが通常モードMC1Aから注意喚起モードMC2Aに遷移する。
【0101】
制御モードMCが注意喚起モードMC2Aのときにエスケープスイッチが押下されると、還元剤が補充されていない場合であっても、すなわち還元剤の残量QRが判定閾値THQ1未満であっても、制御モードMCが注意喚起モードMC2Aから通常モードMC1Aに復帰する。
図9のSWEはエスケープスイッチが押下されたことを表す。この場合、復帰後に所定時間が経過するまで、或いは、復帰後に還元剤の残量QRが判定閾値THQ0(例えばゼロ)以下となるまでは通常モードMC1Aでの作業が可能となる。エスケープスイッチは、強制アシストスイッチ38及びリカバリスイッチ39と同様に制御装置30に接続されている。復帰後に所定時間が経過すると、或いは、復帰後に還元剤の残量QRが判定閾値THQ0(例えばゼロ)以下になると、制御モードMCは通常モードMC1Aから注意喚起モードMC2Aに遷移する。制御モードMCが注意喚起モードMC2Aのときに還元剤が補充され且つリカバリスイッチ39が押下されたときにも、制御モードMCは注意喚起モードMC2Aから通常モードMC1Aに復帰する。
図9のSWRは還元剤が補充され且つリカバリスイッチ39が押下されたことを表す。但し、この場合には、復帰後に所定時間が経過したとしても制御モードMCは通常モードMC1Aから注意喚起モードMC2Aに遷移しない。還元剤が補充されているためである。
【0102】
制御モードMCが注意喚起モードMC2Aのときに還元剤の残量QRが判定閾値THQ2(<THQ1)未満になると、制御モードMCが注意喚起モードMC2AからアイドリングモードMC3Aに遷移する。或いは、制御モードMCが注意喚起モードMC2Aに遷移した後の経過時間が所定時間を超えると、制御モードMCが注意喚起モードMC2AからアイドリングモードMC3Aに遷移する。
【0103】
制御モードMCがアイドリングモードMC3Aのときにエスケープスイッチが押下されると、還元剤が補充されていない場合であっても、すなわち還元剤の残量QRが判定閾値THQ1未満であっても、制御モードMCがアイドリングモードMC3Aから通常モードMC1Aに復帰する。この場合、復帰後に所定時間が経過するまで、或いは、復帰後に還元剤の残量QRが判定閾値THQ0(例えばゼロ)以下となるまでは通常モードMC1Aでの作業が可能となる。復帰後に所定時間が経過すると、或いは、復帰後に還元剤の残量QRが判定閾値THQ0(例えばゼロ)以下になると、制御モードMCは通常モードMC1AからアイドリングモードMC3Aに遷移する。制御モードMCがアイドリングモードMC3Aのときに還元剤が補充され且つリカバリスイッチ39が押下されたときにも、制御モードMCはアイドリングモードMC3Aから通常モードMC1Aに復帰する。但し、この場合には、復帰後に所定時間が経過したとしても制御モードMCは通常モードMC1AからアイドリングモードMC3Aに遷移しない。還元剤が補充されているためである。
【0104】
次に
図10〜
図12を参照し、制御装置30がエンジン11及び電動モータ21のそれぞれの出力を制御する処理の別の例である動力分配処理について説明する。
図10〜
図12は、異常が検出された後にエンジン11の出力の制限に応じて電動モータ21の出力が制限される例を示す。
【0105】
図10はエンジン出力上限値に対応するポンプ電流Iにより決まるポンプ吐出圧Pとポンプ吐出量Qの関係を示す。ポンプ電流Iが決まると、ポンプ吐出圧Pを得るためのポンプ吐出量Qが決まる。
図10に示す線図は、ポンプ電流IをI
1〜I
mの間で変えてポンプ電流Iにより決まるポンプ吐出圧Pとポンプ吐出量Qの関係を示す。この線図の関係をテーブル化したものが右側のP−Qマップである。P−Qマップには、ポンプ電流I
1〜I
mのそれぞれにおいて、ポンプ吐出圧P
1〜P
nを得るために必要なポンプ吐出量Qが示されている。例えば、ポンプ電流IをI
jに設定しているときにポンプ吐出圧P
iを得るためには、I
jの行とP
iの列とが交わる部分に示されたポンプ吐出量Q
jiを採用すればよいことが分かる。
【0106】
制御装置30は、このようなP−Qマップを用い、エンジン11の出力の制限に応じて減馬力制御を実行する。
【0107】
次に
図11を参照し、制御装置30が油圧負荷に基づいてエンジン11及び電動モータ21の動力を分配する様子について説明する。
図11は、動力分配処理を実行する制御装置30の機能ブロック図である。この動力分配処理により、制御装置30は電動発電機12のアシスト量を制御することでエンジン11の負荷を適切に制御できる。その結果、エンジン11に対する過負荷を防止し、効率のよい条件でエンジン11を運転できる。
【0108】
制御装置30には、ポンプ電流I、ポンプ吐出圧P
i、旋回用電動モータ要求出力Per、エンジン回転数Nact、バッテリ電圧Vm、及び目標充電率SOCtが入力される。
【0109】
旋回用電動モータ要求出力Perは電気負荷が必要とする電気的パワーに相当する。旋回用電動モータ要求出力Perは、例えば、操縦者が操作する操作レバーの操作量に基づいて算出される。
【0110】
エンジン回転数Nactはエンジン11の実際の回転数に相当する。エンジン11は、ショベルの運転時には常時駆動されており、そのエンジン回転数Nactが検出されている。バッテリ電圧Vmは、蓄電装置19の端子間電圧に相当し、電圧計により検出される。
【0111】
ポンプ電流I及びポンプ吐出圧P
iは油圧負荷推定演算部50に入力される。油圧負荷推定演算部50はポンプ電流I及びポンプ吐出圧P
iを用いて油圧負荷要求出力Phrを算出する。算出した油圧負荷要求出力Phrは動力分配部60に供給される。
【0112】
エンジン回転数Nactはエンジン出力範囲決定部52に入力される。エンジン出力範囲決定部52には、エンジン回転数Nactからエンジン出力上限値及びエンジン出力下限値を求めるためのマップ又は変換テーブルが格納されている。エンジン出力範囲決定部52は、入力されたエンジン回転数Nactから、エンジン出力上限値Pgou及びエンジン出力下限値Pgolを算出し、動力分配部60に供給する。
【0113】
バッテリ電圧Vm及び目標充電率SOCtはバッテリ出力決定部54に入力される。バッテリ出力決定部54は、バッテリ出力範囲決定部54A、バッテリ出力目標値決定部54B、及び、充電状態算出部54Cを含む。充電状態算出部54Cは、入力されたバッテリ電圧Vmから充電率SOCを算出する。算出された充電率SOCは、バッテリ出力範囲決定部54A及びバッテリ出力目標値決定部54Bに与えられる。
【0114】
バッテリ出力範囲決定部54Aには、充電率SOCからバッテリ出力上限値及び下限値を算出するためのマップ又は変換テーブルが格納されている。バッテリ出力目標値決定部54Bには、充電率SOC及び目標充電率SOCtからバッテリ出力目標値を算出するためのマップ又は変換テーブルが格納されている。このマップ又は変換テーブルは、例えば、入力された充電率SOCと目標充電率SOCtとの間の偏差とバッテリ出力目標値との関係を定義するものであってよい。目標充電率SOCtは、任意の態様で決定されてよく、固定値であってもよいし、可変値であってもよい。バッテリ出力範囲決定部54Aは、充電率SOCからバッテリ出力上限値Pbou0及びバッテリ出力下限値Pbol0を求め、動力分配部60に供給する。バッテリ出力目標値決定部54Bは、入力された充電率SOC及び目標充電率SOCtからバッテリ出力目標値Pbot0を算出し、動力分配部60に供給する。
【0115】
バッテリ出力上限値Pbou0は放電電力の上限値に相当する。バッテリ出力下限値Pbol0は負値であり、その絶対値は充電電力の上限値に相当する。
【0116】
動力分配部60は、油圧負荷要求出力Phr、旋回用電動モータ要求出力Per、エンジン出力上限値Pgou、エンジン出力下限値Pgol、バッテリ出力上限値Pbou0、バッテリ出力下限値Pbol0、及びバッテリ出力目標値Pbot0に基づいて最終的な油圧負荷出力Pho、電動発電機12に対する電動発電機出力Pao、及び、電気負荷出力Peoを決定する。この際、動力分配部60は、エンジン出力がエンジン出力上限値Pgou及びエンジン出力下限値Pgolにより定義される範囲内に収まり、且つ、バッテリ出力がバッテリ出力上限値Pbou0及びバッテリ出力下限値Pbol0により定義される範囲に収まるように、最終的な油圧負荷出力Pho、電動発電機出力Pao、及び、電気負荷出力Peoを決定し、出力する。制御装置30は、これらの決定された出力に基づいて電動発電機12を制御する。
【0117】
以上のように、制御装置30は、油圧負荷要求出力Phrを精度よく算出して、電動発電機12のアシスト量を制御することにより、エンジン11の負荷を適切に制御できる。したがって、エンジン11に対する過負荷を防止し、効率のよい条件でエンジン11を運転できる。
【0118】
また、動力分配部60は、合計要求出力に占める油圧負荷出力Phoの割合と合計要求出力に占める電気負荷出力Peoの割合とが変動しないように油圧負荷出力Pho及び電気負荷出力Peoを決定してもよい。合計要求出力は、油圧負荷出力Pho、電動発電機出力Pao、及び電気負荷出力Peoの合計である。この場合、動力分配部60は、油圧負荷要求出力Phrが低下した場合、油圧負荷出力Phoの低下と共に電気負荷出力Peoを低下させる。すなわち、エンジン11の出力制限によって出力供給側であるエンジン11の出力が小さくなるため、動力分配部60は、油圧負荷出力Phoと電気負荷出力Peoとを低減させる。その結果、メインポンプ14及び電動モータ21のそれぞれの出力は、エンジン11の出力の低下に応じて低減される。
【0119】
次に
図12を参照し、
図11の制御装置30が旋回動作の継続中に選択還元触媒システム100の異常を検出した場合の処理について説明する。
図12は、レバー操作量、旋回速度、エンジン出力、及びポンプ出力のそれぞれの時間的推移を示すタイムチャートである。
【0120】
図12(A)は旋回操作レバーのレバー操作量の時間的推移を示す。本実施例では、旋回操作レバーは既に最大操作量まで操作されており、時刻t1を経て時刻t2に至るまで最大操作量が維持される。そして、時刻t2において中立位置に戻す操作が行われる。
【0121】
図12(B)は旋回速度の時間的推移を示し、
図12(C)はエンジン出力の時間的推移を示し、
図12(D)はポンプ出力の時間的推移を示す。
【0122】
時刻t1において選択還元触媒システム100の異常を検出した場合、制御装置30は、NOx濃度の高い排ガスが排気されるのを抑制するためにエンジン出力上限値を低下させる。
【0123】
例えば、制御装置30は、尿素水残量が第1の閾値以下となったときにエンジン出力上限値としてのトルク上限値を低下させてエンジン11のトルクを所定値以下に制限する。或いは、制御装置30は、尿素水残量が第2の閾値以下となったときにエンジン出力上限値としての回転速度上限値を低下させてエンジン11の回転数を所定回転数まで低下させる。
【0124】
エンジン出力上限値が低下すると、エンジン出力は
図12(C)に示すように低下する。また、エンジン出力上限値が低下するとポンプ電流Iも低下するため、ポンプ出力も
図12(D)に示すように低下する。
【0125】
また、制御装置30は、尿素水残量が第1の閾値及び第2の閾値を含む複数の閾値のそれぞれに達したときにエンジン11の出力を制限する一方で電動モータ21の制御を継続させる。
【0126】
具体的には、制御装置30の動力分配部60は、ポンプ電流Iの低下に応じて油圧負荷要求出力Phrひいては油圧負荷出力Phoを低下させる。そして、油圧負荷出力Phoの低下に伴って電気負荷出力Peoを低下させる。電気負荷出力Peoの低下は、速度制限部5061及びトルク制限部5063による制限、更には旋回操作レバーのレバー操作とは無関係に、電動モータ21の出力の低下をもたらす。
【0127】
その結果、旋回速度は、
図12(B)に示すように時刻t1において低下し始め、油圧負荷出力Phoに対応する電気負荷出力Peoに見合うレベルまで低下する。
【0128】
このようにして、制御装置30は、旋回動作の継続中に選択還元触媒システム100の異常を検出した場合、エンジン出力を低下させることによってNOx濃度の高い排ガスが排気されるのを抑制できる。
【0129】
また、制御装置30は、選択還元触媒システム100の異常が検出された場合であっても電動モータ21の制御を継続することで、油圧負荷出力Phoに対応する電気負荷出力Peoに見合うレベルで旋回速度を維持できる。また、旋回動作を停止させた後もインバータ20と電動モータ21との間の通電制御が可能な状態を維持するため、制御装置30は、旋回操作レバーが再操作された場合に電動モータ21の駆動を遅滞なく再開させることができる。また、インバータ18、コンバータの制御も継続することで、制御装置30は、電動モータ21が回生電力を発生させた場合に、電動発電機12、蓄電装置19に遅滞なく電力を供給できる。
【0130】
また、制御装置30は、アタッチメント、旋回機構2等が動作中(レバー操作中)の場合にはエンジン11の出力制限を行わず、その動作が終了した後でエンジン11の出力制限を行うようにしてもよい。この場合、次の動作(レバー操作)が行われる際にエンジン11の出力制限が実行される。ショベルでは1回の動作(例えば、1回の旋回動作、1回のアーム閉じ動作等)が長い時間に亘って継続することが少なく、応急的な措置として短時間だけエンジン11の出力制限を行わずにその動作を継続させることができるためである。
【0131】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【0132】
また、本願は、2014年12月5日に出願した日本国特許出願2014−246388号に基づく優先権を主張するものであり、この日本国特許出願の全内容を本願に参照により援用する。